経営学特講義 第4章 法政大学教授 洞口治夫 1 第4章 国際経営 ①多国籍企業 ②海外直接投資 ③寡占的優位理論 ④PLC理論 ⑤経営資源移動理論 ⑥内部化理論 ⑦グローバル戦略 ⑧マルチドメスティック戦略 ⑨トランスナショナル企業 ⑩メタナショナル経営 2 ①多国籍企業 • 複数の国々で活動する企業。 • さまざまな定義 • 多国籍の「多」はいくつからか? • 通常は2以上。また、子会社数5以上、6 以上などの任意の数での調査も多い。 3 <復習> Alfred D. Chandler 『経営戦略と組織』 Strategy and Structure, 1969 4 チャンドラー • 「組織は戦略に従う」 • 国際化戦略によって 多国籍企業が生まれる。 5 ②海外直接投資 • 海外での永続的な事業活動を目 的として、外国企業の株式を保有 すること。 • 統計上は10%以上の株式所有比 率を目安にする。 6 直接投資と間接投資 • Foreign Direct Investment = 海外直接投資 =長期の株式保有 • Indirect Investment = Portfolio Investment =証券投資=株式の売買によるキャピタ ル・ゲインの獲得=企業経営に直接タッチ しない。 7 キャピタルゲインとインカムゲイン • キャピタルゲイン=土地、株式などの資産 を売却することによって得る利益。 • インカムゲイン=預金の利子、土地の地代、 株式の配当など、資産を保持することに よって得られる収入のこと。 • 直接投資はインカムゲインの獲得を狙う。 8 <復習> Igor Ansoff イゴー・アンゾフ (1918-2002) Corporate Strategy, 『企業戦略論』, 1965. 9 アンゾフ • 市場浸透戦略 • 部分的無知 • シナジー 10 アンソフの4分類 製品 現 新 市場浸透 製品開発 使命(ニーズ) 現 市場開発 新 =国際化 多角化 11 ③寡占的優位理論 • スティーブン・ハイマーの理論 • 寡占=一つの市場で少数の大企業が生 産数量、価格決定で支配的な地位を占め ていること。 • 事実発見:アメリカの海外直接投資統計を 整理してみると、石油産業、自動車産業、 化学産業といった少数の大企業が活動す る産業で多額の直接投資が行われていた。 12 企業の優位性 • ハイマーは、寡占産業における直接投資 金額が多いことを、「企業の優位性」によっ て説明した。企業能力が優れているときに 海外での経営ができる。 • ポーターの「競争優位」という考え方に受 け継がれていく。 13 ④PLC理論 • プロダクト・ライフ・サイクル理論 • レイモンド・バーノンによって提出された。 • 製品の生産・販売には、導入期・成長期・ 成熟期、衰退期がある。 • 先進国で成熟期を迎えた製品が、中心国 で導入され、さらに、その後、開発途上国 で導入されていく。 14 製 品 普 及 率 S字型のカーブ 開発途上国 中進国 先進国 時間 15 <復習> PPM • PPM (プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント) 縦軸・市場成長率 横軸・市場シェア 16 問題児 市 場 成 長 率 スター 市場シェア 負け犬 ドッグ 金のなる木 ミルクカウ 17 問題児 市 場 成 長 率 スター 市場シェア 負け犬 金のなる木 ドッグ ミルクカウ PPMにPLCを重ねあわせると、、、 18 ⑤経営資源移動理論 • ハイマーによる寡占的優位理論とは異なり、 中小企業、ベンチャー企業でも、経営資源 があれば、それを外国に移動させることに よって、多国籍企業が生まれる。 19 (復習)戦略論Ⅰ-⑧経営資源 • Managerial Resourcesの訳語 • 競争優位が明確に定義できない場合に、 企業の内部に存在する資源に注目する。 • 創業初期の企業、中小企業にも有効な視 角。 20 (復習) ペンローズ Edith Penrose 『企業成長の理論』 1959年 Managerial Resources 21 (復習)ペンローズ • ResourcesとServicesの峻別 • Managerial Resources 経営資源=経営 者の持つ資質 • 企業の内部成長 • 外部での成長(M&A) 22 (復習)戦略論Ⅰ-⑩ 資源戦略論(RBV) • ペンローズをはじめとする一連の研究者の 主張する競争戦略 • Resource Based View • ハメル=ドッズ:コア・コンピテンス • チャンドラー:組織能力 • 自社が市場で何番目に位置するかよりも 自社の能力で何ができるか、を重視する。 23 ⑥内部化理論 • ロナルド・コースによって提出された「取引 費用」の経済学にもとづく、多国籍企業成 立の説明。 24 取引費用の定義 • • • • 市場を利用するときに必要となるコスト ①価格探索の費用 ②交渉費用 ③契約の履行を確実にするためのコスト (長期の取引主体をみつけるコスト、 法的なコスト) • ④税 25 市場か、組織か。 • 市場を利用するときにはコストがかかる。 =輸出をすると取引費用がかかる。 =ライセンシング契約(フランチャイズ)の 相手に契約を守らせるにもコストがかかる。 • 組織を設立すると取引費用が削減できる。 =海外直接投資をして多国籍企業という 組織を設立すると取引費用を削減できる。 26 ⑦グローバル戦略 • • • • • • • 国際化をいかに進めるか? 組織の拡張方法は一つだけだろうか? パールミュッターの4類型 ①エスノセントリック ②ポリセントリック ③リージョセントリック ④ジオセントリック 27 エスノセントリズム 影響力 自 国 外 国 28 ポリセントリズム 影響力 財務報告のみ 自 国 外 国 29 ジオセントリズム 影響力 権限の分散 自 国 外 国 30 リージョセントリズム 影響力 権限の分散 自 国 外 国 特定地域 31 ⑧マルチドメスティック戦略 • パールミュッターのポリセントリックにほぼ 該当。 • 受入国で独自の経営を行い、財務管理に よって統合する。 • 多国籍企業の子会社の経営者は、その受 入国の国籍を持つ。 • 販売先は、受入国の国内。 32 ⑨トランスナショナル企業 • パールミュッターのジオセントリックに該当。 • 株主は世界各国に分散。 • 多国籍企業の子会社における経営者の国 籍は問わない。 • 本社の取締役も、複数の国の経営者から なる。 • 生産、販売は、世界の最適国で行う。 33 ⑩メタナショナル経営 • 新しい概念。Doz, Santos, Williamson (2001), From Global to Metanational, Harvard Business School Press. • トランスナショナルな活動をする多国籍企 業が、外部知識の「アクセス」を自国のみ ならず世界各国で行なうようになる。 • 例として近いのは「STマイクロエレクトロニ クス」「ノキア」 34 「メタナショナル経営論からみた日 本企業の課題」浅川和宏、2006年 • 企業経営のメタナショナル化に伴い、海外 でアクセスしたナレッジを本社に戻すだけ でなく、現地ならびに第三国においても新 旧ナレッジの融合が行なわれるようになる。 • ナレッジ(知識)のアクセスが全世界で行な われることがより頻繁になり、融合、活用も 世界規模で行われる。 35 浅川(2006)、22ページ 36 Rugman, Alan.(2000) The End of Globalization • 『グローバリゼーションの終焉』 • 多国籍企業365社のうちの9社のみが北 米、欧州、アジアで20~50%の販売シェ ア。 • 320社は、本社のある地元地域での販売 が50%以上。 • 36社は三大地域中の二地域での販売。 37 グローバル化への見方 • 世界が単一の組織として機能する、という 見方 • 世界が複数の地域に分割されている、とい う見方 • 販売、人的資源管理、株式保有、権限委譲、 情報システム、知識、経営資源などの視点 が入れ替わり比較されている。 38
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