Ⅳ構造(19.耐震設計) ①重要事項の解説

Ⅳ構造(19.耐震設計) ①重要事項の解説
「19.耐震設計」で2回以上繰り返し出題のある重要項目(H8~H27)は、下記の通りである。
耐震計算フロー
一次設計
許容応力度計算及び屋根ふき材等の構造計算
二次設計
NO
構造計算適合性判定の要否
YES
高さ≦31m
NO
高さ>31m
YES
層間変形角≦1/200(1/120)
保有水平耐力
下記の確認
剛性率≧0.6
NO
偏心率≦0.15
保有水平耐力≦必要保有水平耐力
必要保有水平耐力=Ds×Fs×Qs
Ds=構造特性係数、Fs=形状係数、
Qs=大地震時の地震層せん断力
搭状比≦4
YES
その他の規定
その他の規定
転倒検討
NO
塔状比>4の場合
YES
ルート1
ルート2
ルート3
構造計算適合性判定
(1)保有水平耐力
※過去に選択肢問題として24回出題有
・保有水平耐力の算定に当たって、鋼材にJIS規格品を使用する条件で、その基準強度を割増しした。
・保有水平耐力時に、鉄骨造のはりの継手部に塑性化が想定されたので、継手部が破断しないように設計した。
・圧縮側筋かいの耐力加算は、一対の筋かいの水平せん断耐力を、圧縮側筋かいの座屈時の水平力の2倍とした。
・曲げ降伏型の柱・はり部材とせん断破壊型の耐震壁の保有水平耐力は、終局強度での水平せん断力の和とできない。
・鉄筋コンクリート構造で耐力壁を多く配置すると、必要保有水平耐力も大きくなる場合がある。
・高さ10mのRC造(3階建)は、柱・耐力壁の水平断面積が規定値を満足したので保有水平耐力の算出を行わなかった。
・100㎡、高さ5 m、 RC造、平家建ては、仕様規定をすべて満足したので保有水平耐力の算出を行わなかった。
・構造特性係数Dsが0.3、保有水平耐力が必要保有水平耐力の1.05倍の設計では、大地震の損傷を許容した。
・偏心率が一定の限度を超える場合や、剛性率が一定の限度を下回る場合には、必要保有水平耐力を大きくする。
・高さ31mの鉄筋コンクリート造の建築物において、偏心率が規定値を超えたので、保有水平耐力の確認を行った。
・保有水平耐力に占める筋かいの水平耐力50%では、筋かいのない純ラーメンに比べて構造特性係数Dsは大きくなる。
・必要保有水平耐力は、変形能力を大きくし、一次固有周期を長くすると、地震エネルギーを吸収するので、小さくなる。
・必要保有水平耐力でスラブ付きの梁は、スラブの鉄筋による効果を考慮して、終局曲げモーメントを計算する。
(2)耐力壁
※過去に選択肢問題として11回出題有
・ピロテイ部分の柱の設計では、直上の耐力壁がピロテイ部分の柱に先行して崩壊メカニズムを形成するようにした。
・地震力を受ける耐力壁の耐力は、基礎が引抜きにより浮き上がることによって決まる場合がある。
・耐力壁等の耐震要素は、建築物の中心部に集中するより、外周部に分散して配置するほうが有効である。
・耐力壁や筋かいを耐震要素として有効に働かせるためには、床に十分な面内剛性と耐力を確保する必要がある。
・細長い連層耐力壁に接続する梁(境界梁)は、耐力壁の回転による基礎の浮き上がりを抑える効果がある。
・低層建築物の最上階から基礎まで連続していない壁は、力の流れを考慮した設計により、その壁を耐力壁とみなせる。
(3)完全スリット
※過去に選択肢問題として11回出題有
・垂れ壁や腰壁が付く柱が多かったので、当該柱や当該階の耐力を大きくして設計した。
・腰壁や垂れ壁の付いた鉄筋コンクリート構造の柱(短柱)は、地震時の塑性変形能力が小さく破壊し易い。
・腰壁や垂れ壁のある短柱は、脆性的な破壊を起こしやすいので、その対策として柱際に完全スリット等を設ける。
・柱の剛性評価では、腰壁と柱とが接する部分に完全スリットを設ける場合は、腰壁部分の影響を無視してもよい。
・腰壁と柱の間に完全スリットを設けても、梁剛性の算定では、腰壁部分が梁剛性に与える影響を考慮する。
(4)免震構造
※過去に選択肢問題として8回出題有
・積層ゴムアイソレータの免震構造は、地震時の建築物に作用する水平力及び地盤と建築物との相対変位が大きい。
・中間層免震構造を採用したので、火災時を考慮して、免震装置に耐火被覆を施した。
・超高層免震建築物の天然ゴム系のアイソレータの計画は、大きな引張軸力が生じないようにしなければならない。
・基礎免震構造では、地震時の下部構造と上部構造との相対変位に対するクリアランスの確保に注意する。
・天然ゴム系のアイソレータの免震構造では、アイソレータだけでは減衰能力が不足するので、ダンパーを組み込んだ。
(5)60mを超える建築物
※過去に選択肢問題として5回出題有
・高さ60mを超える建築物は、時刻歴応答解析等の国土交通大臣が定める基準により安全性の確認を行った。
・60m超えの構造方法は、荷重、外力に生じる力、変形を把握し、耐久性等関係規定への適合性の確認を行う。
(6)限界耐力計算
※過去に選択肢問題として5回出題有
・限界耐力計算による構造計算は、耐久性等関係規定以外の構造強度に関する仕様規定は適用しなくてよい。
・限界耐力計算による構造計算は、部材の塑性変形能力が高いほど、建築物全体の減衰性は大きい。
(7)層間変形角
※過去に選択肢問題として4回出題有
・帳壁、内装材、外装材等の取付け部分の検討では、地震力によって生じる水平方向の層間変位を考慮する。
・地震力による各階の層間変形角は、帳壁、内・外装材、設備などに著しい損傷の生じない場合は、1/120以下とする。
(8)地震地域係数Z
※過去に選択肢問題として3回出題有
・地震地域係数Zは、「許容応力度を検討する場合」と「保有水平耐力を検討する場合」とにより異なる値を用いる。
・地表設置の高さ4mを超える広告塔の地震力は、水平震度を0.5Z(Zは地震地域係数)以上として計算する。
(9)構造特性係数Ds
※過去に選択肢問題として3回出題有
・1階がSRC、2階以上がS造の構造計算で、2階以上の必要保有水平耐力をS造の構造特性係数Dsにて計算した。
・構造特性係数Ds)は、架構が靭性に富むほど小さくなり、減衰が大きいほど小さくなる。
(10)保有水平耐力計算
※過去に選択肢問題として2回出題有
・31m以下の建物(SRC)の構造計算は、塔状比4.0以下とし、超える場合は保有水平耐力計算を行う。