三春 ing 現職教育資料№19 平成28年6月15日 □ 「アクティブ・ラーニング」について Part 2 ポイント: 「真正の学び」は教科の本質に即した学び 「聴き合う関係」は「ケアする関係 「聴き合う関係」は一人ひとりの子どもを主人公にする 低学力の子は「ジャンプの課題」が大好き 「共有の学び」から「ジャンプの学び」へ リフレクションとしての授業研究 (佐藤 学先生の論評の続きです。 ) ○ 「質の高い学び」とは、一人ひとりの教師が自 らの経験に基づく人生観や世界観を持って哲学し、 答えを準備するしかありません。そこで、佐藤 学 先生が考える「質の高い」を紹介します。 ・ 「真正の学び」 (authentic learning:真正の、本物の) ・ 「聴き合う関係」 (listening relation) ・ 「ジャンプの課題」(jumping task) の3つの要件で定義しています。 答える(応答性)と、ケアする者とケアされる者と の間の相互の主体性によって成り立っていますが、 「聴き合う関係」はその基盤を準備しています。 「聴き合う関係」は、さらに民主主義の共同体を 準備しています。ジョン・デューイが定義したよう に民主主義は多数決でもなければ、政治的な手続き でもなく、多様な人々が共に主人公として生き合う 方法であり、「聴き合う関係」を基盤とする「学び 合う」関係は、一人ひとりの子どもを学びの主人公 にする教室を生み出していきます。民主主義は「話 し合い」によってもたらされるのではなく、 「聴き 合う関係」によって成立するのです。 教科の「真正の学び」 「質の高い学び」は「ジャンプの課題」で ○ 「真正の学び」は教科の本質に即した学びを意 味します。例えば、 ○ 「ジャンプの課題」も「質の高い学び」を実現 する必須の要件です。 (学先生が観てきた授業の多くでは、)一般の授 業とグループ学習において、課題が高すぎて失敗し た授業と出会うことは稀です。ほとんどの授業とグ ループ学習の失敗は、課題のレベルが低すぎること に起因しています。 教科書を見ればすぐわかる課題、何とでも答えら れる課題で、協同的な「学び」が実りある結果をも たらすことはありません。協同的に学び合うことか らは、一人で到達できない、 「三人寄れば文殊の知 恵」として達成できる課題でなければ、充実した深 い「学び」を実現することはできないのです。(変 な話しですが、 「分かる授業」は、課題が易しすぎ て全員がわかってしまい ~ 一人も残さないのだ から、これでいいはずですが ~、学びを深め探究 する場面がない、すぐ正解に行き着く授業になって しまいます。ここが絶妙に授業の難しさなのでしょ う。 ) 多くの教師が「ジャンプの課題」に躊躇してしま うのは、教室にいる低学力の子への配慮なのでしょ う。しかし、「ジャンプの課題」に挑戦している教 師達は、むしろ低学力の子は「ジャンプの課題」が 大好きで、他の子ども以上に夢中になって挑戦して いることを知っています。探究する能力は、学力や 知識の差に比べて、どの子もほとんど対等であり、 その対等性が低学力の子ども達の積極性を支えてい るからです。 私達教師は、 「全員がわかる授業」を求めがちで 「質の高い学び」の用件 数学の学びの真正性(本物であること)は「数学 的推論」にあります。数学は「量と空間の科学」で あり、独自の思考の様式と概念を有しています。そ の本質を学びの中で実現することが、数学の真正の 学びとなります。 (哲学的で私には理解できません が、数学の先生は理解できるのでしょう。 ) 歴史における「真正の学び」は、史料の批判と史 料の解読による歴史像の構成にあります。したがっ て、教科書で歴史を教えるのではなく、歴史の「学 び」を実現するためには、史資料の活用が不可欠で す。史資料の解読と教科書の知識を結合して、はじ めて歴史の学びが実現します。 文学における「真正の学び」は、テクストと私 (読者)との「秘密の対話」です。したがって、話 し合いに終始する授業は「真正の学び」とは言えま せん。テクストと一人ひとりの読者との濃密な「秘 密の対話」が中軸になっていなければなりません。 このように「真正の学び」は教科の本質に根差 し、テクストや資料との対象的実践を要請していま す。 「聴き合う」関係 ○ 「聴き合う関係」は、「学び」を成立させる基 盤です。ケアの関係を生み出す基盤です。ケアの関 係は、弱い者、傷ついた者の問いかけ、呼びかけに 三春 ing すが、「全員が分かる授業」では、課題のレベルが 低すぎます。授業の前半は教科書レベルの課題(共 有の課題)で組織しますが、授業の後半は「教科書 レベル以上の課題」(ジャンプの課題)によって、 仲間との協同的学びを組織すべきです。「質の高い 学び」は、ジャンプする学びなしには、実現しませ ん。 学びのデザインとリフレクション(省察) としての授業研究 ○ アクティブ・ラーニングを受けて、授業改革を 有効に達成するためには、校内の授業研究も転換し なければなりません。 これまでの授業研究は、一言で言えば、 「教え 方」の研究でした。「学び」の研究ではなかった。 事実、私(学先生)が授業協議会で記録した教師達 の発言は、8割以上が教師の教え方と教材研究に関 する発言であり、生徒の「学び」に関して言及した 発言は2割に達していません。この割合を逆転させ る必要があります。一人ひとりの生徒の学びの事実 が固有名で語られ、その学びの意味とその学びを成 立させた関係、教室の出来事の事実の中に潜んでい る一人ひとりの生徒の学びの可能性について話し 合って研究することが求められます。 アクティブ・ラーニングの趣旨を教室で実現する ためには、授業研究を「学びのデザインとリフレク ション(省察) 」を中心に研究を転換する必要があ ります。 (以上、次期学習指導要領の改定の背景と、その影 に潜む教師が陥りやすい注意点でした。これから 益々アクティブ・ラーニングは語られることになり ます。アクティブ・ラーニングは21世紀型の指導 法とも言われています。少なくともあと80年程 は、この方法が支流になるわけです。 「話し合いに よる協同作業」にならないよう、流行に流されるこ となく、本質を見極めて「主体的な協働的な学び」 を子ども達に提供していきましょう。 本校では、「協働」よりも「協同」 (ともに心を合 わせ助け合って仕事をすること)を使っていきたい と思います。) №19
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