第二回 生物の階層性

生命の科学
2007年度秋学期 金曜 I 講時
同志社女子大学 2007年10月5日
今日の話題
1.
2.
3.
4.
生物の階層性
細胞の構造
遺伝子はどこにあるか?
細胞の増えかたー細胞分裂
色々な生物
分類学の父:カール・フォン・リンネ
ナショナル・ジオグラフィック 2007年6月号
生物の分類
地球上の全生物はどう分類できるか?
リンネ
ヘッケル
コープランド
大分類の問題
ホイタッカー
マーギュリス
生物の大分類
・ 細菌はさらに二つのグループ(真正細菌と古細菌)に大別される
。
・ 真核生物は系統分類学的には古細菌に近い。
・ 真核生物の細胞内に共生している葉緑体・ミトコンドリア(後述)
は 真正細菌に由来する。
生物の大分類
外界との区別
オルガネラ
膜状構造
細胞構造
非膜状構造
非細胞構造
大分類
ゲノム構造
動物界
植物界
菌界
原生生物界
2本鎖DNA
2本鎖DNA
2本鎖DNA
2本鎖DNA
真核生物
2本鎖DNA
2本鎖DNA
原核生物
モネラ界
ウイルス
藍藻
細菌
2本鎖DNA
1本鎖DNA
2本鎖RNA
1本鎖RNA
真核生物と原核生物の対比
・細胞内小器官
・ゲノムDNA
・リボゾーム
・タンパク質
合成阻害剤
・代謝
・細胞骨格
真核生物
原核生物
核・葉緑体・
ミトコンドリアなど
クロマチン構造
染色体(線状分子)
80S
(60S+40S)
シクロヘキシミド
なし(もしくは少数)
好気性
あり
非クロマチン構造
環状分子
70S
(50S+30S)
クロラムフェニコール
エリスロマイシン
嫌気性・好気性
なし
生物の階層性
例(動物)
集団(個体群): 岩田山集団
個体:
ボス猿A
器官系:
循環器系
器官:
肺
組織:
気管支
例(植物)
宝ヶ池集団
タンポポ個体A
花序
花器官
花弁
細胞:
上皮細胞
色素細胞
細胞小器官:
分子:
原子:
ミトコンドリア
ユビキノン
窒素
葉緑体
クロロフィル
炭素
(例1)コムギ
(例2)ヒトの指
生物の階層性
例(動物)
集団(個体群): 岩田山集団
個体:
ボス猿A
器官系:
循環器系
器官:
肺
組織:
気管支
例(植物)
宝ヶ池集団
タンポポ個体A
花序
花器官
花弁
細胞:
上皮細胞
色素細胞
細胞小器官:
分子:
原子:
ミトコンドリア
ユビキノン
窒素
葉緑体
クロロフィル
炭素
細胞説
細胞は全ての生物の構造および機能の単位であ
り、いわば生物体制の一次的要素である。
Schleiden (1838)、Schwann (1839)
1)すべての生物は細胞から構成されている
2)細胞はすでに存在する細胞からのみ生成され
る
3)細胞は生命の最小単位である
多くの生き物は受精卵(一細胞)
から発生する
最初の細胞はいつできた?
細胞の構造
生体膜の構造と役割
・自他の境界を作る
・生化学反応の場
植物細胞と動物細胞の対比
細胞壁
葉緑体
液胞
中心体
植物細胞
ある
ある
ある
ない
動物細胞
ない
ない
ない
ある
分裂様式
細胞板形成
くびれ形成
細胞の増殖
細胞の数が増えるのは「細胞分裂」による
すべての細胞は、細胞から生じた
細胞分裂の際、母親細胞が持つ遺伝情報を正確にコピー
し、娘細胞に伝えなければならない
このコピーの際のエラーが体細胞突然変異の原因の一つ
細胞は細胞から生じる
細胞と遺伝子(概略)
ビデオ

ヒトの細胞に含まれる遺伝子(DNA)についての
概説
遺伝子の所在
ヒト細胞では、核とミトコンドリア
形状
大きさ
コピー数
由来
核
染色体(直鎖DNA)
30億塩基対
2組
両親
ミトコンドリア
環状DNA
1万7千塩基対
1000以上
母親
ゲノムとは?
ある生物をその生物足らしめるのに必須な遺
伝情報
その生物の遺伝子の総和である
1920年にH. Winklerによって配偶子が持つ
染色体の一組として定義された。後にコム
ギの研究を通して木原均(1930年)がある
生物をその生物足らしめるのに必須な遺
伝情報として概念的に定義し直した。通常
二倍体細胞においてはその半数体に含ま
れる遺伝情報を意味する。
ゲノムとは?
半数体ヒトゲノムは約30億塩基対からなり、体細胞は2倍
体であるため約60億塩基対のDNAを核内に持っている。
分裂酵母では3本の染色体DNA上に、大腸菌やミトコンド
リアでは一つの環状DNA上に保持されている。
ゲノムサイズ
Species
HIV type 1
Escherichia coli
Saccharomyces cerevisiae
Schizosaccharomyces pombe
Caenorhabditis elegans
Drosophila melanogaster
Fugu rubripes
Xenops laevis
Gallus gallus
Homo sapiens
Mus musculus
Bos taurus
Arabidopsis thaliana
Oryza sativa
Zea mays
Triticum aestivum
Genome size (bp)
9,750
4,639,221
12,067,280
14,000,000
100,000,000
165,000,000
400,000,000
3,100,000,000
1,200,000,000
3,400,000,000
3,500,000,000
3,700,000,000
100,000,000
400,000,000
5,000,000,000
16,000,000,000
ヒトゲノム
Human chromosomes (G-banded), 2n=2x=44+XY)
付随体
二次狭窄
短腕
動原体
ヒトゲノムについてのホームページ
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/
長腕
染色分体
二つの細胞分裂
体細胞分裂(mitosis):
・体細胞を生成する分裂
・娘細胞は全く同一の染色体構成
・1回のDNA複製と1回の分裂
・1個の細胞から2つの娘細胞
減数分裂(meiosis):
・生殖細胞を生成する分裂
・娘細胞は異なった染色体構成
・1回のDNA複製と2回の分裂
・1個の細胞から4つの娘細胞
細胞周期(cell cycle)
G1期(第1間期):約10時間
細胞周期中で最も長い期間。DNA合成に
必要なタンパク質が合成される。G1/S
check pointを通過すると、S期への進行が
決定される。
G2/M check point
S期(DNA Synthesis phase):約9時間
DNAの複製が行われる期間。ヒストン合成
とリンク。細胞は二倍体(2n)から四倍体(4n)
に変化。
G2期(第2間期):約4時間
有糸分裂の準備期間。染色質の凝縮とパ
ッキングが起こる。G2/M check pointを通
過すると、M期への進行が決定される。
G1/S check point M期(有糸分裂 Mitosis):約1時間
有糸分裂の開始から終了までの期間。
体細胞分裂
1.前期
染色体の凝縮
2.前中期
核膜の崩壊
3.中期
紡錘体の形成、赤道面への染色体
の配置
4.後期
姉妹染色分体の分離
5.終期
核膜の再構築、染色体の脱凝縮
6.細胞質分裂
細胞質の分配
細胞と遺伝子(概略)
体細胞分裂の模式図
体細胞分裂(タマネギ)
体細胞分裂
ヒト培養細胞の細胞分裂
(クイックタイムムービー)
体細胞分裂(ソラマメ)
前期
中期
後期
終期
クイズ
出席確認用紙(マークシート)を利用して、以下の問いに答えてください。
(1)植物細胞内でDNAをもつのは核とミトコンドリアだけである。
はい→1
いいえ→2
(2)DNAに書かれている遺伝暗号は何種類の文字で構成されている?
(3)ヒトの染色体は46本である。
はい→1
いいえ→2
(4)ヒトのミトコンドリアは母親からしか子に伝わらない。
はい→1
いいえ→2
(5)高等な生物ほどゲノムサイズは大きい。
はい→1
いいえ→2
クイズの答え
(1)植物細胞内でDNAをもつのは核とミトコンドリアだけである。(選択肢2)
いいえ。葉緑体もDNAを持っています。
(2)DNAに書かれている遺伝暗号は何種類の文字で構成されている?(選択肢4)
4種類(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)です。
(3)ヒトの染色体は46本である。(選択肢1)
はい。女性は22+XX、男性は22+XYです。
(4)ヒトのミトコンドリアは母親からしか子に伝わらない。(選択肢1)
はい。したがってミトコンドリアに異常による遺伝病(ミトコンドリア脳筋症)は母
親から遺伝します。
(5)高等な生物ほどゲノムサイズは大きい。(選択肢2)
いいえ。原核生物と真核生物とを比べると原核生物ははるかに小さいゲノムを
持ちます。しかし、脊椎動物では両生類の一部が最大のゲノムを持ち、霊長類よりゲ
ノムサイズが大きいです。