講義ノート

跡見学園女子大学マネジメント学部 国際経済学
日本の産業と貿易構造の変化3
丹野忠晋
2009年11月9日
日本の産業革命





日本の産業革命は日清戦争前後の時期
軽工業中心の産業革命から出発しました.
その主役は紡績業
1890年代には輸出が輸入を上回る
生糸に並ぶ輸出品になりました
2009/11/9
国際経済学3
2
日本の産業革命/2
 しかし,当時の綿織物は手織り機の段階で機
械制大工業までは到達していません
 欧米からの生糸の需要
 座繰製糸(手作り製糸)から機械製糸へ
 政府は鉄鋼業を保護育成
 リーディングセクターは紡績業
2009/11/9
国際経済学3
3
重化学工業化





第一次世界大戦は重化学工業の発展を促す
軍需物資への需要のため日本の輸出が急増
海上輸送のため船舶業と造船業が伸長
重化学部門のリーディングセクターは造船業
多くの新興成金が発生
2009/11/9
国際経済学3
4
重化学工業化2
 造船は第一次大戦期の1910年代までに輸入
代替を実現しました.
 輸入代替:外国からの輸入を止めて自国での
生産にシフトすること
 欧州からの輸入途絶から多くの重化学工業部
門が自国生産で賄われた
2009/11/9
国際経済学3
5
重化学工業化3
 戦後日本はアメリカと並ぶ欧州への債権国へ
 また中国への投資が急拡大
 船舶の輸出は第一次大戦期を除いてほとんど
輸出されなかった
 軍事用艦船建造が大きな部分を占める
2009/11/9
国際経済学3
6
第一次大戦後の日本経済
欧州からアメリカとの関係の比重が高まる
中国とくに満州への直接投資の拡大
重化学工業化の進展にもかかわらず繊維工業
は依然として大きな比重
繊維工業の動力化・近代化
都市化の進展
財閥コンツェルンの形成.三井・住友・三菱・安
田.
2009/11/9
国際経済学3
7
世界恐慌
1929年(昭和4年)10月,ニューヨーク株式市場
の暴落から世界恐慌が始まる
アメリカ~ニューディール政策,第二次大戦で
復活
イギリス~イギリス連邦,ブロック経済化
• 本国と植民地が相互に特恵を与える
• 他国には高率の関税をかける(保護貿易政策)
• 世界貿易の縮小は不景気をさらに悪化
2009/11/9
国際経済学3
8
世界恐慌2
ソ連~社会主義経済の下で世界恐慌の影響
を受けず,高い成長
ドイツ~低失業率と経済成長,賠償金完済
日本は同時期に金解禁(金本位制への復帰)
世界恐慌により貿易収支赤字と資本収支赤字
が拡大
金の国外流出(在外正貨の取り崩し)
昭和恐慌とよばれる深刻な不況
2009/11/9
国際経済学3
9
戦前(1930年代)の輸出
20.0%
綿織物
生糸
化繊織物
39.0%
15.0%
衣類
絹織物
繊維その他
5.0%
その他
3.0%
10.0%
2009/11/9
機械類
3.0%
国際経済学3
5.0%
10
戦前(1930年代)の輸入
綿花
31
羊毛
繊維その他
38
石油
鉄鋼
肥料
8
3
2009/11/9
3
4
5
6
国際経済学3
2
鉄くず
機械類
その他
11
第二次世界大戦と戦後経済
 自国の技術と資源の利用で財を生産しその輸
出先を植民地に求める先進国の植民地獲得競
争
 世界恐慌からどのように抜け出すか
 後発国であるドイツと日本の挑戦による世界大
戦に発展した
 両国は軍需による内需の拡大と経済の国家統
制を志向
2009/11/9
国際経済学3
12
1940年体制
金融機関の統廃合,護送船団方式
間接金融への傾斜
戦時体制で発展した日本の企業
終身雇用,年功序列賃金,企業別労働組合
官僚統制,行政指導
財政制度,源泉徴収制度,地方への補助金
土地制度:食管法,借地・借家法
2009/11/9
国際経済学3
13
第二次世界大戦と戦後経済/2
 第二次世界大戦に日本は敗れる
 死亡者数(兵員230万人,一般市民80万人),植
民地の喪失
 国内の資本ストック(国富)の喪失は650億円
 平和的な国富の状態は昭和10年
 回復には10年かかると予想
 日本は自由主義体制の一員として経済の復興
を目指した
2009/11/9
国際経済学3
14
戦後の経済改革
 1945年から1952年までGHQ 連合国最高司令
官総司令部が日本を指導
 財閥解体
 農地改革
 労働運動の育成
この改革によって旧小作人や労働者の購買力が
高まり国内市場が充実,さらに貧富の差が極
端にではなくなり戦後の経済発展の土台に
2009/11/9
国際経済学3
15
戦前と戦後の連続性
戦争遂行のための官僚機構は存続
1940年体制
• 企業と金融
• 官僚体制
• 土地制度
高度成長期には産業政策へ
2009/11/9
国際経済学3
16
日本の高度成長
 以前は自国に資源を持つ国が有利
 戦後の植民地の独立と資源の開発により海外
からの安価な資源が購入可能
 工場は資源立地から港湾立地へと変化
 大型タンカーが寄航できる臨海工業地帯がも
っとも効率の良い生産システム
2009/11/9
国際経済学3
17
日本の高度成長/2
 国民の消費欲と貯蓄
 成長と平等の両立
 日本の高度成長と現代の北欧のみが達成
2009/11/9
国際経済学3
18
千人
欧州との比較 :人口(2008)
140,000
127,288
120,000
100,000
82,370
80,000
64,058
60,944
フランス
イギリス
60,000
40,000
20,000
0
日本
2009/11/9
国際経済学3
ドイツ
19
10億ドル
名目GDP(2008)
6,000
5,000
4,923
3,667
4,000
3,000
2,856
2,674
フランス
イギリス
2,000
1,000
日本
2009/11/9
国際経済学3
ドイツ
20
欧州と日本
o
日本の人口と経済力はフランスとイギリスを足し合わせたもの
人口
千人
600,000
492,850
500,000
400,000
日本
EU
300,000
200,000
127,700
100,000
0
日本
2009/11/9
国際経済学3
EU
21
欧州の人口は4倍,GDPは3倍
GDP(2006)
100万ユーロ
12,000,000
10,917,000
10,000,000
日本
8,000,000
EU
6,000,000
4,000,000
3,739,000
2,000,000
0
日本
2009/11/9
EU
国際経済学3
22
日本は一人あたりのGDPでは上
ユーロ
一人あたりGDP(2006)
35,000
30,000
29,284
日本
EU
25,000
23,400
20,000
15,000
10,000
5,000
0
日本
2009/11/9
EU
国際経済学3
23
2009/11/9
1824
1831
1838
1845
1852
1859
1866
1873
1880
1887
1894
1901
1908
1915
1922
1929
1936
1943
1950
1957
1964
1971
1978
1985
1992
1999
2006
1
千人
フランスと日本の長期人口
140,000
120,000
フランス
日本
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
国際経済学3
年
24
日英独仏の長期一人あたりGDP
(1990 International Geary-Khamis dollars)
25,000
日本
フランス
20,000
イギリス
ドイツ
15,000
10,000
5,000
1900
1905
1910
1915
1920
1925
1930
1935
1940
1945
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
0
2009/11/9
国際経済学3
年
25
高度成長期(1970年代)の輸出
17.0%
食料
3.0%
13.0%
繊維その他
6.0%
化学
金属
46.0%
15.0%
機械機器
その他
2009/11/9
国際経済学3
26
高度成長期(1970年代)の輸入
13
14
食料
繊維原料
5
12
金属材料
14
5
原料品
鉱物燃料
化学製品
機械機器
21
2009/11/9
16
国際経済学3
その他
27
為替レート
 戦後の為替レートはブレトンウッズ体制の下1
ドル360円に固定されていた
 それが1971年のニクソンショックによりドルと金
の兌換が停止されると固定為替を維持できなく
なった
 そのため各国の外国為替は変動相場制に変
更され今日に至っている
2009/11/9
国際経済学3
28
19
71
年
1月
19
74
年
1月
19
77
年
1月
19
80
年
1月
19
83
年
1月
19
86
年
1月
19
89
年
1月
19
92
年
1月
19
95
年
1月
19
98
年
1月
20
01
年
1月
1971年以降の円ドルレート
円ドルレート
400
350
300
250
200
150
100
50
0
2009/11/9
国際経済学3
29
今農業人口はどれくらい?
 はじめに江戸時代は日本の人口の85%が農
業に従事していることを説明
 現在は農林水産業を合わせて6%の人が従事
しています.
 戦前から農業人口は1300万人であまり変化は
ありませんでした
 1960年代以降急激に農業人口が減少して現
在は350万人ほど
2009/11/9
国際経済学3
30
まとめ
 ざっと江戸時代からの産業構造と貿易パター
ンを見てきました.
 日本経済は産業,貿易,就業面でかなりの急
激な変化を辿って来たといえます
2009/11/9
国際経済学3
31