と「数学的な考え方」

APEC-KHON KAEN International Symposium
Innovative Teaching Mathematics Through Lesson Study Ⅱ
How to develop
Student’s Mathematical Thinking
in Classroom
SHIMIZU Shizumi
Doctorial Program in School Education,
16th. Aug. 2007.
Graduate School of Comprehensive Human Sciences,
University of Tsukuba
1 「数学的に考えること」と「数学的な考え方」
2 子どもたちの「数学的な考え方」を
授業で育成すること
3 数学的に考えること
4 授業についての検討
5 数学的な考え方を育成するための授業改善
1 「数学的に考えること」と「数学的な考え方」
Mathematical activity
Thinking Mathematically
Mathematical Thinking
(1) 中島健三氏の立場
・1958年改訂小学校学習指導要領に
「数学的な考え方」を導入
「算数・数学にふさわしい創造的活動」
=「数学的に考えること」
○ 1958年改訂小学校学習指導要領、算数科目標
における「数学的な考え方の位置づけ」
目標では
◇ 生み出す対象としての数学的な考え方
1.数量や図形に関する基礎的な概念や原理を理解させ,
より進んだ数学的な考え方や処理のしかたを生み出すこ
とができるようにする。
◇ 用いる対象としての数学的な考え方
5.数学的な考え方や処理のしかたを,進んで日常の生活
に生かす態度を伸ばす。
*目標5は,科学的な生活態度を育成することの必要
を示したものである。
評価の観点としての数学的な考え方
(1970年代以降)
→ 数学的な考え方の「育成」
→ 「育成」の内実が不明確
(2) 片桐重男氏の立場
・1950年代後半から今日まで
「数学的な考え方」の分析的研究に従事
「数学的な考え方」
=「数学的に考えること」を支える
アイデア(着想)、方法(及び態度)
2 子どもたちの「数学的な考え方」を
授業で育成すること
(1) 授業では、その中核に子どもたちの主体的な活
動があるべきである。それは、かれらにとって「創
造的な活動」である。
・・・授業は、子どもたちの問題解決で展開
する。教師はそれを導く。
(2) 「創造的な活動」(問題解決)が、子どもたちにとっ
ても教師にとっても意味のあるものにならなくては
ならない。
・・・その活動を支える要素を分析し、それ
らを子どもたちが獲得する必要がある。
(3) したがって、授業における「数学的な考え方」
の育成を考えるには、
・「創造的な活動」(問題解決)の文脈での子ど
もたちの主体的な営みを実現すること
・それらを支える「アイデア(着想)、方法(及び
態度)」を明らかにし身につけること
・具体的な数学的内容に即して展開すること
これらが相互にかかわり合う必要がある。
3 数学的に考えること
(1) 子どもたちの主体的な活動
・・・他人事ではなく自分のこととして取り組む
(2) 活動の動機(解決すべき問題の文脈)・局面
・・・活動の諸局面に応じ適切に取り組む
活動の動機(解決すべき問題の文脈)・局面
・生活上の必要、身のまわりの事象の説明
→ 活用(身のまわりの事象につて、数学
を用いて考察したり判断したりすること)
・知的好奇心、数学の美しさの追求
→ 創造(日常生活での経験や既習の数学
との関係で、創造的、発展的に考え、新
たなことを生み出すこと)
・活用や創造の支持と確かさと豊かさの追求
→ 説明(「活用」と「創造」の二つの局面は
「説明」を抜きにしてはあり得ない。
「説明」は、自ら納得したり他者を説得した
り、伝え合い深め合い学習の成果を共有し
よりよいものに高める際に不可欠である。)
4 授業についての検討
第5学年 多角形の角の和
指導計画
時
目標
・三角形の3つ
の角の大きさ
についてきま
りを見つけ、和
が 180° に な
1 ることを理解
する。
問題(活動)
評価の視点
【問題】
【関】三角形の3つの角の
三 角 形 の 3 つ の 角 大きさの和について関心
の大きさについて、い を持つ。(観察)
ろ い ろ な 方 法 で 調 べ 【考】三角形の内角の和
ましょう。
が180°であることの根拠
を明らかにすることができ
[活動]
形も大きさも同じ三 る。(発表・ノート)
角形の敷き詰め活動 【知】三角形の内角の和
を通して、三角形の3 が180°であることを理解
つの角の大きさにつ す る 。 ( 発 表 ・ ノ ー ト ・ 観
いてきまりをみつける。察)
時
目標
問題(活動)
評価の視点
・三角形の内 【問題】
【考・表】三角形の内角の
角 の 和 の き 三 角 形 の 3 つ の 和が180°であることを利
まりを適用し、角 の 和 が 180° で 用して、角の大きさを考え
いろいろな問 あることを利用して、る こ と が で き る 。 ( 発 表 ・
題 を と く こ と 角についての問題 シート)
ができる。
を解こう。
2
[活動]
三角形の内角の
和のきまりを使って、
未知の角の大きさ
を求める。
時
目標
問題(活動)
評価の視点
・三角形の内 【問題】
【考】四角形の内角の和の
角 の 和 の 決 四 角 形 の 4 つ の 求め方を考えることができ
まりを適用し、角の大きさの和の る。(発表・ノート)
四 角 形 の 内 求め方を考えよう。 【知】三角形の内角の和の
3 角の和を求
きまりを用いて四角形の
[活動]
本 めることがで
内角の和360°であること
三角形の内角の
時 きる。
和のきまりを使って、を理解する。(シート・ノー
ト)
四角形の内角の和
を求める。
時
目標
問題(活動)
評価の視点
・三角形の内 【問題】
【考 ・表 】三角形の
角 の 和 の き (基礎・基本コース)
内角の和のきまり
まりを適用し、 三角形の和をもとにして、を 適 用 し 、 多 角 形
五 角 形 な ど 五角形や六角形などの角 の内角の和を考え
の 多 角 形 の の和の求め方を考えよう。ることができる。
内角の和に
(発表・ノート)
(発展コース)
ついて求める
4 ことができる。 工夫して、 五角形や六
角形の角の和の求め方を
考えよう。
[活動]
多角形を三角形に分割
することにより、内角の和
を求める。
目標
三角形の3つの角の大きさの和についてのきまりを
適用して、四角形の内角の和を求めることができる。
問題と活動
【問題】 四角形の4つの角の大きさの和の求め方を
考えよう。
[活動] 三角形の内角の和のきまりを使って、四角形
の内角の和を求める。
評価の観点:
【考】 四角形の内角の和の求め方を考えることがで
きる。(発表・ノート)
【知】 三角形の内角の和のきまりを用いて四角形の
内角の和360°であることを理解する。
(シート・ノート)
まとめ
○ この四角形の四つの角の和は、分度器で角の大きさ
を測ったり、一つの頂点にほかの三つの角を集めたりす
ると360°になりそうだ。ほかの四角形についても調べな
くてはいけない。(類推;予想・推測の構成→立証・確証)
○ 四角形の四つの角の和は、対角線で二つの三角形
に分けると、三角形の三つの角の和が180°であること
をもとにして、180°×2=360°だから、四角形の四つの
角の和は、 360°になる。(演繹;四角形であればその形
に依存しない→一般性・立証・確証)
この考え方をもとにすると、どんな四角形でも四つの角
の和が360°になることが説明できる。
○ 「四角形の四つの角の和は、どんな四角形で
も同じ大きさで、360°である。」ことがわかった。
○ 同じようにすれば、五角形や六角形について
もできそうだ。(類推、一般化、関数的な考え)
A さん
【見通し】
三角形の角の和は180°だっ
たけど四角形の角の和は360°
だと思う。
三つのが180°だったら四つ
の角だったら1つ角が増えるか
ら360°だと思います。
きまりを見つければ三角形の
ように和をみつけられると思い
ます。
結果:予想
結果:根拠
方法:類推
【自力解決】
三角形の半分が90°だか
ら180°だったら180°+180°
をすると四角形の和をみつ
けれると思います。
【友だちの考え】
ななめにきると三角形にな
るから三角形と同じようにす
れば分かりやすい。
(けんやさん)
やぶった角をあわせたら
360°になるから、四角形の
和は360°になります。
(まことさん・あやかさん)
【まとめ】
三角形の角の和は180°
四角形の角の和は360°
【振り返り】
今日分かったことは四角形の角の和がわかりました。
三角形の角の二倍だったことが分かりました。
けいごさんとゆうやさんのいった角度をはかったら360°
になることが分かりました。
まことさんとあやかさんの意見もすごいと思いました。
どこかというとやぶった角度あわせたら360°になった
こともすごいなぁーと思いました。
けんやさんも対角線を使ったところもすごいなぁーと思
いました。
B さん
【見通し】
三角形は180°。じゃあ四角形は360°だと思う。なぜな
ら四角形は四つも辺があるからその分に角も大きくなると
思いからです。
もう一つは四角形をななめに切ると三角形が二つになる
から180×2=360になるからです。
【振り返り】
今日は四角形の勉強をした。まさか自分の予想が当た
るなって思わなかった。とてつもなくかん単でした。
五角形の求め方はまた対角線を使います。かん単です。
三角形と四角形に分ければいいと思います。何角形でも、
その前のものと今やっているのに対角線をひけばいいで
す。
C さん
四角形の角の和は360°になることは分かっていたけ
ど、説明するともっと分かった。五角形の角は540°と分
かっているけど説明できないとなっとくしてもらえないか
ら、説明をがんばりたいです。
対角線を1本ひくと、三角形が2つあるから、180°が
2つで360°になることが分かりました。この考えに初め
は、対角線ひいてもいみないと思っていました。分かりや
すい説明だったので、1発で分かりました。
どの人の説明も分かりやすかったです。分度器ではか
るやり方とちぎって考えるやり方と長方形のやり方でしま
した。
黒板に出た考えで新しい考えだったのは1つだけでした。
5 数学的な考え方を育成するための
授業改善
(1) 数学的に考えることの習慣化
・・・問題解決的な活動
(2) 子どもの内面を顕在化させるための工夫
・・・思考の跡を振り返り、その過程でのできご
と及び成果と課題について、整理し的確に話し
たり記述したりすること
(3) 数学的に考えたり問題解決をおこなったりした
こと(「学習」)による成果を的確にとらえること
・・・無意識的か意識的かにかかわらず、数
学的に考えることや数学的な考え方から
みて意味のあることを顕在化させ、学習の
成果として明らかにする。
一般に、学習の成果が数学的な事実に
偏りがちである。
(4) 問題設定についての二つの適切性
・授業のねらいにふさわしいか
・問題設定にふさわしい結果(答え)を
導いているか
・・・一貫性・整合性
(5) 問題設定とその解決の結果
・・・問題の持つ特性への配慮
・・・自己増殖性
(self-creating aspect)への着目
(6) 問題解決や数学的に考えること(数学的活
動)への挑戦、自信、効力感をはぐくむ
・数学への知的好奇心
・頑張ればできることの体験 → 自信
(7) 協働による創発
→ 日本のことわざ
「三人よれれば文殊の知恵」
・学び合い高め合う心
・思いやり・・・ communication mind