日本語における音節、モーラ、拍の概念

摸音、促音の捉え方 とアクセ ン ト
日本語 にお ける音節、モ- ラ、童 の概念
ダー ラム大学
クロス尚美
妄
まじめに
音節 、モ- ラ、塵 とい う概 念 は,音韻論 、音声学 両分野 で使 われ るが、それ ぞれ の定
義 、相互間系につ いては、 さま ざまな 主張がな されてお り、古 くか らある概念 であるに
も関わ らず 、い まだに定説 とい うものがない。 昏声芋 とは音声を具体的 な発声 と聴取 と
の見地か ら生理学的 、物理 学的 に取 り扱 う分野であ り、また音韻 論 とは言語音 を機能的
見地か ら研 究 し、音素の関 わ り合い 、体系、普遍的 な原理 を追求す るもので ある_ こう
した ア ブ E
=-チの違 いか ら.音節 、あ るいは音節構造の捉 え方が異な るとい うことは 当
然 で あ る ともいえ る。 と ころが 、 日本語教 育において.
ほ 、音 声,
D実体が大変暖 味に捉 え
i
告\
指導
られ ていて、外包語 を母語 とす る学 習者 に とっては、必ず しも効 果的 とは言 えj
が行 われ てい る場 面に遭遇 す る ことが ある=本稿で.
T
j
:
㌔E
3本 L
_
r
)
促 音 と華 音が 学
語
習
者
こ
とって どの よ うに捉 え られ てい るか を、アクセ ン トとの関係 か ら見 る ことによ り、 日本
語教育 にお ける音声学 と音韻 論 の役割 を再考す る一助 としたい
1
日本語 の音節 、モー・
ラ、柏 の概念
1. 1 標準的 な音節構造
音節 とは、一般 には 「
それ 以 上短 く切って発音で きない、それ 自身 の中には切れ 目が
無い もの」として認識 され てい るが 、言語学の専門家でな くとも、外国語 を学習す る人々
な どに とって、比較的馴染 み の深 い概念 といえるだろ う二 音節 を認定 しよ うとす るアプ
ロー チの代表的な ものに、 ソノ リテ ィ一 ・ハイ ラ-キー (
聞 こえの階層)を使 った もの、
またtプ ロ ミネ ンス (
卓 立性 ) を根拠 としてい るもの、そ して、話 し手の呼気 圧 を測定
しよ うとす るものな どが挙 げ られ る
。
この他に類似 した概念 としてモー ラ、柏 があ り、
研 究者 に よってその使 われ方 は様 々で ある。諸説の違 いにつ いて ここでは詳述 しないが、
標準的 な音節 とは次頁の図 1の よ うな構造を持つ といえるだ ろ う)
48
打 音飾
/
㌔
核 (
コ
ザ
'
)
(
オ
ツ
わ
い
/\ /
へ
(
C
)(
G
)Ⅴ (
Ⅴ
)
C
子音
G
わた り音
Ⅴ
母音
i
(
C)
図1
例 え ば、 「胃」 とい う言葉は 1音節か らな り、各の部分に iが くる。
「
傘 」 とい う言
葉は k a とい う音 節に s a とい う音節が合わ さってで きる 2音節 と考 えられ る
「
胃」
「
傘」
∴
_
t=
:
L
良
a
図2
:
_
:
:
_
_
I
L
s
a
=
図3
コー ダは後続 子 音 、尾 子 音な どとも呼ばれ 、 コー ダ部分 を もつ音 節 と して、擬音や 促
音を含む語が考 え られ る。 (
括 弧はそれがオプ シ ョナルで あ る ことを表す二) 音韻論 的
には、促 音、# 音は一貫 と してそれぞれ 1モー ラ、1柏 とされ るの にたい して、音声学的
には 1音節 と して認 知 され る場合 とされない場合が あ る。 この ことは、本稿 の主題 で あ
る日本語教育のア クセ ン ト指導 において重要な意味 を持つので 、後 に詳述す る
二
1 ・2 音節の核
音声学の見地 か ら、 どの音節において も、必ず な くてほな らな いのが核,
j
)部分であ る二
(
音韻論 の分野 では、 「
核 な し」の音節 とい う概念 を用い る研 究者 もい る{)それ では 、
49
この 「
核 」 とは、機 能的 に どの よ うな性質 を もっている と言えるのであ ろ うか二
世界の言語 の 中には 、核 の部 分 に寧声子音が くる珍 しい言語 も報告 され てい るが 、 少
な くとも 日本語 にお い て核 にな るのは、母音や 鼻音 といった共鳴 音 に限 られ る。英語 な
どの場合 は、 さらに加 えて読書 も核 と/
な り得る
ノ
これ らは、有声 音であ る とい うことだ
けでな く、 さらに 二つ の共通 した特徴がある_一つ は音の継続性 であ り、 も う一つ は音
の高低を表現 で き る とい う属性 、 つ ま り、核 (
ひいては音節)が 、歌曲の 中の -つ の 音
符 に対応 し得 る とい う性 質 であ る
」
あ 。め ・あ 由め 魯ふ 。れ 血ふ 巾れ
じゃ 中の 匂め やで
e
e
か 匂あ 8さ 。ん Bが
お 包む めか せえ 由う せれ むし 匂い ◎な
上の唱歌 では、点 で区切 った一書 一
宮
が
そ れ ぞ れ 音 符 と 対応
、
っているのは 、母 音 、そ Lて r
か あ さん絢
著書 であ る。
た
だ L
J叢
書
で
あ
し て い る
L
/
T
)r
ん」にみ られ る よ うな鼻音 、
れ ば 常 に音節 の 榛 とな り 得
る
か
す
とい う と そ うで は な
クセ ン トが つくかどう
かで も音節 と数え られ る場合 とそ うで オ J\
、
場合
1
n
t
'
r
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し..
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=、
。音節 ,
D核 とヂ
J
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が
な わ ち
く
,
ア
あ る:
_
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「
を もつ と考 える。国語 教育 の現場 で鳥:
、小学校の児童 た ちが 「
小 さい ツ」 も本 音 も観音
も 且胎 と教 え られ 、 手や 机 を叩 いて リズムをとりなが ら 「
等時性」 を身 につ けてい くこれ に応 じて、 日本語 教 育 の現場 で も、モ- ラは同 じ長 さを侍 ってい る と想 定 して指導
す ることが実際 に多いので はないだ ろ うか=
確か に 日本 人が 日本 語 の音韻 構 造 を どう認知 してい るか理論的 に分析す る場 合 、モー
ラは等時性 を もつ と考 え るのは正 しい。 ところが音声学的 に見れ ば、等時性 のモー ラは
c
kman H 9 8 2) に よれ ば, 日本
存在 しない とい う主張 もな されてい る=例えば 、Be
語 の発話 を詳 しく音響 的 に分析 した結果、一
-つ-つ のモ… ラの長 さはてん でば らば らで
あった とい う結果が報 告 され て い るこ こI
J
C
)二とは、音韻論的 な音 節 の認 知 と、
音 声
学上
聞 き取れ る単位 と して の音節のず れ を再確認す る上で非常に興味深 い =そ こで本稿 で も
一つ の実験 を試み た,
。
かな りの 上級 日本語 話者 で も間の取 り方に苦労す る分 と して、 「ち ょっ と待 って くだ
さい 」が挙 げ られ る
。
この文 を普通 に発音 し、サ ウン ドウェーブ ・ス タジオ とい うコン
ピュー タ ソフ トにか け 、波形 を測定 してみた二
50
ち ょっ
とま っ
104
ちょ
179 っ
67 と
3
平均
50
117
て く だ
18
2ま
147 っ
1
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456
2
15
51
さ い
7
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27
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7
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41
9
1
0
5(
ms)
図∠
‖う
ゝら明 らかの よ うに、お よそ壇 の等時性 は読み取 りがたい とい う結果が出たO
も
ちろん 、1拍 1始 はば らば らで も、単語 として、あるいは文 として測定すればや は り i
籍 の平均 値は等 しくな る と主張す る人 もい る
=
しか し、平均値 を論 じた と ころで、 ≡
つ
一つ の音 をまだ意 味 と結び付 けて聞 き取 る ことので きない 日本語 学習者 に、 日本語 にお
ける柏 の等時性 を納得 させ る ことがで きるであろ うか_少な くとも実験的 音声学の研 究
か ら裏付 け され た結論 をみ るな らば . 日本語がモ- ラ gタイム ド 。ランゲー ジ (
等時性
のあ るモ ー ラで区 切 られ ている言語)であるす るのは音韻論的分析 にす ぎない。 日本人
が 「
柏 の長 さは皆 同 じであ る」 と信 じて疑わないのは、子 どもの ころか ら培 ってきた柏
に対す る認識が 、 日本語 の穿董構造 と して 深 く檀づい てい るか らで あ ち
L
I
i
促 音 、 擬 音 とア クセ ン トとの 関 係
第 1章で述 べた よ うに、原則的 には 日本語の 且音節
は
そのま ま 且そ・
-ラにな る と考 え
て支障 は ない とい えるが 、特殊報 の促 音、凝音 に関 しては、 この原則 にあては ま らな
チ-スが あ る
。
ここでは 日本語学習者が促 音 と著者を ど う捉 え て
日本語の アクセ ン ト
2
伯 1
い
る
か と
リズムの捉 え方 との関係 について考えてみ る ことに
す
い
い
う こ と と 、
る
、
促 音 の音声的実 体
促音 とい うのは、断普状態、つ ま り音のない状態 を さす。促 音は、 口は 「
次 の子音 の
構 えを して 、発声 はな くともその準備段階 には十分入 ってい る」 との考 え方 もあるが ,
実際 に コン ビュ- タを使 って実験 してみ る と、音声学的 には まった く実 体のな い音無 し
状態であ る ことが確認 で きる。
ここで またサ ウン ドウェ-プ 。ス タジオ とい うコンビュ- タ Qソフ トをつか って実験
を してみ た。 この ソフ トは グラフを切 り貼 りして音声 を合成 、再生す ることもでき るこ
実験 に使 った言葉 は、 「
勝 った」 と 「
肩」であ る=
た」の間 に音無 し状態 を示す 空 白が あ
まず 「
勝 った」の グ ラフを見 る と、 「
か」 と 「
る。 これ を 「
肩」 の グラフ と比べてみ る と 「
か 」と 「
た 」の部分は 良 く似た波形 を して
い る ことが分か るっ次 に 「
勝 った」の空白部分 (
促音に相 当) を コン ピュー タ上で切 り
取 り、そ の上で再生 してみ る。す る と 「
勝 った」が 「
肩」 と聞 こえる。 これ をア クセ ン
トが同 じタイ プのほか の ミニマ ル eペ アで も実験 してみたが 、それぞれ同一の結果 が得
た」の間 に人 工的 に空 白部分 を挿入す る と、予想通
られ た。 反対 に 「
肩」 の 「
か」 と 「
り 「
勝 っ た 」 と聞 こえた.
。 つ ま り、空 自部分の大 きさに よ り、 日本人は促音の あ るな し
を感 じてい る ら しい ことが分か った二
52
更
C
I
#
53
英語の単語が 日本語 に外 来語 と して取 り入れ られ る場合 、促 音が挿 入 され ることがあ
る。 英語話者 に とっては促 音のない言葉が 、 日本人には促音 を含 む語 として聞 こえるわ
けである。これ も促音には音声学的 実体がない ことに関係 してい るのではないだろ うか,
そ こでネイテ ィブの発音 を用いて、元の英語 と外来語の対照比較 を行 った=英語J
D pe
t
と外 来語 の 「ペ ッ ト」 をサ ウン ドウェ-ブにか けると、 どち らに も先 ほ どの 「
勝 った」
と同 じよ うに真ん 中に新 書状態が模 索で きるここの新書状態 に 日本 人の耳は大変敏感 で、
実際 には二重子音ではな いのに!
,
t
H
i
t
=
音 を感 じ取 っている。・
L
F
i本 人が初 めて英語 を習 うとき、
「
ホ ワ ッ ト イ ズ イ ッ ト?j とい うよ うに、教科書の英文 にふ りがな をふ った りす るの
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ノj
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〇〇
282 促音 とアクセ ン トと,
D問儒
東京 ア クセ ン トでは第 i毎 と第 2柏の高低 が異なる とい う原貝桐 言あ り.
,アクセ ン ト
を掩 レベ ルで考 えるのが-般的で あ るっ例 えば r
学校 」、 「
決心 」な どとい う言葉 は、
次の よ うに解釈 され る。
学校
決心
二
一
J
高
高
っ
し
ん
低
低
低
十
-
底
高
げ
高
何れ も第 2柏 が促 音であ り、アクセ ン トは 「
高」 と 「
低」が与 え られ てい る。 しか しこ
れ まで考察 して きた よ うに、促音は断 音状態 を意味す るのであ るか ら,音 の高 さもある
はずが ない。 日本人が い くら丁寧 に発音 しよ うと、第 2柏 の 「
つ 」 とい う音は聞 こえて
くるはず はないのである。 実際に、英語話者や仏語話者 に とっては、 「
学校 」 も 「
決心 」
も 2音節語 として捉 え られてい る。 「
学校」の場合 は 「
が っ」 と 「こ う」がそれぞれ 1
音節 をな し、 「
決心」 の場合は 「け っ」 と 「しん」がそれぞれ 1音節 をなす と考え られ
る。従って英語話者や仏語話者 に とってのアクセ ン トは、音節 をベ ー スに して 「
学校 」
の場合は 「
低高」 、 「
決心 」の場合 は 「
高低」 と認識 され てい るはず であ る。 ア クセ ン
トはモ- ラあるいは拍 単位 で;
'
j
:
な く、音節単位 で考え られ るべ きであ る とす る考え方 (
原
口、 1988、柴 谷 、 19 90) は 、 この よ うに 日本語教育 の現場 では、非常 に受 け入
れ られやす い ニ
54
2 .3 濯音の音声学的実体
頭子
華音が音声 と して現れ るのは鼻音である= 鼻音は音節構造にお いて オンセ ッ ト (
普) とコー ダ (
末尾子音) においてのみ具現化す る と考 えるのが一般的であるが、筆者
は、後述す るよ うに、アクセン トとの関係か らみて、鼻音が単独 で音節 を形成 しうる、
つま り音節の核の位 置 を占めることができる と考える二
大竹 と米山 (
1
994) に よれば、鼻音はオ ンセ ッ トの位 置に来てナ行 音の子音 としての
機能 も果 たす し、 また コー ダにきて摩ね る音、つ ま り 「
ん」を形成す ることもある)彼
らの実験 で、子音の n を人為的に 1・5倍程度 まで伸ばす と、 日本 人はそのナ行者の前
に 「
ん」 とい うモー ラが挿入 された と認識す る。 「
砂」 とい う言葉 を例に取れば、 「
な」
の子音部 を通常の 1 号5倍以上の長 さにすれ ば、 日本人 の耳には 「
す んな」 と認知 され
るとい う分けであるこ この実験の結果か ら、ナ行音,
D子音,
D n も凝音 の n も、長 さだ け
の違いで本質は同 じである ことが分かる。また 、等時性 のモ- ラであ るな ら、子音の n
を 2倍に しな くては単独のモー ラ 「
ん」 とは認知で きないはず なのに、実際 には 1 。5
倍程度の増長 で 「
ん」 と認識 している。つま り、 日本 人の耳は長 さに敏感 である反面 、
等時性 は必ず しも認知の条件 として必要 としてい る訳ではない ことが窺 える二
2 ・4 擬音 とアクセ ン トとの関係
ここで者 音が単独 で音節の核 を形成 し得る と考え られ る例について検証 してみたい。
「
缶」 とい う言葉 を例 に取 る と、音韻論敵にモー ラを柏 と同義語 として捉 えた場合 、2
モーラ、2拍語であるOモーラを音節構造 中の普遍的な単位 と して捉 えた場合 も、核に 1
モーラ、 コーダに 1モー ラで 2モーラ語 と解釈 で きる
。
一方、 ソノ リテ ィ-や プ ロミネ
ンス、あるいは呼気圧 を測定 したに しても、音声学 上は 、1音節である と認知 され る。 こ
れ をツ リー ダイアグラムで示す と、次のよ うになる
。
「
缶」
音飾
シ ナi
i
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運!
0(
オ
ン
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ブ
り
R
(
ラ
イ
ム
/\
N(
核)
i
a
図 10
55
)
C(
コ ー ダ●
)
A
同音 語 で あ る 「
勘 」 で は 、多少 事情 が異な って くる
。
「
缶 」 の とき と同 じくモ- ラ -
r
jが ない。 ところ
柏 と して 定義 した 場合 ー 「
勘」 は 2モ- ラ 、2祐 語で あ る こ とは変 わ '
「
.
J
.
】
■
.
4 .
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々
舟
・′
・
ヽ⊥
L.
ー
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か ‡
斬」 では ;
宙 」 とア クセ ン トか異 T
三g
)、 さ
即 日 言弟 Zf
t
i
L
J
)≡
ん 」 で トー ンが上 が っ
て い る。 母音 の aよ り鼻音 の nの 方が高い ことが認 め られ る二
ヽ
ELt
h
′
′
バ
ー
i
r
ノ
.
′
g
l
ヽ
R
藍
1 N・
ー
・
・
・
Ia
-
C
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- --
寒 _書 盈蔓
普
「
勘」
塑F
IE
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ア クセ ン トを持 つ 第 2モ- ラの 「
ん」は、第 望音節u
T
)核 の部 分 を 責め てい る
J
つ 去 り、
「
ん j は 単独 で も音 節 をなせ と考 える二
r)
「
ん
」
は単 独,
j
T
)音 符 を与 え られ てお り、叢 書が独 立 した音 節 を形 成 L得 る ことを 亭 し
てい る=一 方 、 「ヒ ソチ ピ ッチ チ ヤ ップチャ ップ ラ ンラ ンラ ン」の 中で 「ラ ン 」 は 「ン 」
を コ- ダ に位 置 し、 「
缶 」 と同 じ音節構造 とな って い る。
この よ うに擬 音 に は 、 単独 で音 節 とな り得 る場合 とそ うでな い場 合 とが あ り、 そ
こ
で
はア クセ ン トを持 つ か持 た ない かが鍵 とな ってい る。促 音 の例で 見 た よ うに 、 ここで も、
日本 語 の ア クセ ン トを把 握 す るた めには、音 声学 上 の音節 とい う概 念 が音 韻論 上 の モ ー
ラや 柏 よ りも有効 で あ る こ とが分 か る二
おわ りに
日本 語 教 育の 立場 か らは 日本 語 学 習 者が 日本語 を ど う聞 き取 って い るか とい うこ とに
対す る配 慮 が不 可欠 で あ る。Ya
mada(1994) らの研 究 に よれ ば 、被験 者 にゆ っ く り
日本 語 の意 味 な し語 を聞 き取 らせ る実験 を した ところ、 日本 人 は モ ー ラ単位 、 フ ラ ンス
人は音 節 単位 、イ ギ リス人 は音 節 を も とに した強 弱 の ス トレス単 位 で音 を聞 き分 けた そ
うで あ るこつ ま り、母 語 の リズ ム、ア クセ ン ト体系 で対象言 語 の リズム、 ア クセ ン トを
捉 え よ うとす る傾向が 顕 著 で あ る とい うことがで き るだ ろ う
ア クセ ン トの タイ プ に もい ろ い ろあ り、 日本語 は高 低 ア クセ ン ト、英語 は強 弱 ア クセ
56
ン トと言われ、高低 、強弱が まった く別の性 質 の もので あ るかの よ うに考 えが ちであ る
が、実際 には両者 には密接 な関係 がある。英語 で も 日本語で も、強 く発音 され る音は 同
時 に高 く、弱 く発音 され る音は同時 に低 くな る傾向が あ り、英語 に も日本語 に も強弱 、
高低 の要素 が認 め られ る, また、音の強弱 と長短 との間 に も相関関係 があ る_英語 で も
日本語 で も、高い音 は強 く長 く、低い音は弱 く短 くな る僚向がみ られ る、
これ まで 日本語教 育 にお いては、ア クセ ン トをモー ラ単位で教 え る教授 法が 一般的 で
あったo アクセ ン トをモー ラ単位で捉 える ことは、音韻 論的 、つ ま り、 日本 人が 日本 語
を どの よ うに捉 えてい るか を考察す る上で有意義であ る ことは明 らかであ る。 しか し、
そ もそ も音 と機能 との関連性 を音韻論的に認 知す る素地が ない 日本語学習者 に とって は 、
実際 に ど う聞 こえ るか 、あ るいは ど う聞 こえて いるはず なのか とい う、音 を純然た る音
として観察す る音声学的 アプ ローチが不可欠で ある とい え よ う二本稿 では、華 音 、促 音
とい う特殊柏 とア クセ ン トとの関係か ら、従来 の国語教 育を基 に したア クセ ン ト教授 法
の問題 点 を提起 したが 、実際に音節単位のア クセ ン ト指 導が どれ だけ効果的 で あ るか に
ついては、今後の課題 として さらに詳 しい検証 を行 ってい きたい。
参考文献
窪薗晴 夫
(1995)語形成 と音韻構造 :くろ しお出版
田代克二
(1985)美 しい 日本語の発音 :創元社
服部 四郎
(1984)音声学 :岩波書店
Bec
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