ビジネスの情報 2010年10月号

毎月レポート
ビジネスの情報
(2010年10月号)
ビジネスの情報
2010年10月号
●「買い物難民」を救う。そこに、新たな商機あり。
毎日の食料や日用品を買おうにも商店が近くにない、高齢のため買い物に行くことができないなど、いま「買い物難民」と呼
ばれる高齢者や過疎地の住民たちの劣悪な消費環境が社会問題化しています。その数、全国で約600万人(経済産業省推計)とも
言われ、毎年増え続けているのが現状です。しかし、この現象も角度を変えて見れば、そこには確かな潜在需要が存在するとい
うことに他なりません。その掘り起こしに挑もうと、流通小売各社が各地で様々な動きを見せ始めています。地元の人々の暮ら
しを支えることと収益確保の両立を目指しながら----。過疎地の高齢者に店までの送迎バス(片道100円)を運行しているのが、
24時間営業の大型スーパー「A-Z」(鹿児島県阿久根市)。60歳以上と身体障害者のお客さんには、消費税5%分をキャッシュバ
ックする制度も導入しています。高知県仁淀川町の場合は、街のスーパーが、マイクロバスを改造して山あいに点在する集落を
回る移動スーパーを実施しています。週2回、1カ所につき1~5人が楽しみに待っています。一時、ガソリン代の急騰が経営を圧
迫し撤退も検討していたといいますが、昨年、その危機を救ったのが県からの補助金でした。車両購入費の三分の二を援助する
という、全国で初めて設けられた制度でした。タクシーと地元スーパーの連携というユニークな宅配サービスを今年8月から始め
たのは、岡山市の両備ホールディングス。午前中にタクシーの配車センターで注文を受けた商品を、運転手が空き時間にスーパ
ーで調達。夕方までにお届けするというもので、会員を対象に手数料は1件につき350円。「買い物難民」は、高齢化が進む大型
ニュータウンなど、都市部でも生まれています。近くのスーパーが撤退したが、運転免許はない、路線バスも走ってない、脚も
痛くて思うように動けない…そんな住民に向けてヤマト運輸と地元スーパーが提携して「ネットスーパーサポートサービス」を
08年から実施。さらに今年から、パソコンを操れない高齢者でも利用できるタッチパネル式の専用端末機「ネコピット」を、い
わき市でテスト導入しています。近所の小売店という、いわばライフラインを断たれた高齢化率の高い過疎地域では、大げさで
はなく死活問題です。高齢者が本当に困るのはこれからだ、という声も。民間企業レベルでは、いかに地域のピンチを救うこと
がビジネスチャンスに結びつけることができるかにかかっていますが、地域の“難民度”は予想以上に深刻なようです。こんな
時こそ、自治体との効果的なコラボレートが望まれます。
※参考:両備ホールディングスhttp://www.ryobi-holdings.jp/ ヤマト運輸http://www.kuronekoyamato.co.jp/
http://www.yamato-hd.co.jp/ 朝日新聞(2010年5月16日付)日経MJ(2010年7月9日付)
●まず見た目から。「次世代店舗」へシフトする、ファストフード市場。
せっかく長い年月を費やして、視覚的に消費者の間に浸透してきたお店のカラーイメージを、ここにきてあえて変えようとす
る動きがファストフード業界で盛んです。と言っても、チェーン全店がそっくり新タイプにチェンジする、というわけではあり
ません。各社とも、多分に実験的な意味合いが濃く、まず数店をアンテナショップとして立ち上げたという状況です。
先陣を切ったのは、「日本マクドナルド」。今年4月から赤坂、青山など都内13店で“黒マック”と呼ばれる新世代デザイン店
を展開しています。赤と黄の印象が強いこれまでのマックとは異なり、フランス人デザイナーによる黒や茶といった落ち着いた
高級感漂うオシャレなトーン。その分、価格も単品で最大30円、セットで最大50円、通常マックよりお高くなっています。
過去に一度、「マックカフェ」という高級路線で失敗しているだけに、今回の“高級マック”には注目です。2011年度には、
数十店舗規模で全国展開を目論みます。今年、創業40周年を迎えた「日本ケンタッキー・フライド・チキン」の次世代店舗一号
店は、7月、渋谷にオープンしました。外観は、お馴染みのクリーム色ではなく、シルバーがベース。ユニフォームも一新された
他、店内のPOP類も“紙”を大幅に削減、デジタル化してモニター表示に。ちなみに、カーネルおじさんの白と赤の色使いは、そ
のままですのでご安心を。「ミスタードーナツ」は、“大人のミスド”が売りの「カフェ アンドナンド」の一号店が渋谷にオー
プン。これまでの黄色のメーンカラーから、エンジと黒のトーンで渋めにクオリティアップ感を演出。現在7店舗で展開中です。
「日本サブウェイ」は、なんと店内中央にレタスの栽培工場を設けるという、世界初の試み「野菜ラボ」一号店を、今年7月、
東京丸の内にオープンさせました。お客さんはその大きな水槽のような“工場”を取り囲んで座り、レタスを眺めながら食事を
するというわけです。文字通り“店舗育ち”の無農薬・水耕栽培レタスを使ったサンドイッチを“店産店消”できるのが最大の
セールスポイント。また、意外にひっそりと(?)活動していたのが「吉野家」。実はマックよりも早く、3年ほど前から、あの
オレンジではなく、青い看板の「そば処 吉野家」を展開中です。
「次世代店舗」の出店攻勢が相次いでいる背景には、市場の伸び悩み、脱け出せない価格競争の激化が挙げられます。新しい
店舗コンセプト、新しい魅力を打ち出して客単価向上=値上げのタイミングをはかる外食チェーン各社。単なる同名異色のイメ
ージ戦略としてではなく、今後の隆盛を占う意味でも「次世代店舗」に課せられた役割は大きいといえます。
※参考:日本マクドナルド http://www.mcdonalds.co.jp/ 日本ケンタッキー・フライド・チキン http://japan.kfc.co.jp/
ミスタードーナツhttp://www.misterdonut.jp/ 日本サブウェイhttp://www.subway.co.jp/ 吉野家http://www.yoshinoya.com/
朝日新聞(2010年7月6日付)
●進化の路線をひた走る、「高速ツアーバス」市場。
夕方または夜に、東京駅や新宿駅などから出発し、大阪・名古屋・福岡といった特定の都市間を高速道路を経由し、翌朝、目
的地に到着する夜行便(一部、昼行便)が「高速ツアーバス」です。
1980年代に生まれてから、新幹線や飛行機と比べ、時間はかかるけど料金が安い、が最大にして唯一の武器でした。当時はど
ちらかというと“安かろう狭かろう”で、快適性などは二の次であったことは否めず、しかしその分、若者を中心に支持を得て
いました。ところが、2001年に道路運送法が規制緩和され、バス事業が免許制から許可制へ移行されたのにつれ、新規事業者が
続々参入。もはや安いだけでは生き残り競争に勝てず、車両の改善や乗り心地の向上といったクオリティー勝負になって、現在
の“進化の時代”へと突入します。「高速ツアーバス」の宿命として、路線バスのように定められた停留所や待合室はありませ
ん。“○○駅の西口、◆◆ビルの前”に集合とあっても、迷ったり、雨の中、屋根のない路上で待たされたり…。
「ウィラートラベル」では、今春、ツアーバス発着のメッカ新宿に、待望の専用乗り場「Willerバスターミナル新宿西口」を
開設しました。チェックインはもちろん買物ができたりパソコンも使用できます。
「平成エンタープライズ」も同じく西新宿に無料待合室「新宿VIPラウンジ」をオープン。インターネット、ドリンクバー、無
料歯ブラシ、着替え用の男女フィッティングルーム、化粧のためのパウダルームなどを完備。夜行便に乗り込む女性を意識した
サービスを充実させています。乗り心地の進化では、例えば「ジェイアールバス関東」の2階建高級バス「プレミアムドリーム号
」。全座席に液晶テレビを備え、シート幅は790ミリ、156度のリクライニングシートを採用。国際線飛行機のビジネスクラス並
みでしょうか。2階席は全席にカーテンを設けて個室感覚に。「平成エンタープライズ」のVIPライナー「ロイヤルブルー」は、3
列シートで低反発シート&枕にプライベートカーテンを装備(東京~神戸 片道6,000円)。同社では、女性専用車も運行していま
す。「オリオンツアー」も、東京~関西間で同様の高級バスでの運行を行っています。
市場自体がまだ発展途上のこの業界。専用乗り場の確保と快適な車両の提供という、進化の2大ポイントを実現しながら、さら
なる利用機会の拡大を狙って新たな顧客を奪い合う「高速バスツアー」各社。鉄道、エアライン、そして同業のツアーバス各社
と、闘うべきライバルは少なくないようです。
※参考:ウィラートラベルhttp://www.willer.co.jp/ 平成エンタープライズhttp://www.busde.com/ ジェイアールバス関東
http://www.jrbuskanto.co.jp/ 日経産業新聞(2010年7月6日付/同8月5日付)