542 包括受遺者の相次相続控除の適用の可否について

平成 28 年 6 月 20 日
No.542
包括受遺者の相次相続控除の適用の可否について
平成 28 年 3 月 3 日に東京国税局から「相続人以外の者が包括遺贈により財産を取得した場合における相次相続控除
の適用可否について(文章回答事例)
」が公表されましたので、今回はその内容をご紹介します。
1. 相次相続控除(相続税法 20 条)の概要
(1)制度の概要
一般的に、相続の開始があってから次の相続の開始までは相当の期間があるのが通常であり、この場合には、相続税
の負担も特に問題とならないと考えられます。しかし、短期間に相続の開始が続いた場合には、相続税の負担が過重と
なります。
そこで、相続税法においては相次相続控除の制度を設け、その負担の調整を図ることとしています。すなわち、10
年以内に 2 回以上の相続があった場合には、前の相続において課税された相続税額のうち、1 年につき 10%の割合で
逓減した後の金額を後の相続に係る相続税額から控除する制度です。
(2)適用要件
次の①から②のすべての要件を満たすことです。
①被相続人の相続人であること
②その相続の開始前 10 年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
③その相続の開始前 10 年以内に開始した相続により取得した財産について被相続人に対し相続税が課税されたこと
2. 照会の概要
乙は平成 26 年 9 月に死亡し、乙の配偶者である甲は乙の財産をすべて取得して相続税の申告と納付を行った(第 1
次相続)
。そして、平成 27 年 6 月に甲が死亡したため、乙の甥と姪が遺言によってその財産をすべて取得し、申告と納
付を行うこととなった(第 2 次相続)
。そこで、
「包括受遺者」に該当する甥と姪による相次相続控除の適用の可否が照
会されました。
《相続人関係図》
A
a(乙の甥: 包括受遺者)
B
b(乙の甥: 包括受遺者)
乙(第1次相続に係る被相続人)
… 平成26年9月死亡(第1次相続)
甲(第2次相続に係る被相続人)
… 平成27年6月死亡(第2次相続)
X
3.
照会についての回答の概要
相次相続控除(相続税法 20 条)に規定されている「相続」には、被相続人からの「相続人」への遺贈を含むことと
されており、民法第 999 条においては「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
」と規定されていることか
ら、相続税法 20 条に規定する「相続人」には包括受遺者も含まれると解することができるのではないかという疑義が生
じます。
しかし、相続税法 20 条においては、
「相続人」に「包括受遺者」を含む旨の規定はされておらず、相続税法の規定の
中には「相続人」に包括受遺者を含む旨を明記しているものがあることからすれば、相続税法 20 条は「相続人」と「包
括受遺者」を別に扱っているものと考えられます。
したがって、相続人でない者で包括受遺者となる者が遺贈により財産を取得する場合には、相次相続控除の適用はな
いとする回答が公表されました。
相続税法の中には、相続人のみにしか適用が認められない規定と包括受遺者であっても適用が認められる規定がある
ため、適用の有無を判断する場合には注意が必要です。
(担当:河野 哲也)