金属酸化物機能性材料薄膜合成のための 超省エネルギーCVD技術 長岡技術科学大学 技学研究院 電気電子情報工学専攻 教授 安井 寛治 1 省エネルギーおよび情報化社会における最近の発展 ① 発光ダイオード(構成材料:GaN,InGaN) LED照明の市場規模2013年:1.3兆円 希少元素である ガリウム(Ga)および インジウム(In)を使用 ② 透明伝導膜(構成材料:SnドープIn2O3:有害) 情報用製品 グリーンエネルギー生成 フラットパネルディスプレイ 太陽電池 2013年:10.4兆円 http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/131212_13088.pdf 2014年 モジュール:1,078億ドル http://www.yano.co.jp/press/pdf/1466.pdf 2 InおよびGaの産出現状 元素 産出国 総産出量に対する日本の需要量 In 中国 Ga オーストラリア・ ロシア・カザフスタン 87% 69% 3 ① 発光ダイオード、② 透明伝導膜 課題:希少元素・有害元素の代替 条件:豊富に存在し安全な元素から構成され、優れた特性を持つ。 ZnOが有望 電気特性は、GaNよりも優れており透明伝導 膜両用途に利用可能。半導体デバイス (LED・トランジスタ)への応用も期待されてい る. 励起子結合エネルギー:60meV (GaN: 26meV) 透明導電膜 :優れた可視光透過性 ZnOを発光ダイオードおよび透明伝導膜として使用するためには、 高品質なZnO薄膜を得る技術の確立が不可欠。 技術的問題点 ZnOはイオン性の高い酸化物であり、薄膜化プロセスにおいて、 組成ずれによる格子欠陥や不純物の混入が起こりやすく、高品 質薄膜の作製が非常に難しい。 4 高品質ZnO薄膜作製の一例:パルスレーザー堆積(PLD)法 ZnOはデバイス化のための高品質ZnO薄膜作製が難しい 現在の高品質ZnO薄膜の製造方法 実験レベルでの高エネルギーを用いた物理的手法(PLD)が主体 高額装置!! 株式会社パスカルHPより転載 青山学院大学HPより転載 量産には不向き 5 金属酸化物(ZnO)電子材料薄膜の作製手法 手法 品質 コスト エネルギー消 大口径基板対応 費量 パルスレーザ堆積 (PLD)法 ◎ × × × 分子線エピタキ シー(MBE)法 ◎ × × × マグネトロンスパッ タ(MS)法 △ ○ △ ○ 化学気相堆積 (CVD)法 △ ○ ○ ○ 量産化には、マグネトロンスパッタ(MS)法や化学気相堆積(CVD)法が有効。 ただ、MSは透明導電膜の作製には適しているが、半導体レベルの高品質な ZnO結晶膜を作製することができていない。従来のCVD法においても半導体 レベルの結晶膜は得られていない。 6 従来の化学気相堆積(CVD)法 技術的難点 従来の化学気相堆積(CVD)法の原理 表面反応 亜鉛源であるアルキル亜鉛(Zn(CxH2x+1)2) および酸化剤である水(H2O)や酸素を同 時に基板に対して吹き付け基板表面での 表面反応により薄膜を形成させる。 多数の亜鉛や酸素の欠陥および未反応物 が膜中に残存するため、ZnO薄膜の品質 が低下する。 純粋なZnOを基板に直接堆積することが出来れば、高品質ZnO薄膜を作製可能。 7 新規CVD手法の開発に着手 新しい発想に基づき新規手法を開発した 新規技術:触媒反応支援CVD (*CRA-CVD)法 H2O分子の生成に触媒を用いてH2とO2を反応 させる。H2とO2の反応は発熱反応であるため、 触媒温度は急激に上昇(>1000 oC)し、高温の H2Oを生成する。この高温のH2Oとアルキル亜 鉛(Zn(CxH2x+1)2)とを反応させ気相中に高エネ ルギー状態のZnO分子を生成させ、それを直接 基板に堆積させる。 水素と酸素の化学エネルギーでZnO前 駆体を生成、高品質ZnO薄膜を作製。 省エネルギー性に優れたCVD技術 *Catalytic Reaction Assisted-Chemical Vapor Deposition 8 触媒反応を用いたH2O生成 H2, O2の燃焼により生成されるH2O(酸水素炎)は、大気圧下で2800℃。 大きな自由エネルギー差:DGof = -228.6kJ/molによる。 ただ、減圧条件 で安定して燃焼させるのは困難。Pt触媒表面でのH2, O2の燃焼が有効。 9 亜鉛原料ガス T catalytic cell (˚C) 高エネルギーH2Oを用いた触 媒反応支援CVD装置 ×100 14 12 10 8 6 4 2 0 0 2 4 6 8 10 Time (min) 酸素原料ガス 触媒容器 触媒容器内温度 省エネルギー条件で金属酸化物電子材料結晶の成長が可能 10 Electron mobility (cm2/Vs) 250 他の手法との比較:電子移動度 200 Na/Nd=0 150 100 50 0 0.1 ▲ MBE 1 ▲ MBE 2 ▲ MBE 3 △ L-MBE ■ PLD 1 ■ PLD 2 ◆ MOCVD 1 ◆ MOCVD 2 ○ this study, a-face sapphire 1E15 1E16 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1E17 1E18 MBE 1: M. Sano et al: JJAP, 42 (2003) L1050. 2: H. Tampo et al: APL, 84 (2004) 4412. 3: K. Miyamoto et al: J. Cryst. Growth 265 (2004) 34. LMBE A.Ohtomo et al: J. Cryst. Growth 214/215 (2000) 284. PLD 1: Kaidashev et al: APL, 82 (2003) 3901. 2: A Ohtomo et al: Semicon. Sci. Technol. 20 (2005) S1. MOCVD 1: J. Dai et al, Appl. Phys. A 89 (2007) 645. 2: J. Dai et al, J. Cryst. Growth 290 (2006) 426. 1E19 Electron concentration (cm-3) 手法 電子移動度 /cm2V-1s-1 研究グループ 本手法 パルスレーザー堆積(PLD)法 197:世界最高値 155 本研究(長岡技術科学大学) 分子線エピタキシー(MBE)法 化学気相堆積(MOCVD)法 150 100 独:Leipzig University, PLD 1 産総研, MBE 2 中国:南昌大, MOCVD1 11 Intensity (arb. unit) 優れた光学特性 Photon energy (eV) フォトルミネッセンススペクトル 低温(5K) 光透過率(ZnO/a-Al2O3 film (1.5 mm) ) l=600-2000 nmの可視光、近赤外域 透過率T > 97% 最も強度の強い発光は3.3603 eVにピークを示し半値 幅は1.0 meVとこれまでの報告の中で最も小さな値 他の研究者による報告例: 従来のMOCVD法:10 meV Zn(C2H5)2 and N2O, 分子線エピタキシー(MBE) 法:5.5 meV, パルスレーザ堆積 ( PLD)法:1.7 meV, at 2 K). 12 実用化に向けた課題 • 現在、高品位ZnO膜、低抵抗n型結晶膜の作製につ いては達成済み。しかし、p型結晶膜の作製について 研究遂行中。 • 現在、p型結晶膜の作製について実験を積み重ね、 pn接合デバイスの作成技術の確立を目指して研究 を続けている。 • ただ本技術はpn接合デバイス応用、そしてZnO以外 の金属酸化物結晶の作製にもにも有効であると考え られる。 13 企業への期待 • 未解決のp型化については、現在様々なドーピング 法を試みているところである。ただ本技術はpn接合 デバイス応用以外にも有効であると考えられる。 • CVD技術を持つ企業との共同研究を希望。 • また、新しいコーティング技術を開発、検討中の企 業、金属酸化物薄膜の応用の展開を考えている企 業には、本技術の導入が有効と思われます。 14 本技術に関する知的財産権 特許1 •発明の名称:金属酸化物薄膜の製造方法及び製造装置 •出願番号 :特願2008-132193、登録番号:特許第5496471号 •出願人 :長岡技術科学大学 •発明者 :安井寛治、西山 洋、築地正俊、井上泰宣、高田雅介 特許2 •発明の名称:堆積装置および堆積方法 •出願番号 :特願2008-297384、登録番号:特許第5408819号 •出願人 :長岡技術科学大学 •発明者 :安井寛治、西山 洋、井上泰宣、三浦仁嗣 15 産学連携の経歴 • 2011年度 JST A-STEP FSステージ探索タイプに 採択 • 2012年-2014年 日本学術振興会科学研究費 基盤 研究Bに採択 • 2014年-2015年 日本学術振興会科学研究費 挑戦 的萌芽研究に採択 16 お問い合わせ先(必須) 長岡技術科学大学 産学・地域連携課 知的財産係 数藤、吉川、山本 TEL 0258-47 - 9279 FAX 0258-47 - 9040 e-mail patent@jcom.nagaokaut.ac.jp 17
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