発表概要 H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学

発表概要
H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」
氏名(学籍番号) 福森亮太 (133-t2741)
論文題目
Evolution of springback and neutral layer of AZ31B magnesium alloy V-bending under warm
forming conditions
著者
Lifei Wanga, Guangsheng Huanga, , Hua Zhanga, , Yanxia Wanga, Liang Yina
Journal of Materials Processing Technology (2013) 844–850
論文出典
【緒言】
曲げ加工は材料の成形加工プロセスにおいて重要な工程である。し
かし曲げの際、材料にスプリングバックが加工精度に影響を及ぼす。
そこで、スプリングバックを抑制するため、Bruni ら[1]は成形時の温
度増加やパンチ半径の減少によってスプリングバックを抑制できる
ことを報告した。しかしまだスプリングバックを完全に抑制できてい
ない。このスプリングバックを正確に予測できなかったのは中立層の
移動を考慮していなかったことが原因ではないかと考えられる。そこ
で、本研究では V 字型曲げ試験により、スプリングバックの発生お
よび曲げ過程における中立層の移動の影響について調査することを
目的とした。
【実験方法】
試料は AZ31B 薄板を用い、試料寸法は 3(t)×30(w)×80(l) mm、パ
ンチ初期速度は 10 mm/min とした。パンチ半径 9.3 mm、温度を 50℃
から 300℃まで 50℃毎に上げた条件で行い、
実験 2 では温度を 100℃、
パンチ半径を 7.5, 8.1, 8.7, 9.3 mm で V 字型曲げ試験を行った。中立
層の移動はスタンプ理論[2]を用いて中立層係数(k 値)によって測定し
た。k 値は以下の式で求めた。
k=0.5β2−(1−β)Ri/t
ここでβは厚さの変化率、Ri は内側の曲げ半径、t は試験前の厚さで
ある。k 値が 0.5 未満で中立層は圧縮側へ移動し、0.5 以上で引張側へ
移動したことを示す。試験後、光学顕微鏡を用いて組織観察を行った。
【結果及び考察】
Fig. 1 に、各温度に対するスプリングバック角と k 値を示す。Fig.
1(a)より、温度増加によって、スプリングバック角が減少しているこ
とが分かる。ここで、スプリングバックは材料の弾性率と降伏応力に
影響を受けることが知られている[3]ことから温度増加に伴って、降伏
応力が減少し、これによってスプリングバック角が減少したと考えら
れる。
Fig. 1(b)より、温度増加によって、k 値が減少していることが分か
る。これは温度増加に伴って、試料の圧縮(内側)領域で再結晶が起こ
り、双晶が減少することで引張-圧縮の非対称性が弱まったためであ
ると考えられる。
Fig. 2 に各パンチ半径に対するスプリングバック角と k 値を示す。
Fig. 2(a)より、パンチ半径減少によってスプリングバック角が減少し
ていることが分かる。これはパンチ半径減少に伴い、曲げ応力が増加
することで試料に生じるひずみが増加したためであると考えられる。
Fig. 2(b)より、パンチ半径が減少することで、k 値が増加している
ことが分かる。これはパンチ半径減少によって曲げ応力が増加し、双
晶の量が増えたためであると考えられる。
k 値が常に 0.5 以上になっていることから、マグネシウムを曲げた
際、中立層は引張側に移動していることが分かった。このことからス
プリングバックの予測には中立層の移動を考慮しなくてはならない
と言える。
【参考文献】
[1]C. Bruni, A. Forcellese, F. Gabrielli, M. Simoncini Journal of Materials
Processing Technology, (2006), 373–376
[2]Liang BW. Cold stamping process manual. Beijng: Beijing University
of Aeronautics and Astronautics; 2004.
[3]D. Vasudevan, P. PadmanabnanJournal of Zhejiang University. Science A,
(2011),183–189
Fig. 1 (a)Effect of temperature on springback
angle (b)effect of temperature on k-value
(a)
(b)
Fig. 2 (a)Effect of Punch radius on springback
angle (b)effect of Punch radius on k-value