Page 1 水田作土の構造と水稲生育 出 并 土壌構造は土壌中の水および

2 7
水田 作 土 の 構 造 と 水 稲 生 育
出
井
義光 *
土 壌 構 造 は土 壌 中 の水 お よび 空 気 の状 態 を規 制 す る こ
表一 1
水 田耕 土 の構 造 の種 類
避
とを通 して作 物 生 育 と関 係 を も って い る。 通 気 性 不 良 に
亜層
位
格
厚さ
状
由来 す る湿 害 や 水 分 不 足 に よ る干 バ ツ も土 壌 構 造 の不 良
第1
1 cm
泥
状 状 紙 状 状 状
一
.
︰じ
甘 ,
状 状
塊
コ
り
コ
いク
ハし
m
∼
−
h
J
第
た が た め に土 壌 構 造 が地 力 に 占 め る比 重 がや や 小 さ く な
3
営 的 には 集 約 農業 で あ り, さ ら に水 田中 心 の 農 業 で あ っ
ン 粒
お くれ て い た が , こ れ は , 穿 こ
供 的 に 多 雨 条 件 で あ り, 経
枇
∼
茶2
わ が国 は 諸 外 国 に くらべ て ,土 壌 構 造 に関 す る研究 が
C
5
であ る。
叩 パ 用 塊 管 氾
性 が一 因 と な って お り,土 壌 構 造 は地 力 の主 要 因 の 一 つ
っ て い た た め と考 え ら れ る 。 戦 後 , 畑 地 農 業 が 脚 光 を 浴
び る と と もに ,土 壌 構 造 に対 す る 関 心 が 高 ま っ て き た
よれ ば , 水 田 作土 は畑 地 の作 土 と構 造 上著 し く趣 を異 に
が ,水 田 の構 造 に関 して は , 水 秤 が タ ン 水 条 件 下 で栽
して い る こ とを 明 らか に した 。 す な わ ち水 田作 土 は ,通
培 され る関 係 上, 畑 作 物 に み られ る如 き,干 バ ツ や湿 害
常 ,構 造 的 に異 な る 3 つ の亜 層 に分 化 して い る こ と, さ
と構 造 と の 関 連 で 一 義 的 に 論 ず る こ と が で き ず , そ の 研
ら に水 田特 有 の構 造 す なわ ち パ ン状 ,管 状 ,泥 状 構 造 が
究は 寂 々 た る も の で あ っ た 。 た だ , 水 田 の 乾 田 化 や 干 拓
存在 す る こ と を 示 し , こ れ ら の 生 成 条 件 に つ い て もふ れ
地造 成 に際 し ,下 層土 の構 造 の 発達 が注 目 され , また 最
て い る。 それ ら の関 係 を義 一 1 に示 した 。
近で は , ト ラ ク タ の 走 行 性 や 直 播 水 稲 の 苗 立 ち と の 関 係
2・
栽 培 様 式 と土 壌 構 造
で, 水 田 土 壌 の 構 造 が 重 要 視 さ れ て き て い る 。
水 稲 は 頂沢 作 物 で あ るた め に還 元 条件 の土 壌 中 で もよ
=作 土 の 構 造 は 栽 培 様 式 に よ って著 し く影 響 を うけ て い
く生 育 す る と さ れ て い た が , し か し , こ の 現 象 は 水 稲 が
る。 そ こ で各 種 の栽 培 棟 式 や 管 理 法 に よ って 構 造 が 如 何
タン 水 栽 培 へ の 適 応 の 姿 で あ り, 本 質 的 に は 培 地 が あ る
に 変 化 し て い る か を み る こ と とす る 。
程度 酸 化 的 に な っ て い る こ と が 好 ま しい こ とが 明 ら か に
さ れ て き た 。 米 作 日本 一 農 家 で は , 水管 理 を通 じて 土壌
( 1 ) 有機質肥料の影響
水 稲 に対 す る有 機 質 肥 料 の 効 果 は ,主 に含 有 窒 素 の 緩
培 地 の酸 化 的 健 全 化 をはか っ て い
る こ と は よ く知 ら れ て い る 。 これ
ら の 事 実 と l鳩適 し て , 移 植 水 稲 の
生 育 ひ い て は 水 稲 の 多 収穫 に お い
て水 田 土 壌 と くに 作土 の構 造 は如
何 な る 意 義 を も って い る か に つ い
て は 興 味 あ る 問題 で あ るの で ,既
応の 研 究 を概 観 す る と と も に , わ
らわ れ の最 近 の研 究 を中 心 に して
述べ る こ と と す る 。
1 . 水 田作 土 の 構造 の 種 類
水 田作 土 の構 造 を体 系 づ け て 研
究し た の は 青 峰 1J で あ る 。 背 峰 に
一成 林 省 農 事 試験 場
写真 − † 肥 料 連 用 と作土 の構 造
(1)
緑 肥 連 用 区 (左 )(2)
知 巴料 区 (右 )
水田 作 土 の 構 造 と 水 稲 生 育
2 8
0
5
風 相 索
T︵ 邑
仙
仙
注意 す べ き で あ ろ う。
近 年 , 農 村 の労 働 事情 の変 化 か ら,生 わ ら を水 田 に直
無祀
接還 元 す る こ と が 多 く な っ て い る が , 生 わ ら は 堆 厩 肥 よ
り も 土 壌 を よ り粒 状 化 す る機 能 を も っ て お り5), こ の 観
無楓
点か ら 生 わ ら 施 用 の 効 果 を 考 え る 必 要 が あ る だ ろ う。
(2) 乾 田直 播 栽 培 と土 壌 構 造
緑月巴
乾 田直 播 の栽 培法 は移 植 の そ れ とは 甚 し く異 な って お
り, 耕 起 の 時 期 や 程 度 さ ら に 代 か き を 行 わ な い な ど 構 造
に影 響 す る 栽 培 技 術 に 大 き い 相 違 が み られ る 。 そ こ で 乾
5月 15 日
6 日 2 9 8
8 削 ○〔]
TO 日 5 E 】
(耕起前) ( 懲 諾 ) (宮詣 ) ( 養 藷 )
図−1
田直 播 水 田 の作土 の構 造 を調査 して み た3)
。 移 植水 田 は
作土 全 体 が 泥状 構 造 で あ り,亜 層 の 分 化 に も乏 しか った
が, 直 播 水 田 で は 多 くの 場 合 , 粒 状 構 造化 が 進 ん で い る
肥 料 連 用 と固 相 率 の 変 化
こと が 特 徴 で あ っ た 。 作 土 の 団 粒 分 析 の 成 績 を表 一 3 に
効性 と含 有 養 分 の 多 様 性 で 論 じ ら れ て き た が , 構 造 に 対
する有 機 物 施 用 の影 響 は実 に顕 著 で あ る。鴻 巣 の農 事 試
にお い て 40 年 間 に わた り,無 機 質 肥 料 や有 機 質肥 料 連 用
古口
水田 の 作 土 の 構 造 は 写 真 1 に 示 し た よ う に 明 ら か に 異 な
ムー
ム 黎 砕 土磯
っ て い る3)
。 有 機 質 肥 料 と くに緑 肥 の 連用 区 で は ,作土
4 0
は明 ら か に 三 つ の 亜 層 に 分 化 し , 第 1 亜 層 は 細 粒 状 に ,
第2 亜 層 は よ く発 達 し た 粒 状 構 造 を も っ て お り , 第 3 亜
∂0
層は 弱 塊 状 を 呈 し て い た 。 こ れ に 反 し て , 無 肥 料 や 無 機
質肥 料 連 用 区 は 亜 層 の 分 化 が 不 明 瞭 で あ り , と く に 第 2
2( )
亜層 に 粒 状 構 造 が み と め ら れ が た い 。 か か る 事 実 は 青 森
農試 の有 機 質 肥 料 の 連 用 試験 4)に お い て も認 め られ て い
る。 こ の よ う な 構 造 の 違 い が , 栽 培 期 間 中 ど の よ う な状
態に あ る か を 追 跡 し た 成 績 を 図【
70
1 と表 一 2 に 示 し た 。
男
泥 状 構 造 の 作土 は粒 状 の もの に比 べ て固 相 率 は 終 始大
>の
きく経 過 して お り, ま た 団 粒 含 量 は 少 な く , 土 塊 部 分 が
2 0 〝の
図−2
の場 合 の よ う に 大 孔 隙 の 増 大 に 直 接 結 び つ か な い こ とは
耕 う ん 法 と土 塊 分 布
︵︷ ∪
。
・一一一
・
・−一ペ
∵、、\
無肥 料
無機連用
ほ8月吋
3 1.
8
団 粒 部 分
1・
55
( 1 0 ∼ 0 .5 m m )
表− 3
別 日 8月叫 7月ほ ほ川 日
2語】
27莞
矧
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。
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%1。
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2.
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回
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1 7 .1
乾 田 直挿 に よる土 壌 団粒 の変 化
場所
塁
有機連用
3■23
5
(>10 m m )
緑肥連用
有 恵T
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3
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土塊 部 分
月ほ 8月吋
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含
仰
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甜
肥 料 連 用 と土 壌 団粒
5 ∼/
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径 区 分( m m 〕
多くな っ て い た 。 た だ 水 田 作 土 に お け る塊 状 構 造 は 畑 地
表− 2
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7 〟2(〕
区
m ml
分
(9乙)
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JO
m n 1
0 ∼ 1.
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三 ; 二;
国− 3
2 0 ∼4 .
0
4 0 ∼β0
区 分 ⊂Cれ)
シ ロ カ キ と土 塊 分 布
>80
土壌
の
物
示した が ,虐 播 田 の 作土 は移 植 田 の それ に比 べ て ,0 .
5∼
0 、
05m m の団 粒 部 分 が 多 く,土 塊 お よ び微 細 粒 子 が 少 な
理
性
第 16号
29
(4) 田 畑輪 換 と土 壌構 i隼
田 畑 輪 換 に よ っ て 水 稲 生 育 が よ く な る こ と は よ く知 ら
い傾 向 が み られ た 。 こ の よ うな構 造 変 化 を反 映 して , 直
れて い る 。 上 郷 8)は 田 畑 輪 換 に よ る土 壌 変 化 を 詳 細 に 研
播田 の 作 土 の E h は 移 植 田 よ り も約 1仰 m V 高 く , 根 腐 れ
究し , 田 畑 輪 換 に よ っ て 土 壌 の 団 粒 含 量 は 明 ら か に 増 大
の発 生 も少 ない よ うで あ った。
し, 水 中 沈 寛 容 稗 が 低 下 す る こ と , ま た こ の 傾 向 は 畑 期
(3 ) 耕 うん 法 と構造
間の 長 い ほ ど著 し い こ と を 明 ら か に し た(表 − 4 .
)。 そ し
耕 うん の 精 粗 あ る い は シ ロ カ キ の 有 無 や 程 度 は 土 壌 構
造に影 響 を及 ぼ す。 糾 うん法 と土 壌 変 化 お よび水 稲 生 育
てこ れ ら の 変 化 が 水 稲 生 育 を 良 くす る 一 因 を な し て い る
とし た 。
の 関 係 に つ い て は 泉 6)に よ っ て 詳 細 に 研 究 さ れ て い る。
表一 4
耕う ん 機 は ス キ 砕 土 機 の 耕 う ん に 比 べ て 土 壌 は 細 砕 さ れ
る傾 向 が あ る。 そ の結 果 ,前者 で は土 壌 のE h は低 く,窒
耐 水 性 用 粒 (
9乙
)
叫 沈
タン水一
打 (S .
ご
【
り
水 稲 収 穫 後 .■
絹 横
蒜 1;
司  ̄
市
ドC呂
■
;
g)
詔 下J司 両 石 ; ̄
素の 無 機 化 は 多 く な る 特 徴 を も っ て い た 。 こ の 傾 向 は 簡
易耕 や 不 耕 起 栽 培 に お い て も み ら れ る 。
水 田作 土 を泥 状化 す る最 大 の要 因 は シ ロ カ キ作業 で あ
る。 シ ロカ キは 漏水 の 防止 , 田植 を容 易 に す るこ と,肥
。.
(,】…
;垂年 水 稲
区
掃年 輪 換
5 .1
A 区
料の全 層 混 和 ,雑 草 の抑 制 , 田面 の均 平 化 な ど多 様 の 意
義が あ るが ,土 壌 構 造 面 か らみ る と, 塊 状 や粒 状 構 造 を
泥状 化 す る 作 業 で あ り, そ の 変 化 の 状 況 を 園 − 3 に 示 し
た7)シ ロ カ キ の 功 罪 は 土 壌 や 気 象 条 件 に よ っ て 異 な り 、
田畑 輪 換 に よ る構 造 の変 化
9
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1 7 ,・1
」
1 7 .7
1
境地 の粘 土 質 の水 田で は 代 か き を軽 度 に す る方 が水 稲 生
育に 対 し よ い よ う で あ る 。
刀
2(
一
5m
耕 うん 接 と 関 連 し て 問 題 に な る の は 耕 魔 の 時 期 ひ い て
構造 の 変 化 を 示 し た が , 秋 耕 を す る と ,2 c m 以 上 の 大 土
・圃椅ホ モ 卓土
2
7
は乾 燥 の 程 度 で あ る 。 表 日本 で は 秋 耕 は 土 壌 の 団 粒 化 を
助長 し , 作 土 の 粒 状 化 を 促 進 す る 。 図 − 4 に 乾 燥 に よ る
。/『
05
∼ エ0
爪 7乃
塊を減 少 させ 団粒 部分 が明 らか に増 大 したB)
。 埼玉県 下
で乾 田 値 播 田 で 秋 耕 が 励 行 さ れ て い る の も , か か る 構 造
変化 が 発 芽 苗 立 に 好 結 果 を も た ら す た め で あ る 。
4
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有
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図一 5
土 粒 の粒 径 と問 ゲ キ分 布 (前 田 未 発 表 )
﹁ハ
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囲 − ヰ 乾 燥 ・ シ ロ カ キ と土 粒 分 布
囲− 6
肥 料連 用 七壌 の 間 ゲ キ分 布
ぴ
水田
30
作土 の 構 造 と水 稲 生 育
5 即 5 日
6 日2 9 日
( 耕鮒 )
土 壌 構 造 と酸 化 還 元性
直港 B 風範 士
須礫 澄 田生士
叫
︶
図一8
10 月 5 日
8 即 0 日
P 鱗 誉) ( 官言占) ( 莞 諾 )
ア
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窒
8、ノモ︵
0ヤ 乾 〃
†素 2
相 率 ︵%︶
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気
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( 3 0 ℃ 2 8 日向 )
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8 ∼5
ト 3
岩室
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0 5′
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0
く 0 5■
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区 分 (m m )
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00
図−9
弘800
土 粒 の 粒 径 と窒 素 の無 機 化
′々
′
/
00
ゝ七′′
M枇㌶
〓 一
2ロ0
l
ヒ
ム
、
℃
(2) 土 壌 構 造 と E h 変 化
土 壌 の構 造 の違 い は土 粒 子 内 の 有機 物 の 分 解速 度 と間
ゲ キ 分 布 の 差 を 通 し て E h に 反 映 す る 。 区 −8 は 2 ∼ 6 m m
の 団 粒 土 と 2 m m 以 下 の 微 細 土 を 溶 透 管 に つ め , タ ン水
0
お よ び 間 断 かん 水 下 で E h の変 化 を追 跡 し た成 績 で あ
−JO O
2
〟
6
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/
2 #
婚
7β 2 β 詑 ガ
ガ
ガ
甜
∂2 日
る 。 タ ン水 条 件 下 で は 粒 径 の 適 い に よ っ て E h に は 大 き
い 差 は み られ な い 。 し か し な が ら , 4 日 間 に 1 日 落 水 し
周一
−7
肥 料 連 用 土 壌 の気 相 率 の 変化
た 間 断 か ん 水 条 件 下 で は , 背 峰 ら2)が 指 摘 し た と 同 様
に , 団 粒 土 で の E h は , 落 水 と と も に 上 昇 し , 約 2 50 m V
3, 構 造 と土 壌 の 理 化 学 性 の 関係
土 壌 の構 造 変化 は ,ニ
ュ
二
粒 子 自体 の特 性 と粒 子 間 の 間 ゲ
キ の 特 徴 の両 面 を通 し て土 壌 の理 化 学 的 性質 に影響 を及
ぼ して い る。
(1) 土壌 構 造 と間 ゲ キ 性
各 種 の 粒 径 の 土 粒 子 か ら で き た 模 型 的 な 構 造 と孔 ゲ キ
分布 の 関係 を囲 − 5 に 示 した。 粒 径 2 ∼ 5 m m の も のは
pF o.
7 ∼ 1 .0 の 問 ゲ キ に 富 ん で い る が , 粒 径 0 .5 m m 以
下の も の で は P F l .7 ∼ 2 .0 の 孔 ゲ キ が 多 く な っ て い る 。
を前 後 し て い た 。 一 方 , 微 細 土 で は 落 水 に よ る E h の 上
昇は 全 くみ ら れ ず , む し ろ 内 山 9)が 指 摘 し て い る よ う
に, 排 水 をす る こ と に よ って , E h は 低 下 す る傾 向 が 認
め られ た 。 この 事 実 は ,構 造 の 粒 状 化 は土 壌 の E h を高
める 上 の 必 要 条 件 で は あ る が , そ れ の み に よ っ て は 高 ま
らず , 落 水 そ して空 気 の 浸入 が 必要 で あ る こ と を示 して
いる も の と 考 え ら れ る 。
(3) 構 造 と窒 素 の 無 機化
土 壌 構 造 の変 化 と関 連 す る土壌 の化 学 性 の うち最 も窮
填補 造 を 興 に す る 現 実 の 水 1捌 こお け る 問 ゲ キ 変 化 を さ き
要な も の は 窒 素 の 無 機 化 で あ ろ う 。 土 粒 子 の 大 小 と土 壌
に述 べ た肥 料遥 川 土 壌 で調 査 した 結 果 を図 −
−6 と図− 7
窒素 の無 機 化 の 状態 を 図−9 に示 した 。土 壌 の来 歴 や 前 処
に示 し た 。 図 − 6 か ら 粒 状 化 の 発 達 し た 有 機 連 用 区 で は
確の 如 何 を と わ ず , 土 塊 や 団 粒 を 細 か く す る ほ ど 窒 素 の
p F l .0
無機 化 畳 は 多 く な り , と く に 1 1n m 以 下 に な る と 急 増 す
的 後 の 間 ゲ キ が 多 く, 約 10 9る に 達 し て い る 。 こ
れら の 土 壌 の 栽 培 期 間 中 の 気 相 変 化 を 追 跡 し た 成 績 に よ
るよ う で あ る 。 こ の 事 実 は 泉 6),原 田 10)ら の 実 験 成 績 と 同
ると , 粒 状 構 造 化 し た も の は , 一 般 に 気 相 含 最 高 く , と
様な 傾 向 で あ る 。 こ の 実 験 は 一 定 期 間 内 の 無 機 化 量 を み
くに 落 水 し た 際 8 9 ムも 空 気 が 浸 入 し て い た が , 砂 状構 造
たので あ るが , 無機 化 の 時 間 的経 過 は ,水 稲 の生 育相 な
のも の で は , 2 % 前 後 の 浸 入 量 し か な か っ た 。 こ の 三
井実
は, 落 水 中 干 し の 効 果 を 考 え る 場 ナナ電 要 な 相 違 を も た ら
すも の と思 わ れ る。
ど な ら 推 測 し て , 大 粒 子 で は 後 期 に な っ て 小 粒 子 を凌 渇
する も の と 思 わ れ る が , な お 検 討 を要 す る 問 題 で あ る 。
さ ら に粒 状 化 は透 水 性 を高 め る こ と,土 壌 内部 で部 分
一卜 壌
の
物
理
性
第 16 号
3j
弛
冷 地 で の 透 水 性 低 下 に と も な う地 温 の 上 昇 , 砂 質 水 田 で
の 漏 水 防 止 の 上 か ら は 絶 対 必 要 で あ り, そ の 効 果 も 高
刀
7
6
わ 、り添 加 区 l
/
印
離 の
堅
的∼
代 か きは泥 状構 造 化 を促 進 す る7)
14)
。 か か る泥 状 化 は寒
い 。 しか し な が ら , 暖 地 の 肥 沃 な 粘 土 質 水 田 で は 代 か き
佗
を 砕 くす る こ と が 水 稲 収 量 に 対 し好 影 響 を 与 え て い る 。
.
耕 うん 法 と水 稲 生 育 の 関 係 に つ い て , 泉 6)は 次 の よ う に
β
2 り
結 論 し て い る 。 土 壌 を 細 か く 耕 う ん す る 耕 うん 機 耕 は 然
7 0
な る が ,土 壌 の還 元 もま た促 進 され る。 そ の結 果 , 耕 う
多良
ん 機 耕 は 低 温 の 年 や還 元化 し難 い上 境 で は スキ耕 に く ら
○
・
・
・
・
・
・
・づ 団 粒
4 か倣
×−
ら ざる ス キ耕 に くらべ て土 壌 か ら の窒 素 の放 出 量 は 多 く
X 泥 状
臭糸泉 わ らブ
芥加]
実線 わ鍵 禿虹
%%J
%
園 − 10
卯
べ て 水 稲 の 収 量 を高 め る が , 然 ら ざ る 場 合 に は 逆 の 結 果
乍
‰
土 壌 構 造 と水 稲 の生 育 収景
と な る 。
以 上 ,土 壌 構 造 と水 相 生 育 の関 係 の諸 研 究 を概 観 した
が , これ らの研 究 結 果 か ら, 作 土 の粒 状 化 あ るい は塊 状
的 に高 い E h 部 分 が 多 くな る こ とな ど よ りして , 窒 素 の
化 は泥 状 化 に くらべ て 土 壌 有 機 物 の分 解 の抑 制 や 落 水 時
溶 脱 や脱 窒 を増 大 させ る こ とが推 定 され る。 そ れ で これ
の空 気 浸 入 畳 の増 大 に よ って ,土 壌 の E h を高 め ,根 腐 れ
らの マ イ ナ ス的 要 素 を 施肥 法 な どで補 わね ば, 粒 状 化 は
7K 稲 の 生 育 に 必 ら ず し も プ ラ ス に 働 く も の と の み 考 え る
こ とは で き な い。
4・
を軽 減 す る こ とは 明 らか で あ る。 しか しな が ら, か か る
根 の 健 全 化 が 必 ら ず し も水 稲 の 増 収 に 直 結 す る と は 限 ら
な い 。粒 状化 は土 壌 窒 素 の放 的 を お さ え ,時 に は施 用雫
素 の 流 亡 を激 化 す る な ど , 養 分 と く に 窒 素 の 面 で マ イ ナ
水 稲生 育 と作 土 の 構 造
ス に作 用 す る こ とが 多 い。 そ れ 故 , 粒 状 化 に とも な う
イニ
壌 構 造 と 水 際 巨育 の lう
冒係 に つ い て の 既 結こ
の研 究 に は
二 つ の流 れ が あ る。 −
一一
つ は , 出 汁 作 上 の 構 造 は , 対叩 巨物
と購 造 の 関 旅 と 同 様 に , 必 ら ず 水 縦 ヒ育 に 対 し 好 膨 智 を
及 ぼ す は ず で あ るか ら, これ らの関 係 を直 接 明 らか に し
よ う と す る 立 場 の も の で あ る 。 他 の 一 つ は , 水 稲 の 栽 月号
管 理 作業 の うち あ る作 業 が土 壌 構 造 に著 しい変 化 を与 え
て い る の で , こ の 作 巣 の 研 究 の 過 程 に お い て 構 造 と生 育
E ll の 上界 と窒 素 の 供 給 を 如 何 に し て 調 即 さ せ る か が ,
粒 状構 造 化 を水 稲 多収 に結 び つ け る鍵 とな る もの と考 え
られ , これ を解 決 す る方法 と して 緩 効 性肥 料 の活 用 や 襲
素 の 新 し い 施 肥 配 分 な ど が 有 効 な も の と推 測 さ れ る 。
乾 田 直 播 栽 聯 こお け る 作 上 の 構 造 と苗 立 ち の 関 係 あ る
い は大 型 機 械 の走 行 性 と構 造 の問 題 な ど につ いて は別 の
機 会 に 述 べ る こ と とす る 。
の 関 係 を み て き た も の で あ る。
第 一 の 観 点 か ら の 研 究 に は , 19 4 8 年 に 藤 原 11)ら の 研 究
が あ り , そ の 後 , 川 1」 12)
, 久 保 田 5)
, 平 野 13)ら も 類 似 の
5. む
す
び
水 田作 土 の構 造 は泥 状 を も って 代 表 され て い るが , 詳
掛 軸 、ら研 究 を展 開 した○ これ らの結 果 は , 団 粒土 は 氾
細に み る と , 各 種 の 構 造 の 存 在 が 認 め ら れ , こ jt ら は 栽
状 あ る い は 微 粒 土 に く ら べ , 土 壌 E h は 高 く経 過 し た に
培管 理 様 式 の 遠 い に よ っ て 容 易 に 変 化 し て い く。 そ の 筋
もか か わ らず ,収 監的 には 予 想 に反 して劣 る場 合 が 多か
果,土 壌 の透 水 性 ,酸 化 還 元 電 位 ,窒 素 の無 機 化 な どに
つ た 0 こ の 下郎【ヨと して 団 粒 土 で の 窒 素 の 動 き が マ イ ナ ス
影響 を及 ぼ して い る。 作土 の 粒 状 化 が 乾 田 直播 の苗 立 ち
に作 川 して いた こ と を推 測 して い る0
ク リ リウ ムの 出 現
やト ラ ク タ ー の 走 行 性 な ど に 好 影 響 を 与 え る こ と は よ く
に よ って 刺 ゲ ヰ され て開 発 され た各 種 _
L二
壌改良剤に関す
知ら れ て い る が , 移 植 水 稲 の 生 育 に 対 し プ ラ ス に 作 用 す
る 試 験 成 績 も大 体 同 様 の 結 果 に 終 っ た ○ わ れ わ れ も 水 稲
ご土育 と構 造 の 関 係 を 研 究 し て き た が 8), 園 9 に 示 す よ う
に一粒 状 構 造 化 は 少肥 条 件 や過 度 の排 水 を行 な った場 介
には 一 花 状 ヒよ り もご
上 背 が 悪 い Lフ し か し還 元 に な り易 い
場介 や 多 肥 条 件  ̄
F で は粒 状 構 逃 が 泥 状 よ りも高 収 竜 を え
た0 ま た 粒 状 構 造 は 許
引蛸 喜
造 に比 べ て, 水 稲 の 初期 ′
ヒ育
はや や 劣 る が 秋 擬 り的 生 育 経 過 を た ど る よ うで あ る 。
栽 培 作 業 との 関連 で の研 究 には 代 か き の 問題 が あ る。
るこ と は は っ き り し て な い 。 泥 状 構 造 が 粒 状 化 す る と ,
落水 操 作 を 組 合 せ る こ と に よ っ て 酸 化 還 元 電 位 は 安 易 に
高め う る 可 能 性 を 内 在 し て い る が , 一 方 , 二
土壌 窒 素 の 無
機化 の 抑 制 や 溶 脱 の 増 大 な ど の 耐 で マ イ ナ ス に も 作 用 す
る○ そ れ で こ の 矛 盾 を う ま く 調 和 さ せ て い く こ と に よ っ
てのみ 粒 状 構 造 条 件  ̄
F の水 稲 の 多収 栽 培 が 可 能 で あ り,
これ は 今 後 の 研 究 問 題 で あ る 。
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水田 作 土 の 構 造 と 水 稲 生 育
︶
1234
参
考
文
献
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︶
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内山修 男 ・ 鬼 鞍 藍 ・ 前 橋 清 一 ・ 吉 田修 三 :土 肥 誌 2 7 , 2 :
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\−ノ
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