TR-3000MA®の実血液流量モニタリングシステムの信頼性 寺尾 佳介1)沖永 鉄治1)福富 愛1)永易 由香1)松尾 晴美1) 藤井 恵子1)坂田 良子1)平林 晃1)高杉 敬久2)賴岡 德在1) 3) 1):医療法人社団スマイル 広島ベイクリニック 2):医療法人社団スマイル 博愛クリニック 3):一般社団法人 広島腎臓機構 緒 言 透析治療において血液流量は透析効率を決定する 因子の一つである。しかし、VAの状態や不適切な穿 刺針の使用により、血液ポンプの設定値と実血液流 量に乖離を生じることが知られている。TR-3000MA® は透析治療中の実血液流量を連続的にモニタリング することが可能であり、適正な透析効率を得るうえで 有用なコンソールである。 しかし我々は、TR-3000MA®でモニタリング中の実 血液流量値が経時的に変化する症例を経験した。 目 的 透析治療中にTR-3000MA®で得 られる実血液流量値の信頼性を、 幾つかの条件の下、超音波流量計 透析モニタHD02®を用い検証する。 測定原理 透析中のダイアライザ入口圧(以下、PD圧)は血液 ポンプのしごきにより、振幅を繰り返す。この振幅は、 PD圧および動脈圧(以下、脱血圧)によって大きさが 変化する。 PD圧振幅法は、この振幅(PD圧の最高値-最低値) の大きさの変化を連続的に監視し、PD圧、脱血圧、 振幅の関係より、脱血圧および実血液流量を求め る。 Aチャンバ上部から2cm下 を基準液面とする。 透析中のダイアライザ入口圧 は、血液ポンプのしごきにより 振幅を繰り返す。 PD圧振幅法=PD圧の最高値-PD圧の最低値 PD圧、脱血圧、振幅の関係より、脱血圧 および実血液流量を求める。 対 象 当院外来の血液透析患者13名。 (週3回各4時間) 男/女(人) :6/7 年齢(才) :65.5±7.1 透析歴(ヶ月) :114.4±63.5 ドライウェイト(kg) :56.0±5.2 Ht(%) :36.2±3.5 (Mean±SD) 方 法 ①血液ポンプの流量設定を100、150、200、250ml/min に変更した。 ②Aチャンバ液面を基準液面(0cm)から+2~-3cm の間で変更した。 ③上記の各条件において透析モニタHD02®を使用し、 回路内の血液流量を測定した。 ④③で得られた値とTR-3000MA®で得られた実血液 流量値を比較し、その誤差を算出した。 結 果 ① n=17 300 250 200 ml/min 150 100 50 +2 +1 0 TR-3000MA® -1 -2 HD02 図1 TR-3000MA®とHD02®の血液流量値の比較 -3 結 果 ② 血液ポンプ流量 100ml/min 10% 血液ポンプ流量 150ml/min n=17 *;p<0.05 10% 5% 5% 0% 0% -5% -5% * +2 +1 *;p<0.05 * * -10% n=17 * -10% 0 -1 -2 -3 +2 +1 0 -1 -2 図2.実血液流量モニタリングシステム(TR-3000MA®)の誤差割合 -3 結 果 ③ 血液ポンプ流量 200ml/min 10% 血液ポンプ流量 250ml/min n=17 *;p<0.05 10.0% * 5.0% n=17 *;p<0.05 * * 5% 0.0% -5.0% 0% -10.0% -5% * * -10% +2 +1 * -15.0% * -20.0% 0 -1 -2 -3 +2 +1 0 -1 -2 図2.実血液流量モニタリングシステム(TR-3000MA®)の誤差割合 -3 考 察 ① 透析モニタHD02®を用い血液流量を測定 することで、液面の高さによりTR-3000MA® で得られる実血液流量に誤差が生じることを 確認した。透析中、除水に伴う血液濃縮、ま た脱血不良や患者の体位による動脈・静脈 圧の変動により、チャンバ液面の高さが変動 することはしばしば経験する。 考 察 ② 血液ポンプ流量100、150ml/min などの低流量では数%の誤差は問 題にならないが、血液ポンプ流量 200ml/minを超える高流量では 数%の誤差が血液流量の過小評 価や過大評価に繋がると考えら れる。 結 語 TR-3000MA®で得られる実血液流量値はAチャンバ 液面の高さを基準液面の高さに合わせることでほぼ正 確な値を得ることができた。 Aチャンバ液面の高さが基準液面から外れるとTR3000MA®で得られる実血液流量値に誤差が生じ、血 液ポンプが高流量になるほどその誤差に拡がりを認め た。このため、実血液流量を適正に得る条件の下、透 析治療を行う事が重要である。 中四国臨床工学会 COI開示 筆頭発表者名: 寺尾 佳介 演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはありません
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