経営学特講 第2章 法政大学教授 洞口治夫 1 第2章 戦略論入門 ①戦略と組織 ②企業ドメイン ③事業ドメイン ④戦略の策定 ⑤企業戦略 ⑥事業戦略 ⑦競争優位 ⑧経営資源 ⑨競争戦略論 ⑩資源戦略論(RBV) 2 ①戦略と組織 • 戦略=何をするか。いくつの事業をするか。 • 組織=誰とするか。どのように人を組み合 わせるか。どのようにグループ分けするか。 3 Alfred D. Chandler 『経営戦略と組織』 Strategy and Structure, 1969 4 チャンドラー • 「組織は戦略に従う」 • 「見える手」による競争 (アダム・スミスの「見えざる手」) • 組織能力 5 ②企業ドメイン • ドメインとは「領域」のこと。 • 企業が、自社の事業領域を定義すること。 • その定義は、①株式会社の定款、②設立 目的、③社是・社訓、④会社のCMコピー、 ⑤コーポレート・ブランド、⑥年間の事業方 針、⑦社長・CEOの挨拶、などに現れる。 6 Igor Ansoff イゴー・アンゾフ (1918-2002) Corporate Strategy, 『企業戦略論』, 1965. 7 アンゾフ • 市場浸透戦略 • 部分的無知 • シナジー 8 アンゾフの4分類 製品 現 新 現 市場浸透 製品開発 新 市場開発 多角化 使命(ニーズ) 9 ドメインの定義 会社の事業領域、事業内容を自ら再定義する ことが、企業業績にプラスになることがある。 例。サントリー ウィスキーの山崎。ビールのモルツ。 サントリーホール。ワイナリー。 サントリーフラワーズ。サントリーオープン。 伊右衛門。 10 みなさんなら、サントリーのドメイン を、どう定義しますか? • 酒蔵? 11 ホームページを覗いてみると、 • 利益三分主義・・・鳥居信治郎、お客様、社 会と自社。 • 「人と自然と響きあう」 • 「水と生きるSUNTORY」 • 食品カンパニー、酒類カンパニー、外食・ 開発カンパニー、文化・スポーツ活動 12 ③事業ドメイン • 複数の事業を展開する企業が、各事業分 野で何をするか、を定義する必要が生まれ る。 13 ドメインの定義 レビット「マーケティング近視眼」 • 顧客はドリルが欲しいのか。あるいは、 ドリルであけた穴が欲しいのか。 • ドリルを売るのか、ドリルで空けた穴 を売るのか。 14 左は鉄工用ドリル (左)鉄工用ドリルの穴 右はアルミ用ドリル (右)アルミ用ドリルの穴 http://homepage3.nifty.com/jg3adq/know.htm 15 レビットにならって、 身近な事例を考えてみましょう。 • 自動車を買って手に入れたいものは、輸 送の手段か、「かっこよさ」か。 • マクドナルドで手に入れたいものは、エネ ルギーか、おいしさか、それとも、時間か。 16 さて、 ドメインの定義、といいますが、 • そんなことをしている企業経営者はいるでしょう か? • みなさん、したこと、ありますか? • 教科書を読んでも、違和感があるはず。 • 「こんなこと、したことないのになー」という感想 を持つほうが正しい。 17 しかし、 • ドメインの定義は、誰もしないので、データ を集めようとすると、文書になっている「ミッ ション・ステートメント」、「社是」、「社訓」に なる。 • 「ミッション・ステートメント」とは、会社が、 社会に対して貢献すべき使命のこと。 18 「ドメイン」=事業範囲 「定義」=自らの認識 • と考えてみましょう。 • これならば、すべての企業構成員、経営者、起 業家が、毎日、暗黙のうちに行っている。 • 暗黙の戦略 • 自分が何者か、を認識することは、むずかしい。 • ドメインの定義 =事業範囲に関する自らの認識 19 ドメインの再定義が遅れることから、 なにが生まれてしまうか。 • 「成功体験のある人ほど、それにとらわれて 失敗する」小倉昌男、『経営はロマンだ!』、 日経ビジネス文庫、p.93. • クリステンセン『イノベーションのジレンマ』、 持続的イノベーションと破壊的イノベーショ ン。 • 話は「暗黙の戦略」が共有されて、変化への 抵抗が生まれる。 20 成功をするためには、 絶えず変革=自己革新 を続けなければならない。 21 必要性の認識 • 成功がいつまで続くか、誰も確言できない。 • 変革をいつ開始するかについて、その必要 性を認識できない。 • 必ず、「抵抗勢力」が生まれる。半分は、前 の成功を担った人、半分は、今の安寧のま まで楽をしたい人。後者は、ときに官僚的 に、筋論を通して、何もしない。 • ⇒チャンドラーの「イノベーター」を参照。 22 ドメイン・コンセンサス • ドメイン・コンセンサス=事業領域について の経営側、顧客側の認識の一致。 • 経営内の不一致 (例) • 経営と顧客の不一致 (例) • ある層の顧客と、別の顧客の不一致 (例) 23 コンセンサスを得る方法は? • 新規事業を例にすると、、、 • 全員一致は、ありえない。求めもしない。 • 事業を始めたい人、それを擁護する人が ペアになって始める。成功して、他の人が 認めて、ようやくコンセンサスが得られる。 • 擁護する人=チャンピオン 24 組織のパラダイム変革 • パラダイム=主導的な考え方 • 組織内の一部の人間が、組織に共有され ていたパラダイムを変革していく。 • 少数者による成功例の提示 • 危機感の醸成 • 追随者の出現 • 古いパラダイムにこだわる人を少数派へ 25 製品ライフサイクルの認識は、 事業領域の再定義の基本 • 導入期、成長期、成熟期、衰退期 • 需要の価格弾力性は、硬直的→弾力的 • 成熟期に何をするか。何もしないか。 26 三つの用語 • プライス・コスト・マージン • PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメ ント)・・・縦軸・市場成長率、横軸・市場シェ ア • SWOT分析・・・強み、弱み、機会、脅威 27 ④戦略の策定 • • • • 長期経営計画 年次経営計画 半期目標、四半期目標 プロジェクト・マネジメント=PM • ⇒時間的制約のなかでの目標達成 28 ⑤企業戦略 • • • • • • • 大企業の場合 所有の決定/持ち株会社制度への移行 新規事業分野への進出/撤退 M&A(Merger and Acquisition) 取締役会の構成メンバーの決定 ストックオプションの決定 広告宣伝、本社人事 29 ⑥事業戦略 • • • • • 大企業の事業部の場合 新製品の製造 地域的拡張=国際化 生産性の向上 取引先企業の選定 30 ⑦競争優位 • Competitive Advantagesの訳語 • 企業が市場のなかで、どのような位置を獲 得しているか? 31 Michaeil E. Porter 『競争の戦略』 Competitive Strategy, 1980 32 ポーター • • • • 5 Forces ファイブ・フォース Value Chain 価値連鎖 Cluster クラスター Innovation Offset イノベーション・オフセッ ト 33 経済学の影響 • • • • ゲーム理論=数学の一分野 産業組織論=寡占産業の分析 ミクロ経済学=企業成長のモデル 計量経済学=データ分析 34 ポーターの Five Forces 分析 新規参入業者 競争業者 供給業者 業者間の 買い手 敵対関係 代替品 35 ポーターの価値連鎖 支 援 活 動 企業のインフラストラクチャー 人事・労務管理 技術開発 調達活動 調 達 物 流 製 造 主活動 出 ・ サ 販 マ ー 荷 売 ー ケ 物 テ ビ 流 ィ ス マ ー ジ ン ン グ 36 ⑧経営資源 • Managerial Resourcesの訳語 • 競争優位が明確に定義できない場合に、 企業の内部に存在する資源に注目する。 • 創業初期の企業、中小企業にも有効な視 角。 37 ペンローズ Edith Penrose 『企業成長の理論』 1959年 Managerial Resources 38 ペンローズ • ResourcesとServicesの峻別 • Managerial Resources 経営資源=経営 者の持つ資質 • 企業の内部成長 • 外部での成長(M&A) 39 ⑨競争戦略論 • ポーターの戦略論を中心とした競争戦略 の策定 • 競争の基本類型 • ①コストリーダーシップ • ②差別化(差異化) • ③フォーカス(集中、焦点) 40 ⑩資源戦略論(RBV) • ペンローズをはじめとする一連の研究者の 主張する競争戦略 • Resource Based View • ハメル=ドッズ:コア・コンピテンス • チャンドラー:組織能力 • 自社が市場で何番目に位置するかよりも 自社の能力で何ができるか、を重視する。 41
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