仮想ブロードキャストリンクを利用した 片方向通信路の透過的経路制御 藤枝 俊輔(慶應義塾大学) [email protected] 概要 • 既存の経路制御技術は通信媒体の双方 向性を前提としている • 片方向の通信路をインターネットで利用す る場合に生じる経路制御の問題を解決 • 片方向通信路上に仮想のブロードキャスト リンクを構築し、既存の経路制御プロトコ ルがそのまま動作する環境を提供 片方向通信路 • 衛星回線 • CATV網 片方向通信路 Uni-directional Link (UDL) 双方向回線を用いた通信路 Bi-directional Link(BDL) 片方向通信路の利用 • インターネットのトラフィック傾向 – サーバからクライアントへ • www • ftp – トラフィック全体にも偏りがある ルータ ルータ ルータ ルータ 片方向通信路の利用 • 衛星回線 – 広域性、同報性 • CATV綱 – 既に設置された通信路の有効利用 Feeder Receiver ルータ ルータ UDL ルータ ルータ UDLを含むネットワーク • 少数のFeederと多数のReceiverが接続するの が一般的 • Receiverは外部への送信にBDLを利用する UDL ルータ ルータ ルータ ルータ Receiver Receiver BDL Receiver Feeder Internet UDLを含むネットワークにおける 経路制御の問題 • 動的な経路制御プロトコルが正しく動作しない – RIP – OSPF • ReceiverがUDL上の終点IPアドレスに到達で きない – ICMPエコー要求を利用して、FeederからReceiver へ到達性を確認できない RIPを動作させた場合 • ルータAが隣接ルータBを経由した経路を 利用するためには、事前にルータBから経 路情報を受け取る必要がある • UDLではFeederはReceiverからの経路情 報を受け取れない Router B (Receiver) ルータ ルータ 経路情報 UDL Router A (Feeder) ルータ ルータ OSPFを動作させた場合 • ルータ間でコネクションを確立してから、その 隣接ルータを経由した経路を使用する • コネクションの確立には、ルータ間で互いに HELLOメッセージを受け取る必要がある Router B (Receiver) ルータ ルータ HELLO Router A (Feeder) UDL ルータ HELLO ルータ OSPFを動作させた場合 • ルータ間でコネクションを確立してから、その 隣接ルータを経由した経路を使用する • コネクションの確立には、ルータ間で互いに HELLOメッセージを受け取る必要がある Router B (Receiver) ルータ ルータ HELLO Router A (Feeder) UDL ルータ コネクションが 確立されない ルータ ReceiverからUDL上の 終点IPアドレスへの到達性 • Receiverは外部への送信にBDLを利用 • 直接配送は間接配送よりも優先される • UDL上の終点IPアドレスにデータを送信 する場合、BDLを利用できない。 ルータ ルータ Receiver Feeder/Receiver Internet Internet UDLを含むネットワークにおける 動的な経路制御の手法 • 経路制御プロトコルの改変 – RIP,OSPF – UDLに接続するノードと経路情報を交換する全て のルータで変更されたプロトコルが動作する必要 • トンネルを用いた解決法 – ReceiverからFeederにトンネルを設置 – 最新の提案がIETFで議論されている (draft-ietf-udlr-lltunnel-01.txt) – 実装が容易 – ReceiverとFeederだけに変更を加えればよい 全体図 UDLに送信する パケットを トンネリング ブロードキャストエミュレーション UDL 脱カプセル化し データリンク パケットを ルータ ルータ Receiver Receiver BDL ルータ Receiver UDLに送信 Internet DTCPを用いて、 トンネルを自動設定 ルータ Feeder 仮想ブロードキャストリンク • UDL上でブロードキャストリンクをエミュ レーション • 現在の経路制御プロトコルがそのまま動 作する環境を提供 • ReceiverからUDL上の終点IPアドレスへ の到達性を実現 Default Feeder • 既存の提案 – ReceiverからのBroadcast、Multicast、 他のReceiverへのトンネル先 – 各Feederへの送信は個別にトンネルを使用 • 本設計 – Feederへの送信を含め、UDLへの送信全てを Default Feederにトンネリング 既存の提案でのトンネリング UDL ルータ ルータ ルータ Receiver Receiver BDL Internet Feeder ルータ Feeder ルータ Default Feeder 本機構でのトンネリング UDL ルータ ルータ ルータ Receiver Receiver BDL Internet Feeder ルータ Feeder ルータ Default Feeder ReceiverごとにDefault Feederを選択 Default FeederはUDLに1つである必要はない。 Receiverはそれぞれ個別にDefault Feederを選択する UDL ルータ ルータ ルータ Receiver Receiver BDL Internet Feeder ルータ Default Feeder ルータ Default Feeder 想定するネットワーク環境 • Receiverには効率的にパケットを送信でき るFeederがある – 同じ管理ドメイン内のFeederを利用 UDL ルータ Feeder ルータ ルータ ルータ Feeder Receiver Default Feeder BDL Internet Internet 性能の比較 • それぞれのFeederにトンネルを設定する場 合、Feederがどのくらいの数までなら規模 性を保てるのか • Receiverからのパケットを中継するFeeder の負荷はどれくらいのものか 詳細な性能の測定は今後の課題 データリンクトンネリング • データリンクアドレス – MACアドレスを持つUDLインタフェースが広 まりつつある • データリンクヘッダ – FeederがReceiverからのパケットをUDLに送 信する場合 宛先 :宛先UDLインタフェースのMACアドレス 送信元:ReceiverのUDLインタフェースのMACアドレス – Receiverであらかじめデータリンクパケットを 作成し、Feederでそれをそのまま送信する Receiverのカプセル化 • UDLに送信するデータリンクパケット DL_hdr IP_hdr Data • GREヘッダを付加 – Generic Routing Encapsulation – 拡張性 GRE_hdr DL_hdr IP_hdr Data • トンネル先に向けカプセル化 – Destination = トンネル先IPアドレス – Protocol = GRE IP_hdr GRE_hdr DL_hdr IP_hdr Data Feederの脱カプセル化 • プロトコルフィールドがGREのパケットを 脱カプセル化 IP_hdr GRE_hdr DL_hdr IP_hdr Data DL_hdr IP_hdr Data ブロードキャストエミュレーション • 脱カプセル化したデータリンクパケットを 元のIPパケットの宛先ごとに処理を行う Default Feeder自身 UDLインタフェースの UDL上のほかのノード UDLインタフェース からそのまま送信 ブロードキャストアドレス UDLインタフェース からそのまま送信 マルチキャストアドレス UDLインタフェース からそのまま送信 input queueに追加 パケットのコピーが loopbackに渡される マルチキャストグループに入っている場合、 パケットのコピーをloopbackに渡す Feederの実装 • 脱カプセル化、ブロードキャストエミュレー ション – ip_input()内に実装 • トンネリング機構はプロトコルフィールドを参照 • 移植性 – 既存の提案ではデータリンク層に実装すべき とされていた • UDLへの送信ルーチンを変更 – データリンクヘッダを付加しない • データリンクヘッダを付加せずに送信するパケット には、mbufのM_UDLRフラグをONにする トンネルの自動設定 • トンネルの設定には、Default FeederのBDL インタフェースのIPアドレスが必要 • DTCP(Dynamic Tunneling Control Protocol) がIETFで提案されている。 – Feederは一定時間ごとにBDLインタフェースのIP アドレスをブロードキャスト(HELLOメッセージ) DTCPの動作 BDLのIPをbroadcast UDL ルータ ルータ ルータ Receiver Receiver BDL Internet トンネルを設定 Feeder ルータ Feeder ルータ Default Feeder 実験環境 • Ethernetを用いたLAN上でのシミュレーション •経路制御プロトコルはRIP2とOSPFv2 検証結果 • 経路制御プロトコルにより、UDLを使用し た経路を含む経路表が作成される – RIP2,OSPFv2の両方で、UDLを使用した経路を 含む経路表が作成された • Receiverから他のUDL上の終点IPアドレ スへ到達性がある – Pingプログラムを用いて以下の到達性を確認 • FeederからReceiver • ReceiverからReceiver • Receiverからのブロードキャスト まとめ • 本機構の導入により、UDLを含むネット ワ ークで既存の経路制御プロトコルが正 しく動作することを確認した • これまで到達できなかったUDL上の終点 IPアドレスに対し、Receiverからの到達性 を確認した 今後の課題 • トンネルを通してパケットを送信することに どれほどのオーバーヘッドがあるか – オーバーヘッドが多い場合、経路制御パケット 以外のトラフィックがトンネルに流れ込むのを 抑制する必要がある • Receiverは、Default Feederをどのように選 択すればよいのか – 最も効率よく利用できるDefault Feederをどの ように見つけるか
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