熱中症リスクからみた都心部の街路空間の気温特性

熱中症リスクからみた
都心部の街路空間の気温特性
指導教員 成田 健一
1073255 澤野 幸子
熱中症とは
熱環境(気温・日射・風等)
体温調節反応
①皮膚血管拡張
発汗量増加
(a)水のみ補給(b)水分補給無
循環血液量低下
心臓への血液還流量低下
脳への循環血液量の低下
熱失神(Ⅰ度)
深部体温:38℃以下
死亡
②発汗
脱塩症状
熱痙攣(Ⅱ度)
深部体温:38℃以下
多臓器不全・DIC
併発
*DIC:播種性血管内凝固症候群
脱水症状
熱疲労(Ⅱ度)
深部体温:40℃
以下
中枢神経機能障害、意識
障害、体温調節機能不全
熱射病(Ⅲ度)
体温:40℃以上
環境省データによると・・・
日最高気温
が30℃を超
える辺りから
熱中症患者
が増え始め、
その後気温
が高くなるに
従って急激
に増加する。
-研究目的-
ヒートアイランド現象や地球温暖化による影響
熱ストレスの増大⇒熱中症リスクを高めている
現在は・・・
気象台データの日最高気温だけでリスクを検討
実際に人間が影響を受ける実在街路の
熱環境までの把握はなされていない
実在街路の熱中症リスクを検討
日本橋
(m
3500
皇居
3000
温度ロガー
2500
シェルター
銀座・築地
2000
1500
日比谷
1000
500
電柱高さ2.5mに設置
今回使用したデータ:
0
0
1000
2000
3000
4000( m)
温度ロガー設置地点
2008年7月27日~9月29日
の計65日間、本研究室で実
測した街路気温データ。
今回は気象庁アメダスデータ(大手町)で33℃以上を
記録した日で風系に特徴があった、8月4,8,15,19日
をピックアップし、解析を行っていく。
8/15
8/8
8/19
35
33
31
29
27
25
23
21
19
17
15
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
7/27
8/1
8/6
8/11
8/16
8/21
8/26
8/31
9/5
9/10
9/15
9/20
9/25
降水量( mm/10分)
気温(℃)
8/4
9/30
気象庁アメダスデータ(大手町)(気温・降水量)
以下、大手町気温と地点気温の差を気温差データとする。
測定エリア
解析にあたり
ESE(東南東)~
SW(南西)を海
風と定義する。
東京湾
N
NNW 15%
NW
10%
WNW
5%
W
NNE
NE
ENE
E
0%
WSW
南西
ESE
ESE
SW
SW
東南東
SE
SSE
SSW
S
大手町気象台の風配図
(2008.7/27~9/29)
地点毎の気温差のばらつきの検討
海風(ESE~SW)
その他
海風(ESE~SW)
1.0
1.2
日本橋
標準偏差(℃)
標準偏差(℃)
1.2
0.8
0.6
1.0
0.2
0.0
0.8
0.6
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
海風(ESE~SW)
点間のばらつきが
大きくなる。
その他
海風(ESE~SW)
1.2
その他
1.2
日比谷
0.8
0.6
0.4
標準偏差(℃)
標準偏差(℃)
銀座・築地
0.4
特に日本橋エリアのば
大手町気温が30℃
0.2
らつきが大きい。
0.0
を超える辺りから地
0.4
1.0
その他
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
皇居
大きなばらつきはない。
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
日本橋エリアの気象要件での
ばらつきの検討
海風(ESE~SW)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
更に32℃以上を風速、風
0.0
25 向でみると・・・
26 27 28 29 30 31 32 33
大手町気温(℃)
34 35
弱風(3m/s未満)
その他
強風(3m/s以上)
1.2
1.2
1.0
1.0
0.8
標準偏差(℃)
標準偏差(℃)
その他
1.2
標準偏差(℃)
・大手町気温が30℃を超える辺
りから地点毎のばらつきが大き
くなる。
・風速では依存性はみられず、
風向は南寄りの風で東成分の
風が吹くと地点毎の気温差が大
きくなる。
海風(ESE~SW)
0.6
0.4
0.2
1
2
3
4
5
大手町風速(m/s)
6
0.6
0.4
0.2
風速の強弱では依存性はない
0.0
0
0.8
0.0
7
E
SE S SW 大手町風向
W
地点毎の大手町気温と
の気温差比較
44
44
頻度(%)
地点毎の気温差で地点44
が突出して気温差が大きい。
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
日本橋エリア
44
-3
-2
-1
0
1
気温差(℃)
2
3
地点毎の大手町気温と
の気温差の頻度グラフ
何故地点44だけ突出
しているのか?
4
5
海風(ESE~SW)
大手町との気温差(℃)
地点44を気象要件で解析
大手町気温が32℃を超える辺
りから大手町気温との気温差
が大きくなる。
5
4
3
2
1
0
-1
-2
その他
最大で5℃近く
の気温差がある
な原因は特定できない。
弱風(3m/s未満)
車の排熱などが関係して
海風(ESE~SW) その他
5
いる可能性が高い。
4
5
4
3
2
1
0
-1
-2
大手町との気温差(℃)
大手町との気温差(℃)
風向では南寄りの風の時に
気温差が大きくなる。風速で
32℃以上を風速、
気象要件だけでは明確
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
は依存性はみられない。
風向でみると・・・
大手町気温(℃)
風速依存性はみられない。
0
1
2
3
4
5
大手町風速(m/s)
6
7
強風(3m/s以上)
3
2
1
0
-1
-2
N W S E N
0 2 4 6 8 10 12 14 16
大手町風向
南北道路(日比谷エリア)の東西
同じエリア内でも南北道路
の日比谷エリアでは道路東
側と西側で気温差がある。
日比谷エリア
東側
40
35
東側が西側よりも気温が高い
30
頻度(%)
西側
25
20
15
10
5
0
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
気温差(℃)
南北道路(日比谷エリア)東西の
地点02と37をピックアップ解析
(ESE~SW)
その他
東側
5
4
気温差(℃)
日比谷エリア
3
2
1
0
-1
-2
西側
37
東側
気温差が大きくなる
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
02
(ESE~SW)
その他
5
西側
気温差(℃)
4
3
2
1
0
-1
N
-2
気温差が小さくなる
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
気温差の原因は・・・
最高気温時は道路西側に日陰が形成され、日向
の道路東側が気温が高くなる。
それにより南北道路(日比谷エリア)の道路東側と
西側で気温差が生まれる。
西
東
最高気温時
高
低
温
高
低
温
東西道路(永代通り)の南北では?
(ESE~SW)
その他
北側
5
日本橋エリア
日本橋エリア
(永代通り)
4
北側
気温差(℃)
N
3
2
1
0
-1
気温差の大きな変動は少ない
86
永代通り
-2
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
v
91
(ESE~SW)
南側
その他
南側
5
道路北側は気温差の変動が少な
いので常に日差しが同じように当
たっている。
道路南側は南北道路西側の影
響と同じで日陰が形成されてい
る。
気温差(℃)
4
3
2
1
0
-1
-2
気温差は小さくなる
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
大手町気温(℃)
全エリアの大手町気温に対する気温差の頻度分布
銀座・築地エリアと日
比谷エリア道路東側が
他エリアに比べ街路空
間の気温が高い。
選別日の11時~16時の時間帯の大
手町気温に対する頻度分布
頻度(%)
40
35
皇居
日本橋
日比谷西
日比谷東
銀座
平均
30
25
20
15
10
5
0
-3
-2
-1
0
1
気温差(℃)
2
3
4
皇居エリアは大手町気
温と気温差が少ない。
まとめ
・都心部の街路空間は、大手町気温が高くなるにつれ、更に南
寄りの風で東成分の風(海風)が吹くと、地点間のばらつきが大
きくなる傾向がある。
・平均値としては、街路空間は気象台よりも1℃程度高温となって
いるが、場合によっては気温差が4℃近くに達することがある。
・最高気温時に日向となる、南北道路の東側は特に気温が大き
くなりリスクが高くなりやすい。
・同じエリア内でも突出して気温が高くなる地点があるが、気象要
件だけでは明確な原因が特定できなかった。路側駐車している車
両の排熱が原因と考えられ、これもリスク増加の一因と思われる。
実際に人間が影響を受ける実在街路は、気象庁が発表し
ている気温よりもかなり高くなる場合がある。
ただし、同一地点でも条件により気温差は大きく変動する。