第一次世界大戦といま —グローバル経済を破壊した原因は何か?—

〈第 29 回 MBI 同窓会オフィシャル・イベント〉
第一次世界大戦といま
—グローバル経済を破壊した原因は何か?—
日
時: 2016 年 9 月 17 日(土)
場
所:
学士会館 2 階
16:00~19:30
203 号室
千代田区神田錦町 3-28
講
師:
Tel: 03-3292-5936
小野塚 知二 氏
東京大学大学院 経済学研究科 教授。
日
程:
参加費:
(15:30 受付開始)
16:00~16:05
MBI同窓会会長挨拶
16:05~17:20
講演「第一次世界大戦といま」
17:20~17:50
ディスカッション&質疑応答
18:00~19:30
懇親会*
講演会 無料 / *懇親会 3,000 円
《講演概要》
第一次世界大戦前の世界経済は、いまでは想像もしにくいことですが、きわめて密接に結びつき、円
滑かつ循環的に発展していました。物財の貿易、資本の輸出入、人の移動・移住はいずれもほとんど何
の障壁もなくなされ、世界各地の経済は、植民地も含めて、きわめて順調に成長し続けていました。しか
も各地の情報は現在と同様に瞬時に世界の人々の間に行き渡っていました。
そうした世界経済の円満な発展ゆえに、いまや国境も関税も意味を失い、まして戦争など起こるはず
もないと楽観的に考える自由主義的平和主義者がもてはやされ、また、他方では各国で勢力を増しつつ
あった社会主義運動も労働者の国際連帯(インターナショナリズム)を堅持して、帝国主義戦争には加担
しないことを誓い合っていました。それにもかかわらず、1914 年の夏のある日、第一次世界大戦は突然
勃発して、緊密に結び付いたグローバル経済は瞬時に破壊されてしまったのです。
しかも、イギリスはそうした経済の中心であり、基軸通貨ポンドを世界に提供し、世界の貿易・海運・保
険を担うことで、この第一のグローバル経済から大きな利益を得ていましたし、それがイギリスの外交上
の優位性の大きな源泉でもありました。イギリスの政治家たちもそのことは充分に承知していましたから、
参戦には大いに躊躇逡巡するのですが、今の目から見るなら奇妙なほど、彼らは後ろ向きに、戦争とい
う蟻地獄に向かって落ち込んでしまいます。参戦でイギリスが経済的・外交的な利益を喪失しただけでな
く、世界も有力な中立国・停戦仲介者を失って、大戦は足かけ5年におよぶ悲惨な災厄を世界にもたら
すこととなります。その後一世紀以上、現在にいたるまで、第一次世界大戦前と同様の円滑・円満なグロ
ーバル経済は回復していません。第一次世界大戦後、現在まで一世紀の世界経済は、短い例外を除け
ば、概して、不安定と不均衡と分断とで特徴付けることができます。、
誰も望んでいなかった不条理で不合理な戦争はなぜ発生したのでしょうか。戦争責任論(ヴェルサイユ
条約のドイツ責任論)を離れて、開戦原因を冷静に再考することは、単に、第一のグローバル経済が破
壊された理由を知るために有益なだけでなく、現在の東アジア・東南アジア ―経済的には密接に結び
つきながら、外交的・軍事的な緊張が絶えず、民衆心理には対外不信感や敵愾心が静かに醸成されて
いるこの地域― に生きるわたしたちには喫緊の課題でもあります。
予め、以下の参考文献に目を通して下さるなら、当日の議論も深められることと思います。よろしくお願
いいたします。
小野塚知二編『第一次世界大戦開戦原因の再検討――国際分業と民衆心理』岩波書店、2014 年.
《講師紹介》
小野塚
知二 氏
東京大学大学院経済研究科 教授。
東京大学社会科学研究所助手、横浜市立大学商学部専任講師、同大学商学部助教授、東京大学大学
院経済学研究科助教授を経て 2001 年から現職。政治経済学・経済史学会編集委員、社会経済史学会
常任理事、社会政策学会学会賞選考委員、社会政策学会査読専門委員。
その間、連合王国ウォリック大学社会史研究センター客員研究員、横浜国立大学経営学部非常勤講師
(労働経済)、連合王国ウェイルズ大学カーディフ・ビジネス・スクール客員研究員、成蹊大学文学部非
常勤講師(イギリス文化史、同演習)、横浜国立大学経営学部兼任(国際経営史)、横浜市立大学大学
院経済学研究科非常勤講師(経済学特殊問題研究)、イタリア共和国サッサリ大学客員講師、東北大学
大学院経済学研究科兼任(近代イギリス経済史)、新潟大学人文学部兼任(イギリス社会史)、日本紅
茶協会ティーインストラクター講座講師(イギリス食文化史)、東京都立大学非常勤講師(経営史)、フェリ
ス女学院大学非常勤講師(経済史)、横浜市立大学非常勤講師(音楽社会史)、神奈川大学非常勤講
師(イギリス食文化史)など。
主な研究テーマは、近現代イギリス社会経済史とイギリス労務管理史・労使関係史で、そのほかに、機
械産業史、音楽社会史、食文化史、兵器産業・武器移転史、ヨーロッパ統合史、などの諸分野でも仕事
をしている。
主な著書に、『第一次世界大戦開戦原因の再検討 ―国際分業と民衆心理』(岩波書店)、『労務管理の
生成と終焉』(榎一江と共編著、日本経済評論社)、『軍拡と武器移転の世界史 ―兵器はなぜ容易に広
まったのか― 』(横井勝彦と共編著、日本経済評論社)、『自由と公共性 ―介入的自由主義とその思
想的起点― 』(日本経済評論社)、『大塚久雄「共同体の基礎理論」を読み直す』(沼尻晃伸と共編著、
日本経済評論社)、『日英兵器産業とジーメンス事件 -武器移転の国際経済史-』(奈倉文二・横井勝
彦と共著、日本経済評論社)、『西洋経済史学』(馬場哲と共編、東京大学出版会)、『クラフト的規制の
起源 -19 世紀イギリス機械産業-』(有斐閣、[第8回(2001 年)社会政策学会奨励賞受賞]、など他
多数。その他、論文、書評、学会報告など多数。