発表概要 H28 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」 氏名(学籍番号) 安藤 論文題目 悠馬(132t2702) Twinning and martensitic transformations in nickel-enriched 304 austenitic steel during tensile and indentation deformations 著者 M.N. Gussev, , J.T. Busby, T.S. Byun, C.M. Parish 論文出典 Materials Science and Engineering A 588 (2013) 299-307 【緒言】 Fe-Cr-Ni 系オーステナイト鋼は優れた耐食性と機械的特性の組合せにより 産業界で広く使用されている。Fe-Cr-Ni 系鋼のいくつかは、準安定であり、加 工中にマルテンサイト変態を生じやすい。またその際、変形双晶の発生を伴う ことが多い。これらの構造変化は合金の力学および腐食特性に強く影響を及ぼ す[1]。そのため、変形双晶やマルテンサイト変態に関する研究が多くなされて きた。しかしながら、引張および圧縮といった応力状態や結晶方位の影響につ いては調査すべき点が多く残されている。ところで、小さな試料でも応力-ひ ずみ応答が得られるインデンテーション法は従来の引張試験の替わりに使用 されることが多い。しかしながら、変形経路の変化が組織発達にどのような影 響を及ぼすかは明らかにされていない。また、単純な荷重様式であっても、結 晶方位が双晶変形やマルテンサイトにどのような影響を及ぼすかは不明であ る。そこで本実験では、単軸引張負荷および球圧子インデンテーション圧縮負 荷により、準安定オーステナイト鋼を変形させ、αおよびεマルテンサイト組 織と変形双晶における応力状態および結晶方位の役割を調査した。 Fig. 1. Inverse pole figure ([100]-IPF) 【実験方法】 map for the tensile test 供試材には 304 鋼にニッケルを添加し、シリコンを低減させた準安定オー ステナイト鋼(Fe(bal )–18.76Cr–12.37Ni–0.021C–0.94Mn–0.04Si–0.04Mo– 0.0003N–(P<0.01,S<0.01,Ti<0.02))を用いた。1223 K で 30 分焼きなまし 処理を行い、放電加工機により試験片を作製した。引張試験片はゲージ部分 の寸法が 5×1.2×0.75 mm3 で、圧入試験片は~6×6×1.5 mm3 の板を用い た。試験後、変形試料に対して EBSD 解析を行った。 【結果および考察】 Fig. 1 に引張試験後の IPF map、Fig. 2 にインデンテーション試験後の IPF map を示す。引張試験では少なくとも二つの方位の双晶が観察されたが、イン Fig. 2. Inverse pole figure ([100]-IPF) デンテーション試験においては単一の双晶のみ観察された。どちらの試験結果 map for the indentation test においても[001]粒では双晶が観察されなかった。 マルテンサイトの発生形態にも両試験において顕 著な違いが見られ、引張試験においては双晶付近ま たは、双晶交点に不規則な集合体(コロニー)を形成 した。インデンテーション試験では、結晶粒界付近に 不規則なコロニーと、せん断帯に沿ったαおよびε マルテンサイトが交互に連なる鎖状のコロニーの形 成が観察された。Fig. 3 は引張試験、インデンテーシ ョン試験において、母相の結晶方位を示していて、観 察されたマルテンサイトを形態ごとに分類した図で ある。引張試験では多くが双晶関連のマルテンサイ Fig. 3. Orientation of parent austenite for different types of トである。一方、インデンテーション試験では双晶 martensite for tensile and indentation tests (triangles – separated とマルテンサイトの関連が確認されず、結晶方位に particles ; squares – line- like or chaotic shape colonies 形態が依存していると考えられた。 inthegrain ; filled circles – near- grain boundary colonies ; open circles – martensite related totwins). 【参考文献】 [1]Y. F. Shen, X. X. Li, X. Sun, Y. D. Wang, L. Zuo, Mater. Sci. Eng. A 552 (2012)514–522.
© Copyright 2024 ExpyDoc