精密工学会東北支部講演会、特別講演 数学教育・工学教育における 数式処理電卓の活用 一関工業高等専門学校 一般教科 梅野善雄 http://www.ichinoseki.ac.jp/gene/mathnavi/ 期日: 平成14年12月7日(土)、於: 一関高専 講演目次 1.数式処理電卓の機能 2.実際の画面例 3.数学教育での利用 4.利用した学生の感想 5.応数・応物での利用 6.データ収集器CBL 7.実データの収集と解析 8.工学教育における意義 1.数式処理電卓の機能 マセマティカのような数式処理が可能 多彩なグラフ表示 y=f(x)、媒介変数、極座標、曲面 方程式の解法、微分方程式の解析解 文字式、複素数、n進数の計算 構造化言語によるプログラミング 「思考のツール」としての利用 2.実際の画面例 3.数学教育での利用 計算の答えあわせとしての利用 数学的性質を理解させるための利用 数学的性質を発見させるための利用 数学的思考を援助するための利用 石川高専の阿蘇和寿教授は、この電卓を 数学ナビゲータ、略して「数ナビ」と呼ぶことを 提唱している。 極限値 lim sin(x)/x =1 媒介変数表示されたグラフ 和の極限としての定積分 4.利用した学生の感想 数ナビを利用した授業は面白い 数ナビを利用すると、 数学の理解がさらに深められる 数ナビを使って、 数学が前よりも分かるようになった 数ナビのおかげで、 数学が前よりおもしろくなった (79.4%) (57.5%) (51.3%) (43.8%) ー平成13年度(1年生)ー 数ナビを利用すると、数学の 理解がさらに深められる % 70 60 50 調査時期 40 7月(74名) 10月(71名) 2月(73名) 30 20 10 0 はい 中間 平成12年度(2年 生) いいえ 数ナビを使って、理論的な ことへの関心が高まった % 70 60 50 成績 40 上位(23名) 中位(29名) 下位(21名) 30 20 10 0 はい 中間 一関高専2年生(H12) いいえ 数ナビを使って、数学が 前より分かるようになった 60 50 40 はい 中間 いいえ 30 20 10 0 成績下位 成績中下 成績中上 平成13年度(1年生) 成績上位 数ナビを使って、数学が 前より分かるようになった 70 60 50 40 はい どちらとも いいえ 30 20 10 0 低い(28名) 中間(63名) 高い(69名) 使用頻度 成績平均以下の学生の感想 数ナビはグラフの変化とか交点とかも分かるし、 分かりにくいグラフもすぐ分かるし、私にしたら 結構「いいもの」です。(32) 数ナビを使ってグラフの移動がよく分かった。(37) 今まであいまいだったグラフが数ナビのおかげで 減ったと思う。(38) 分からないところが分かるようになってきた。(43) 数ナビを使って、関数の理解度が高まった。(45) 数学教育における意義 成績の上下や操作習熟度によらず、 数学理解に有益であると感じている 成績下位の学生ほど利用頻度が高く 「数学が分かるようになった」と感じている 成績上位の学生は理論的なことへの 関心を増している 数学を理解させる上で、極めて有益 5.応数・応物における利用 振動の微分方程式の解・解曲線 x’’(t)+4x(t)=cos(2.2t), x(0)=0, x’(0)=1 6.データ収集器CBL Calculator-Based Laboratory グラフ電卓のオプション機器 センサーを通した実データ収集が容易 4個の接続用チャンネル 複数チャンネルを利用して、 異なるデータの同時収集が可能 最大毎秒50,000個のデータ収集が可能 CBLで利用できるセンサー 多数のセンサーが利用可能 ただし、教育用としての利用に限る 距離センサー、温度センサー、音センサー、 圧力センサー、力センサー、フォトゲート、 光センサー、磁界センサー、pHセンサー、 加速度センサー、流率センサー、色センサー、 伝導率センサー、相対湿度センサー、 生物圧力センサー、等々 7.実データの収集と解析 数式処理電卓、CBL、センサーを接続 データ収集プログラム DataMate を実行 データが収集され、電卓側に表データ として転送される 電卓側の表計算では統計解析が可能 表計算は、999行99列までの計算が可能 ニュートンの冷却の法則 物体の温度が変化する割合は、その物体 の温度と周囲の温度との差に比例する。 dθ/dt=ーk(θーθ’) θ: 物体の温度 t : 時間、 k: 比例定数 θ’: 周囲の温度 収集されたデータの解析例 ーc3のグラフ c4のグラフ 比例定数kの定数性の確認 比例定数kと微分方程式 8.工学教育における意義 講義の途中での実データ収集が容易 式と実データとの合致度との確認が容易 数式処理を絡めながら、実データをもとに、 法則性発見の思考過程を再現できる 電卓を学生個々が所有している場合は データを与えて法則性発見の演習が可能 数式処理機能を有効活用すれば、 思考を工学部分に集中できる
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