外在的幾何の不変量を求める一般的方法 森本 徹 空間 Xi とその上の幾何構造 Si ( i = 1, 2) が与えられたとき,(X1 , S1 ) と (X2 , S2 ) が互いに同値であるかどうかを判定すること,あるいはそ のための不変量を求めることは,内在的幾何の基本問題として古くから 多くの人々によって研究されてきた.特に,Gauss, Riemann, Lie, Klein を経て,Cartan は動標構の方法と群論的方法を融合させ,同値問題を 一般的に研究する道を開いた.今日では tower の概念の下に同値問題 を解く一般的方法が確立されている. さて外在的幾何についてはどうだろうか.G をリー群,H をその 閉部分群とする.G/H は G が変換群として作用する等質空間である. φi : Xi → G/H を多様体 Xi から G/H へのはめ込みとする ( i = 1, 2 ).このとき,Lg ◦ φ1 = φ2 ◦ f となるような G の元 g と微分同相写像 f : X1 → X2 が存在するかどうかを判定せよ,あるいはそのための不 変量を求めよ,というのが外在的幾何の同値問題である.リーマン空 間や射影空間での曲面論をはじめ幾何のいろいろなところで外在的幾 何の具体的な研究が豊富に展開されてきている.しかしこれらの背後 に何か共通の原理はないのだろうか.以前から時々このような思いを 持ったが,近年,Boris Doubrov, 待田芳徳氏との共同研究を通じ,外 在的幾何の同値問題を一般的に扱う枠組みを構成した.そしてその一 般原理を悟ったような気になった. この原理は外在的幾何の個々の具他的な問題にすぐ役立つかどうか 分からないが,外在的幾何について広い展望を与えると同時に,内在 的幾何,外在的幾何, (有限型の)線形微分方程式系,非線形微分方程式 系,それら相互の緊密な関係を理解していく上で重要な役割を演じる. 特に,階数付きのリー環とその表現 (g, V ) に対してはめ込みのクラ ス Σ(g, V ) が定まり,そのクラスに属するはめ込み (X, φ) に対して外 在的幾何としての不変量を求めるアルゴリズムが得られる.その不変量 がすべて消えていれば (g, V ) に付随した標準的なはめ込みとなる.さ らに,g が単純で V が既約なときには代数的調和理論を用いて不変量 の所属するコホモロギー群が計算できる.これによりどのような (g, V ) に対して剛性が成り立つかということも調べることができる. 岡数学研究所. 1
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