行動障害のある人への支援

平成27年度 埼玉県障害者
虐待防止・権利擁護研修
行動障害と不適切な支援について
(障害種別:知的障害)
平成24年度 障害者虐待対応状況調査の結果
○養護者による障害者虐待において
身体障害(27.5%) 知的障害(48.5%)
行動障害がある者 (26.9%) ※重複あり
精神障害(36.0%)
○障害者福祉施設従事者等において
身体障害(19.7%) 知的障害(54.5%)
行動障害がある者(22.7%) ※重複あり
精神障害(39.3%)
○使用者による障害者虐待の状況等において(平成25年度)
虐待を受けた障害者は393人
障害種別は、知的障害292人、身体障害57人、精神障害56人
出典:「障害者虐待防止法の理解」より抜粋 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課地域生活支援室 虐待防止専門官 曽根直樹氏
被虐待者は知的障害の方が受けやすく、また行動障害がある方への割合が高い。
適切なケア
不適切なケア
虐 待
問題行動と言われてしまう行動
・パニック「自傷行為・他害行為」
・不適切な行動 ・かんしゃく
など
環境要因
障害特性
↑
↓
・行動を引き起こす
・様々な状況
・様々な刺激
・複雑で分かりにく
い環境
・いつもと違う状況
障
害
特
性
と
環
境
要
因
と
の
相
互
作
用
・感覚の特異性
・見通しがもてない
・目に見えない事物
を理解しにくい
・一般化することが
難しい
行動障害のある利用者への不適切な支援
ザワザワした場面が苦手な利用者がいます。
施設で日中活動に出掛けるときには、玄関で靴に履き替えな
ければなりませんが、同時に多くの利用者が玄関に集まってく
ると、ザワザワして本人にとっては大変不快な環境となります。
水面下(氷山の下)
しかし、本人はコミュニケーションの困難性から、職員に不快感
を訴えることができません。
どのように解決すれば良いのか方法もわかりません。
そして、イライラが高まってどうしようもなくなり、横にいる利用
者に咬みついてしまいました。
職員は、やめさせるために本人を羽交い締めにして引き離し、
目に見える部分(氷山)
さらにパニックを起こして暴れたため、居室に鍵をかけて閉じ込
めました。
「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」より抜粋
行動が生起する枠組み
(要因や背景を探る)
要因
背景
背景
きっかけ
行動
結果
本人が
持ってい
る障害
特性
行動の生
起する
きっかけ
がきっか
けとなり
うる事柄
どういうと
きに誰が
どんなこ
とをした
のか
どんな行
動をどの
位の強さ、
時間、頻
度で行う
のか
行動が生
起した結
果どう
なったの
か
昨夜から
睡眠不足
により、朝
から不機
嫌
ザワザワ
する混み
合った空
間に行っ
てしまった
感覚過敏
の特異性、
コミュニ
ケーショ
ンの困難
性など
横にいる利
用者に咬
みついてし
まいました
職員に羽
交い締め
にされ、鍵
をかけて
閉じ込めら
れた
行動障害のある利用者への適切な支援
行動の前の『きっかけ』や『背景』や『要因』を探
り、事前にその環境を取り除いてあげたり、本
人の障害特性に応じた関わり方でやわらげるこ
とが必要な支援ではないでしょうか?
それは、利用者のひとり一人にあった支援を考
えることで、その方の不安をやわらげだり、解消
することになり、問題行動と言われる行動への
適切な支援へと繋がります
行動制限の廃止に向けて
「問題行動に対処するために、身体的虐待に該当す
るような行動制限を繰り返していると、本人の自尊心
は傷つき、抑えつける職員や抑えつけられた場面に対
して恐怖や不安を強く感じるようになってしまいます。
このような人や場面に対しての誤った学習を繰り返し
た結果、さらに強い「問題行動」につながり、それをさら
に強い行動制限で対処しなくてはならないという悪循
環から抜け出さなくてはなりません。
行動障害に対する知識と支援技術を学び、支援をマ
ニュアル化するなどによって職員全体で共有し、行動
制限の廃止に向けて取り組むことが施設・事業所での
障害者虐待を防止することにつながり、支援の質の向
上にもつながります。
「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」より抜粋
行動制限(身体拘束)の留意点
身体拘束
行動制限
恐怖・不快
増長
させている
問題行動の誘発
エスカレート
自尊感情の損傷
心的外傷
⇒他のアプローチの可能性も見出していくことが必要。
障害者虐待の防止
身体拘束・行動制限の廃止
支援の質の向上