肢体不自由児が定時排尿で,排尿し た後にビックマックを押して教員に伝 えることができるための支援 1 指導目標 【長期目標】 排尿後ビックマックを押して教員に伝えること ができる。 【短期目標】 定時排尿で,排尿した後にビックマックを押し て教員に伝えることができる。 2 標的行動 定時排尿で,排尿した後にビックマックを押 して教員に伝えることができる。 3 現状のABC分析 声がでる(↑) 授業後 おもしろい (↑) トイレット チェアー 尿意がない 排尿前 目の前に ビックマック することがない 教員はいない ビック マックを 押す 教員が来る(↑) 教員の「出た?」 の声 (↑) 教員に怒られる (?) 感触が気持ちいい (↑) 教室に戻れない (?) 4 4 解決策のABC分析 排尿予測時刻(定時)に 声が出る(↑) トイレット チェアー 排尿後 手を伸ばして届 く位置にビック マック 教員はいない トイレの机上に絵本あり 教員が来る(↑) ビック マックを 押す ベルが鳴る(↑) 教員に誉められる (↑) 感触が気持ちいい (↑) 教室に戻れる(↑) 5 5 方法 【対象児】 P児(支援学校小学部3年男児) 知的障害 肢体不自由 ・Pさんは,肢体不自由を併せもっているため,教員がトイレま で介助して移動し,危険防止のため,排泄をするときはトイ レットチェアーに座っている。 ・授業が終わるごとにトイレットチェアーに座るが,排尿する時と しない時があり,排尿の有無に関わらず,トイレットチェアーの すぐ右横にあるホワイトボードをたたく場面が見られる。 6 方法 【指導場面】 トイレ 【般化場面】 立位での排尿後にビックマックを押して教員に伝え る。 【教材】 トイレットチェアー,ビックマック トイレの写真カード,絵本,ハンドベル 7 手続き(1) 【ベースライン】教員1名が行う。(5日間) (1)トイレットチェアーのすぐ右横にビックマックを設置しておく。 (2)休み時間ごとにトイレへ行き,トイレットチェアーに座る支援を行う。 (3)座ったら,教員はその場を離れる。 (4)Pさんがビックマックを押したら,排尿の確認に行く。 (5)排尿ができていたらことばでほめ,できていなかったら排尿するように伝える。 【指導1:即時プロンプト指導】教員2名で行う。(1ヶ月) (1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを設置して おく。 [写真1参照] (2)朝の排尿時刻から排尿時刻を予測してタイマーをセットし,タイマーが鳴ったら,教員A はトイレの写真カードを見せてトイレに行くことをPさんに伝え,トイレットチェアーに座る支 援を行う。(紙パンツに排尿している場合は,紙パンツを履き替え,次のタイマーをセッ トし,教室へ戻るようにする。) (3)教員Aは,Pさんの近くに座って待機する。排尿できたら,すぐにビックマックを指さして 押すように伝える。排尿していない時にビックマックを押そうとしたら,押す前に手で制 止する。 (4)教室にいる教員Bは,ビックマックの声が聞こえたら,すぐに無言でトイレへ確認に行く。 ●排尿できている場合は,ハンドベルを鳴らして賞賛する。 ●排尿できていない場合は,無言でその場から立ち去る。 (5)排尿後,次の排尿時刻をタイマーでセットする。 8 手続き(2) 【指導2】教員1名で行う。(8日間) (1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを 設置しておく。 (2)朝の排尿時刻から排尿時刻を予測してタイマーをセットし,タイマーが鳴ったら, 教員Aはトイレの写真カードを見せてトイレに行くことをPさんに伝え,トイレット チェアーに座る支援を行う。(紙パンツに排尿している場合は,紙パンツを履き 替え,次のタイマーをセットし,教室へ戻るようにする。) (3)教員Aは教室に戻り,Pさんからの報告があるのを待つ。ビックマックの声が聞 こえたら,すぐに無言でトイレへ確認に行く。 ●排尿できている場合は,ハンドベルを鳴らして賞賛する。 ●排尿できていない場合は,無言でその場から立ち去る。 (4)排尿後,次の排尿時刻をタイマーでセットする。 【指導3】教員1名で行う。(3日間) (1)トイレットチェアーに座った時に,手を伸ばして届く位置(右側)にビックマックを 設置しておく。机には,Pさんが好きな本を着けておく。 [写真2参照] (2)~(4)【指導2】と同様 9 写真 (写真1:ビックマックの位置) (写真2:机上に本を設置) 10 記録方法 P児の行動を記録し,正反応率を出す。 ・記録項目 ●正反応:排尿後にビックマックを押して伝えられた時(回)/1日 排尿後に押した・・・○ ●誤反応:排尿前にビックマックを押した,または,排尿後にビックマックを 押さなかった時(回)/1日 排尿前に押した・・・× 排尿後に押さなかった・・・△ *同時に,トイレットチェアーに座った時刻と排尿時刻,紙パンツに排尿した時 刻を記録する。 *1回の指導場面で,誤反応後正反応が見られた時は,ビックマックを押した 時にたまたま排尿していた場合もあるため,その指導場面では誤反応だっ たと記録する。 11 達成基準・中止基準 正反応率= 排尿後にビックマックを押して伝えれた時(回) ×100 1日の指導場面(回) 達成基準 正反応率が100%で3日連続 中止基準 正反応率が0%で3日連続 12 結果(1) 図 排尿後にビックマックを押して伝えられた割合 13 結果(2) 指導1を始めてから2週間経った頃に誤反応が減ってき はじめた。1ヶ月経った頃には,ほとんど見られなくなった。 指導2では,100%の確率で報告できる日も見られたが, その日の体調や気分によって,集中が持続しにくく,排 尿するまで待てずに誤反応が見られる時があった。 指導3では,指導2に加えてトイレットチェアーの机上に 絵本を設置しただけであるが,排尿までに5分程度か かる場合の暇つぶしができ,排尿前にビックマックを押 す行動が見られず,正反応が続いた。 100%の確率で報告できる日が出てきた頃に冬休みに 入ってしまったが,冬休み明けも変わらず確実に報告 することができた。 14 考察(1) 1ヶ月にわたる【指導1:即時プロンプト指 導】が有効であった。 ・ビックマックを「排尿後に押す」という理解に 繋がった。 環境要因(1) ・ 右腕の長さと,トイレットチェアーからビック マックまでの距離を同じ(45cm)にする。 ビックマックが気にならず,排尿に集中できる。 15 考察(2) 環境要因(2) ・トイレットチェアーの机上に好きな本を置く。 排尿するまでの手持ち無沙汰を解消。 今後の課題 ・現段階では尿意が全くない時の指導については難しく, 定時排尿を継続していくことが必要。 ・男児用小便器を使用して,立位での排尿を学習中な ので,その場面にも般化していけるようにしたい。 16
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