補液中に除水できない量 - 医療法人社団スマイル

I-HDF施行前後における透析中の血圧変化率の評価
寺尾 佳介1)沖永 鉄治1)亀田 康範1)福富 愛1)永易 由香1)松尾
晴美1)坂田 良子1)平林 晃1)高杉 敬久2)賴岡 德在1)3)
1):医療法人社団スマイル 広島ベイクリニック
2):医療法人社団スマイル 博愛クリニック
3):一般社団法人 広島腎臓機構
緒 言
血液透析治療における合併症の一つとして透析時
低血圧が挙げられる。これは除水速度とplasma refilling
のバランスが保持できなくなり、血液循環量が低下して
しまうことが原因の一つであると考えられる。
間歇補液血液透析濾過(以下、I-HDF)は、間歇的な
補液を繰り返すことにより一時的に体内の血液循環量
を増加させ、透析中の血圧低下を抑えることが期待で
きる。
I-HDFの除水イメージ
0
0.0
30
治療時間(min)
60
90 120 150
180
補液
210
240
I-HDF
補液
均等除水
補液
-1.0
補液
除
水
量
(L)
-2.0
補液
補液
補液
例)
除水量:2.4L
間歇補液量:200mL/30min
-3.0
I-HDF時の除水速度
補液量と補液中に除水できない量を除水量に自動加算
補液時間
補液速度
A:補液量
[mL/min]
B:補液中に除水できない量
補液速度
①:設定除水速度(均等割り)
A
②:補液プログラム動作中の除水速度
補液後の除水速度は補液量と補液中に除水できない
量を加味した除水速度となる。
初回補液開始
時間
①
除水速度
補液間隔
B
除水時間 [min]
②
A
[mL/min]
赤色:任意に設定できる項目
目 的
透析時低血圧を伴う患者に対し
I-HDFを施行することで、透析中に
おける血圧低下が改善するか検討
する。
対 象
当院外来の血液透析患者7名。
(週3回各4時間)
男/女(人)
:5/2
年齢(才)
:64.4±20.8
透析歴(ヶ月)
:43.5±35.0
ドライウェイト(kg)
:59.1±13.8
血流量(ml/min)
:227.1±20.5
(Mean±SD)
方 法
① 血液透析患者7名を対象に以下の条件で
I-HDFを施行し、I-HDF施行前、施行後(各3回
分)の除水量と透析中の血圧値を1時間毎に記
録した。
② ①の血圧値から透析開始時の血圧値を
基準とし、各時間における血圧の変化率を算出
し比較した。
I-HDF施行条件
•
•
•
•
•
補液速度150ml/min
補液量(1回)200ml
補液回数7回
補液間隔30分
初回補液開始時間30分
結 果
透析時における血圧変化率
n=7
-20
-15
%
-10
-5
-8.7
-4.2
-5.8
-3.1
-4.0
-5.6 -4.7
-3.8
3時間後
4時間後
0
1時間後
2時間後
HD
I-HDF
I-HDF施行前に比べ施行後では平均除水量がそれぞれ2.64L、2.70Lとほぼ
同量であったが、透析中における血圧の変化率は、I-HDF施行前に比べ平均
で4.9%減少し、最も効果の得た患者では12.7%減少した。
考 察
今回の結果では、I-HDFを施行することにより透
析中における血圧低下の変化率を軽減することが
できた。これは、透析中に間歇的に補液を繰り返し
行うことで、体内の血液循環量減少の軽減による
ものだと考えられる。
今後は、個々の患者に即した施行条件を選択し、
透析治療を行えるように更なる検討が必要である。
結 語
I-HDFを施行することにより、透析後半
に最も血圧低下の変化率を低く抑えるこ
とができた。このことより、I-HDFは、透析
中における血圧低下を予防できる可能性
がある。