国家一般職一般論文解答例&講評

平成28年度 国家一般職
一般論文
講評&解答例
0 001112 155053
KL15505
頒布・複写を禁じます
問 題
平成 26 年(2014 年)度に行われた全国の 20 歳以上の男女を対象とした意識調査によれば,健
康のための食生活に関する意識や,健康や栄養に配慮した食生活の実践などの点で,20 歳代~30
歳代を中心とした若い世代では,40 歳以上の世代よりも課題があるとされている。
国民が健全な心身を培い,豊かな人間性を育むために,食育は極めて重要である。食育は,生
きる上の基本であって,知育,徳育,体育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに,様々
な経験を通じて,
「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し,健全な食生活を実践するこ
とができる人聞を育てるものとして,その推進が求められている。
このような状況に関して,以下の問いに答えなさい。
(1) 20 歳代~30 歳代を中心とした若い世代の現在の食生活について,具体的にどのような問題
点や課題があると考えられるか。あなたの考えを述べなさい。
(2) 若い世代が食育に興昧や関心を持つようになるための施策について,あなたの考えを述べ
なさい。
解答例
(1) 現在の若い世代の食生活は,脂質や炭水化物が多く,栄養バランスが十分に取れていないことが
問題として考えられる。この背景には,若者の貧困や食に対する無関心があるのではないか。現在
の若者は非正規雇用が多く,学生であれば仕送りが減少しているため,厳しい生活を強いられてい
る。このため,野菜が高価で購入することが困難で,安価なファストフードや惣菜に頼りがちであ
る。また,レトルト食品や冷凍食品の普及はいつでも何か食べられるという環境を生み出したが,
季節感や食の安全,あるいは栄養価に対する意識を失わせたと考える。さらに,核家族化の進展に
より伝統的な食文化が若者世代に伝承されず,健康的とされる日本食を大事にする意識が十分に培
われていないことも考えられる。
これらの問題は,若者の健康を害し,栄養失調や肥満などをもたらしうる。また,食に対する無
関心は日本の食文化を支えてきた国産農業の衰退も引き起こすと考えられる。
(2) 食育は食材という生命への畏敬の念,食文化や食品の流通などに関する知識,健康な体を育むこ
となどを,食に対する関心を培うことを通じて行うものである。これを実現する施策として,私は
20~30 代の若者に対しては食と健康の関係に関するセミナーの実施が必要と考える。食に対する無
関心を改善するには,意識啓発が重要だからだ。例えば,大学で食に関する講義を必須科目として
実施するよう働きかけたり,企業に対して社員教育の中で食と健康の関係について若手社員に伝え
るよう働きかけることが考えられる。その際,講師として学術的な専門家だけでなく,現役の農家
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公務員試験対策
平成 28 年度国家一般職本試験
一般論文
解答例
頒布・複写を禁じます
の人を呼ぶなどして,実体験を語ってもらうことは有効だ。積極的な取り組みを公表したり表彰す
ることで,大学や企業側もブランド価値を高めるインセンティブとなるだろう。
また,食育では高校以下の学校教育も重要となる。道徳の時間や社会の時間などを利用して,食
べることへの感謝の念や食の安全や流通に関する知識を培う必要がある。また,農業体験を行って
食材を自ら手にすることは食に対する興味・関心を高めるだろう。早期に意識を持たせることで,
将来にわたり栄養価,食の安全,季節感などを意識した食の選択ができるようになると考える。
生きる上での中核となる食への関心を高めることは,心身ともに健康な国民を育むうえで欠かせ
ない。若者世代に対するこれらの取組を通じて,食育を実現していく必要がある。
(約 1000 字)
以 上
講 評
難易度:B[標準]
多くの受験生が準備していないテーマであったと思われるが,前年に比べると身近かつ意識しや
すいだけに,論点の所在を捻り出すのに困った受験生は少ないのではないか。難易度は前年より低
下し,標準レベルと思われる。背景や課題を(1)で指摘し,対策を(2)で指摘するという流れは一般
的な論文課題と変わらない。
「知育,徳育,体育」の語が課題の所在のヒントとなるだろう。また,
対策の目的は「食」に関する知識と「食」を選択する力の獲得であることも読み取れる。食に関す
る知識については,栄養,食の安全,礼儀など多様なものが考えられるが,これは受験生側で任意
に特定してしまえばよいだろう。その手段を施策として(2)で述べることができれば,十分な評価が
得られる答案が完成するはずである。
公務員試験対策
平成 28 年度国家一般職本試験
一般論文
解答例
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