金融政策リスクが揺さぶる 為替と日本経済の行方 ブルームバーグ・インテリジェンス エコノミスト 増島 雄樹 BI ECON<Go> BIE JP<Go> ドル円は2014年10月の 日銀ハロウィーン緩和以来の円高水準に • Content {ECWB P 570C5B903F280002<Go>} 日米欧で政治イベントによる不確実性が高まる イベント イベント 6/14-15 米FOMC、英MPC(15日) 8月上旬 6/15-16 日本17年度予算、閣議了承 日銀金融政策決定会合 9/21-22 6/16 米FOMC、経済見通し公表 英国MPC 10月上旬 6/23 日本臨時国会召集? 英国Brexit 住民投票 10月中 7/8 伊憲法改正の国民投票 米、雇用統計 10月中 7/10 財務省半期為替報告書発表 日本、参議院議員選挙 11/1-2 7/20 米FOMC ギリシャ国債償還(約23億€) 11/8 7/21 大統領選挙、議会選挙 ECB理事会 12/13-14 7/26-27 米FOMC、経済見通し公表 米FOMC 12月中 7/28-29 日本17年度税制改正大綱 日銀金融政策決定会合、展望 為替と日本経済の見通し • 経済成長率は2016年0.4%、2017年0.6%。5兆円の補正予算 • ドル円は日米金利差拡大を前提に、緩やかな円安が進む 主要中銀の金融政策の見通し • • • 日銀は7月会合で追加緩和、政策金利-0.1%→ - 0.2%に引き下げ、金融 資産購入年間80兆円→90兆円、ETF3兆円→4兆円 FRBは年内2回、7月と12月の利上げを見込む ECBは9月までは様子見。その後実体経済悪化あれば追加緩和 海外経済の前提条件 • 海外経済の実質成長率は、米欧と新興国の温度差はあるものの全体とし ては緩慢に拡大していく リスク • メインシナリオは緩やかな円安 • ただし、突発的な円高リスクは依然大きい 円高リスク • • • Brexit、米国の景気後退、中国リスクの拡大などによる避難通貨需要拡大 次の米為替報告書(10月)でも引き続き、日本は監視リスト入り→介入制約 国債の流動性低下などマイナス金利の限界などが露呈することによる、金融 政策限界論の台頭 円安リスク • 海外経済の順調な回復 • 秋の安倍内閣の経済対策で、新しいより具体的な成長戦略が策定 • 市場予想を上回るペースの日銀の金融緩和→ただし影響は一時的 日本経済見通し―シナリオ比較(暦年) 【消費税延期と補正予算でかさ上げされる日本の経済成長率】 %、 ポイント 1.0 民間最終消費 民間設備投資 民間住宅投資 公的需要 純輸出 実質成長率 2.0 0.6% 0.4% 0.5 0.0 1.5 1.5 1.0 1.0 0.3% 0.5 0.2% ‐0.5 予測値 ‐1.0 2017 0.4% 0.2% 0.5 ‐0.5 予測値 ‐1.0 2013 2014 2015 2016 (資料)内閣府、 Bloomberg Intelligence 17年4月の消費税 引上げ+追加補正 0.0 0.0 ‐0.5 2.0 追加の 補正予算無し %、ポイント 1.5 メインシナリオ ‐5兆円の追加補正予算 %、ポイント 2.0 • Content 予測値 ‐1.0 2016 2017 2016 2017 {NSN O8HT506S972M <GO>} 日本経済見通し(四半期) • 為替は日米金利差拡大を背景に、2016年末で110円、17年末で112円半ば程度の緩やかな円安 傾向が続くとの前提。ただし、輸出を大幅に押し上げるには至らない。 • 2020年に名目GDP600兆円を達成させるための具体的な方策が依然明らかでないため、補正予 算の効果が出尽くすにつれ、成長率もゼロに近づいていく。 10 予測値 5 %、ポイント • 補正予算の中身は、乗 数効果の低いプレミアム 商品券など政府移転支 出によるものが多いと見 込む • こうした対策は消費増に つながるが輸入増も伴う ため、補正予算の成長 率の押し上げ効果は希 薄化される • 18年には、16-17年の 財政支出増加の反動で 成長率は押し下げられる 0 ‐5 ‐10 ‐15 ‐20 純輸出 公的需要 民間設備投資 民間住宅投資 民間最終消費 実質成長率 市場コンセンサス 2013 2013 2013 2014 2014 2014 2014 2015 2015 2015 2015 2016 2016 2016 2016 2017 2017 2017 2017 2018 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q (資料)内閣府、 Bloomberg Intelligence、日本経済研究センター {NSN O8HT506S972M <GO>} 【日銀展望レポートのコアCPI見通し】 (注 17年4月消費税引き上げを前提) 2.5 物価見通し 2.0 4月 1月 実績 YoY % 1.5 • 16年春闘の結果が前年比より芳しくなかったこと から賃金上昇による物価押し上げは限られる。円 安・原油高頼みの展開が当面続く 1.0 0.5 0.0 ‐0.5 【BI コアCPI見通し】 (%) ‐1.0 年度 2014 2015 2016 (資料)日本銀行, Bloomberg Intelligence 1.5 120 1.3 110 1.1 100 0.9 90 0.7 80 日銀コア導入 (2015年7月) 0.5 70 0.3 0.1 ‐0.1 ‐0.3 2017 予測値 60 50 コアCPI(除く消費税) ドル円(右軸) 40 原油価格($/バレル、右軸) 30 2013 2013 2013 2014 2014 2014 2014 2015 2015 2015 2015 2016 2016 2016 2016 2017 2017 2017 2017 2018 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q (資料)総務省、 Bloomberg Intelligence {ECWB P 575DFF5A3F400000<Go>} 日銀の追加緩和は7月に 日本銀行-政策委員会(2016年6月会合) 6月会合の緩和は見送り、7月緩和を見込む 市場予想では6月予想が28%、7月が55% • マイナス金利導入が必ずしも家計に好意的にと られていないことから、7月10日の参院選前に積 極的に動く必要性は低い • 7月の展望レポートでは、消費税引き上げの前 提が変わることから、見通し変更とともに追加緩 和か • Brexitや7月FOMCを見極めたい思惑も • マイナス金利導入に反対した石田審議委員は6 月で退任 • 消費税引き上げ延期の短期の影響は軽微、中 期的には追加緩和の副作用の懸念から、政策 オプションの制約の可能性も 物価2%達成に手段選ばず 追加緩和 追加緩和 積極派 慎重派 金融安定性重視 マイナス金利は少しずつ市場に浸透 【O/N無担保コール取引残高】 {ECWB P 56DF80053F400000<Go>} 【金利動向】 {ECWB P 56E8E4483F341395<Go>} 年初来、マイナス金利深堀よりも、 FRBの動向に為替は反応 • 韓国中銀が前倒しで利下げ、人民元も通貨 安方向で、対アジア通貨でも円高に 【日米金利差と為替動向】 【東アジア各国の為替動向】 {ECWB P 575E42A83F34000E<Go>} {ECWB P 55CAAC7C3F340000<Go>} 国内は逆張り、海外は順張り? • 6月10日公表の日銀レビューでは、海外投資家の順張り、国内投資家の逆張り傾向を指摘 【シカゴIMM円先物ポジション】 【東京為替取引建玉】 ネット円ロングポジション 円ロングポジション 円ショートポジション ドル円為替レート ドル円ショート ドル円ロング ネットドル円ショート(円ロング)残高 ドル円為替レート {ECWB P 562F10623F240026<Go>} {ECWB P 575D383F3F340002<Go>} 日本の貿易黒字がG7政策の障害に -米の見解はまだ円安? • 5月末のG7では日米間の為替相場の動向についての見解の溝が埋まらなかった。ルー米財務 長官の為替相場に対する見解は、対米貿易収支が軸とみられ、米側が政府・日銀の為替介入 を容認するとは見込めない。日本の貿易収支の黒字拡大傾向も米見解を後押ししている • 4月の米為替報告は日中独など大幅な対米貿易黒字国5カ国を監視リストに • 中南米各国は大幅な通貨安にもかかわらず対米赤字のためリスト外 米国からみた均衡為替レート • 米有力シンクタンクは昨年10月時点で 円は対ドルで11.2%過度な円安と評価 • 対米貿易収支が均衡するような為替の 評価手法で円が評価されているため、 それ以降の10%程度の円高を加味して も依然円安と評価の可能性 日本の貿易黒字がG7政策の障害に -米の見解はまだ円安? • 次回の報告書(10月中)でも監視リスト入りが濃厚→米国は円安政策に批判的な状況続く 監視リスト入りの条件(以下のうち2つ以上が抵触) (1)対米貿易黒字が200億ドル超 (2)経常黒字が対GDP比3%超 (3)一方向の継続的な為替介入の実施(海外資産を対GDP比2%超購入する) 【米国の貿易収支(月次)】 {ECWB P 575D91B73F200004<Go>} {ECWB P 5742801B3F3C009B<Go>} ファンダメンタルズからみて、円高なのか? 均衡実質実効為替レートからみた水準 • 最近の急速な円高により、円を割安と判断しがちな、米シンクタンクの均衡為替レートで見ても 均衡水準に近づいている可能性が高い 130 10.0 125 8.0 120 6.0 115 4.0 110 105 2.0 100 0.0 95 ‐2.0 90 貿易収支(名目GDP比、右軸) ドル円 均衡為替レート 85 ‐4.0 80 ‐6.0 2013 2Q 2013 3Q 2013 4Q 2014 1Q 2014 2Q 2014 3Q 2014 4Q 2015 1Q (資料)Peterson Institute、 Bloomberg Intelligence 2015 2Q 2015 3Q 2015 4Q 2016 1Q 2016 2Q Brexitの影響 -英国のEU離脱の賛否は • 総合指数では足元でBrexit支持が再度上回る • 電話調査によるEUに留まる支持が急低下していることが背景 BREX<Go> Brexitの影響 -英経常収支、移民 • 英国のEUへの輸出割合は約半分 • 経常収支は赤字が続くが、金融・保険業を含 むサービス収支は大幅な黒字 • 移民の流入がなくなれば、英国の成長率を 中期的に下押し Brexitの影響 -英財務省はBrexitの悪影響を大きく見積もる -米国経済への直接的な影響は限定的か 【Brexitの米国経済への影響】 【Brexitの英国経済への影響】 ステップ Brexit:経済インパクトまとめ {NSN O8CR976S972U <Go>} 下限 中心値 上限 生産性効果(%) 3.0 4.5 6.0 恒久的インパクト(%) 1.0 1.0 1.0 一人当たりGDPにおける 全要素生産性の影響(%) 0.6 0.7 0.8 ベースラインGDPからの乖離(%ポイント) 4.6 6.2 7.8 Source: Bloomberg Intelligence, HM Treasury Brexitショックースイスショックには及ばないか・・・ -為替・金融政策への影響 Brexit:経済インパクトまとめ {NSN O8CR976S972U <Go>} 仮にスイスショック並みなら、円高リスクも 【対ユーロの為替レート】 {ECWB P 56AEB8373F200004<Go>} 【欧州各国の政策金利】 {ECWB P 56AEB8923F200008<Go>} DISCLAIMER §The BLOOMBERG PROFESSIONAL® service and BLOOMBERG Data (the “Services”) are owned and distributed by Bloomberg Finance L.P. (“BFLP”) in all jurisdictions other than Argentina, Bermuda, China, India, Japan, and Korea (the “BLP Countries”). BFLP is a wholly owned subsidiary of Bloomberg L.P. (“BLP”). BLP provides BFLP with global marketing and operational support and service for the Services and distributes the Services either directly or through a non-BFLP subsidiary in the BLP Countries. Certain functionalities distributed via the Services are available only to sophisticated institutional investors and only where the necessary legal clearance has been obtained. BFLP, BLP and their affiliates do not guarantee the accuracy of prices or information in the Services. Nothing in the Services shall constitute or be construed as an offering of financial instruments by BFLP, BLP or their affiliates, or as investment advice or recommendations by BFLP, BLP or their affiliates of “an investment strategy or whether or not to “buy”, “sell” or “hold” an investment. 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