発表概要 H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学

発表概要
H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」
氏名(学籍番号)
古賀裕也(131-t2720)
論文題目
Identical Area Observations of Deformation-Induced Martensitic Transformation in
SUS304 Austenitic Stainless Steel
著者
M. Chen, D. Terada, A. Shibata and N. Tsuji
論文出典
Materials Transactions, Vol.54, No.3(2013)pp.308 to 313
【緒言】
熱的マルテンサイト変態は Ms 点温度以下に急冷することで起こる。しかしながら Ms 点以上であってもオ
ーステナイトを変形させることでマルテンサイト変態が起こりうる。このことは、変形誘起マルテンサイト変
態として知られている[1]。オーステナイト系ステンレス鋼単結晶における変形誘起マルテンサイト変態につい
ては様々な報告がなされているものの[2-5]、多結晶材における変形誘起マルテンサイト変態の詳細は不明であ
る。そこで本研究では、準安定オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 多結晶材における変形誘起マルテンサ
イト変態の詳細を明らかにすることを目的とした。
【実験方法】
供試材として SUS304(Fe-18.19%Cr-8.07%Ni)を用いた。この鋼に対し
て、真空中で 1000°C、3 時間の焼鈍を行うことで、オーステナイト単相
の均質な再結晶組織を得た。焼鈍後の初期組織は電子線後方散回折
(EBSD)法により観察した。その後、引張試験(試験片ゲージ部寸法:
厚さ 1 mm, 長さ 10 mm, 幅 5 mm,)を行い、引張ひずみが 56.5%、73.1%、
89.2%で引張試験を中断し、同一領域で EBSD 測定を行った。
【実験結果および考察】
Fig.1 に各ひずみにおける同一領域の方位マップを示す。初期組織中に
は多くの焼鈍双晶が観察され、それらの配向分布はランダムであった。ま
た、引張ひずみの増加に伴い、<001>もしくは<111>方向に結晶回転が生
じた。変形誘起マルテンサイト結晶は、オーステナイトの 3 重点粒界近
くやΣ3 双晶境界に沿って形成された。Fig. 2 に引張ひずみ 56.5%におけ
る相マップと方位マップを引張変形前の方位マップとあわせて示す。図
中の白矢印は引張前に存在していた 2 つの焼鈍双晶を示す。Fig. 2 に示す
ように、変形誘起マルテンサイト結晶は焼鈍双晶中ではなく、変形双晶内
部に形成されていた。形成されたマルテンサイトは周囲のオーステナイ
ト母相と K-S 関係を満たすことが確認された。またバリアント解析を行
ったところ、バリアント選択が生じていることが明らかとなった。本研究
ではこのバリアント選択性の規則を把握するために、Patel-Cohen モデル
および Bogers-Burgers モデルを用いて検討を行った。しかし、本研究のバ
リアント選択性は、どちらのモデルのバリアント選択性の傾向とも一致
せず説明することができなかった。このことの 1 つの理由として、どち
らのモデルも単一の単軸荷重を考えていることが挙げられ
る。本研究で用いた多結晶材では局部応力状態が非常に複雑
であり、バリアント選択性の規則を理解するためにはさらな
る調査が必要である。
【参考文献】
[1] I. Tamura: Metall. Sci. 16 (1982) 245-253.
[2] T. Tsurui, S. Inoue, K. Matsuda, H. Ishigaki, K. Murata and
K. Koterazawa: J. Soc. Mater. Sci. Japan 50 (2001) 11151119.
[3] M. Kato and T. Mori: Acta Metall. 24 (1976) 853-860.
[4] G. Stone and G. Thomas: Metall. Mater. Trans. B5
(1974) 2095-2102.
[5] J. C. Bokros and E. R. Parker: Acta Metall. 11 (1963)
1291-1301.
Fig.1 EBSD Orientation colors maps of
the identical area at different tensile
strains of (a) 0%, (b) 56.5%, (c) 73.1%
and (d) 89.2%. Colors indicate the
crystallographic orientation parallel to the
tensile direction A, B and C indicate the
same grains.
Fig.2 Comparison of the phase map with the orientation color
maps of the same area. (a) Before and (b), (c) after 56.5%
tensile deformation.