荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 177 戦 後 日本 の 家 族 と私 化 荒 川 茂 則* TheFamilyandPrivatizationinPostwarJapanSociety ShigenoriARAKAwA は じ め に 有史 以 来 、 家 族 はそ れ を と りま く社 会環 境 や 時 代 の推 移 の な か で 、 そ の形 態 や 関係 構 造 や 生 活 の 内 容 を 不 断 に変 化 させ て きた が 、今 日の 家 族 変 動 や新 しい 家 族 像 に関 す る諸 論 議 の な か で は 、 と りわ け 次 の よ うな 見 解 が一 定 の説 得 力 を もつ よ うに思 わ れ る。 「す な わ ち、 農 業 社 会 に 適 して い た大 家 族 、 工 業 社 会 に適 合 して い た核 家族 に か わ っ て 、 これ か らの サ ー ビス経 済 社 会 に適 応 す る家 族 は 、 個 人 を核 と して ゆ るや か に結 び つ く家 族 に な りつ つ あ る」1)あ るい は また 、 「集 団 の 中 の個 人 か ら、 個 人 そ の もの が社 会 生 活 の 単 位 と して 浮 か び上 が って きた 過 程 が、 家 族 の 変 動 とみ る こ とが で き るわ け で あ る。 家 族 生 活 は個 人 に と っ て選 択 され る ライ フ ・ス タ イ ル の 一 つ と い うこ と に な る。」2) こ う した 見 解 は、 こ れ ま で近 代 社 会 の 普 遍 的 な価 値 観 とみ な され て き た核 家 族 の理 念 が もは や制 度 と して は 解 体 化 す る状 況 に あ り、 家 族 をめ ぐる人 々 の 意 識 や 行 動 が多 様 化 し始 め て い る 現 在 の 欧 米 の 一 部 の 先 進 国 の実 態 を ふ ま え る と同 時 に 、 これ らの 欧 米 諸 国 とは 家 族 の歴 史 的 背 景 や伝 統 的 な様 相 を か な り異 にす る我 が 国 に お い て も、 新 しい タイ プ の産 業 構 造 が 出現 した こ とや人 々 が新 しい 生活 価 値 観 を追 求 し始 め た こ とな どが 、 人 々 の家 族 観 念 や ひ いて はそ の生 き 方 や人 生 観 に影 響 を及 ぼ して きて お り、 そ れ に よ って 日本 人 の家 族 関 係 や 家族 生 活 の あ り方 が 現 実 に も変 化 し始 め て い る とい う認 識 を根 拠 と して 主 張 され て い る もの で あ ろ う。3)そして 、 この よ うな見 解 や認 識 は 、共 同 性 と して の 家 族 か ら私 と して の 個 人 が析 出 され る事 態 を捉 え た もの で あ り、 これ は社 会 学 の 言葉 で い うな ら ば私 化(Privatization)と い う概 念 に よ って適 切 に 表 現 され る現 象 の ひ と つ と思 わ れ る。 本稿 で は 、 家 族 の 変 化 を私 化 現 象 の進 行 とい う現 代 日本 社 会 の基 本 的 趨 勢 の 一 側 面 と して み る観 点 か ら、我 が 国 の 家 族 の 戦 後 に お け る動 向 を 視 野 に お き、 今 日に い た る まで に形 成 され て きた そ の基 本 的 性格 を ふ ま え なが ら、 近 年 に実 施 され た い くつ か の家 族 に 関 す る社 会 調 査 の結 果 を デ ー タと して取 りあ げ 、 そ の 分 析 に も とず き、 日本 の 家 族 の現 在 とそ の 将 来 像 に つ い て 若 干 の 考 察 を試 み る こ とに した い 。 1.戦 A.ト 後 家 族 の マ イホ ー ム 主 義 と私 化 フ ラー は 、 そ の 著 書 「第3の 波 」 の な かで 工 業 社 会 に 適 合 的 な家 族 と さ れ る核 家 族 に つ い て 、 「夫 が収 入 を得 、妻 が 家 事 を こな し、何 人 か の幼 い子 供 を か か え る家 庭 」のと い うよ う 平成2年9月29日 受理*社 会 学 部 社 会学 科 178 奈 良 大 学 紀 要 第19号 に そ の特 徴 を描 写 して い るが 、 日本 に お い て こ の よ うな 家 族 が 本 格 的 に増 加 し始 め るの は戦 後 の ことで あ り、高 度経 済成 長 の 時 代 が 始 ま る昭 和30年 代 に お いて で あ る。 この 時 期 に は 、急 激 な速 度 で進 展 す る産 業 化 の 結 果 と して 農 業 人 口が大 幅 に 減 少 し、 第2次 、 第3次 産 業 人 口が膨 大 化 した。 同時 に産 業 化 は 急 速 な 都 市 化 の進 行 を と もな い 、 地 方 の農 村 部 か ら大 都 市 圏 へ の大 規 模 で集 中 的 な 人 口の 移 動 を 生 じさせ た。 この産 業 化 は 日本 社 会 の 「企 業 社 会 化 」 を もた ら し た の で あ り、産 業 人 口構 成 の 転 換 は 日本 社 会 の 「被雇 用 者 社 会 化 」 を 意 味 して い た。 そ して 、 この時 期 に都 市 に 流 入 し急 増 した 被 雇 用 者 層 が新 た に 形 成 して い た 家 族 が 典 型 的 な 日本 の 戦 後 家 族 で あ り、 そ の 多 くは トフ ラー の い う意 味 で の核 家 族 で あ っ た 。 これ らの 戦 後 家 族 は 、 そ の 集 団 と して の 性 格 にお いて 日本 の伝 統 的 な農 村 家 族 と は異 質 で あ った だ け で は な く、 従 来 の 都 市 家族 と も多 くの 点 で 異 な る新 しい タ イ プ の 家 族 で あ っ た の で あ り、5)こう した新 しい 家 族 の 特 徴 が 拡 散 化 し、 日本 家 族 の あ い だで 一 般 化 して い く過 程 が戦 後 の あ る時 期 に い た る まで の 日 本 の 家 族 変 動 の ひ とつ の側 面 で あ っ た とい え る よ うに思 わ れ る。 と ころ で 、 高 度 経 済 成 長 に先 立 つ 敗 戦 後 の約10年 間 は 、 伝 統 的 な 制 度 や 価 値 観 が崩 壊 し、 「そ れ が 大 衆 の レベ ル で の欲 望 解 放 へ とつ な が っ て い く時 期 で あ る」。6)この 解 放 され た私 的 欲 望 、 も し くは 「欲 望 と して の 『私 』 の解 放 」7)は、 国 民 生 活 の レベ ル に お い て 日本 人 の 行 動 を 最 初 は 「貧 しさ か らの脱 出 」 、 や が て 朝 鮮 特 需 に よ る 日本 経 済 の 復 興 を へ て 高 度 成 長 期 に 向 か う と今 度 は 「豊 か さの追 求 」 とい う方 向で 動 機 づ け た 。 家 族 生 活 の面 で は 、 「豊 か で 明 るい家 庭 」 とい う新 しい 家族 の 生 活 像 が ひ と つの 理 想 とな った 。 言 い換 え れ ば 、 戦 後 家 族 は 「豊 か で 明 るい家 庭 」 とい う家 族像 に家 族 とい う集 団 の共 同 性 を方 向づ け る価 値 を 見 い 出 して い った の で あ る。 は っ き りと意 識 され て い るい な い に か か わ らず 、 こ う した 家 庭 生 活 を実 現 す る こ とが 戦 前 の 「家 」制 度 の下 で 望 ま しい もの と され た権 威 主 義 的 な家 族 像 に か か わ る新 しい 戦 後 家 族 の 生活 目標 で あ っ た。 そ の 具 体 的 な 内容 は 当初 は 外 国 文 化 の強 い 影 響 の 下 で イ メー ジ され 、 例 えば 「戦 後 、 急 速 に入 り込 ん だ ア メ リカ文 化 は 、 一 九 四 九 年 か ら 『朝 日新 聞 』 に連 載 され た漫 画 『プ ロ ソ デ ィ』 に代 表 さ れ る よ うに 、 な に よ りも豊 か な物 質 文 化 を家 庭 生 活 に も ち こん だ の で あ る」8)とい わ れ る よ うに 、 マ ス メ デ ィ ア を通 して 日本 人 の 目に 触 れ た ア メ リカ の 中 産 階 級 家 族 の物 質 的 に豊 か で文 化 的 な生 活 様 式 や 自 由で 友 愛 的 な 家族 関 係 がそ の モ デ ル と さ れ た が、 日本 経 済 の拡 大 に と もな う消 費文 化 の 水 準 の 向上 と と もに 物 質 生 活 の面 で は そ の 達 成 目標 は 、 例 えば1950年 代 の後 半 に3種 の神 器 と よば れ た 家 庭 電 化 製 品i類(掃 除 機 、 洗 濯 機 、 電 気 冷 蔵 庫) の購 入 か ら70年 代 は じめ の3C(ク ー ラー、 カ ラー テ レビ、 カ ー)の 獲 得 とい うよ うに絶 え ず グ レー ド ・ア ップ し、 エ ス カ レー トして い っ た。 い ず れ にせ よ、 戦 前 の 「家 」 制 度 の下 で は 、 超 世 代 的 に存 続 す る 「家 」 と い う公 的 な性 格 を 帯 び た 疑 制 の実 在 に大 きな価 値 が お か れ 、 そ の 通 時的 な持 続 性 の 追 求 を め ぐって 、家 族 の集 団 と して の共 同性 が組 織 化 さ れて い た の に対 して 、 この 共 同 性 が 「豊 かで 明 る い家 庭 生 活 」 の構 築 とい っ た家 族 員 の欲 求 の 充 足 願 望 を集 約 す る私 的 な 目標 をめ ぐっ て再 組 織 化 され た と ころ に 戦 後 家 族 の基 本 的 な 性 格 が あ り、 この 家 族 の 個 別 的 な 目標 の実 現 を め ざ して 「夫 が収 入 を 得 、 妻 が 家 事 を こな す 」 とい う性 別 役 割 分担 の理 念 を 軸 と しな が ら、 夫 婦 が 中心 とな って 、 家 族 員 の 凝 集 性 が作 り出 され て い く とい う家 族 生 活 の姿 に戦 後 家 族 の原 像 とな った イ メー ジを み る こ と が で き る よ うに思 わ れ る。 そ して 、 こ の よ うな 戦 後 家 族 の私 生 活 中心 主 義 的 な価 値 観 は0般 に 「マ イ ホー ム主 義 」 と よば れ て い る も ので あ る。 高 度 経 済 成 長 期 に お け る 日本 人 の 家 族 生 活 の価 値 観 や ラ イ フ ス タイ ル と して の マ イ ホ ー ム主 義 に は 多 様 な側 面 が あ り、 さ ま ざ ま な 角 度 か ら問 題 に さ れ 論 じ られ て い る が 、 多 くの 場 合 、 「マ イ ホー ム主 義 は 社 会 的 連 帯 を欠 い た私 生 活 へ の 逃 避 、 社 会 へ の 無 関心 の 反 面 と して の私 生 活 尊 重 と して 、 否定 的 な含 意 に お い て語 られ て きた 」。9)こう した マ イ ホー ム主 義 批 判 の基 調 は 、 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私化 179 マ イ ホー ム主 義 は 「社 会 の 官僚 制 化 、 組 織 化 、機 械 化 が 急 速 にす す ん」 だ大 衆 社 会 状 況 下 で の 家 族 観 で あ り、 こ う した状 況 の 下 で の 個 人 の ライ フ ス タイ ル と して 、 社 会 に対 す る主体 性 を喪 失 し、 職 場 な ど の公 的 な 場 に お い て は 「疎 外 され た 人 間 の 逃 避 の場 と して の 暗 い側 面 」1。)を も つ とい う もの で あ る が、 他 方 で は 「マ イ ホー ム主 義 は 、家 族 主 義 の 伝 統 を うけ つ い で お り、 基 本 的 な点 で 家 族 主 義 と共 通 して い るが 、 高 度 経 済 成 長 下 の 『豊 か な 社 会 』 に照 応 した新 しい 特 徴 」11)を も ち 、 戦 後 の企 業 社 会 の な か で 「文 字 ど う りに マ イ ホ ー ム や 耐 久 消 費 財 を め ぐっ て 家 族 集 団 を結 集 し、 よ り上 位 の 集 団 で あ る企 業 に対 して は夫 が家 族 集 団 の 代 表 者 と して奉 仕 す る 構 成 」12)に な って お り、 この よ うな か た ち で 高 度 経 済 成 長 を 前 提 と し、 か つ そ れ を社 会 構 造 の 基 底 的 な生 活 意識 の 次 元 で 支 えた 心 理 的 要 因 で あ る こ と か ら、 「基 本 的 に は 資 本 の 論 理 に よ っ て 枠 づ け られ た 『近 代 』 的 家 族 主 義 の イ デ オ ロ ギ ー 」13)で あ る と い った 見 解 も根 強 く主 張 さ れ て い る。 しか しな が ら、 「豊 か な 明 る い家 庭 」 と い う戦 後 家 族 が め ざ した マ イ ホー ム主 義 の 生活 像 は 、 旧民 法 下 の 「家 」 制 度 の も とで 日本 の 家 族 が少 な く と も タテ マ エ と して は信 奉 した 権威 主 義 的 で 因 習 的 で 拘 束 的 な家 族 関 係 の理 念 や 価 値 観 と は異 質 な価 値 意 識 の表 現 で あ る こ と も強 調 して お か ね ば な らな い 。 小 浜 逸 朗 は 、 「マ イ ・ホ ー ム主 義 、核 家 族 、 ニ ュ ー フ ァ ミ ィ リー な ど、 時 代 の変 遷 に つ れ 家 族 を表 す 流 行 語 は そ れ ぞ れ の ニ ュア ソス を 表 現 して き た が 、 これ らの 言葉 か ら共 通 して抽 出 で き るの は 、 戦 後 家 族 史 を一 貫 して 流 れ る家 族 の 共 同 性 そ の もの の社 会 秩 序 か らの 自立 の 過 程 で あ る」14)と 書 い て い る。 マ イ ホ ー ム主 義 は 、 天 皇 を 頂 点 と した 国家 主 義 的 イ デ オ ロ ギ ー の秩二 序 に つ な が る 「家 」 制 度 や伝 統 的 な共 同体 の絆 か ら解 放 され た人 々 の私 的欲 求 充 足 志 向 の表 出化 で あ り、 家 族 と い う集 団 を充 足 の 単 位 とす るそ の ひ とつ の 形 態 で あ る。 マイ ホ ー ム主 義 は 、 この よ うな 意 味 で 集 団 と して の 家族 の 共 同 性 の私 化 で あ った と い え る だ ろ う。 と こ ろで 、 社 会 学 で い う私 化 とは 、 社 会 の制 度 化 され た 領 域 で合 理 化 や 官僚 制 化 が 進 む に つ れ 、 人 々 が こ う した領 域 か ら主 観 的 に距 離 を お くよ うに な り、 家 族 な ど の私 的 な領 域 に 自己 の 生 き る こ と の 意 味 や 生 きが い や ア イ デ ソ テ ィテ ィの 基 盤 を 見 い 出す よ う に な る 現 象 を い うが 、 15)こう した私 化 の 現 象 は 、社 会 の 公 的 な領 域 と私 的 な領 域 の 分 離 、 も し くは 前 者 か らの後 者 の 析 出 とい う近 代 化 の 過 程 を歴 史 的 な 前 提 とす る。 丸 山真 夫 は近 代 化 を共 同体 か らの個 人 析 出 の 過 程 と して 捉 え 、 そ の パ ター ソの ひ と つ と して私 化 を位 置 付 け て い る が 、16)近 年 の歴 史 社 会 学 等 の研 究 は 、近 代 化 に よ って 共 同体 か ら析 出 され 解 放 され た もの は 個 人 で は な く、家 族 で あ っ た と い う事 実 を 明 ら か に した 。17)そ れ に よ っ て成 立 した前 近 代 の家 族 と は 区 別 さ れ る近 代 の家 族(す な わ ち近 代 家 族)は 、 次 の よ うな特 徴 を もつ と され る。18) (1)家 族 領 域 と公 共領 域 の 分 離 (2)家 族成員相互 の強い情緒的関係 (3)「 男 は外 、 女 は 内」 とい う性 別 分 業 (4)子 ど も中 心 主 義 (5)家 族 の 集 団 性 の強 化 この よ うな近 代 家 族 の 特 徴 は トラ フー の 描 い た 工 業社 会 に適 合 的 な核 家 族 の 特 徴 と符合 す る。 近 代 化 は産 業 化 の 前 提 で あ る と と もに 、 そ の 所 産 で もあ り、 両 者 は 表 裏 の関 係 に あ る歴 史 の 動 向で あ る が 、 明 治 の初 期 に遅 れ て 出発 した産 業 国 家 で あ る我 が 国 で は 、 近 代 化 の多 くの要 素 は 国 家 の意 図的 な 介入 に よ って 極 め て 変 則 的 な形 態 を と っ た。 と りわ け 家 族 が そ の顕 著 な例 で あ る。 旧民 法 が法 的 規 範 と した 「家 」 制 度 は 、 欧 米 諸 国 に範 を と っ た近 代 家 族 の 理 念 と伝 統 的 な 日本 家 族 の論 理 を混 在 させ た我 が 国 に独 特 の 「近 代 」 家 族 イ デ オ ロギ ー に 立 脚 した 家 族 制 度 で あ った 。 しか し、 戦 後 の諸 改革 と価 値 変 動 は 日本 の近 代 化 を変 則 的 な もの に して い た 諸 要 因 を 180 奈 良 大 学 紀 要 第19号 急 速 に解 体 させ て い った 。 民 法 改 正 に よ る 「家 」 制 度 の廃 止 もそ の一 環 で あ る。 た だ し、 「家 」 制 度 の廃 止 と と も に 、 た だ ち に 欧 米 型 の 核 家 族 理 念 を原 理 とす る新 しい 家 族 規 範 体 系 が実 際 の 家 族 生 活 の な か で 確 立 され た の で は な く、 戦 後 も伝 統 的 な要 素 が 広 く残 存 し、 日本 人 の家 族 意 識 は紆 余 曲折 す る が 、 や が て 家族 を と りま く社 会 状 況 が 変 化 す るな か で 、 古 い価 値 観 や伝 統 的 な意 識 は 徐 々 に な し崩 し的 に 解体 化 して い っ た とい え るで あ ろ う。 「豊 か で 明 る い家 庭 」 を め ざ した マ イ ホ ー ム 主 義 は 、 急 激 に進 行 す る都 市 化 や大 衆 消 費社 会 化 を背 景 と した 日本 に お け る本 格 的 な近 代 家 族 の 登 場 を 意 味 して い る。 戦 前 の家 族 主 義 との 連 続 性 が指 摘 さ れ るの は 、既 に 「家 」 が 国家 意志 に よ って 規 制 され た一 種 の変 則 的 な近 代 家族 で あ った こ とを 物 語 っ て い る。 家 族 形 態 や 所 帯 規 模 の 点 で 欧 米 で は1、2世紀 の 時 間 を要 した 家 族 変 動 が 日本 で は わ ず か2、30年 の間 に成 就 した こ とが 注 目され るべ き事 実 と され て い るが 、 同 時 に この短 期 間 の あ い だ に 家族 の 内 的 性格 の近 代 化 が終 了 した と い う事 実 も注 目に値 す るだ ろ う。 マ イ ホ ー ム主 義 とは 、 伝 統 的 な 「家 」 意 識 か ら近 代 的 な家 族 意 識 が析 出 し、 共 同 体 か ら家 族 が 解 放 さ れ て行 く過 程 を領 導 した価 値 観 の ひ と つ の表 現 形 態 で あ り、社 会 現 象 と して は個 人 で は な く家 族 を 単 位 とす る私 化 の現 象 で あ った と い え る だ ろ う。 そ して 、 この 私 化 した家 族 が め ざ した 「豊 か で 明 る い家 庭 」 とい う生 活 目標 が 高 度 経 済 成 長 の結 果 と して 、 少 な くと も物 質 的 な面 に お い て は 一 定 の程 度 ま で達 成 され た こ と が 、今 日新 た に顕 著 化 しつ つ あ る家 族 の変 化 の い わ ば原 点 と な っ て い る よ うに 思 わ れ る。 こ う した 戦 後 の現 代 家 族 像 に揺 ら ぎが 生 じ始 め るの は 、 高 度経 済 成 長 の終 焉 期 に あ た る昭 和 40年 代 後 半 で あ ろ う。 この時 期 は 前 述 した よ うに 、 「3種 の神 器 」 や 「3C」 の獲 得 な ど物 質 的 な面 で のマ イ ホ ー ム主 義 の 目標 が ほ ぼ達 成 され 「豊 か な 家 庭 」 が よ うや く実 現 した か の よ う に思 わ れ た時 期 で あ る と と もに 、 社 会 的 背 景 と して 、 若 い世 代 を 中 心 に戦 後 の価 値 観 が 再 び 大 き く動 揺 し多 様 化 し始 め た 時 期 で あ る。 ま た 、 オ イ ル シ ョ ックを 境 と して高 度 成 長 が 低 成長 に 転 じ、従 来 の企 業 社 会 の あ り方 に変 化 の 兆 しが み え始 め る時 代 で あ る。 そ して 、 この 時期 以 降 、 日本 の産 業 化 は高 度 工 業 社 会 か ら脱 工 業 社 会 や 情 報 化 社 会 とい わ れ る段 階 へ と移 行 して い く。 現 代 家 族 の 今 日の 変 化 は 、 実 現 さ れ た 「豊 か な生 活 」 を所 与 の 現 実 と した う えで 、 さ ま ざ ま な 社 会 の新 しい 動 向 や 状 況 的 変 化 に触 発 され な が ら発 現 して きた家 族 を め ぐる個 人 の 意 識 や 行 動 様 式 の 変 容 に ほ か な ら な い と い え る だ ろ う。 例 え ば 、 「 『高 齢 化 』 とい う人 口学 的変 化 と 『男 女 平 等 』 とい う文 化 的 変 化 」 に現 代 家 族 の変 動 の 基 調 を み る見 解 が あ る。19)こ の後 者 に つ い て は 、 フ ェ ミニ ズ ムの 立 場 の研 究 者 達 が 主 張 す る よ うに本 来 、 近 代 家 族 は 性 別 役 割 分 業 と い う女 性 の 抑 圧 と社 会 的 疎 外 の源 泉 とな る契 機 を 内在 させ て い る。 極 め て 短 期 間 の間 に近 代 家 族 の形 成 が な され た 我 が 国 で は 、 この 近 代 家 族 の ネ ガ テ ィ ブな面 は 容 易 に は 人 々 に よ っ て気 づ か れ る こ とが な か っ た。 と くに マ イ ホー ム主 義 の 「幻 想 」 が 人 々 を 捉 え、 「豊 で 明 る い家 庭 」 と い う達 成 目標 が人 々 の念 頭 を 支配 して い る時 期 に は 、 この女 性 の 抑 圧 と疎 外 の源 泉 は女 性=妻 た ち に よ って もか か る もの と して は 意 識 され な か っ た。⑳)妻た ち は こ の 家族 目標 を 実 現 す るた め に パ ー ト労 働 を は じめ とす る さ ま ざ ま な形 態 で 就 労 し、 主 婦 と の二 重 役 割 を疑 い を もつ こ と な く果 し続 け て い た 。 しか し、 「豊 か さ」 の獲 得 は 、 家 族 目標 の 一 半 を成 就 す る と と も に、 こ の 目標 に 対 す る反 省 的 自覚 を もた ら した。 例 えば 、 「豊 か な家 庭 」 は そ れ だ け で 同 時 に 「明 る い 家庭 」 で もあ った の だ ろ うか。 人 々 の幸 福 の要 件 とな る か け が えの ない 人 間 的 価値 とは何 か。 この よ うな反 省 と疑 問 の な か か ら フ ェ ミニ ズ ム の思 想 と実 践 が女 性 の 間 で一 定 の 支 持 を集 め 、 そ う した観 点 か ら夫 婦 や 家 族 の 関係 の 見 直 しが な され 始 めて い る。 ま た そ の 一 方 で は 、 新 しい 個 人 の生 き方 と して い わ ゆ る シ ソ グル ズの 生 活 を提 唱 す る人 々 が現 れ て きて お り、 前 述 の よ う に 家 族 は 決 して 普 遍 的 で 必 然 的 な 人 間 生 活 の 形 式 で は な く、 ひ と つ の選 択 され るべ き ライ フ ス 181 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 タ イ ル だ と い う論 議 もな され て い る。 こ う した 主 張 の根 底 に あ る家 族 観 は、 家 族 を一 個 の集 団 と してみ る の で は な く、 家族 を構 成 す る諸 個 人 の 関 係 の集 積 と して み る家 族 観 で は な い だ ろ う か 。 も し、 そ うだ とす るな らば 、 家 族 の共 同 性 は 今 ま た新 た な 転 換 の 時 期 を迎 え よ う と して い る こと に な る。 そ して 、 こ う した 家 族 観 は 各 自が そ れ 自身 の社 会 的 な ネ ッ トワー クや生 活 の リ ソー ス を もち 、経 済 的 に も、 日常 生 活 的 に も 自立 した生 活 者 と して 生 き うる個 人 像 を前 提 と し て い る。 現 在 、 この よ うな考 え方 が少 な く と も一 部 の 人 々 の 間 で 説 得 力 の あ る もの と して受 け 入 れ られ 始 め て い る こ との背 景 に は 、 サ ー ビス経 済 と い う新 しい 経 済 社 会 の現 出 や高 度 情 報 化 社 会 に お け る新 しい生 活 イ メー ジ の広 が り とい った 現 実 が あ る よ うに思 われ る。 これ らの こ とは家 族 を め ぐる私 化 の現 象 が新 しい 段 階 を迎 え て い る こ と を示 唆 して い る。 そ れ は 集 団 と して の家 族 の私 化 か ら、 家 族 の 内 部 の 家 族 関 係 の 変 化 を意 味 す る私 化 へ の移 行 で あ り、 家 族 成 員 の個 人 化 とい う方 向 を と っ た家 族 の 新 しい私 化 傾 向 で あ る。 本 稿 で は 、次 に 、近 年 に実 施 され た い くつ か の調 査 デ ー タ か ら、現 代 家 族 の この よ うな 動 向 を さ ぐ り、 さ らに そ の 今 後 の変 化 の方 向 に つ い て 若 干 の 考 察 を行 っ て い くこ と に し よ う。 II.現 代 日本 人 の 家族 観 と 家 族 意 識 高 度 経 済 成 長 は、 日本 人 の 生活 に物 質 的 な 「=豊 か さ」 を もた ら した が 、 こ の こと は 日本 人 の 家 族 観 や 家 族 意 識 に ど の よ うな影 響 を与 え た で あ ろ うか。 昭 和58年 に 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター が 実 施 した 全 国 の核 家 族 所 帯 の夫 婦3000組 を対 象 とす る調 査 で は 、 「あ な た は 、 家 族 と は ど の よ うな もの と考 えて い ます か」 とい う質 問 を お こな って い る◎ そ の 回 答 結 果 を夫 と妻 の そ れ ぞ れ に つ い て 年齢 及 び学 歴 と ク ロ ス集 計 した もの が 次 の2つ 力 を合わせて豊 かな家庭 を 図1 築 い て い くもの の 図 で あ る。 自分 自身 が大 き く 子 供 を作 り 離 芝く 釜 る誘 育てるものVOl i.ケ1 ㊧ 全体 17.3 ,.. 〈年齢> 穂 安 らぎの場 を1岬 /家庭 を築 くもの! 25^34 N=423[ 44.2 35∼44歳 N=670 44.0 45∼54歳 N=676 26.5 26.9 〔18・7回 54.3 〕15・5'回 コ 55歳 ∼ N=195 提 供 す る も の0.9 17・コ4、7〔 嗣 ,一 情 あふれダ 4・424'3〕3・1 3.1 ・1 .3 22.0 7 2.1 の リ ロ 54.419.5.119.51.5 9 織[==一=五;:1 膏一951[===亙=コ ± 亙ゴ 亡 互 ゴ}2・3 N=6149・2・6・4」4.9126・2」3・1 大 卒41 .5116.016.4128.52.515.1N=393 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター 編 「核 家 族 そ の 意 識 と実 態 」 よ り引 用 奈 182 良 大 学 純 一 紀 要 力 を合 わせて豊 かな生活 を 図2 第19号 農驚 築 い て い くもの 力 鱗..作 育 て るもの2.0(%) '体嚢鶴1鵬i 愛情 あふれ た1 <年 齢> 嶽 り ど恕 助 けて くれ る もの …。.1 家 庭 を築 くもの∫ 25∼34歳 Ns77 42.5 26.61.61.5 5.2 22.5 o.s 35∼44歳 N=778 17.714.1 47.8 25.72.6111.4 ・ .0.1 45∼54歳 N=684 23.71.810.9 13.03.9 56.6 歴 学 く 卒 6 = 53 2.412 .31.720.73.7 59.0 0.3 = 12 大 ↓ 卒 07 中 N 高 N 短 N 高N ∫0:2 .51.3 18.815.1 47.1 0.g26 卒 64 卒 0 専謡 O.fi 4.9 25.0 43.3 1.823 .21.2 1.3 15.02.5 42.5 .5 36.3 0.02 = 卒 3 9 大N o.0 31.2 25.8 14.0 .91.1 1.126 生 命保 険文 化 セ ソ ター編 「核 家 族 そ の 意 識 と実 態 」 よ り引用 これ をみ る と、 どの 年 齢 層 で も 「力 を 合 わ せ て 豊 か な生 活 を 築 い て い く もの」 とす る回 答 が 多 数 を 占 め るが 、 男 女 と も44歳 以 下 の 年 齢 層 で は、 そ の数 値 は 目立 っ て低 下 し、 か わ って 「休 息 、 安 ら ぎの場 を提 供 す る もの 」 や 「愛 情 あ ふ れ た家 庭 を きず く もの」(妻 の場 合)と い った 回 答 が増 え る傾 向 が認 め られ る。 数 値 が変 化 す る境 目に あた る45歳 とい う年 齢 層 は 、 日本 人 の 平 均 初 婚 年 齢 か ら考 え る と、 お おむ ね昭 和30年 代 の後 半 か ら40年 代 の初 期 に か け て の 高 度 経 済 成 長 の 中頃 に あた る時期 に結 婚 した 人 々 で あ ると推 定 で きる。 前 述 の よ うに マ イ ホ ー ム主 義 は、 「=豊 か で 明 るい 家 庭 」 の 実 現 を家 族 の 目標 に か か げ た が 、高 度 成 長 の 中 期 以 降 に結 婚 した若 い 世 代 に と って 「=豊 か な生 活 」 は もは や 理 想 で は な く、 結 婚 の 当初 か ら既 に実 現 され て い る所 与 の 現 実 で あ り、 そ れ を達 成 す る こ と よ り も現 状 と して維 持 す る こ と が生 活 の 目標 とな る。 そ れ に と もな って 、 家 庭 生 活 の主 た る関 心 も経 済 的 物 質 的 な 面 か ら情 緒 的 欲 求 の充 足 機 能 を 家 庭 に 求 め る 「明 るい家 庭 」 の側 面 へ とそ の比 重 を移 行 させ て い った も の とみ られ る。 こ う した 傾 向 は学 歴 との 関連 で は 高 学 歴 に な る ほ ど 強 く現 れ て い るが 、 こ の こ と も 日本 人 の 家 族 観 が今 後 さ らに どの よ うな 方 向 で 推 移 して い くか を 示 唆 して い る も の と い え よ う。 この 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター の調 査 は 、 そ の 調 査 結 果 の 分 析 か ら 「家 族 の構 成 員 の意 識 が 、 と み に 『個 人 化 』 の方 向 に進 ん で い る と と もに 、 夫 婦 の役 割 分 担 の 平 等 意 識 が表 面 化 す る兆候 を 示 して い る」21)と 結 論 づ け て い る。 この うち、 家 事 や 育 児 な ど家 族 生 活 の役 割 分担 に つ い て は 、 NHK世 論 調 査 部 の 「日本 人 の 意 識 」 調 査 を は じめ とす る各 種 の 調 査 が 男女 平 等 意識 の 拡 大 を 報 告 して い る。 ま た 、女 性 が 職 業 を もつ こ とに対 す る理 解 度 や 許 容 性 が 高 ま って い る こ とや 今 日の 若 い 世 代 を 中 心 に 「男 は 仕 事 、 女 は 家庭 」 とい う固 定 的 な性 役 割 観 念 が 変 化 す る兆 しが み 183 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 え始 め て い る こ とな ど、 「男女 平 等 と い う文 化 的変 化 」 は 我 が国 に お い て も現 在 、 徐 々 に で は あれ 着 実 に進 み つ つ あ る もの と推 定 で きる。 表1家 庭 の役 割 分 担 甲:台 所 の手 伝 い や子 供 の お も りは 、一 家 の 主 人 で あ る。男 子 のす る こ とで は な い 乙:夫 婦 は互 い に助 け合 う もの だ か ら、 夫 が台 所 の 手 伝 いや 子 供 の お も りを す る の は 、 当然 だ `73年`78年`83年 甲 に賛 成38.0%33.1%28.1% 乙 に 賛 成53.2%59.6%67.4% NHK世 表2女 論 調 査 部 編 「現 代 日本 人 の 意 識 構 造 」 第2版 性の職業 結婚 した 女 性 が 職 業 を もち続 け る こ と につ いて は 、 ど うお 考 えで し ょ うか。 `73年`78年`83年 1.結 婚 した ら、 家 庭 を守 る こ 35.2%30.1%28.6% とに 専 念 した ほ うが よ い 2.結 婚 して も子 供 がで きる ま 42.0%40.5%39.8% で は 、 職 業 を も って い た ほ うが よい 3.結 婚 して 子 供 が 生 まれ て も、 20.3%27.1%29.3% で き るだ け職 業 を も ち続 け た ほ うが よい NHK世 表3性 論 調 査 部 編 「現 代 日本 人 の 意識 構i造」 第2版 別役割 分業 「男 は仕 事 、女 は 家 庭 」 とい う考 え方 に 賛成 だ そ う思 う 32.7% そ うは思 は な い 63.4% 3.9% わ か らな い 100.0% 計 東 京 都 「若 い世 代 の 生 活 意 識 に関 す る世 論 調 査 」(59.5) (18歳 か ら29歳 まで の 男 女 を対 象) た だ し、 そ の他 方 で は 、 今 日の 欧 米 諸 国 で は ひ とつ の 風 潮 と して広 く受 容 され は じめ て い る シ ソ グ ル ズ、DINKSな どの 無 子 家 族 、 無 届 け婚 、 未 婚 の 母(シ ソ グル ・マ ザ ー)等 に対 し て は 否 定 的 な 意 見 が世 論 と して は一 般 的 で あ り、 ま た離 婚 ・再 婚 に つ い て は 今 後 増 加 す るだ ろ うと い う意 見 が多 い が 、子 供 の い る場 合 の 離 婚 に は反 対 す る傾 向 が強 くみ られ 、実 際 の 離 婚 率 も欧 米 諸 国 に比 べ ると低 い 水 準 に と ど ま って お り、 ア メ リカで 最 近 注 目を あ び て い る ス ッテ プ フ ァ ミ ィ リーや 系 列 結 婚 の よ うな 家 族 や 結 婚 の形 態 が 今後 我 が 国 で 大 量 現 象 と して 出 現 す る こ と は あ りえ な い と思 わ れ る。 184 奈 表4シ 良 大 学 ソ グル ズの 生 き方 紀 要 第19号 表5無 子家庭 「子 供 を 生 まな い 結 婚 」 に は (人 の 暮 し方 と して)「 一 生 独 身 で 暮 らす 」 こ と に は 3.6% 賛 ど ち ら か と言 え ば賛 成 4.8% ど ち らか と言 え ば賛 成 3.5% ど ち らか と言 え ば反 対 21.4% ど ち らか と言 え ぱ反 対 19.9% 反 対 一 概 に言 え な い 45.8% 反 対 一概 に言 えない 53.6% 賛 成 20.2% 4.1% わ か らな い わか らない 100.0% 計 表6無 成 届 け婚 計 表7未 「戸 籍 を入 れ な い 同居 」 に は 2.4% 16.4% 4.2% 100.0% 婚の母 「未婚 の 母 」 に は 1.4% 賛 どち らか と言 え ば 賛 成 3.2% ど ち らか と言 え ぱ賛 成 1.6% ど ち らか と言 えば 反 対 17.5% ど ち らか と言 え ば反 対 15.4% 反 対 一概 に言えない 63.3% 反 対 一 概 に言 え な い 69.8% 賛 成 10.9% 3.7% わ か らな い わ か らな い 100.0% 計 図3 成 計 1.2% 8.2% 3.8% 100.0% 離 婚 ・再 婚 が 当 た り前 に な るか 国民全体 NHK放 送 世 論 調 査 所 編 「80年代 と 日本 人 」 よ り引用 表8子 供 の い る場 合 の離 婚 世 間 で は子 供 の こ とを考 え る と(夫 婦 が)別 れ た い と思 っ て も別 れ られ な い と い う人 が い ます 。 あ な た は この考 え方 に 賛 27.4% 成 ど ち らか と言 え ば賛 成 26.4% ど ち らか と言 え ば反 対 12.8% 反 対 一概 に言 え な い 11.8% 15.6% わ か らな い 100.0% 計 (表2か 6.1% ら表6は 内 閣 総理 大 臣 官 房 広 報 室 「家 族 ・家 庭 に 関 す る世論 調 査 」(61.3)よ り作 成) 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 185 家 族 関 係 の 「個 人 化 」 に つ い て は 、 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター の調 査 は 、 「家 族 とい う集 団 の 中 で 行 動 規 範 を 自己 に求 め るか 否 か 」 と い う個 人 志 向 に 関 す る5つ の質 問 と 「行 動 単位 と して 自 己 を優 先 させ るか 否 か」 とい う個 人 行 動 に関 す る5つ の 質 問 の 計10個 の質 問 群 に よっ て この 点 を重 点 的 に調 査 して い る。 図4と 図5が そ の 回答 結 果 で あ る。(こ れ らの 図 で は夫 婦 の 回 答 の .__.致 度 が考 慮 され て い る 。) 図4 個 人 行 動 に関 す る質 問(組 合 せデ ー タ)(N=1960) VO/ 疲 れ て いて も,休 日に は 家 庭 サ ー ビス を すべ きだ 25.6 27.9 年 末 の 大 掃 除 の 際 に,自 分 の部 屋 の部 分 だけ 正 月 にゆ っ く りや る とい う こ とは 避 け るべ きだ 54.6 夕食は・多少遅くなつても・家族全員が[===81 正脚 家族 と欄 16.5 28.9 .6===二=座 そ ろ って か ら始 め るべ きだ 家 族 で 旅 行 す る際 は,単 独行 動 を と る べ きで な い 46.5 コ [====78.4===コ18.03.6 ●● ◎ こすべきだ…[===93.75.11.2 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター編 「核 家族 そ の 意識 と実 態 」 よ り引用 図5 個 人 志 向 に 関 す る質 問(組 合 せ デ ー タ)(N=1960) VOl 不 幸 な 結 婚 な ら ば,離 婚 す べ き だ ・・ 5fi.3 狭 い家 で も,自 分 だ け の 場 所 を 確保 す べ きだ 46.6 場 合 によ って は,家 族 に対 して秘 密 を も っ て もか まわ な い 34.9 家 族 を多 少 犠牲 に して も,自 分 が納 得 し15 た 生 き方 を す るべ きだ 家 族 全 員 で 決 め た こと で も,自 分 が納 得 して い な け れ ば,従 う必 要 は な い … … … 21.4 .6 成 27.0 26.4 32.0 27.7 33.1 56.7 59.1 13.9127.0 賛 22.3 対 立 ・不 明 反 対 生命 保 険 文化 セ ソ ター編 「核 家 族 そ の意 識 と実 態 」 よ り引 用 この 結 果 に つ い て 、 個 人 行 動 で は 「個 人 行 動 をみ と め る か ど うか に対 して は 、全 体 的 に 否 定 的 な意 見 が 強 く家 族 で何 か を行 う際 に は個 人 単位 の 行 動 は 避 け、 あ くまで 家 族 一 緒 に行 動 す べ きだ とい う意 見 の方 が 多 か った 」 が 、 個 人 志 向 に つ い て は 「家 庭 生 活 を犠 牲 に しな い範 囲 で の 個 人 志 向 に対 して は 夫 婦 と も認 め る方 が 多 か った 」認)とい う コ メ ソ トが付 され て い る。 こ の こ とは総 理 府 の 国 民 生 活 調 査 やNHK等 の 調 査 に み られ る よ うに 、 日本 人 が 「日頃 の生 活 で充 実 感 を感 じ」 た り、 「生 きて い る喜 び を感 じる」 の は 「家族 団 らん の と き」 で あ り、 ま た 「幸 福 の条 件 」 と して 「家 族 の ま と ま り」 が重 視 され 、 「家 族 こそ最 後 の よ りど こ ろ だ」 と考 え る家 族 主 義 や マ イ ホ ー ム主 義 的 な家 族 意 識 が い ぜ ん と して根 強 い な か で 、 家族 員 の つ なが りや ま と ま りを損 な わ な い範 囲 で 家 族 内 部 で の個 人 の プ ラ イ バ シ ー の重 視 や プ ライ ベ ー トな生 活 の確 保 を求 め る傾 向 が生 じて い る こ と を示 唆 して い る。 と くに家 族 内で の夫 婦 の プ ライ バ シー に関 す る意 識 つ いて は 、朝 日新 聞 社 が 昭 和63年12月 に実 施 した 全 国 世 論 調 査 に よ って もそ の 現 状 の 一 端 が捉 え られ て い る。 奈 186 良 大 学 生 き て い る 喜 び 図6 を 感 紀 要 第19号 「家庭 こ そ が,最 後 の よ りど こ ろ だ」 図7 じ る と き VO/ 100 家族 団 らん の と き53% go 好 きな こ と に 80 熱 中 して い る と き47 70 まわ りの 人 か ら信 頼 され て い る と き44 子 ど もの成 長 を み る と き42 \./女 友 人 と うち とけ て 語 り合 って い る と き41 53.8NHK「 Y62025303540455055 ∼ ∼ ∼ 日本 人 の 道 徳 感 覚 」調 査 NHK放 送 世 論 調 査 所 編 「80年代 と 日本 人 」 よ り引用 表9夫 ∼ 60 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ め られた とき35 複 数 回答 上位6位 ま でをあげた 70 仕事 の成果が認 昭 和63年12月 調 査 NHK世 論 調 査 編 「現 代 の 家 族 像 一 家 庭 は最 後 の よ りど こ ろ か よ り引 用 婦 の プ ライ バ シ ー 「夫 婦 は一 心 同体 の 方 が よ い と 思 い ます か 。 そ れ と も、 夫 婦 とい え ど も互 い に干 渉 しな い部 分 が あ るべ き だ と思 い ます か 。 」 干 渉 しな い 部 分 が あ る べ きだ 一 心 同体 の 方 が よ い そ の他 ・答 え な い 60% 36% 40 朝 日新 聞社 世 論 調 査(63.12) この よ うな個 人 化 の 傾 向 を学 歴 と ラ イ フ ス テ ー ジ とい う観 点 に ポ イ ソ トを お い て分 析 した も の が次 の2つ の 図 で あ る◎ 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 〈高学 歴〉 夫の個 人志 向 図8 187 ● ● 個室 秘密 一 ● 生き ● ● ● 夕 嗣 ● 月 〈1 i 10 lIi> ● 一5-10● 定0 5 大掃 除 ● 旅行 ︿低 ラ イ フ ス テ ー ジ ﹀ ︿高 ラ イ フ ス テ ー ジ ﹀ 家 庭 サ ー ビス 5一 (注)線 で囲 って あ る意 見 は 個 人 志 向 を認 め る意 見, 10一 それ以外 は個人行動を 認 める意見 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター編 「核 よ り引用 \/ 〈 低学歴〉 〈高学歴〉 爪 妻 の個 人志 向 図9 剛 '個 室 ・離 婚 ● 家庭 サ 胴 ● 夕食 ビス ・旅 行 ・正 月 ● 〈 r 11> 冒 ● 大掃除 一 一 W 〈 低学歴〉 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター 編)核 よ り引 用 ︿低 ラ イ フ ス テ ー ジ ﹀ ︿高 ラ イ フ ス テ ー ジ ﹀ 生 き方 ● ● 秘密 奈 188 良 大 学 紀 要 第19号 男女 と も個 人 化 の 傾 向 は 学 歴 の 高 さ と相 関 す る半 面 、 ラ イ フ ス テ ー ジに つ い て は 男 性 は全 体 に低 い ライ フ ステ ー ジで 個 人 化 傾 向 が あ らわ れ るの に 対 して 、 女 性 で は 一部 の 項 目に つ い て は 高 い ライ フス テ ー ジ と相 関 の み られ る こ とが 注 目され る。 これ は い わ ゆ る女 性 の ラ イ フ サ イ ク ル 第3期 に お け る意 識 の 変 化 と い う問題 と関 連 す る現 象 と解 釈 さ れ る よ うに 思 わ れ る。 また この 調 査 で は 、 個 人 志 向 に 関 す る質 問 群 か ら 「場 合 に よ っ て は 、 家 族 に秘 密 を持 って も か まわ な い 」 とい う質 問 を と りあ げ る こ と、 これ を肯 定 す る意 見 は 「休 息 、 安 ら ぎの場 を提 供 す る もの 」 とい う家 族 観 と相 関 し、 これ を否 定 す る意 見 は 「力 を 合 わ せ て 豊 か な家 庭 を 築 い て 行 くもの 」 とい う家 族 観 と相 関 す る傾 向 が認 め られ て お り、家 族 意識 の 変 遷 に つ い て示 唆 す る 事 実 と して 興 味 深 い 。23) III.家 族 関 係 の 個 人 化 都 市 社 会 学 者 の高 橋 勇 悦 は 、現 代 の 都 市 化 社 会 に お け る生 活 様 式 の ひ と つ の傾 向 と して 「生 活 の個 人 化 」 を あ げ て い る。 そ れ は 、 「人 び とが そ れ ぞ れ個 人 単 位 に別 べ つ の生 活 を も ち、 あ る い は行 動 す る こ と」 で あ り、 「そ れ ぞ れ の生 活 に お い て 、 そ れ ぞ れ の 関心 を 追 求 す る」 よ う な社 会 生 活 の形 態 で あ るが 、 さ ら に高 橋 は 「家 族 とい う きわ め て 基 礎 的 な集 団 の歴 史 的 な機 能 が低 下 した こ と」 に と もな って 、 人 々 が 「家 族 の一 員 と して 生 活 す る条 件 は 弱 くな って 、 人 び と が個 人 単 位 に生 活 す る条 件 が 広 が っ て きた」 とい う よ うに都 市 化 社 会 の家 族 生 活 を 分 析 して い る。24)こ う した 「生 活 の 個 人 化 」 は 都 市 化 社 会 に お け る個 人 や 家 族 の 生 活 の 一 般 的 な 傾 向 と して の私 化現 象 の進 行 に 着 目 した もの とい え るだ ろ う。 大 阪市 立 大 学 社 会 学研 究 室 が昭 和63年7月 に 大 阪 市 内 で 実 施 した都 市 住 民 の 私 化 意 識 の現 状 を テ ー マ と した市 民 意識 調 査 で は、 この よ うな都 市 の 家 族 生 活 に お け る 「生 活 の 個 人 化 」 を問 う もの と して 、次 の2つ の 質 問 を設 定 した。25) [1]余 暇 の 過 ご し方 に つ い て 、 次 の よ うな2つ の 意 見 が あ り ま す 。 あ な た の お 考 え はA・B の ど ち らに 近 い で す か。 近 い方 を お 答 え下 さ い。 A:で き るだ け 家 族 そ ろ っ て過 ごす こ とが 望 ま しい。 B:で き るだ け、 ひ と りひ と りの 関 心 や 趣 味 に あわ せ て 、別 々 に過 ごす こと が望 ま しい。 1.Aに [II]予 近 い2.Bに 近 い3.わ か ら ない 定 外 の 収 入 が あ っ た と き、 そ れ を あ な た は、 家 族 の た め に 使 い ます か。 そ れ と も、 自分 の た め に使 い ます か。 1.家 族 の た め に 使 う2.自 分 の た め に 使 う3.わ か らな い これ らの 質 問 に対 して は次 の よ うな 回 答 結 果 が得 られ た 。 族 のために使 う 63.5% 近 い24.3% 2.自 分 のために使 う 25.9% か ら な い4.6% 3.わ か ら な い. 10.6% [1]1.Aに 近 い71.4% 2.Bに 3.わ [II]1.家 2つ の 質 問 と も個 人 化 の 傾 向 に関 して は ほ ぼ 同 様 の数 値 が あ ら わ れ て い る。[II]の 「わ か らな い]と 質 問で した もの の 数 値 が数 ポ イ ソ ト高 く出 て お り、 そ の分 家 族 中心 主 義 の 回 答 の 数 値 が 低 くな って い るが 、 この こ と は 高 度 経 済 成 長 を 経 た今 日で は一 般 に家 庭 生 活 の 物 質 的 な 「豊 か さ」 が実 現 され て お り、 こ う した な か で マ イ ホー ム主 義 的 な関 心 の焦 点 が経 済 生 活 の面 よ り も家 族 の 情緒 的 交 流 を重 視 す る方 向 に 移 行 しつ つ あ る こ と を示 す もの と も解 釈 で き る が、 荒川:戦 後 日本 の 家族 と私 化 189 この数 値 は単 に そ の使 途 を 明確 に特 定 化 せ ず に 「貯 蓄 す る」 こ と を考 えた もの が こ う答 えた こ と の結 果 と も解 釈 で き る。 も し、 後 者 の推 測 が 正 しい と す るな らば 、 これ は 将 来 の 必 要 や 不 測 の事 態 を考 え て の行 動 とみ る こ と もで き、個 人 本 位 主 義 よ り も家 族 中 心 主 義 に 近 い 意 識 の あ ら わ れ を示 す も の と して 受 け取 る こ と がで き る よ う に も思 わ れ る。 な お 、 「余 暇 の過 ご し方 」 に つ いて は 、 先 にみ た生 命 保 険文 化 セ ソタ ー の調 査 で も同 様 の数 値 が調 査 結果 の な か に あ らわ れ て い る。 別 々 の部 屋 で 各 自好 き な こと をす る 余暇の過ご し方 図10 1 夕食 後 の 過 ご し方 N=2319 19.2 53.9 16.0 9.1 VO/ 1. 1 休 日の 楽 しみ 方 N=2319 52.0 家族0緒 9.0 31.4 夫婦で 楽 しむ に楽 しむ 7.6 各 自楽 しむ 不明 生 命 保 険 文 化 セ ンタ ー編 「核 家 族 そ の意 識 と実 態 」 よ り引 用 こ う した 家 族 意 識 の 動 態 を さ らに 分 析 す る た め 、調 査 対 象 者 の個 人 属 性 と の関 連 をみ て み よ う。 こ こで は 性 別 、 年 齢 、 職 業 、学 歴 、 婚 姻 状 況(結 婚 して い る か ど うか)と い う5つ の デ モ グ ラフ ィ クな 要 因群 を と りあ げ 、 そ れ ら を説 明 変 数 と して 数 量 化2類 に よ る分 析 を行 って み た 。 次 の表10が そ の分 析 結 果 の ま と め で あ る。 余 暇 の 過 ご し 方 表10 説 明 変 数 レ ソ ジ 偏 相関係 数 臨 時 収 入 の使 い方 レ ソ ジ 偏 相 関係 数 (1)婚 姻 状 況 36.11398 0,372 5.43774 0,229 (2)学 歴 6.09843 0,130 1.32590 11.・ (3)性 別 10.93512 0,163 1.33269 0,073 (4)年 齢 11.49269 0,110 2.81265 0,095 (5)職 業 11.12682 0,095 3.75995 0,090 固 有 値 0.22844 0.08392 奈 190 これ を み る と固 有 値(相 良 大 関 比)は 学 紀 要 第19号 「予 定 外 の収 入 の使 い 方 」 で 相 対 的 に 高 くな っ て お り、 「余 暇 の過 ご し方 」 に 比 較 す る と、 消 費行 動 で こ う した個 人 の 属 性 的 変 数 に よ る規 定 性 が よ り 大 きい こ とが示 され て い る◎ レ ソ ジ と偏 相 関 係 数 が 最 も 高 い の は 、2つ の 質 問 と も婚 姻 状 況 で あ り、 「未婚 で あ るか 、 既 婚 で あ るか」 の違 い に よ る家 族 内 役 割 位 置 の 相 違 が家 族 本位 の 行 動 を と るか 、個 人 本位 に 行 動 す る か を決 定 す る大 き な要 因 で あ る こ と が看 取 さ れ る。 ク ロ ス集 計 の 数値 を み る と、 こ う した婚 姻 状 況 に よ る規 定 性 は 「予 定 外 の 収 入 の使 い方 」 で よ り顕 著 に あ らわ れ て お り、 未 婚 者 の 行 動 は経 済 生活 の 面 で は個 人 化 して い る が、 情 緒 生 活 の面 で は 比較 的 マ イ ホー ム主 義 的 で あ る こ とが示 唆 され て い る。 衷11余 暇 の過 ご し方 と婚 姻 状 況 家 族 中 心 個 人 本 位 わ か らない 計 既 婚 367 (71.2) 95 (19.5) 16 (3.4) 478 (loo.o> 未 婚 50 (48.1) 46 (44.2) 8 (7.7) 104 (100.0) x2'=34.646(P<.05) x2値 C%) 表12臨 時収 入 の使 い方 と婚 姻 状 況 個 人 本 位 わ か らな い 計 家 族 中 心 既 婚 347 (72.2) 83 (17.3) 50 (10.3) 479 (100.0) 未 婚 25 (24.6) 67 (64.4) 12 (11.5) 104 (100.0) x2値 x2二=104.947(P<.05) C%) 年 齢 に つ い て は 、 調 査 対 象 者 の な か で 最 も若 い年 齢 層 で あ る20歳 代 と そ の他 の年 齢 層 との 間 に明 確 な 格 差 がみ られ 、2つ の 質 問 と も20歳 代 の もの に 個 人 本 位 の 回答 を した もの の比 率 が 高 くあ らわ れ て い る。 た だ し、年 齢 は 婚 姻 状 況 と強 く相 関 す る と考 え られ 、20歳 代 で は他 の 年齢 層 よ りも未 婚 者 の 比 率 が高 い もの と推測 され る。 したが って 、20歳 代 の 高 い 個 人本 位 の数 値 は 、 家 族 意 識 に お け る私 化 傾 向 の世 代 的 な 特 徴 を あ らわす もの で は な く、 む しろ 回 答者 の 家 族 内 役 割 位 置 の 関 数 で あ る側 面 が大 きい もの と考 え られ る。 ま た 、 「余 暇 の過 ご し方 」 に つ い て は 、 30歳 代 で 「家 族 そ ろ って 過 ごす こ とが 望 ま しい 」 とす る家族 中 心 主 義 の傾 向 が顕 著 に み られ る が、 こ の よ うな30歳 代 の特 徴 は 、 後 にみ られ る よ うに この 年 齢 層 の既 婚 者 の子 供 の年 齢 に よ っ て 影 響 さ れ て い る もの と推 察 され る。 同 じ 「余 暇 の過 ご し方 」 で は50歳 代 で個 人 本位 の 数 値 が 若 干 高 ま るが 、 これ は この 年 齢 層 の 女 性 の 回答 傾 向(家 族 中心65.2%一 映 した もの と考 え られ る。 個 人 本位33.3%)を 反 荒 川:戦 後 日本 の 家族 と私 化 表13余 191 暇 の過 ご し方 と年 齢 家 族 個 人 本 位 わ か らな い 計 20歳 代 51 (58.6) 30 (34.5) 6 (6.9) 87 (100.0) 30歳 代 83 (80.6) 16 (15.5) 4 (3.9) 103 (100.0) 40歳 代 111 (73.0) 34 (22.4) 7 (4.6) 152 (100.0) 50歳 代 93 (68.9) (28.4) 4 (3.0) 135 (loo.o) 60歳 代 62 (73.8) 18 (12.4) 4 (4.8) 84 (100.0) 70歳 以 上 36 (69.2) 13 (25.0) 3 (5.8) 52 (ioo.o) x2=13.882(n.s) x2値 表14臨 」O C%) 時収 入 の使 い 方 と年齢 家 族 中 心 20歳 代 30 (34.1) 30歳 代 40歳 個 人 本 位 わ か らな い 計 (54.6) 10 (11.4) (ioo.o> 72 (70.6) 22 (21.6) 8 (7.$) 102 (100.0) 代 94 (62.3) (22.6) 23 (15.2) 151 (100.0) 50歳 代 97 (71.3) 27 (19.9) 12 (7.7) 136 (100.0) 60歳 代 63 (75.0) 16 (19.1) 5 (13.2) 84 (loo.o> 70歳 以 上 34 (64.1) 12 (22.6) 7 (13.2) 53 (100.0) x2値 Q .)`t Q x2=18.307(P<.05) (%) 職 業 との 関 連 を み る と、 事 務 ・技 術 的 職 業 に つ い て い る もの で 「予 定 外 の収 入 」 を 「自分 の た め に使 う」 と回 答 した もの が 多 く、 ま た技 能 ・熟 練 労働 者 や 労 務 従 事 者 に も この よ うな個 人 本 位 の 回答 が 多 い 。 他 方 、 この 数 値 が 低 い の は 自営 業 者 で あ り、 主 婦 ・無 職 も これ と ほ ぼ 同 じ 数 値 を示 して い る。 事 務 ・技 術 的 職 業 や 技 能 ・熟 練 労 働 者 に は 企 業 の 被 雇 用 者 が 多 く、 比 較 的 奈 192 良 大 学 紀 要 第19号 安 定 した 定 期 収 入 が得 られ る立 場 に あ る こ とか ら、 臨 時 の 収 入 は 自分 自身 の た め の 個 人 的 な 支 出 に 費 や す 余 裕 が あ る もの と も考 え られ るが 、 自営 業 者 層 には 「余 暇 の過 ご し方 」 で も家 族 本 位 の 回 答 をす る もの が よ り多 く、 ホ ワイ トカ ラー な どの 被 雇 用 者 に個 人 化 の傾 向 が 相 対 的 に 強 くみ られ る の に 対 し、 自営 業 者 や主 婦 な ど職 業 や 労働 の 場 が 家 庭 と重 な り合 う もの には 家 族 中 心 主 義 が よ り強 くあ ら われ る とい う対 照 が認 め られ る よ うで あ る。 表15余 暇 の 過 ご し方 と職 業 経 営 ・管 理 専 門 的 職 業 自 営 業 事 務 ・技 術 的 職 業 技 能 ・熟 練 労 働 者 労務 従 事 者 サ ー 従 ビ ス 事 無 職 者 ・主 婦 計 家 族 中 心 個 人 本 位 わ か らな い 20 (62.5) 61 (74.4) 10 (31.3) 2 (6.3) 4 (4.9) 32 (100.0) 82 (100.0) 8 (7.o> 1 (1.2) 114 (100.0) 74 (64.9) 62 (72.9) 31 (70.5) 40 (71.4) 141 (74.2) 17 (20.7) 32 (28.1) 22 (25.9) 10 (22.7) 14 (25.0) 43 (22.6) 3 (6.8) 2 (3.6) 6 (3.2) 85 (100.0) 44 (100.0) 56 (loo.o) 190 (100.0) x2=9.361(n.$) x2値 C%) 表16臨 時収 入 の使 い方 と職 業 経 営 ・管 理 専 門 的 職 業 自 営 業 事 務 ・技 術 的 職 業 技 能 ・熟 練 労 働 者 労 務 従事 者 サ ー 従 ビ 事 無 職 x2値 ス 者 ・主 婦 計 家 族 中 心 個 人 本 位 わか らない 20 (62.5) 62 (76.5) 56 (49.1) 49 (57.7) 29 (63.0) 9 (28.1) 2 (9.4) 7 (s.s) 32 (100.0) 81 (100.0) 16 (14.0) 10 (11.8) 114 (100.0) 85 (100.0) 3 (6.5) 5 (8.9) 46 (100.0) 56 (100.0) 190 (loo.o> 36 (64.3) 134 (70.5) 12 (14.8) 42 (36.8) 26 (30.6) 14 (30.4) 15 (26.8) 37 (19.5) 19 (lo.o) x2=24.440(p<.05) (%〉 193 荒川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 性 別 で は 、 「余 暇 の 過 ご し方 」 で 男 性 よ りも女 性 に個 人 化 の 傾 向 が よ り強 くあ らわ れ て い る こ とが 目を ひ くが 、 これ は女 性 の有 職 者 の 数 値 を反 映 した もの と考 え られ(家 族 中心64.4%一 個 人 本 位31.0%)、 主 婦 層 で は こ う した 個 人 化 傾 向 は と くに 強 くみ られ な い。(家 族 中 心73.4 %一 個 人 本位24.7%)反 対 に、 「予 定 外 の 収 入 の使 い方 」 に つ い て は 、 男 性 に個 人 本位 の 傾 向 が 強 く、 男 女 の 間 には っ き りと した 差 異 が認 め られ る。 表17余 暇 の過 ご し方 と性 別 家 族 中 心 個 人 本 位 わ か らな い 計 男 207 (73.8) 60 (21.4) 14 (5.0) 281 (loo.o) 女 229 (69.0} 89 (26.8) 14 (4.2) 332 (100.0) x2=2.598(n.s) x2値 表18臨 時 収 入 の使 い方 と性 別 (%) 家 族 中 心 個 人 本 位 わか らない 男 161 (57.3) go (32.0) 30 (10.7) 281 (loo.o) 女 229 (68.8) 69 (ZO.7> 35 (10.5) 333 (100.0) 計 x2=10.687(p<.05) x2値 C%〉 学歴 を み る と、 「予 定 外 の収 入 の使 い 方 」 に つ い て は高 学 歴 者 に 個 人 化 傾 向 が強 くみ られ る が 、 「余 暇 の過 ご し方 」 に は こ うい った 学 歴 と の関 連 は み られ な い 。 た だ し、 後 者 の質 問 で も 家族 中心 主 義 の 回 答 は 高 学 歴 者 で 若 干 減 少 す る。 「予定 外 の 収 入 の使 い方 」 に み られ る傾 向 は 、 学 歴 と職 業 の種 類 や 職 業 上 の地 位 の 高 低 お よ び それ らに と もな う定 期 的 な収 入 の多 寡 と の相 関 性 を反 映 した もの と解 釈 で きる だ ろ う。 表19余 暇 の過 ご し方 と学 歴 家 族 中 心 個 人 本 位 わ か らない 計 中 卒 151 (71.2) 52 (24.5) 9 (4.3) 281 (loo.o) 高 卒 188 (72.9) 62 (24.0) 8 (3.1) 258 (100.0) 大 卒 89 (65.9) 35 {25.9) 11 (8.2) 135 (100.0) x2値 x2=5.727{n.s) C%) 194 奈 表20臨 良 大 学 紀 要 第19号 時 収 入 の使 い方 と学 歴 家 族 中 心 個 人 本 位 わか らない 計 中 卒 150 (70.i> 46 (21.5) 18 (8.4) 214 (100.0) 高 卒 169 (65.5) 58 (22.5) 31 (12.0) 258 (100.0) 大 卒 67 (50.0) 51 (38.1) 16 (11.9) 134 boo.o) x2=9.488(p<.05) x2値 C%〉 以上 の個 人 属 性 に加 え て 、調 査 対 象者 の家 族 属 性 で あ る 「学 校 に通 って い る子 ど も との 同 居 」 を み る と、2つ の 質 問 と も同 居 して い る子 供 が 「い る」 もの で は 家 族 中心 主 義 が よ り強 くな り ([1]76.1%、[II]69.6%)、 1%[II]69.6%)。 「い な い」 もの で は 個 人 本 位 の 回 答 が 増 加 す る([1]27. と くに 注 目さ れ る こ とは 、 「余 暇 の 過 ご し方 」 で 同居 す る子 供 の 年 齢 と 相 関 が み られ る こ とで あ り、 最 も幼 い 「小 学 生 の 子 ど も と同 居 して い る」 もの で は 、 家 族 中心 の 回 答 が84.1%を 占 め 、 個 人 本 位 の 回 答 は13.1%に と ど ま る。 そ して、 同居 して い る子 供 の年 齢 が 高 くな る に つ れ て 、 家 族 中 心 主 義 は減 少 し、 個 人 本 位 の 回 答 が 増 え て い く。 こ の よ うな 「余 暇 の 過 ご し方 」 と子 供 の年 齢 と の 関係 は生 命 保 険文 化 セ ソ タ ー の調 査 に よ って も確 認 され て い る(図11参 照)が 、 こ の こ と は 、前 に み た よ うに30歳 代 で 家 族 中心 主 義 の 傾 向 が 最 も強 く あ らわ れ 、40歳 代 か ら50歳 代 に か け て個 人 本位 の 回 答 が 増 加 し、60歳 代 で再 び 家 族 中 心 主 義 に 傾 斜 した 後 、70歳 以 上 の 年 齢 層 で個 人 化 の傾 向 が再 度 強 ま る と い う加 齢 現 象 との 相 関 と い う事 実 と相 即 して い る と い え よ う。(自 分 の 子供 の 年 齢 の 変 化 、 お よ び孫 の誕 生 とそ の 年 齢 の変 化 が要 因 に な る と考 え られ る)こ れ に対 し、 「予 定 外 の 収 入 の使 い方 」 で は この よ うな 同居 す る 子 供 の年 齢 と の関 連 は 明確 で は な い 。 荒川:戦 後 日本 の 家族 と私 化 ラ イ7ス テー ジ別 図11 0 20 195 休 日の 過 ご し方 40 60 100 % 80 〈末子年 齢> 0歳 N=87 1∼3歳 N=369 4∼5歳 N=190 90.5 家族 一 緒 に 楽 しむ 6∼11歳 N=554 12∼14歳 N=257 夫婦だけで 楽 しむ 15∼17歳 N=225 56.・紳 楽 しむ 18∼20歳 N=214 21∼25歳 N=208 26∼30歳 ・・ 27.930.8 生 命 保 険 文 化 セ ソ ター 編 「核 家 族 そ の 意 識 と実 態 」 よ り引 用 以 上 の よ うに、 家 族 関係 の 個 人 化 と個 人 の属 性 と の関 連 性 に つ い て は 、第 一 に 未婚 と既婚 の 区 別 が 大 き な要 因 性 を もつ こ とに 加 えて 、 「余 暇 の 過 ご し方 」 は個 人 の ライ フサ イ クル 的 要 因 との 関 連 性 が 大 き く、 他 方 「予 定 外 の 収 入 の使 い方 」 は 職 業 や学 歴 な ど の社 会 階 層 的要 因 と よ り大 き く関連 す る もの と み る こ とが で き る よ うで あ る。 以上 、検 討 して きた よ うに大 阪市 立 大 学 の 調 査 か らは 、 家 族 中 心 主 義 す な わ ち マ イ ホ ー ム主 義 が 日本 人 の 家族 意 識 の な か で は い ま だ に 大 き な存 在 性 を も って お り、 生 活 の個 人 化 は そ れ ほ どの広 が りを もつ に い た って い な い こ とが 示 され た。 そ して 、 個 人 化 が 顕 著 にみ られ る の は若 い未 婚 の世 代 に お い て で あ り、 これ は ライ フサ イ ク ル の ス テ ー ジの 移 行 に と も な って 家 族 中心 主 義 に転 じて い くの が 一 般 的 な傾 向で あ る もの と推 定 さ れ る。 しか し、 先 に み た 生 命 保 険 文 化 セ ソタ ー の調 査 が 明 らか に して い る よ うに 、家 族 の 集 団 的 な ま とま り とは抵 触 しな い 範 囲 や 形 態 で 個 人 の 私 性 の 自立 と拡 大 を 求 め る志 向性 が め ば えて きて い る こ と も事 実 で あ る。 今 後 も当 面 は 若 い 世 代 の個 人 化 志 向 が ライ フ ステ ー ジ の移 行 に と も な って 家 族 中心 主 義 に転 じて い くと い う従 来 の傾 向 に変 化 は み られ な い と推 測 され る が 、 半 面 で 私 化 の進 行 と い う今 日の価 値 意識 の 変 動 は 家族 中 心 主 義 や マ イ ホ ー ム主 義 そ れ 自体 の 性格 や 内 容 を変 化 させ て い く もの と思 わ れ る。 そ れ が結 果 す るの は い わ ば個 人化 され た 家 族 中心 主 義 で あ り、 私 化 現 象 の浸 透 に よ っ て次 第 に変 質 して い く家族 の 共 同 性 の あ り方 で あ る。26) 奈 196 良 大 N.む 学 紀 要 第19号 すび に か え て 我 々 は 、現 代 家 族 の直 面 す る変 化 を家 族 の 共 同 性 を め ぐ る私 化 現 象 の進 行 と して捉 え て きた。 この現 代 の家 族 の変 化 は マ イ ホー ム主 義 と い う家 族 意 識 の あ り様 を そ の変 化 の原 点 と して い る。 マ イ ホ ー ム主 義 は 、 これ まで ジ ャー ナ リズ ム の分 野 にお い て も、 ア カデ ミズ ム の世 界 に お い て も、 主 にそ の 否定 的 な側 面 を強 調 され 、 批 判 的 な視 点 か ら論 じられ る こ とが 多 か った。 しか し、 マ イ ホ ー ム主 義 は少 な くと も60年 代 初 期 の高 度 経 済 成 長 の離 陸期 には 、 戦 前 の 「家 」 制 度 の 家 族 意 識 や 古 い共 同体 意識 の 規 制 か ら解 放 され た 家 族 の 共 同 性 の活 性 化 され た姿 を シ ソ ボ リ ック に表 現 す る言 葉 で もあ った 。 それ は集 団 と して の 家 族 の私 化 で あ り、 我 が 国 に お け る近 代 家 族 の い くぶ ん特 殊 な形 態 を と っ た本 格 的 な成 立 を 意 味 す る もの で あ っ た と い え るだ ろ う。 芹 沢 俊 介 の文 学 的 な 表現 を 借 りる と、 「移 動 の 時代 」 にお け る 「家 族 の エ ロス」 の 表 出 で あ っ た。 や が て 、戦 後 史 の な か で 高 度 成 長 が頂 点 に達 しそ の 終 焉 期 を 迎 え る と、 家 族 は 「定 着 の 時 代 」 に 入 り、 「家族 の エ ロ ス」 は 衰 退 化 す る傾 向 を 示 し始 め る。 我 々 の 観 点 か え って 言 い 換 えれ ば 、 マ イ ホー ム主 義 は 経 済 発 展 の結 果 「豊 か で 明 るい 家 庭 」 とい うそ の 目標 の一 半 が 実 現 さ れ る こ とに よ って 、 明確 な 向 か うべ きそ の方 向 を 見 失 って い くの で あ る。 この こ とは 家 族 の凝 集 性 の 契 機 で あ った 共 同 性 に一 一種 の 「揺 ら ぎ」 が 生 じ始 め た こ と を意 味 す る。 この 時 期 以 降 、 さま ざ まな 家 族 問 題 の輩 出 が新 た な社 会 問題 と して 注 目を あ び る よ うに な り、個 人 主 義 化 の波 の な か で 戦 後 家 族 の ア ノ ミー的 な様 相 が 強調 され 、 家 族 は崩 壊 に 向 か うの で は な い か と い う危 機 感 が 現 代 家族 につ いて 語 る際 の基 調 の ひ とつ とな り、 今 日に い た っ て い る。27) しか し、 本 稿 で み た よ うに 、 家 族 に 関 す る近 年 の調 査 は、 現 在 に お い て も マ イ ホ ー ム主 義 が 日本 人 の 家 族 意 識 の な か で大 きな 比 重 を 占 め続 け て い る こ とを示 して い る。 た だ し、 そ の一 方 に お いて 性 別 役 割 意 識 の変 化 に よ る男 女 の平 等 化 や 自立 化 した個 人 生 活 の 提 唱 の広 が り、 あ る い は ま た家 族 の 内部 で の個 人 の 私 性 の 自立 と拡 大 の 希 求 な ど家族 をめ ぐる現 実 の変 化 は 着 実 に 進 み つ つ あ る。 そ して 、 こ う した 変 化 の基 調 を な す 個 人 化 の傾 向 は 、 私 化 の 現 象 が集 団 と して の家 族 の 次元 か らそ の 内 部 の 家 族 関 係 の次 元 へ と浸 透 し始 め た こ と を示 唆 して い る。 そ れ は 家 族 の共 同 性 か らの個 人 の 析 出 化 に ほ か な らな い が 、 そ の結 果 マ イ ホ ー ム主 義 は過 去 の 家 族 主 義 との連 続 性 とい う特 殊 日本 的 な要 素 を払 拭 され 、 真 に近 代 的 な 家 族 の理 念 と して再 生 して い く の だ ろ うか 、 それ と も現 在 の家 族 の 私 化 は家 族 の共 同性 の 解体 化 を含 意 して お り、 今後 マ イ ホー ム主 義 は これ まで に な い 新 しい個 人 の生 き方 に 日本 人 の私 生 活 を領 導 す る価 値 理 念 と して の 地 位 を譲 り渡 して い くの だ ろ うか。 この よ うな 問 題 に答 え る こ と は、 い ま家 族 の 現 在 と将 来 に つ い て考 え 語 ろ うとす る も の に つ きつ け られ た ひ と つ の 本 質 的 な課 題 で あ る よ うに 思 わ れ る。 注 1)菅 原 真理 子 「 新 ・家族 の 時 代 」P9中 2)目 黒 依 子 「個 人 化 す る家 族 」PN勤 3)欧 米 に お け る近 年 の 家 族 事 情 に つ い て は 、 我 妻 洋 「家 族 の崩 壊 」 4)A・ 央 公 論 社1987年 草 書 房1987年 トフ ラー 徳 岡 孝 夫 監 訳 「第3の 波 」P281中 文 藝 春秋 社1985年 等 を 参 照 。 央 公 論 社1982年 5)芹 沢 俊 介 「家 族 の 戦 後 史 」P18芹 6)犬 田充 「大 衆 消 費 社 会 の 終 焉 」P25中 沢 俊 介 他 『家 族 の現 在 』 大 和 書 房1986年 7)石 川 晃 弘 ・梅 澤 正 ・高 橋 結 勇 悦 ・宮 沢 喬 「み せ か け の 中流 階級 」Pl75有 8)桜 井 陽 子 ・桜 井 厚 「幻 想 す る家 族 」P86弘 央 公 論 社1977年 文 堂1987年 斐 閣1982年 荒 川:戦 後 日本 の家 族 と私 化 9)金 屋平 三 「混 迷 の 中 の 家族 」P114金 197 屋 平 三 編 『現 代 社 会 学』 法 律 文 化 社1988年 10)井 上 忠 司 「 『家』 とい う風 景」P53日 本放 送 協 会1988年 11)山 手 茂 「マ イ ホ ー ム 主 義 の形 成 と展 開 」P199青 山道 夫 他 編 『講 座 家 族8家 族 観 の 系 譜 』 弘 文 堂 1974年 12)桜 井 陽子 ・桜 井 厚 前 掲 書P160 13)布 結 晶子 ・玉 水 俊 哲 編 著 「現 代 の家 族 」79青 14)小 浜 逸 朗 「可 能 性 と して の家 族 」P56大 木書 店1982年 和 書 房1988年 15)社 会 学 に お け る私 化 の概 念 に つ いて は 、片 桐 雅 隆 「レ リバ ソス と社 会 的 世 界一 私 化 現 象 とA・ シ ュ ッ ツの社 会 理 論 に つ いて 」 人 文 研 究 第30巻 第11分 冊 大 阪 市 立 大 学 文 学 部1978年 、森 田 洋 司 「い じめ と家 族 関 係 一 『傍 観 者 』 心 理 と私 化 現 象 」 亀 ロ憲 治 編 集 『現 代 の エ ス プ リ家族 の風 景』 至 文 堂1990年 な どを 参照。 16)丸 山真 夫 「個 人 析 出 の さ ま ざ ま な パ タ ー ソ」M・B・ ジ ャ ソセ ソ編 『日本 に お け る近 代 化 の 問 題 』 岩 波 書 店1968年 17)桜 井 陽 子 ・桜 井 厚 前 掲 書P31 18)落 合 恵 美 子 「〈近 代 家 族 〉の 誕 生 と終 焉 」P78『 19)目 黒 衣 子 20)ボ 現 代 思 想 家 族 の メ タ フ ァー』 青 土社1985年 前 掲 書P65 ー ゲル の観 察 した 日本 の 新 中 間 階 級 の主 婦 の姿 が そ の典 型 で あ ろ う。E・F・ ボ ー ゲ ル 佐 々 木 徹郎 訳 編 「日本 の新 中 間 階 級 サ ラ リーマ ソ と そ の家 族 」 誠 信 書 房1968年 21)生 命 保 険 文 化 セ ソ ター 編 「核 家 族 そ の意 識 と実 態 」P3日 本 放 送 出版 協 会1986年 22)同 上P61∼P62 23)同 上P125 24)高 橋 勇 悦 「都 市 化 社 会 の生 活 様 式 」P47学 文 社1984 25)こ の 調 査 は 、 大 阪 市 に居 住 す る20歳 以 上 の男 女 の な か か ら確 立 比 例 抽 出法 に よ って抽 出 され た1000人 を対 象 と して 昭 和63年7月15日 26)例 か ら7月17日 の期 間 に実 施 さ れ 、調 査 票 の 回収 率 は61.9%で あ った 。 え ば、 神 原 文 子 は こ う した 「家 族 と個 人 と の今 日的 な 関係 に み られ る特 徴 」 を 「家族 との 関 わ りに おけ る個 人 の 主 体 化 」 と して 捉 えて い る。 神 原 文 子 「 《地 位 ク ラス ター》 と 《成 員 シス テ ム》 一 家族 研 究 か ら の問 題 提 起 」P19『 ソ シオ ロ ジ』 第34巻 第2号 社 会 学 研 究 会1989年 27)湯 沢 雍 彦 「日本 の 家 族 問 題 の社 会 学 」 青 井 和 夫 監 修 湯 沢 雍 彦 編 集 『家 族 問題 の 社 会 学 』 サ イ エ ソ ス社1981年 参 上 野 千 鶴 子 編 「主 婦 論 争 を読 む 」III勤 考 文 献 草 書 房1982年 上 野 千 鶴 子 「女 とい う快 楽 」動 草 書 房1986年 江 原 由美 子 「フ ェ ミニ ズ ム と権 力 作用 」i動草 書 房1988年 江 原 由 美 子 「フ ェ ミニ ズ ム理 論 へ の招 待 」 『別 冊 宝 島 わ か りた い あ な た の た め の フ ェニ ズ ム入 門 』JICC 出 版 局1988年 君 塚 大 学 「家 族 、 そ の 自明 性 の喪 失 」 『生 活 科 学 論 叢 』 第15号 松 蔭 女 子 大 学 ・松 蔭 女 子 短 期 大 学1983年 熊 谷 開 作 「日本 の 近 代 化 と 『家』 制 度 」 法 律 文 化社1989年 現 代 思 想Vo1.1.13-6「 特 集 家 族 の メ タ フ ァー 」 青 土 社1985年 高 度 成 長 を考 え る会編 「家族 の 生活 の物 語 」 日本 エ デ ィ ター ス クー ル 出 版 部1985年 佐 和 隆 光 「高 度 成 長 『理 念』 と政 策 の 同 時代 史 」 日本 放送 出 版 協 会1984年 奈 198 良 大 学 紀 要 第19号 芹 沢 俊 介 「家族 の現 象論 」 筑 摩 書 房1981年 芹沢俊介 「 漂 流へ 芹沢 俊 介 家族 論 集」 春 秋 社1987年 外 木 典 夫 編 著 「現 代 日本 の共 同体2家 城 西 大 学 国 際 文 化 教 育 セ ソ ター/水 ・家族 」 学 陽 書 房1973年 田宗 子 編 「女 性 と家 族 の 変 容 ポ ス ト・フ ァ ミ リー に 向 け て」 学 陽 書 房 1990年 森 岡清 美 「日常 生 活 の 私 秘 化 」 社 会 学 評 論34(2・16)1983年 1吉 田昇 ・神 田道 子 編 「現 代 日本 の主 婦 」 日本 放 送 出版 協 会1975年 Summary Inthispaper,weunderstandJapanesepostwarfamilies'changeasaprocessofprivatization. Thisprocesshasbeenaccompaniedwiththeformofconsiousnesscalled"MYHOME-SYUGI" Sofar,theword"MYHOME-SYUGI"hasbeenusedinanegativesense.Butwecanseeit fromapositivepointofview.ItwastheformoftheconsiousnessthatJapanesepeoplehadin theprocessofliberationfromtherestrictionof"IE-SEIDO"andthisprocesscanbeseenas theformationof"modernfamily"inJapanAtthesametime,itwasthesubjectiveexpression oftheprivatizationwhichJapanesefamilyhasexperiencedasagroup.NowadaysJapanese familybeginstoenterthenextstageofprivatization.Itisprivatizationoftherelationships amongindividualsbelongingtoafamily.wesuspectitisaradicalchangeofthenatureof familyinJapanwhichisawayofhumanlife.
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