顕微レーザラマンによる自動車用窓ガラスの分析

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顕微レーザラマンによる自動車用窓ガラスの分析
IR/Raman
Customer
News Letter
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 IR/Raman 営業部
編集発行 : マーケティング部
M02001
はじめに
Key Words
y 顕微レーザラマン
y コンフォーカル
y 自動車用ガラス
y PVB
y 埋没異物
ラマン分光法は、自動車用窓ガラスの製造工程でのガラス
封入材の測定に有用である。ラマン分光法によるラミネート
構造分析は、非破壊かつ容易な手法として QA/QC 過程で
広く普及しつつある。
通常の自動車窓ガラスは、2枚のガラスをポリマーで貼り合わ
せた多層構造となっている。このポリマーには、Polyvinyl
butyral(PVB)が最も広く使用されている。このPVBポリマー
は、窓ガラスが破損した場合にガラス破片を付着させる事に
より、ガラスの飛散を防ぐ役割がある。
PVBポリマーのスペクトル強度は、ガラスのスペクトル強度よ
り各段に大きい事がわかる。測定は、サーモフィッシャー社
の顕微レーザラマン分光装置 Nicolet Almega で行なった。
なお励起レーザは 532nm、測定分解能は約10cm‐1、深さ方
向の分解能を 2μm として、251 スペクトルを測定した。
図2 は、ガラスを通過して得られたポリマーのスペクトルであ
る。PVBポリマーである事が、このスペクトルから確認できる。
また 図3 には、深さ(X軸)に対するポリマー層付近のラマン
強度(Y軸)を示した。上段がラマン強度の分布で、下段はそ
の一次微分波形である。この微分波形の+側ピークと-側
ピークのX軸値から、PVBポリマー層の膜厚は約250μmであ
ることがわかる。
PVB 層の膜厚測定と組成分析
レーザ光の焦点を試料の深さ方向に変化させ、PVBポリ
マー層を分析してみた。顕微レーザラマンのコンフォーカル
機能により、試料を破壊する事なくポリマー層の分析が可能
である。また、PVBポリマー層の膜厚も容易に測定できる。
上下のガラス層がポリマーの分析を妨げることが無い。なぜ
なら、レーザが焦点を結ぶ非常に小さなスポットのみラマン
散乱光を検出できる事、ポリマー等に対してガラスのラマン
強度が非常に弱い事が理由として挙げられる。ラマン分光法
は多層ガラスの測定に適しているのである。
図1 は、一般的な自動車用窓ガラスの深さ方向分析(コン
フォーカル機能)結果の3次元スペクトル表示である。
図2
図3
PVB ポリマーのラマンスペクトル
深さを変えた PVB ポリマーのラマン強度
プロファイル
ガラス中の異物測定と解析
図1
自動車用窓ガラスのコンフォーカル機能による深さ
方向の分析結果。2,900cm‐1 付近のピークは、
PVB ポリマーの C-H 伸縮振動である。
窓ガラスの製造過程で、しばしば異物混入が発生することが
ある。混入した異物を同定し、発生源およびその過程を解明
する事は重要な事である。
図4 は、ガラス中で見つけた 約200×300μm 異物の可視顕
微鏡画像である。
図7 は、異物中心部とガラスに近い端の部分のスペクトルで
ある。いずれも異物は硫化ニッケルであるが、各ピ―クの強
度が大きく異なっている。この事から、異物の部位により結晶
構造が変化していることがわかる。(アルファ、ベータ、不定
比構造など)
M02001
サーモフィッシャー
サイエンティフィック株式会社
図4
スペクトロスコピー営業本部
IR/Raman 営業部
ガラスの中の異物可視像
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図5 は、この異物の中心を Nicolet Almega 顕微レーザラマ
ンで測定したラマンスペクトルである。この結果から、この異
物は硫化ニッケル(Nikel sulfide)であることがわかった。
図7
異物部位によるラマンスペクトルの違い
(上段は異物中心部、下段はガラスに近い異物の
端部分)
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図8a, b は、結晶相の違いから得たケミカルイメージである。
図8a は、ガラスに近い異物の端部分のラマンスペクトル成
分(結晶構造)を基準にしたイメージで、図8b は、異物中心
部のラマンスペクトル成分(結晶構造)を基準にしたイメージ
である。これにより、異物の各部位に 結晶構造が異なった硫
化ニッケルの分布状況が一目でわかる。
a)
図5
b)
異物中心部のラマンスペクトル
この異物をさらに解析するために、オートステージを使用し
てマッピング測定をした。図6 に示すケミカルイメージから、
異物の部位によりスペクトルが異なっている事が判った。測
定条件は、532nmレーザ / 10cm‐1 測定分解能 / 20μm ス
テージのステップ(X,Y) / 245 ポイント測定である。
図8
異物の端(a)ならびに中心部(b)を基準にした
各結晶構造の分布をあらわすケミカルイメージ
まとめ
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顕微レーザラマン分光装置 Nicolet Almega は、1μm の空間
分解能、2μm の深さ分解能を有し、しかも埋没した異物を非
破壊で測定できる画期的な分光装置である。これらの機能
により、貼り合わせガラスの中間層ポリマーの厚みやガラス中
の埋没異物の同定、結晶構造分布なども非破壊で容易に測
定できた。顕微鏡レーザラマン分光法は、微小領域の非破
壊分析手法として今後幅広くさまざまな分野で利用されてい
くものと考えられる。
図6
ガラス中異物のケミカルイメージ
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