1982年以降の株式市場の高騰原因

根拠なき熱狂
1996年 12月 5日
ワシントンDC
株式市場での投資家の行動について
根拠なき熱狂
株式市場は急激に値を下げた!!
アラン・グリーンスパン
(1926年3月26日~)
市場の高騰


ダウ平均は1994年から1999年で3倍以上
株式時価総額は合計で200%以上
しかし
投資家が市場に見出している価値が
実際に存在しているのか?
根拠なき熱狂 5ページ
株価の伸びと企業収益の
伸びが対応していない!
根拠なき熱狂 6ページ
P.10
根拠なき熱狂への懸念
株式市場の異常なまでの高水準
市場の合理的なもの? 「根拠なき熱狂」?
第Ⅰ部
株式市場を動かす構造要因
1982年以降の株式市場の高騰原因
ファンダメンタルズ分析
↓
良好に機能している金融市場には合理的に経
済効率の向上を促進する力をもつ。
しかし1982年以降の尋常ならざる状況には対
応できない。
よって合理的な分析では正当化されないものを
ピックアップしてみる。
1982年以降の株式市場の高騰原因
①インターネットの到来
インターネット革命によって大衆が抱いた「印
象」が重要
②勝利至上主義と経済的ライバルの衰退
 外国での出来事は主なライバルの衰退ととら
える
 愛国的な自画自賛
1982年以降の株式市場の高騰原因
③ビジネス的成功らしきものを尊重する文化
物質主義的な価値観が大きく台頭
↓
ストックオプションを実施する企業がでてくる
④共和党優位とキャピタルゲイン減税
立法府の規制権限によって、株式市場に対する大衆の信頼感
を強める
⑤ベビーブーマーが市場に影響を与えた
ベビーブーム世代が与えたとされる市場の強さという「影響」の
印象が大事
1982年以降の株式市場の高騰原因
⑥ビジネス関連ニュースの充実
株式への需要拡大へ
⑦楽観色を強めるアナリスト予測
大勢に従うのが安全だから、アナリストは「米国の素
晴らしい展望」を疑わない。
⑧確定拠出型年金プランの拡大
株式市場の水準を吊り上げる
1982年以降の株式市場の高騰原因
⑨ミューチュアルファンドの成長
ファンドを運用するのは専門化だからというと思わせ
人々の関心を市場に向かわせた。
そして、株式市場総体としての投機的な値動きを助長
する影響を与えた。
⑩インフレ抑制とマネー幻想の効果
大衆が名目金利と実質利息の区別がついてないから、
インフレ率の低下が株価高騰に繋がる。
1982年以降の株式市場の高騰原因
⑪ディスカウント証券会社、ディトレーダーの出
現により取引量の拡大
株価チェックの頻度が上がり、株式に対する関
心が高まる
⑫ギャンブル機会の増大
他人の成功話や軽薄なリスク志向の態度を後
押しする効果となる
まとめ


株式市場の価格決定には厳密な科学はない
株式市場では自己達成的な心理を考慮する
ことが不可欠である
第三章
熱狂の増幅メカニズム
投機バブル要因がどのように市場へ
の期待を増幅していったのか?
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
上昇を続ける国内の株価を毎日「体験」する
ことでこれからも上がり続けるという直感的な
感覚を与えてしまった。
専門家でさえ将来の値動きが予測できない
のに、投資家に予想できるはずがない。よっ
て投資家の心理的感情で上昇傾向が強まる。
フィードバック理論
株価上昇がさらなる株価上昇を呼び起こす。
これはポンジー詐欺によって証明済み
では、何故フィードバック理論が起きるのか?
 長期的なリスクに対する意識が低下している
ため、市場は高水準を維持しているにも関わ
らず、期待収益は低下していない。
 市場を巡る関心の高まりによって、自分も株
式投資に参加したいという願いが生まれる。
第Ⅱ部 株式市場を動
かす文化的要因
第4章
ニュース・メディアの影響
市場変動の舞台を用意する
ニュース・メディア

メディアは常に興味深い情報を提供しなければ
ならない。
視聴者・読者を安定した顧客にするため、継続
的なストーリーを提供し続ける。
株式市場は常に話題を提供する優良なソース
メディアが育む論争

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視聴者を惹きつけるため大衆の関心の集ま
るテーマについて論争を提示する。
証拠のない意見もメディアを通じて流布・強化
されることもある。
市場概況についての報道

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データも短期的で十分な考察や解釈が不足
している。
専門家・評論家は楽観的な展望を披露し、強
気な市場を盛り上げる役目を進んで買って出
る。
「過去最高」を連発するメディア


データの見方を変えただけで、どんな日でも
何らかの新記録を打ち立てたようなことを言う。
指標の氾濫のせいで、十分な解釈をせずに
データの評価を専門家・評論家に頼る。
大ニュース後の株価変動

大事件が起きた日に大きく株価変動する可
能性は、それ以外の日に比べてわずかに高
いだけである。
朝鮮戦争勃発(50年)、キューバ危機(62年)
といった「危機」を報じるニュースの方が株価へ
の影響は大きい。

後知恵の説明に使われるニュー
ス
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
株価変動の原因として報道が挙げられること
が多い。
投資家達は「投資家の行動に対する解釈」と
して報道に反応している。
株価下落が更なる下落を生む、フィードバック
効果をニュースは果たしている。
大きなニュースを伴わない
大きな株価変動

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
株価変動の「説明」とされたニュースは常に
重要なものとは限らなかった。
ニュースの複合化によって大きな効果を生む
とする考え方もある。
ニュースは、市場への考え方を変化させるた
めの「起爆剤」となる場合が多い。
ニュースが促進する
「関心のカスケード」

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報道の影響は、「人々の関心の連なり」がそ
のキッカケとなりやすい。
関心の連鎖のことを「関心のカスケード」とい
う。
一つ一つでは目立たないが、メディアの関心
が連鎖することで最終的に深刻な影響を及
ぼしてしまう。
一九二九年の大暴落時の報道



暗黒の木曜日直前には、大きなニュースは何
もなかった。
むしろ、新聞は経済の先行きに対して前向き
な報道をしていた。
投資家心理のフィードバック効果や「関心の
カスケード」を介した「ネガティブ・バブル」
一九八七年の大暴落時の報道

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
機関投資家や個人投資家は「過去の株価下
落そのもの」に関する報道を最も重要視して
いた。
投資家は、暴落の理由は市場の過大評価・
投資家心理であるとの見方がほとんどだった。
政府調査委員会は、暴落の原因は貿易赤
字・金利の上昇であると報告している。
バブル増殖にメディアが果たした役割

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メディアは、大衆の関心・思考を積極的に形
成している。
メディアは、視聴者・読者の関心を惹きつけ、
投機的な価格変動を増殖させる効果を発揮
している。
第5章
「新時代」の経済思考
一九〇一年の楽観論
二〇世紀ご祝儀ピーク
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新世紀の幕開けと共に、未来のテクノロジー
などの話題に事欠かない状態だった。
企業連合・トラスト・合併等「利益共同体」によ
る経済効果
「強力な手」と呼ばれた安定株主の登場
一九二〇年代の楽観論
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革新的テクノロジーの大衆への普及という認
識
電気・自動車の普及とラジオの国民的娯楽化
「新時代」を思わせる専門家達の楽観的な主
張と高騰した株式市場を正当化する言説が
広く一般に支持されていた。
一九五〇~六〇年代の「新時代」思考
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第二次世界大戦の終了によって50年代前半
のアメリカ経済は停滞していた。
テレビの普及、低いインフレ率、企業のプラン
ニング能力の向上といった理由を持ち出した。
何より投資家たちが市場の先行きに楽観的
だった。
一九九〇年代の強気市場における
「新時代」思考
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グローバリゼーション、ハイテク産業、インフ
レ緩和、金利低下、企業収益の増大
グローバル資本主義、民営化の推進、労組
の衰退
経営のダウンサイジングとリストラクチャリン
グ
一部では、投機バブルかもしれないという意
見もあった。
「新時代」の終焉
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楽観的な「新時代」が終わると、人々の意見
も消極的なものになる。
人々の市場や景気に関する評価は、多くの
場合事実の後追いに過ぎない。