出版物にかかる隣接権の検討すべき点 クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 目次 1. 隣接権付与の目的・有効性 2. 隣接権付与の課題(本日のメイン) 3. 隣接権付与以外の代替案と、その有効性 1. 法改正の目的・有効性 • • • 隣接権付与のそもそもの目的は? 海賊版対策が必要だとして、日本国内のみの立法でどこま で有効性があるのか?隣接権付与という法改正が目的達 成の方法として妥当か? 電子出版も含めた出版物の流通促進につながるのか? 2. 隣接権付与の課題(本日のメイン) (1) 隣接権付与により出版物の流通が促進されるか? 逆に阻害されるのか? (2) 著者の権利を干渉しないか? (3) 隣接権の定義・範囲が広すぎるのではないか? (4) その他の論点 (1) 隣接権付与により作品流通が促進するか? • • • • • • 権利が増えると、作品流通が逆に阻害されないか? 隣接権ができることにより、出版慣行が改善され、契約締結 が促進されるようになるというが、本当か? 隣接権が増えて権利が複雑化することにより、さらに契 約締結による権利処理が難しくなり、今よりも流通が滞るの ではないか? 権利が増えることにより、新規参入者が市場に参入しにくくな り、市場が萎縮するのではないか? 死蔵作品が増えるのではないか? 特に、次に検討する権利の主体、客体などが広い場合や不 明確な場合には、上記の問題は更に深刻になる。 (2) 著者の権利を干渉しないか? • • • 著者による作品の利用の妨げになるのではないか?著 作権者が許諾しても出版社が許諾しない場合は利用で きないことにならないか? 別の出版社に乗り換えることは、簡単に可能なのか? 当初の原稿の版面を利用せざるを得ない場合には、別の 出版社が別の版面を用いて出版することは事実上不可能 であり、最終原稿データを手元に持っていない著者につい ては、結局「塩漬け」問題が生じるのではないか? (3) 隣接権の定義・範囲が広すぎるのではないか? • • • • 出版社・編集プロダクション・印刷業者・著者の業務 が多様に分化しているなかで、現在の定義では、出版 社だけが権利者とはならないのではないか? 権利の範囲はどこまで及ぶのか?(ボーン・デジタルまで含 むとなると、ブログ・掲示板・ウェブサイトもすべて入ってしまう のではないか?どう限定するか?) 書籍・漫画以外のおよそ出版物全般(パンフレットやチラシ 等)に権利が及ぶ可能性はないか? 一部の大きな出版社以外の小さな出版社にとっては、か えって権利処理の負担が大きいのではないか? (4) その他の論点 • • • • 今後の法改正のスケジュール(次期通常国会への提出はあ るのか?) 権利集中管理機構の設立により円滑な権利処理を実現する とのことだが、実現するのか?実際に円滑な権利処理が可 能か? 隣接権を付与するとして保護期間をどうするか? 出版社隣接権を付与した場合、出版権を法改正により削除 する必要はないか? 3. 隣接権以外の代替案と、その有効性 • • なぜ、他の手段では達成できないのか? 著作権の譲渡契約や信託譲渡などを、著者に負担のないよ うに、範囲を限定したり工夫したりして行うのはどうか?(契約 による代替案) o たとえば、送信可能化権についてのみ譲渡 o たとえば、期限つき譲渡 o たとえば、解約権つき譲渡 3. 隣接権以外の代替案と、その有効性 • 独占的ライセンシーに差止請求権を認める方向や、出 版権制度を電子に対応した形で整備する、という方向 性はどうか?(より限定的な法改正による代替案)
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