高精度・ 高性能な大規模流体構造連成問題に対する 数値

平成 27 年度名古屋大学 HPC 計算科学連携研究プロ ジ ェ ク ト
高精度・ 高性能な大規模流体構造連成問題に対す る
数値計算基盤の構築
研究代表者: 田上大助 (九州大学 マ ス ・ フ ォ ア ・ イ ン ダス ト リ 研究所)
粒子法は , 移動境界を 持つ流れ問題に 対する 数値計算手法の一つと し て 近年に な り 注目を 集めて いる . し か
し な がら 差分法や有限要素法と 比較する と , 粒子法に 対する 数学的な 観点から の誤差評価に 関する 結果は非常
に 少な く , 災害影響評価な ど 実用問題への拡張が可能な 結果は我々 の知る 限り 存在し な い . そ こ で我々 は津波
が人工構造物に 与え る 影響評価の高精度化・ 高効率化な ど , 実用問題への将来的な 拡張を 念頭に , 粒子法の誤
差評価な ど 数値解析学の観点から 基礎的な 理論整備を 行っ て いる . ま た 一方で , 数値計算を 用いた 災害影響評
価な ど , 既に 存在する 要請に 応え る た めに , あ る いは整備が必要と な る 基礎的な 理論に 関する 知見を 得る た め
に , 粒子法を 用いた 津波遡上の数値計算や , 流れの数値計算に 粒子法を , 構造の数値計算に 有限要素法を , そ れ
ぞれ用いた 流体構造連成問題の数値計算手法の確立も 同時に 進めて いる . 本研究期間では , 上記の 2 つの観点
から 以下のよ う な 成果を 得て いる .
• 粒子配置と 用いる 粒子体積と 影響半径と の, 離散化パラ メ ータ に 関し て , 我々 が提案し た “正則性” の概
念を 元に , 熱方程式に 対する 粒子法の誤差評価を 得た . 図 1 は得ら れた 誤差評価式に 対応する 数値実験
の結果を 表し て いる . 空間は我々 が提案し て いる 一般化粒子法で , 時間は左が Crank–Nikolson 法, 右が
後退 Euler 法で , そ れぞれ離散化し た 場合のあ る 熱方程式の数値解の相対誤差を 表し て いる . こ の場合,
数学的に 得ら れる 影響半径に 関する 収束次数が , Crank–Nikoloson 法の場合は 2 次, 後退 Euler 法の場
合は 1 次と な る が , 数値実験の結果は , こ れを よ く 再現し て いる こ と が分かる .
• 粒子法を 用いた 津波遡上の数値計算に おいて , 離散化パラ メ ータ と し て 粒子数と 粒子径が異な る 場合に ,
津波の浸水域に ど のよ う な 影響があ る か , 多段階ズーミ ン グ解析を 用いた 流体構造連成問題の数値計算
に お いて , 構造物が津波に よ る 漂流物から ど のよ う な 影響を 受け る か , な ど の災害影響評価に 向け た 数
値計算手法の確立を , 数値実験的に 調査し た .
今後は , Navier–Stokes 方程式の数値解析へ向け , 数学的な 理論整備を 進めて いく こ と , 理論整備に よ っ て 言
え ら れた 知見を 元に し た 実用問題の数値計算手法の高精度化, 実用問題の数値計算手法の高効率化に 必要と な
る 新し い並列化手法の開発な ど を 進めて いく 予定であ る .
図 1 熱方程式に 対する 一般化粒子法の数値実験で得ら れた 誤差評価の例 (グラ フ 内の三角形の傾き が , 対
応する 数学的に 得ら れた収束次数を 表し て いる ).