口頭演題・ポスター演題 第1日目

口頭演題・ポスター演題
第1日目
2016年6月10日
(金)
口頭発表
第2会場:ロームシアター京都 サウスホール
第3会場:ロームシアター京都 ノースホール
第4会場:京都市勧業館みやこめっせ 大会議室
第6会場:京都市勧業館みやこめっせ 特別展示場A面
ポスター発表
ポスター会場:京都市勧業館みやこめっせ 日図デザイン博物館
129
1-2-01
頚椎骨棘により嚥下障害を呈した1症例
国立病院機構 福岡東医療センター リハビリテーション科 1)、国立病院機構 福岡東医療センター 脳神経内科 2)
目の VF で後咽腔幅の増大は減少。ゼリーの経口摂取を
までに骨棘が増殖した場合、外科的加療として骨棘切除
開始したが、誤嚥性肺炎を呈し、経口摂取は中止となっ
術に至ることも少なくない。今回演者らは、頸椎骨棘に
た。その後、術後 58 日目で移行食が摂取可能となり、術
よる嚥下障害を呈し、頸椎前方骨棘切除術を施行された
後 69 日目に液体での誤嚥がみられなくなった。術後 158
が、嚥下障害の改善に長期の期間を要した症例を経験し
日目の外来フォローでは、嚥下障害も軽快していた。【考
た。本症例における、術後の経過について報告するとと
察】頸椎骨棘による嚥下障害の外科的加療について、小
もに、改善に時間を要した要因について考察する。【症
山は(2002)嚥下困難発症から骨化巣削除術に至るまで
例】80 代男性。5 - 6 年前より食べ物が飲み込みにくい
の経過が長く、骨化巣による圧迫面が広い程、慢性炎症
との主訴で変形性頸椎症を指摘され、当院に入院となっ
性変化の影響が術後に残存しやすいと述べている。本症
た。VF では、C3-6 前方骨棘による嚥下障害と診断。嚥
例においても嚥下困難を呈して 5 - 6 年経過し、さらには
下困難さが強く、嚥下後誤嚥のリスクが高いと判断し、
骨化巣による圧迫面が広い範囲に渡っていた。こうした
C3-7 の頸椎前方骨棘切除術が施行された。【経過】術後
状況が慢性炎症性変化を生じ、術後の改善に影響した可
6 日目の VF では、嚥下の協調運動障害と後咽腔幅の増
能性を示唆した。また、術後の後咽腔幅の増大も嚥下動
大(軟部炎症性腫大)とともに、食道の開大不全を認め、
作を制限する要因となった可能性が考えられた。
口頭演題 日目
に VF を実施するが、著明な変化はみられず。術後 41 日
的加療と外科的加療とがあるが、重度の嚥下障害を来す
特別プログラム
【はじめに】頸椎骨棘による嚥下障害の治療法には、保存
日 程
佐藤文保 1)、松尾 恵 1)、菊地由加 1)、田中久美子 1)、北山次郎 2)、中根 博 2)
1
ゼリー、とろみ、液体、固形のいずれの食形態でも、誤
1-2-02
肺癌術後脳転移治療中に嚥下障害を呈したが、喉頭閉鎖術を施行し自宅退院
に至った一例~ STとしての関わり~
ポスター演題 日目
嚥・喉頭侵入を認めた。術後 13 日目、20 日目、27 日目
1
真田恵子、神田 亨、田沼 明
静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科
対して薬剤調整しつつ、入院長期化に伴うストレスが影
炎を繰り返す場合がある。今回、肺癌術後脳転移治療中
響している可能性が高いと考え、外出をすすめる。49 日
に重度嚥下障害を呈したが、喉頭閉鎖術を施行し経口摂
目嚥下造影検査施行、直接訓練はリスクが高く、間接訓
取可能となり、自宅退院に至った症例を経験したので報
練を継続。カフ上分泌物の吸引量減少せず、誤嚥防止術
告する。
を施行する方針となる。ST で口型模倣、文字選択の練習
等コミュニケーション訓練も実施、口の動きや身振りで
【現病歴と経過】X 年 6 月右上葉肺癌(T3aN0M0)の診
の表出、表情の変化も少しずつ増えた。79 日目喉頭閉鎖
断を受け、右上葉切除術施行。X+1 年 2 月脳転移(左後
術施行。90 日目経口摂取開始、食事が摂取できるように
頭葉に 3cm 大)の診断、放射線療法施行。同年 6 月開頭
なったことでストレスが減少し精神面も安定。94 日目栄
腫瘍摘出術施行。9 月誤嚥性肺炎発症、経口摂取可能とな
養は経口から摂取可能となり、103 日目自宅退院。
【考察】癌の治療中に重度嚥下障害を合併した場合、誤嚥
院。入院 4 日目に喀痰閉塞性無気肺が認められ、人工呼
防止術を行い、自宅退院を目指すことも一つの方法だと
吸器管理となる。6 日目に抜管、7 日目に気管切開、14
考えられる。その過程の中で、嚥下機能の評価・訓練を
日目に胃瘻造設。15 日目に理学療法、言語聴覚療法(以
担当することに加え、その後のコミュニケーション能力
下 ST)開始。せん妄と高次脳機能障害により、覚醒安定
の評価・訓練も一貫して ST が関わることが、本人、家族
せず、易怒性も出現、リハビリは拒否傾向。本人のペー
の安心につながるのではないかと考えられる。
スに合わせて可能な範囲で嚥下間接訓練継続。せん妄に
131
2
日目
り自宅退院。X+2 年 3 月症候性てんかんの診断で緊急入
2
ポスター演題
【症例】70 代男性 脳梗塞の既往あり(後遺症なし)
口頭演題 日目
【はじめに】癌の治療過程で、嚥下障害を合併し誤嚥性肺
1-2-03
日 程
食事姿勢と食事環境に着目することで誤嚥性肺炎を発症せずに退院に至った
一症例
和田津香沙、石川陽介
医療法人社団 有隣会 東大阪病院
特別プログラム
【はじめに】今回、嚥下機能だけでなく食事姿勢、食事環
を普通型車椅子から両肘付きの椅子、左側にクッション
境に着目することで誤嚥性肺炎を発症せず退院に至った
を入れ体幹の安定を図った。65 病日目にミックス食へ変
症例を経験した。
更するが誤嚥性肺炎を発症せず経過した。
【症例】80 歳代女性。誤嚥性肺炎。既往にラクナ梗塞。
【 最 終 評 価】RSST:1 回、MWST:3a、FT:3b、 咳 テ
【初期評価】RSST:0 回、MWST:4、FT:5、咳テスト
スト 0 回、FIM:80 点。78 病日目食事姿勢と同様の姿勢
0、FIM:40 点。座位保持可能も円背であり頭頸部伸展
で VF 検査を実施。頷き嚥下の出現があり、随意嚥下の改
位、左側へ崩れやすかった。発症 7 病日目ゼリー食を食
【 経 過】 段 階 的 に 食 事 形 態 を 上 げ 12 病 日 目 ト ロ ミ 粥、
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
善がみられ咽頭残留の軽減が図れた。88 病日目退院。
【退院後の状態】ST の訪問リハビリテーションを週 1 回利
堂で普通型車いすにて自己摂取開始。
用。退院後、熱発等なく在宅で生活される。
ミックス食に変更するも翌日に誤嚥性肺炎を発症。ゼ
【考察】本症例は、円背の影響により食事姿勢として頭
リー食で経口は継続。40 病日目に普通型車いすで VF 検
頸部伸展位で固定されやすかったが、足底接地や左側の
査を実施し咽頭残留、随意嚥下不良を認めた。翌日ミキ
崩れを防ぐことで体幹保持が安定し、前頸部が弛緩する
サー粥、ミキサー食へ変更し食事姿勢を普通型車椅子で
ことで頷き嚥下がとれ、喉頭の前上方運動が行いやすく
足底接地させ、またテーブルの高さを調整。45 病日目ト
なったと考えられた。誤嚥性肺炎のリスクが高い症例に
ロミ粥、53 病日目ミックス食に変更も翌日に誤嚥性肺炎
おいて嚥下機能低下を認めながらも食事姿勢や食事環境
を発症。ミックス食のみミキサー食へ変更。食事環境を
を調整することで誤嚥性肺炎を発症することなく経口摂
食堂から落ち着いて摂取できる自室へ変更し、食事姿勢
取へ繋げられる可能性が示唆された。
1-2-04
急性期において一時的な球麻痺様症状を呈した偽性球麻痺症例
牧野ももこ、田邊千明、芳村直美
社会医療法人社団三思会 東名厚木病院
【はじめに】脳幹型の偽性球麻痺患者において発症初期に
強い不穏のため処方された向精神薬(リスペリドン)は 4
球麻痺と同様の症状が出現したり、後下小脳動脈閉塞型
~ 15 病日目まで投与。15 病日目:経管栄養開始。18 病
小脳病変患者において Wallenberg 症候群を合併してい
日目:MRI、FLAIR による再評価にて延髄外側梗塞を認め
る症例では球麻痺の出現頻度が高いといわれている。今
ず。19 病日目:VE 実施結果は、ゼリーは誤嚥し、少量
回、右小脳中上部と左 MCA 領域に脳梗塞を発症した患
のトロミ水のみ嚥下可能(藤島 Gr.3)。回復期リハビリ病
者が、入院数日後に唾液嚥下も困難な球麻痺様症状を呈
院への転院を考慮して、医師より胃瘻造設が提案される。
した。その後、約 2 週間で症状は消失し、1 か月後には
22 病日目:痰量は減少し、少量のゼリーやトロミ水の嚥
常食を自力摂取するまでに改善した症例を経験したので
下が可能となる。その後 1 週間で常食を自力摂取するま
報告する。【症例】50 代男性、意識消失後左後頭部を打
で改善し、回復期リハビリ病院へ転院。【考察】脳幹型偽
撲。声掛けで開眼するが口頭指示入らず救急搬送される。
性球麻痺や Wallenberg 症候群を合併していない後下小
MRI にて左半球島皮質・側頭葉・頭頂葉、右半球小脳に
脳動脈閉塞型患者において一時的な球麻痺様症状がみら
脳梗塞を認め t-PA 施行。顔面と身体に麻痺はないが、感
れた。その原因として、痰の増加は喫煙歴や、リスペリ
覚性失語と重度嚥下障害が出現した。既往歴なし。喫煙 1
ドンの副作用が関係し、一時的な球麻痺様症状は、画像
日約 20 本 飲酒毎日【臨床経過】発症後 4 病日目:初回
には映らない延髄梗塞があった可能性や後下小脳動脈閉
評価時 JCSΙ-3 MWST3 点 FT4 点 藤島 Gr.3。9 病日目:
塞により延髄に血行不良が生じた可能性などが考えられ
常時泡沫状の唾液や痰を喀出し続け、水分、ゼリーとも
た。
に嚥下困難となり(藤島 Gr.2)、嚥下基礎訓練のみ継続。
132
1-2-05
神田広美
社会医療法人 同仁会 周南記念病院
理・気管カニューレ挿入による嚥下機能への阻害因子に
させる。NST 介入後の摂食・嚥下訓練にて楽しみ程度だ
加え、嚥下関連筋群の廃用性筋力低下を認めた。また喀
が経口摂取可能となり自宅退院へ繋がった症例を報告す
痰や唾液の自己処理が困難であり、吸引頻回であったが、
る。
【症例】50 代男性。肺気腫により在宅酸素療法中。X
訓練が進むにつれ吸引頻度減少、比較的早期に直接訓練
年 Y 月 Z 日肺炎にて入院、2 病日目人工呼吸器導入後、6
移行に至った。そして楽しみ程度からでも「食べられる」
病日目気管切開術施行。敗血症併発し全身状態悪化、CV
ということが意欲向上に繋がり、運動療法も進み呼吸状
管理後、経鼻経管栄養管理開始にあわせ 32 病日目 NST
態安定、嚥下時の易疲労性も改善傾向になった。本症例
介入。栄養剤の調整、排便コントロール等にて経過良
は NST 介入による栄養管理や全身状態チェックが訓練前
好、BMI14.49、TP6.2、ALB2.1、全身状態安定に伴い
よりなされており、入院中では最も安定状態であったこ
NST 経過観察、81 病日目摂食・嚥下訓練開始。【経過】
とが訓練の円滑さ、QOL 向上、ADL 拡大、そして自宅退
介入時は発動性低下、体動による呼吸苦著明、藤島 Gr2、
院に結びついたと考えられる。NST という一つのチーム
RSST2 回。間接訓練より開始し口腔器官運動、頸部可動
アプローチがきっかけとなった症例を通して NST の重要
域訓練、頭部挙上訓練、のどのアイスマッサージ等を実
性が再認識された。
施。介入 3 日目~氷片や極少量水分を用いての訓練開始、
口頭演題 日目
介 入 35 日 目 に 自 宅 退 院。【 結 果・ 考 察】 人 工 呼 吸 器 管
力低下を引き起こし、嚥下障害等や ADL・QOL を低下
特別プログラム
【はじめに】長期間の人工呼吸器管理は感染や廃用性筋
日 程
人工呼吸器管理下にて経口摂取が可能となり自宅退院へ繋がった症例
―NST介入による効果―
1
介入 10 日目 MWST4。介入 23 日目 FT5、直接訓練へ移
1-3-01
当院で嚥下造影検査を実施したCOPD患者の嚥下機能についての検討
柳田直紀 1)、佐々木由美子 1,2)
独立行政法人国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター リハビリテーション科 1)、
独立行政法人国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 内科 2)
3 名・III 期 7 名・IV 期 2 名。RSST・MWST は全例正常範
の基礎疾患として脳血管障害に比し十分認知されていな
囲内であった。質問紙で A 項目ありは 8 例。VF で明らか
い。第 16 回日本言語聴覚学会にて誤嚥性肺炎を繰り返
な誤嚥を認める・喉頭侵入を認める・多量の咽頭残留を
す明らかな脳血管障害の既往のない COPD 患者の一例を
認める・咽頭残留の自覚がないに該当した患者を誤嚥リ
報告し、嚥下障害に対する ST 介入は脳血管障害以外の呼
スクありとし、リスクありは 14 例全例であった。喉頭侵
吸器疾患患者などにも必要であることを示唆した。今回、
入は 11 例、明らかな誤嚥を認めたのは 4 例で全例誤嚥時
我々は過去 3 年間に当院で嚥下造影検査(VF)を実施し
にムセがなく不顕性誤嚥だった。喉頭侵入の有無・誤嚥
た COPD 患者の嚥下機能について後方視的に評価・検討
したので、若干の文献的考察を加え報告する。
の有無と COPD 重症度は関連を認めなかった。
【 考 察】RSST・MWST は 全 例 正 常 範 囲 で あ っ た た め
COPD 患者ではこれらのスクリーニング検査での検出は
院にて VF を実施した COPD 患者のうち明らかな脳血管
困難であり、嚥下反射の惹起性の低下や咽喉頭感覚低下
障害の既往のあるものを除外した 14 名。方法は臨床像、
の検出が重要と考えられた。COPD 重症度と誤嚥のリス
VF 結果、聖隷式嚥下質問紙、RSST、MWST 等を診療録
クは関連を認めなかったことから、COPD 患者に対して
より後方視的に調査し COPD 患者の嚥下機能障害の特徴
は早期に ST が介入し評価および誤嚥予防の指導を行うこ
を評価した。
とが望ましいと考える。
【結果】性別は男性 13 名、女性 1 名。年齢の中央値 78
133
2
日目
【対象と方法】対象は 2012 年 8 月から 2015 年 7 月に当
2
ポスター演題
歳。BMI の中央値は 19.3。COPD 重症度は I 期 2 名・II 期
れているが明確な障害機序が示されておらず、嚥下障害
1
口頭演題 日目
【はじめに】COPD は嚥下障害のリスク因子として知ら
ポスター演題 日目
行。介入 26 日目藤島 Gr4、RSST9 回、MWST5 となり、
1-3-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
-動作解析ソフトを用いて-
眞壁弘樹 1)、石谷卓士 1)、明神明子 1)、下竹佳代子 1)、浜田智哉 1,2,3)
横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 1)、臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科 2)、
横浜市立大学大学院 医学研究科 神経内科学・脳卒中医学 3)
【はじめに】
気管切開中の患者に対して摂食・嚥下訓練を行う場合に
は、カフ付きカニューレではカフを脱気することが望ま
しい(高橋 2007)。先行研究ではカフ圧と嚥下潜時が
相関する(Amathieu ら 2012)、カフ脱気なしで喉頭挙
上範囲が減る患者が多く、不顕性誤嚥の回数が増加する
(Ding ら 2002)ことが報告されている。しかしながら、
疾患や摂取量の統制の問題は残り、カフ圧の嚥下動態に
対する影響の検討は不十分である。今回、カフ付きカ
ニューレを装着している患者の嚥下造影検査(VF)の動
作解析から、カフ圧と嚥下動態の関係について検討した。
【対象】
肺炎で入院した 55 歳男性(VF 時発症約 2 ヶ月)
。肺炎治
療、呼吸管理のためスミスメディカル社のソフトカフ付
きサクションエイドをカフ圧 30cmH2O で使用。
【方法】
30 度 フ ァ ー ラ ー 位 条 件 で、 カ フ 圧 30cmH2O か ら、
5cmH2O ずつ脱気しながら、トロミ水、ゼリー摂取時の
矢状断 VF を施行した。解析は動画解析ソフト kinovea
1-3-03
(ver 0.8.23)を使用した。嚥下開始時の舌骨前端の位
置(位置 A)、嚥下中初期の後上方の舌骨前端の位置(位
置 B)、 嚥 下 中 後 期 の 前 上 方 の 舌 骨 前 端 の 位 置( 位 置
C)を記録した。舌骨の移動範囲は、三角形 ABC の面積
とした。喉頭挙上速度は、線分 AB + BC の距離を位置
A → B → C を移動する時間で割ることで求めた。
【結果】
カフ圧が 25cmH2O 時に舌骨の移動範囲が最大となり、
0cmH2O 時 に 喉 頭 挙 上 速 度 が 最 大 と な っ た。VF 施 行
回数と舌骨の移動範囲との間に負の相関(r=-0.6321、
p<0.05)が見られた。
【考察】
カフ圧を下げることで舌骨の移動範囲と速度が向上した。
しかし、今回のデータからは症例の VF 時の疲労の影響が
考えられ、舌骨の移動範囲は回数を重ねる毎に減少して
いく傾向があった。よって、カフ圧と嚥下動態の関係を
十分に検討するに至らなかった。今後、疲労を考慮した
手順にて再検討を行っていきたい。
シート状ストレッチセンサを用いた臥床中の嚥下回数計測ツールの開発
梅原 健 1)、山本暁生 1)、花家 薫 1)、山口卓巳 1)、太田雅史 2)、中本裕之 3)、石川 朗 1)
神戸大学 大学院 保健学研究科 1)、バンドー化学株式会社 2)、神戸大学大学院システム情報学研究科 3)
【はじめに】肺炎は本邦における死亡原因の第 3 位の重大
な疾病であり、その多くは誤嚥性肺炎といわれている。
誤嚥性肺炎は、日中の飲食に起因する事例だけではなく、
列波形に出現する V 字波形の回数を嚥下回数として記録
した。同時にビデオカメラと目視で喉頭隆起部の上下動
を確認し、実際の嚥下回数として記録した。
夜間におきる唾液等の不顕性誤嚥が重要な発症要因であ
【結果】喉頭隆起部に装着したセンサは、安静座位の液
ることが分かってきている。夜間の嚥下をモニタリング
体・半固形同様に全被験者で嚥下に特徴的な V 字型の波
するためには睡眠を妨げず簡便で低侵襲な手法を用いる
形を検出し、センサで数えた対象者 3 名の嚥下回数(12
ことが不可欠である。我々はこれまでに、シート状スト
回、4 回、7 回)は、ビデオカメラならびに目視で数えた
レッチセンサ(C-STRETCH、バンドー化学、以下セン
実際の嚥下回数(12 回、4 回、7 回)と一致していた。
サ)を喉頭隆起部に貼り付けると安静座位の液体と半固
【結論】実験の結果、ストレッチセンサは仰臥位の唾液
形物の自然嚥下において、嚥下時の喉頭の上下動にあわ
嚥下においても安静座位と同様に嚥下に特徴的な波形パ
せた V 字型の波形が観察されることを報告してきた。今
ターンを検出した。この結果は、同センサが、夜間、臥
回は、上記の手法を応用し、体表面から仰臥位における
床中の嚥下回数モニタリングへ応用できることを示唆し
嚥下回数を計測できるか検討を行った。
ている。本研究は 2 分間という短い時間の安静仰臥位と
【方法】研究への同意が得られた 28 ~ 42 歳の健常成人 3
いう限られた条件であるため、今後、寝返り等の体動に
名(男性 2 名、女性 1 名)を対象に 2 分間の安静仰臥位
対してもロバストに嚥下回数が計測できるか同センサの
における唾液嚥下の回数を計測した。喉頭隆起部に 5 ×
適応範囲を検討していく。
1cm のセンサを長軸が水平なる向きで貼り付けて、時系
134
1-3-04
桑原亜矢子 1)、稲本陽子 2)、才藤栄一 3)、加賀谷 斉 3)、柴田斉子 3)、青柳陽一郎 3)、
今田美穂 1)、石黒百合子 1)、太田喜久夫 4)
日 程
脳卒中後嚥下障害患者における喉頭蓋の運動学的解析-喉頭蓋の動態変化と
嚥下障害重症度の関連性の検討-
藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部 1)、藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 2)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学 I 講座 3)、国際医療福祉大学病院 リハビリテーション科 4)
肺炎患者における臨床的特徴と転帰 -誤嚥性肺炎と非誤嚥性肺炎の比較-
加藤美穂 1)、青柳陽一郎 2)、辻 有佳子 1)、河野裕治 1)、澤田真名美 1)、古田祐子 1)、
山本聖美 1)、平塚智康 1)、才藤栄一 2)
炎患者は 33 例(55%、男性 21 例、84.7 ± 6.6 歳)に
いる。また、肺炎による入院をきっかけに施設入所や療
認めた。誤嚥性肺炎患者は非誤嚥性肺炎と比較して有意
養型病院への転院を余儀なくされる例も見られる。しか
に高齢であり(84.7 ± 6.6 歳 vs 78.9 ± 11.2 歳)、等
し、高齢肺炎患者の嚥下障害合併率や身体的特徴につい
尺性膝伸展筋力(2.8 ± 1.2Nm/kg vs 3.6 ± 1.3Nm/
ては十分に検討されていない。本研究では誤嚥性肺炎患
kg)、退院時 FIM-M(44.7 ± 25.3 点 vs 70.0 ± 20.1
者の臨床的特徴などの実態を明らかにし、それらと転帰
点)
、DSS(2.9 ± 0.7 vs 5.75 ± 0.7)
、FOIS(3.93 ±
先の関わりを検討した。
【方法】2014 年 5 月から 2015
1.9 vs 5.6 ± 1.9)が有意に低かった。BMI(19.6 ±
年 12 月に当院呼吸リハデータベースに登録された患者の
4.1 vs 17.5 ± 4.2)、GNRI(82.7 ± 14.2 vs 81.6 ±
うち、誤嚥性肺炎ならびにその他の原因による肺炎と診
11.5)に有意差はなかった。入院前に自宅であったが転
断を受けたものを解析対象とした。ただし慢性閉塞性肺
帰先が施設か転院であった者は 7 例(15%)であり、全
疾患合併例は除外した。診療記録より退院時 Functional
て誤嚥性肺炎患者であった。【考察と結論】今回の検討で
Independence Measure(FIM)、Dysphagia Severity
は過半数が誤嚥性肺炎であり、その特徴として嚥下機能・
Scale(DSS)、Functional Oral Intake Scale(FOIS)、
能力、ADL 低下以外に下肢筋力の低下が明らかとなった。
body mass index(BMI)、Geriatric Nutritional Risk
早期からの包括的アプローチが重要であると思われた。
Index(GNRI)、等尺性膝伸展筋力、入院前環境、転帰
先を調査した。【結果】当該期間に取り込み基準に合致し
135
2
2
日目
た 60 例(男性 32 例、82.1 ± 9.3 歳)のうち、誤嚥性肺
年増加しており、特に高齢者による誤嚥性肺炎が増えて
ポスター演題
【背景と目的】肺炎は本邦の死因別死亡率で第 3 位と近
1
口頭演題 日目
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 リハビリテーション部 1)、
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学 I 講座 2)
1
ポスター演題 日目
1-3-05
があるとする先行研究に一部一致したが、重度例では改
善、不変悪化に関わらず、運動時間が遅延する傾向がみ
られ、運動時間のみで重症度の改善を予測するのは困難
であることが明らかになった。本研究から重症度別に動
態解析と重症度の関係性を検討する必要性、予後予測に
は喉頭蓋や舌骨のみでなく、関連諸器官の動態を統合的
に検討していく必要性が示唆された。
口頭演題 日目
以外を「不変悪化群」に分類し、改善群別、DSS 別の比
較検討をした。
2006 年から 2015 年に当院で VF を行った患者 3,166 名
から、脳卒中例 1,257 名を抽出した。そこから初回 VF
を発症から 90 日以内に実施し、加えて 2 回以上 VF を実
施した 559 名を抽出した。さらに 2 回目の VF が発症か
ら 180 日以内に行われ、2 回の VF の姿勢、検査食が同一
で、頭部姿位が中間位である 27 名を絞り込んだ。
統計学的有意差は認めなかったが、喉頭蓋、舌骨の動態
とも不変悪化群は改善群に比し運動時間が遅延する傾向
にあった。DSS 重度例では改善群、不変悪化群に関わら
ず、初回の運動時間が遅延していた。このうち運動時間
が早くなった例は重症度も改善しており、運動時間の改
善と嚥下障害の重症度改善に関連がみられた。DSS 中等
度例では、運動時間が早くなっても重症度が改善しない
例がみられた。
嚥下障害の改善は、初回評価時の喉頭蓋運動時間と関連
特別プログラム
脳卒中による嚥下障害患者を対象とした嚥下運動解析に
て、初回評価時の喉頭蓋の運動時間が嚥下障害の改善に
関連があったとしている(Seo ら ,2011)。本研究は先行
研究を追視し、喉頭蓋の動態と嚥下障害重症度の関連性
を検討することを目的とした。
嚥 下 造 影 検 査( 以 下、VF) 画 像 を 用 い 喉 頭 蓋 と 舌 骨
の動態を解析した。摂食・嚥下障害臨床的重症度分類
(Dysphagia Severity Scale:以下、DSS)の変化を収集
し、2 回目の VF で DSS が改善した群を「改善群」
、それ
1-3-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
誤嚥性肺炎患者に対する当院での摂食機能療法の取り組み
神代美里、川西美輝、力久真梨子、大森政美
社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 リハビリテーション科
【はじめに】平成 23 年人口動態統計月報年計の死因にお
タッフ・施設スタッフへの指導、個々の患者に応じた食
いて、肺炎は脳血管疾患を上回る第 3 位となった。その
事における注意点のポスター作成) 4. 予防的アプロー
肺炎の原因の多くは高齢者における誤嚥性肺炎であるこ
チ(間接訓練、認知機能訓練) 5. 院内外の医療従事者
とが報告されている。当院は政令指定都市の中で高齢化
を対象とした研修の開催【結果】対象:2014 年 4 月~
率が 1 位である福岡県北九州市に所在する急性期病院で
2015 年 3 月に ST が介入し、データ収集が可能であった
あり、誤嚥性肺炎患者に対する摂食機能療法の依頼数は
誤嚥性肺炎患者 235 例(平均年齢 86.8 歳± 7.8 歳)。※
年々増加傾向にある。当院における誤嚥性肺炎患者の対
死亡例を除く退院時藤島レベル:1 ~ 3 レベル(経口摂
象も高齢者が多く、肺炎を再発する例も少なくない。ま
取なし)31/235 例(13.2 %)、4 ~ 6 レベル(経口摂取
た、高齢者は肺炎に加えて複雑な合併症を有する場合も
と代替栄養)13/235 例(5.5 %)、7 レベル(経口摂取
あり、全身状態の悪化に伴った嚥下機能の低下も認めら
のみ:嚥下食)69 例(29.4 %)、8 ~ 9 レベル(経口摂
れやすく、その対応が難しいことを経験する。これらの
背景から、今回当院における誤嚥性肺炎患者に対する摂
取のみ)114/235 例(48.5 %)、10 レベル(正常)8 例
(3.4 %)。
食機能療法の取り組みとその結果を報告する。【当院の
取り組み内容】1.ST による経口摂取開始前の摂食機能評
価 2. 段階的経口摂取訓練(直接訓練、食事場面への介
入) 3. 環境改善的アプローチ(食事形態・食事姿勢・
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
食事介助方法の調整、食事介助者の検討、家族・院内ス
1-3-07
高齢嚥下障害者とSTの性別の組み合わせによる嚥下リハビリの効果について
藤井初恵 1,2)、千葉 彩 1)、西潟晴花 1)、荒幡昌久 2)
南砺市民病院 地域リハビリテーション科 1)、南砺市民病院 内科 2)
【背景】当院は超高齢地域の中核病院であり、嚥下障害患
とした。【結果】改善ありの割合は、異性群 70 %、同性
者は認知機能低下による重度の先行期障害例が多い。リ
群 35 %であり、異性群で有意に改善率が高かった(P =
ハビリテーション(以下リハ)的アプローチにおいて、
0.002)。他の項目は異性群、同性群の順に、長谷川式簡
訓練意欲を引き出すことは容易ではない。過去の経験か
易知能評価スケールは、3.6 点、3.7 点、また介入から退
ら、訓練意欲や効果を高める条件として、患者と ST の
院まで 55.5 日、68.9 日、リハ実施時間は 586 分、876
性別に関連性が疑われたが、このような報告はないため
分であった。【考察】本研究により、高齢嚥下障害者にお
本研究を行った。
【対象と方法】2013 年 3 月から 2015
いて、異性の ST による嚥下リハが効果的であることが示
年 11 月 の 内 科 入 院 患 者 の う ち、70 歳 以 上 で 急 性 期 治
唆された。山田らは、基本的な生命活動である本能行動
療 終 了 後、7 日 間 以 上 食 事 摂 食 量 が 500kcal 未 満 の 患
は生まれながらにして体に備わっており、その行動欲求
者 112 名 を 対 象 と し た。 死 亡 退 院 32 名 を 除 い た 80 名
は高齢者や脳血管障害者でもかなり強く残るとし、その
のうち、患者と異なる性別の ST 介入を異性群、患者と
本能行動に摂食行動や性行動があると指摘している。実
同性の ST 介入を同性群とした。異性群は、男性 14、女
臨床の場面では、意欲低下や拒否を多々認めるが、感情
性 29、年齢 88 ± 7、同性群は男性 20、女性 17、年齢
を動かし協力を得るために、山田らの指摘する本能行動
88 ± 6 であった。藤島の摂食嚥下障害患者の摂食状況の
の一部である摂食行動や性行動への刺激として、異性の
レベル(以下、レベル)が 2 以上改善した場合を改善あ
ST による介入が効果を発揮していると想定された。
り、それ以外を改善なしと定義し、二群間の改善率につ
いてカイ 2 乗検定で比較し、危険率 1 %未満を有意差あり
136
1-3-08
当院における摂食機能療法の効果と今後の課題について
日本医科大学 多摩永山病院 言語聴覚室 1)、日本医科大学多摩永山病院 脳神経外科 2)、
日本医科大学多摩永山病院 看護部 3)
たが病棟業務との兼務であり、継続的な摂食機能療法の
ける摂食機能療法の取り組みによる成果と今後の課題に
提供が難しい状況であった。しかし、ST が入職し摂食機
ついて検討したため報告する。【検討方法】H27 年 4 月
能療法を行ったことで、継続的に摂食機能療法が提供す
1 日~ H27 年 12 月 31 日までに当院に入院していた患者
る事が可能となった。また、勉強会を開催し他職種の知
のうち、摂食機能療法の依頼のあった患者 84 名(死亡退
識・技術の向上やコアスタッフとなる人材の確保に努め
院 12 名を除く)の疾患別、診療科別、摂食機能療法介
た。また、嚥下評価の精度の向上のために VF や VE を導
入までの日数、評価時および退院時摂食嚥下能力グレー
入した。
【考察】取り組みを開始した当初は、依頼件数
ド、経口移行率、転帰、在院日数などを検討した。【結
も少なかったが、徐々に活動が院内に浸透したことで依
果】 対 象 者 の 平 均 年 齢 は 70.4 ± 16 歳、 摂 食 機 能 療 法
頼件数の増加につながった。また、取り組みの成果とし
介入までの平均日数は、14.0 日であった。評価時の摂
て 77.4 %が経口移行する事ができた。【今後の課題】今
食嚥下能力グレードの平均 3.2 点で、退院時の平均点は
後は摂食機能療法の質の向上のために、各病棟における
8.2 点であった。3 食経口移行できた患者(移行群)は
コア人材の確保と摂食機能療法のプロトコールを作成し、
65 名(77.4%)で、一部経口摂取(一部移行群)が 13
入院直後より、多職種が統一した情報の元に質の高い摂
名(15.5%)、移行困難であった患者(非移行群)は 6
食機能療法を提供していきたい。
口頭演題 日目
嚥下チームがあり、摂食嚥下認定看護師が活動をしてい
勤務し、摂食機能療法の取り組みを開始した。当院にお
特別プログラム
【はじめに】当院は、昨年より言語聴覚士(以下、ST)が
日 程
黄金井 裕 1)、玉置智規 2)、山崎道生 2)、渡部愛弓 3)
1
名(7.1%)であった。また、平均在院日数は 50.9 日で
1-3-09
重度失語症者のあいさつ語獲得に向けた応用行動分析学の試み
北村明子 1)、釣 洋介 1)、遠藤晃祥 2)
医療法人社団明日佳 札幌明日佳病院 リハビリテーション科 1)、日本福祉リハビリテーション学院 2)
/i o/ から [j] と可能な動作から適切な構音に導いた。プロ
梗塞により右片麻痺・全失語、動作性保続・注意障害な
ソディー訓練は、音の流れを ST が手の動きで視覚化し症
ど高次脳機能障害を発症。気管切開のためスピーチカ
例の手を取り同時に動かすことで、運動感覚を取り入れ
ニューレを装用し、母音の表出は獲得したが自発的な発
発語を促した。【結果】1 日 2 単位介入し、7 日目で各構
声はなく、理解面も重度障害あり、指示にジェスチャー
音の生成に成功、11 日目でプロソディーが改善され明瞭
やタッピングを用いている。【方法】目標は明瞭に「おは
に「おはよう」の表出が可能となり、siri に認識されるこ
よう」と発語可能になることとし、明瞭の基準は、iPad
とに成功した。【考察】今回、問題点を細分化し、原因を
の音声認識型アシスタント機能の siri を用いた。まず「お
身体機能ではなく技術不足と捉え、失語症者でも理解が
は よ う」 を、[o][ha][jo] の 各 音 の 表 出、 適 切 な プ ロ ソ
得られる様々な手がかり刺激を用いたことで動作生起に
ディーの 4 点に分け評価した。結果、[h] と [j] の生成が困
成功したと考えられた。また、動作生起時に賞賛と身体
難という構音の異常、音が途切れるプロソディー障害が
接触を行い積極的なフィードバックにより動作と快刺激
みられたが、本症例は必要な口唇・舌の身体機能は有し
が結びつき、正常な構音動作を行えたという達成感が生
ていたため、正常な発語動作が行えない原因を技術不足
まれ、行動の継続・獲得に至ったと推察された。
と捉えた。訓練方法は、適切な動作を引き出す手がかり
刺激を検討し、動作生起後に賞賛と身体接触を行い、動
137
2
2
日目
せ視覚・聴覚刺激を盛り込んだ模倣、呼気から [h]、母音
つ語を獲得したので報告する。【対象】50 代男性、左脳
ポスター演題
作の継続・獲得を促した。構音訓練は、口頭指示に合わ
用行動分析学の技法を用いた発語訓練を実施し、あいさ
1
口頭演題 日目
【目的】発症から 35 ヶ月経過した重度失語症者に、応
ポスター演題 日目
あった。
【実際の取り組みの経緯】元々、当院には摂食
1-3-10
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
失語症患者のコミュニケーション能力に関する研究
-短縮版CADL、SLTA、FIM認知項目を用いた検討-
高吉 進 1,2)、窪田正大 2)、岩村そのえ 1)、岩村秀世 1)、東郷伸一 3)、藤元登四郎 4)
藤元総合病院 リハビリテーション室 1)、鹿児島大学大学院 保健学研究科 2)、藤元総合病院 リハビリテーション科 3)、
藤元メディカルシステム 4)
【はじめに】コミュニケーションは言語機能のみで行われ
【方法】短縮版 CADL の実用コミュニケーション能力検査
るのではなく、場面の判断、相手の表情や声の調子、素
予測得点と SLTA の総得点、FIM 認知項目の得点との相
振りの判断、自らの感情や意図の認識、表現方法の選択
関関係を分析した(統計手法:Spearman の順位相関係
とモニターなどさまざまな言語機能以外の高次脳機能を
数)。
駆使してなされている(鹿島ら 2008)
。しかし、失語
【結果】短縮版 CADLと SLTAの相関係数は r= 0.85
症患者の実用コミュニケーション能力と ADL 場面での
(p<0.01)、短縮版 CADL と FIM 認知項目の相関係数は
認知機能との関連性の研究は少なく、その詳細は明らか
r = 0.78(p<0.05)といずれも有意な正の相関を認めた。
にされていない。今回、失語症患者の実用コミュニケー
【考察】失語症患者におけるコミュニケーション能力の研
ション能力と言語機能、認知機能との関連性について、
究では、短縮版 CADL と RCPM、WAB 失語症検査の行
短縮版 CADL と SLTA、FIM 認知項目とを用いて検討し
為、構成において、有意な正の相関を認め、失語症患者
た。
の実用コミュニケーション能力には認知機能も関与する
【対象】当院に入院し、言語聴覚療法を受けた失語症患者
可能性があると報告されている。本研究においては、短
8 例(過去に脳血管障害の診断歴のある再発例、非右利き
縮版 CADL と SLTA、FIM 認知項目に有意な正の相関を認
例、検査に支障のある意識障害あるいは精神障害、知的
め、失語症患者の実用コミュニケーション能力には言語
障害などを伴わない者)。平均年齢 69 ± 18 歳。平均経過
機能だけではなく、ADL 場面での認知機能も関与してい
月数 60.13 ± 64.45 日。原因疾患は脳梗塞 5 例、脳出血
る可能性が示唆された。
3 例であった。
1-3-11
失語症者へのLINE導入とその効果
棟近理瑚、坊岡峰子、桟敷真帆
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科
【はじめに】近年では失語症者のメール使用が可能となっ
負担は、実施する曜日を決めていた B 氏の負担が低かっ
たケースもみられ、LINE もコミュニケーションツールと
た(段階 6、7)。ハード面は、全員がメッセージの表示
して紹介されているが、実践報告や先行研究は見当たら
はわかりやすいとした(段階 6、7)。写真送付について
ない。そこで、失語症者に LINE を導入し、その方法と効
は、楽しいと評価する一方で、操作は困難であると述べ
果を検討した。
られた。グループ LINE 実施後には興味の持てない話題が
【方法】対象は 60 歳代男性失語症者 3 名。A 氏、B 氏は
軽度ブローカタイプ、C 氏は中等度・非流暢性非典型タ
イプ。A 氏のみ日常的に PC、スマートフォンで E メール
ある、長い文章は分かりにくい、非失語症者の介入は必
要であるという回答があった。
【 考 察】LINE は 軽 度 か ら 中 等 度 の 失 語 症 者 の コ ミ ュ ニ
を使用している。個別での操作説明、発表者らとの個別
ケーションツールとして有効であることが示唆された。
LINE を行い、その後対象者 3 名および発表者らを含めた
LINE を継続するためには、適宜個別での操作確認と設定
グループ LINE を実施した。LINE 導入とその効果を半構
の適合、グループ構成時には失語症者の重症度や趣味な
造的インタビュー(やりとり、ハード面など 8 項目、7 件
どの考慮、非失語症者の介入などが必要であることが示
法)および使用状況から検討した。
された。
【結果】機器の設定は適宜操作場面を確認し、各機能の
ON / OFF やキーボードの形式の変更が必要であった。
インタビューでは、総合評価は比較的高く(段階 5、6)、
やりとりの楽しさは上昇する傾向(4 → 6)がみられた。
138
1-3-12
坊岡峰子 1)、桟敷真帆 1)、棟近理瑚 1)、酒井みやび 2)、廣冨哲也 2)
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科 1)、
島根大学 大学院 総合理工学研究科 情報システム学領域 2)
作成し、タブレット端末にて使用。ブックはアプリの画
伴い、欧米を中心に失語症者を対象とするコミュニケー
面と同じ大きさ、同じカテゴリー及び単語で構成。選択
ションツールとしてのアプリケーション(以下、アプリ)
肢となるカテゴリーは合計 16、課題語は各カテゴリーか
の開発がすすめられている。しかし、その適応や効果に
ら 2 語の 32 語とした。
関する研究は少ない。そこで本研究では、従来のコミュ
【結果および考察】正答率を重症度別にみると軽度はブッ
ニケーションブック(以下、ブック)と Word-Finding
ク、アプリとも 100 %、中等度はブック 93.7 %、アプ
Support アプリの使用および、カテゴリー分類とアプリ
リ 67.2 %、重度はブック 67.7 %、アプリ 41.7 %であっ
の使用を比較することにより、失語症者に対するアプリ
た。しかし、正答率を個別にみると、重度でもブック、
の適応について検討する。
アプリともに正答率が 85 %以上が 1 名、中等度でもアプ
リの正答率が 30 %台 1 名など個人差がみられた。また、
リー分類(選択)、次に課題語(絵カード)をブックおよ
カテゴリー分類やブックでの正答率に比して、アプリで
び同じ構成でプログラムされたアプリから選択。その正
の正答率が顕著に低い例では複数の階層や操作の理解面
答率、誤り方および重症度などを分析。対象者は失語症
で失語症特有と思われる課題が示された。一方、アプリ
者 9 名。ブローカ 7 名(重度 2、中等度 3、軽度 2)、ウェ
での音声発生や視覚的提示により、選択の誤りに気づけ
ルニッケ中等度 1 名、非典型中等度 1 名。平均年齢 69.7
ることが示された。本研究の評価方法で、ある程度の適
± 7.6 歳。アプリの使用経験者は軽度の 1 名のみ。使用し
応性は予測できることが示唆された。
1-3-13
中等度失語症例に対する複数AACを用いた実用的コミュニケーション訓練
の経過
1
ポスター演題 日目
たアプリは階層構成アプリ SClick により最大 3 層構成で
口頭演題 日目
【方法】まず、課題語として提示する絵カードのカテゴ
特別プログラム
【はじめに】スマートフォンやタブレット端末の普及に
日 程
失語症者のWord-Finding Supportアプリ使用に関する基礎的研究 ~コミュニケーションブックとの比較検討~
1
金井孝典 1)、森岡悦子 2)、小泉幸毅 1)
小倉リハビリテーション病院 臨床サービス部 1)、大阪保健医療大学 保健医療学部 2)
(14 週)はコミュニケーション場面における AAC の実用
ミュニケーション訓練を実施したので、その経過を報告
化を目的とした。その結果、各 AAC による表現力が向上
する。
した。また、会話場面において、描画により喚語困難な
単語の表現や、話題に沿って絵を加えることで経時的情
左被殻出血を発症し、翌日に開頭血腫除去術が施行され、
報の伝達が可能となった。ジェスチャーは、観念運動性
発症 16 日後に当院入院となった。
失行のため単純な動作表現に限られたが、コミュニケー
初期評価:右片麻痺、失語症、観念運動性失行が認めら
ションノートにより感情語の表現が可能となり、書字に
れた。言語症状は、聴覚的理解、読解とも単語や短文の
より数詞や固有名詞の表現が可能となった。複数の AAC
理解は可能であったが、発話、書字とも表出は重篤に制
からの選択使用の習慣が定着し、CADL-s は 103.5 点で
限され、中等度の運動性失語の症状を呈した。実用的コ
ミュニケーション能力は大半援助レベル(CADL-s:32.3
力が向上し、会話場面での般化を認め、実用的コミュニ
【介入と経過】発症 35 日後より、言語機能へのアプロー
ケーション能力が向上した。また、場面や伝達内容によ
チに並行し、描画、ジェスチャー、コミュニケーション
り AAC を使い分けることで、停滞を軽減し会話の自然な
ノート、書字などの AAC を用いた実用的コミュニケー
流れを維持し、伝達情報量を増やすことができた。中等
ション訓練を開始した。訓練は、1 回 60 分を週 7 回実施
度失語症例に複数の AAC を適応することは、コミュニ
した。前半(8 週)は AAC を用いた表現力の向上、後半
ケーション上の幅広い有用性が期待できると考えられた。
139
2
日目
点)
、知的機能は良好であった(WAIS-III:PIQ109)
。
実用的レベルに向上した。
【考察】複数の AAC の適応により、各 AAC による表現
2
ポスター演題
【症例】60 歳代、男性、右利き、高等学校卒。現病歴:
口頭演題 日目
【はじめに】中等度失語症例に AAC を適応する実用的コ
1-3-14
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
失語症者の保続症状に対するTAPの効果
佐藤果南 1)、今井友城 1)、浜田智哉 1,2,3)
横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 1)、臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科 2)、
横浜市立大学大学院 医学研究科 神経内科学・脳卒中医学 3)
【はじめに】
失語症の陽性症状のひとつに保続がある。失語症状の
保続に対しての言語訓練としては Helm-Estabrooks ら
(2004)のTAP(Treatment for Aphasic Perseveration)
があるが、国内で TAPの実施報告例は少ない。今回、保続
が主症状のひとつであった重度失語症者に対して TAP を
実施し、訓練効果を検討した。
【方法】
発症から6ヶ月経過した42才の男性の重度失語症者 1例に
対してTAPを 27 セッション実施した。訓練効果の判定に
は Sohlberg(2011)を参考にし、セッションデータ、汎
化データ、実効果データ、訓練効果データを訓練前後に評
価した。セッションデータとしてTAPの記録スコアフォー
ム(Helm-Estabrooks ら 2004)
、汎化データとして SLTA
下位検査の呼称と復唱の得点、実効果データとして実用コ
ミュニケーション能力検査の家族質問紙の FQ 得点、訓練
効果データとして SLTA 理解面の得点を使用した。
【結果】
セッションデータでは、最初の 3 試行(ベースライン期)
1-3-15
は平均正答が 107/176 点、平均保続点 16.7 点であった。
TAP 初期 5 セッションは平均正答が 130.6/176 点、平均
保続点 12.4 点であった。TAP 後期 5 セッションは平均正
答が 140.6/176 点、平均保続点 8.4 点であった。ベース
ライン期、TAP 初期、TAP 後期の間に統計学的に有意な
正答の増加、保続の減少を認めた。また、正答点と保続
点との間に負の相関(r=0.4931、p<0.01)を認めた。
汎化データでは SLTA の呼称は 0 から 3 に、復唱は 6 から
9 に改善を認めた。実効果データでは FQ 得点が 44 点か
ら 50 点に改善を認めた。訓練効果データでは SLTA 理解
面の得点の上昇は認められなかった。
【考察】
TAP によって症例の保続が減少し、表出面に改善がみら
れ、さらには実用コミュニケーション能力が向上した。
よって、TAP の本例への有効性が示唆された。今後、症
例数を増やし、TAP の有効性が一般化できるかを検討す
る予定である。
多彩な言い誤りを呈したWernicke失語の一例 -呼称における発話内容の分析-
赤池 絢 1)、元木雄一朗 1)、東川麻里 2)、武井徳子 1)
甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部 1)、北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 2)
【はじめに】呼称場面で多彩な錯語を呈した Wernicke
りは減少し、意味性錯語等の実在語への言い誤りが主体
失 語 症 例 を 経 験 し た の で 報 告 す る。【 症 例】62 歳、 男
となった。しかし多彩な言い誤りは退院までの 2 ヶ月間
性、右手利き。失語症にて発症、心原性脳塞栓症と診断。
観察された。症例の言い誤りは低頻度語で出現する傾向
rt-PA 施行したが梗塞巣が出現し、失語症が残存。1 ヶ月
があった。新造語や音韻性錯語は 4 モーラ以上の課題語
後当院入院。【画像所見】左上側頭回から頭頂葉に低吸収
で観察される傾向があり、語長効果を認めていた。意味
域。【神経学的所見】特記事項なし。【神経心理学的所見】
性錯語や無関連錯語では語長効果は認めず、非単語と実
Wernicke 失語、RCPM17/36。【言語所見】入院時、発
在語への言い誤りの出現率は課題語の特徴により異なっ
話は流暢で喚語困難は中等度であり、呼称場面では多彩
ていた。【まとめと考察】呼称場面における多彩な言い誤
な言い誤りが観察された。復唱は単語レベルより低下、
りは 2 ヶ月間継続したが、経過と共に新造語や音韻性錯
音読は文レベルより低下していた。聴理解は語音認知、
語が減少し、意味性錯語等の実在語の言い誤りの割合が
語彙判断力低下、語義理解障害を認め、STA レベル 1 不
増えた。これは症例の音韻的側面の改善が顕著に現れた
通過。読解は聴理解よりも良好な傾向。書字は単語レベ
結果と考えられた。また課題語の頻度やモーラ数により
ルから誤りを認めた。2 ヶ月後、全てのモダリティで一
言い誤りの出現率や種類が異なっていた。症例の呼称場
定の改善を示し、呼称障害も軽度まで改善した。【呼称
面の発話特徴と回復過程について若干の考察を加えて発
障害の特徴】意味性錯語、無関連錯語、形式性錯語、混
表する。
合性錯語、音韻性錯語、新造語等の言い誤りが観察され
た。経過と共に新造語や音韻性錯語の非単語への言い誤
140
1-3-16
失語症者の音韻性短期記憶に記銘語の特性が及ぼす影響
国際医療福祉大学熱海病院 リハビリテーション部 1)、国際医療福祉大学 大学院 医療福祉学研究科 2)
意差を認めなかった。記銘スパンと記銘語率:記銘スパ
が、失語症タイプによって障害特性が異なる可能性があ
ンは Broca 失語と伝導失語の間に有意差を認めなかった。
る。本研究では Broca 失語と伝導失語の音韻性 STM に刺
記銘語率については、Broca 失語群は伝導失語より有意
激語の語彙性(実在語/非語)と再生順序がどのように
に多くの語を記銘・再生した。この結果から Broca 失語
関与するかを検討する。
は、語は記銘できるが正しい順序で再生する機能が低下
【対象】Broca 失語 7 名、伝導失語 4 名、対照群として健
することを示している。
【考察】伝導失語の音韻性 STM には刺激語の語彙性(実
リストを 2 ~ 7 単位まで作成した。各単位は 6 リストを含
在語か、非語か)が影響を及ぼし、記銘量は言語性長期
む。
【手続き】2 単位のリストから開始し高単位へと提示
記憶のサポート(意味情報と音韻情報)を受けると考え
した。語は 1 秒間隔で音声提示し、直後に音声再生して
られる。Broca 失語では、発語失行により構音リハーサ
もらった。【評価方法】記銘スパン:語と順序が正しく再
ル過程に問題があるため、言語性長期記憶の関与が現れ
生された最高単位(4/6 以上正答率)。記銘語率:再生順
にくいと考えられる。また Broca 失語は語は記銘できて
序は問わず、正しく再生された語の比率(正しく再生さ
も正しい順序で再生することが困難であり、これには前
れた語数/提示語数)。
頭葉の系列化障害が関与していると考えられる。
【結果】語彙性が記銘スパンに及ぼす影響:伝導失語群
口頭演題 日目
常者 9 名であった。【材料】2 音節の実在語リストと非語
特別プログラム
失語症者では音韻性短期記憶(音韻性 STM)が低下する
日 程
中山拓弥 1)、藤田郁代 2)、清水利充 1)
1
と健常者では、実在語より非語の音韻性 STM が有意に短
1-3-17
錯語と修正パターンからの検討-特徴的な誤りパターンを呈した一症例-
加藤千尋 1)、井川大樹 1)、斉藤みな子 1)、長野智子 1)、長谷川昌信 1)、川上知美 1)、福島大地 2)
新さっぽろ脳神経外科病院 リハビリテーション科 1)、新さっぽろ脳神経外科病院 脳神経外科 2)
性錯語 :10.3%、音の付加 :6.9%、音断片 :8.6%、その他
彩な錯語と、特徴的な修正パターンを呈した症例を経験
(明確に左記の分類に当てはまらない反応):27.6%。そ
した。本例の誤りパターンについて、考察し報告する。
の他の反応は、語性錯語 + 音韻性錯語(目尻→めがしろ
へ搬送。同日 T-PA 施行。画像所見:MRI にて左島の皮
卓→でたんく…でんち、ちくでんき)など特徴的な修正
質、皮質下を中心に高信号域を認める。神経学的所見:
パターンを認めた。【まとめ】大槻(2014)は、島の損
Br.stage 上肢 VI、手指 V、下肢 VI。神経心理学的所見:
傷にて、特異な形式性錯語が出現した症例を報告してお
失行・失認:なし。注意:Digit Span for5 桁 back3 桁、
り、水田(2006)は、形式性錯語の出現について、音韻
Tapping Span for6 桁 back5 桁。全般的認知機能:問
形式の喚起に関わる障害の関与を示唆している。本例は
題 な し(Kohs:IQ89.6、RCPM:33/36 点)。 言 語: 詳
島の損傷により形式性錯語のみならず、特徴的な誤りパ
細を後述する。【言語機能面】理解面:簡単な内容の理解
ターンをいくつか呈していた。それらの反応から誤りパ
は可能。日常会話場面では、質問の意図と異なる返答を
ターンを検討し、本例の語彙処理過程について考察する。
認める。SLTA 口頭命令 6/10。表出面:アナルトリーな
し。自発話は実質語が少なく、情報量は乏しい。SLTA 呼
称 18/20、語列挙 15 語 / 分。【TLPA 意味カテゴリー別
名詞検査(呼称)】正答数 :161/200。誤反応数(修正後
正答を含む)
:喚語困難 :13.8%、語性錯語 :31.0%、音韻
141
2
2
日目
…めそろ)、音韻性錯語から語性錯語へ移行したもの(電
ポスター演題
【症例】69 歳、男性、右利き。現病歴:脳梗塞にて当院
1
口頭演題 日目
【はじめに】島の前方~後方にわたる脳梗塞を呈し、多
ポスター演題 日目
か っ た(P< 0.05、P<0.01) が、Broca 失 語 群 で は 有
1-3-18
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
交叉性失語を呈した1例
堀江祐希 1)、大塚 晃 2)、東谷 彩 3)
医療法人医道会 十条武田リハビリテーション病院 リハビリテーション科 1)、医療法人医仁会 武田総合病院 2)、
市立奈良病院 リハビリ室 3)
【はじめに】音の表出の障害が主体の交叉性失語を呈した
は仮名 1 文字 5/10、漢字単語 2/5、仮名単語 0 と書字・
症例を報告する。
【症例】80 歳男性、中学卒業、職業は
書取ともに漢字に比し、仮名で誤りが多く、音韻性錯書
元大工、右利き、軽度難聴および吃音はあるが日常生活
が目立った。特に書字量が多くなると誤りが増加。文の
に支障なし。
【現病歴】起床時より左半身の脱力、歩行
書取に比し自発書字であるまんがの説明では顕著だっ
障害を認め救急搬送、右視床出血と診断された。36 病日
た。また、音の誤りの自己修正は表出全般で乏しかった。
当院入院。【神経学的所見】左運動麻痺【神経心理学的所
【まとめ】本例は発話開始時の渋滞と音の置換、音韻性錯
見】失語症、注意障害、左半側空間無視【言語所見】入
書が目立った。一方、喚語困難や語性錯語の誤りは少な
院当初より発話開始時の渋滞、音の繰り返しや置換が目
かった。また、会話場面では時間をかけると目標の音を
立ち、伝達に時間を要した。喚語困難も認めたがこれら
探しだし、語として産生できることもあった。音読は全
と比べ頻度は少なく、表出された音の歪みも認めなかっ
て正答し、復唱でも自発話と比べ誤りは少なかった。こ
た。40 病日より行った SLTA の聴理解では単語、短文、
れら音の手がかりがある場合に比し、自発話やまんがの
仮名に比し口頭命令は 4/10 と低下。また、読解は短文
説明など自ら音の表出を迫られる場合には音の置換及び
より誤りを認め、短文 6/10、書字命令 1/10 と低下。表
錯書が増加した。このことから語の想起障害は軽度であ
出面は音読は全て正答、一方で呼称 12/20、単語復唱
り、音の表出面の障害が強い失語症であると考えた。本
8/10、短文復唱 2/5、まんがの説明段階 3、語列挙 4 語
例の失語症状の特徴を検討し、訓練の経過と併せて報告
において音の置換を主体とする誤りが目立ち、時に音の
する。
付加も認めた。書字は漢字単語 3/5、仮名単語 0、書取
1-4-01
山形県における新生児聴覚スクリーニングの現状
米澤裕美 1)、千葉寛之 1)、渡辺知緒 2)、伊藤 吏 2)、窪田俊憲 2)、欠畑誠治 2)
山形大学 医学部 附属病院 リハビリテーション部 1)、山形大学 医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座 2)
【はじめに】
新生児聴覚スクリーニング(以下 NHS)は難聴の早期発
見・早期療育を目的に広く行われている。山形県におい
ても平成 18 年より統制されたスクリーニングが開始され
た。平成 27 年に現状を把握すべくアンケート調査を実施
したので以下に報告する。
【対象と方法】
山形県内の分娩可能な産科、産婦人科 27 施設にアンケー
トを送付した。アンケート内容はスクリーニング実施の
有無、機種、費用、検査実施者、検査実施日、出生数、
検査人数、再検査の実施の有無、refer 数である。
【結果】
NHS を 実 施 し て い る 施 設 は 27 施 設 中 23 施 設 で あ り、
使 用 機 器 は OAE が 10 施 設、AABR が 9 施 設、OAE と
AABR の 併 用 が 4 施 設 で あ っ た。OAE の み 使 用 施 設 は
年間出生数が 100 ~ 300 人となる施設に多く、OAE と
AABR の併用施設は年間出生数が 300 ~ 600 人となる施
設であった。全体の NHS の実施率は 89.5 %、refer 率は
0.83 %であった。病院ごとの NHS の実施率は 18 施設が
90 %以上であった。機種別の refer 率は OAE が 0.32 %、
AABR が 0.5 %であった。
【考察】
NHS の実施施設は我々が調査を開始した平成 17 年以降か
ら年々増加傾向にあり、平成 25 年には実施率も約 90 %
まで上昇した。これは NHS において山形県内のほぼ全域
をカバーしていると考えられる。しかし、NHS 実施施設
の う ち OAE と AABR を 併 用 し て い る 4 施 設 と も、OAE
で Pass した場合 AABR は行っておらず、OAE で refer と
なった場合のみ AABR を実施していた。この場合、初回
の OAE で PASS し て し ま う と、Auditory neuropathy
spectrum disorder を除外することができず、見逃して
しまう恐れがでてくる。今後の課題としては、病院ごと
の NHS 実施率をさらに向上させ、使用機器の買い替え
及び検査手順の構築等を考えていく必要がある。また、
NHS で refer となった際に精密聴力検査機関で follow を
受けているのかを調査し、NHS を受けただけにならない
ようにしていくことも必要であると考える。
142
1-4-02
永井理紗 1)、杉本寿史 1)、波多野 都 1)、廣瀬みずき 2)、武居 渡 3)、吉崎智一 1)
金沢大学附属病院 耳鼻咽喉科 1)、ひろせクリニック 2)、金沢大学人間社会研究域 3)
97.0% であった。refer 率は 0.6 %から 1.9 %で推移して
者を支援する目的で、平成 22 年 9 月に「いしかわ赤ちゃ
おり、両側高度感音難聴の確定診断を受けた児は全体の
んきこえの相談センター(みみずくクラブ)」が開設さ
0.08 ~ 0.16% と、難聴児出生率 0.1 ~ 0.2 %という従来
れ、今年で 7 年目を迎えた。みみずくクラブが十分機能
の報告と同等の値となった。みみずくクラブに関し、紹
するためには、新スクの受検率や確定診断の精度の向上、
介の契機は新スク refer からが 32 例、NICU・小児科か
相談会終了以降の療育機関・医療機関との連携など、そ
らの紹介が 20 例、ことばの遅れのため医療機関を受診し
の前後の支援体制の充実が不可欠である。今回、県内の
紹介された例が 6 例、その他 2 例であった。紹介時の難
新スクの現状と、みみずくクラブに紹介となった児の概
聴の程度は、重度 25 例、高度 5 例、中等度 19 例、軽度
要と帰結を報告するとともに、石川県における難聴児を
2 例、一側のみの難聴が 2 例、その他 7 例であった。帰結
見逃さないため、また全ての難聴児が適切な支援を受け
としては、療育機関へ紹介となったのが 36 例(金沢方式
られるために整えられてきた支援体制の現状と課題に関
11 例、ろう学校 25 例)、聴覚補償のみで対応できた例が
して報告する。【対象と方法】平成 22 ~ 26 年度に県内で
6 例、一側の聴力が正常化するなど介入の必要ない児が 9
出生した児の新スク受検率、refer 率、確定診断の結果に
例、その他 6 例であった。発表ではこれらの結果を踏ま
ついて調査した。またみみずくクラブ開設から現時点ま
えての考察と今後の課題、石川県の難聴児支援体制に関
でに紹介された 60 名に対し、紹介の契機および紹介時の
し報告する。
1-4-03
豊田市における軽中等度難聴児の補聴器購入助成と装用支援に関する検討
大原重洋 1,2)、本吉としえ 2)、大原朋美 2)、内野菜摘 2)
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科 1)、豊田市こども発達センター 2)
2
日目
143
2
ポスター演題
で あ っ た。 補 聴 器 は 27 名(93.1 %) が 保 有 し て お
り、 自 費 購 入 群( 平 均 52.1dB、 平 均 9 歳 7 カ 月)10
名(34.4 %)に比べ、制度利用群(平均 48.8dB、平均
6 歳 3 カ 月) は 17 名(58.6 %) と 過 半 数 を 超 え た。 確
定 診 断 か ら 購 入 ま で の 期 間 は、 自 費 購 入 群 は 平 均 4.2
カ 月(1SD1.8) 要 し た が、 制 度 利 用 群 は 平 均 1 カ 月
(1SD0.5)と短かった(p<0.05)。一方、一日あたりの
平均装用時間は、制度利用群は 5.7 時間(1SD3.6:レン
ジ 0 ~ 10)、自費購入群は 6.1 時間(1SD3.7:レンジ 0
~ 10)であり、差を認めなかった。両群とも、49dB 以
下の児は、聞こえの困難を自覚しない傾向にあり、装用
時間は顕著に短かった(2.7 時間、1SD3.1)
【まとめと考察】助成制度によって、補聴器購入に至る期
間は短縮し、早期の聴覚補償に有効と考えられた。しか
し、早期の購入と装用時間延長との関連は乏しく、費用
助成に併せて、軽中等度難聴に対応した装用支援・指導
の提供が要請される。
1
口頭演題 日目
【 は じ め に】 豊 田 市 こ ど も 発 達 セ ン タ ー( 以 下、 セ ン
ター)は、豊田市の乳幼児健診システムと一体的に、難
聴児の療育支援にあたっている。豊田市では、平成 25 年
度より、軽中等度難聴を対象とした補聴器購入助成(以
下、助成制度)を開始したが、今回、センターの難聴児
データの分析を通じて、助成制度の利用と補聴器装用支
援のあり方について、示唆を得ることができたので報告
する。
【方法】平成 25 年 4 月から平成 27 年 12 月までの間に、
センターを受診した 0 ~ 12 歳の小児の内、良聴耳平均
40dB 以上の難聴と診断された 71 名を対象とした。ま
ず、出生数における出現率を算出し、軽中等度群と高度
群に分類した。次いで、軽中等度群について、助成制度
開始以前に購入した児(以下、自費購入群)と制度利用
群に分類し、保護者に半構造化面接を実施し、購入の経
過と装用状況について調査した。
【結果】難聴の出現率は、0.14 %(707 名に 1 名)であ
り、軽中等度群 29 名(40.8%)、高度群 42 名(59.1%)
1
ポスター演題 日目
月齢と推定聴力、帰結を調査し検討を行った。【結果】新
口頭演題 日目
スク受検率は 22 年の 92.9 %から徐々向上し 26 年度は
ク)後の精密検査の結果、難聴が確定した児とその保護
特別プログラム
【はじめに】新生児聴覚スクリーニング検査(以下新ス
日 程
石川県における難聴児支援体制の更なる充実に向けて-いしかわ赤ちゃん
きこえの相談センター(みみずくクラブ)開設7年目の現状と課題-
1-4-04
当科の小児人工内耳術後成績
日 程
諸頭三郎 1)、大西晶子 1,2)、藤井直子 1)、内藤 泰 1)
神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科 1)、先端医療センター病院耳鼻いんこう科 2)
特別プログラム
【目的】人工内耳(CI)の適用が小児難聴例にも拡大さ
最大値)を示す。単音節では、原因未確定群 90%(50
CI の貢献は大きい。しかし、小児 CI 例でもことばの聞
(45 ~ 100%)、 奇 形 +CND 群 0%(0 ~ 15%)、CND
の語音聴取成績に対する失聴原因の影響を検討する目的
群 96%(64 ~ 100%)、変異群 96%(80 ~ 100%)、奇
れて約 20 年が経過しことばの聞き取り成績の改善への
き取り成績が不良な例も散見される。そこで、小児 CI 例
で、当科の小児 CI 例の語音聴取成績を難聴原因別に検
討したので報告する。【対象と方法】対象は 2004 年 11
月 か ら 2014 年 1 月 ま で に 当 科 で CI 手 術 を 実 施 し た 知
的障害がない小児難聴例 103 例(術時年齢 34.8 ± 17.8
口頭演題 日目
1
カ月)である。103 例の難聴原因は、原因未確定例 53
例(原因未確定群)、遺伝子変異例 22 例(変異群)、内
耳奇形単独例 18 例(奇形群)、内耳奇形と聴神経形成不
全(cochlear nerve deficiency:CND)合併例 4 例(奇
形 +CND 群)、内耳道や蝸牛神経管の狭窄による CND 例
6 例(CND 群)であった。これらの患児において、CI 術
後(術後経過期間 51 ± 23 カ月)に、静寂下で実施した
67-S 語表単音節及び CI-2004 単語の聴取成績を統計学
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
的に検討した。【結果】語音聴取成績の中央値(最小値~
1-4-05
~ 100%)、 変 異 群 90%(75 ~ 100%)、 奇 形 群 77.5%
群 7.5%(0 ~ 30%)であった。単語では、原因未確定
形 群 86.5%(65 ~ 100%)、 奇 形 +CND 群 10%(0 ~
30%)、CND 群 30%(0 ~ 30%)であった。これらの成
績を統計学的(Mann-Whitney U 検定、Bonferroni 法)
に検討すると、原因未確定群と変異群と奇形群の 3 群間
には有意差がなく、原因未確定群と変異群と奇形群の 3
群と、CND 群及び奇形 +CND 群との間では有意差がみ
られた。【考察及び結論】CND がない小児 CI 例では、内
耳奇形があっても術後語音聴取成績は、概ね良好である。
しかし、内耳の形態にかかわらず CND がある例の術後語
音聴取成績は不良であり、CI 適用の際には、視覚的な言
語メディアの併用を含めた周到なハビリテーション計画
が必要である。
聴覚障害児・者に対する構音指導の長期支援の必要性について
橋本かほる 1,8)、原田浩美 2)、能登谷晶子 3)、折戸真須美 4)、諏訪美幸 5)、木村聖子 5)、
山崎憲子 6)、金塚智恵子 7)、若島 睦 7)、石丸 正 8)、杉本寿史 9)、吉崎智一 9)
京都学園大学 健康医療学部 言語聴覚学科 1)、国際医療福祉大学 成田保健医療学部 言語聴覚学科 2)、
金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 3)、公立羽咋病院 リハビリテーション科 4)、恵寿総合病院 言語療法課 5)、
金沢医科大学 リハビリテーション科 6)、黒部市民病院 リハビリテーション科 7)、ひょうたん町耳鼻咽喉科医院 8)、
金沢大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 9)
【はじめに】我々は幼児期における聴覚障害児の言語聴覚
指導の最終段階として、構音指導を実施しており、多く
のものは会話レベルまで到達する。一方、文レベルまで
構音訓練が進まない例もあり、それらのものに対する対
応が就学以降も必要となった。その後 NPO 金沢方式研
究会(以下、会)と連携して、北陸 5 ヵ所で定期的に構
音指導が受けられる体制を作り、現在に至っている。【目
的】本発表では、最近 3 年間の構音指導実績を紹介する。
さらに、就学時に会話レベルまで達していた児に関して、
親の判断でその後構音評価を受けていない聴覚障害者の
実態についても少しずつ明らかになって来たことについ
ても述べる。【対象】幼児期から就学まで金沢方式による
言語訓練を受け、就学以降構音指導を利用している聴覚
障害児・者 34 名(6 ~ 44 歳。平均聴力レベルは軽度 3
名、高度 12 名、重度 19 名。補聴器装用 21 名、人工内耳
片耳装用 13 名)である。全例コミュニケーション手段は
音声言語である。小学校就学以降も地域の学校に進学・
就職している(小学生 17 名、中学生 4 名、高校生 4 名、
社 会 人 9 名 [ 大 卒 6 名、 短 大 卒 2 名 ])。【 結 果 と ま と め】
聴覚障害児・者の居住地域における指導に、北陸 5 ヵ所
で年間のべ人数 150 名(会員の 57%)が参加していた。
また、就学以降構音の評価や訓練をほとんど受けておら
ず、会の勉強会や研修会にほとんど参加していない親の
聴覚障害児が成人してから、構音の問題に直面して会に
相談する例があった。我々が対面して直接会えた成人例
では、いずれも小学校入学時よりも会話明瞭度が低下し
ていたが、親自身は「子供の話しはよくわかる」と、子
供の構音に慣れているために構音の崩れに気づきにくい
ことも分かってきた。今後は、このような例に対して、
会主催の研修会等を通じて親指導を行うだけでなく、親
指導の内容についてさらに検討する必要があることがわ
かった。
144
1-4-06
鈴木恵子 1)、井上理絵 2)、梅原幸恵 2)、佐藤美苗 3)、齊藤 登 3)、三上加奈子 3)、秦 若菜 1)、
清水宗平 4)、佐野 肇 1)、岡本牧人 5)
日 程
介護老人保健施設入所者の聴覚評価-耳内診察・聴力検査・質問紙調査の結
果から-
北里大学 医療衛生学部 1)、北里大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2)、介護老人保健施設 リハビリポート横浜 3)、
さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科 4)、北里大学 医学部 耳鼻咽喉科 5)
井上理絵 1)、鈴木恵子 2)、梅原幸恵 1)、佐藤美苗 3)、齊藤 登 3)、三上加奈子 3)、秦 若菜 2)、
清水宗平 4)、佐野 肇 2)、岡本牧人 5)
【はじめに】要介護高齢者の難聴の実態を明らかにし適切
た。また施設職員に対し勉強会を開き難聴、補聴器の基
な介入を検討するため、介護老人保健施設で 87 例の入所
礎を説明した。さらに管理方法の統一のため、電池交換、
者に耳内診察と聴力検査を行い 62 例の左右耳別 6 周波数
の聴力閾値を得た。両側難聴例に約 3 ヵ月の補聴器装用
を試みるにあたり配慮した対応を報告する。
着脱の時間等を決めた。
【結果】試聴期間中、着脱時の混乱、取り違え、紛失、電
池切れのままの装用は生じなかった。落下・紛失の防止
ために導入した落下防止紐は、離れた場所から職員が装
3 例、補聴器常用 1 例、失語症 2 例、退所 2 例を除く 48
用の有無を判断できるという効果もあった。装用開始後、
例の MMSE と聴力を層別項目としてランダム化し、24
共有スペースのテレビ音量が装用を妨げるリスクが認識
例を補聴群とした。対象の年齢は 84.0 ± 7.5 歳、聴力は
され、手元スピーカを導入し暗騒音を軽減した。イヤ
46.6 ± 13.0dB、MMSE は 16 ± 7.5 点 だ っ た。 補 聴 器
モールドの管理に超音波洗浄機が有効だった。
【考察】介護老人保健施設の言語聴覚士と介護職員の協力
以下の事前準備を行った。補聴器は装用状況に関する情
を得て、病院の受診患者とは認知機能や身体機能の異な
報を客観的に得るためデータログ機能付の機種を選択し
る対象に補聴器装用を試みた。装用にあたって対象の特
た。イヤモールドは取り違えや着脱時の混乱を避けるた
性や施設環境等を考慮し工夫を行ったところ、紛失・破
め右用を赤、左用を青で色付けし、各人の割振り番号を
損等のトラブルは生じなかった。今後この経験を生かし
埋め込んだ。番号は補聴器本体、保管ケースにも明記し
施設におけるさらに積極的な補聴器活用の可能性を考え
た。補聴器の落下・紛失を防ぐため落下防止紐を作成し
たい。
145
2
日目
装用にあたり病院での難聴児・者への臨床経験をもとに
2
ポスター演題
【対象と方法】62 例のうち聴力正常 6 例、両側耳垢栓塞
1
口頭演題 日目
北里大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 1)、北里大学 医療衛生学部 2)、介護老人保健施設 リハビリポート横浜 3)、
さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科 4)、北里大学 医学部 耳鼻咽喉科 5)
1
ポスター演題 日目
介護老人保健施設入所者への補聴の試み―補聴器装用指導上の工夫を中心に―
口頭演題 日目
1-4-07
14%、一側所見あり 11 例 13% であった。聴力検査:反
応の信頼性では反応確実 51 例 59%、反応不安定だが両
耳全周波数測定可 11 例 13%、反応不安定だが両耳 3 周
波数測定可 10 例 12%、行動観察も含め一部測定可 6 例
7%、 検 査 不 能 9 例 10% に 分 類 さ れ た。 聴 力 レ ベ ル で
は 正 常 6 例 7%、 軽 度(25dB-)23 例 26%、 軽 中 等 度
(40dB-)18 例 20%、 中 等 度(50dB-)21 例 24%、 高
度(70dB-)4 例 5%、閾値なし(左右耳別 3 周波数閾値
が得られない)15 例 17% に分類された。介護職員の認
識・対応:静寂下の聞き返しや聞こえにくさの訴えは軽
中等度以上、騒音下の聞き返しや呼びかけへの無反応は
中等度以上、TV 音量の増強や乗り出す仕草は高度で認識
され易く、聴力により介護職員の日常対応が異なる傾向
も示された。
【考察】今回の結果から、医師の診察、言語聴覚士による
聴力検査、難聴に関する情報共有など介護職員との連携
によって、老健入所者の聴覚を評価する可能性が示唆さ
れた。
特別プログラム
【はじめに】要介護高齢者の難聴の実態を明らかにし適切
な介入方法を検討する目的で、介護老人保健施設(以下
老健)入所者の聴覚評価を、耳内診察、聴力検査、質問
紙調査の三面から行った結果を報告する。
【対象】老健 1 施設の入所者 118 例中、研究への同意を得
た 99 例のうち途中退所等を除いた要介護高齢者 87例(男
38 女 49;83.5 ± 8.0 歳、MMSE14 ± 9.0、FIM69 ±
31.7)
。
【方法】耳鼻咽喉科医による耳内診察、言語聴覚士による
純音聴力検査(RION 社 AA58 を使用し施設内の静かな部
屋;暗騒音 35dBA で実施)
、介護職員に難聴認識と日常
対応を問う質問紙調査を行った。聴力検査は言語聴覚士
2 名で行い、ボタン押し以外の反応も観察し閾値を得た。
結果を反応の信頼性および聴力レベルで分類し、認知機
能、自立度、質問紙の回答との関係を検討した。
【結果】耳内所見:28 例 32% に耳垢栓塞を認め、内 8 例
は両側、6 例は一側で除去困難であった。耳垢除去後例
も含め鼓膜は両側正常 64 例 73%、両側所見あり 12 例
1-4-08
日 程
介護老人保健施設入所者への補聴の試み―補聴器装用指導における老健ST
の役割―
佐藤美苗 1)、齋藤 登 1)、三上加奈子 1)、鈴木恵子 2)、井上理絵 3)、梅原幸恵 3)、秦 若菜 2)、
清水宗平 4)、佐野 肇 2)、岡本牧人 5)
介護老人保健施設 リハビリポート横浜 1)、北里大学医療衛生学部 2)、北里大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 3)、
さがみリハビリテーション病院リハビリテーション科 4)、北里大学医学部耳鼻咽喉科 5)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】要介護高齢者の難聴の実態を明らかにし、介
護老人保健施設(以下、老健)における適切な介入を検
討するために、87 例の入所者に耳内診察と聴力検査を行
い、62 例の左右耳別 6 周波数の閾値を得た。両側難聴例
に 3 ヶ月の補聴器装用を試みた経過と老健勤務の言語聴
覚士(以下、ST)の役割、多職種連携について報告する。
【対象と方法】62 例のうち聴力正常 6 例、両側耳垢栓塞 3
例、補聴器常用 1 例、失語症 2 例、退所 2 例を除く 48 例
を MMSE と聴力を層別項目としてランダム化し、24 例
(平均年齢 84.0 歳、聴力 46.6dB、MMSE16)を補聴の
対象とした。補聴器試聴に際し老健 ST は 1. 定時の装用確
認;朝夕の着脱と観察、2. 補聴器の保守管理;定期的な
電池交換、イヤモールドの耳垢清掃、3. 介護職員との連
携;補聴知識、管理等の助言を実施した。
【結果】補聴器に対して入所者毎に異なる反応や受容経過
が認められた。試聴開始当初、介護現場では管理面の不
安が強かったが、紛失や故障、入浴時の水没はなく経過
1-4-09
した。3 ヶ月間の試聴結果は、対象 24 例中、装用継続 13
例、継続不良 5 例、拒否 2 例、途中退所 4 例であった。ま
た、本人・家族の意向、ないしは個別ケアの観点から 5
例が試聴期間終了後も更に装用を継続するに至った。
【考察】認知症や高次脳機能障害で自己管理が困難な入所
者への補聴器適合の可能性が示唆された。医師による耳
内環境の管理と病院 ST による補聴特性の調整を背景に、
老健 ST が介護環境や個別ケアについて介護職員と連携
し、定時介入、保守管理したことが今回の結果を導いた
と推察される。特に試聴開始後間もない時期に傾聴や説
明を行ったこと、入所者個々の聞こえや行動特性に関し
て情報共有し、家族や介護職員が補聴効果を実感できる
条件を整えたこと等が装用継続に有効であった。今回の
経験を活かし生活期や地域リハビリテーションの高齢者
難聴に対する老健 ST の役割と可能性について考えていき
たい。
一般高齢者とアルツハイマー病患者の純音聴力の比較
大森史隆 1)、飯干紀代子 2)
医療法人原三信病院 香椎原病院 リハビリテーション科 1)、志學館大学 人間関係学部 心理臨床学科 2)
【目的】一般高齢者とアルツハイマー病(AD)患者の
因子、年齢を共変量とする共分散分析で両対象の聴力レ
純音聴力に差を認めるか否かについては見解が分かれる
ベルを比較した。また、AD 患者の聴覚閾値の再現性を
( 大 出 2003,Vilar ら 2010)。 臨 床 的 に は 認 知 機 能 低 下
確認するため、7 例へ 6 か月以内に再検査を実施した。
例は閾値が高く測定されることを経験する。本報告の目
【結果】500(p=0.035)、1000(p=0.008)、4000
的は、一般高齢者と AD 患者の聴力を年齢補正の上、比
(p=0.003)、8000Hz(p=0.001) の 4 周 波 数 で、AD
較検討し、反応差異の傾向を報告することである。【対
患者の聴覚閾値が有意に高かった。両対象の推定周辺平
象】対象は、A 市シルバー人材センターの一般高齢者 40
均に基づく聴覚閾値の差は、周波数により 6.7 ± 4.3 ~
名(男性 17 名、女性 23 名、平均年齢 73.0 ± 4.3 歳、平
19.6 ± 6.4dBHL と 開 き が あ っ た。 ま た、AD 患 者 7 例
均 MMSE25.3 ± 2.5 点)、B 介護療養型医療施設入院中の
の初回と再評価時の良聴耳平均聴力レベルの相関係数は
AD 患 者 38 名( 男 性 13 名、 女 性 25 名、 平 均 年 齢 84.7
r=0.903(p=0.005)であり、高い再現性を確認した。
± 6.6 歳、平均 MMSE16.9 ± 3.0 点)。AD 患者は MMSE
【結論】軽~中度 AD 患者は聴覚閾値が高い可能性、もし
得点に基づく 4 分類法(森ら 1985)の軽~中度群。
【方
くは注意障害で微小な音への気づきが得られず結果的に
法】AD 患者が検査に適応できるよう、ボタン押し以外
聴覚閾値が高く測定される可能性が示された。本結果は
のうなずき、挙手、音声模倣といった聴性行動も反応と
再現性も確認されており、AD 患者への聴覚検査や補聴を
して許容した(栢木ら 2009)。分析対象は、耳垢塞栓お
考える上で考慮すべき差異であると思われた。
よび聴覚障害既往がない良聴耳。125 ~ 8000Hz の 7 周
波数の気導聴力レベルを従属変数、認知症の有無を固定
146
1-4-10
和泉千寿世
横浜市総合リハビリテーションセンター 発達支援部 難聴幼児課
耳): 語 音 弁 別 能 85 %(60dB)。 装 用 閾 値( 両 耳)1K
それと同等に聞こえにくさに適したコミュニケーション
Hz35dB。2010 補聴器適合の指針の質問紙による評価:
方略の習得と聴覚障害の理解が重要である。今回は 80 代
悪条件下の語音 5 項目が改善。聞こえの質問紙(2002)
の中等度難聴で職場での聞こえにくさを主訴に来所した
結果のまとめ:行動、心理は評価点 4 から 1 へ、ストラ
ケースに補聴器装用指導を行いコミュニケーション支援
テジーは評価点 3 から 1 へ改善。「話が聞き取れないこと
について考察したので報告する。
【症例】83 歳、男性、
は仕方がないこと」と障害を理解するようになり、聞こ
家族:妻、娘。平均聴力レベル右 62.5dB、左 53.8dB。
えにくいことを周囲に告げ、相手に近づく等の対応を工
最 高 語 音 弁 別 能(57-S) 右:50 %(90dB)、 左 82 %
夫し意欲的に仕事に取り組むように変化した。【考察】高
(80dB)、70 歳頃から徐々に聴力低下し難聴診断年齢 78
齢難聴者のリハビリテーションにおいては、補聴器装用
指導とともにコミュニケーション方略(環境調整を含む)
僧帽人工弁で身体障害者手帳 1 級取得。職業:一般企業
の習得を支援する過程で補聴器の効果と限界、コミュニ
退職後、友人と語学教室を立ち上げ運営に従事。【方法】
ケーション方略の効果と限界について知ることで障害の
期 間:2013 年 5 月 ~ 2014 年 12 月、 頻 度 1/2 週 ~ 1/
理解を促し、障害のある自分と向き合い生活していける
月、時間:1 時間半~ 2 時間、内容(1)補聴器調整(2)
よう支援することが重要である。
難聴、補聴器についての説明(3)コミュニケーション
口頭演題 日目
歳 4 ヶ月、補聴器未装用。既往歴:腎不全、軽度脳梗塞、
特別プログラム
【目的】聴覚障害者への補聴器装用指導は重要であるが、
日 程
高齢難聴者への補聴器装用指導―高齢難聴者へのコミュニケーション支援に
ついて考えたことー
1
方略の指導。本人の記述した試聴記録とそれを元に聞
1-4-11
一側性難聴に伴う耳鳴に対する補聴器による音響療法
~耳鳴による不自由・苦痛と治療効果~
鈴木大介 1,2)、新田清一 1,2)、堀田菜都未 1)、坂本耕二 1)、石川 徹 1)、藤田紘子 1)、
上野真史 1)、小川 郁 2)
147
2
2
日目
覚的改善度:5 段階評価)を行った。また補聴器の購入判
断は評価後に行った。
【結果】
50 例中 2 例は治療効果に対する不満から途中返却と
な っ た。 う ち 1 例 は 重 度 難 聴 例 で あ っ た。 残 り 48 例
(96%)は補聴器を購入し、THI(53 → 15)と VAS(大
き さ:68 → 29、 苦 痛:73 → 27) は 有 意 に 改 善 し た
(p<0.01)。また自覚的改善度は大きさ・苦痛共に悪化は
なく、約 85% が改善、約 20% がほぼ消失となった。
【考察】
一側性難聴に伴う耳鳴に対しても補聴器による音響療
法は有効であった。患者の多くは、装用開始直後から耳
鳴に対する治療効果を実感し、訴えは聞き取りの改善へ
とシフトしていった。これは補聴器装用により聴覚環境
が一新され、耳鳴の認知や注意が改善したものと考えら
れた。しかし、重度難聴例では効果が得られず、人工内
耳を含めた適応について検討する必要があると考えられ
た。
ポスター演題
【はじめに】
昨年、我々は両側難聴に伴う耳鳴に対して、補聴器に
よる音響療法が極めて有効であることを報告した。今回
は、一側性難聴に伴う耳鳴に対する同治療の効果につい
て検討したので報告する。
【対象と方法】
対 象 は 2009 年 4 月 ~ 2015 年 9 月 ま で に、 耳 鳴 を 主
訴として当科を受診した一側性難聴患者 50 例とした。全
例、耳鳴は患側のみであった。健側の平均聴力レベル
(4 分法)は 25dBHL 以下、患側は 28 ~ 105(平均 58)
dBHL であった。
方法はまず医師が耳鳴と補聴器による音響療法に関す
る詳細な説明とカウンセリングを行った。その後、初
日から常用するよう装用指導を加え、初診から 3 ヶ月間
は週 1 回の頻度で診察と調整を行った。効果の評価は治
療 開 始 前 と 3 ヶ 月 後 に、Tinnitus Handicap Inventory
(THI)と自記式アンケート(耳鳴の自覚的な大きさ・苦
痛:Visual Analogue Scale、耳鳴の大きさ・苦痛の自
1
口頭演題 日目
済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科 1)、慶応義塾大学 医学部 耳鼻咽喉科 2)
ポスター演題 日目
き取りした内容を記録し分析した。
【結果】補聴器(両
1-4-12
日 程
一側性難聴に伴う耳鳴に対する補聴器による音響療法
~難聴に対する補聴器装用効果~
堀田菜都未 1)、鈴木大介 1,2)、坂本耕二 1)、石川 徹 1)、藤田紘子 1)、上野真史 1)、新田清一 1,2)
済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科 1)、慶応義塾大学 医学部 耳鼻咽喉科 2)
【はじめに】
特別プログラム
今回、我々は一側性難聴に伴う耳鳴に対する補聴器に
よる音響療法の有効性を報告した。一方で、一側性難聴
に対する補聴器適合は難しく、時に不利益を生むことが
ある。本発表では、同対象の難聴に対する補聴器装用効
果について検討したので報告する。
【対象と方法】
対象は 2009 年 4 月~ 2015 年 9 月までに耳鳴を主訴に
当科を受診した一側性難聴患者 50 例のうち、補聴器を購
口頭演題 日目
1
入した 48 例とした。健側の平均聴力レベル(4 分法)は
全例 25dBHL 以下、患側は 28 ~ 88(平均 57)dBHL で
あった。
調整はハーフゲインを目標に、初診から 3 ヶ月間は
週 1 回の頻度で行い、初日から常用するように装用指導
を加えた。効果の評価は、音場での補聴器装用閾値の
測 定 と 自 記 式 ア ン ケ ー ト( 難 聴 に よ る 不 自 由:Visual
Analogue Scale、不自由の自覚的改善度:5 段階評価)
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
を装用開始前(アンケートのみ)と 3 ヶ月後に行った。
1-4-13
【結果】
非装用時閾値(5 周波数平均)は 58dBHL、装用閾値
は 33dBHL と有意に低下した(p<0.01)。装用前に難聴
に よ る 不 自 由 が あ っ た の は 48 例 中 46 例(96%) で あ
り、補聴器装用により有意に改善した(対話:37 → 23、
集団:65 → 40、雑音下:73 → 43、方向感:54 → 30、
p<0.01)。しかし、各症例の詳細を確認すると雑音下で
の聞き取りなどで、補聴器装用が不利益となることも少な
からず見られた。自覚的改善度では悪化はなく、改善が約
90% を占めたが、ほぼ消失したのは 5% 未満であった。
【考察】
耳鳴が主訴であっても一側性難聴患者の多くは難聴に
よる不自由を抱えており、補聴器がこれらの改善に貢献
することが示唆された。しかし、場面によっては補聴器
装用が不利益を生むことがあり、また耳鳴に対する治療
効果のみで補聴器を購入する患者も見られた。よって、
この治療の難聴に対する補聴器装用効果については、長
期的な経過も含め検討する必要があると考えられた。
補聴器外来における補聴器持ち込み症例に関する考察
加藤秀敏 1)、南 修司郎 1)、若林 毅 1)、松永達夫 2)、加我君孝 2)
東京医療センター 耳鼻咽喉科 1)、東京医療センター臨床研究センター感覚器センター 2)
【はじめに】当科では、平成 26 年 4 月より、補聴器の十
であった。不具合の理由としては、(1)機種選択の誤り
分な利得と常用による聴覚リハビリテーションを目的と
50.0 %、(2)調整の不適 50.0 %、(3)機械の寿命・故
した補聴器外来を開始した。その中で、外部ですでに補
障 0 %であった。当院での対応として、(1)補聴器買い
聴器を作成したものの、調整がうまくいかずに持ち込む
替え 6.9 %、(2)耳栓・シェル等パーツの交換 41.4 %、
症例が非常に多いため、その現状をまとめ、考察を加え
(3)調整のみ 51.7 %であった。
【考察】補聴器装用者の
た。【対象】平成 26 年 4 月から平成 28 年 3 月の間に、当
中には、誤った機種選択、調整、装用方法等により、「使
院補聴器外来に補聴器を持ち込んだ患者 58 名 95 耳(平
えない」状態になっている症例がおり、その多くは適切
均年齢 78.4 ± 17.5 歳、平均難聴レベル 62.0 ± 16.7dB)
な調整・指導がなされておらず、入力音(利得)が不足
とした。本人の訴え及び聴力図と補聴器の周波数特性か
している場合が多いことがわかった。そのような症例に
ら、不具合の原因を(1)利得・出力不足、(2)利得出
対し、評価に基づいた調整を行い、必要に応じてパーツ
力過多、(3)適合していたが患者が不満足に分類し、不
を部分的に交換するなどの対応を施し、介入を継続的に
具合の理由を(1)機種選択の誤り、(2)調整の不適、
行うことが重要であると考えた。当科では、なるべく患
(3)機械の寿命・故障に 3 分類した。更に当院での対
者負担が増えないような対応を第一に考えているが、そ
応として、
(1)補聴器買い替え、
(2)耳栓・シェル等
れでも約半数の症例がシェルの再作成や補聴器買い替え
パーツの交換、(3)調整に分類した。【結果】不具合の
などの金銭的負担を要した。
原因としては、(1)利得・調整不足 98.3 %、(2)利得
出力過多 0 %、(3)適合していたが患者が不満足 1.7 %
148
Chirp音を用いたASSRの有用性
1-4-14
山形大学 医学部 付属病院 リハビリテーション部 1)、山形大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 2)
6.12dB であった。AM2 変調音を用いた際の DS の平均値
た Eclipse( ソ フ ト ウ エ ア 名:OtoAccessTM) は CE-
と 標 準 偏 差 は、15 ± 8.9dB、11.25 ± 6.8dB、10.4 ±
R
Chirp と呼ばれる音を用いた ASSR の測定が可能となり、
その報告が散見され始めている。今回我々は、Chirp 音に
よる ASSR を測定し、純音聴力閾値との比較及び AM2 変
6.6dB、13.3 ± 6.6dB であった。
【考察】検査時間が 2/3 程度に短縮された要因としては、
20dB 以内であれば周波数毎に音圧が選択できることが考
調音による ASSR 閾値と検査時間について比較、検討した
えられる。今回の検討において chirp 音による ASSR 閾値
ので報告する。
は、純音聴力閾値をおおよそ反映している結果となった。
【対象と方法】対象は耳疾患の既往がない聴力正常成人 6
周波数毎の特徴に関しては、今後難聴例も含めた検討が
名 12 耳(中央値:27 歳)である。ASSR 閾値と純音聴力
必要である。今回の検討において Chirp 音による ASSR は
純音聴力閾値をおおよそ反映しており、検査時間も AM2
-純音聴力閾値)を計算し、Wilcoxon の符号付き順位
変調音による ASSR に比べ 2/3 程度短縮されていることか
検定を用いて比較検討を行った。
ら、他覚的聴力検査として有用であると考えられた。
2
【結果】AM 変調音による ASSR の測定時間は平均 27 分
口頭演題 日目
閾値の平均との差(difference score: DS = ASSR 閾値
特別プログラム
【はじめに】2012 年に Interacoustics 社より市販化され
日 程
千葉寛之 1)、米澤由美 1)、伊藤 吏 2)、渡辺知緒 2)、窪田俊憲 2)、欠畑誠治 2)
1
であった。一方、Chirp 音による ASSR の測定時間は平
均 17 分であり、有意に測定時間が短かった。Chirp 音に
よる ASSR の DS の平均値と標準偏差は、500Hz から順
1-4-15
Auditory Neuropathyに対するAdaptive Dynamic Range Optimization
(ADRO)方式の補聴器適合と特例補装具申請について
久保田江里 1,2)、岡本康秀 1,3)、貫野彩子 1,3)、國頭麻里 4)、松崎史也 4)、小渕千絵 5)、
城間将江 5)、岩崎 聡 2)
149
2
2
日目
たうえで 65dBHL にて提示した。
【結果】ADRO では正答率 66.7 %。装用時間は一日 6 時
間。職場の会話や騒音環境下において聴取困難な場面は
残るものの装用効果を自覚された。一方圧縮型では正答
率 26.7 %で「言葉と言葉がつながって聞こえる」ためほ
とんど使用できず。
【特例補装具申請】職業上両耳補聴の必要性を認め、両耳
高度難聴用の ADRO を特例補装具として申請。前例がな
いため申請から 9 か月という長期間を要したが、福祉担
当者と情報共有し特例認定を得た。
【考察】本症例においては ADRO によるリニアゲインに
より、音声の継時的音圧変化を保つことができ聴取改善
の効果があったと考えられる。圧縮型は利得と強大音の
出力制限の両立により圧縮がかかり、音圧変化が生じに
くい。特に AN に代表される語音明瞭度が低下する症例
において、聴覚特性に合わせた補聴器適合が必要であり、
福祉制度で対応される内容にも今後反映されることが望
まれる。
ポスター演題
【はじめに】Auditory Neuropathy(AN)は語音明瞭度
が著しく低下し、圧縮型の補聴器では装用に至らない例
が多い。今回、AN の成人難聴者に対し ADRO 方式(以
下 ADRO)により、圧縮型に比して語音聴取の改善がみ
られた例を報告する。また ADRO の特例補装具申請の経
過についても報告し、聴覚特性を考慮した補聴器の選択
について考察する。
【 症 例】30 代、 女 性。 保 育 士。20 代 後 半、 当 院 初 診 時
は両耳 50dBHL。最高語音明瞭度は右 55 %、左 45 %、
OAE は両側応答、ABR は両側反応なく、難聴遺伝子検査
では OTOF 遺伝子変異を認めた。圧縮型を両耳に試聴し
たが静寂下の聞き取りは改善するものの雑音下では聴取
困難のため使用を断念。その後難聴が進行し語音明瞭度
が左右 30 %程度に低下。語音の抑揚を保つことを目的と
して ADRO で試聴再開。
【比較の方法】ADRO の特徴(音の入力から出力があがる
まで 3dB/sec の時間を要する)により単音節語音では評
価困難のため文章(CI2004)で評価し、装用閾値を揃え
1
口頭演題 日目
稲城市立病院 耳鼻咽喉科 1)、国際医療福祉大学 三田病院 耳鼻咽喉科 2)、慶應義塾大学 医学部 耳鼻咽喉科 3)、
マキチエ 株式会社 4)、国際医療福祉大学 保健医療学部 言語聴覚学科 5)
ポスター演題 日目
に 16.3 ± 11.4dB、12.9 ± 7.2dB、5.4 ± 7.2dB、5 ±
1-4-16
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
音響分析によるディサースリアの定量的評価の検討
逢坂重志 1)、榊原健一 2)、高村彩菜 1)、廣瀬修三 1)、島崎佳織 1)、高野健太 1)
医療法人 喬成会 花川病院 1)、北海道医療大学 リハビリテーション科学部 2)
【はじめに】本研究は、ディサースリアの発話運動の総
名は全て 0.6 以下であった。(2)(1)同様に健常人の値
体を、音響分析により定量的に評価する方法の提案をお
を 1 として比較した。口唇閉鎖不全や流涎が認められる
こなう。持続発声による 5 母音の F1、F2 から作られる
患者 5 名中 4 名が F1 の値が 0.5 以下であった。DDK(p、
F1-F2 平面上の五角形の面積により、発語器官の運動範
t、k)の平均が 2 回 / 秒以下の患者 4 名中 3 名が F2 の値
囲を評価し、会話明瞭度、DDK など他の評価方法との相
が 0.6 以下であった。
【考察】今後、症例数は増やしてい
関をあきらかにする。【対象】ST 評価によってディサー
く必要はあるが、健常者の 5 母音の F1、F2 の図の面積と
スリアと認められた患者 10 名(54 ~ 85 才)、健常男性
ディサースリアの面積を比較することは、訓練効果など
5 名、健常女性 5 名(22 ~ 27 才)を対象とした。【方法】
を評価する上で有用だと思われる。発話課題に関しても、
マイクロホンまでの距離は 20cm とし、訓練室にて、5
DDK と違い、発症前より十分身につけているものであ
母音の通常発声を PCM 録音した。母音の安定した区間
り、再現性が高く、低ストレスなため、認知症患者でも
約 600ms を音声サンプルとし、F1、F2 の値を分析ソフ
導入が可能であった。加えて、DDK の限定的な子音と比
ト Praat にて求めた。5 母音のホルマントの位置を F1 を
べ、基礎となる母音を分析するため総合的な評価ができ
横軸、F2 を縦軸にとり、図に表した。5 母音の図の(1)
る可能性や F1、F2 を個別に比較すると、口唇、舌とが個
面 積(2) 個 人 内 で の F1 の 最 大 値 -F1 の 最 小 値、F2 の
別に考察できる可能性がある。他の音響特徴量を用いた
最大値 -F2 の最小値を求め、健常人と比較した。【結果】
総合的な音響分析や QOL との関係づけは今後の課題であ
(1)健常人の面積を 1 として比較した。ディサースリア
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
る。
10 名中 7 名が 1 を下回り、会話明瞭度が 2 以上の患者 4
1-4-17
重度の構音・摂食嚥下障害症例に対する発話訓練と補綴装置適用の取り組み
岡田亜由美 1)、長崎美幸 1)、前川享子 2)、國塩勝三 1)、田中義人 1,3)、熊倉勇美 4)
社会医療法人 水和会 倉敷リハビリテーション病院 1)、岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター 2)、
一般財団法人 操風会 岡山リハビリテーション病院 3)、医療法人社団 和風会 千里リハビリテーション病院 4)
【はじめに】脳梗塞により重度の構音障害、摂食嚥下障害
され 93 病日で胃瘻造設した。また発話・摂食嚥下訓練に
を呈した症例に対する訓練、補綴装置適用などの取り組
加えて補綴治療が必要と判断し、岡山大学病院歯学部へ
みに考察を加えて報告する。【症例】30 代男性。幼少時
PAP 形態を付与した PLP の作製を依頼し、115 病日より
より発声困難で通院歴あり。その後、脳室上衣腫との診
開始となった。ST は診療場面において構音・摂食嚥下機
断のもと開頭術施行されたが、20 代で症候性てんかん、
能の評価、経過等の情報提供を行った。【結果と考察】母
うつ病を発症し内服治療を受けた。30 代に髄膜腫の診
音や口唇音の明瞭度が改善し、鼻漏出も軽減した。しか
断、開頭術より 21 日後に脳梗塞を発症し左片麻痺、構音
し、発話場面で過緊張発声を認めたため、呼吸法、リラ
障害、摂食嚥下障害を呈した。23 病日にリハビリ目的で
クセーション法を指導した。摂食嚥下機能においては嚥
当院に転院となる。【初期評価】聴理解に問題なく、発話
下困難感や咽頭残留感の改善を認めた。ST 訓練のみなら
は不能だが表出は筆談で可能。左顔面・舌下神経麻痺に
ず補綴装置の積極的な適用が効果的であったと考える。
て重度の左側口唇・舌運動範囲制限あり。発声時に軟口
重度構音障害、摂食嚥下障害のリハにおいて、歯科医師
蓋挙上を認めず、呼気鼻漏出 [ i: ] で L4R3。重度の口腔
との共同は重要である。
顔面失行あり。RSST0 回、3 食経鼻経管栄養。【経過】ま
ず発語器官の可動域訓練、筋力強化、構音訓練を実施し
た。挺舌は下口唇を越えるようになるも左右・上下運動
は困難。口唇、軟口蓋に変化なし。66 病日よりとろみ付
水分の介助摂取を開始したが、食事への移行困難と判断
150
1-4-18
軟起声発声を行い発話明瞭度に変化が生じた痙性麻痺性構音障害の一例
医療法人 堀尾会 熊本託麻台リハビリテーション病院 1)、
熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 2)
に対し、通常発話時 23 回・軟起声発声時 30 回の voice
覚印象評価と Praat を用いた音響分析を行い効果の検証
onset time(VOT)を計測し、対応のない t 検定で比較
を行った。【症例】40 歳代男性。左放線冠のラクナ梗塞
した。【結果】1)単語の音読:発話明瞭度は通常発話時
を発症し、精査にて陳旧性の右基底核梗塞も認めた。神
3.4 ± 1.4、軟起声発声時 1.8 ± 0.6 と差を認めた。音響
経学的所見:右上下肢に軽度の右麻痺を呈していた。音
分析では、通常発話時に比べて軟起声発声を行うことで
声言語病理学的所見:初回評価時の標準ディサースリア
無声区間と VOT の延長を認め、子音が強調されていた。
検査では、呼吸機能、発声機能は良好であったが、鼻咽
2)oral diadochokinesis(/ka/):VOT は 通 常 発 話 時
腔閉鎖機能不全を認めた。口腔構音機能は口唇と舌の運
24.8 ± 7.2msec、軟起声発声時 31.0 ± 4.6msec と統計
動範囲は保たれていたが、舌の交互反復運動で運動範囲
上有意差を認めた(p<0.01)。【考察】本症例は、軟起声
の狭小化と速度の低下を認めた。発話検査において発話
発声を行うことで、発話明瞭度の変化が生じた。発話明
明瞭度 3、自然度 3 であった。一般的なアプローチを行
瞭度の変化は、無音区間と VOT の値が延長したことで軟
い、約 40 日後の音声録音時には、鼻漏出や舌運動は改善
口蓋音 /k/ の構音が強調されたことが影響していると考
したが構音の歪みは残存していた。【方法】単語の音読
えられた。なお、軟起声発声を行った時の VOT は、日本
(/kakikata/)と oral diadochokinesis(/ka/)の通常
語話者の VOT の値に近似していた。
口頭演題 日目
と 音 響 分 析 を 行 い、2)oral diadochokinesis(/ka/)
声を行い発話明瞭度の変化が生じた症例を経験した。聴
特別プログラム
【はじめに】今回、痙性麻痺性構音障害に対し軟起声発
日 程
畑添 涼 1)、山本恵仙 1)、池嵜寛人 2)
1
発話時と軟起声発声を行った時の音声を録音した。分析
1-4-19
運動障害性構音障害を呈した患者に対する復職への支援―復職へ至った症例
を通して―
ポスター演題 日目
方法は、1)単語の音読に対し、聴覚印象評価(ST6 名)
1
青木まみ、四方英二、山田知加、櫻田実佳
社会医療法人 石川記念会 HITO 病院
声の改善に対して内観が得られ、意欲が向上したことで
貫したリハビリテーション(以下リハ)を提供している。
自主訓練に繋げることができた。退院時には発話明瞭度
今回、運動障害性構音障害と鼻咽腔閉鎖機能不全により、
4/5となっていたが、会社の人と話すことへの不安は残っ
著しく発話明瞭度の低下した症例に対して、各時期での
ていたため、退院後も外来リハを継続し、不安の傾聴や在
関わりを変えていくことで復職に至った症例について報
宅で行える訓練指導を行った。次第に、家族以外と話す機
告する。
会があったという発言が増え始め、現職復帰となる。
【症例】60 代男性。ラクナ梗塞を発症し当院へ入院とな
【まとめ】本症例は、精神面の低下のため機能の向上に応
る。妻、娘と三人暮らしで、会社では課長職を担ってい
じた内観を得ることが難しかったが、改善を明確化する
た。
ことで精神面の安定や意欲向上に繋がった。急性期から
【経過】初期評価では、口腔機能の低下と開鼻声によって
の関わりとして、早期から自主訓練を併用した機能訓練
を行いながら PLP 作成と回復期へと繋ぎ、復職に向けた
機能訓練を行いながら早期より自主訓練も併用したが、
支援を円滑に行える計画を立案した。退院後も、外来リ
意欲が低く実施することが困難だった。発症 1 ヶ月後に
ハの継続をすることで、退院後の生活や復職に対する不
は、発話明瞭度 3/5 へ向上を認めたが、開鼻声が本人の
安が軽減したため、復職へ繋がったと考えた。今後も、
不安に繋がっていた。そのため、軟口蓋挙上装置(以下
患者の社会復帰を目指し、各時期での言語聴覚士として
PLP)の作成を提案し、調整と機能訓練を行うことを目的
の関わりを続けていきたい。
151
2
日目
発話明瞭度は 5/5 であり、表情は暗く自発話はなかった。
2
ポスター演題
として回復期病棟へ転棟した。転棟後、PLP によって開鼻
し、評価及び訓練を行った上で、回復期や外来まで、一
口頭演題 日目
【はじめに】当院では、超急性期から言語聴覚士が介入
1-5-01
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
言語聴覚士養成形態の違いと臨床教育の実態
飯塚菜央 1)、藤田郁代 2)、畦上恭彦 3)
西武学園医学技術専門学校 1)、国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 2)、国際医療福祉大学保健医療学部 3)
【はじめに】言語聴覚士の養成形態は多様である。言語
指定規則の 480 時間の他に 143 ~ 253 時間実施してい
聴覚士教育においては、まだコア・カリキュラムが未完
た。(2)養成校の修業年限が短くなるにつれ、観察→評
成であるため、臨床実習については、体験内容等は養成
価→総合臨床実習といった段階的学習が不明確であった。
校間でばらつきがあるのが現状である。そこで、言語聴
(3)
「総合臨床実習において経験する専門領域の割合」
、
覚士教育における臨床実習の実態を養成形態が異なる養
「症例報告書の作成を課している」、「総合臨床実習の到達
成校間で比較し、今後の課題を検討した。
【対象】言語
レベル」については全ての養成形態で差がなかった。(4)
聴覚士養成課程がある大学 20 校、専修学校(3・4 年制
言語聴覚士が対象とする 5 領域について、全ての領域を
24 校、2 年制 20 校)、計 64 校。【方法】臨床実習に関す
実習できている養成校は極めて少なく、聴覚、小児言語
る記名自記式のアンケート調査を実施した。調査項目は
認知領域の経験が少なかった。【考察】言語聴覚士の臨床
(1)各種臨床実習の実施年次、
(2)指定規則の 480 時
実習の課題としては、臨床実習のカリキュラムを明確に
間以外に実施した臨床実習、(3)総合臨床実習で経験す
し、臨床実習時間の充実、全ての養成形態において段階
る専門領域、(4)症例報告書の作成、(5)CCS の実施、
的な臨床実習の実施、全専門領域の実習経験の確保など
(6)臨床実習の到達レベル、
(7)臨床実習施設への依
が考えられた。
頼事項、(8)臨床実習のあり方に関する養成校での検討
事項とした。【結果】31 校(大学 15 校、専修学校(3・
4 年 制 8 校、2 年 制 8 校)
) か ら 回 答 が あ り、 回 収 率 は
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
48.4%。主要な結果は、(1)全ての養成形態において、
1-5-02
休日対応とE-mailによる実習対策が実習評価に及ぼす効果について
杉山卓弥 1,2)
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 1)、茅ヶ崎新北陵病院 リハビリテーション科 2)
【はじめに】今回は休日対応と E-mail による実習対策を
められた。2)では A-C 群で報告書の作成(P<0.05)で
行い一定の成果が得られたので報告する。このことによ
A 群に高く、A-C、B-C 群で症例との関係(P<0.01)で
り、実習期間対応の一助になればと考える。
【方法】対
A・B 群に高く認められた。1)2)との比較では報告書
象: 大 卒 2 年 制 学 生 1)62 名、2)35 名。 内 容:1) 学
の作成は変化が見られなかったが、レポート課題に有意
情成績の違いにより実習評価に影響が出やすい項目の抽
差が見られなかった点、症例との関係で有意差が見られ
出、2)抽出した項目に対する対策実施。対策内容は実習
た点が変化点として挙げられた。【考察】1)2)との比
期間中(22 日間)の土日祝(計 9 日間)に直接対応、ま
較ではレポート課題に効果を示した。これはレポート課
た E-mail 対応を実施(内容は質問やレポート添削)。手
題が自身の能力の範囲で作成する内容となるため、報告
続き:1)学業成績(1 年前期成績)により学生を 3 群
書の作成に比べ評価のハードルが低く、学生自身の必死
(A ~ C 群)に分け、実習評価(1 ~ 12 項目)を 3 群間で
さも相まって、ヒントを与えることにより効果がでやす
比較。2)直接対応では事前予約制にし、1 時間ごとに学
かったのではないかと推測された。また報告書の作成は
生対応を実施した。また E-mail 対応ではアドレスを配布
評価水準が高く、知識および知識の応用力の一定水準ま
し、質問がある学生は投稿するように促した。両者とも
での能力が必要とされる。このため、実習までにある程
学生の任意使用とした。結果を実習後評価とし 1)と同様
度の水準までの能力が向上している必要があると推測さ
の手続きを行い比較、さらに 1)との比較検討した。
【結
れた。
果】1)で有意差が認められたのは A-C 群で報告書の作
成(P<0.05)、レポート課題(P<0.01)で A 群に高く認
152
1-5-03
梯 恭一、徳田和恵、大内田博文
福岡国際医療福祉学院 言語聴覚学科
に相関は見られなかった。SNS においては自己の負担感
サービス(以下 SNS)内の人間関係が挙げられる。言
と他者の負担感への配慮に相関が見られた。2. 情報機器
語聴覚士養成校の学生は臨床実習など他者の個人情報に
の使用スキル、SNS 内の人間関係への配慮については講
触れる機会があり、また学生同士の連絡に SNS を使用
義後に有意に高かった。(p=0.014)【考察】1. 個人情報
することも珍しくなく、インターネットや情報機器との
保護に対する意識は 5 段階評価で平均 3.7 と高い傾向が
関わり方に慎重さが求められる。ここでは個人情報保護
見られたが、ウイルス対策やパスワード管理など個人情
や SNS に関する意識について、情報機器の使用スキルや
報保護に関する行動の有無と相関は見られなかった。こ
SNS を使用した経験との側面から明らかにすることを目
のことから、具体的な行動や知識について学ぶ機会の必
的とする。
【方法】2 年制言語聴覚士養成校に在籍する学
要性が示唆された。2. 情報機器の使用スキルや SNS 内の
生計 70 名を対象として 2 種類の調査を実施した。1. 情報
人間関係への配慮は、講義後に有意に高かったことから、
機器の使用スキル、SNS の使用経験、個人情報保護の意
知識が増え意識が促進された可能性が示唆され、情報機
識や知識について質問紙による調査を行った。質問紙で
器の使用スキル、SNS と個人情報保護について学ぶ機会
は自己評価を 5 段階で回答を求めた。2. 情報機器の使用
の有効性が確かめられた。
スキル、SNS と個人情報保護に関する 90 分の講義を実施
口頭演題 日目
人情報保護の意識と、個人情報保護に対する知識や行動
一つとして個人情報漏洩やソーシャルネットワーキング
特別プログラム
【目的】現在インターネットや情報機器に関わる問題の
日 程
言語聴覚士を目指す学生の個人情報保護の意識とSNS内の人間関係への配慮
について
1
した。講義の前後で個人情報保護や SNS に対する意識や
1-5-04
臨床実習の教育と指導のあり方
苅安 誠、松平登志正、吉村貴子、橋本かほる、外山 稔、弓削明子
京都学園大学 健康医療学部 言語聴覚学科
(病歴)、観察(検査を含む)した所見を記録して適切に
れまで、臨床実習の受け入れ施設の方針や指導経験に
解釈できる(検査)、対象者の現状を整理して説明するこ
沿って、実習を「おまかせ」することがほとんどであっ
とができる(評価)、対象者に訓練(課題)を適切に実行
た。残念ながら、実習指導のあり方について、具体的な
することができる(訓練)、目標に適った課題設定を含む
取り組みのコンセンサスを得ることはなく、指導者と学
治療の計画を作ることができる(治療計画)。上記のスキ
生には「何をすべきかが分からず、期待とズレを生じ、
ルを、指導者が手本を示し、学生がその一部をくり返し
十分に経験できない状態」を時に生み出していた。我々
行うことを臨床実習の現場に求めたい。実習の前には、
は大学の学部設置にあたり、「臨床実習の指導の内容」に
学生にスキルを身につけるための具体的な行動を示す。
ついては、従来のやり方を見直した。今年度の見学実習
指導者とは、指導の具体例のシナリオをもとに、実習の
からその実現に向けて、指導に理解をいただきながら、
あり方、supervising の方法、を討議していきたい。臨床
るかに挑むことになる。臨床実習の目標は、臨床の場で
実習で、学生が指導者といい関係を築き、多くの貴重な
経験ができることを期待する。
対象者やスタッフと良好な関係を築き、チーム医療を理
解し、意欲的に学ぶ姿勢を示した上で、以下の臨床スキ
ルを習得することとする:観察した事象を適切な表現と
用語を用いて記録することができる(観察)、対象者(患
153
2
日目
「より良い臨床経験」を積み、臨床スキルの積立てができ
2
ポスター演題
者)の病歴・障がい歴をまとめて報告することができる
き立て、臨床スキルを身につける大切な機会である。こ
1
口頭演題 日目
臨床実習は、ST 教育において、実務を経験し、意欲をか
ポスター演題 日目
知識について調査を行い、その変化を見た。【結果】1. 個
1-5-05
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
若手スタッフ指導におけるデータ活用の有用性ー言語聴覚療法評価データか
ら見えた施設特徴を活かしてー
荻原大輔 1)、谷沢剛志 2)、栗田朋美 2)、白石翔平 3)、松川智美 3)
JA 長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 言語療法科 1)、同小海分院 言語療法科 2)、同本院 言語療法科 3)
【はじめに】佐久総合病院は、2014 年 3 月に高度急性期
け、その割合がどのように推移したかを入退院時でグラ
医療を担う佐久医療センター(C)と、地域医療を担う
フ化した。【結果と考察】平均在院日数が短く大多数が
佐久総合病院本院(H)として、日本で初めての大型分
2 → 1 へ推移した C では、急性期疾患のリスク管理に留意
割再構築を果たした。現在は、南佐久地域の中核病院と
した的確な嚥下評価が求められる。平均在院日数が長く、
して医療を展開する小海分院(K)を含め、佐久総合病
80 歳代の 2 → 1 への推移が多かった H では、合併症に留
院グループとして地域医療を担っている。リハビリテー
意した慎重な嚥下リハビリが求められる。平均年齢が高
ションニーズも拡大し、ここ数年で経験年数 3 年目まで
く、グラフの推移にほぼ変化が見られなかった K では、
の若手療法士が急増し、総スタッフ数の約半数を占める
安全な食形態を維持し、食事姿勢や介助法を、患者本人
といった重要な組織力の担い手となっている。それに伴
や家族、サービス担当者へ具体的に伝える力が求められ
い、ベテランスタッフが経験的に得たものを直接指導で
ることが推測された。また、多施設経験のあるベテラン
きる機会は激減している。【方法】2014 年 4 月 1 日から
スタッフからは結果に対する共感的意見が多く聞かれた。
2015 年 3 月 31 日 ま で 3 施 設 で 処 方 さ れ た 合 計 754 件
【まとめ】上記データが指導内容の絶対条件とまでは言い
(外来処方は除く)の言語聴覚療法を、施設ごとに算定区
きれないが、機能分化した病院間で、若手スタッフが他
分、男女比、平均年齢、平均在院日数、転帰先に分け算
施設をイメージし、求められている業務内容を把握する
出した。さらにそのうち、約 8 割を越える嚥下障害への
ためには有用な資料になり得るのではないか。
ニーズに着目し、主たる栄養獲得手段を 1. 経口摂取のみ、
ポスター演題 日目
1
2. 補液のみ、3. 胃瘻・腸瘻、4. 経口摂取+代替栄養に分
1-5-06
チーム医療の中で摂食嚥下リハビリテーションをより積極的に進めるための
ST教育の検討
豊島義哉、吉川由規、坪井丈治、神近香苗、近藤友美、齊木久美子、金子依里子、松本海音
国立病院機構 東名古屋病院 リハビリテーション部
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】言語聴覚士(以下 ST)に食事の可否、食形
年目は、個別性を重視して技術の提供ができる。)を活用
態の検討を依頼すると禁食や食形態のレベルが下がり、
した。そして、ST 全体では、症例検討、吸引、検査デー
病棟より慎重すぎるとの意見を聞くことが少なくない。
タの見方、医療安全や感染予防などの勉強会に加え、嚥
この背景には、患者の全身状態の把握、リスク管理につ
下リハのテキストを 1 冊選定し、解剖生理、原因、病態、
いての経験が少ないため、誤嚥に慎重になってしまう。
訓練法を中心に 1 年間定期的に勉強会を行い、嚥下リハ
今回、摂食嚥下リハビリテーション(以下嚥下リハ)を
従事者として一定のレベルの知識、技術の習得を進めた。
積極的に進めるための ST 教育について検討したのでそ
【結果】現在、チーム医療の中の ST として信頼を得て、
の内容を報告する。【方法】3 年前は 10 名の ST で業務に
他職種と連携を取りながら、入院カンファレンス、評価、
あたっていた。経験年数 5 年未満が 7 人、6 年目が 2 人、
嚥下リハ、摂食機能療法回診などを個々に合わせて対応
10 年以上が 1 人で、出身校も 7 校に亘っており、嚥下リ
し、退院される方には、本人、家族、地域の関連職種と
ハに関する教育到達度もばらばらであった。多職種での
退院前カンファレンスを行ったり、施設職員に来院して
チームアプローチを推進していく中で、ST の嚥下リハに
もらい摂食場面を供覧しながら情報伝達をすることもあ
関する知識、技術は十分なものとは言えない状況であっ
る。そして、姿勢、食事形態、注意点などとともに、必
た。 そ こ で、 経 験 年 数 2 年 未 満 の 3 人 は リ ハ ビ リ テ ー
要な場合には食事時の姿勢の分かる写真を入れた経過報
ション部職員教育プログラム(到達目標:1 年目は、職場
告書を作成するようにしている。
への早期適応と基本的な能力の習得。2 年目は、基本的能
力を基盤に、対象の状況に応じ実践できる能力を養う。3
154
1-5-07
食品における摂食嚥下難易度評価の経験年数別視点の違いについて
社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
「 調 理」34.9%「 患 者 へ の 影 響」26.5%「 調 理 改 善 案」
摂食嚥下技術援助において、検食を用いた嚥下食の官能
3.6%、新人群では「物性」50%「調理」42.4%「患者へ
評価を導入している。今回、経験年数による評価視点に
ついて調査したので報告する。
の影響」7.1%「調理改善案」0% であった。
【考察】嚥下食は各食形態の区分内において様々な難易度
の食材が混在しており、直接訓練では患者の能力に適し
食を実施。経験年数 10 年以上の職員 2 名(経験群)と新
た食材選択に日々、難渋している。今回、検食において
人職員 2 名(新人群)に分類し、群内及び 2 群間での官能
経験群では物性測定値の基準枠内であるかを官能評価の
評価による食物難易度一致率について試食前後それぞれ
視点とし、素材や調理法などから嚥下食の仕上がりや患
比較検討した。また、食物難易度を判断する根拠につい
者への影響を判断する一方、新人群は見た目での印象が
てもコメントの記載を求め集計した。
優先しているものと考えられた。当院では嚥下食につい
【結果】群内での難易度一致率について、試食前は経験群
て物性特性の測定を行い一定基準の下で調理しているも
80% に対し新人群 60%、試食後は両群とも 80% であっ
のの、新人群では物性測定値を官能評価として捉えるこ
た。2 群間での難易度一致率は試食前 40%、試食後 50%
とが難しい現状が示唆された。今後はテクスチャーを含
だった。難易度判断の根拠について、試食前では経験
めた感覚基準と物性測定値の整合性を高めるトレーニン
群「素材・調理」77.4 %「危険予測」22.5%「見た目」
0%、新人群では「素材・調理」61.3%「危険予測」8%
1-5-08
1
【結語】検食を用いた食事難易度評価は ST のトレーニン
グとして重要である。
本校卒業生における卒後教育機会と関心領域に関する検討~縦の繋がりの構
築と関心領域の年代別変化について~
小牧祥太郎、提 雄輝、牧尾圭将、田場 要、平原孝洋、樋渡健太朗、西 勇輔、大津龍馬、
谷内まみ、湯田大介、川路勇太
経験年数 5 年未満と 5 年以上の区分を設けた場合、経験年
的な卒後教育が十分になされていない現状が見られてい
数と聴講希望内容に関連がみられた(p<0.05)。カテゴ
た。今回、卒業期を越えた縦の繋がりによるネットワー
リー別には、
「言語発達障害」で経験年数 5 年未満、
「養
クの構築、研鑽機会の確保を目的に、本学科同窓会の設
成教育」で経験年数 5 年以上の参加者に聴講希望の回答
立、活動として学術研究発表会を実施した。参加者に対
が多く得られた(p<0.05)。【アンケート結果の考察】運
してアンケートを行ったので、その内容についても報告
営面の要望としては、卒業生の繋がりの構築を進言する
する。【学術研究発表会・同窓会設立集会までの運び】各
意見が伺えた。聴講希望については、小児領域は昨今の
卒業期の代表 1 名を世話人とし定期的に会議を実施し、
特別支援学級数の増加、教育面においては参加者の職場
学術研究発表会として指定演題、特別講演の実施後に同
における業務の立場に関する関心と推測された。【まと
窓会設立集会を実施する運びとなった。【アンケート結
め】本校卒業生の意見を伺えた事、各卒業期で世話人と
果】同窓生全体の 23 %が参加し、当会の運営面と今後聴
して一堂に会した事に大きな意味を感じることが出来た。
講したい演題内容についてアンケートを実施、回収率は
また、経験年数にて関心領域に変化が伺えた事は、今後
61 %であった。運営面にて、93 %の回答者に年 1 回開催
の会の構成に関して重要なヒントを得られた。今後は機
の要望が聞かれ、コメントとして卒業生の活動報告、学
会を重ね、より卒業期を越えた縦の繋がりの構築にて、
術的内容に加え、懇親会の設定、参加者リストの配布と
有益な卒後教育機会となる事が期待された。
155
2
2
日目
いった内容が聞かれた。聴講希望の演題内容については、
や各種学会に所属しているが、養成校卒業生による体系
ポスター演題
【はじめに】本校卒業生は研鑽の場として、職能団体活動
1
口頭演題 日目
学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校 言語聴覚療法学科同窓会
ポスター演題 日目
「見た目」30% だった。試食後は経験群「物性」34.9%
グが求められる。
口頭演題 日目
【対象と方法】H27 年 11 月 9 ~ 13 日に ST4 名による検
特別プログラム
【はじめに】当院言語聴覚科では、新人教育プログラムの
日 程
小嶋彩子、佐々木 聡、米内山清貴
1-6-01
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
当科で変声障害に対して音声治療を行った4例
兒玉成博、讃岐徹治、湯本英二
熊本大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
変声障害とは、変声期を過ぎても話声位が低くならずに
より Kayser-Gutzmann 法で効果を認め、3 セッション
高い声の状態が続いているものを指し、機能性発声障害
で地声発声を獲得し、声のかすれも改善した。【症例 3】
とみなされる。変声障害の基本的な治療として音声治療
19 歳男性、主訴は声が出しにくい。初診時検査所見は、
があげられ、ほとんどの症例が短期間で地声発声を獲得
話声位 179Hz、声域 8 半音、MPT7.8 秒であった。初回
するとされている。今回、当科で変声障害に対して音声
より Kayser-Gutzmann 法で効果を認め、2 セッションで
治療を行った 4 例について報告する。【症例 1】16 歳男
安定した地声発声を獲得できた。【症例 4】48 歳男性、主
性、主訴は大きな声が出ない。初診時、話声位 195Hz、
訴は声のかすれと痛みであった。初診時検査所見は、話
声 域 26 半 音、MPT3.5 秒 で あ り、 喉 頭 所 見 で は、 披 裂
声位 214Hz、声域 18 半音、MPT15.3 秒であった。初回
部が喉頭蓋に接近する過緊張発声を認めた。治療方法と
より Kayser-Gutzmann 法で効果を認めたものの、地声
して、Kayser-Gutzmann 法を 3 セッション施行したが、
発声時に著しい喉の違和感を訴えた。本人の希望もあり、
甲状軟骨の異常な挙上に抗して用指的に圧迫を持続する
地声発声が汎化しないまま 2 セッションで音声治療終了
のが困難であり途中で裏声に戻ってしまう状態であった。
となった。変声期から長期経過している症例では、地声
発声時の過緊張発声を緩和するために吸気発声を併用し
発声の汎化が困難である場合があると考えた。発表では、
て 5 セッション(計 8 セッション)施行した。治療後、地
4 症例の治療効果について文献的考察を加えて報告する。
声発声を獲得し、大きな声が出るようになった。【症例 2】
15 歳男性、主訴は声がかすれて出しにくい。初診時、話
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
声位 208Hz、声域 16 半音、MPT11.0 秒であった。初回
1-6-02
東京ボイスセンターにおける変声障害に対する音声治療について
早乙女泰伴 1,2)、尾崎千宝 1,2)、甲佐里美 1,2)、大島晴香 1,2)、山川 梢 1,2)
山王病院 リハビリテーションセンター 1)、国際医療福祉大学 東京ボイスセンター 2)
【目的】東京ボイスセンターでの変声障害例についてま
するまでには平均で合計 9 回の訓練が必要であった。【考
とめ、諸家の報告との比較検討を行い、実際に地声が日
察】変声障害の訓練には KG 法が知られているが、単独
常会話にて般化されるまでの訓練回数や訓練内容を明ら
では効果が得られない症例もある。その場合にはリラク
か に す る こ と と し た。【 方 法】 対 象 は 2012 年 4 月 か ら
セーションを併用する報告や Vocal Function Exercise
2015 年 12 月に当センターを受診し、変声障害と診断さ
(以下 VFE)を行う報告がある。報告症例では KG 法にリ
れ訓練依頼の出た男性 13 名から、器質的病変を認める
ラクセーションを併用し、その後 VFE も施行し翻転の安
症例、発達障害症例、初診時と終診時の音声検査結果が
定化を図った。地声発声可能になり日常会話への般化ま
ない症例を除外した 6 名とした。年齢、身長、体重、病
でに長期間を要した理由として、声の誤用が習慣化獲得
悩期間、訓練期間、訓練回数、訓練内容について検討
したことと、音声を心理的に受容できないことが考えら
し、訓練開始時と終了時の F0、声域、MPT、MFR、VHI
れた。変声障害の治療では、学校の環境調整や周囲の理
を比較した。【結果】受診時の平均年齢は平均 17 歳であ
解と配慮が必要であり、本人らが日常生活で地声を使用
り、病悩期間は平均 26.2 ヵ月であった。訓練期間は平均
できるようになるまで調整することが大切であると考え
3.8 ヵ月で訓練回数は平均 9 回であった。訓練内容はどの
られた。研究協力者:渡邊雄介 国際医療福祉大学 東
症例も初めに Kayser-Gutzmann 法(以下 KG 法)によ
京ボイスセンター
り地声を誘導した。地声を日常会話で使用可能という目
標に焦点を当て、全例が目標を達成した。低い pich の持
続母音発声は平均 2.5 回目で可能となったが、目標達成
156
1-6-03
心因性発声障害の訓練経過 -認知行動療法に基づいて-
信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部 1)、信州大学医学部 精神医学講座 2)
だ。さらに、失声状態が常態化しないように ST 訓練時に
回、転換性障害により心因性発声障害を呈した症例に対
は口型での Com を指導し、獲得した際には他覚的に FB
して、認知行動療法の考え方を基に音声訓練を施行した
を行なった。音声に関しては最終目標を有声音発声とし、
ため報告する。
【症例】30 代男性。営業職。診断名:転
それに向けての具体的目標の第一歩として呼気流出(無
換性障害。主訴:声が出ない。左膝の力が抜ける。【現
声子音発声)や咳払い等の練習を行なった。【経過】口型
病歴】2015 年 11 月、起床時より声が出ないことや四
での Com は ST 場面以外でも拡大し、筆談の負担が減少
肢の脱力感に気付き、神経内科を受診。頭部 MRI や喉頭
した。徐々に表情は和らぎ、自主練習も意欲的になり、
ファイバー検査等を施行されたが神経障害、器質的異常
不安感情を医師や ST に伝えられるようになった。また、
の所見はなく、精神科介入し上記診断となった。【初期評
比較的早期に無声子音発声は産生可能となり症状の改善
価】コミュニケーション(以下 Com):筆談のみ。失声
を自覚できた。【結語】精神疾患患者に対して訓練の成果
状態。表情は硬く緊張が強いが協力的。不安感情や困難
を認め自己肯定感を感じられるよう配慮しながら訓練を
感の表出はなし。呼吸・発声機能:無声発声や呼気産生、
行った。一般的には予後良好と言われているが、今後も
ブローイングを指示するが施行困難。ADL 車いす移動、
自己洞察を促し精神科と連携していくことが必要と考え
その他は自立。【訓練内容】まず、自身の病態を客観視す
た。
口頭演題 日目
で Com できることを肯定的に捉える思考変容に取り組ん
られており、認知行動療法が有効と言われている。今
特別プログラム
【はじめに】心因性発声障害は精神疾患として位置づけ
日 程
水谷 瞳 1)、寺島さつき 1)、高橋由佳 2)、吉村康夫 1)
1
る目的で発声生理の説明理解の促しを行なった。声が出
1-6-04
音声障害患者における心理的要因の関連についての検討
佐藤剛史 1)、渡邊健一 1)、高梨芳崇 1)、本蔵陽平 1)、平野 愛 1)、太田 淳 1)、川瀬哲明 1,2)、
香取幸夫 1)
障害 2 名、声帯麻痺 11 名、声帯萎縮 4 名、良性喉頭疾患
おり、音声障害の臨床においてはその評価が重要である。
12 名、声帯白板症 3 名、喉頭がん 7 名、喉頭乳頭腫 1 名
当科では不安や抑うつのスクリーニングとして Hospital
で あ っ た。HADS-A 平 均 値 は 6.3 ± 2.7 点、HADS-D 平
Anxiety and Depression Scale( 以 下 HADS) を 用 い
均値は 5.9 ± 2.8 点であった。両スコアの間に弱い相関
た評価を行っている。【目的】今回は HADS による心理評
が認められた(r=0.27 p<0.01)。HADS-A が 8 点以上
価をもとに音声障害と不安・抑うつの関連を明らかにす
を示した例は全体の 31.9%、HADS-D は 25.4 %であっ
るとともに、音声障害の重症度や原因疾患と心理的要因
た。VHI は 47.7 ± 30.4 点、機能的側面 16.7 ± 10.5 点、
との関連を明らかにする。【方法】対象は平成 27 年 1 月
身体的側面 19.1 ± 10.9 点、感情的側面 11.8 ± 10.2 点で
~ 12 月までに当科を受診した音声障害患者 47 名(男性
あ っ た。Grade は G1 が 12 名、G2 が 25 名、G3 が 10 名
23 例・女性 24 例)、平均年齢は 54.6 ± 16.5 歳。診療録
であった。今回の検討では HADS と VHI・Grade それぞれ
より HADS の不安に関するスコア(HADS-A)と抑うつ
の間に相関は認められなかった。疾患別の検討では、他
に関するスコア(HADS-D)、VHI の各スコア、GRBAS
の疾患に比べ機能性発声障害で HADS-A が 8 点以上を示
尺度の Grade(G)、疾患名を抽出し、音声障害患者にお
す割合が高い傾向にあった。【考察】今回の結果より、音
ける HADS の傾向、HADS と VHI・Grade の相関、疾患
声障害では不安や抑うつ傾向を伴う可能性が高いことが
別の傾向について retrospective に検討した。HADS-A・
示唆された。特に不安が抑うつ傾向より伴いやすい可能
D ともに 8 点以上を不安ないし抑うつの疑いありとした。
性が示唆された。
157
2
2
日目
【結果】疾患の内訳は機能性発声障害 7 名、痙攣性発声
げられる。機能性発声障害と不安との関連が指摘されて
ポスター演題
【はじめに】音声障害の誘因の 1 つとして心理的要因があ
1
口頭演題 日目
東北大学大学院 医学系研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 1)、
東北大学大学院 医工学研究科 聴覚再建医工学研究分野 2)
ポスター演題 日目
ないことに対する自身の思いを言語化してもらい、筆談
1-6-05
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
就学後に学習面の問題を指摘された児童の認知項目のばらつきの検討
末長涼子 1)、宮崎彰子 1)、川崎美香 1)、阿部宏美 1)、笹山智絵 1)、小坂美鶴 1,2)、三村邦子 1,2)、
平岡 崇 3)、花山耕三 3)
川崎医科大学付属病院 リハビリテーションセンター 1)、川崎医療福祉大学 医療福祉学部 感覚矯正学科 2)、
川崎医科大学 リハビリテーション医学教室 3)
【はじめに】学習障害児(以下、LD 児)は言語性 IQ が低
―音声回路の方が視覚―運動回路よりも低下をしていた。
い、音韻障害を認めることなどが従来指摘されている。
教師・家族からは、表現力の問題より、漢字の形態、記
今回、LD を主訴として来院した就学児の特徴について検
憶に関連する学習面の訴えを多く認めた。【考察】LD 児
討した。【対象と方法】2013 年 1 月~ 2014 年 12 月まで
の知能は言語性 IQ も高く、知能検査のみでは学習面の問
の 2 年間に学習障害を疑われ、言語聴覚療法で検査を実
題をとらえることは不十分である。大石(1994)は、読
施した 6 歳~ 12 歳の患者のうち知的障害があったもの、
み書きの学習は音声言語を土台とし、仮名文字の習得に
情緒障害があったものを除いた 8 名(男児 6 名、女児 2
は音韻意識の影響がある。本研究の対象児は漢字学習の
名)を対象とした。後ろ向き観察研究とし、WISC - 3 の
問題が中心であった。宇野ら(2002)は、発達性読み書
言語性 IQ、動作性 IQ、各下位検査の評価点、ITPA の SS
き障害児 22 例のうち 16 例に、音韻情報処理過程と視覚
を抽出し、学習面の問題や教師や家族からの問題点と比
情報処理過程双方の障害を認めたとし、今回の結果から
較した。【結果】WISC - 3 の言語性 IQ、動作性 IQ 間に
も漢字は視覚認知のみならず、音韻認知も関与している
有意差は認めなかった。また各下位検査の評価点にも有
ものと推測された。LD 児のメカニズムを理解し、より詳
意な差は認めなかった。全検査 IQ は「平均の下」~「優
細な評価を行う必要があると考えられた。
れている」、言語性 IQ は「平均の下」~「平均の上」だっ
た。ITPA の SS では、聴覚―音声回路と、視覚―運動回路
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
での有意差はなかった。しかし、表現と配列記憶は聴覚
1-6-06
発達性読み書き障害の存在が疑われた後天性脳損傷の1例
東 優奈 1)、春原則子 2)、唐澤健太 1)
リハビリテーション天草病院 1)、目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科 2)
【はじめに】脳梗塞により喚語機能低下を認めたが、生育
歴や検査結果等から発達性読み書き障害が推定された小
児例を報告する。
【症例】小学 3 年通常級在籍の 8 歳 10 か月(初診時 6 歳
5 ヶ月)の右利き男児。国語のみ特別支援学級に通級。
生育歴:周産期に異常なく、始歩 1 歳、始語 1 歳 2 か月。
ポスター演題
日目
2
5 歳頃に機能性構音障害にて、ことばの教室に通院。就学
前検診で言語発達障害の疑いを指摘されたが通常級にて
経過観察となった。
現病歴:言葉の出難さ・右上肢の使い難さを自覚し他院
は多く流暢で文レベル。呼称で迂言や遅延反応を認め、
文提示からの喚語課題で時折意味性錯語が出現。
音韻:4 モーラ語の音韻抽出で誤り、逆唱や非語復唱は実
施困難。
視覚認知:線画同定課題の正答数が少なく、ROCFT の直
後再生は 2.5 / 36 と低得点であった。
読み書きの習得度:STRAW にて平仮名 1 文字の音読、平
仮名・漢字単語の書取で同学年平均を 2SD 以上下回った。
片仮名の書字は実施困難。母より就学時から平仮名の音
読や書字が困難だったとの情報があった。
受診。頭部 MRA にて内頚動脈、ウィリス動脈環の狭窄・
【まとめと考察】本例は全般的な知的機能は良好で音声言
術施行。2 か月後リハ目的で当院転院。3 か月後自宅退
た発達性読み書き障害の背景要因として想定されている
一部閉塞を認めた。発症 1 か月後、直接・間接血行再建
院、以降外来リハ実施。
神経学的所見:右片麻痺(Br. StageVI-V-V)
全 般 的 知 的 機 能:WISC-IV は 全 検 査 IQ88(VCI91、
PRI89)で概ね良好。
言語所見:日常会話レベルの聴覚的理解は可能。発話量
語の障害も軽微であったが、音韻や視覚認知障害といっ
認知機能に低下を認め、読み書きの習得度も低かった。
さらに生育歴からも、発症前より発達性読み書き障害が
あったのではないかと推定された。後天性の脳損傷例に
おいても先天性の問題を考慮する必要性が示唆された。
158
1-6-07
漢字書字に困難さを訴えた発達性読み書き障害児1例の認知神経心理学的検討
埼玉県立小児医療センター 保健発達部 1)、埼玉県立小児医療センター 神経科 2)、武蔵野大学 3)
達 度 に つ い て は、K-ABC2「 こ と ば の 読 み」 は SS12。
1 例に対して認知神経心理学的評価を実施し、その障害
STRAW「単語の読み」ではひらがな、カタカナ、漢字
ともに全問正答したが、遅延反応がカタカナ 2/20、漢
字 5/20 あった。稲垣ら(2010)の単語・短文速読検査
の主訴で当院受診。【神経心理学的評価】全般的知能は
では、学年平均に比べ 2SD 以上の所要時間の延長を認め
WISC-4 および RCPM において正常域。WISC-4 の言語
た。書きについては、K-ABC2「ことばの書き」は SS5。
理解指数ならびに SCTAW の成績から、音声言語の発達
STRAW 単語書字の正答数は、ひらがな 19/20、カタカ
は年齢相応。音韻認識能力は、単語の逆唱課題にて 3,4
ナ 18/20、漢字 3/20。【考察】上記評価結果より、症例
モーラ語で全問正答したが、反応時間において同年齢平
は、ひらがな、カタカナ、漢字の読みの流暢性と書字に
均に比べ 1SD 以上の遅延を認めた。AVLT では 30 分後遅
困難を抱える発達性読み書き障害児であると思われた。
延再生正答数 14/15 と音声言語の長期記憶は良好。視覚
その背景として、音韻認識能力と視覚認知能力に問題が
認知面では、WISC-4 積木模様 SS12 と年齢相応の成績
あると考えられた。視覚認知能力の中で、図形の構成能
だったが、一方で符号 SS1 と顕著な差が見られた。また、
力や視覚的推論能力は保たれているが、線画を認識して
立方体透視図や ROCFT の模写において、図形を要素的に
再構成する能力に落ち込みがあり、このことが書字の困
認知し、全体的な形を捉えられない様子を認めた。VPTA
難に影響している可能性が考えられた。
口頭演題 日目
背景を検討したので報告する。【症例】初診時 CA11:11
(小学 6 年生)右利き男児。漢字を書くことが難しいと
特別プログラム
【はじめに】書字に困難さを訴える発達性読み書き障害児
日 程
遠藤俊介 1)、松浦隆樹 2)、狐塚順子 1,3)
1
の錯綜図では、正答したものの自己修正反応が見られ、
1-6-08
Reyの複雑図形(BQSS法)を用いた漢字書字・読字の影響要因について
山口大輔 1,2)
平谷こども発達クリニック 1)、勝山市ことばの育ちの教室 2)
名は発達性 dyslexia36 名、書字障害 12 名、ASD36 名、
2010)。ROCF の 採 点 で は 従 来 36 点 法 が 使 用 さ れ る
野、2006)の漢字の音読・書取の z 得点、及び、検査で
の複雑図形(以下、ROCF)がよく用いられる(若宮、
(Taylor,1959)。これは、図形を構成する 18 要素の、形
の正確さ、位置について採点し合計する、描画の量的な
面に着目した採点法である。
ていない図形描画の構成方略に注目した採点法がいくつ
か開発されている。そのうち、BQSS 法は、図形の各要素
を構造上の重要度により、「形態的要素」「クラスタ」「細
部」に分類した上で、量的な面の「有無」「正確さ」「配
ンニング」に分けて採点される(Stern et al.,1994)。本
研究では、発達障害の小学生の書字への ROCF の BQSS
法の結果の影響を重回帰分析で分析し、BQSS 法のどの要
因が漢字の書字・読字に影響しているかを調べることを
目的とする。
【方法】対象児は H クリニックに通う小学生 57 名、診断
階で評価した数値の平均を従属変数、ROCF の BQSS 法
2
の模写における形態的要素有無、形態的要素正確さ、ク
ラスタ要素、クラスタ正確さ、クラスタ配置、細部有
無、細部配置、断片化、プランニングについて、服部
(2006)の小学生の平均値、SD を用いて z 得点化した値
を 9 つの説明変数とし、ステップワイズ法の重回帰分析
を行った。
【結果】従属変数が STRAW の単語漢字の音読では断片
化、書取では形態的要素有無、書字の判読性では断片化、
クラスタ正確さが影響する変数として残った。
【考察】本結果より、漢字の読み、字形の判読性につい
て、図形全体をまとまりと捉えて描画しているかの構成
方略の能力が関与する可能性が示唆された。
159
2
日目
置」
、及び、構成方略をみる質的な面の「断片化」「プラ
のひらがな、漢字の書字の判読性を 4 名の ST により 5 段
ポスター演題
海外では、ROCF について、36 点法では評価基準に入れ
ADHD35 名(重複含む)である。対象児の STRAW(宇
1
口頭演題 日目
【背景】書字障害の掘り下げ検査として、国内では Rey
ポスター演題 日目
線画の識別が困難な様子が窺われた。読み書きの学習到
1-6-09
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
線分二等分試験における速度負荷の与える影響
兵頭勇介
社会医療法人生長会 府中病院 言語聴覚療法室
【はじめに】左半側空間無視(以下、USN)の評価とし
主観的に 4 段階(USN なし・USN 疑いあり・USN あり・
て、BIT 行動性無視検査日本版が一般的に用いられてい
USN 著明)で判断した。【結果・考察】通常群、負荷群
る。その中でも、線分二等分試験は簡便に実施する事が
いずれも、通常・速度負荷間における得点に有意差は認
可能であり、スクリーニング評価に用いられる事も多く
められなかった。それぞれの通常及び速度負荷の平均得
ある。しかし、軽度の USN の場合には机上検査では検出
点 は、 全 体 で は 7.15、7.13、 通 常 群 で は 7.58、7.58、
されず、動作場面でのみ症状を認める症例も存在する。
負 荷 群 で は 6.7、6.65 で あ っ た。 な お、USN の 程 度 別
そこで今回は、線分二等分試験に速度負荷を設けて、成
としては、USN なし群では 8.8、8.6、USN 疑いあり群
績変化の比較や USN 検出の有用性を検討した。【対象】
で は 8.8、9、USN あ り 群 で は 7.07、6.86、USN 著 明
当院でリハビリテーション介入している、意識レベル
群では 2.78、3.44 であった。結果として、速度負荷に
が JCS0 ~ 3 である右大脳病変の脳卒中後患者 47 名(平
よる成績変化や、USN 検出の有用性は認められなかっ
均 年 齢 65.3 ± 2.0 歳、 男 性 24 名、 女 性 23 名)。【 期 間】
た。今回は注意機能による割付や、健常者での検討等は
2014 年 11 月 11 日から 2015 年 12 月 24 日。【方法】対
行わなかった。今後は左記条件での実施や、Catherine
象を 2 群に無作為割付し、線分二等分試験を通常→速度
Bergego Scale との関連等も含めて検討出来ればと考え
負荷(以下、通常群)もしくは速度負荷→通常(以下、
ている。
負荷群)の順序で施行した。速度負荷に関しては、課題
教示の際に「出来るだけ速く」とのみ付け加える事とし
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
た。なお、担当リハビリスタッフが USN の有無や程度を
1-6-10
小児における立方体透視図模写の採点方法に関する研究―簡便かつ有効な
CCTの採点方法の試案―
佐野剛雅 1)、金子真人 2)、香月 靜 3)、若杉麻美 4)、官澤 紗 5)
総合高津中央病院 リハビリテーション部 1)、国士舘大学 文学部 教育学科 2)、足立区障がい福祉センター あしすと 3)、
杉並リハビリテーション病院 リハビリテーション科 4)、西湘病院 リハビリテーション部 5)
【はじめに】立方体透視図模写(以下、CCT)の採点方
関を認めた。S 法のパターン分類において、8 項目中 2 項
法には定性的評価(Shimada ら、2006)と定量的評価
目は該当する児童が存在しなかった。さらに、S 法の分類
(Maeshima ら、1997; 大 伴、2009) が あ る。 特 に、
とは異なる誤反応パターンを認めた。そこで、S 法の採
定性的評価法である Shimada の方法(以下、S 法)は、
点方法を改変することによって、すべての児童の模写パ
簡便さが特徴である。しかし、S 法は成人を対象に作成さ
ターンが分類可能となった。【考察】結果より、成人を対
れているため小児に適応可能であるのかが明らかでない。
象に作成された S 法を小児に適応することは困難と思われ
大 伴 の 方 法( 以 下、O 法) は、 小 学 生 を 対 象 と し て い
た。本研究の採点方法は、M 法と O 法の両方の採点方法
るが、採点基準が詳細のため、採点者間で点数のばらつ
とも高い相関を認めたことから、採点方法として有効と
きが生じやすく、スクリーニング検査としての簡便さに
思われた。小児の CCT は視覚認知機能を反映すると考え
欠ける。そこで我々は、通常小学校に通う児童を対象に
られている(大伴、2009)が、今後この採点方法がどの
CCT を実施し、各採点方法との比較検討をすることで、
ような視覚情報処理と関係するかを検討し、さらに発達
簡便で有効な CCT の採点方法を試案したので報告する。 的順序性などを確認することが必要であろう。
【方法】参加者:都内の通常小学校に通う 1 ~ 6 年生 443
人。実施検査及び課題:知能検査として RCPM と、CCT
を実施した。【結果】本研究の採点方法は、Maeshima ら
の方法(以下、M 法)と O 法の両方の採点方法と高い相
160
1-6-11
吉田 唯 1)、前川香苗 2)、三浦綾香 3)、堀 敦志 4)、林 広美 5)
福井総合クリニック リハビリテーション課 言語聴覚療法室 1)、
福井総合病院 リハビリテーション課 言語聴覚療法室 2)、福井総合病院 リハビリテーション課 作業療法室 3)、
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 4)、福井総合クリニック リハビリテーション科 5)
【結果】TMT-A では CDR0 群と u 群、i 群には有意差を認
も認知症と診断できるようになった。今回、注意機能に
めなかったが、D 群、D+ 群、CDR1 群は有意に遅かっ
着目し、Trail Making Test(以下 TMT)と認知症の重
た。TMT-B では CDR0 群は他のすべての群と比較して有
症度評価 Clinical Dementia Rating(以下 CDR)との関
連性を調査し、軽度認知機能障害(以下 MCI)の検出に
ついて検討する。
意に速度が速かった。
【考察】TMT-A では D 群より有意差が認められ、認知症
を診断するのには有効だが、初期認知症である i 群を検出
するには至らなかった。TMT-B では u 群から有意差が認
当院のもの忘れ外来で CDR と TMT を実施した者のうち
められ、健常群と認知機能に低下がみられる高齢者を分
CDR0 ~ 1 の 163 名と福井市 A 地区在住の高齢者 66 名。
類出来る可能性が示唆された。原田ら(2006)の研究に
方法は家族、本人からの情報を基にCDRを実施し、CDR0
おける健常データは MMSE24 点以上であり、MCI の者
(正常)
、0.5(疑い)
、1(軽度認知症)
、2(中等度)
、3(重
が含まれている可能性が考えられる。先の原田らの 75 ~
度)の5群、更にCDR0.5は4群(u群、i群、D群、D+群)
79 歳の平均値は 135.2 秒であったが、本研究の CDR0 群
に分類した。TMTは所要時間を用い、Part-A(以下A)は
の平均値は 105.9 秒と約 30 秒速かった。
150秒、Part-B(以下B)は300秒を中止基準とし、中止
の場合は中止基準の値を用いた。分析は多重比較検定を
【結論】TMT-B の所要時間は従来の研究値よりも早く、
1
MCI を検出するのに有効と考える。
当院における神経心理学検査と自動車運転可否判断の関係について
中川大介
ポスター演題 日目
用い有意水準は 5 %とした。
1-6-12
口頭演題 日目
【対象と方法】対象は 2010 年 4 月~ 2014 年 3 月の間に、
特別プログラム
【目的】DSM-5 より記憶以外の認知領域に低下があって
日 程
Trail Making Test とClinical Dementia Ratingとの関連性 ~認知症の
早期発見に向けて~
1
医療法人 社団 脳健会 仙台リハビリテーション病院
号探しを説明変数として、ロジスティック回帰分析をお
果から総合的に判断をしている。今回、当院で行った神
こなった。2)影響を与えると考えられた項目の診断精度
経心理学検査と自動車運転可否判断の関係について調査
の評価を目的として ROC 曲線を用いた検討を行った。有
を行ったので報告する。【対象】平成 25 年 4 月 1 日から
意水準は p<0.05 とした。【結果】ロジスティック回帰
平成 27 年 3 月 31 日までに運転再開を目的に当院で評価
分析を行った結果、TMT-A(オッズ比 0.92)および記
を行い、視野や運動機能が概ね保たれていた 51 名。この
号探し(オッズ比 1.38)が運転可否の判断に影響する検
うち運転可能群(以下 OK 群)は 27 名、運転不可群(以
査項目であることが示された。ROC 曲線による運転可否
下 NG 群)は 24 名であった。OK 群は平均年齢 48.2 歳、
判 断 の cut-off 値 は TMT-A は 41 秒(AUC 0.785、 感
FIM 平均は 120.0 であった。NG 群は平均年齢 57.0 歳、
度 85.2%、特異度 63.6%)、記号探しは評価点 6(AUC
FIM 平均は 119.6 であった。【方法】カルテを後方視的に
0.760、感度 92.5%、特異度 58.3%)であった。【考察】
調査した。調査項目は年齢、当院で運転可否判断の際に
当院において TMT-A と記号探しが自動車運転の可否判断
通常行っている TMT-A および B、WAIS-III の絵画完成、
に影響する項目であることが示唆された。cut-off 値は感
絵画配列、積み木模様、行列推理、符号、記号探しとし
度が高いことから自動車運転可となりうる例の見落とし
た。自動車運転可否の判断に影響を与える要因の調査を
が少なくなると考えられた。
目的として次の解析を行った。1)自動車運転可否を目的
161
2
2
日目
および B、WAIS-III の絵画配列、積み木模様、符号、記
否について神経心理学検査や教習所での運転適性検査結
ポスター演題
変数、上記調査項目を単変量解析し(p<0.15)、TMT-A
を判断する明確な基準はない。当院では自動車運転の可
口頭演題 日目
【はじめに】現在、脳卒中や頭部外傷例の自動車運転可否
P1-1-01
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
「語り」の訓練を行った小学二年生の一例
光田由美子 1)、鈴木真佐子 2)
医療法人 啓仁会 豊川さくら病院 1)、名古屋市立大学病院 こころの医療センター 2)
【症例】8 歳男児。保育園年長時に「園で手がかかる落
どこ」の全ページを自由に語らせ発話内容を記録し構造
ち着きがない」などの主訴で来院し ASD ADHD と診
的分析と内容的分析を行った。5 か月間計 10 回の個別訓
断 さ れ る。 受 診 前 に 教 育 相 談 機 関 で 行 っ た WISC-3:
練で 4 コマ漫画の説明と作文、英語の絵本の説明と作文、
FIQ107VIQ92 PIQ 121【経過】言葉の発達に遅れや偏
配列絵の説明などの訓練を行ったのち、再度同様の手順
りが認められたため ST 訓練(個別及び集団)開始。開始
で発話分析を行い前後の比較を行った。【結果と考察】構
時の質問応答検査は総得点 227(平均 240 ~ 279)。当
造的分析では T-unit 数に増加が見られ、平均発話数、平
初自発話は 2.3 語文程度の短いもので語彙数も少なかっ
均自立語数に変化はなかった。助詞の誤り数が減ってい
た。日常会話の質問の意図が理解できず、よく聞き返し
た。内容的分析では、心的表現、因果関係表現、時間的
ていた。集団場面で気持ちを伝えられず、黙り込んだり
配列順序、中心からの逸脱に大きな変化は見られなかっ
涙ぐんだりする事もあった。徐々に改善が見られ、小学
た。空間的説明表現の増加が見られた。結果から文法的
校では通常級に所属し学力で大きな問題なく経過したが
能力の大きな変化はなかったといえるが T-unit 数の増加
生活面対人面でのトラブルをうまく説明できないため大
や、文意の正確な表現に影響を与える助詞の誤りの軽減、
人に状況が伝わらないという問題が生じた。そのため小 2
語りの内容に膨らみを持たせる空間的表現語彙の拡大な
での個別訓練では状況の説明能力の改善に主眼を置き語
ど変化も認められたため変化の要因や語りの訓練の有用
りの訓練を導入した。【目的と方法】語りの訓練を行った
性について考察を加え報告する。
前後の談話能力を字のない絵本の語りの発話分析で比較
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
し変化の要因を考察した。字のない絵本「かえるくんは
P1-1-02
競争心が駆り立てられる活動により本人の学習への主体的参加を促した一例
梅原 彩 1)、齋藤みのり 2)
重井医学研究所附属病院 小児療育センター 言語聴覚士 1)、重井医学研究所附属病院 小児療育センター 作業療法士 2)
【はじめに】言語発達に大きな遅れはないが、小学校入学
うな支援を行った。母に対しては本児の学習困難の原因
以降に学習面にしんどさが見られた ADHD 児に対し、本
等について理解を促し、学習を様々な視点で捉え子ども
人の学習に対する前向きな気持ちを引き出した療育の経
の主体的な学習を引き出せるよう促しを行った。以後、
過を報告する。
母は療育での取り組みを家庭でも導入するようになった。
【症例】小学校通常学級、ADHD を呈する 9 歳 0 ヶ月男
児。7 歳 9 ヶ月時に学習の遅れを主訴に当院受診。
本児は board game や i-Pad などを用いた活動に興味を
示し、次第に難しいものでも試行錯誤して取り組む様子
【検査】WISC-4(CA7:11)ではFSIQ76、VCI91、PRI80、
WMI77、PSI70。読み書きに関する評価はいずれも同学
年平均を下回る結果であった。
が見られるようになった。さらに、プリントなどの国語
や算数の教科学習も意欲的に行うようになった。
【まとめ】学習に困難さを有する児童に対するアプローチ
【経過】療育開始時、本児は課題に取り組む際によく考え
では、教科学習そのものに焦点を当てるのではなく、学
ずに答えて誤ることが多かった。さらに、手応えを感じ
習要素を含み本人の興味・関心が駆り立てられるような
られないと諦めたり感情的になりやすく、学習に対して
活動を行っていくことが大切である。保護者に対しては
回避的であった。母は、国語や算数の教科学習に対し、
様々な活動の中に学習できる要素があることを伝え、子
なぜ出来ないのかと訴えていた。そこで担当者は、本児
どもがチャレンジ精神を持ち主体的に学習できるよう関
が苦手意識を持つ教科学習そのものではなく、学習要素
る大切さを伝える必要があると考える。
を含む board game など、興味や関心を引き競争心を掻
き立てるような活動を通じ、楽しく学習に向き合えるよ
162
P1-1-03
自閉症スペクトラム児の語彙獲得の特徴
日 程
小坂美鶴、三村邦子、川上紀子
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科
の相当年齢と比較した。また、言語訓練を継続した症例
は語彙獲得が緩徐であることに加え、語彙獲得の歪みを
においては経年的変化を比較した。【結果】ASD 児の理
示唆する研究がある一方、遅れはあるが、典型発達児と
解語彙年齢は 5:00 で呼称課題の語彙年齢は 5:10 であり、
は質的な差異はなく歪みはないという研究もあり、未だ
理解語彙年齢での低下が認められ、理解語彙年齢と呼称
結論は出ていない。しかし、ASD 児の特性の一つである
における語彙年齢との差異が認められた。誤りの質的検
柔軟性に欠ける思考様式や限定され執着する興味など対
討では、平均誤り数は上位語は 0.88 語、下位語 0.14 語、
人や対物などの環境に対する関心の偏りは、語彙獲得に
同位語 0.64 語であり、意味的関係のある語彙への誤りが
おいて何らかの影響があると考えられ、その発達的観点
多く認められた。また、呼称課題での具体語のレキシコ
から理解語彙と表出語彙について経年的な変化を検討す
ンが保たれているのに対して「なぞなぞ」と「ことばの
類推」課題での相当年齢において低下が顕著であった。
法】対象は当センターにて言語訓練を継続していた ASD
【考察】語彙獲得は認知、言語、社会的発達と関連する。
児 12 例(5:01 ~ 6:07。平均年齢 5:11)とした。彼らの
ASD の言語発達はその社会的認知発達の遅れを反映して
平均 IQ は VIQ74.5、PIQ94.33 であった。PVT-R と言語
いると考えられた。これまでの報告では ASD 児の語彙発
発達診断検査(80 単語呼称検査)を行い、実施した生活
達には大きな遅れがないとされてきたが、語彙の連想や
年齢と理解語彙と呼称検査の相当年齢とを比較した。ま
類推における意味の狭小さが認められた。
口頭演題 日目
るとともに、呼称課題から語彙の質的検討を行う。【方
特別プログラム
自閉症スペクトラム(以下 ASD)児の語彙獲得に関して
1
た、同時期に実施した K-ABC の下位検査「なぞなぞ」お
P1-1-04
自閉症スペクトラム児の指さし獲得について ~当院での取り組み~
棚木則子、林 律子、太田朗子、高橋佐代子
ポスター演題 日目
よび ITPA の下位検査の「ことばの理解」「ことばの類推」
1
のぞみ小児科医院
子どもから興味を示すこと B. 欲しい物へ要求の手さし
特定の人や物を指し示す行為のことであり、生後 9 ヶ月
ができること C. 他者の指さしに注目できること D. 指
さしの形が模倣できること の 4 項目に分けて指導した。
達の研究で、自発的指さしの機能は「感嘆・共有、叙述、
【結果】要求の指さし獲得までに掛かった期間は 5 ヶ月~
交流、質問、要求」の 5 つとしており、要求の指さしは 1
2 年 11 ヶ月と幅広い結果となった。どの項目も直ちに獲
歳前後に実用的・道具的に用いられるようになると報告
得する場合と獲得までに多くの反復練習が必要な場合に
している。自閉症スペクトラム児は発語だけでなく指さ
分かれたが、対象児全員が 4 項目とも獲得した後に要求
しの出現も遅れる場合が多く、要求手段の拡がりが乏し
の指さしを獲得した。ACD の獲得順序は全員 A → C → D
い。今回、指導によって要求手段としての指さしを獲得
だったが、B は対象児によって獲得順序が異なった。要求
した自閉症スペクトラム児について、指導経過を整理し
の指さし獲得のために実施した指導内容と掛かった期間
たため報告する。
等について、若干の考察を加え発表する。
開始年齢:1 歳 11 ヶ月~ 3 歳 7 ヶ月。初期評価(津守式
乳幼児精神発達診断法)発達年齢:1 歳 2 ヶ月~ 1 歳 7 ヶ
月、発達指数:42 ~ 66。要求手段:クレーン現象や手
引き等の直接的な行動。発語:1 名のみ有意味語あり。
【指導】要求の指さしを獲得するために A. 身近な大人へ
163
2
日目
【対象児】指さし未獲得の自閉症スペクトラム児 15 名。
2
ポスター演題
頃から出現する。山田 . 中西(1983)は乳児の指さし発
口頭演題 日目
【はじめに】指さしとは、一般的には人差し指を使って
P1-1-05
日 程
当院回復期病棟設立からの活動報告と部門間における情報共有の重要性
~早期自宅退院が可能となった高次脳機能障害の1例から~
藤森貴久、古木ひとみ、岩田恵子、清澤愛子、清水朋美、勝野健太、渥美康子、市川貴康、
工藤千穂、新江万里江、石黒明日美、笠原真紀、小境 悟、小松千尋
社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】
当院はこれまで急性期医療に特化した地域医療支援病院
であった。しかし在院日数短縮及びリハビリの充実を目
的に 2014 年に回復期病棟を立ち上げた。
回復期病棟の患者割合は脳神経疾患 4 割、整形疾患 6 割と
なっており、脳血管疾患系の平均在院日数は 49.4 日(全
国平均 89.1 日)である。また 1 人 1 日あたりのリハ提供
量が 7.1 単位(全国平均 6.3 単位)、自宅復帰率が 90.5 %
(全国平均 71.8 %)である。今回当院回復期病棟を経由
し比較的早期自宅復帰が可能となった症例を経験したの
で報告する。
【症例】60 歳代、男性、右利き、心原性脳塞栓症
入院 2 日前より活気がなくなり当院受診。頭部単純 CT
にて左小脳、左後頭葉に脳梗塞を認め保存的加療目的で
SCU 病棟へ入院し当日よりリハビリを開始した。
初 回 評 価GCS
(E4V4M6)MMSE
(16/30)
、CBA
(16/30)
、
麻痺なし。介入当初ぼんやり感が顕著で耐久性が低く集
中的なリハビリが困難であったため 1 日に複数回に分け
ての介入を行っていた。
P1-1-06
急性期治療が終了した入院 7 日目に SCU 病棟から回復期
病棟へ転棟された。この頃から見えにくさの訴えがあり、
右同名半盲と半側空間無視が疑われた。また、言語性の
記憶障害が顕著だったため、内的ストラテジーの賦活化
とメモ取り課題などの代償手段の確立を目指し訓練を実
施。 退 院 時 GCS(E4V5M6)、MMSE(21/30)、CBA
(22/30)であり、記憶障害に対する病識も現れ、自発的
にメモを取る姿が見られ入院 32 日目に自宅退院された。
【考察】
これまで当院では急性期から積極的なリハビリを行い、
急性期病院でありながらも回復期の役割を一部担ってき
た。しかし、回復期病棟が開設された現在では急性期治
療終了後速やかに回復期病棟へ移り、在宅生活・社会復
帰を見据えたリハビリが展開されている。
急性期病棟と回復期病棟がシームレスに繋がっている当
院は患者にとって環境変化が少なくストレスを最小限に
抑えリハビリに専念出来ると考えられ、それだけに部門
を超えたスタッフ間の情報共有が重要であると考えた。
応用行動分析的介入をおこないBPSDが改善した重度認知症患者の1症例
山崎正啓 1)、三浦千明 1)、西村友秀 1)、矢作 満 2)
特定医療法人 防治会 きんろう病院 リハビリテーション科 1)、在宅リハビリテーションセンター草加 2)
【はじめに】応用行動分析学とは個人と環境の相互作用を
分析し行動の法則を見出すもので、問題行動の改善など、
ローアップ期(以下;FA)を 3 訓練日とした。摂食量へ
の介入では独立変数は摂食量、従属変数は食事介助者の
医療や教育等の分野に導入されている。重度認知症によ
賞賛とした。BL 期 3 訓練日、介入期を 15 訓練日とした。
り BPSD を認めた患者に対し応用行動分析的介入を行い
【結果】暴言に対する介入では BL 期平均の暴言は 29 回、
大幅な改善が見られたため報告する。【症例紹介】90 歳
適切な言動は 0.3 回、眠気の訴えは 1.3 回であった。介入
代、女性。ADL 全介助。誤嚥性肺炎の治療後、経口摂取
期平均の暴言は 9.8 回、適切な言動は 2.9 回、眠気の訴え
困難、胃瘻拒否のため当院に看取り方向の入院。肺炎後
は 3.9 回であった。FA 期平均の暴言は 1.3 回、適切な言
廃用症候群の診断を受け PT、ST のリハビリが開始。初期
動は 2 回、眠気の訴えは 1.7 回であった。摂食量への介
評価時の認知症行動障害尺度(以下;DBD)は 56/112
入では BL 期平均の摂食量は 0 割、介入期平均の摂食量は
点。会話時は暴言が多いものの、職員により対応を変え
2.3 割だが最終的には全量摂食可能となった。最終評価時
る柔軟さも観察された。暴言の減少、摂食量の向上を目
の DBD は 31/112 点であった。
【考察】本症例は介入に
指したプログラムを立案した。【方法】介入は単一被験者
より暴言の減少、摂食量の増加が認められた。DBD の得
実験法とし、暴言に対して ABA デザイン、摂食量向上に
点も改善しており、BPSD は改善したと言える。症例の行
対して AB デザインを用い同時に実施した。暴言への介
動を分析し意識的に関わりを持ったことで本症例の BPSD
入では独立変数は暴言、感謝の言葉、眠気の訴えの回数
は改善し、看取りを予測していたが体調を維持できたと
とした。従属変数は賞賛と身体接触とした。ベースライ
考えられる。
ン期(以下;BL)を 3 訓練日、介入期を 15 訓練日、フォ
164
P1-1-07
堀田眞弥
柊訪問看護ステーション
ビリテーションを積極的に受け入れている。複数の障害
られるようになり、直接嚥下訓練を導入。聴覚障害によ
を呈した小児に、乳児期から看護、セラピスト共に訪問
るハンディがある中、精神面の発達は著しく、活発なコ
開始となり、就学後までの長期にわたり関わった症例に
ミュニケーションが認められた。3 歳 6 ヶ月で聾学校幼
ついて報告する。【症例】訪問開始時 9 ヶ月の女児、診断
児部入学、発達支援センターにも通所。訪問開始当初は
名: 小 顎 症、CHARGE 症 候群。既往歴: 食道閉鎖症 術
嚥下訓練中心であったが、徐々に言語訓練も導入し、聾
後、動脈管開存症術後、気管軟化症。聴覚障害(ほぼ聾)
学校小学部入学後まで、ST の訪問は継続された。(PT は
あ り。 退 院 ま で の 経 過: 在 胎 36 週 4 日、 体 重 2264g、
1 歳 8 ヶ月、看護師は 6 歳 7 か月にて訪問終了)【まとめ】
普通分娩により出生。生後 2 日目に食道閉鎖症に対し食
当ステーションでの小児の ST 訓練は、嚥下訓練から言語
道吻合術施行、生後 4 か月に動脈管開存症に対し OPE 実
訓練へ徐々にシフトしていく症例が少なくない。本症例
施。その後も上気道閉塞によるチアノーゼが頻回にあり、
のように全身症状が安定し看護師訪問が終了した後も、
生後約 6 ヶ月で気管切開。経鼻経管栄養。小児専門病院
訓練へのニーズは高い。療育機関、学校で補えない部分
にてハビリテーション実施後、生後 9 か月にて退院、在
のコミュニケーション面の発達促進や、給食に関する助
宅療養開始となる。訓練経過:退院 6 日目より ST 訪問開
言など、ST の長期的な関わりが求められる場面は多いと
始。同時期に看護師、PT も訪問開始。ST 介入当初は、唾
考える。
P1-1-08
在宅で行う摂食嚥下訓練がもたらした笑顔
大竹功剛
1
ポスター演題 日目
液腺・口腔内マッサージなどの間接的嚥下訓練を中心に
口頭演題 日目
実施。1 歳を過ぎた頃から、嚥下、咀嚼様の運動が認め
特別プログラム
【はじめに】当ステーションでは、小児の訪問看護、ハ
日 程
嚥下障害、聴覚障害を呈した小児と訪問STの長期的関わり ~ CHARGE症
候群の訓練経過を通して~
1
あいち診療会 あいち診療所野並
は発症後初めての笑顔であり、母親には喜びとともに目
児から笑顔がみられるようになり、その結果、母親のケ
には涙があった。音楽と一緒に身体を揺らすなどで笑顔
アに対する心境にも変化がみられたため、考察する。【対
がみられることが多くなった。【考察】身体面、知的面と
象・方法】10 歳、女児。診断名は乳児重症ミオクロニー
もに重度に障害される重症心身障害児においても、何ら
てんかん。出生は普通分娩。生後 7 ヶ月にてんかん発作、
かのコミュニケーションが可能なことは珍しくない。し
1 歳 1 ヶ月で急性脳症を呈した重症心身障害児である。3
かし、発症後みられなかった笑顔が再度現れたことで母
~ 4 歳に胃瘻造設術、噴門形成術、8 歳で気管食道分離術
親とのコミュニケーションがより深まり、日々負担のあ
を施行された。9 歳時に母親の希望にて訪問 ST 開始し、
るケアの中で心の拠り所として大きな意味を持つことが
お楽しみレベルでの経口を目標に摂食嚥下訓練を実施。
できた。摂食嚥下訓練は単に食事を行うための訓練のみ
しかし、口腔周辺の過敏性が強いことに加え嚥下反射は
ならず、その手技において患者の笑顔を機能的に引き出
ほとんど認められず、表情においては泣くのみの表出で
すことができる可能性があることを体験した。ST は摂食
あった。訓練は全身のリラクゼーション、口腔の過敏性
嚥下訓練を通して笑顔などの情動面への働きかけをして
軽減、機能的な口腔ケアを中心に実施した。経過ととも
いるということも忘れてはならない。
に、口腔の刺激に対し舌運動からの嚥下反射が誘発され
るようになり、ジュース類を使用した直接的嚥下訓練が
165
2
2
日目
それに伴い本児から笑顔がみられるようになった。これ
た。摂食嚥下訓練を行っていくと、当初の目的以外にも
ポスター演題
可能となった。徐々に少量数口ずつの摂取が可能となり、
お楽しみレベルでの経口摂取を目的に訪問 ST が介入し
口頭演題 日目
【はじめに】今回、在宅における重症心身障害児に対し、
P1-1-09
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
失語症と片麻痺が武器になる 第2報 ~失語症漫才やってまっせ~
碓井理知、室之園江美、上田紀子、山川 潤
アクティブ訪問看護ステーション
【はじめに】第 15 回本学会にて発表した利用者のその後
を知ってもらいたい。」という思いが強くなってきた。ま
の活動経過を報告する。弊社デイサービスで支援中の中
た、人を笑わせることができれば ST 終了という当初の約
軽度ブローカ失語症者と『失語症漫才』へ取り組んだ。
束と更なる活動・参加の場を考え、ST(入社 2 年目)と
【症例】M 氏、50 代、男性、右利き、大工、妻と小学生
コンビを組む『失語症漫才』を企画した。M 氏より「お
~大学生までの 3 人の子どもと同居。性格:明るく世話
もろそうやな。」と即答があり失語症を活かしたネタを考
好き、楽天家。診断名:左被殻出血(H21)。退院後訪問
え練習と工夫を重ねた。現在では療法士養成校の学園祭
ST と弊社デイサービスで言語療法実施。ADL:中軽度右
や授業の一環として主に学生を対象に披露している(無
片麻痺あるも自立。1 時間程度杖歩行し電車移動も可能。
償)。最近ではネタ作りにも積極的に参加している。【ま
【経過】「仕事したいな。」という思いを聞き失語症と片麻
とめ】失語症者と ST の『失語症漫才』の取り組みをおこ
痺が武器になる就労先を考え療法士養成校での有償実技
なった。M 氏の感想は「漫才大会に出る。」との冗談が聞
モデルという仕事を提案し実行。現在も定期的に養成校
かれた。笑わせる成功体験を積み重ねることで会話や生
からの依頼を受けている。1 年前より就労継続支援 A 型で
活に自信が持てるなどの変化をもたらすことができるの
の就労も開始し当初の目標額の月額 3 万円以上の収入を
ではないかと考える。今後は漫才で爆笑をとることと共
得ている。【現状】第 1 報時に比べ自身から話し始める機
に有償にて多方面で活躍できる失語症者を目指し支援し
会が増えており、単独で養成校へ自身の売り込みチラシ
ている。
をもって営業活動を行うなど以前にも増して活動的意欲
ポスター演題 日目
1
的になってきている。それに伴い M 氏の「もっと失語症
P1-2-01
斜位、リクライニング0度側臥位、リクライニング0度仰臥位で嚥下造影検
査を実施する際の当院での工夫
大黒大輔、井爪理恵子、土岐明子、渡邉 学
大阪府立急性期・総合医療センター リハビリテーション科
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】
(2)0 度側臥位:0 度側臥位は嚥下反射の惹起位置が咽
嚥下障害の臨床において姿勢調整は頻繁に実施される
頭上方へ変化する、咽頭貯留スペースが形成され嚥下前
代償嚥下手技である。当院では(1)リクライニング位、
誤嚥、嚥下後誤嚥が軽減する、喉頭前庭部が登り傾斜と
(2)リクライニング 0 度側臥位(以下 0 度側臥位)、(3)
なり咽頭残留物が喉頭へ流入することが防がれる、もし
リクライニング 0 度仰臥位(以下 0 度仰臥位)を実施して
くは喉頭侵入物が声門下へ落下しにくい、食塊の通過経
いる。しかし多くの施設では VF 時(1)リクライニング
路が喉頭を避けて下側を通過する、体幹が安定する、自
位では正面像が撮影できず、
(2)0度側臥位や(3)0度仰
己摂取が可能となるといった効果が期待される。VF では
臥位では車椅子が利用できないため一般的な方法では撮影
撮影台を水平に設置し患者を 0 度側臥位で寝かせ、管球
が困難な場合がある。そこで当院での工夫を紹介する。
を患者の上方に位置させて側面像を撮影している。
【紹介】
(3)0 度仰臥位:0 度仰臥位は当院では口腔期障害が重
(1)リクライニング位:VF で正面画像を撮影する際、
度で全く送り込めない患者に対して実施している。福村
リクライニング位では車いすを設置できるだけのスペー
(2014)はその他の利点として姿勢が安定する、頸部前
スがなかったり、椅子の背もたれが映るため実施できな
屈の管理がしやすい、姿勢介助が楽にできるため在宅や
かったりする場合がある。そこで管球に対して正面と側
施設の介護負担が軽減される事を挙げている。側面像の
面との中間の位置である斜位を用いることで食塊の通過
撮影には昇降機能付きストレッチャーを用いて実施して
経路が確認できる。正面画像ほど正確ではないが十分参
いる。尚、0 度仰臥位でも調味料ボトルを使用することで
考になる。また頸部回旋時の評価も可能である。
ミキサー食や全粥程度の自己摂取は可能である。
166
P1-2-02
術後超早期経口摂取の妥当性の検証
独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター 中国がんセンター リハビリテーション科 1)、
独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター 中国がんセンター 呼吸器外科 2)、
独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター 中国がんセンター 臨床研究部 3)
つといわれている。当院の呼吸器外科では、患者の状態
時 間 8 分 だ っ た。 術 当 日 の 嚥 下 評 価 は、RSST5.42 回、
が良好であれば術後 4 時間後の超早期離床を実施し、術
MWST5、FT5、 藤 島 Gr9、 臨 床 重 症 度 分 類 6 だ っ た。
当日から経口摂取を開始している。一般的な肺の手術で
術翌日の嚥下評価は、RSST5.42 回、MWST5、FT5、藤
は翌日から経口摂取を開始するケースが多く、早期経口
島 Gr10、臨床重症度分類 7 だった。【結論】術当日と術
摂取の際は誤嚥性肺炎などの合併症に注意する必要があ
翌日の嚥下機能に大きな差を認めなかったことから、術
る。今回、術当日と術翌日の嚥下機能を評価し、術当日
当日からの経口摂取開始は妥当であることが示唆された。
から経口摂取を開始することの妥当性を検証した。【方
今後も症例数を増やし、早期経口摂取の妥当性について
法】2015 年 9 月~ 2015 年 11 月の間に当院で肺の手術
検証を続けたい。
を施行された患者のうち、超早期離床・超早期経口摂取
対象となった連続 12 例を対象とした。術当日と術翌日に
嚥下評価を実施し、結果を比較した。嚥下評価では、反
口頭演題 日目
績】対象患者の平均年齢は 60.5 歳。平均手術時間は、2
特別プログラム
【目的】早期離床は、外科周術期管理の重要な課題の一
日 程
高橋雄介 1)、出本紀子 1)、厚谷幸男 1)、松川陽平 1)、林 宏則 1)、原田洋明 2)、山下芳典 2,3)
1
復唾液嚥下テスト(以下 RSST)、改定水飲みテスト(以
下 MWST)、フードテスト(以下 FT)、藤島の摂食嚥下
Grade(以下藤島 Gr)、臨床重症度分類を用いた。12 症
P1-2-03
脳血管性認知症患者における認知機能低下と摂食嚥下障害の関連
福永真哉 1,2)、須貝友紀 1)、起塚友美 1)、中川小耶加 1)、飯田咲乃 1)、服部文忠 2)
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 1)、長尾病院 2)
有意な負の相関を認めた。2. 口腔通過時間、咽頭通過時
機能低下と摂食嚥下障害の関連は、いまだ明らかになっ
間、舌骨拳上時間と HDS-R との相関では、すべての指標
ていない。今回、脳血管性認知症患者に対し VF 検査によ
で有意な負の相関を認めた。【考察】レビー小体型認知症
る嚥下動態ならびに機能的自立度評価表の FIM と簡易知
患者では認知機能低下と口腔期の摂食嚥下障害が関連す
能評価スケールの HDS-R を用いて、脳血管障害患者の嚥
ることが報告されている。脳血管認知症患者においても
下機能と認知機能の関連を検討した。【対象】201X 年か
FIM の認知得点ならびに運動・全体得点と口腔期の指標
ら約 2 年間に嚥下機能と認知機能を経時的に評価可能で
である口腔通過時間の間で有意な逆相関を認め、機能的
HDS-R の得点が 20/30 点以下で脳血管性認知症と診断
自立度の認知機能低下ならびに運動機能低下と準備期・
された患者(男性 9 名、女性 3 名、平均年齢 80.6 歳)を
口腔期の摂食嚥下障害との関連が示唆された。しかし、
対象とした。
【方法】嚥下動態は、バリウム含有スライ
HDS-R と口腔通過時間、咽頭通過時間と舌骨拳上時間で
スゼリー 3g、リクライニング位 30 °で命令嚥下をさせた
は、すべての指標で有意な逆相関を認め、脳血管性認知
VF 画像を分析した。VF 画像は準備期と口腔期の指標と
症患者の認知機能低下は準備期・口腔期のみならず、咽
して口腔通過時間、咽頭期の指標として咽頭通過時間・
頭期の摂食嚥下障害とも関連していることが示唆された。
舌骨拳上時間を測定した。それぞれの測定時間と FIM 全
体、FIM 認知、FIM 運動、HDS-R の各項目との相関を求
167
2
2
日目
時間と FIM 全体・認知・運動では、口腔通過時間のみに
て対処が困難な問題となっている。しかし、これら認知
ポスター演題
めた。【結果】1. 口腔通過時間、咽頭通過時間、舌骨拳上
嚥下障害は、食の異常行動として医療の介護現場におい
1
口頭演題 日目
【目的】近年、高齢人口の増加に伴い、認知症に伴う摂食
ポスター演題 日目
例の RSST の平均値、その他の値は中央値を用いた。
【成
P1-2-04
特別養護老人ホームにおける食形態変更の選択について
日 程
源間隆雄 1)、早川めぐみ 2)、柴山博美 2)、高尾 絢 2)
札幌麻生脳神経外科病院 リハビリテーション科 1)、特別養護老人ホーム はっさむはる 2)
特別プログラム
【はじめに】特別養護老人ホームにおける要介護度は近年
の発生頻度も低下傾向である。また、他職種における食
益々重度化し、「食」を安全かつ生活の一部としての楽し
支援ならびに口腔ケアの関心が高まり、定期的なミール
みとして、各施設における様々な取組みがなされている。
ラウンドの開催へとつながった。介護職からは食支援に
今回、言語聴覚士がいない特別養護老人ホームにおいて、
おける要点、注意すべき点が時系列で理解可能となった
他職種が連携し経口摂取可能な利用者様の食形態見直し
ため適切にアセスメントし統一したアプローチが出来る
が可能となるよう、食形態変更に関わるフローチャート
ようになったとの声をいただいた。医科歯科連携、介護
を作成したので報告する。
【方法】経管栄養、胃ろうを
力向上を重点に最期まで食べられる安全な食支援の一助
用いず経口摂取のみで栄養摂取されている入所者に対し、
のために活用していきたい。
食事動作自立もしくは介助を必要とする場合とに分けて、
口頭演題 日目
1
ミールラウンドと口腔内診査から評価できる項目を中心
に、歯の数、ムセの有無、食べこぼしの有無、食事時間
の長短、口腔内の食物残渣の有無によって食形態を選択。
食形態変更後、一週間は複数名での食事評価を実施し安
全に摂取可能か評価を実施した。【結果・考察】口腔期の
評価が必要なため、歯科医師、歯科衛生士における歯科
往診の重要性が今まで以上に高まり、口腔ケアの関心が
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
高まった。そのことによって施設内における誤嚥性肺炎
P1-2-05
失語症と失算を呈し、理解・表出能力と計算能力の改善に解離があった一症例
神里美咲 1)、阿部信之 1)、大井清文 2)
公益財団法人 いわてリハビリテーションセンター 機能回復療法部 言語聴覚療法科 1)、
公益財団法人 いわてリハビリテーションセンター 診療部 2)
【はじめに】多発性脳梗塞により失語の改善に比し、失算
は 0/20 であり、数字の表出の障害も認められていた。カ
が重度に残存した 1 症例を経験し、本症例の計算障害の
レンダーを見て日付を正しくポインティングすることは
特徴について考察したので報告する。【症例】32 歳、女
可能であった。入院 4 ヶ月目の SLTA 計算では指で数字を
性、右利き。【現病歴】X 年 5 月失語と右片麻痺で発症、
数えながら一桁同士の加算のみ概ね可能となった。5 カ
頭部 MRI では両側 MCA 領域に今回の梗塞巣を、MRA で
月後には数字を○で表記し数えるという方法で一桁同士
はモヤモヤ病の所見あり。保存的加療後、同年 6 月リハ
の加減算が可能となり、一年後は一桁同士の加減算は暗
ビリ目的に当センターに転院。入院時重度の混合性失語、
算で可能となった。【考察】理解・表出能力と計算能力の
発語失行および右側に強い四肢不全麻痺を認め、頭部 CT
改善に解離があった要因として、深田らが述べる非言語
では左側(右側は一部)前頭葉白質に斑状の多発性低吸
性の知的能力の低下が影響していると考えられる。本症
収域と左頭頂葉~側頭葉(特に角回領域)に低吸収域を
例の非言語性の知的能力の低下は評価結果により示され、
認めた。最終的に ADL はほぼ自立し、同年 11 月自宅退
計算能力に影響していることが示唆される。今後、非言
院となった。X + 1 年 1 月症候性てんかんを発症、同年 3
語性の知的能力について深め、本症例における計算能力
月当センターに再入院。再入院時の所見は、中程度の運
の障害の要因について更に検討していきたい。
動性失語、右不全片麻痺であり、同年 5 月には運動性失
語は軽度となり、HDSR27/30、コース立方体 IQ81.3、
聴覚的把持力検査 3 単位不安定まで改善し、退院となっ
た。【計算障害の経過】初回入院時、SLTA 計算について
168
P1-2-06
鈴木淳子 1)、能口祥子 2)
社会医療法人生長会 ベルランド総合病院 言語聴覚療法室 1)、
社会医療法人生長会 阪南市民病院 リハビリテーション室 2)
2/10、模写は可能だった。【今回所見】X 年 11 月、自宅
右上下肢の脱力と失語症で発症、左前頭葉から頭頂葉に
階段で転落、受傷、右半身の麻痺を認めていた。CT にて
かけて脳動静脈奇形を認め全摘術を行った。頭部 MRI で
左前頭部、頭頂部に硬膜下血腫、中前頭回を含む左前頭
は、左前頭葉から頭頂葉と脳梁幹前半・後半、膨大部に
葉に脳挫傷を認めた。第 6 病日に行った SLTA は、口頭命
損 傷 が 認 め ら れ た。X-21 年 2 月 SLTA を 施 行。 語 の 列
令に従う 9/10、呼称 20/20、語の列挙 6 語で、失語症は
挙、書字、計算が低下し、ごく軽度の失語症を認めたが、
1 カ月後計算以外は改善した。脳梁離断症状は左手の触
ごく軽度だった。右手書字は当初麻痺のため空書を行い、
特別プログラム
【症例】40 代、右利き男性。【初回所見】X-22 年 11 月、
日 程
20年前に脳梁損傷による左手の失書を認め、今回新たに右手に書字障害を
認めた一例
「大」「下」が想起できない一方 WAB 漢字の構造を言うが
5/6 可能であった。左手書字は SLTA 漢字単語書字 1/5、
手に強い観念運動失行と両手の観念失行を認めていた
同書取 2/5、仮名単語 1/5、同書取 3/5、仮名 1 文字書取
が、X-21 年 11 月に行った検査では、左手の観念運動失
9/10 であった。触覚呼称は右手 11/11、左手 7/11 だっ
行が軽度に残っている他はほぼ消失していた。触覚性呼
た。【考察】本例の離断症状の一部は 20 年以上経過して
称は右手 11/11、左手 2/11 だった。左手書字の検査で
も残存していた。左手の離断性失書、右手の書字障害に
は、仮名 1 文字マッチング 35/35、聴いた仮名 1 文字の
ついて若干の考察を加え報告する。
指さし 35/42 → 42/42、仮名 3 ~ 5 文字を並べ替え有意
口頭演題 日目
覚性呼称障害、左手の失書などを呈し、また失行は、左
1
味語を作る課題 8/15 → 15/15 であった。書取は漢字 1
P1-2-07
ポスター演題 日目
文字開眼 3/10、閉眼 2/10、仮名 1 文字開眼 7/10、閉眼
鏡映文字が残存した1症例の検討
神田諒也
1
社会医療法人 孝仁会 釧路訪問リハビリセンター
たが、正誤の判別はつかなかった。鏡映文字に対するア
発症より約 8 ヶ月経過した時点においても鏡映文字が残
プローチを退院まで約 6 ヶ月間実施した。仮名での鏡映
存した症例を経験した。先行研究や文献をもとに若干の
文字は消失したが、漢字での鏡映文字は残存した。また、
考察を加え報告する。【症例】70 歳代、男性、右利き、
最後まで書字した文字の正誤の判別ははできなかった。
【考察】鏡映文字を呈した要因として左右失認とそれによ
病院入院。X 年 5 月、B 病院転院。SLTA の結果から軽度
る利き手の混乱、病識の低下と注意障害が大きく関係し
の失語症を認めた。その他に左右失認、手指失認、注意
ているのではないかと考えた。本症例は、左右失認によ
障害を認めた。利き手はどちらかという質問に対し、「動
り利き手の混乱が生じたことで左手の外側方向への運動
くからこっちかな」と非利き手である健側を示すなど、
抑制が不十分となり、書字運動の統制がされなくなった
混乱している様子がみられた。麻痺に対する自覚はあっ
ものと思われる。また注意障害により書字のモニタリン
たが病態に対し重大視しない発言がしばしば聞かれた。
グが障害されたことや、病識の低下により誤りを重大視
していなかったことも残存した要因ではないかと考えた。
逆転した文字を書いた。続けて幾つかの漢字単語、仮名
鏡映文字に対するアプローチとして出現機序の検討と仮
単語を書き取りするよう指示すると、全ての文字が左右
説に沿ったアプローチが必要であると考える。
逆転していた。筆順・運筆共に左右逆転している点以外
に誤りはみられなかった。名前、漢字単語、仮名単語を
書き終えた後に音読するよう指示すると音読可能であっ
169
2
日目
【経過】X 年 5 月、名前を書字するよう指示した際に左右
2
ポスター演題
病前読み書き異常なし。X 年 3 月、左視床出血を発症し A
口頭演題 日目
【はじめに】今回、左視床出血により鏡映文字が出現し、
P1-2-08
左前頭葉の梗塞で失書と失算を呈した1症例
日 程
谷川弘樹 1)、藤田 学 1)、薮野洋子 1)、羽多野洋子 1)、浦郷かおり 1)、津田朋子 1)、
友岡綾菜 1)、松尾喜子 1)、北村 優 1)、桑野友里 1)、右田 栞 1)、西川 卓 1)、福永真哉 2)、
薛 克良 1)、服部文忠 1)
特定医療法人順和 長尾病院 1)、川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 2)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】左中前頭回を中心とする梗塞により失書と失
計算と診断した。前頭葉機能の評価では作業記憶や語の
算を呈した症例を経験した。左中前頭回の障害でこれら
流暢性に低下を認めた。【考察】本症例は左の前頭葉梗塞
が出現してくることが知られている。失書については報
で失書と失算を呈した症例である。前頭葉性の失書では
告も多い。一方、失算の発現機序については未だ議論が
空間における配置の障害が指摘されており、本例でも仮
多い。今回、前頭葉性の失書と失算の発現機序について
名の配列順序や漢字の偏や旁の組み合わせで誤りを認め
検討を加え報告する。【症例】80 歳代、男性、右利き。X
た。これが数の位取りにも影響すると考えた。計算にお
年 9 月のある日、右上下肢に麻痺が出現し A 病院へ入院。
いては二桁以上の数について繰り上げ繰り下げなど数の
画像により、左前頭葉で中前頭回を中心とする梗塞巣を
移動の約束に従わなければならないが、空間における配
認めた。第 21 病日に入院した。【神経心理学的所見】意
置の障害がこの処理にも影響を与えたと考えた。失書と
識は清明で、明らかな認知症状は認めなかった。WAB 失
失算の両者において空間における位置関係の把握の障害
語症検査 AQ91.4。聴覚的理解は保たれ呼称や復唱も正
が関与していると考えた。また、これらの処理を行う際
常で錯語も認めなかった、音読や読解も保たれており失
に作業記憶が少なからず影響すると思われる。この障害
語症状は認めなかった。一方、漢字の想起障害や仮名の
が失書や失算の症状を修飾していると考えた。本例はア
配列順序の誤りなどを認め、漢字と仮名が同程度に障害
テローム血栓性の脳梗塞で、中前頭回を中心に梗塞を認
された純粋失書と診断した。また、暗算や筆算、位取り、
めた。ブローカ領野は損傷を免れたため失語症は呈さな
お金の支払い、時計の読み、数唱などに障害を認め、失
かった。
P1-2-09
左後大脳動脈閉塞症により視覚性の認知障害と呼称障害を呈した1症例
北村 優 1)、藤田 学 1)、薮野洋子 1)、羽多野洋子 1)、浦郷かおり 1)、津田朋子 1)、
友岡綾菜 1)、松尾喜子 1)、桑野友里 1)、谷川弘樹 1)、西川 卓 1)、右田 栞 1)、福永真哉 2)、
薛 克良 1)、服部文忠 1)
特定医療法人順和 長尾病院 1)、川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 2)
【はじめに】左後大脳動脈領域の広範な梗塞により、視覚
ンティングやカテゴリー分類、意味的連合は不良であっ
性失認と視覚性失語の症候を併せもつ症例を経験した。
た。視覚性失認とともに、純粋失読や健忘性失語、純粋
臨床経過を観察し、その病態の推移について検討した。
健忘も認めた。【経過】視覚性失認は徐々に改善を示して
【症例】90 歳代の右利き女性。X 年 6 月のある日、右側
おり、発症 3 カ月後の時点では、立方体の模写は可能と
のものが見えにくくなり、A 病院へ入院した。CT や MRI
なり、ポインティングやカテゴリー分類も可能となった。
で左後大脳動脈灌流域に広範な塞栓性の脳梗塞を認め
視覚性呼称の正答率は 50 %程度であったが、入院時にみ
た。第 27 病日、入院した。なお X - 26 年、左上顎洞悪
られなかった迂言や、ジェスチャーでの正しい反応が増
性腫瘍の手術を受け、その後左眼は失明した。【神経学的
えてきた。【考察】入院当初、単純な形態知覚や物品の意
所見】左眼は失明し、右同名性半盲をみるが、視覚性認
味記憶は概ね保たれているものの、視覚性の認知障害を
知機能の検査は可能であった。【神経心理学的所見】形の
優位に認めており、視覚性失認の様相を呈していた。し
異同弁別に遅延はあるものの可能、単純な図形や文字の
かし、視覚性失認が改善するなかで、視覚性呼称の障害
マッチングも可能であった。図形の模写では、複雑な立
がより顕在化し、視覚性失語を優位とした状態へと変化
方体で誤りを認めたが、丸や四角は可能であった。物品
した。視覚性失認から視覚性失語へと推移した症例の報
の視覚性認知は不良で、無反応なものもあった。同課題
告がある。両者の臨床像が混在した状態が持続する症例
の触覚性認知の検査では、58 %まで改善した。さらに言
も存在することであろう。
語性定義による呼称では、95 %の正答率であった。ポイ
170
P1-3-01
香月 靜 1)、能代育江 2)、佐藤奈津子 1)、吉野眞理子 3)
足立区障がい福祉センター あしすと 社会リハビリテーション室 1)、
医療法人社団永生会永生病院リハビリテーション部 2)、筑波大学人間系 3)
果、Kearns ら(2008)が述べたように複数の目的、評
の 検 討 の 必 要 性 が 述 べ ら れ て き た(Kearns ら , 2008;
価視点を確認でき、ST 同士が多くの視点を共有してい
Simmons-Mackie ら , 2014)。しかし、グループ訓練の
た。次に、「グループ訓練に参加する失語のある人の変容
効果測定を有効にするためには曖昧な評価視点を明確に
のプロセス」について修正版グラウンデッド・セオリー・
する必要がある。本研究では、言語聴覚士(以下 ST)が
アプローチ(M-GTA)に基づいて分析を行なった。その
グループ訓練の施行目的をどのように考え、どのような
結果、変容プロセスは、大きく二つに分けられ、グルー
評価視点にて訓練を施行しているかを明確にした上で、
プ参加時の気持ちの葛藤から始まり、「仲間の中に自分を
失語のある人がグループ訓練を経て変容していくプロセ
位置づける段階」と「失語である今の自分を見つめる段
スをモデル化し、評価作成の基礎的データを得ることを
階」と進み、次第にグループを超えた社会への広がりへ
と繋がっていくことが明らかになった。
【方法】経験 10 年以上の ST 11 名に半構造化面接調査を
【考察】結果よりグループ訓練の支援では、まず基盤とな
実施し、グループ訓練の目的と評価視点、および失語の
る仲間の中に自分を位置づける段階を支援し、自分自身
ある人がグループ訓練を通してどのように変容していく
を見つめる段階の支援に進むという二つの段階を考慮す
かについて聴取した。聴取内容を、質的分析法を用いて
る必要があると考えられた。グループ訓練の評価も二つ
分析した。
の段階に分けて行うことで、グループの中での変化を捉
【結果】面接調査から「グループ訓練の目的」「評価視点」
P1-3-02
えやすくなる可能性があることが示唆された。今後、評
価指標の作成、支援への活用が課題である。
絵カード呼称訓練アプリActVoiceSmartの音声認識性能の評価
黒岩眞吾 1)、堀内靖雄 1)、村西幸代 2)、古川大輔 2)、鈴木弘二 3)、石畑恭平 4)、森本暁彦 4)
千葉大学 大学院融合科学研究科 情報科学専攻 1)、君津中央病院 2)、( 株 ) エスコアール 3)、( 株 ) ロボキュア 4)
音声は保存されない。その結果、保存された音声は延べ
ブレットアプリ ActVoiceSmart(AVS)を開発した。ア
988 あった。発声の正誤判別精度は ST ではない情報系の
プリには利用者が自身の発声を音声認識で確認する機能
学生 1 名(対象とは面識なし)が録音された音声を平仮
がある。本発表では、音声認識により発声の正誤判定を
名で書き起こした音節列と、音声認識結果の音節列を比
行うという観点から実施した評価実験結果について報告
較することで行われた。
た発声は 656(正答率 66.4 %)であった。これに対し、
型失語 1 名。喚語困難軽度から中程度で全員が発語失行
音声認識が正解発声を不正解とした誤りが 54.3 %(356
を伴う。
/ 656)、不正解を正解とした誤りが 7.5 %(25 / 332)
あった。後者は、音節の一つがあいまいで、電池が「れ
語彙度ランク A ~ C の 100 語に対し AVS の絵カード訓練
んち」等と聞こえてしまった場合が 13 例、音素もしくは
画面の音声認識を利用し呼称テストを行った。提示順は
音節の一つの発声が弱く脱落して聞こえてしまう場合が
シャッフル機能を使い毎回ランダムに並べ替えた。100
10 例、発声速度が遅く釜が「かんま」など音節が挿入し
語の評価を 3 回、1 週間隔で言語訓練時に実施した。音声
て聞こえてしまった場合が 2 例であった。
認識ボタンをタッチすると音声入力が可能となり、音声
【考察】明らかな誤答を正解としてしまう例はなく、「機
が検出されると音声認識が行われ音声も保存される。音
械は厳しい」との理解のもと音声認識による発声評価は
声が検出されない等の理由により音声認識できない場合、
可能であると考えられる。
171
2
日目
【方法】アクトカード 1、2 巻から、モーラ数 2 ~ 3、日常
2
ポスター演題
【結果】学生により対象が正しい呼称を行ったと判定され
【対象】発症から 2 年以上経過した運動型失語 3 名、健忘
1
口頭演題 日目
【はじめに】失語症者向けの絵カードを用いた呼称訓練タ
する。
1
ポスター演題 日目
等を、文書-コード・マトリックスで確認した。その結
口頭演題 日目
目的とした。
特別プログラム
【 目 的】 失 語 の あ る 人 の グ ル ー プ 訓 練 で は、 効 果 測 定
日 程
グループ訓練に参加する失語のある人の変容プロセス:言語聴覚士への面接
の質的分析から
P1-3-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
聴覚的刺激を前刺激として用い、呼称能力改善をきたした症例
山中絵里加、平賀深愛、井場木祐治
医療法人社団 明徳会 十全記念病院 リハビリテーションセンター
【はじめに】中等度の運動性失語を呈した症例の呼称能力
か月後頃よりいらだつことが少なくなり、自発話が増加
改善を目的に聴覚的刺激を前刺激とした遮断除去法を用
し、他者へ話しかけることがみられるようになった。発
いた。結果として呼称能力の改善、また他モダリティに
症 5 か月後の最終 SLTA 評価では、聴覚的理解は短文レベ
おいても改善が見られた症例を経験したのでここに報告
する。
ル。呼称 16/20。語の列挙 3 語。書字は単語レベル。
【考察】呼称訓練では音読を前刺激として用いると効果的
【症例】60 歳代男性。右利き。右上下肢の痺れと不全片
であるといわれている。しかし本症例は初期評価より聴
麻痺、構音障害出現し A 病院入院。左前頭葉梗塞により
覚的理解が良好であったため、聴覚的刺激を前刺激とし
中等度失語症、左上下肢の軽度麻痺残存。発症 1 か月半
てアプローチを行った。結果として呼称能力の向上、ま
後に当院入院。
た他モダリティの全体的な改善が認められた。その結果、
【神経学的所見】軽度右片麻痺。構成障害。
発話に対する自信が生まれ、病棟生活でのコミュニケー
【神経心理学的所見】RCPM:28/36 点。SLTA:聴覚的
ション増加につながったものと考えられる。遮断除去法
理解は単語レベル、呼称 7/20。語の列挙 0 語。音読・読
において前刺激の選択は効果的なものを捜し、より計画
解は短文レベルより低下。書字は単語レベルより低下。
的行うべきであることが再確認された。
【経過】初期評価時、喚語困難強く言えないことに対して
の苛立ちや諦めてしまう様子が認められる。また発話に
対する恐怖感も見られた。訓練としてまず聴覚的理解訓
ポスター演題 日目
1
練を行い、その後同じ単語で呼称訓練を行った。発症 2
P1-3-04
発症後5年7ヶ月経過した発語のない重度失語症例への言語聴覚療法~音楽
療法を導入し、効果と要因について考察
庄司友里恵、関 郁史、大村雅慶
医療法人社団アンフルール 介護老人保健施設あさがお
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
[ はじめに ] 失語症への言語機能のアプローチとして音楽
表は著変なし。part3 では 17 点から 30 点に上がり、歌
を導入する事はしばしばみられる。今回、重度失語症者
唱では口型の動きが 2 フレーズから 1 曲通して可能とな
の言語療法に音楽療法を導入し、効果と要因を考察した
り、歌声の表出も聴かれた。理解面では最終時に重度失
ので報告する。[ 症例 ] 女性 77 歳 右利き 脳出血発症
語症検査は満点だった為 SLTA を追加し、聴覚的理解は単
から 5 年 7 ヶ月経過。右片麻痺、口腔顔面失行、重度の非
語・短文で 70 %、読解では単語で 60 %だった。訓練を
流暢型失語症。ADL はほぼ全介助。コミュニケーション
通し表情の変化や口頭反応が見られた。[ 考察 ] 一般的に
は受身的で表情変化に乏しい。簡単な yes-no 質問には頷
右半球は話し言葉の抑揚・リズム等のプロソディの処理
きや首の横振りがみられるが反応は曖昧。[ 研究方法 ] 言
に関連するといわれている。今回はそれらの機能の刺激
語療法(週 1 回個別)は free talk、日付の確認、聴覚的
により歌唱での口型の動きや歌声の表出場面の出現に繋
理解、絵と文字選択、単語の復唱を行った。音楽を導入
がったと考える。また本症例は病前より音楽が好きだっ
した言語療法(週 2 回個別)では言語聴覚士(ST)
、音楽
たことも影響していると考える。表情や口頭表出の変化
療法士(MT)と本症例の 3 名で実施し、free talk、口腔
では症例と関わる時間が増えることで症例との信頼関係
運動、体操、歌唱で介入。評価は開始前と 5 ヶ月後に重
が築かれ、安心して接することができ、コミュニケー
度失語症検査(最終時のみ標準失語症検査(SLTA))を
ション意欲の促進に繋がったのではないかと考える。言
行った。[ 結果 ] 重度失語症検査の導入部では口頭反応は
語機能の回復する可能性が考えられるため継続的に行っ
初期は 0 点、最終では無声音で口型の自発的動き(挨拶
ていきたい。
や名前等)がみられ 6 点であった。part1 と 2、行動観察
172
P1-3-05
失語症の疑似体験による効果
広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科
【はじめに】失語症は障害が目に見えないため周囲から理
想のカード総数は 180 枚で、11 のテーマが抽出された。
「伝わらないという事実を知る(カード総数の 34 %)
」と
ス経験が疑似体験で可能だろうか。疑似的な表出困難な
ともに、伝わらないことによる苛立ちやもどかしさと
状況が、体験者にどんな思いを喚起させ、失語症者の心
いった「否定的な気持ちを持つ(22 %)
」
。
「伝えるため
情の推測に役立つかどうかを検討した。【方法】対象は看
の 工 夫 を 考 え る(11 %)」 が、 伝 わ ら な い こ と に 困 惑
し、疲労する(9 %)」。一方「伝わった時は喜びを感じる
聞き手役。失語症者役には言葉の使用を一切禁じ、非言
(7 %)」、「聞き手の理解しようとする態度に、伝達意欲が
語手段のみで伝えてもらった。伝達課題は日本版リバー
継続(4 %)」していた。さらに少数ではあるが、「言葉
ミード行動記憶検査(以下 RBMT)の「物語」にある文
の大切さに気づく(4 %)」、「障害を持った当事者の思い
章で、やり取りの時間は 15 分とした。終了後、失語症役
を推測する(3 %)」もみられた。一方聞き手役に伝わっ
はやり取り時の感想を、聞き手役は伝わった内容を記載
た内容の得点は中央値 10(1.5 ~ 19)であった。【考察】
した。【分析】失語症役が記載した感想は、一つの内容ご
疑似体験を通して、伝達された得点の低さは失語症によ
とにカードに転記した。カードにある内容の類似性にし
るやり取りの不便さやストレスを実感させた。一方、失
たがって分類し「1 次カテゴリー」とし、さらに同様に
語症者の心情の推測に至った体験者は少なく体験を生か
す工夫がさらに必要と考えられた。
口頭演題 日目
護学生 42 名。二人一組で、一方が失語症者役もう一方が
特別プログラム
解されにくい。失語症によるやり取りの不便さやストレ
「2 次カテゴリー」に分類し、内容を加味したテーマをつ
日 程
沖田啓子
1
けた。聞き手役に伝わった内容は、RBMT の採点基準に
P1-3-06
山形県言語聴覚士会における地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組み
荒井晋一 1,2)、大友美香 1,3)、田口 充 1,4)
山形県言語聴覚士会 1)、介護老人保健施設リバーヒル長井 2)、三友堂リハビリテーションセンター 3)、
鶴岡協立リハビリテーション病院 4)
少子高齢化の社会情勢により、地域包括ケアシステムの
構築が喫緊の課題となっている。山形県言語聴覚士会
(以下、当会)では、地域ケア会議を community- based
care 及び integrated care を統合する重要なツールと位
置付け、派遣要請には積極的に応じる方針で活動してい
【山形県の概要】
本県は、4 つの地域圏と 35 市町村によって形成されてい
る。高齢化率 29.1 %は、全国で 6 番目の高さにある。
【山形県言語聴覚士会】
いる。会員の多くが都市部に集中し、県内 20 市町村は
ST 不在地域となっている。
【山形県リハビリテーション専門職団体協議会】
平成 27 年度に、当会理事に加え、PT 及び OT の県士会
理事で構成する協議会を設立した。既存の地域リハビリ
テーション連携委員会を下部組織に編入し、3 団体が協同
成 27 年度には 4 地域圏 5 市町で自立支援型地域ケア会議
を開催している。市町村の ST 派遣要請に応じて、当会と
2
県の委託団体が連携し、派遣調整を行う。平成 26 年度に
1 名、平成 27 年度には 8 名を地域ケア会議に派遣した。
【今後の展開】
平成 28 年度には、4 地域圏 15 市町村から 32 名の ST 派
遣要請があり、派遣回数は 150 回以上を予定している。
派遣者数の確保には、官民一体となった協力体制の推進
が肝要である。地域ケア会議では、地域特性に応じた具
体的な助言が求められる。本県には ST 不在の市町村が多
く、派遣協力を通じた各地域の実状把握が重要となる。
また、派遣者のフォローアップ体制の整備、会員及び関
係専門職団体等との規範的統合、地域圏単位での研修会
の開催支援等は、地域包括ケアシステムの構築における
当会の役割と考えている。
173
2
日目
平成 27 年度現在、会員 154 名、理事 13 名で構成されて
県行政機関主導のもと、平成 26 年度に 2 地域圏 2 市、平
ポスター演題
る。
で地域活動を統括できる体制を整備した。
【地域ケア会議への専門職派遣体制】
1
口頭演題 日目
【はじめに】
ポスター演題 日目
沿って 25 点満点で点数化した。【結果】失語症者役の感
P1-3-07
日 程
山梨県言語聴覚士会における広報活動の実践~いきいき山梨ねんりんピック
の参加を通して~
赤池 洋 1,6)、浅川裕斗 2,6)、保坂莉依 3,6)、新田京子 1,6)、石田 礼 3,6)、武井徳子 2,6)、
中村晴江 3,6)、赤池三紀子 4,6)、内山量史 5,6)
山梨大学医学部附属病院 1)、甲州リハビリテーション病院 2)、甲府城南病院 3)、湯村温泉病院 4)、
春日居サイバーナイフ・リハビリ病院 5)、山梨県言語聴覚士会 6)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
【はじめに】1997 年の言語聴覚士法制定以降、言語聴覚
士会では広報グッズ(パンフレット、パネル、のぼり、
士(以下、ST)の有資格者が 25,000 人を超えるまでと
ボールペン)を作製配布に加え RSST や仮名拾いテスト
なったが、依然として理学療法士(以下、PT)や作業療
の体験コーナーを設置し、言語聴覚療法の普及・啓発活
法士(以下、OT)に比べ、人数・知名度共に低いのが
動を行っている。また、相談コーナーでは、相談件数も
現状である。更に ST の約 7 割は医療の現場に所属して
年々増えているものの、地域にはまだ ST の存在・役割が
おり、地域包括ケアシステムの構築が進む社会の中で、
周知されていないことも実感した。
我々 ST がどのような役割を果たしていくことができるの
【終わりに】ST の活躍場が増えている中、医療や地域で
かが重要な課題となっている。山梨県言語聴覚士会(以
ST の専門性が明示できておらず、必要とされる現場で
下、県士会)では地域住民に対する広報活動の一環とし
活躍できていないのが現状にある。今後も地域リハビリ
て山梨県主催の「いきいき山梨ねんりんピック」(以下、
テーション事業における専門職の啓発・広報活動の一環
ねんりんピック)に参加し、一般市民や他団体に向けて
として、ねんりんピックへの参加は ST の専門性を発信す
広報活動を行っている。
る重要な機会であり、若手の会員の参加も多いことから
【活動内容】ねんりんピックは、平成 4 年の第 5 回全国健
県士会活動の理解促進、連携強化の場となっている。
康福祉祭山梨大会から毎年開催されている。県士会では
平成 25 年より PT 士会、OT 士会と合同でリハビリテー
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
ションの必要性と各職種の専門性を紹介している。県
P1-3-08
地域言語聴覚士団体による市民への普及啓発活動の取り組み~第7回八王子
言語聴覚士ネットワーク市民公開講座開催を通して~
邨松美都樹 1)、小泉智枝 2)、平井亜紀子 3)、榊田知美 2)、左田野智子 4)、小林千寿子 5)、
池田麻衣子 5)、遠藤友紀人 6)、山本 徹 7)、福崎聖子 8)、江村俊平 1)、白波瀬元道 9)、
鈴木章吾 9)、渡辺英里子 9)、東川麻里 10)
医療法人社団 永生会 永生クリニック 1)、北原国際病院 2)、北原リハビリテーション病院 3)、
東京医科大学八王子医療センター 4)、多摩丘陵病院 5)、オネスティ南町田 6)、
永生会 訪問看護ステーション とんぼ 7)、訪問看護ステーション ひばり 8)、永生病院 9)、北里大学 10)
【はじめに】八王子言語聴覚士ネットワークは東京都八王
子市を中心に活動する言語聴覚士(以下 ST)の団体であ
り、市民への言語聴覚療法の普及啓発活動として 2008
年より年 1 回、市民公開講座を開催している。これまで
も本学会において、市民公開講座が一般市民・当事者家
族に対し、ST の専門性の理解を促す効果があることを
報告してきた。昨年度の第 7 回市民公開講座開催を通し
て考察した、地域における言語聴覚療法普及のあり方に
ついて報告する。
【目的・方法】老人性難聴に関する基
本的な知識と対応方法を地域に普及啓発することを目的
に、「“ 聞こえにくい ” を放っておかないで~加齢性難聴と
コミュニケーションの話~」というタイトルで開催した。
講義、寸劇の 2 部構成で実施した。第 1 部の講義では、老
人性難聴の原因や症状等についてスライドを用いて解説
した。第 2 部の寸劇では、第 1 部の講義をふまえ、補聴
器の有・無の 2 症例を設定し、実際の生活場面での難聴
の影響とその対応方法について紹介した。ホワイエでは、
ST と補聴器の専門家による個別相談ブースを設置した。
【結果】結果は当日のアンケートから集計した。参加者は
一般市民 59 名、ST43 名と 102 名、例年の講座と比較し
て一般市民の参加が多かった。一般市民の内訳では当事
者 18 名、その家族友人 8 名で半数近くを占めており 70
~ 80 代の高齢者が多く、補聴器装用に関する切実な悩み
が多かった。自由記載欄では講義内容を寸劇で繰り返し
説明したことがわかりやすかった、当事者の体験談が聞
きたいという意見が聞かれた。【考察】難聴は、高齢化率
25 %を超える現在の社会で、地域市民の関心が高く、普
及啓発活動の需要が高いテーマであることを実感した。
理学療法・作業療法が体操教室や認知症予防等で介護予
防の立場を確立する中、ST が関わる介護予防では、難聴
の病態・対応解説やピアサポート作り等、老人性難聴に
焦点を当てることも重要だと考えられた。
174
P1-3-09
経田香織 1)、野田洋子 2)、影近謙治 3)、飯沼由嗣 2,4)
金沢医科大学病院 医療技術部 心身機能回復技術部門 リハビリテーションチーム 1)、
金沢医科大学病院 医療安全部 感染制御室 2)、金沢医科大学 リハビリテーション医学 3)、
金沢医科大学 臨床感染症学 4)
口形を見せるためにマスクをはずす場面を挙げていた。
時の血液・体液曝露の可能性、結核などの感染リスクが
防護具の装着については、口腔ケア時にはほとんどが手
袋、マスクを装着しているが、眼粘膜曝露防止の防護具
かつ質の高い臨床の実施に向けた今後の指針を得ること
(フェイスシールドまたはゴーグル)装着は 7 %と低かっ
を目的に、石川県の ST を対象にアンケート調査を行っ
た。看護師吸引時に立ち会う際には 58 %が何らかの防護
た。【方法】石川県言語聴覚士会会員 126 名を対象に、感
具を装着していたが、42 %は全く防護具を装着していな
染予防対策の 1)知識 2)手指衛生 3)情報共有 4)感染
かった。【考察】回答者の多くが感染対策研修を受け、情
の危険 5)防護具 に関して回答を依頼した。【結果】有
報共有のシステムがあるが、実践の場面では十分に活か
効回答数は 96 名で、回収率は 76 %であった。96 %が感
されていないことが分かった。要因として、臨床場面に
染対策の研修を受けており、83 %が標準予防対策を知っ
おける具体的な感染対策への知識不足や、各施設におい
ているが、感染経路別予防策を知っているのは 66 %で
て感染対策の環境が十分に整っていないことが考えられ
あった。WHO 提唱の手指衛生 5 つのタイミングを 45 %
た。従って、ST の訓練の特殊性に合わせ、感染対策部門
が知っているが、すべてのタイミングで実施しているの
と連携して行うべき感染対策を具体的に検討しトレーニ
は 42 %であった。感染に関する情報共有は 93 %が行っ
ングを行っていく必要があると考えられた。
口頭演題 日目
高い。そこで、ST の感染予防対策の現状を把握し、安全
特別プログラム
【はじめに】言語聴覚士(以下 ST)の訓練時、喀痰吸引
日 程
石川県における言語聴覚士の感染予防対策の実態について -言語聴覚士へ
のアンケート調査-
1
ていたが、臨床上の感染の危険性を 81 %が感じており、
P1-4-01
腹部大動脈瘤切迫破裂後に誤嚥性肺炎を繰り返した円背の一症例
須永茉友美、新井康弘、市川幸代、木村 泰、高橋勇貴、橋元 崇、佐藤健一郎、小野貴之
地域医療振興協会 練馬光が丘病院 リハビリテーション室 心臓血管外科 頭頚部外科
て人工呼吸器管理。POD40 に人工呼吸器離脱、人工鼻
後に人工血管置換術を施行した症例にリハを行ったので
に変更。体位交換で嘔吐もあり、栄養量・回数を調節。
報告する。
【症例】90 歳代男性、円背、病前 ADL 自立。
POD43 に 30m 歩 行 可 能。POD51 に 気 管 切 開 術 施 行。
AAA 切迫破裂(腹腔~総腸骨動脈 70mm)
。緊急の人工
POD56 に室内気に変更。POD59 に 4 回目の誤嚥性肺炎
血管置換術を施行して人工呼吸器管理。POD2 に抜管。
発症。敗血症となり人工呼吸器管理。POD69 に 5 回目
POD6 より ST 介入。【初回 ST 評価】言語機能正常、軽度
の誤嚥性肺炎発症。POD71 に死亡。【考察】腸閉塞は指
認知機能低下あり。嗄声なし。発話明瞭度 2。口腔器官は
摘されなかったが、術後は血圧も低値であったことから
左右差なく舌、口唇、頬運動可、筋力低下あり。RSST1
腸管虚血が生じやすい状態であり、蠕動運動は低下して
回、MWST3a。咽頭に喀痰貯留あり自己排痰困難。血
いた。また、高齢で円背を呈していたため、胃食道逆流
圧も低値で覚醒不安定。摂食嚥下グレード Gr.3 とし間
症も生じやすく、経腸栄養の開始や体動で容易に嘔吐し、
接訓練より開始。栄養は経鼻経管栄養から開始。【経過】
誤嚥性肺炎を繰り返したと思われる。周術期の経口摂取
POD7 に経管栄養中に嘔吐し誤嚥性肺炎発症、NPPV 装
開始の可否は ST が評価を行い、代替栄養を選択する場面
着。POD11 に NPPV 離 脱。POD15 よ り ST 再 開。 口 腔
も多い。早期経口摂取が可能になるよう病態の知識を深
器官・咽喉頭筋の筋力低下あり、喉頭は下垂著明で誤嚥
めて、多職種間で適切な評価や助言を行うことが必要で
し や す い 状 態。POD22 に 100m 歩 行 可 能。POD23 に
ある。
175
2
2
日目
POD33 に 3 回目の誤嚥性肺炎発症。全身状態が悪化し
は増えている。今回、腹部大動脈瘤(AAA)切迫破裂
ポスター演題
嘔吐後に 2 回目の誤嚥性肺炎発症。POD30 に胃瘻造設。
聴覚士(ST)がリハビリテーション(リハ)を行う機会
1
口頭演題 日目
【はじめに】心臓血管外科術後の摂食嚥下障害にて言語
ポスター演題 日目
具体的には摂食訓練、口腔ケア時の血液・体液の曝露や
P1-4-02
日 程
急性期言語障害の予後予測-言語障害スクリーニングテスト(STAD)を用
いて-
江原寛尚 1)、荒木謙太郎 2)
県立広島病院 リハビリテーション科 1)、千葉大学大学院医学研究院 認知行動生理学 2)
【はじめに】急性期の脳損傷症例における言語障害につい
特別プログラム
て、言語障害スクリーニングテスト(以後、STAD)(荒
木ら , 2009)を用いて、退院時の検査成績を初回時の検
査成績を用いて予測、考察したので報告する。
口頭演題 日目
ポスター演題 日目
1
とした。
【結果】各検査の予測式は、言語検査の合計点率= 0.560
+ 0.189 ×「名前」+ 0.182 ×「見当識」+ 0.273 ×「指
【対象】急性期の脳損傷症例 71 例。性別は男性 44 例、女
。構音
示動作」- 0.004 ×「年齢」
(R2=0.73, p<.0001)
性 27 例。 平 均 年 齢 は 69.5 ± 16.3 歳( 範 囲:29-101
検査の合計点率=0.217+0.252×「手指構成模倣」+
歳)。利き手は右手 67 例、矯正右手 4 例。原疾患は、脳
梗塞 35 例、脳出血 21 例、脳挫傷 7 例、くも膜下出血 11
1
査に寄与する項目を求めた。なお、有意水準は 5 %以下
0.269 ×「構音交互運動」+ 0.297 ×「復唱」
(R2=0.66,
p<.0001)が、導き出された。
例。初診までの平均日数は、6.9 ± 10.5 日(範囲:1-55
【 考 察】 結 果、 退 院 時 の 言 語 検 査 合 計 点 は、 年 齢 が 若
日)。 平 均 在 院 日 数 は、31.9 ± 18.3 日( 範 囲:9-117
く、初診時に名前・見当識の表出、簡単な指示理解が
日)。
可能な症例の方が高く、初期より簡単な質問の理解・
【方法】各症例に対して、初診時、退院時に STAD を実
表出が可能であることが重要であると考えられた。退
施した。各症例の退院時 STAD の言語検査、構音検査の
院 時 の 構 音 検 査 合 計 点 は、 初 回 時 に 手 指 模 倣、oral
合計点率を従属変数、年齢、性別、言語聴覚療法実施日
diadochokinesis、単語レベルの復唱が可能な症例が高
数、初診までの日数、入院時 STAD の各課題項目の点数
く、初期より口腔運動の巧緻性が比較的保たれているこ
率(13 項目)を独立変数として、重回帰分析(ステップ
と、聴取可能レベルの単語語彙表出が可能であることが
ワイズ法)を実施し、退院時 STAD の言語検査、構音検
重要であると考えられた。
P1-4-03
Brugada症候群による院外心肺停止蘇生後、良好な高次脳機能改善を認め
た1例
岩城裕之
滋賀医科大学医学部附属病院 リハビリテーション部
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】今回、院外心肺停止蘇生後に低酸素脳症によ
となった。介入終了時には MMSE30/30、FAB18/18、
る高次脳機能障害を呈したが、良好な高次脳機能改善を
CAT では cut off 項目は改善、TMT、BADS、三宅式記銘
認めた 1 例を経験したので報告する。【症例】30 歳代前
力検査、AVLT、WMS-R、WAIS-3 においても退院時問題
半男性。2015 年 X 日早朝、うめき声に妻が気付き救急要
となる項目は検出されなかった。
【考察】急性期では転帰
請。BystanderCPR なく、虚血時間は 10 ~ 20 分と考え
を考える上でもリハビリテーション介入早期での予後予
られる。救急隊員到着時 ECG では心室細動(VF)
、4 回
測が求められる。蘇生後の急性期予後予測で、自宅群と
電気的除細動施行するも VF 止まらず、VF のまま当院救
転院群に分け検討を行った先行研究では、自宅群は明ら
急搬入となった。【入院経過】1day、ICU で低体温療法
かな脳画像病変を認めない症例が多く、開始時に中~重
開始。10day、意識レベル回復バイタル安定。13day、
度の高次脳機能障害を認めるものの、高次脳機能訓練期
言語聴覚士介入開始。介入時、発症前 3 ヵ月程度の記憶
間の中央値は 9.8 日で早期に改善することを示されたと
の 欠 落、MMSE19/30、FAB12/18、 注 意 機 能・ 前 頭
報告している。本症例では脳浮腫がみられたが明らかな
葉機能に低下を認めた。CAT では digit span forward、
脳画像病変を認めず、脳浮腫の軽減と共に良好な高次脳
tapping span back ward、SDMT、PASAT2 秒条件で
機能の改善が得られ自宅退院へと繋がったと考えられる。
cut off となり、WM、持続性注意、処理速度低下がみ
今後さらに症例を増やし、予後予測の有効性を検討して
られた。高次脳機能障害は急激に改善していき介入 1 週
いきたい。
間程度で遂行機能へのアプローチを開始できるレベルと
なった。30day に ICD 植え込み術施行され、46day 退院
176
P1-4-04
大室愛子 1)、内山良則 1)、金田浩治 1)、神吉理枝 2)、吉村賢二 2)
大阪市立総合医療センター リハビリテーション科 1)、大阪市立総合医療センター 神経内科 2)
日頃より口腔器官の可動域と筋力に改善あり、分泌物貯
困難が進行し当院入院。ギランバレー症候群と診断され
留も減少した。77 病日スピーチカニューレ装着。発話機
る。3 病日より大量免疫グロブリン療法と全血漿交換が開
会が増え、口腔器官のさらなる筋力向上と運動範囲の拡
始されるが 4 病日に人工呼吸器管理となり、その後も症
大を認めた(発話明瞭度 1.5)。嚥下機能:< 回復 >48 病
状は進行。極期(15 病日)には気管切開、完全四肢麻痺
日 VE で咽頭部に分泌物の貯留が著明、少量水分での誤嚥
となった。【初期評価】28 病日 ST 開始。重度の四肢麻痺
があった。その後緩やかに嚥下機能が回復。92 病日 VE
と呼吸筋麻痺あり(FIM 運動項目 13 点)。表情筋麻痺に
で嚥下反射の遅延、咽頭残留を認めるが誤嚥なくゼリー、
加え、下顎、舌、口唇に著明な運動範囲制限と筋力低下
水分の摂取が可能となり、直接訓練開始。経過中、明ら
あり。コミュニケーションは頷きと首振りでの Yes-No
かな誤嚥症状を認めず段階的に食事形態を変更。124 病
日昼食のみキザミのあんかけ状食が摂取可能となった
害と嚥下反射の遅延および減弱を認め、唾液での誤嚥性
(Gr.5 ~ 6)。身体機能:< 不変 > 転院時(125 病日)、車
肺炎を併発していた。咽頭反射、咳嗽反射は消失。藤島
椅子座位が可能になったが、起坐・起立は困難。呼吸筋
の摂食・嚥下能力 Gr.2。【経過】構音機能:< 回復 > 口頭
麻痺は改善したが排痰能力の低下でカニューレ抜去には
でのコミュニケーション意欲が高く 36 病日サイドライン
至らなかった(転院時 FIM 運動項目 13 点)。【考察】本症
から空気を上部気道に送り発声、構音訓練開始。分泌物
例の経過について、先行報告を交えて検討する。
口頭演題 日目
表出での簡単なやりとりが可能。嚥下機能は、口腔期障
特別プログラム
【症例】40 歳男性【現病歴】X 年、急速に四肢麻痺と呂律
日 程
回復遅延型と予想された軸索型ギランバレー症候群に対する急性期言語療法
の介入経過
1
の貯留による湿性嗄声が顕著で発話の途切れあり。また
P1-4-05
コミュニケーション障害に対応するICT活用の現状と展望-八王子言語聴覚
士ネットワークの取組み-
白波瀬元道 1,6)、小泉智枝 2,6)、小林千寿子 3,6)、高橋宜盟 4,6)、東川麻里 5,6)
【はじめに】ICT とは、information and communication
ミュニケーション障害患者に ICT を活用するために必要
technology(情報通信技術)の略語で、リハビリテー
な対応を詳細に検討するためのアンケート調査を実施す
ションの現場でもその活用事例が散見される。しかし、
る。5. 検討を進める。
【考察】ICT 活用症例調査から以下の課題が挙げられた。
が適切に ICT を活用できているとは言い難い。八王子言
関わる症例ごとに個別性が高く、整った ICT 環境がない
語 聴 覚 士 ネ ッ ト ワ ー ク で は、 平 成 27 年 10 月 よ り、 コ
ため、ST・教員・技術者等がそれぞれやる気を出すこと
ミュニケーション障害に対応する ICT 活用を進めるため
から始まる。関わる ST も、まずは ICT の基本的な知識・
に、専門家の協力を得て検討を重ねている。その活動を
情報を得る必要がある。症例のニーズについて、それぞ
紹介し、ICT 化を進めるために何をすべきか考察を加えて
れの専門家が情報を集めて整理できる技術・環境とそこ
報告する。
へ繋げるネットワークが必要である。試用できる器材や
スイッチ類、アプリケーション、インターネット環境、
間で共有し、施設横断的な ICT 活用環境の構築を目指す。
また、それらを管理する仕組みが必要である。当事者の
【方法】1. 小委員会を組織する。2.ICT 活用症例調査を実
経済的負担を軽減させる社会的環境にも目を向ける必要
施する。3. 講演会「みんなで知ろう ST のためのちょっ
がある。これらの課題に地域職能団体としてどのような
と進んだ ICT」を開催し、ICT に関する基本的な知識を
取組みを行っているか報告する。
八王子地域の ST で共有する。4. 地域職能団体として、コ
177
2
日目
【目的】ST の臨床場面における ICT 活用の現状を地域 ST
2
ポスター演題
コミュニケーション障害患者に対して、言語聴覚士(ST)
1
口頭演題 日目
永生病院 リハビリテーション部 1)、北原国際病院 リハビリテーション科 2)、多摩丘陵病院 言語聴覚療法科 3)、
結 ライフコミュニケーション 研究所 4)、北里大学 医療衛生学部 5)、八王子 言語聴覚士 ネットワーク 6)
ポスター演題 日目
両唇音、舌音の歪みが強く聞き手の推測を要した。57 病
P1-4-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
障害児(者)地域療育等支援の在り方について 事業後アンケート分析から
夏目知奈 1)、飛田孝行 2)、竹中彩子 3)
東京小児療育病院 リハビリテーション部 言語聴覚科 1)、東京小児療育病院 リハビリテーション部 作業療法科 2)、
東京小児療育病院 地域支援室 3)
【はじめに】当院では、東京都より障害児(者)地域療育
交換」「共通理解」に関連する項目に分類し、具体的 10
等支援事業(以下、地域支援事業)を受託し、地域で生
件、専門的 3 件、情報交換 5 件、共通理解 3 件を得た。意
活する障害児者および家族からの相談に対し、当院職員
見として具体的な支援方法が分かった、専門的な視点で
が専門的な観点から助言を行っている。地域支援事業の
アドバイスをもらえた、情報交換ができた、子どもの状
うち施設支援一般指導事業(以下、施設支援事業)は、
態について確認しあえた等が挙げられた。その他、支援
担当療法士が対象児者の通う保育園等を訪問し、施設状
の見通しが持てた等もみられた。要望については 40 件を
況等を把握した上で行動観察と支援会議を実施している。
抽出し、支援方法の工夫 15 件、病院との連携・支援の継
実施件数が最も多く、施設支援事業の有効性を検討する
続希望が 12 件挙げられた。また施設内の職員の共通理解
必要があるが、考察する機会が乏しい。【目的】施設支援
を得たいとする意見が 7 件あった。【考察】施設支援事業
事業実施後に実施するアンケート回答を分析し、支援事
の良かった点として専門的な視点から具体的な方法や療
業の在り方について検討することを目的とした。【方法】
育担当者と話すこと、共通理解を得ることがあげられた
2015 年 4 月~ 9 月までに事業後にアンケートを得られた
が、支援先のニーズは様々であり、園の状況に見合った
39 件について、指導の感想・要望を分析した。感想につ
支援方法を模索する必要がある。また要望として、対象
いては頻出語と複合語を得た。また良かった点と要望に
児の理解や応対法等の施設内周知とともに病院との連携
関して抽出し、良かった点については複合語をもとに分
が求められていることが分かった。
類した。【結果】施設支援事業先は 23 件が保育園で最も
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
多かった。良かった点 70 件を「具体的」「専門的」「情報
P1-4-07
K市における小学校通級教室担当者と言語聴覚士の連携の実態と課題
高井小織 1)、新村摩美子 2)、板東弘美 3)、鶴田美律 4)
京都光華女子大学 健康科学部 医療福祉学科 言語聴覚専攻 1)、京都市児童福祉センター 2)、
京都府立こども発達支援センター 3)、大山医院 4)
【はじめに】特別支援教育の中で言語聴覚士の位置づけに
な研修から担当者の自主的な研修、また児童相談所や療
ついては、各地域で制度・実態ともにまだまだ模索中で
育施設、病院等幅広い業務に携わる ST との具体的な連携
ある。K 市は人口 150 万の政令指定都市であり、170 校
例を挙げ、整理することによって、小学校の側から見た
の公立小学校の中に 2 校の学年別固定制難聴学級と 26 校
ニーズが浮かび上がってきた。個々の子どもの指導に当
の「ことばときこえの教室」という名称の通級教室が設
たる際、経過や見通し・検査や技術面で ST と個別に連携
置されている。この通級教室は、構音障害・吃音・難聴
をとるケース、ケースカンファレンスなど。さらに、共
の児童を指導対象とし、担当者は各校 1 人である。言語
通した課題から継続する研修会などへと広がりを見せる。
聴覚士(ST)の資格を併せ持っている教員はいない。K
【考察】特別支援教育の主潮が一定進む中で、教育予算の
市には、特別支援学校が 6 校あり、そこには非常勤で各
課題などからナショナルスタンダードを立てるには厳し
校に ST が勤務している。また、K 市内にある K 府立聾学
い現実社会である。その中で、その地域のストレングス
校には 2 名の ST が常勤で勤務している。【目的と方法】
を活かした実践が徐々に積み上がってきている。障害に
今回、各小学校の通級担当者にアンケートをとり、日
よっては、指導技術を洗練し続ける必要があるものや、
常勤務の中での指導や支援の実態と、ST との連携の現
子どもの全人的な長期の発達を視野に入れつつ「今の支
状、必要性や条件などをまとめてみた。K 市の通級担当
援」 を 行 う も の も あ る。bottom-up を 重 ね る こ と で、
者は校内で一人業務であることや異動年限の条件なども
ニーズを明確に示し公的な連携を広げる必要性を痛感す
あり、担当者の知識や経験を支える上でも、学校内外を
る。
問わない連携が求められている。教育委員会主催の公的
178
P1-4-08
木原ひとみ 1)、田島 恵 2)
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科 1)、赤十字子供の家 2)
発達を促す工夫が分かった」等の記載がみられ、言語発
的な問題を有する児童が少なくなく、心理的な援助を提
達段階に応じた関わり方について職員の意識を高めるこ
供してきたが、近年、発達障害児が増加する傾向にあり、
とができた。抽出された課題は、以下の 2 点である。(1)
専門的な対応が要請されている。当施設は平成 23 年度よ
専門用語が難解:「相談したいが専門用語が分からず、ど
り、専門機能強化型施設として、言語聴覚士(以下、ST)
う切り出したら良いか分からない」、(2)現場への適応
や小児科医等を配置し、発達支援や職員への啓発を行っ
方法が不明:「職員が実施可能な発達のチェック項目を教
てきた。今回、児童発達に関する職員の理解を向上させ
えて欲しい」、「サインを使用しているが、いつまで使う
る研修プログラムを開発し、有用な示唆を得たので報告
べきか分からない」【まとめと考察】定期的なカンファレ
する。【方法】児童の心理・言語発達について、担当職員
ンスと講義で構成された研修プログラムは、職員が言語
と定期的なカンファレンスを実施し(計 3 回)、その後、
発達段階に応じた対応を学ぶ手法として有用であると考
ST の業務内容の理解と、言語発達段階に応じた関わり方
えた。しかし、専門用語の分かりやすい解説や、現場へ
を促す講義を実施した。自由記載のアンケートによって、
の適応方法の明確化、といった課題も認められた。今後、
研修の効果を確認し、課題の抽出を行った。【結果】研修
課題に対応して内容を修正し、継続的に研修プログラム
効果は、以下の 2 点に集約された。(1)ST 業務の理解:
を実施していきたい。
口頭演題 日目
応じた言葉がけの重要性を理解した」、「日常生活で言語
要する児童を入所させ養育する施設である。従来、情緒
特別プログラム
【はじめに】児童養護施設とは、家庭環境等により養護を
日 程
児童養護施設における児童の発達特性に関する理解を促す職員研修プログラ
ムの効果と課題
1
言語訓練だけでなく摂食等の小児発達を扱うことの理解
P1-5-01
離島の高齢者における嚥下機能、呼吸・発声機能、身体機能の関連
阿志賀大和、佐藤 厚、高橋圭三
新潟リハビリテーション大学 医療学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
回 / 秒、/ka/:5.0回/秒)
、RSST:4.4回、 握 力:23.7kg、
予測され、特に十分な医療資源がない山間部や離島など
6m:7.1秒であった。RSSTは歩行速度とのみ相関を認め
通・入院が困難な地域では資源の整備が危急の課題であ
(r=-.506、p=.004)
、 年 齢(r=-.308、p=.092) や 握 力
る。今回我々は、そのような地域の高齢者への介入の手
(r=.187、p=.314)とは相関を認めなかった。また、MPT
掛かりとするため、離島の高齢者を対象に嚥下機能、呼
は握力と相関を認め(r=.446、p= .012)
、年齢とは相関
吸・発声機能、身体機能などの評価を行ったため報告
を認めなかった(r= -.134、p=.472)
。
【考察】嚥下機能
する。【対象】新潟県粟島浦村の高齢者のうち書面にて
と歩行速度に相関を認め、その他の項目とは相関を認め
説明を行い、本健康調査に同意の得られた 31 名(男性
なかったことから、嚥下機能を維持することは身体機能
10 名、女性 21 名)、平均年齢 78.2 歳。高齢者の定義は
を維持するうえで重要であることが示唆された。握力が
WHO の定義に則り 65 歳以上とした。
【方法】調査項目
MPT と相関を認めたことから、握力を維持することが呼
は身長、体重、血圧、下腿周囲長(CC)
、最長発声持続時
吸・発声機能を維持するためには重要であることが示唆
間(MPT)
、oral diadochokinesis(/pa/、/ta/、/ka/)
、
された。
RSST、MWST、握力、歩行速度(6m)
、問診とした。ま
た、身長と体重から BMI を算出した。各調査項目間の相関
を求めた。
【結果】測定値の平均は身長:1.50m、体重:
179
2
2
日目
oral diadochokinesis(/pa/:5.4 回 / 秒、/ta/:5.3
れている。そのため、予防的医療の重要性は増すことが
ポスター演題
56.3kg、BMI:24.8、CC:32.8cm、MPT:11.6 秒、
高齢者人口は増え 2025 年には 3,500 万人に達するとさ
1
口頭演題 日目
【はじめに】現在、超高齢社会と言われているが、さらに
ポスター演題 日目
が高まった。(2)児童への関わり方改善:「発達段階に
P1-5-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
急性期病院における早期栄養確保にむけた問題と取り組み
内田文恵、西村紀子、谷口博克
弘善会 矢木脳神経外科病院 医療技術部 リハビリテーション科
【はじめに】脳卒中急性期では発症直後、意識障害や嚥下
作成と活用、2. 看護師評価時に同行し評価指導、3. 早期
障害など様々な要因により経口からの十分な栄養摂取が
に適切な栄養手段を評価し、判断基準の伝達【成果】現
困難となる症例は 70 %程度に認められる。(脳卒中治療
在では入院時に嚥下 check シート・評価用紙を用いて嚥
ガイドライン 2009)当院は HCU18 床一般病棟 80 床の
下機能評価を行い、経口摂取可否の判断は行えるように
急性期脳外科病院であり、経口からの栄養獲得が困難と
なってきている。【今後の課題】評価後の食形態の選択お
なる症例は少なくない。2010 年に NST 委員会・摂食嚥
よび必要に応じた早期代替栄養手段の選択は十分に行え
下委員会が発足されているが、代替栄養手段の確保が遅
ていない。脳卒中急性期における患者は侵襲による体内
延することも多く、入院中に栄養状態が悪化する症例も
エネルギーの消費栄養量が増加し早急な代替栄養確保が
少なくない。今回、当院における取り組みと現時点での
必要とされている。しかし早期に退院するため低栄養に
問題点について報告する。【問題点】当院では急性期脳卒
よる影響がわかりにくいこと。HCU では NST 加算がない
中患者はまず HCU にて全身管理となることが多い。入院
ことが栄養管理が治療の 1 つと認知されていない。今後
直後から担当医師の指示の下、看護師または ST の評価に
は NST などの他部門も合わせた早期栄養確保の必要性に
より食事開始の可否や食形態などが決定される。しかし、
対する共通理解を深めることが必要と思われる。
看護師と ST 間で判断基準に差異があり、必要十分な栄養
量の提供が遅延し、体重減少や検査データの悪化がみら
れ NST 介入を必要とする症例が多々認められていた。【取
ポスター演題 日目
1
り組み】1. 嚥下 check シート・摂食嚥下機能評価用紙の
P1-5-03
当院での摂食嚥下リハビリテーションの現状
山越江津子 1)、塙 瑞穂 1)、倉田章義 1)、横倉 航 1)、齋藤綾香 1)、田口結唯 1)、渡辺僚子 1)、
田中千絵 2)、岩本俊彦 2)
国際医療福祉大学塩谷病院 リハビリテーション室 1)、国際医療福祉大学塩谷病院 内科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】摂食嚥下リハビリでは、適切な評価・予後
(改善群)が 69.4% であった。不良群の原疾患の内訳は
予測を行い早期に栄養確保をしていくことが重要と考え
脳血管疾患が 33.3%、誤嚥性肺炎が 22.2%、急性肺炎が
る。今回当院の入院患者の摂食嚥下リハビリ状況を分析
44.0 %であった。改善群の原疾患の内訳は脳血管疾患が
したので報告する。【対象】2015 年 4 月から 9 月までに
48.0%、誤嚥性肺炎が 16.0%、急性肺炎が 20.0 %、そ
当院へ入院し摂食嚥下リハビリ処方があり、最終評価を
の他 16.0 %と脳血管疾患が最も多かった。また、不良群
実施できた患者 106 名(男性 63 名、女性 43 名)を対象
の全例に認知症を認めた。不良群 9 例のうち 8 例に対し
とした。平均年齢 80.1 ± 11.7 歳、原疾患内訳は脳血管
嚥下内視鏡検査を施行し、7 例は経管栄養での退院となっ
障害 56 名、変性疾患 3 名、誤嚥性肺炎 12 名、急性肺炎
た。【考察】経口摂取が確立された対象者の原疾患は脳血
21 名、悪性新生物 2 名、その他 12 名であった。【方法】
管疾患が最も多く、脳血管障害の急性期には嚥下機能の
対象患者の初回介入時、最終評価時の摂食状況を藤島の
改善が見込まれるため ST の早期介入、適切な嚥下訓練を
グレードを用いて分類(3 以下を 1 群、4 ~ 6 を 2 群、7
実施していくことが重要であると考えられた。経口摂取
以上を 3 群)し、原疾患、認知症の有無、嚥下内視鏡検
を確立できなかった対象者は認知症を有している割合が
査実施の有無について調査した。【結果】初回介入時の
高く、認知症の有無も経口摂取の獲得に大きく関与する
摂 食 状 況 は 1 群 34.0%、2 群 25.5 %、3 群 40.6% で あ
ことが考えられる。経口摂取が困難と判断された対象者
り、最終評価では、1 群 10.4%、2 群 1.9 %、3 群 87.7%
は VE 等を実施し、経管栄養など適切な栄養手段を早期に
であった。初回介入時 1 群のうち、最終評価時も 1 群に
検討していく事が重要であると考えられた。
留まった患者(不良群)が 25.0%、3 群に移行した患者
180
P1-5-04
当院の経管栄養患者における経口摂取獲得に関する傾向について
春日居サイバーナイフ・リハビリ病院 リハビリテーション部 言語療法科
練終了時に JCS1 桁であった経口摂取獲得 12 名と楽しみ
きく異なる現状にある。今回、経口摂取獲得に関与する
レベル 12 名の比較では、経口摂取獲得患者は口腔内衛
傾向について検討した。【対象・方法】平成 26 年 4 月~
生、嚥下反射、咳反射の全項目において改善を認めたが、
平成 27 年 7 月に当院回復期リハ病棟に入棟し訓練を終了
楽しみレベル患者においては、いずれかの項目について
した患者 212 名の内、入院時に経管栄養であった患者 89
改善が認められなかった。【考察】当院では、意識障害に
名(男性 58 名、女性 31 名、平均年齢 65.3 歳)を対象と
よる栄養管理、脳血管疾患発症後の一時的な嚥下機能低
した。摂食嚥下報告書および訓練記録を基に、訓練レベ
下のために経管栄養となる患者が多かった。嚥下機能自
ル(藤島 Gr.1 ~ 3)、楽しみレベル(藤島 Gr.4 ~ 6)、経
体に問題が生じているか否か、根本となる原因を早期に
口摂取レベル(藤島 Gr.7 ~ 10)に分け、入院時と訓練
見極め、離床の促しや口腔ケアの充実等、他職種との連
終了時の意識レベル、口腔内衛生、嚥下反射、咳反射の
携による精神機能の賦活を含めた包括的な支援が重要で
変化について検討した。【結果】経管栄養患者 89 名の入
あると考えられた。また、意識障害の改善の他、口腔内
院 時 の 意 識 レ ベ ル は、 清 明 3 名、JCS1 桁 53 名、JCS2
衛生や咳反射による防御機構が整い、嚥下反射が十分と
桁 28 名、JCS3 桁 5 名であった。訓練終了時には清明 23
なることが経口摂取の基盤であり、嚥下機能の基礎的な
名、JCS1 桁 42 名、JCS2 桁 19 名、JCS3 桁 5 名 と 意 識
要素への介入の重要性が示唆された。
口頭演題 日目
り、15 名が介入後約 1 ヶ月で経口摂取獲得に至った。訓
である重症例が多く、経口摂取獲得の可否で転帰先が大
特別プログラム
【はじめに】当院では入院時、意識障害が残存し経管栄養
日 程
安富朋子
1
レベルの変化が認められた。訓練終了時の経口摂取獲得
P1-5-05
当院言語聴覚士が関わる胃瘻患者の特徴と今後の課題について
油座 茜 1)、宮城千裕 1)、眞喜屋佳恵 1)、立津 統 1)、山内裕樹 2)、山城惟欣 3)
医療法人 八重瀬会 同仁病院 リハビリテーション科 1)、同 整形外科 2)、同 内科 3)
2
日目
181
2
ポスター演題
(4.9/3.1)、HDS-R A 群(20.5/20)B 群(12/12)C
群(1.8/0.7)。 介入時 FIM は B-C 群で有意差(p<0.05)
あり。HDS-R では A-C、B-C 群で有意差あり(p<0.01)
。
離 床 可 能 率( 介 入 時 / 終 了 時)A 群(100/100)B
群(100/100)C 群(28.6/20.6)、端座位可能A 群
(100/100)B 群(100/100)C 群(28.6/20.6)、車
いす可能A 群 ( 1 0 0 / 1 0 0 ) B 群 ( 1 0 0 / 1 0 0 ) C 群
(22.2/15.9)
、 歩 行 可 能 A 群(100/100)B 群(50/50)
C 群(0/0)
。
【考察】C 群は介入時身体、認知機能低下に伴い摂食拒否
や原疾患が悪化し抜去困難に至ったと考えられる。当院
では胃瘻造設を検討した患者の身体、嚥下機能低下が重
症となり ST が処方される傾向がある。しかし、食思低下
時点で早期に介入評価を行い嚥下訓練へと繋げていき、
代替栄養で栄養状態の改善を図る事で ADL や体力が向上
し経鼻経管、胃瘻抜去が可能となる患者が増えるのでは
ないかと考える。ST は病棟と連携しながら患者の情報を
共有し嚥下訓練を実施していかなければならない。
1
口頭演題 日目
【はじめに】当院は内視鏡センターと連携を取り胃瘻抜
去に向けて取り組みを実施した結果、抜去率は 2.94 %で
あった。抜去率向上に向け当院の特徴と今後の課題を検
討したので報告する。
【期間・対象】平成 24 年 4 月から平成 25 年 12 月に摂食
機能療法対象となった患者 142 名のうち経管栄養、胃瘻
患者 68 名を比較。
【方法】胃瘻・経管を抜去した群(以下 A 群)2 名、抜去
予定群(以下 B 群)2 名、未抜去群(以下 C 群)66 名の
3 群に分類。各群の年齢、FIM、MWST、FT、嚥下 Gr、
HDS-R の平均点を算出。Kruskal-Wallis 検定を用い多重
比 較 検 定(Shirley-Williams) を 実 施。ADL で は 離 床、
端座位、車いす、歩行の可否を百分率で算出。介入時と
終了時を比較した。
【結果】年齢 A 群 72、B 群 67、C 群 82.8 歳。FIM(介
入時/終了時) A 群 ( 4 3 . 5 / 5 1 ) B 群 ( 7 2 / 7 2 . 5 ) C
群(31.8/25.1) MWST A 群(3/4) B 群(3/3) C
群(2.9/2.3)、FT A 群(3.5/3.5)B 群(4.5/4.5)C
群(3.1/2.2)、嚥下Gr A 群(5.5/7.5)B 群(7/7)C 群
ポスター演題 日目
患者は 32 名、楽しみレベル 16 名、訓練レベル 41 名であ
P1-5-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
RIASを用いたSTの初回面接の会話分析についての報告
川村広美 1)、岸村佳典 1)、松岡千明 1)、中島麻子 1)、筈谷 舞 1)、鈴木淳子 2)、塚村貴子 2)、
田中奈三江 3)
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室 1)、
社会医療法人生長会 ベルランド総合病院 言語聴覚療法室 2)、社会医療法人生長会 阪南市民病院 言語聴覚療法室 3)
【はじめに】近年、医療におけるコミュニケーション(以
多くみられた。ST ごとに数値の差はあっても、傾向と
下、医療コミュニケーション)の重要性がますます高
しては経験年数による著明な差は認めなかった。【考察】
まっており、本邦に置いても研究が散見されるが、リハ
「社会的会話」や「あいづち」
「生活習慣に関する質問」
ビリテーションの分野における医療コミュニケーション
が多いことは、初回面接であることを考慮しているため
の研究については報告が少ない。今回、リハビリテー
であると思われる。どの経験年数においても似通った傾
ションの中でも会話場面が多いと思われる言語聴覚士
向にあるのは、学校教育の時点から初回面接について概
(以下 ST)と患者の医療コミュニケーション場面を Roter
ね統一された指導を受けているためであると考える。ST
Interaction Analysis System(以下 RIAS)を用いて分
の初回面接は、経験年数に関係なく共通認識としてルー
析し、ST の経験年数による傾向について比較検討したの
ティン化されていることが示唆された。【今後の展望】今
で報告する。【対象と方法】対象は当法人所属 ST8 名(新
回はサンプル数が少なく、統計分析を行うにはデータが
人 4 名、平均経験年数 2.8 年 4 名)
。架空の事例を設定し、
不十分であった。引き続きデータ収集を行いつつ、今後
それに基づいて模擬患者を 1 名擁立し、模擬患者と ST の
は ST の学生にも協力を依頼し、同じ設定で模擬患者との
医療会話(初回面接から検査導入まで)を録画した。録
会話場面を分析し、現役 ST との比較検討を行いたい。ま
画場面について RIAS を用いて分析し、結果を ST 毎に比
た、本研究により得られた結果は、今後の新人教育の場
較検討した。【結果】全件に共通して「社会的会話」「あ
面に役立てていきたいと考える。
いづち」が多く、4 年目のみ「生活習慣に関する質問」が
P1-5-07
失語症に対するアプローチの現状と課題
土居奈央、池 聡、石川裕治
高知リハビリテーション学院 言語療法学科
【目的】言語聴覚士(以下 ST)による失語症に対するア
に比べ、検査場面の録音・録画や解釈の項目で評価が低
プローチの現状を把握し、今後の卒前教育、卒後教育の
かった。経験年数で比較すると、録音・録画や解釈の項
在り方等について検討することを目的として調査を行っ
目は 1 年目で評価が高く、7 年目以降から低くなる傾向
た。【方法】高知県で勤務する ST に対し、以下の内容に
であった。【今後の課題】知能検査や言語検査等、臨床で
ついてアンケート調査を行った。ハード面に対しては、
行う頻度が高いものは養成校でも扱うことが多く、その
訓練室、録音・録画機器の数、検査道具、訓練教材、に
ため掘り下げ検査や訓練の項目に比べると自己評価は高
関して選択肢と自由記述で答えてもらった。ソフト面に
かったが、平均値は 3 に留まった。卒後は症例に応じた
対しては、評価、検査、訓練、説明、報告書、に関して
掘り下げ検査と同時に、使用頻度の高い検査の継続した
1「十分にできている」~ 5「全くできていない」の 5 段
指導の必要性が示唆された。また、本調査においては特
階で自己評価とした。今回特に、検査の項目に着目して
に経験年数 10 年以下の ST が多く、評価後の本人・家族
報告する。【結果】回答者数は 104 名であり、失語症を対
への説明や訓練に関する指導などへの自己評価が低かっ
象としていると答えた者は 103 名であった。経験年数の
た。施設内のみでなく、他施設の ST との関わりや、職能
内 訳 は 1 ~ 5 年 目 が 46 名、6 ~ 10 年 目 が 43 名、11 年
団体としての役割を検討していく必要がある。
目以上が 14 名、平均 6.56 年であった。鑑別のために使
用している検査(複数回答)は SLTA が最も多く、SALA
やトークンテスト等の掘り下げ検査の回答もあった。自
己評価においては、検査の実施時期や実施方法等の項目
182
P1-5-08
当院言語療法科で実施した治療同行後のアンケート調査の結果報告
日 程
竹下 知、櫻井貴之、西岡 恵
医療法人渓仁会 札幌西円山病院
その理由を記載。2015 年 11 月に当科 ST が回答。【結果】
籍しており、平均経験年数は 5 年 8 か月である(2015
集まったアンケート A はペア 95 枚、トリオ 101 枚、アン
年 10 月 1 日 現 在)。 当 科 で は 臨 床 教 育 の 一 環 と し て 定
ケート B が 28 枚。治療同行が「有意義」
「どちらかとい
期的に他 ST の治療に同行する機会を設けている。今回
えば有意義」との回答はペア 83 %、トリオ 89 %で有意
は治療同行後に行ったアンケート調査の結果を報告す
差は認められず、経験年数では 1 ~ 3 年目で有意義度が
る。【方法】アンケート A:2014 年 4 月~ 6 月に「二人
高かった。トリオではペアに比べ「異なる方法を知れた」
一組」(以下ペア)、2015 年 7 月~ 2016 年 1 月に「三人
の項目で回答が多かった。アンケート B はトリオが望ま
一組」(以下トリオ)で治療同行を行った ST が回答。回
しいとの回答が 28 名中 24 名でありペアが望ましいとの
答項目は 1)記入者の経験年数、2)主観的な有意義度
回答は 1 名のみであった。トリオでは「意見交換しやす
い」、「多角的な意見が聞ける」、ペアでは「緊張する」、
かった)]、3)治療同行の良かった点を 9 項目・良くな
「上手く指導できるか不安」、それ以上では「患者様の負
かった点を 8 項目から選択(複数選択可)。集まったア
担大」「発言しづらい」等の記載があった。【まとめ】治
ンケートから同行人数(ペア・トリオ)、経験年数(1 ~
療同行は経験の浅い ST にとってより重要と考えられた。
3 年目・4 年目以上)で 4 群に分け有意義度を比較した
同行人数については有意義度には差が認められなかった
(Kruskal-Wallis 検定)。また良かった点・良くなかった
が、ペアよりもトリオが望ましいと実感しているスタッ
点の回答割合を比較した。アンケート B:望ましい治療
佐藤豊展、川村美津貴、坂本百合菜、辻村舞雪、伊藤朱里、柴本 勇
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
検定を行い、その後多重比較検定を行った。【結果】平均
の運動速度が増加すること(Ueda ら 2013)など多数
振幅(µV)は、空嚥下時 25.3 ± 16.3、2ml 嚥下時 24.2
報告されている。このような舌骨の運動の違いには、舌
± 17.3、10ml 嚥 下 時 25.9 ± 17.4、20ml 嚥 下 時 29.0
骨上筋群の筋活動の違いが関与しているのではないかと
± 20.1 であった。最大振幅(µV)は、空嚥下時 55.8 ±
考えられる。そこで本研究は、一回嚥下量の変化による
36.0、2ml 嚥 下 時 46.4 ± 38.8、10ml 嚥 下 時 52.7 ±
舌骨上筋群の筋活動量の変化を明らかにすることを目的
40.5、20ml 嚥 下 時 57.8 ± 47.0 で あ っ た。 平 均 振 幅、
に行った。【対象及び方法】対象は摂食嚥下障害の既往の
最大振幅共に測定課題に主効果を認めた(p<.05)。多
ない健常若年女性 10 名(平均 20.9 歳)とした。測定課
重比較検定では、平均振幅、最大振幅共に 2ml 嚥下時と
題 は空嚥下、水 2ml、10ml、20ml の 4 条件で、各 5 回
20ml 嚥下時に有意な差を認めた(p<.05)
。
【考察】本
ずつランダムに施行した。測定機器は無線式表面筋電図
研究より一回嚥下量の増加に伴い、舌骨上筋群の筋活動
TeleMyo2400T(NORAXON 社製)を使用した。電極
量が増加することがわかった。舌骨上筋群の筋繊維は
は左側舌骨上筋群部に貼付し、電極間距離は 20mm と
Type2 が多いとされている(Korfage ら 2000)。健常成
した。得られた原波形を整流後、平均振幅と最大振幅を
人において、一回嚥下量の増加は、より多くの速筋の運
算出した。平均振幅は時定数 100ms で二乗平均平方根
動単位が動員される調節が行われている可能性が示唆さ
れた。
183
2
2
日目
した。統計解析は測定課題を要因としたフリードマンの
骨の移動距離が増加すること(Leonard ら 2000)
、舌骨
ポスター演題
カーの範囲内で、基線の変化開始から基線に戻るまでと
頭の運動開始時間が早くなること(Cook ら 1989)、舌
1
口頭演題 日目
【はじめに】これまで一回嚥下量の増加に伴い、舌骨・喉
ポスター演題 日目
一回嚥下量の変化による舌骨上筋群の筋活動量の変化
(RMS)にて平滑化した。分析区間は嚥下時につけたマー
1
フが多かった。
同行人数を「ペア・トリオ・それ以上」の 3 択から選び、
P1-6-01
口頭演題 日目
[5 段階のリッカート尺度(有意義であった~有意義でな
特別プログラム
【はじめに】当科には 41 名の言語聴覚士(以下 ST)が在
P1-6-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
水分量の違いと嚥下音の音響特性に関する検討
伊藤朱里、辻村舞雪、川村美津貴、坂本百合菜、佐藤豊展、柴本 勇
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
【はじめに】嚥下障害の診断法として嚥下造影検査が用い
を Wilcoxon の符号付順位検定、及び対応ある t 検定にて
られている。しかし高橋ら(2006)は、嚥下造影検査
両群を比較した。
【結果】平均周波数は、5mlで2516.38
を行える施設は限られ被曝線量の問題もあるため、度重
± 1184.43Hz、20ml で 2561.71 ± 1080.89Hzであっ
なる診断が不可欠な嚥下障害患者に十分対応しきれてい
た。最大音圧は、5ml で 40.11 ± 7.16dB、20ml で 37.22
ないと指摘している。言語聴覚士が摂食嚥下訓練時に簡
± 5.1dB であった。持続時間は、5ml で 0.98 ± 0.34 秒、
便にモニタリングする方法として頸部聴診法が紹介され
20mlで0.89±0.53秒であった。平均周波数、最大音圧、
て い る(Takahashi 1995, 平 野 2001, 大 宿 2009)。 し
持続時間ともに両群に有意な差を認めなかった(p>.05)
。
かし、嚥下音の音響特性については未だ不明な点が多
【考察】本研究の結果から、水分量の違いによって嚥下音
い。そこで本研究では、水分量の違いが嚥下の音響特性
の平均周波数、最大音圧、持続時間に有意な差がないこ
にどのように影響するかを定量的に検討した。【方法】健
とが分かった。しかし、Cook ら(1989)は水分量を変
常女性 10 名(平均年齢 20.9 歳)を対象に、5ml、20ml
化させると舌骨上筋群の筋活動が変化すると報告してい
飲水時の嚥下音を録音した。嚥下音録音には咽喉マイク
る。嚥下音の生成部や生成タイミングは未だに議論され
ロフォンを用い、輪状軟骨直下の気管外側皮膚上に設置
ており、筋活動と音の生成については異なる可能性があ
した。各被験者、それぞれの量の飲水をランダムに 5 回
る。今後さらに検討し、頸部聴診の臨床活用につなげて
ずつ行った。記録した音響信号は高速フーリエ変換を
いきたい。
し、KayPentax 社製 Multi Speech3700 を用いて平均周
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
波数、最大音圧、持続時間を計測した。得られた計測値
P1-6-03
嚥下の随意的コントロールによる嚥下音の変化について
辻村舞雪、伊藤朱里、川村美津貴、坂本百合菜、佐藤豊展、柴本 勇
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
【はじめに】嚥下の神経制御の特徴は大脳制御と反射活動
く飲み込んだ際の平均周波数は 2348.80 ± 1229.79 Hz、
が複雑に絡み合っていることである。大脳の制御機構に
最大振幅は 38.61 ± 7.64 dB、持続時間は 0.87 ± 0.27
よって、ヒトはある程度随意的に嚥下運動をコントロー
秒であった。平均周波数、最大音圧、持続時間ともに両
ルすることが可能である。本研究では、ヒトが嚥下の方
群 に 有 意 な 差 を 認 め な か っ た(p>.05)。【 考 察】 随 意
法を変えたときの出力の違いについて嚥下音を用いて検
コントロールによる嚥下音の平均周波数、最大振幅、持
討した。【対象と方法】対象は健常女性 10 名(平均 20.9
続時間への影響は今回の研究では判定できなかった。空
歳)で、(1)強く飲み込む、(2)普通に飲み込むの 2 条
嚥下の際は随意的な可変性があるという先行研究がある
件を命令嚥下にて行った。嚥下音録音には咽喉マイクロ
(shibamoto2013)。このことから、随意的な可変性は
フォンを用い、輪状軟骨直下の気管外側皮膚上に設置し
空嚥下で有意に生じ、水を飲む際には変わらないことが
た。5ml の水をシリンジで口腔底に入れ、ランダムに 5
考えられる。その原因として、水を飲んだ時にはすでに
回ずつ行った。記録した音響信号は高速フーリエ変換を
人は努力して飲んでいる可能性があることが推測される。
し、KayPentax 社 製 Multi Speech3700 を 用 い て 平 均
今後、水を飲む際の人の生理学的な活動を固形物と比較
周波数、最大音圧、持続時間を計測した。平均周波数は
して検討していく。
wilcoxon の符号付順位検定、最大音圧と持続時間は対応
のある t 検定にて両群を比較した。【結果】普通に飲み込
んだ際の平均周波数は 2516.38 ± 1184.43 Hz、最大振
幅は 40.11 ± 7.16 dB、持続時間は 0.98 ± 0.34 秒。強
184
P1-6-04
嚥下の随意的コントロールによる水嚥下時の舌骨上筋群筋活動の変化
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
【はじめに】嚥下は随意的運動および反射活動が共存する
用した。得られた原波形を整流後、平均振幅と最大振幅
を算出した。平均振幅は、時定数 100ms で二乗平均平方
多くの神経制御を受けて成り立っている。神経制御は、
根(RMS)にて平滑化した。分析区間は、嚥下時につけ
延髄や脳神経にとどまらず大脳の皮質および皮質下の活
たマーカーの範囲内で、基線の変化開始から基線に戻る
動が延髄に伝達されることも関わっているとされている
までとした。
【結果】
「普通に飲む」タスクの平均振幅は
22.5 ± 13.3µV、 最 大 振 幅 は 43.7 ± 32.3µV で あ っ た。
「強く飲む」タスクの平均振幅は 43.0 ± 26.4µV、最大振
いる(Shibamoto 2013)。本研究では、健常者の随意
幅は 95.4 ± 71.4µV であった。平均振幅及び最大振幅共
的可変性について表面筋電計を用いて舌骨上筋群の筋活
に両タスク間に有意な差を認めた(p<.05)【考察】舌骨
動量から検討した。【対象と方法】摂食嚥下障害を呈す
上筋群筋活動は、舌圧の上昇とともに筋電図の振幅が増
る疾患の既往がない健常若年女性 10 名(平均年齢 20.9
大する(福岡 2010)。随意的に強く飲む場合でより、舌
歳)を対象とした。筋電計測姿勢は座位とした。摂食物
骨上筋群の筋活動が増大したのは、タスクにより舌が口
は水とし、一回量を 5ml とした。水を口腔内に入れた
蓋に押し付けられる力が強かったことが予測された。
後、
「強く飲む」
、
「普通に飲む」をランダムに 5 施行ずつ
合計 10 施行実施した。電極貼付部位は左側舌骨上筋群部
口頭演題 日目
随意的可変性は、嚥下音の音響分析を用いて検討されて
特別プログラム
複雑な生理学的過程で成立する。複雑な嚥下運動自体、
(Miller 1982)
。大脳の制御を表すと考えられる嚥下の
日 程
坂本百合菜、川村美津貴、辻村舞雪、伊藤朱里、佐藤豊展、柴本 勇
1
とし、2 つの電極間距離は 2cm とした。筋電計は、無線
P1-6-05
粘性の異なる液状食品摂取時の舌骨上筋群の表面筋電位計測
川村美津貴、坂本百合菜、辻村舞雪、伊藤朱里、佐藤豊展、柴本 勇
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
でとした。【結果】濃いとろみ嚥下時は平均振幅 26.9 ±
よって粘性を変更し、より安全に液体を摂取することを
16.1µV、最大振幅 66.1 ± 43.1µV であった。中間のと
目的としている。しかし、粘性の異なるとろみ調整食品
ろみ嚥下時は平均振幅 24.6 ± 14.0µV、最大振幅 69.0 ±
摂取時の嚥下動態の検討は画像を用いた検討が主となっ
42.5µV であった。薄いとろみ嚥下時は平均振幅 26.3 ±
ている。本研究では、粘性の異なる液状食品摂取時の舌
14.8µV、最大振幅 65.4 ± 45.0µV であった。とろみな
骨上筋群の筋活動態を計測した。【対象及び方法】対象
しは平均振幅 22.5 ± 13.3µV、最大振幅 43.7 ± 32.3µV
は摂食嚥下障害の既往のない健常な 20 代女性 10 名(平
であった。平均振幅、最大振幅共に 4 群間に有意な差を
均 20.9 歳)であった。舌骨上筋群の筋活動は表面筋電
認めなかった。(p>.05)【まとめ】舌骨上筋群は喉頭運
図を用い舌骨上筋群上の皮膚に電極を貼付した。姿勢は
動及び舌運動に関与すると指摘されている。本研究では 3
座位とし、指示嚥下で行った。液状食品の粘性は、日本
段階の粘性の違いによって舌骨上筋群の活動に変化がな
摂食嚥下リハビリテーション学会基準に従って濃い、中
かった。今後更に検討を加えたい。
間、薄い 3 段階とした。一回量は各 5ml とした。3 種類粘
性の液状食品と水を各 5 回ずつランダムに摂取させ計測
した。得られた原波形を整流後、平均振幅と最大振幅を
算出した。平均振幅は、時定数 100ms で二乗平均平方根
185
2
2
日目
マーカーの範囲内で、基線の変化開始から基線に戻るま
テーション学会誌、2013)。これは、患者の重症度に
ポスター演題
(RMS)にて平滑化した。分析区間は、嚥下時につけた
みの粘性が 3 段階に規定された(日本摂食嚥下リハビリ
1
口頭演題 日目
【はじめに】2013 年に摂食嚥下障害者に使用するとろ
ポスター演題 日目
式表面筋電図 TeleMyo2400T(NORAXON 社製)を使
P1-6-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
骨盤後方支持椅子による嚥下時の舌骨上筋群活動持続時間の検討
爲数哲司 1)、難波 雄 1)、深浦順一 1)、金子秀雄 2)、竹田裕彦 3)
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科 1)、国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 理学療法学科 2)、
(有)体具開発研究所 3)
【はじめに】頭頸部が前屈するように開発された骨盤後方
示嚥下を 2 種類の椅子で 3 回ずつ実施した。順序は無作為
支持椅子が嚥下時の舌骨上筋群活動持続時間に及ぼす影
で行った。舌骨上筋群は顎二腹筋前腹の筋電図を記録し、
響を検証する機会を得たので報告する。【方法】被験者
嚥下時の舌骨上筋群活動持続時間を算出した。データの
は脳血管障害の既往がなく、摂食嚥下障害のない自立し
解析は対応のある t 検定で行った。【結果】舌骨上筋群活
た日常生活を送っている 65 歳以上の男性 10 名、女性 3
動持続時間は骨盤後方支持椅子 1.13 ± 0.59 秒、一般椅
名(平均年齢 72.2 ± 6.0 歳)を対象にした。本研究は国
子 1.43 ± 0.77 秒で有意差を認めた(p<0.05)。骨盤後
際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得ている。骨盤
方支持椅子は頭頸部角度 132.76 ± 11.45 度、骨盤傾斜
後方支持椅子と一般的な椅子を使用し頭頚部の角度と骨
角度 17.90 ± 8.85 度、一般椅子は頭頸部角度 133.22 ±
盤傾斜の計測及びゼリー嚥下時の嚥下筋の筋電図を測定
10.09 度、骨盤傾斜角度 18.40 ± 9.11 度で頭頸部角度
した。骨盤後方支持椅子の背もたれ(高さ 45cm)は下
(p>0.05)、骨盤傾斜角度(p>0.05)のいずれも有意差
部 20cm までが 10 度後傾し、それ以上の部分で 20 度後
はなかった。【まとめ】骨盤後方支持椅子の方が一般椅子
傾している。また、座面(奥行き 40cm)は前端 30cm
よりも舌骨上筋群活動時間が有意に短かった。頭頸部角
の位置から後端にかけて 15 度前掲している。一般的な
度と骨盤傾斜角度については有意差を認めなかった。
椅子は奥行き 35cm、背もたれ 35cm、背もたれ後傾 10
度、座角 0 度のものを使用した。頭頸部角度と骨盤傾斜
角度は、実験開始直後に側面を静止画撮影した。解析に
ポスター演題 日目
は画像解析ソフト ImageJJ を使用した。ゼリー 5cc の指
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
186
口頭演題・ポスター演題
第2日目
2016年6月11日
(土)
口頭発表
第2会場:ロームシアター京都 サウスホール
第3会場:ロームシアター京都 ノースホール
第4会場:京都市勧業館みやこめっせ 大会議室
第5会場:京都市勧業館みやこめっせ 特別展示場B面
第6会場:京都市勧業館みやこめっせ 特別展示場A面
ポスター発表
ポスター会場:京都市勧業館みやこめっせ 日図デザイン博物館
187
2-2-01
辻澤陽平 1)、大澤恵留美 1)、堤 昌恵 1)、三上 愛 1)、生駒一憲 2)
北海道大学病院 リハビリテーション部 1)、北海道大学病院 リハビリテーション科 2)
ルーン拡張法を訓練に追加した。バルーン拡張法は、空
状は多臓器に及ぶ。今回、慢性 GVHD 関連筋症の診断
気量 2cc(15mm)から始め、0.1cc ずつ空気量を増量
で嚥下障害が徐々に悪化している患者に対してバルーン
し、最大左 4cc(20mm)、右 3cc(18mm)まで拡張。
拡張法を行い、少量の経口摂取が可能となった例を報告
拡張後の直接訓練は、薄いとろみ 2ml から始め、段階的
する。
【症例】35 歳男性。疾患 : 骨髄移植後の GVHD 関
な増量より 5ml × 5 回摂取が可能となった。バルーン拡
連 筋 症。 身 長 :171.1cm、 体 重 :35kg、BMI:12.2。 主
張法は自主課題として 7 月に自宅退院。同年 12 月心不全
訴 : 口 か ら 食 べ た い。 経 過 :X-12 年 4 月 に 慢 性 骨 髄 性
増悪より精査目的で再入院。X-1 年 1 月、2 月に再評価で
白 血 病 を 発 症 し、 同 年 10 月 非 血 縁 者 間 同 種 骨 髄 移 植
VF 施行。7 月と比較し、嚥下機能に改善みられたが、初
を 施 行。X-9 年 に GVHD 関 連 筋 症 の 診 断。 嚥 下 造 影
回 VF 時にみられた症状は残存し、固形物は摂取困難。水
(videofluorography、以下 VF)より既に嚥下障害がみ
分に近い形態は摂取可能なため昼のみミキサー食を提供
られていた。X-3 年 10 月に気管切開を施行し、約 6 ヶ月
し、転院。【考察】慢性 GVHD の診断から長期間経過し、
間の絶食期間を経て X-2 年 4 月に VF 施行。結果、喉頭挙
経口摂取が困難と判断された患者でも訓練により経口摂
上範囲制限、咽頭収縮不全と食道入口部開大不全より中
取が再開できる可能性が推測され、バルーン拡張法の有
間のとろみ 2ml は、複数回嚥下後も咽頭内に残留。胃瘻
効性が推測された。
口頭演題 日目
周囲筋の可動性は向上し、栄養状態も改善傾向のためバ
以下 GVHD)とは、臓器移植に伴う合併症の一つで、症
特別プログラム
【 諸 言】 移 植 片 対 宿 主 病(graft-versus-host disease、
日 程
骨髄移植後の合併症で嚥下障害が長期化した症例への訓練経過:バルーン拡
張法が有効であった一例より
1
造設の方針となった。VF 後に ST 訓練開始。喉頭周囲筋
2-2-02
在宅復帰に向け喉頭気管分離術を選択した筋強直性ジストロフィー患者への
支援
中上美帆 1)、宮崎彰子 1)、太田信子 2)、豊泉武志 3)、清水五弥子 3)、花山耕三 3)
水分やゼリーの経口摂取が許可された。入院 120 日目自
原因となる。摂食嚥下障害は MD の予後と強い関連があ
宅退院。外来で、経口摂取方法の指導、EL の使用練習を
ると示唆されている。誤嚥性肺炎にて入院加療した MD
継続した。徐々に経口摂取へ移行、術後 41 日目には胃瘻
患者で、喉頭気管分離術を行い、在宅復帰を果たした例
の使用中止。固形物の経口摂取も開始し、栄養状態は良
を経験したので報告する。【症例】60 代男性。X-9 年に
好である。患者会へ参加し、EL の使用は上達した。【考
MD と診断。X 年、誤嚥性肺炎と診断され入院。【病歴】
察】MD 治療のために積極的に喉頭気管分離術を行うと
入院 3 日目の嚥下造影検査(以下、VF)で、嚥下反射遅
いう報告は少ない。米崎らは、誤嚥防止術を行うことで、
延、咽頭収縮力の減弱を認めた。入院 4 日目に肺炎増悪
吸引回数が減少し、在宅復帰しやすくなると述べている。
し、気管切開術施行。入院 16 日目より間接的嚥下訓練
本例も、在宅復帰後の介護量を減らすために喉頭気管分
を継続したが、改善せず経口摂食は困難であった。【方
離術を選択した。その結果、誤嚥の可能性がなくなり経
針】在宅復帰にあたり、栄養摂取方法、誤嚥性肺炎のリ
口摂取も可能となった。米崎らは、誤嚥防止術の施行で
スク、頻回な吸引が問題となった。審美性、手技の簡便
最も QOL に影響するのは発声不能になることとしてい
化を考慮し胃瘻造設、誤嚥性肺炎回避、介護量軽減のた
る。本例は、術前から EL の使用練習をし、術後は患者会
め喉頭気管分離術を行う予定となった。発声困難となる
に参加することで、気管切開前と同等のやりとりが可能
ため、術前から電気式人工喉頭(以下、EL)の使用練習
となった。
も開始した。【経過】入院 65 日目胃瘻増設術施行。入院
189
2
2
日目
97 日目喉頭気管分離術施行。入院 116 日目の VF の結果、
状である筋萎縮、筋力低下は摂食嚥下障害や呼吸不全の
ポスター演題
【はじめに】筋強直性ジストロフィー(以下、MD)の症
1
口頭演題 日目
川崎医科大学附属病院 リハビリテーションセンター 1)、川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 2)、
川崎医科大学 リハビリテーション医学教室 3)
ポスター演題 日目
に対するストレッチを中心に行った。経過とともに喉頭
2-2-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
唾液腺上皮膚のアイスマッサージ施行方法に関するいくつかの検討~ ALS1
症例において~
八鍬央子、天笠雅春、大隅悦子、今井尚志、高橋里佳
山形徳洲会病院
【 は じ め に】 第 16 回 の 本 学 会 で、ALS 症 例 に お け る 唾
の評価結果の変化と、唾液量に関して症例が表出した文
液 量 減 少 目 的 の 唾 液 腺 上 皮 膚 ア イ ス マ ッ サ ー ジ(Ice
に基づき、IM の効果がどの程度持続するか検討した。ま
Massage; 以下 IM)の試みについて報告した。そのうち
た、IM 施行部位を変化させ影響があるかを同様に検討し
IM が有効であった 1 症例において、自覚的にその効果は
た。【結果と考察】IM 施行が連日~ 2 日おきでは自覚的
どの程度持続するのか、及び IM 施行部位の違いによる影
な唾液量はほとんど変化がなかった。4 日~ 5 日おきにな
響を検討したので報告する。【症例】50 歳代女性。2005
ると唾液量の増加を自覚し、その後元に戻ったと感じる
年発症、2013 年気管切開・人工呼吸器装着。装着後著し
まで数回の施行を要した。安定して QOL の低下を来さな
い流涎がみられたが薬物療法で減少。しかし、副作用が
い唾液量を維持するためには、連日~ 2 日おきの IM 施行
ひどく薬を減量すると再び唾液量が増加し、それに伴い
が効果的であると考えられる。また、三大唾液腺のうち、
QOL の低下を来したため 2013 年 6 月 IM 開始。同年 7 月
混合腺である顎下腺と舌下腺をはずして IM を施行した期
A 病院に転院、11 月当院再入院。2016 年 1 月時点まで
間は唾液粘度の増加を、漿液腺である耳下腺をはずした
IM を継続している。【方法】アイスクリッカーで 1 日 1 回
期間は唾液粘度の減少をそれぞれ自覚した。IM 施行部位
左右 3 分ずつ IM を施行した。頻度は、当院では週に 3 ~
により唾液粘度のコントロールがある程度可能であるの
6 回、A 病院では、はじめ 20 日間で不定期に 3 回施行し
か、今後症例を重ねる必要がある。
たが唾液量の増加を自覚したため、その後は一日おきで
あった。当院では毎回施行前に、自覚的な「唾液量」を
ポスター演題 日目
1
11 段階評価で聴取した。IM 施行が何日おきかによるこ
2-2-04
延髄背外側虚血性病変による嚥下障害の予後予測における改訂水飲みテスト
の有用性
鈴木智浩 1)、牧野史華 1)、大島矩美子 1)、田淵晴美 1)、沼尻一哉 1)、藤田桂史 2)
茨城西南医療センター病院 リハビリテーション部 1)、茨城西南医療センター病院 脳神経外科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】延髄背外側病変による嚥下障害は、数日か
訂水飲みテストは、とろみの有無は問わず 4 点以上を合
ら数か月で改善するという報告がある一方、6 ヶ月以上
格とした。統計解析はエクセル統計 2010 を使用し、両
改善しないという報告もされている。長期的に改善が期
側 p 値 <0.05 を有意差ありとした。【結果】急性期介入時
待出来ない場合、経鼻胃管(NGT)や経皮的内視鏡的
に改訂水のみテスト合格群と不合格群を比較すると、合
胃瘻(PEG)による経管栄養が栄養管理に有用だが、消
格群は有意に経管栄養を必要としなかった(感度 82 %、
化管損傷や創部感染、腹膜炎といった合併症の可能性も
特異度 100 %)。その他の評価項目では有意差を認めな
無視出来ない。従って、延髄背外側病変による嚥下障害
かった。【考察】本報告は、少数例の後方視的研究であり
患者に対するコンセンサスの得られた嚥下機能予後予測
大規模前向き研究による更なる検討を要するが、延髄背
法が待たれる。我々は、延髄背外側の虚血性病変による
外側虚血性病変による嚥下障害おいて、急性期の改訂水
嚥下障害患者の機能予後予測因子を後方視的に検討した
飲みテストが、比較的早期に十分な経口摂取に移行出来
ので考察を加え報告する。
【対象と方法】2003 年 2 月か
ることを予測する指標になる可能性が示唆された。
ら 2015 年 10 月までに当院に入院した脳卒中急性期患者
で、診療録から延髄背外側虚血性病変に由来する嚥下障
害と判断した 10 例を対象とした。年齢、軟口蓋麻痺の有
無、嗄声の有無、咳嗽反射の有無、改訂水飲みテストの
成績を評価項目とし、発症 2 ヶ月後の経管栄養の要否を
フィッシャーの直接確率を用いて統計解析を行った。改
190
2-2-05
小山恭平 1)、杉浦淳子 1)、原 大介 1)、山本裕泰 1)、辻河高陽 2)、熱田直樹 2)、山田晋一郎 2)、
森 遥子 3)、門野 泉 1)、大村有希 1)、難波 雄 4)、藤本保志 3)、勝野雅央 2)
日 程
気管切開後に誤嚥性肺炎を呈したが適切な嚥下機能評価と訓練により再び経
口摂取可能となったSBMA患者の一例
名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部 1)、名古屋大学医学部附属病院 神経内科 2)、
名古屋大学医学部附属病院 耳鼻いんこう科 3)、国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科 4)
脊髄小脳失調症6型の嚥下機能障害
磯野千春、平野牧人、阪本 光、上野周一、中村雄作
近畿大学 医学部 堺病院 神経内科
齢 74 歳(範囲 69-89 歳)と高齢で全例が 60 歳以降の発
の報告はない。本研究の目的は嚥下造影(VF)を用いて
症であった。身体機能は比較的保たれており、独歩可能
SCA6 の嚥下機能を経時的に評価し、進行や重症度につ
な者が多かった。初回 VF 時の口腔期、咽頭期、Total ス
いて調査することである。[ 対象 ] 遺伝子検査にて確定診
コア(口腔期と咽頭期の合計)、DOSS では 2 群間に有意
断された SCA6 群 12 名(男 4 名、女 8 名、平均年齢 64.6
差はなかったが、平均 2.5 年後の最終 VF では、口腔期、
± 12.9 歳、平均罹病期間 11.8 ± 7 年、CAG リピート数
Total ス コ ア、DOSS で SCA3 よ り も SCA6 の 方 が 良 好
21 - 27)。SCA3 群 6 名( 男 6 名、 平 均 年 齢 48 ± 21.1
であった。咽頭期のスコアは 2 群間で有意差はなかった。
歳、平均罹病期間 11.3 ± 3.6 年、CAG リピート数 64 -
[ 考察 ]SCA6 の嚥下障害の進行は SCA3 に比べ緩やかで、
80)を対照群とした。[ 方法 ] 最低 6 ヶ月以上の期間をあ
機能低下も軽度であった。しかし高齢発症の SCA6 患者
けて VF を複数回実施した。評価は日本摂食嚥下リハ学
では、罹病早期から嚥下障害が出現していた。これら高
会の項目とスコアを用い、口腔期・咽頭期を 3 段階評価
齢発症患者については、今後、嚥下機能を含む神経症状
(3:正常- 1:異常)した。Dysphagia Outcome and
の長期観察が必要である。
Severity Scale(DOSS)でも評価した。[ 結果 ]VF の経
過では、SCA3 群は発症から 10 年前後で嚥下機能が悪化
する傾向を示した。SCA6 群では罹病早期から嚥下障害
191
2
2
日目
群において、早期から嚥下障害を来たした症例は平均年
る。嚥下障害の出現率は報告によって異なり、また経過
ポスター演題
をきたす症例と、そうでない症例が存在していた。SCA6
1
口頭演題 日目
[ 目的 ] 純粋小脳失調型である遺伝性脊髄小脳失調症 6 型
(SCA6)は、緩徐進行性の小脳症状を呈し予後良好であ
1
ポスター演題 日目
2-2-06
症例においても、気管切開を契機に嚥下機能が低下し、
経口摂取断念も検討された。しかし、ST 介入により嚥下
機能低下の機序を詳細に評価検討し、唾液を中心とした
貯留物を徹底的に除去し誤嚥防止したことで、積極的な
直接嚥下訓練が可能となった。SBMA など進行性の神経
筋疾患による嚥下障害においても、正確な病態把握と適
切な訓練介入により経口摂取を継続できる可能性がある
と考える。
口頭演題 日目
気管切開施行。術後ソフト食を開始したが誤嚥性肺炎を
認め、術後 4 日目に ST 介入開始。開始時所見は舌萎縮あ
るも口腔器官運動良好、RSST2 回、喉頭挙上 0.5 横指。
カフ上に多量の唾液貯留を認めた。
【経過】術後 5 日目 MWST・FT4 点、随意的な嚥下にお
けるクリアランスは保たれているが、喉頭感覚低下によ
る唾液処理困難が経口摂取再開の阻害要因と考え、口腔
ケアや頻回な口腔内・カフ上吸引やカフ圧調整を行った。
術後 11 日目ゼリー・とろみ水での直接嚥下訓練を開始。
術後 34 日目の VF では、喉頭侵入は認めず、若干の咽頭
残留あるも複数回嚥下にてクリア可能だった。術後 46 日
目ソフト食開始。発熱なく経過し、術後 48 日目に転院と
なった。
【まとめ】SBMA 患者の嚥下障害は緩徐進行性のため、複
数回嚥下などの代償的嚥下を自然に獲得することで長期
的に経口摂取を継続できるが、喉頭閉鎖不全などが生じ
ると代償困難となり誤嚥が顕在化すると報告がある。本
特別プログラム
【はじめに】球脊髄性筋萎縮症(以下、SBMA)は慢性進
行性の運動ニューロン疾患で、四肢体幹の筋力低下、球
麻痺を呈する。今回 SBMA 進行に伴い気管切開施行後に
誤嚥性肺炎を呈したが、ST による適切な嚥下機能評価・
訓練を行った結果、再び経口摂取が可能となった一例を
経験したので、若干の考察を加えて報告する。
【症例】60 歳代男性。12 年前 SBMA と診断された。入院
前、重症度 2 度、常食を摂取していた。SBMA 進行及び
気管支喘息による呼吸苦で当院入院。両側声帯麻痺あり、
2-2-07
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
頚椎の骨棘により嚥下障害を呈した症例
田口智子、徳嶺早都子、山田浩二
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 リハビリテーション室
【はじめに】骨棘は全身性に発生するが、脊椎では C3 ~
障害・嗄声の重度化が観察された。VF では水分(3cc、
C5 に好発する。ほとんどが無症候性といわれ、重症にな
5cc)は安全に飲水可能、ゼリー・ヨーグルトでは嚥下反
ると嚥下障害・嗄声・呼吸困難を発症する。今回嚥下障
射惹起遅延、咽頭残留を認めた。二度炊きでは骨棘によ
害を有する整形疾患患者で肩こりから骨棘が発見され手
る喉頭蓋の反転障害や食塊の通過障害があり、一部喉頭
術施行まで至った症例を経験したので報告する。【症例】
侵入を認めた。結果として固形物になる程、窒息・誤嚥
80 代男性、既往歴は心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎。A
のリスクが高いと判断された。自宅退院後、大学病院受
病院にて左人工膝関節全置換術(以下 TKA)施行。その
診。前縦靱帯骨化症(DISH)と診断され骨化切除術施行
後、術後感染し当院にて TKA 抜去+セメントスペーサー
となった。【考察】本症例は、画像情報と VF により骨棘
充填術施行、リハビリ目的に B 病院転院し再 TKA 目的で
による嚥下障害を呈していたと判断された。初回入院時
当院入院となった。【経過】〈初回入院時〉看護師により
と比較し嚥下障害・嗄声は重度化し、骨棘は増殖してい
誤嚥リスクが高いと判断され ST 介入。嗄声を認め、舌・
た可能性があった。また症状が緩徐進行性で嚥下障害へ
口唇運動正常、RSST2 回、水飲みテスト良好。食事観察
の自覚が乏しく、肩こりから嚥下障害の原因が特定され
(二度炊き食)でむせを認めた。本人の希望により、食事
た。以上のことから、頚部症状・嚥下障害・嗄声を有す
形態継続し転院。〈転院時〉肩こりの訴えがあり、頸部レ
る脳血管疾患以外の嚥下障害の原因として、骨の形態異
ントゲン検査により肥厚性脊椎炎様所見による骨棘が指
常の検討が必要と考えられた。
摘された。〈再入院時〉頚部レントゲン検査で頸椎前面
ポスター演題 日目
1
に約 17 ミリの骨棘を認めた。初回入院時と比較し嚥下
2-2-08
摂食嚥下機能改善に至った超高齢下肢骨折患者
新岡ひかり、山田恵美、野村智子、板谷 舞、長代裕子、松尾基史、新谷和子、藤村志保、
丸山千晶、河岡瑞希、伊良波優馬、山本美保
公益財団法人 倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】3 ヶ月後に経口摂取確立した超高齢下肢骨折
を置く重要性の 2 点で臨床的見解を得た。まず、早期か
患者を経験し、2 点の臨床的見解を得たので報告する。
ら ST が介入する意義である。本症例は、せん妄の影響に
【症例】患者:90 歳代、男性。診断名:左頸腓骨開放骨
より咽喉頭部の知覚・筋出力の低下が生じ、嚥下障害を
折。既往歴:胃癌、アルツハイマー型認知症。初期評価
認めたが、早期からの嚥下訓練による口腔から咽頭部へ
(5 病日):JCS=Ι-3。認知症・せん妄あり。嚥下機能は
の知覚刺激により、せん妄が改善し、積極的な嚥下訓練
藤島の嚥下 Gr.2。
が実施可能となった。これらのことから、咽喉頭部の知
【経過】1 病日:Alb2.8g/dl。経管栄養開始(1200kcal)
。
覚賦活や、随意的な嚥下回数の増加・嚥下筋群の筋力増
5 病日:間接訓練開始。せん妄強く、リハ実施困難。20
強が図れ、嚥下機能の改善を促進したと考える。次に、
病日:直接訓練開始。摂取後の喀出にてゼリー片あり。
ST が栄養面に視点を置く重要性である。入院時の Alb 値
49 病日:熱発あり。誤嚥を疑い、直接訓練中止。59 病
が低値であったのに加え、下腿骨折の受傷・手術による
日:痰量減少し、直接訓練再開。せん妄は改善し、ST リ
侵襲、活動制限も低栄養を増悪させた。さらに、摂取エ
ハの受け入れ良好。87 病日:嚥下調整食(ミキサー)+
ネルギー量が 1200kcal と不足していたため、せん妄の
経管栄養(計 1150kcal)から食事開始。96 病日:嚥下
改善後も嚥下障害が遷延したと考える。嚥下障害に対し
調整食(半固形)+ 経口からの補助栄養(計 1570kcal)
リハを行なう ST は、早期介入と、多職種と栄養面の情報
に変更。167 病日:転倒し、右大腿骨転子部骨折。食事
を共有し、必要栄養量を確保しながら嚥下機能改善に努
摂取量低下。197 病日:Alb2.5g/dl。転院。
め、早期経口摂取を目指すべきである。
【考察】早期から ST が介入する意義、ST が栄養面に視点
192
2-2-09
下位頚髄損傷患者の経過
埼玉医科大学 総合医療センター リハビリテーション科
下、咽喉頭の知覚低下を認めた。また、C5 以下の下位頚
検討したので報告する。
【症例】60 歳男性【診断名】頸
髄損傷で経口摂取が困難であった要因として、1. 気管切
髄損傷(C6 ASIA:A)【現病歴】仕事中、300Kg のベニ
開、2. 人工呼吸器の使用、3. 頸部の可動域制限、4. 座位
ヤ板に挟まれて受傷した。第 1 病日に脱臼整復術、後方
保持困難、5. 高齢、6. 頸部の筋緊張亢進、7. 脳損傷の合
固定術、椎弓拡大形成術を施行し、第 3 病日に人工呼吸
併、8. 前方アプローチが挙げられている。本症例でも、
器管理となり、第 5 病日に気管切開術を施行した。第 11
気管切開、人工呼吸器の使用、頸部の可動域制限、座位
病日より ST を開始した。【経過】単管カフ付きカニュー
保持困難が該当した。訓練によりこれらの要因を軽減で
レ挿入時は、舌運動や嚥下おでこ体操、頸部リラクゼー
き、経口摂取が確立したと考えた。頚髄損傷後は呼吸筋
ションを施行し、VE 検査結果からゼリーでの直接嚥下訓
麻痺のため、気管切開や人工呼吸器管理となることが多
練を実施した。第 19 病日から複管カフ付きスピーチカ
い。頚椎カラー装着で頭頸部屈曲制限を生じ、カニュー
ニューレに変更し、上記練習内容に呼吸・排痰練習を追
レの使用では、喉頭挙上運動が制限され、反射性咳嗽の
加した。第 25 病日から単管カフなしスピーチカニューレ
閾値が上昇する。これらが重複することで誤嚥性肺炎を
に変更し、ペーストや全粥での直接嚥下訓練を実施した。
発症しやすくなるが、ST の介入にてこの負のサイクルか
第 38 病日にカニューレ抜去後は、軟菜一口大や、米飯
ら脱却することが経口摂取の確立に繋がると考えた。
口頭演題 日目
咽喉頭の知覚低下が生じるとされ、本症例も咳嗽力の低
験した。過去の報告と比較し、嚥下障害をきたす要因を
特別プログラム
【はじめに】頸髄損傷受傷後に嚥下障害を呈した症例を経
日 程
中辻勝一、伊藤智彰、伊藤淳子、杉本真美、関 泰子、八木春野、山本 満
1
での直接嚥下訓練を中心に実施した。【考察】過去の報告
2-2-10
進行性核上性麻痺様の症状を呈した薬剤性嚥下障害の一例~経口摂取獲得を
目指して~
ポスター演題 日目
では、頸髄損傷により気道分泌物の増加、咳嗽力の低下、
1
山本恵仙、伊東孝広、前田昇馬、宇山英一郎
熊本託麻台リハビリテーション病院
時 FIM57 点、HDS-R10 点。9 ヶ月間の療養型病院入院
実施した結果、経口摂取可能となり在宅復帰につながっ
中に、意欲向上、活動性の向上が認められ、何か食べた
た薬剤性嚥下障害例を経験したので考察を加え述べる。
いという意欲とその気持ちをくみたい家族の希望もあり
したが活動性低下し歩行不安定となる。その後、急性肺
時 FIM98 点、HDS-R20 点、MWST 判 定 5、FT 判 定 5、
炎、意識障害の治療として約 2 週間急性期病院へ入院。
RSST4 回/ 30 秒。VF 検査より右頚部回旋を行うことで
リハビリ目的で当院回復期病棟へ 3 ヶ月間入院。同時に
梨状窩残留が減少し経口摂取可能という結果であった。
服薬調整が開始となる。状態は意欲低下、著明な進行性
排痰・呼吸訓練、発声訓練を主に約 1 ヶ月間実施した。
核上性麻痺様のパーキンソニズム、経管栄養、嚥下障害
退院時 FIM108 点、HDS-R21 点と向上。【考察】回復期
が認められたがリハビリ拒否により積極的な介入が困難
病棟入院当初は疾病に対してリハビリを行ったが経口摂
で あ っ た。 入 院 時 FIM18 点、HDS-R15 点、MWST 判 定
取に至らなかった。しかし、服薬調整して 9 ヶ月後に食
3、RSST4 回/ 30 秒、FT 判定 5。睡眠薬リスミー、ベン
に対する意欲、活動性の向上が認められたことから薬剤
ザリンからハルラック 0.125mg の 1 種類へ変更、抗精
による嚥下障害の可能性が高いことが考えられる。よっ
神病薬ルボックス 150mg を 100mg へ減量しジプレキサ
て薬剤の影響による嚥下障害と思われる患者においては
を中止する。3 ヶ月間リハビリを実施し身体機能面は若
服薬期間が長期であっても経口摂取へ移行できる可能性
干向上したが意欲低下、リハビリ拒否等を含め、嚥下機
があることが示唆された。
能の向上は認められず経口摂取には至らなかった。退院
193
2
2
日目
再度、経口摂取獲得を目的に当院一般病棟へ入院。入院
ポスター演題
【経過】80 代男性、うつ病の通院歴有。うつ症状は改善
口頭演題 日目
【はじめに】2 年間の服薬を経て薬の調整、リハビリを
2-2-11
意思疎通困難な気管切開患者への嚥下訓練の効果
日 程
前田美穂子、木村知行、吉川文恵、高崎尚子
医療法人 寿人会 木村病院 リハビリテーション部
特別プログラム
【はじめに】今回 ADL 全介助・意思疎通困難で嚥下障害が
を目標に Χ + 135 日スピーチカニューレ移行。頭部挙上
残存した重症患者に対し、嚥下訓練を実施した結果抜管
訓練、冷圧刺激などの嚥下訓練、Yes,No 表出を中心とし
が可能となり、さらに言語機能の改善や自発性の向上な
た言語訓練を実施した。挿用が 5 ~ 6 時間 / 日可能となり
ど他側面の改善をも認めた一例を経験したので報告する。
急速に音声表出が増加、言語機能の改善を認めごく簡単
【症例情報】65 歳、女性。クモ膜下出血と診断。Χ + 7 日
な従命や指示嚥下が可能。全粥、細刻み食の摂取となっ
気管切開、経鼻経管栄養管理。Χ + 54 日回復期病棟へ入
た。Χ + 152 日カフ脱気。簡単な日常会話程度の意思疎
院。JCS200、FIM18 点、カフ付側孔無しカニューレ挿
通が図れるまでになり、Χ + 207 日抜管。自発的な言動
用、吸引を 6 ~ 8 回 / 日必要とし、中等量の粘調痰を認め
も増加し 3 食経口自力摂取となった。
た。ADL 全介助、意思疎通は全く図れない状態であった。
口頭演題 日目
1
【考察】本症例の抜管判断を苦渋させた因子には意思疎通
【経過】積極的に離床を促し、頸部リラクゼーションなど
困難と嚥下障害が挙げられる。しかし嚥下機能が改善し
の間接訓練を実施した。Χ + 91 日 JCS20、口腔器官運動
たことがそれらを緩和する要因となり、重症患者であっ
可能となるも意思疎通は無く言語機能の低下が推測され
ても抜管を可能にすることが出来たと考えられた。また、
た。Χ + 105 日痰量減少、改定水飲みテスト 3C 、直接
本症例では急速な言語機能の改善を認め自発性も向上し
訓練を開始。Χ + 120 日 JCS3、呼吸器合併症がないこと
た。適切な嚥下訓練を実施することで他側面への機能回
から将来的な抜管が提案された。しかし意思疎通が図れ
復に寄与したと考えられた。
ない状態での抜管は呼吸困難時の対応が危惧された。呼
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
吸状態が安定し嚥下機能の改善を認めていたため、抜管
2-2-12
水頭無脳症児一例に対する2歳0か月までの哺乳および摂食の経過
松岡真由 1)、平尾重樹 1)、中西恭子 1)、細野治樹 2)、竹本康二 2)、西村直子 2)、尾崎隆男 2)
愛知県厚生連江南厚生病院 リハビリテーション技術科 1)、愛知県厚生連江南厚生病院 こども医療センター 2)
【はじめに】無脳症は脳幹部が存在すれば摂食嚥下可能で
あることが知られている。今回、水頭無脳症児への介入
を経験したため報告する。
【症例】在胎 30 週 1 日、体重 1700g、身長 42.5cm、自
然分娩で出生。
【現病歴】出生同日に NICU 入院。日齢 2、経鼻胃管でミ
ポスター演題
日目
2
ルク注入 4ml × 8 回開始。修正 32 週 CT 撮影。小脳と脳
幹と基底核一部が残存していたが脳実質は認めず。修正
36 週経口哺乳を 1 回 15ml で開始。修正 38 週から頭蓋内
圧亢進による嘔吐(1 ~ 8 回 / 日)や落陽現象あり。V -
P シャント術を検討したが家族同意が得られなかった。生
後 4 か月ミルク 70ml × 8 回全量哺乳可能。生後 5 か月経
鼻胃管抜去、自律哺乳へ移行。生後 7 か月離乳初期食開
始。時々、中枢性無呼吸発作、無熱性痙攣、強直発作が
あった。
【評価】生後 10 か月に ST 開始した。定頸なし。探索・口
唇反射(-)、吸啜・咬反射減弱、嚥下反射(+)。哺乳
時にムセがあり、SpO2 の低下はなかった。鼻と口腔周
囲に過敏があり、開口反応・咀嚼減弱、口唇と鼻咽腔に
閉鎖不全(+)。生後 11 か月のビデオ嚥下内視鏡検査で
は鼻咽腔逆流があり、咽頭クリアランス良好、誤嚥なし
だった。
【経過】訓練で過敏取り、口唇訓練、食事時に副食のみ離
乳前期食を開始し口唇閉鎖と咀嚼介助を実施した。30 °
ベッドアップ位に調整した OT 作製座位保持クッションを
使用した。1 歳 5 か月に 3 分粥、1 歳 6 か月に 5 分粥をス
タートした(1 回 / 日)。1 歳 7 か月に食事を昼夕 2 回 / 日
へ、嚥下ゼリー食も導入した。1 歳 8 か月、離乳後期食を
開始。毎回 2 ~ 10 割摂取可能だった(20 ~ 60 分所要)
。
1 歳 11 か月、急性肺炎で 1 週間中止となった。再開後は
一時的に摂食機能が低下したが、2 歳 0 か月に離乳後期食
1 回 / 日に戻し、その後転院となった。
【考察】修正 36 週の適切な時期に経口哺乳が開始でき、
離乳食も段階的に離乳完了の手前まで進めることができ
た。しかし、頭蓋内圧亢進症のある中で本児の QOL 向上
に繋げるために難渋した症例だった。
194
2-2-13
右MCA領域の広範な脳梗塞後に重度Broca失語を呈した一例
松戸市立福祉医療センター東松戸病院 リハビリテーション科
難であった。自由会話場面では、指差しや頷き、ジェス
失語を呈した症例を経験したので、その特徴ならびに経
チャー、漢字単語の一部書字での表出が多く観察された。
過について報告する。
【経過】本人にとって負荷の少ない理解訓練、漢字単語
【症例】66 歳男性。中学校卒。右利き(投球、歯磨き等
の書字訓練、PACE を中心に行った。4 ヶ月後の SLTA で
は 左)。 現 病 歴:X 年 6 月、 下 肢 の 麻 痺 を 呈 し 隣 人 が 救
は、言語理解は口頭命令 5/10 と改善が見られた。表出面
急要請。脳梗塞と診断され保存的治療を受ける。1 ヶ月
は呼称 3/20。無反応での誤りは減少し、目標語に近い音
後、リハ目的で当院入院。画像所見:頭部 MRI では右前
の誤りが多く見られた。書字は漢字単語 4/5 と著明に改
頭葉後部から側頭、頭頂葉にかけて広範な病巣を認めた。
善。日常生活では書字や描画で伝えようとする場面が増
神経学的所見:意識清明、左不全麻痺。神経心理学的所
加した。
【考察】音声言語に比し良好な書字や非言語的手段を用い
ることで、コミュニケーション能力の改善が見られた。
11/36。視空間認知は保たれていた。行為面は観念運動
また、本症例は右利き右半球損傷の鏡像型交叉性失語に
失行・肢節運動失行を認めた。言語症状は簡単な日常会
類似していた。これまでの交叉性失語例では視空間認知
話の理解は可能だが、複雑な文理解は困難(SLTA 聴理
障害の合併が多く、失行は合併しにくいと報告されてい
解短文 9/10 口頭命令 0/10)。発話は非流暢で重度の喚
るが、本症例では視空間認知機能は保たれ、運動失行を
語障害を認めた(呼称 0/20 主な誤りは無反応、語頭音
呈したことが特徴的であった。言語を含む高次脳機能の
効果なし)。書字は漢字・仮名いずれも単語レベルより困
側性化には個人差があることが示唆された。
2-2-14
右頭頂葉損傷によりジャルゴン失書を呈した右利きの一例
原山 秋 1)、村上光裕 1)、吉機俊雄 2)
因島医師会病院 リハビリテーション科 1)、姫路獨協大学 医療保健学部 言語聴覚療法学科 2)
は形態性錯書や新造文字、保続を認め、仮名単語では音
り、ジャルゴン失書を伴う重度書字障害を認めた一例を
韻性錯書や保続が頻発した。まんがの説明では、無意味
経験したので、報告する。
な仮名の羅列を認め、ジャルゴン失書を呈した。聴く・
【症例】80 代女性。右利き。軽度の左上肢不全麻痺と会
話が困難とのことで救急搬送。頭部 CT にて右頭頂葉に梗
ダリティ間の乖離が顕著であった。
【考察】右利き右半球損傷による失語症例には。ジャル
【神経学的所見】意識は当院初診時JCS-2、左上肢不全麻痺
ゴン失書を呈する症例が多く報告されている。横山ら
【神経心理学的所見】失語症、軽度の左半側空間無視、構
(1981)は、書字運動記憶心象の右半球言語野からの脱
成障害、着衣失行
抑制により free running した結果であると述べており、
佐藤ら(2001)は、ジャルゴン失書の障害メカニズムに
の探索・自己修正を認めた。発症後 4 ヶ月時の SLTA で
ついて、free runninng と音韻処理、上肢の意図的運動制
は、理解面は短文の聴理解 7/10・読解 6/10・口頭命令
御の障害の 3 点から検討している。本例は、音韻処理の
8/10・書字命令 5/10 であった。呼称は 19/20。復唱・
中でも音素-文字素変換過程の障害が強く、さらに元来
音読においても単語レベルではいずれも全問正答であっ
の性格である性急性と左側に側性化された書字運動記憶
たが、短文レベルでは復唱 3/5・音読 3/5 で音の誤りを
心象が右側に側性化された音韻処理機能から脱抑制され
認め、それに伴う探索・自己修正を認めた。書字では漢
た状態が加わることで、ジャルゴン失書の表出に至った
字・仮名ともに単語レベルより障害を認め、漢字単語で
と考えられた。
195
2
日目
【言語症状】自発話は比較的流暢だが、音韻性錯語、音
2
ポスター演題
塞巣を認め、保存的加療を行い、約 3 週間後に当院入院。
話す・読むの成績に対して書字の障害が強く残存し、モ
1
口頭演題 日目
【はじめに】今回、右の頭頂葉を主病巣とする脳梗塞によ
1
ポスター演題 日目
機能の軽度低下を認める。ROCFT 模写 32/36 遅延再生
口頭演題 日目
見:見当識、礼節は保たれる。RCPM 12/36、全体的脳
特別プログラム
【はじめに】右 MCA 領域の広範な脳梗塞後に重度 Broca
日 程
千葉真菜実、坂本和哉、高柳法成、長田健佑
2-2-15
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
右半球損傷後に発語失行を呈した左利きの1例
鈴木將太 1)、中野明子 1)、能登霊威 1)、武石香里 1)、小田嶋佐代子 1)、朝倉美由希 1)、
山崎恵理奈 1)、境 梨沙 2)、中澤 操 2)、横山絵里子 2)
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター 言語聴覚療法室 1)、
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター リハビリテーション科 2)
【症例】30 歳代、女性、左利き(書字、描画等は右)
。短
音がやや困難であるが単語はほぼ良好。しかし 5 文節以
大卒、公務員。【既往歴】マルファン症候群。大動脈弁
上の文で構音と連結に異常を呈する。自発話は緩徐で開
置換術後。【現病歴】左上下肢脱力、運動性失語で発症。
始時にためらいあり。
「北風と太陽」の音読は、抑揚が
右前頭葉皮質下出血の診断で同日開頭血腫除去術が施
単調、休止 28 か所、引伸ばし 7、言い直し 4、所要時間
行。1.5 か月後、当センターに入院。【画像所見】MRI で
1 分 56 秒。右手指に失行はなく、ピアノ演奏も可能。歌
右上・中前頭回に主座し一部下前頭回に及ぶ病巣を認め
唱のメロディは良好。訓練は口腔顔面運動、発声発語練
た。【入院時神経学所見】意識清明、左不全片麻痺(Br.
習、呼称、短文の音読、九九、歌唱を実施。【まとめと考
Stage; 上 肢 3、 手 指 3、 下 肢 3 ~ 4)
、 失 語。
【神経心
察】生来左利きである本症例は、右上・中前頭回を中心
理 検 査】SLTA 正 答 率 96 %。WAB は AQ96、CQ 右 手
とする病変により中等度の発語失行を後遺した。音読で
97.4。RCPM36/36。TLPA 意味カテゴリー別名詞検査
多かった休止は、構音操作や探索の困難さ、連結の不良
は 聴 理 解 200/200、 呼 称 187/200( 高 親 密 度 語 100、
に因ると考えられた。本症例の失語の予後が良好であっ
低親密度語 87)、誤りは無反応 5、意味性錯語 5、迂言
た理由として、脳出血であったこと、病巣が優位側ブロ
3。STRAW 漢字単語の音読 80/80、書取 69/80。一方
カ野に対応する部位より前上方に主座したこと、右利き
向性の失名詞と漢字の形態想起困難あり。構成障害、半
者の側性化と異なっていたこと、年齢が若いことが考え
側視空間失認など劣位半球症状なし。【発話特徴】運動障
られた。また書字は右手で習得したため影響が少なかっ
害性構音障害、口腔顔面失行なし。ディアドコキネシス
たと考えられた。
は pa8.2、ta7.8、ka7.6、pataka6.6 回 / 秒。 拗 音 の 構
2-2-16
流暢性に急速な改善を示した交叉性失語の1例
河本友紀 1)、春原則子 2)、森田秋子 1)、小林瑞穂 1)、荻野真維 1)、伊藤 梓 1)
鵜飼リハビリテーション病院 1)、目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科 2)
【はじめに】交叉性失語により、発症早期に非流暢失語を
しく想起できず錯書となることが多かった。【経過】発症
呈し発話に顕著な障害を認めたが、その後流暢性が急速
2 か月後、左右失認、手指失認は消失した。発話量、発話
に回復した症例を経験したので、経過を報告する。【症
長が増加し、開始時の口形探索や音の歪みの頻度は軽減、
例】60 代男性、右利き、元トラック運転手。【現病歴】
流暢性に顕著な改善を示した。単語書字の誤りは減少し
歩行障害を認め病院を受診、脳梗塞と診断された。発症
たが、文では音韻性錯書が認められた。発症 3 か月後、
21 日当院回復期リハ病棟へ転院。【画像所見】MRI にて
失語症、発語失行ともにごく軽度に改善した。言い淀み
右放線冠から MCA 領域に散在性に広がる梗塞巣を認め
やプロソディ異常はあるが、日常会話には不自由しない
る。【神経学的所見】特記事項なし。【神経心理学的所見】
程度となった。仮名書字の誤りは残存したが自己修正が
失語症、発語失行、ゲルストマン症候群、地誌的失見当
可能となった。【考察】本症例は、発症早期には明らかな
を認めた。RCPM30/36.【言語所見】入院時、聴理解は
流暢性の障害を呈したが、発症 2 か月までに急速に改善
比較的保たれていたが、読解でやや低下があった。自発
し、その後プロソディ異常は残存したが文章レベルの発
話は少なく、発話開始時の努力や口形の探索、構音の歪
話が可能となり発話量も増加した。発症早期の失語症で
み・誤り、プロソディ異常を認めた。オーラルディアド
は症状変化が急速な場合が多い。経過を丁寧に追ってい
コキネシスは比較的良好であった。音読は、仮名単語は
くことが、障害構造の見極めに重要であると考えられた。
可能だったが、漢字単語では構音の誤りと自己修正を繰
り返した。SLTA 呼称 20/20 に対し、語列挙 5 語と語想
起低下を認めた。漢字書字は比較的良好だが、仮名は正
196
2-2-17
右視床出血後に新造文字を主体とした書字障害を呈した一例
川崎医科大学附属病院 リハビリテーション科 1)、関西電力病院 リハビリテーション科 2)、
川崎医科大学附属病院 リハビリテーション科医学教室 3)
字は認めなかった。【神経心理学的検査結果】MMSE:
害を呈した症例を経験したので報告する。【症例】70 歳
23/30、FAB:11/18、BIT:通常検査 113/146・行動検
代男性、右利き(家族に左利きはいない)、高校卒、配
査 63/81、RBMT:SPS 10、SS 3、Rey の 図 形 模 写 の 即
送業者。【現病歴】20XX 年 Y 月 Z 日、左片麻痺と意識レ
時再生:27/36、SLTA:書く項目以外の低下はみられな
ベルの低下にて当院へ救急搬送された。頭部画像にて右
かった。SALA D36:平仮名 29/30・カタカナ 26/30、
視床に出血像を認め、即日入院し保存的加療となった。
漢字 11/30、D38:33/48。【結論】本症例は新造文字
を主体とした純粋失書と空間性失書、構成失書を合併し
4.3cc の出血像と脳室内穿破を認めた。発症 1 週間後の
ており、劣位半球機能の大半と書字を中心とした言語野
頭部画像では脳室内の血腫は解消されていた。【神経学的
の一部が右半球に偏在するという脳機能側性化の変化が
所見】転科時は、左上下肢(Brunnstrom stage ∨ - ∨ -
示唆された。
∨)と顔面部に軽度の麻痺および構音障害を認めた。明
らかな感覚障害はみられなかった。【神経心理学的所見】
左半側空間無視、注意障害、記憶障害、構成障害を呈し
口頭演題 日目
【神経放射線学的所見】発症時の頭部 CT にて右視床に約
特別プログラム
【はじめに】右視床出血後に新造文字を主体とした書字障
日 程
小割貴博 1)、宮崎泰広 2)、鼠尾晋太郎 3)、花山耕三 3)
1
た。書字以外の言語機能に明らかな障害は認めなかった
が、漢字の書字では文字想起困難と新造文字を認めた。
また構成失書と空間性失書を合併していた。写字では構
2-3-01
喚語困難を初発とする進行性失語を呈した進行性核上性麻痺の1症例
徳間彩香 1)、太田信子 2)、長井瑞希 1)、細井雪帆 1)、石塚彩代 1)、原田佳奈 1)、大田健太郎 3)、
中島 孝 3)
嗄声を認めた。喚語困難があり SLTA の語列挙は 9 語と
告する。【症例】82 歳、女性、右利き。主訴は X - 2 年
低下した。6 文節文の復唱が可能であった。呼称は SALA
好きな歌詞を諳んじられない。ADL 自立。X - 1 年に歩
(PR20) で 80/96 と、 高 頻 度 語 か ら 低 下 し、 意 味 性 錯
行障害が出現、X 年家族が構音の違和感を認識、転倒が
語、迂言、視覚認知の低下による誤りを認めた。X + 1
増え神経内科受診にて PSP と診断。X + 1 年歩行障害が増
年、発話に著変はなかった。MMSE-J21、FAB10。計
悪し、自発性の低下が著明となった。X 年の MRI は左大
算・記銘課題で低下を認めた。SLTA の語列挙は 7 語に減
脳皮質、海馬と中脳に萎縮を認めた。SPECT では両側の
少した。【考察】本症例は約 2 年間で非流暢性の進行性失
前頭葉から頭頂葉及び側頭葉に血流低下を認めたが、左
語症が認められた。喚語困難、統語理解低下、復唱良好
半球でより低下していた。【経過】X 年リハビリ開始し
などから TCMA 型と考えられた。錯語は音韻出力レキシ
た。MMSE-J23、FAB10、WAIS3 は VIQ91、PIQ84、
コンの障害と考えられたが、視覚認知の低下による語彙
FIQ87。語の流暢性、運動プログラミング課題で低下を
選択の誤りから、認知機能低下を反映すると考えられた。
認めた。CAT では視覚性抹消課題の成績から選択性注意
一方、努力性や渋滞などの失構音様の症状を認め、PSP
が低下した。言語機能について、SLTA では聴理解・読
の進行の特徴に一致する可能性があると考えられた。
解ともに短文で低下し、助詞の誤りを認めた。発話は非
流暢で、努力性、渋滞、探索反応を認め、プロソディー
197
2
2
日目
が低下した。発話明瞭度 2、声量低下と気息性・努力性
は歩行障害とされるが、喚語困難を初発とした症例を報
ポスター演題
【目的】進行性核上性麻痺(以下 PSP)の初発症状の多く
1
口頭演題 日目
国立病院機構 新潟病院 リハビリテーション科 1)、川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 2)、
国立病院機構 新潟病院 神経内科 3)
ポスター演題 日目
成の乱れ、点の過不足による誤りはみられたが、新造文
2-3-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
語義失語における単語の理解障害の変化
籔 貴代美、志田大輔、山地純也、一条晋伍、浅野稚佳子、新谷 葵、福田亜里沙
医療法人 明日佳 札幌宮の沢脳神経外科病院
変性症による語義失語では徐々に語彙が失われていく
障害がみられた。初診時から 33 ヶ月後には、簡単な日
が、その経過のなかで、言葉の意味がどのように変化し
常会話は可能であるものの言語機能は全般的に低下し、
てその言葉と意味が結びつかなくなるのかはよくわかっ
TLPA カテゴリー別理解検査の正答数は 60/200 であっ
ていない。今回、変性症による語義失語患者の単語理解
た。
【方法】TLPA カテゴリー別検査を 7 回実施し、その
障害の過程を病初期から約 3 年間にわたり分析した。【症
誤反応を分析した。誤反応は、『わからない』、『下位カ
例】72 歳農業の右利き男性。X 年 2 月に「3 年前から言
テゴリー(例:動物では鳥・4 つ足・虫等)』『形態・色
葉が出にくくなった」と受診。脳血管疾患の既往はな
の似たもの』、『関連語』、『無関連』、『その他』に分類し
く、神経学的検査で異常はみられなかった。言語以外の
た。
【結果と考察】
「わからない」という反応は初回 0 か
認知的側面は保たれ、日常生活も自立していた。【画像所
ら 33 ヶ月後は 66 語と増え、言葉の既知感がなくなって
見】MRI で左の側頭葉前部に強い萎縮がみられた。経過
いる語が増加した。また、誤りパターンをみると、初回
に伴い、脳の萎縮は左側頭葉前部でさらに進行した。【言
には関連語に誤るものが多かったが、33 ヶ月後には無関
語所見】初診時、日常会話はスムーズであるが、SLTA の
連語に誤るものが多くなり、脳萎縮の進行とともに、言
呼称が 17/20 と喚語困難、語性錯語を認め、語頭音ヒン
葉としての既知感はあってもその言葉が意味する情報に
トは無効であった。ことわざの補完が 3/10、漢字音読で
アクセスできなくなっていることが確認できた。
表層失読が出現し、MMSE 26 点であった。X 年 11 月の
TLPA カテゴリー別理解検査の正答数は 155/200 で、親
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
密度効果とカテゴリー差を認め、生物カテゴリーと色の
2-3-03
Logopenic型の発話障害から非定型なジャルゴンへと移行したlvPPAの長期
経過
中川良尚 1)、木嶋幸子 1)、笹嶋侑子 1)、近藤郁江 1)、岩佐香菜美 1)、井上響子 1)、
阿部菜都美 1)、佐野洋子 1)、船山道隆 2)、山谷洋子 3)、加藤正弘 3)
江戸川病院 リハビリテーション科 1)、足利赤十字病院 精神神経科 2)、江戸川病院 神経内科 3)
【 は じ め に】 左 側 頭 頭 頂 葉 接 合 部 を 中 心 と し た 機 能 低
下 に よ る 喚 語 困 難 で 始 ま っ た Logopenic progressive
aphasia(以下 lvPPA)症例の発話障害の長期経過を検討
点、WAIS3 PIQ91。観念運動失行±、構成障害+。エピ
ソード記憶低下や常同行動、脱抑制は認められず、人格・
礼節は保たれ、主訴に対する病識が概ね認められていた。
した。
【症例】A 氏、女性、当院初診時 62 歳。X 年、家族が喚語
【経過】言語治療開始後一時的に改善を認めたが、X+ 約
6 年後に再び言語機能低下が進行。発話面では喚語困難
に当院受診。主訴はうまくしゃべれない。
【神経放射線学的所見】MRI:両側側頭葉に萎縮。SPECT:
態となった。X+ 約 10 年時には唯一保たれていた仮名音
読も錯読の頻出あるいは音韻想起困難となった。自発話
困難を認識。X+3 年、他院受診するも異常なしと診断さ
れる。X+4.5 年から日常生活への影響が強まり、X+5 年
左側頭頭頂葉接合部を中心とした相対的血流量の低下。
【初診時神経心理学的所見】言語面は、アナルトリーを
伴わない流暢な発話だが喚語困難あり。SLTA 呼称の誤
り 7/20 中、喚語困難 5 語、音韻性錯語 2 語。語の列挙
5 語。短文音読で音韻性錯読+。復唱は単語 9/10、文
0/5。聴覚・視覚的理解ともに短文レベルから不確実。主
に音韻出力面と、語彙・意味照合の双方向の障害の存在
が考えられ、lvPPA と判断した。精神機能面は RCPM28
や音韻性錯語、音断片が増加した。症状は緩徐に進行し、
SLTA の発話は単語の復唱と仮名の音読以外、ほぼ廃絶状
では機能語や内容語も含むが、目標と思われる語の一部
の音の繰り返しや、聞き手が仮名で書き取ることの難し
い音が中心の流暢なジャルゴンとなった。
【考察】本症例のジャルゴン様発話は、語彙回収から音韻
選択・配列に至る複数段階における重度の障害によるも
のと考えられたが、従来の脳血管障害後のジャルゴン報
告例とは若干性質の異なる非定型なタイプと考えられた。
198
2-3-04
言語表出において保続や抑制障害を認めた緩徐進行性失語の1例
国家公務員共済組合連合会 三宿病院 診療部 リハビリテーション科 1)、
国家公務員共済組合連合会 三宿病院 診療部 神経内科 2)
【はじめに】4 年前より言語障害を発症し、言語表出にお
語の 1 例を経験したので報告する。
ちん(たいこ呼称後)」を “ たいこ ”(語頭音ヒント後に)
“ ちょうふ ” といった誤りを認めた。
【経過】前頭葉機能評価では、FAB の go-no go 課題で困
【症例】80 歳代右手利き女性。4 年前より言語障害から発
難を示すなど、セットの切り換え困難、ステレオタイプ
症し、1 年前より当院外来受診。頭部 MRI では左前頭葉、
の抑制障害を認めた。SPTA の一部を行ったところ、物品
側頭葉、頭頂葉に萎縮を認め、脳血流シンチグラフィに
の使用は可能だったが、物品なしでは模倣が必要だった。
おいても同部位、左側優位に血流低下を認めた。
意味記憶に関しては、可能な範囲での評価より障害を示
唆する所見は認められなかった。言語表出訓練では書字、
レ動作など一部介助レベルであり、RAVEN 色彩マトリシ
音読を用いて語彙 - 音韻的訓練を、表出されない時は時間
スは 14 点だった。行為:鍵を見たら開けるといった被刺
を置かずに正答を与えるなど、保続が出現しないように
激性の亢進を認めた。また右上肢優位に固縮、道具の使
誘導した。
【まとめ】本症例の失語症状の背景には保続や、入力され
部認められた。言語:検査では突発的な反応より成績低
た情報より引き付けられた内容を抽出し、表出している
下を認めたが、理解は聴覚・視覚両経路とも比較的良好、
と考えられる抑制障害といった前頭葉機能の低下がある
表出では同じ内容を繰り返す傾向があったが、喚語は比
と考えられた。本症例の失語症状は、これまで報告され
較的可能であり、構音の歪み、錯語と考えられる所見は
ている緩徐進行性失語のタイプ分類では説明しきれない
認められなかった。SLTA の呼称場面において「ちょう
と考えられた。
2-3-05
左側頭葉後下部病変による失読失書例の漢字書字過程の分析~単語、文字の
頻度効果による違い~
1
ポスター演題 日目
用ではスプーンの握りに違和感があるなど拙劣動作が一
口頭演題 日目
【神経心理学的所見】一般精神機能:ADL は食事、トイ
特別プログラム
いて保続や抑制障害といった症状を呈した緩徐進行性失
日 程
村田和人 1)、清塚鉄人 2)、岩本康之介 2)、中空智子 1)、佐々木ひとみ 1)、前田順子 1)、
廣島真柄 1)、齊藤隆之 1)
1
池野雅裕 1)、宮崎泰広 2)、種村 純 1)
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 1)、関西電力病院 リハビリテーション科 2)
編(250 題全て 2 語で構成)単語の書取を実施した。成
特異的な失読失書を呈する症例が報告されている。今回
績は、完全正答 144 語、一部正答 61 語、誤答 45 語であ
我々は、漢字の失読失書を呈した症例を経験し、漢字書
り、完全正答と一部正答、誤答間で単語における頻度効
字における誤反応について分析した。【症例】60 代 女
果を認めた。また、一部正答における誤り方は、想起困
性【現病歴】20XX 年 Y 月 Z 日夕方、頭痛、ふらつきを
難 28 語(56%)、類音性錯書 15 語(25%)、形態性錯書
発症した。翌日には頭痛は軽快していたが、近医を受診
11 語(19%)であった。類音性錯書において誤った漢
し脳出血の指摘にて、当院に救急搬送となった。【神経学
字は、目標漢字より文字の頻度が高い漢字であった。【考
的所見】明らかな麻痺はなし【神経放射線学的所見】発
察】失読失書を呈した本症例の漢字単語の書字において
症当日の CT にて左側頭葉皮質下出血を認めた【神経心
は、単語の頻度、文字の頻度が影響することが明らかと
理学的所見】(言語機能)SLTA 呼称 90%、語列挙 8 語、
なった。
そ の 他 100%、SALA 失 語 症 検 査 AC1(33/36)、AC3
(92/104)、AC6(46/48)、VC11(56/56)、VC12
(105/120)、VC19(55/60)OR35(90/90)、OR36
(40/60)( そ の 他 の 検 査)・ROCFT 模 写(36/36 点)、
MMSE(27/30 点)、WMS-R( 言 語 性 記 憶 81 視 覚
199
2
2
日目
再生 94)【方法および結果】日本漢字習熟度検定 入門
れている。本邦では側頭葉後下部の損傷により漢字に
ポスター演題
性 記 憶 113 一 般 的 記 憶 90 注 意 / 集 中 力 109 遅 延
病変が存在することを報告して以来、多くの報告がなさ
口頭演題 日目
【はじめに】失読失書は 1891 年に Dejerine が左角回に
2-3-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
左尾状核出血後に吃音が消褪し失名詞失語・漢字の失書を呈した一例
伊藤敬一、西嶋卓道、島津孝幸、水田秀子
藤井会リハビリテーション病院 リハビリテーション部
【はじめに】左尾状核出血後、学童期からあった吃音が消
名文字の想起困難・錯書は認めなかった。SLTA 漢字単語
褪し、軽度の失名詞失語・漢字失書を呈した一例を経験
の書称 3/5・書取 3/5、小学校 2-3 年レベルの漢字書取
した。今回、本例の漢字の失書について、その障害特徴
16/20 で誤りは無反応・想起困難が主であった。WAB
を分析・考察した。【症例】68 歳、男性、右利き、高卒
漢字の構造を聞いて語を認知する 3/7、漢字の構造を言
【現病歴】2015 年某日、嘔吐・下痢・意識障害を認め、
う 2/7 と低下を認めた。SALA 漢字判断 56/56 と漢字形
A 病院に搬送。左尾状核出血・脳室穿破と診断されたが、
態の認知は良好、図形の模写・写字はスムーズ、筆順の
脳外科対応困難な為、B 病院に転送。両側脳室ドレナージ
誤りはなく、失行・構成障害はなかった。
【訓練と経過】
施行し、約 2 ヶ月後にリハ目的で当院転院。【神経学的・
小学校 2-4 年レベルで統制し、仮名⇒漢字の訓練を実施
神経心理学的所見】軽度右片麻痺、注意障害・記憶障害、
した。誤りは、想起困難・類音性錯書・形態性錯書・意
後述の失語症・失書。【言語症状】「10 歳ころからあった
味性錯書と多岐にわたった。書けなかった漢字の音読・
吃音が消えた」と本氏・家族よりあり、訓練経過中も吃
意味の説明は可能であった。【考察】本症例では仮名文字
音は認めなかった。SLTA 単語では聴覚的理解・音読・復
の書称・書取は良好で、失行・構成障害はなかった。意
唱は良好。失名詞失語を認め、呼称 18/20・語の列挙 7、
味が保たれており、漢字の認知は良好、漢字書字で書称
SALA 呼 称 I( 親 密 度)73/96( 高 47/48・ 低 26/48)、
と書取での差もなく、また誤りは失名詞の内容とも異
TLPA 意 味 カ テ ゴ リ ー 別 名 詞 検 査 呼 称 152/200( 高
なった。本例の失書の主症状は漢字の形態想起困難によ
88/100・低64/100)で頻度性効果があり、誤りは意味
ると考えられた。
性錯語(机→椅子、鹿→牛・羊)が主だった。書字では仮
2-3-07
聴覚的理解が可能であった単語においてもLASC errorを認めた表層失書の
一例
高橋 大 1)、水本 豪 2)、橋本幸成 3)、三盃亜美 4)、宇野 彰 5)
医療法人原三信病院 リハビリテーション科 1)、熊本保健科学大学 共通教育センター 2)、
JCHO 熊本総合病院 リハビリテーション部 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 3)、筑波大学 人間系 4)、
筑波大学 人間系 5)
【はじめに】一般に表層失読や表層失書では読解や聴覚
的理解といった意味理解に問題があるとされる。今回、
聴覚的理解が可能であった単語においても書取で LASC
error を 認 め た 表 層 失 書 例 に つ い て、 そ の 障 害 メ カ ニ
ズムを分析した。【症例】症例は 60 歳代の右利き男性。
20XX 年 Y 月に左側頭葉神経膠芽腫の診断にて入院し、
Y+9 月に一時退院、Y+11 月に歩行障害および言語障害
の悪化にて再入院。神経学的所見は右片麻痺と右同名半
盲、神経心理学的所見は軽度失名詞失語と記憶障害を認
め、RCPM は 27/36 点であった。画像所見は、Y+9 月の
頭部造影 MRI 画像では左側頭葉前方部に造影効果を認め
た。【方法】標準抽象語理解力検査(SCTAW)と失語症
語彙検査(TLPA)名詞理解検査で使用されている刺激語
のうち漢字二字熟語のみを使用し、聴覚的理解課題と書
取 課 題 を 実 施 し た(SCTAW45 語、TLPA35 語)。 さ ら
に、SALA 失語症検査 D40 無意味語(仮名)の書取を実
施した。【結果】聴覚的理解に関して、SCTAW では 73%
(33/45)、TLPA で は 80%(32/40) と 軽 度 の 聴 覚 的
理解障害を認めた。書取検査では、聴覚的理解が正答で
あった 60 語のうち 41 語が誤答で、そのうち 19 語 34 文
字で LASC error が観察された。これら 34 文字の書字の
一貫性値について、目標文字(正しい書字)と比較した
ところ、有意差が認められ(p<.05)、LASC error を呈
した漢字の方が目標文字よりも書字の一貫性が高かった。
SALA D40 無意味語の書取は 86%(48/56)の正答率
であり、健常平均の -1SD 以内であった。【考察】聴覚的
理解が可能であったにもかかわらず書取が不可能な単語
があったことから、意味システム以降の障害が考えられ、
意味理解障害以外によって表層失書が生じている可能性
が示された。また、無意味語の書取が良好であったこと
から非語彙経路は保たれており、観察された LASC error
について、書字の一貫性値が目標文字よりも高かった点
は、非語彙経路による処理を反映していると思われた。
200
2-3-08
左後頭葉出血により純粋失読を呈した一例-なぞり読みの効果と訓練経過-
医療法人榮昌会 吉田病院 附属脳血管研究所 リハビリテーション部
た。【経過】本症例の失読症状に対し、仮名と画数の少な
過を報告する。
【症例】70 歳代、男性、右利き、大学卒。
い漢字からなぞり読み訓練を開始。再評価時の SLTA では
X 年 Y 月、「目は見えるが急に文字が読めなくなった。」と
漢字単語音読 5/5・読解 10/10、仮名単語音読 5/5・読
訴え、当院受診。CT において左後頭葉に脳出血を認め、
解 10/10、短文の理解 6/10 と成績向上を認めた。SALA
入院。【既往歴】脳梗塞、白内障(手術済)【神経学的所
失語症検査では、単語音読において平仮名 24/30、片仮
見】明らかな麻痺なし。独歩可能。右同名半盲なし。【神
名 23/30、漢字 21/30 と仮名と漢字の乖離はなく、漢字
経心理学的所見】純粋失読、軽度の喚語困難・漢字文字
単語の音読では 26/48 と特に低頻度低親密語で成績低下
形態想起低下あるも明らかな失語症状なし、連合型視覚
を認めた。【考察】本症例は、当初より漢字・仮名ともに
失認、構成障害、記銘力障害、注意障害。RCPM20/36、
失読症状を呈していた。訓練開始後、仮名は、なぞり読
色名呼称障害なし。【言語所見初期】SLTA では口頭命令
みによる運動覚促通にて概ね読字可能となった。しかし、
9/10 と理解は良好。漢字単語音読 4/5・読解 3/10、仮
漢字はなぞり読み効果がある場合とない場合があり、頻
名単語音読 1/5・理解 1/10 と漢字の方が若干良好。漢
度効果や画数効果を認めた。これらは、漢字の読字過程
字単語書字 5/5、仮名単語書字 5/5 と書字は良好。SALA
は複雑さ、親密度、頻度によって異なる(福永 2010)と
失語症検査では、漢字判断は 51/56 と漢字の文字認知は
いう報告を示唆した。
口頭演題 日目
る。文字がどこから始まるのかも分からない。」と話し
を経験した。本症例におけるなぞり読みの効果と訓練経
特別プログラム
【はじめに】左後頭葉出血により、純粋失読を呈した症例
日 程
波多野文恵、中井美希、寺口真以子、堀川早苗、夏目重厚、富永正吾
1
比較的保たれていた。一部の仮名や画数の少ない漢字で
2-3-09
失行性失書を呈した1症例の検討
安田理美 1)、奥村博子 2)、武村紀裕 2)、中西幸生 2)
医療法人樹心会 角田病院 リハビリテ―ション課 1)、朝日医療大学校 言語聴覚学科 2)
を要すものの複雑図形が可能であったにも関わらず、写
いにも関わらず書字障害を呈するとされている。今回、
字においては文字形態の崩れ、筆順や運筆の誤りを認め
失行性失書と思われる症例を経験したため、その発現メ
た。また、文字形態の崩れに対して自覚はあったが、修
カニズムを含め報告する。
【症例】60 歳代、男性、右利
正することは困難であった。【考察】非失語性失書は症候
き。脳梗塞発症し当院回復期病棟へ転院となる。左前頭
学的にいくつかに分類されており、その中で本症例は失
葉 皮 質、 左 頭 頂 葉 皮 質( 中 心 後 回、 上・ 下 頭 頂 小 葉)、
行性失書と類似していた。Otsuki ら、宮崎らは失行性失
上・下頭頂小葉深部白質に梗塞巣を認めた。既往歴、合
書の原因を書記素領域と書記素産生プログラムの離断に
併症は特記すべき項目なし。【神経学的所見】右片麻痺、
起因するとしている。本症例も文字認知や語彙判断が可
右顔面・舌下神経麻痺【神経心理学的所見】非流暢性失
能であり、構成障害では説明できなかったことから、こ
語、失書、右半側空間無視【高次脳機能評価】言語機能
の発現メカニズムに起因すると想定された。
は SLTA の結果、書字能力に他の言語モダリティとの解離
を認め、顕著な低下がみられた。また、その書字の誤り
は失語性の失書とは異なる特徴を認めた。そのため、書
字に必要な文字認知、視知覚認知、構成能力を評価した
が、明らかな能力低下を認めなかった。そのことより、
201
2
2
日目
による影響を除外できた。【書字症状】図形模写では時間
告がある。その特徴は失語、失読、失行、構成障害が無
ポスター演題
本症例の書字能力障害の原因として、失語症や構成障害
り、その純粋例として Baxner や Otsuki ら、宮崎らの報
1
口頭演題 日目
【はじめに】失行性失書は、これまでに複数の報告例があ
ポスター演題 日目
はなぞり読み効果を認めたが「全てぐちゃぐちゃに見え
2-3-10
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
錐体外路症状を伴わない小字症の1症例
渡邉千春 1)、三宅裕子 1,2)
神戸市立医療センター 中央市民病院 リハビリテーション技術部 1)、地域活動支援センター すももクラブ 2)
【はじめに】小字症はパーキンソン病に随伴する書字症
した。自発書字・写字とも認められ、開閉眼では差はな
状としてよく知られている。一方、大脳基底核近傍や視
かった。文字は書き始めから小さく、書きすすむにつれ
床損傷の脳梗塞、脳出血後に認められる錐体外路系の運
てさらに徐々に小さくなった。書字速度は遅い傾向に
動障害を伴わない小字症(pure micrographia)の報告
あった。小字症に対する自覚はあった。症状は系列文字、
もあるが稀である。今回、脳出血後に錐体外路症状を伴
単漢字の連続、数字、アルファベットともに顕著に認め
わず右手のみに小字症を認めた症例を経験したので報告
られた。聴覚的 cue は有効でなく、視覚的 cue は枠が最
する。【症例】52 歳女性右利き。服を鍋で洗っていたと
も有効であった。1 ヶ月後も小字症は持続していた。図形
ころを家人が発見し救急要請。右尾状核出血、脳室内血
や記号は、単独図形では大きさは保たれていたが、連続
腫、急性水頭症を認めた。意識障害が増悪し、緊急脳室
図形では徐々に小さくなる傾向を認めた。【考察】pure
穿頭ドレナージ術を施行した。術後に左視床に出血を認
micrographia の中には文字に限局して出現する報告もあ
め、右上下肢不全麻痺が出現した。【神経学 / 神経心理学
るが、本例は単独図形では大きさは維持されるものの連
的所見】右上下肢不全麻痺(MMT4/5)、見守り歩行可
続図形では徐々に小さくなり、書字、描画ともに小字症
能。箸の使用やシャツのボタンの開閉、調理動作は緩慢
を認めた。本例の小字症の発現機序としては、書字では
ながらも自立。固縮、寡動、すくみなどのパーキンソニ
なく、ある一定の運動の維持や調整に障害が生じている
ズムは認めなかった。神経心理学的には自発性低下、声
と考えた。
量低下、注意障害、記銘力低下を認めた。失語症状は認
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
められなかった。【書字】小字症は右手一側のみに出現
2-3-11
右の小脳半球の脳梗塞で書字障害を中心とした言語症状を呈した2例
市本将也、時田春樹、鈴 衣里佳
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション課
【はじめに】右の小脳の梗塞で書字障害を含む高次脳機能
て、右の小脳の PICA 領域を中心とした領域に病巣を認め
障害を呈した 2 例を経験したので報告する。【症例 1】70
た。< 神経学的所見 > 意識レベル(JCS)は I-1、中等度
歳代、右利き男性。2014 年某日、手指の痺れを主訴に
の失調と構音障害を認めた。< 神経心理学的所見 > 注意
同日受診。TIA として入院。2 日後に構音障害と失調が出
障害と書字障害、語想起障害を認めた。< 神経心理検査
現した。< 神経放射線学的所見 > 入院 2 日目の MRI にて
結 果 >HDS-R25 点、MMSE24 点、TMT-A84 秒、B511
右の小脳半球の SCA 領域を中心とした領域に病巣を認め
秒であり、KohsIQ 66、FAB 8/18、SLTA は書字と語想
た。< 神経学的所見 > 意識レベル(JCS)は清明、軽度の
起以外は良好であった。STRAW17/40 点で、漢字にお
失調と構音障害を認めた。< 神経心理学的所見 > 書字障
ける類音性、形態性錯書、保続が見られた。6週間後には
害を認めた。< 神経心理検査 >HDS-R29 点、MMSE26
STRAW34/40 点と改善した。【結果とまとめ】2 症例と
点、TMT-A52 秒、B120 秒 で あ り、KohsIQ107、FAB
もに右の小脳半球を中心とした初発の脳梗塞患者であっ
15/18、SLTA は書字以外は良好であった。小学生の読み
た。病前の ADL や認知機能は保たれており、書字の習慣
書きスクリーニング(以下 STRAW)は 24/40 点で、漢
もあった。その他の症状と比較して書字障害が際立って
字における類音性と形態性、意味性錯書、想起困難を認
いた。なお、急性期で症状の改善を認めた。以上より、
めた。3 週間後には STRAW は 32/40 点と改善した。【症
書字障害は小脳損傷と関わる認知機能障害 Cerebellar
例 2】70 歳代、右利き女性。2014 年某日、めまいを伴
cognitive affective syndrome(CCAS)に起因してい
う嘔気と同時に構音障害とふらつきを認め、同日受診し
るものと考えられた。
入院した。< 神経放射線学的所見 > 入院時の頭部 MRI に
202
2-3-12
舌骨上筋群の筋活動パターンに着目した高齢者の舌運動評価
岩手大学大学院 工学系研究科 機械システム工学専攻 1)、株式会社パターンアート研究所 2)、
一関工業高等専門学校 制御情報工学科 3)、聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科 4)
率は、65.5 ~ 97.5% の範囲に分布し。全体平均で 86.1
下、開口等を識別し、各動作でゲーム操作を行う新しい
% となった。うち半数以上の高齢者は、若年者と同様、
訓練システムの開発を進めている。今回は、若年者を対
90% 以上の高い識別率を示し、各運動の再現性が高いこ
象に開発した舌運動識別法が、高齢者に対しても有効で
とが確認された。また、識別率のばらつき原因を考察す
あるかどうか検討した結果について報告する。【対象】嚥
るため、年齢、最大舌圧、ディアドコキネシス、RSST と
下障害による通院履歴のない高齢男性 12 名、(年齢 72.0
の関係を調査したが、いずれについても識別率との間に
± 3.7 歳、 身 長 163.0 ± 4.5cm、 体 重 62.6 ± 6.2kg、
相関は認められなかった。今後は、識別率がばらつく原
mean ± SD)を対象とした。【方法】22 チャンネル表面
因を解明し、識別手法の改善を行うとともに、舌運動を
電極を顎下部に装着し、舌先を左右上下へと口外に突き
利用した訓練システムの有効性についても検討を進める
出す動作、空嚥下、開口時の EMG を、増幅率 2,052 倍、
予定である。
サンプリング周波数 2,000Hz で計測した。計測回数は、
6 動作を 1 セットし、合計 20 セットの計測を行った。10
口頭演題 日目
し、舌運動の識別を試みた。【結果と考察】舌運動の識別
ために、舌骨上筋群の筋活動パターンから舌運動、嚥
特別プログラム
【はじめに】我々は、嚥下障害者の間接訓練を支援する
日 程
佐々木 誠 1)、伊藤駿平 1)、鎌田勝裕 2)、中山 淳 3)、柴本 勇 4)
1
セットの計測データから、EMG の特徴量(振幅成分と
周波数成分)を抽出し、機械学習の一つであるサポート
ベクターマシンを用いて、各動作との対応付けを行った。
2-3-13
嚥下促通に対するOropharyngeal Air-Pulseの有効性の検討
増田容子 1)、稲本陽子 2)、加賀谷 斉 3)、柴田斉子 3)、今枝小百合 1)、進藤実里 1)、
才藤栄一 3)、E. Martin Ruth4)
回、Post MP4.2 ± 3.5 回、Post2.5 ± 2.8 回であり、AP
で、嚥下反射の惹起をねらう感覚刺激である。カナダで
刺激前に比し、AP では有意に回数が増加(p = 0.031)
、
開発され、嚥下障害患者への適用が試験的に開始されて
Post MP で増加傾向にあった(p = 0.091)。嚥下惹起時
いる。本研究は、Air Pulse 刺激(AP)が嚥下惹起増加
間は前後半で有意な差は認めなかった。嚥下回数、嚥下
に有効であるかを健常成人を対象に検討した。【対象・方
時間ともに個人間差を大きく認めた。アンケート調査か
法】 対 象 は、 健 常 成 人 13 名( 平 均 年 齢 24.8 ± 3.4 歳、
ら、MP 装着により唾液増加 92 %、MP を外した後唾液
男性 6 名 女性 7 名)。安静座位をとらせ、嚥下回数計測
増加 31 %に認めた。【考察】健常被検者にて AP 刺激中に
のために表面筋電図を装着し、口腔内の状態を一定にす
嚥下惹起の増加を認め、口腔への AP 刺激は嚥下反射の惹
るために被験者に水 3ml を飲ませた。セッションを 5 条
起に有効であることが示唆された。AP 刺激後も 5 分間は
件 1. AP 刺 激 前 安 静 5 分(Pre)2. AP 刺 激 前 MP 装 着 5
嚥下回数が高い状態が続き、刺激が嚥下の促通となった
分(Pre MP)3. AP 刺激 20 分(AP)4. 刺激後 MP 装着
と考えられた。今後、嚥下障害患者を対象に実施し、促
5 分(Post MP)5. 刺 激 後 安 静 5 分(Post) に 設 定 し、
通として嚥下障害の治療的介入に有効であるかを検討し
条件間の嚥下回数を比較した。さらに AP 条件内の嚥下惹
ていく。
起時間を前半・後半で比較した。計測後、被験者に AP 刺
激に対するアンケート調査をした。【結果】嚥下回数は、
203
2
2
日目
AP 刺 激 前(Pre + Pre MP)3.0 ± 3.5 回、AP4.5 ± 3.9
マウスピース(MP)を介して口腔内に Air 刺激すること
ポスター演題
【 目 的】Oropharyngeal Air-Pulse(Trudell 社 製) は、
1
口頭演題 日目
藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部 1)、藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 2)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学 I 講座 3)、Western University Faculty of Health Sciences4)
ポスター演題 日目
その後、残り 10 セットの EMG から同様の特徴量を抽出
2-3-14
日 程
頸部回旋が咽頭内圧と上部食道括約筋(UES)圧に及ぼす影響 -高解像度マ
ノメトリを用いた検討-
安藤志織 1)、青柳陽一郎 2)、粟飯原けい子 1)、稲本陽子 3)、増田容子 1)、今枝小百合 1)、
石黒百合子 1)、才藤栄一 2)
藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部 1)、藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学 I 講座 2)、
藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 3)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【目的】摂食嚥下障害患者に対し種々の嚥下手技が提案さ
れており、頸部回旋はそのひとつである。しかし、頸部
回旋の生理学的評価は十分行われておらず、一定の見解
が得られていない。本研究では、健常者を対象に高解像
度 マ ノ メ ト リ ー(high resolution manometry, HRM)
を用いて頸部回旋が嚥下に及ぼす影響を検討し、知見を
得たので報告する。
【対象】被検者は健常成人 15 名(33
± 8 歳)とした。【方法】椅子に座り正面または頸部を左
右 30 度、60 度に回旋させた姿勢で、各 2 回ずつ濃いと
ろみ 3ml を嚥下してもらった。各施行直前の安静時 UES
圧、嚥下時の上咽頭部圧、舌根部圧、UES 弛緩時間を計
測した。計測直前と直後に経鼻的に内視鏡を挿入し、各
頸部回旋時の梨状窩の高さにおけるカテーテル位置を確
認した。カテーテルと同方向への頸部回旋を同側、反対
方向を反対側と定義した。全施行で頸部回旋時のカテー
テル位置が変わらなかった 9 名を解析対象とした。【結
果】 安 静 時 UES 圧 は、 頸 部 同 側 回 旋 60 度、30 度、 正
2-3-15
中位、反対側回旋 30 度、60 度の順に 103 ± 29、136 ±
59、100 ± 39、56 ± 27、58 ± 28mmHg で あ り、 同 側
回旋30度は正中位より有意に安静時UES圧が高く、反対
側回旋 30 度、60 度では有意に安静時 UES 圧が低かった
(P <0.01)。舌根部圧はそれぞれ 217 ± 82、202 ± 93、
234 ± 77、200 ± 75、202 ± 81mmHg で あ り、 反 対
側回旋 30 度、60 度では正中位に比べ、有意に舌根部圧
が低かった(P <0.05)。上咽頭部圧、UES 弛緩時間は有
意差がなかった。【考察と結論】安静時は回旋した反対側
の UES 圧が低下し、同側の UES 圧が増加することが明ら
かとなった。しかし、嚥下時は回旋時の舌根部圧が低下
しやすいことも分かった。頸部回旋は、咽頭内圧がある
程度保たれており、UES 弛緩不全のある患者に有効であ
る可能性が示唆された。今後、摂食嚥下障害患者を対象
に嚥下圧測定を行い、生理学的特徴を明らかにするとと
もに、嚥下手技の適応を検討したい。
意識的な咳嗽能力を高めるための要因の検討
冨田早紀 1)、鈴木 享 1)、金森大輔 2)、岡崎英人 3)、永井亜矢子 1)、藤田祥子 1)、稲本陽子 4)、
園田 茂 3)
藤田保健衛生大学 七栗記念病院 リハビリテーション部 1)、藤田保健衛生大学 医学部 七栗記念病院 歯科 2)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学 II 講座 3)、
藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 4)
【目的】摂食嚥下リハビリテーションでは、咽頭貯留物や
誤嚥物の排出、その能力を高めるために咳嗽訓練を行う
ことがある。効果的な排痰には、十分な吸気量と呼気流
ださい」と説明し、対象者のみで実施)とした。測定時
はフェイスマスクを装着し、スパイロメーターを使用し
た。測定回数は各教示 3 回とし、最大値で検討した。ま
れる。昨年度、我々は 2 種類の教示で PCF の違いを検討
し、「大きく息を吸って、とめて、咳」の教示が「咳をし
sec) 及 び 教 示 間(I:4.6L/sec、II:4.4L/sec、III:4.1L/
sec)で有意差を認めなかった。PCF と身長、体重、肺
速が重要とされ、排痰方法である咳嗽の呼気流速は、最
大咳嗽流速(Peak Cough Flow: 以下 PCF)等で測定さ
てください」に比し、PCF が高いという報告をした。こ
の結果は、吸気量、呼気流速ともに教示が影響し、PCF
が向上した可能性が考えられた。今回は、息止めを意識
した教示で呼気流速が向上し PCF が高くなるか、また、
体格等が PCF に影響するかを検討した。【対象と方法】健
常成人 10 名(男性 3 名、女性 7 名、平均年齢 :25 歳)を
対象とした。呼吸に合わせて教示を行い、意識的な咳嗽
時の PCF、肺活量を測定した。教示方法は 3 種類で、教
示 I「大きく息を吸って、咳」、教示 II「大きく息を吸っ
て、とめて、咳」、教示 III 教示なし(「大きな咳をしてく
た、PCF と身長、体重、肺活量との相関を検討した。【結
果】PCF は 性 差( 男 性 平 均 :4.6L/sec、 女 性 平 均 :4.8L/
活量の間に相関は認めなかった。【考察】健常成人では呼
気流速は息止めを意識させても教示による違いは認めな
かった。これは、PCF が呼吸筋の収縮力、胸壁と肺の弾
性収縮力、気道抵抗により決定されると言われており、
今回の教示がこれらに影響を及ぼさなかったためだと考
えられた。体格等の違いで PCF に明らかな差を認めな
かったのは少人数での検討であったため差がでなかった
と考えられた。今後は摂食嚥下障害患者で有用な教示の
検討を行う予定である。
204
2-3-16
中平真矢 1)、室伏祐介 1)、小田翔太 1)、高橋朝妃 1)、西 浩平 1)、矢野川大輝 1)、細田里南 1)、
永野靖典 1)、兵頭政光 1,2)、池内昌彦 1)
日 程
舌骨上筋群に対する筋力増強訓練の筋電図学的特徴-健常成人と健常高齢者
での検討-
高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部 1)、高知大学医学部 耳鼻咽喉科 2)
IEMG)と中間周波数(median power frequency:以
下関連筋群の筋力増強訓練は重要な治療手技の 1 つであ
下、MdPF)を算出した。IEMG と MdPF は解析開始 1 秒
る。筋力増強訓練には負荷量を設定する必要があるが、
間を 100 %とし、変化率(%IEMG、%MdPF)とした。
嚥下分野においては十分に明らかとなっていない。そこ
【結果】健常成人にて %IEMG は舌挙上運動では低下、頸
で今回、健常成人と健常高齢者を対象に、訓練を行って
部等尺性収縮ではわずかに低下、頭部挙上運動では上昇
いる際の筋活動を量的因子、周波数因子について検討し、
した。%MdPF は全ての運動課題で低下した。健常高齢
舌骨上筋群に対する負荷量を筋電図学的に明らかにする
者にて %IEMG は舌挙上運動と頭部挙上運動では低下、
ことで、訓練選択の一助となる知見を得ることを目的と
頸部等尺性収縮では上昇した。% MdPF は舌挙上運動と
頸部等尺性収縮では上昇、頭部挙上運動では低下した。
25.3 歳、健常高齢者 4 名(男女各 2 名)、平均年齢 79.6
【考察】今回、健常成人では舌挙上運動、健常高齢者では
歳を対象とした。運動課題は舌挙上運動、頸部等尺性収
頭部挙上運動が高負荷の運動であることが示唆され、年
縮、頭部挙上運動の 3 課題を設定し、それぞれを 30 秒間
齢によって異なった。嚥下障害患者においては疾患で麻
実施した。被検筋は舌骨上筋群とし、表面電極にて前頸
痺や廃用により組織学的な変化が起こっていることが考
部より双極性に導出した。得られた筋電図波形より筋活動
えられるため、今回の結果をそのまま応用することは難
開始から 1 秒間を除き、その後の 20秒間について 1秒間
しく、今後検討が必要である。
2-3-17
義歯装着の有無、適合具合による舌圧の変化が嚥下機能に及ぼす影響について
菅野伊織 1)、江連 彬 1)、鈴木園美 1)、坂本英世 2)、松田由紀 3)、鈴木綾華 1)、寺島大修 1)
公益財団法人仁泉会 北福島医療センター リハビリテーション科 1)、仙台医療福祉専門学校 言語聴覚学科 2)、
公益財団法人仁泉会 介護老人保健施設 プライムケア桃花林 3)
ST 介入場面における義歯装着時の咀嚼機能・舌圧を高め
から入院時に義歯を外され、退院時まで装用されないま
るための訓練内容の検討も行った。以下にその経過と若
ま摂食やリハビリテーション介入が行われるケースが多
干の考察を加え報告する。
い。そこで、義歯装用の有無や長期未装用による義歯
の適合不全が摂食・嚥下機能にどのような影響を及ぼ
顎動作と舌の協調運動が重要視されており、口腔期・咽
頭期における評価の着目する点として「舌圧」が重要な
判断材料となる。そこで今回の取り組みでは、義歯装用
時及び未装用時の舌圧の測定を行い、義歯の適合具合と
舌の筋出力の関連性を解析し、その結果を食事場面での
ての活用を試みた。また、義歯の不適合が見られた場合
に、歯科領域の専門職との連携を図り、咀嚼機能と十分
な舌圧を発揮できるフィッテイング調整を行い、病棟内
やリハビリ介入時での義歯の管理、常時装用の徹底を図
るきっかけになると考えた。また、数例の症例を通じて、
205
2
日目
義歯の有用性の判断、食事形態設定の際の手がかりとし
2
ポスター演題
すのかという疑問を抱いた。咀嚼・食塊移送において下
1
口頭演題 日目
当院に入院される患者様の多くは呼吸管理などの安全面
1
ポスター演題 日目
ごとに積分筋電値(integrated electromyogram:以下、
口頭演題 日目
した。
【方法】健常成人 10 名(男女各 5 名)
、平均年齢
特別プログラム
【はじめに】摂食・嚥下リハビリテーションにおいて、嚥
2-3-18
日 程
モンテカルロ法を用いた推定基礎エネルギー消費量の多角的解析 ~リハビ
リテーション栄養のエビデンス構築にコンピューター・シミュレーションを
活用する試み~
浅沼 誠 1,4)、樫原みき 2,4)、根岸和希 4)、藤木亜珠沙 3,4)
医療法人美湖会 美浦中央病院 1)、摂南総合病院 2)、荒尾市民病院 3)、言語聴覚療法統計研究会 4)
特別プログラム
【はじめに・目的】リハビリテーション栄養(以下、リ
【結果】推定 BEE の平均値(kcal/ 日)は以下(上記式の
EER)の把握は必須である。EER は基礎エネルギー消費
〈男性〉70-74 歳 :1240、1218、1174、1262、1238。
多い。そこで今回、我々は推定 BEE の諸性質の把握およ
歳:1161、1135、1049、1220、1190。85歳以上:1091、
ハ栄養)を実践する上で推定エネルギー必要量(以下、
量の推定値(以下、推定 BEE)を基に算出されることが
びリハ栄養で用いられることが多い Harris-Benedict の
式(以下、H-B 式)の妥当性検証を目的に、コンピュー
ター・シミュレーション(モンテカルロ法)を実施した。
【 方 法】
「JARD2001」 を 基 に コ ン ピ ュ ー タ ー 上 に
口頭演題 日目
1
40,000 人(男女別に各年齢層 5,000 人)のデータを生
成し、「日本人の食事摂取基準」(2015 年版)で扱われて
いる 5 つの推定式(1. 基礎代謝基準値を用いる式、2. 国
ポスター演題 日目
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
75-79 歳 :1206、1190、1124、1244、1238。80-84
1067、958、1181、1132。〈女性〉70-74 歳 :1021、
934、1067、1106、1104。75-79 歳 :983、881、
1021、1089、1069。80-84 歳 :914、804、959、
1059、1014。85歳 以 上:840、732、897、1027、964。
H-B 式による推定 BEE が実測値を上回る確率は、男性で
は 54.2%、女性では 97.1%(差が 100kcal を上回る確率
は 58.1%、200kcal を上回る確率は 12.7%)であった。
立健康・栄養研究所の式、3.H-B 式、4.Schofield の式、
【考察】推定式により推定 BEE の値が異なり、その差は
を実施した。解析は男女別に 70 歳以上の各年齢層(70-
推定 BEE は(5 式中)最も低値の確率が高い一方、85 歳
5.FAO/WHO/UNU の式)により推定 BEE を算出し解析
74 歳、75-79 歳、80-84 歳、85 歳以上)について実施
した。さらに、85 歳以上について、H-B 式による推定
1
順)。
BEE が先行研究の実測値を上回る確率を求めた。
2-3-19
「女性」「高年齢層」でより顕著であった。H-B 式による
以上の女性に H-B 式を用いる場合、過大評価の危険性が
高いことが検証された。
当院における最大舌圧と食形態の相関について
桑原勇太、眞塩 清、松本育恵、須田沙知、日下部芙美、吉田恵吾、真庭茂恵香
公益社団法人 群馬県医師会 群馬リハビリテーション病院
【はじめに】当院では、通常食の他に軟食、キザミ食、嚥
は、有意差は認めなかった。また、対象者のうち、認知
下調整食を患者の栄養・嚥下機能状態に合わせ提供して
機能低下者の割合は嚥下調整食 50 %、刻み食 71 %、軟
いる。今回、食形態毎の舌圧に相関を認めるか検証する
ことを目的に、各食形態摂取者の舌圧を測定、検討した。
【方法】対象者は上下中切歯欠損無し、または義歯を所持
食 48 %、常食 29 %と常食以外の食形態で多くみられた。
【考察】常食摂取者は 30kPa に近い舌圧が必要となるこ
とが示された。これは、常食を摂取するには十分な舌圧
している方で、嚥下食(調整食 1 ~ 4)、刻み食、軟食、
が必要であるということであり、訓練時の舌圧へのアプ
常食(一口大食含む)のどれかを 3 食経口摂取されてい
ローチが重要であることが示唆された。また、嚥下調整
る入院・外来患者 115 名。指示入力が可能な方のみ測定
食と刻み食と軟食の平均舌圧には有意差が認められな
した。対象期間は平成 26 年 8 月~平成 27 年 12 月。舌圧
かったことより、軟食までの食上げ時には、舌圧は大き
測定には JMS 舌圧測定器を使用した。認知機能の評価に
な影響が無い事が示唆された。つまり、軟食までの食形
MMSE、HDS-R を実施した。なお、各食形態と舌圧の相
態を摂取している方には、舌圧以外の問題点があると考
関についての統計学的検討は t 検定を行い、p<0.05 の場
えられる。軟食まで食上げをしていくには認知機能の改
合に統計学的に有意とした。【結果】嚥下調整食摂取者の
善や、口腔環境の改善(義歯の調整等)、嚥下反射の向上
平 均 舌 圧 は 17.3kPa(6 名)、 以 下 刻 み 食 21.8kPa(21
等、症例ごとの問題点へのアプローチが必要であるため、
名)、 軟 食 21.8kPa(33 名)、 常 食 29.3kPa(55 名) で
ST による個別の評価・介入が重要となることが考えられ
あり、常食の平均舌圧はその他 3 種の平均舌圧との有意
た。
差(p<0.05)を認めた。しかし、その他の食形態間で
206
2-3-20
西本昌晃 1)、高嶋絵里 1)、里 千鶴 1)、谷口薫平 1)、津田豪太 2)
福井県済生会病院 リハビリテーション部 1)、聖隷佐倉市民病院 耳鼻咽喉科 2)
6.3 点→ 16.3 点、看護師 10.6 点→ 23.6 点、リハビリス
期ラウンドしている。今回、ラウンド前後での老健職員
タッフ -5.3 点→ 10.8 点、管理栄養士 -1.0 点→ 17.0 点で
の意識の変化をアンケートを用いて調査し、職種間での
あり、全職種でラウンド後には嚥下障害に対する意識が
比較と検討をしたので報告する。【新たな取り組み】「地
できるようになった。項目ではラウンド後、最も点数が
域医療」という当院の基本指針に基づき、老健に月に 2
高かったものは介護職員、看護師、リハビリスタッフと
度、耳鼻科医・認定看護師・認定歯科衛生士・管理栄養
もに「姿勢」であった。また、最も点数が低かったもの
士とともにラウンドする機会を得た。事前に老健側が評
は介護職員は「栄養面」の 1 項目、看護師は「食器の工
価対象の利用者を 1 回につき数名をリストアップ、おや
夫」など 3 項目、リハビリスタッフは「栄養面」など 6 項
つの時間に訪問し、当院嚥下チームが食事環境や食具、
目あった。管理栄養士は差はなかった。【考察】全体的に
食物形態、口腔ケアの方法などを老健担当者とともに検
嚥下障害に対する割合が増加したことからラウンド効果
討している。【方法】嚥下チームがラウンドした 1 年間に
はあったと考える。「姿勢」は、視覚的情報であるためわ
継続して入所に関わって勤務していた職員 42 名(介護
かりやすくどの職種でも意識できた項目であると考える。
職員 30 名、看護師 7 名、リハビリスタッフ 4 名、管理栄
「栄養面」は介護職員・リハビリスタッフともに未熟な分
養士 1 名)を対象とした。食事時の観察項目など 17 項
野であり必要に応じて検討していく必要があると考える。
口頭演題 日目
得点化した。ラウンド前後で各々の平均得点は介護職員
26 年より関連する介護老人保健施設(以下、老健)に定
特別プログラム
【はじめに】当院嚥下チームは新たな取り組みとして平成
日 程
当院嚥下チームの新たな取り組み~介護老人保健施設への嚥下ラウンド前後
の比較~
1
目に対し、各々 5 段階評価してもらった。【結果】回収率
2-3-21
ポスター演題 日目
100 %。意識できるを 2 点、意識できないを -2 点として
MASAと食形態の関係について
長谷川弥生、竹下 知、櫻井貴之、岡村寛子
1
医療法人渓仁会 札幌西円山病院
サーとの比較において口腔期の下位項目評価点に有意差
る食形態との関係について調査したので報告する。【対
がみられた。B-3:ゼリーと他の嚥下食との比較では下位
象】平成 27 年 10 月から 12 月の間に担当 ST が MASA を
項目評価点に有意差がみられなかった。【考察】A:嚥下
採点した当院入院患者 201 名(平均年齢 82,1 歳)【方
食間では MASA の合計点に有意差がないものが多く、合
法】対象者に実際に提供されている食形態:常菜、軟菜
計点を食形態選択の指標とすることは適切ではないと考
(コード 3)、五分菜(コード該当なし)、ミキサー(コー
える。B:軟菜とミキサー、五分菜とミキサーとの比較よ
ド 2-1)
、ゼリー(コード 1j)と MASA 評価点との関係を
り口腔期の下位項目評価点が食形態の選択に影響を与え
以下の 2 点で調査するため Kruskal-Wallis の検定を行っ
る可能性があると考える。ゼリーと他の嚥下食との有意
た。A:食形態ごとに群分けし、ペアごとに MASA の合
差がみられなかった原因として評価者間での評価基準の
計点を比較。B:A と同様、ペアごとに MASA の下位項
違いがあることが懸念され、当院の今後の課題であると
目評価点を比較。解析には SPSS statistics version22 を
考える。
使用した。【結果】A:常菜と嚥下食との比較では合計点
の有意差がみられたが嚥下食間の比較では五分菜とミキ
サーとの比較を除いて合計点に有意差はみられなかった。
B-1:常菜と嚥下食との比較では軟菜との比較を除いて
207
2
2
日目
B-2:嚥下食間の比較では軟菜とミキサー、五分菜とミキ
回、当院入院患者の MASA 評価点と実際に提供されてい
ポスター演題
先行期から咽頭期の下位項目評価点に有意差がみられた。
Assessment of Swallowing Ability) を 導 入 し た。 今
口頭演題 日目
【目的】当院では平成 27 年 10 月より MASA(The Mann
2-3-22
日 程
摂食嚥下障害領域の言語聴覚療法の開発に関する研究-言語聴覚士による口
腔ケアの実情 アンケート調査結果報告-
牧野日和 1,2)、早川統子 1,2)、山本正彦 1,2)、夏目長門 2)
愛知学院大学 心身科学部 言語聴覚科学コース 1)、愛知学院大学歯学部附属病院 言語治療外来 2)
特別プログラム
目的:言語聴覚士(以下 ST)が行っている口腔ケアの実
が 67.2 %と多く、養成校で学んだについては 34.4 %で
態を調査し、1.ST が行っている口腔ケアの目的、2.ST が
あった。考察:今回多くの ST は臨床において口腔ケアを
行っている口腔ケアの方法/内容、3.ST が口腔ケアを行
実施しているものの養成校における教育が不充分である
う際に困ってること、4.ST が口腔ケアの教育を何処で受
ことが考えられた。また歯石除去や出血のある患者への
けたかを調査、摂食嚥下障害領域の言語聴覚療法の開発
対応など ST にとって法的に許可されていない行為をして
のための資料として、ST が実施する口腔ケアの実態を調
いる ST がいることがわかり、口腔ケア教育の必要性と緊
査すること。実施方法:日本言語聴覚士協会の病院・施
急性が浮き彫りになった。
設検索を参考に全国の ST が所属する病院・施設 265 施
設を選定し、郵送にてアンケートを実施した。結果:口
口頭演題 日目
1
腔ケアを実施している ST は 88.9 %、口腔ケアの実施頻
度は毎日が 71.9 %、口腔ケアにかける時間は 10 ~ 20
分が 29.7 %(最多項目)だった。また ST の口腔ケア実
施目的は摂食嚥下機能向上が 75.0 %、嚥下性肺炎予防
が 57.8 %と多く、実施内容は食渣除去が 98.4 %、舌苔
除去と口腔マッサージが 95.3 %と次いで多かった。な
かには医療行為である歯科除去をしている ST が 14.1 %
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
存在した。一方口腔ケアをどこで学んだかは施設外研修
2-3-23
長期療養病院における経口摂取を目指した嚥下リハ取り組みについて
森田一砂 1)、椎名英貴 2)
慈誠会浮間舟渡病院 リハビリテーション科 1)、社会医療法人大道会森之宮病院 リハビリテーション部 2)
【はじめに】経口摂取の重要性が指摘される中、長期療養
た。3 群の年齢は経口摂取群 72.6 歳、お楽しみ群 79.5
病院においても積極的な嚥下リハを行う機会が増えてい
歳、 困 難 群 82.5 歳、 認 知 機 能 評 価 で あ る CBA 得 点 は
るが、その結果について詳細な報告は多くはない。今回
経 口 摂 取 群 15.3 点、 お 楽 し み 群 8.6 点、 困 難 群 6.9 点
長期療養病院で積極的に経口摂取を行うことを目的に嚥
であった。FIM 得点は経口摂取群 36.0 点、お楽しみ群
下リハを行ったので、結果を報告する。
22.0 点、困難群 20.2 点であった。経口摂取群 6 名のう
【対象】医療療養病床を中心とした当院に入院し、嚥下
ち、脳卒中後継続的に嚥下リハを行ってきたが、長期的
障害を呈し、医師から経口摂取を目指したリハを行うよ
に嚥下障害が回復したことで経口摂取が可能になったと
うに指示があった 26 名。男性 13 名女性 13 名、平均年
考えられた者 3 名、嚥下困難と判断されリハが行われな
齢 79.7 歳、診断名は脳卒中 7 名、脳外傷 2 名、誤嚥性肺
かったが、当院にて介入した結果経口摂取可能であった
炎 12 名、パーキンソン病 1 名、その他 4 名。栄養方法は
2 名、肺炎後の嚥下リハにより経口摂取可能になった者 1
IVH9 名、経鼻経管栄養 8 名、PEG9 名であった。
名であった。
【介入】介入方法は患者の状態に合わせた間接嚥下リハ、
【考察】長期療養病院入院の嚥下障害の要因、絶食期間、
直 接 嚥 下 リ ハ を 実 施。 介 入 期 間 は 1 週 間 か ら 4 か 月 で
その期間の栄養方法は多様である。療養病床にて嚥下リ
あった。
ハを行った結果 3 食経口摂取に至る患者は少なくなく、
【結果】3 食経口摂取に至った者(経口摂取群)は 6 名、
積極的な介入は有効である。一方誤嚥性肺炎を繰り返す
お楽しみ程度に摂取できるようになった者 6 名(お楽し
患者には予後不良者が多く、慎重にリハを進め、改善の
み群)、経口摂取困難であった者(困難群)12 名であっ
可能性のある患者を見極めていくことが重要である。
208
2-3-24
バルーン訓練により重度嚥下障害が改善した皮膚筋炎の1症例
独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院 リハビリテーション科
自己喀出する唾液も減少し、入院 71 日の VF で食道入口
訓練を含む嚥下訓練を実施、改善がみられたので報告す
部の開大が確認されたため、ギャッジアップ 60 度にてゼ
る。【症例】40 歳代男性、医学的診断名は皮膚筋炎。X 年
リーでの直接訓練を開始。その後、段階的に姿勢・食形
Y 月上旬より倦怠感、握力低下、全身筋肉痛を認め、そ
態を上げ、入院 113 日より座位にて常食摂取、入院 150
の後顔面・四肢に皮疹が出現し A 病院受診。皮膚筋炎疑
日、退院を機に訓練は終了した。【考察】先行研究より皮
いで B 病院に転院し、皮膚筋炎と診断。第 40 病日より唾
膚筋炎の嚥下障害は、喉頭挙上や咽頭収縮減弱、鼻咽腔
液嚥下困難となり禁食となった。第 59 病日リハビリテー
閉鎖不全による嚥下圧の低下、食道入口部の開大不全が
ション目的で当院に入院。【経過】入院時より禁食。唾液
出現し、訓練として、咽頭収縮や喉頭挙上訓練、バルー
嚥下も困難で常時自己喀出していた。入院 15 日に VF を
ン法が報告されている。本症例も同様の所見を認め、筋
実施、食道入口部開大困難、喉頭挙上・咽頭収縮・鼻咽
力増強訓練によって喉頭や咽頭筋群の改善がみられ、挙
腔閉鎖不全、顕著な誤嚥が認められた。筋力増強訓練を
上範囲も拡大した。バルーン訓練追加後からは食道入口
開始し、入院 43 日の VF では、喉頭挙上に改善は認めら
部の開大や嚥下パターンにも改善が認められたことから、
れるも、食道入口部の開大は依然不全であったため、バ
筋力増強訓練とバルーン訓練の相乗効果により嚥下障害
ルーン法を試みたところ、微量ではあるが液体の食道へ
が改善したと考えられた。
口頭演題 日目
ルーン訓練を開始した。徐々に液体嚥下が可能となり、
に対し、嚥下造影検査(以下 VF)による評価とバルーン
特別プログラム
【はじめに】皮膚筋炎発症後、重度嚥下障害を呈した症例
日 程
石光暁子、池澤真紀、伊藤有紀、伊藤美幸、千葉康弘、進藤靖史、山田祐歌、大塚友吉
1
の通過が認められた。しかし、咽頭感覚が正常でバルー
2-3-25
長期間経過した封入体筋炎患者に対するバルーン拡張法の有効性について
大高明夫 1)、宮崎友理 2)、橋本 悠 2)、玉置智子 2)、中西一郎 3)、隅谷 政 1)
和歌山県立医科大学附属病院 紀北分院 リハビリテーション科 1)、
和歌山県立医科大学附属病院 リハビリテーション部 2)、和歌山県立医科大学附属病院 紀北分院 神経内科 3)
等)により独力でバルーン拡張法を継続する必要があっ
した症例にバルーン拡張法を実施したので報告する。症
た。上肢挙上の制限や手指屈曲制限によりバルーン拡張
例:60 歳代男性。封入体筋炎の診断後約 13 年経過。発
後に引き抜く動作が困難であったためカテーテル延長
症当初は IVIG 療法の効果があり年 3 回実施していた。発
チューブを接続する事で引き抜き動作が自立し無事自宅
症 7 年より固形物の嚥下困難出現。発症 9 年よりバルー
退院となった。考察:バルーン拡張法の手技については
ン拡張法を実施していた。発症 11 年より独居困難とな
過去に経験があったが筋炎の進行とともに独力で実施困
り、次男と半同居となったが家庭の事情により IVIG 療法
難となっていた。バルーン拡張法の有効性を再認識した
とバルーン拡張法は中断していた。発症 13 年に IVIG 療
ことにより意欲が高まった事と上肢機能に応じてカテー
法、リハビリ目的で当院入院となった。意識清明。見当
テルを工夫した事が操作自立につながった。結語:咽頭
識良好。脳神経脱落所見なし。認知症なし。構音障害な
期嚥下障害を呈する封入体筋炎患者に対してバルーン拡
し。徒手筋力検査では上肢 2-3 レベル手指 1-2 レベル下
張法は有効な事がある。患者個々の状態や能力、環境に
肢 1-3 レベル。関節可動域は両手指に屈曲制限あり。感
合わせて嚥下指導、カテーテルの工夫を提案していく事
覚障害なし。RSST3 回 /30 秒。飲水テスト良好。随意的
は重要である。
咳嗽可能。IVIG 療法後 VF:咽頭通過障害あり。バルーン
拡張法後は通過障害改善。入院中は ST 介助でバルーン拡
209
2
2
日目
得られない。ヘルパーにバルーン拡張法を依頼できない
下障害を伴いやすい。今回、長期間経過し筋委縮が進行
ポスター演題
張法を実施していたが、退院後は諸事情(家族の協力が
縮が大腿四頭筋や手指手首の屈筋群等にみられ、また嚥
1
口頭演題 日目
はじめに:封入体筋炎は緩徐進行性の筋疾患であり筋萎
ポスター演題 日目
ン訓練に苦痛が伴ったため、頻度や量を加減しながらバ
2-3-26
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
特定高齢者における舌機能向上訓練「ペコぱんだ体操」の効果
榊原真紀 1)、村上光裕 1)、坂本明子 1)、石部貴之 1)、原山 秋 1)、荒牧美佐子 1)、村上陽子 2)、
川畑武義 3)
因島医師会病院 リハビリテーション科 1)、因島医師会介護老人保健施設ビロードの丘 2)、
因島医師会訪問看護ステーション 3)
【はじめに】
武内ら(2011)の先行研究では口腔・嚥下機能が良い者
ほど最大舌圧が高いことが示されている。今回、特定高
齢者に対し「みんなで楽しく舌を鍛えて、いつまでもお
いしくごっくん!」をコンセプトに、楽しく継続できる
効率的な舌の筋力トレーニング体操として、「ペコぱんだ
体操」と称する訓練を行い、各評価項目の訓練前後の測
定結果をもとにその訓練効果を検討した。
【方法】
被験者:特定高齢者の女性 10 名(平均年齢 77.6 ± 3.7 歳)
使用機器:JMS 舌圧測定器、舌圧測定データ解析用ソフ
ト、舌トレーニング用具「ペコぱんだ ®」(JMS 社製)
評価項目:最大舌圧、舌における筋の瞬発力・持久力、
挙上回数、嚥下時舌圧、RSST、口腔に関する質問項目の
訓練前後の測定を実施。
手続き:「ペコぱんだ体操」を実施する。訓練内容は各被
験者に対し、最大舌圧値の 60 %以上相当の「ペコぱん
だ ®」を選択し、
1.負荷の弱い等張性訓練
2.負荷の強い等尺性訓練
3.負荷の強い等張性訓練
2-3-27
以上の順に合計 15 分間程度の訓練を週 2 回、15 週間実
施した。
【データ解析】
訓練前後の各評価項目において、Wilcoxon の符号付順
位和検定を行い、p<0.05 を有意差ありとした。
【結果】
訓練前後での最大舌圧の変化については、訓練前 35.1 ±
12.2kPa から訓練後 41.7 ± 13.0kPa へと有意な向上を
認めた(p = 0.007)。その他の評価項目についても、挙
上回数、舌持久力、瞬発力、RSST、口腔に関する質問項
目で有意な向上を認めた。
【考察】
結果より、「ペコぱんだ体操」により舌機能が向上したと
考える。筋力トレーニングにおいて、等尺性運動では最
大筋力、等張性運動では持久力が向上すると言われてお
り、本研究における「ペコぱんだ体操」では双方を取り
入れているため最大筋力、持久力が向上し、その結果舌
機能向上につながったと考えられる。また、3 つの運動
を順に取り入れることで効率的に筋力トレーニングでき、
無理をせず継続できるのではないかと考える。
嚥下訓練における酸味刺激の活用
井川大樹
新さっぽろ脳神経外科病院リハビリテーション科
【はじめに】Logemann(1995)や芦田ら(2005)に
入院 76 日目でグループホームへ退院。【症例 2】基本情
より、酸味刺激が、嚥下反射を促進させることが報告さ
報:60 代女性。脳梗塞にて当院入院、左皮質下と延髄
れている。しかし、酸味刺激のリハビリへの活用につい
に病巣を認める。認知機能面は良好。右顔面・舌に軽度
ての報告は多くはない。今回、介入の初期段階に、酸味
の麻痺を認める。初回評価時:唾液嚥下も困難。アイス
刺激を用いることが、有効であった 2 症例を経験したの
マッサージ実施も、嚥下反射は惹起されず。酸味刺激の
で報告する。【症例 1】基本情報:80 歳代後半、男性。グ
利用:リハ開始 4 日目に、レモン汁を使用し口腔内を刺
ループホーム入所中に、誤嚥性肺炎のため絶食となり、
激することで、嚥下反射を認めたため、間接的嚥下訓練
リハ目的にて当院に入院。既往に多発性脳梗塞の診断あ
にてレモン汁の使用を開始。48 日目に、唾液処理は可能
り、認知機能低下、軽度右片麻痺、感覚障害を認める。
となり、少量の飲水も可能になった状態で、リハビリ目
初回評価:ベッド上 30 度ギャッチアップにて少量の冷水
的で他院へ転院された。【考察】今回、異なるタイプの嚥
とゼリーで評価実施。咀嚼運動は認めたが、嚥下反射は
下障害患者 2 例に酸味刺激を使用することで、訓練の糸
認めず、むせを認めた。またゼリー飲料においては、著
口を得ることができた。この 2 例は障害機序こそ違うも
明な移送不良がみられた。アイスマッサージ実施も嚥下
のの、両者とも嚥下が惹起されないという点では共通し
反射は惹起されず。酸味刺激の利用:入院 13 日目、レモ
ていた。このことは、酸味刺激が、嚥下惹起不良の患者
ン汁を使用し口腔内を刺激したところ、刺激後に嚥下反
に対して、有効な刺激である可能性を示唆するものと考
射が認められたため、間接的嚥下訓練にてレモン汁の使
える。
用を開始。入院 65 日目に 3 食全粥・軟菜刻み食へ移行。
210
2-3-28
カニューレ装用者に対しサクション管から酸素を送気した嚥下酸素訓練
日 程
岡野雄二、岡野智美
芙蓉会 南草津病院
第 4 頸椎下端と舌骨下端を結んだ線を A とし、画像解析
ソフト imageJ にて Y - A 間の角度を分析した。同条件で
2 口嚥下し結果を比較した所、酸素無し舌骨前進位角度が
26.65 度、22.95 度 に 対 し 有 り 25.2 度、23.6 度 と 喉 頭
拳上の角度において酸素の優位性を認めなかった。
「考察」
嚥下酸素訓練場面で咽頭残渣量が軽減した要因として 1,
喉頭拳上範囲の拡大による嚥下圧向上 2, 酸素を口腔へ送
り意図的に口腔内圧を高め食道入口部開大の際に圧差を
作り出し引き込み効果を生み出した 3, 酸素が咽頭後壁に
何らかの刺激となり嚥下圧を高める事に寄与した。の上
記 3 点を検討したが、舌骨前進位画像解析の結果、酸素
が喉頭拳上に影響を与えない事が明らかになった事から、
嚥下圧の向上は 2,3 によるものであると推察する。
久保維子 1)、添田みゆき 1)、伊藤純平 1)、池田美樹 1)、松尾 愛 1)、関谷真美子 5)、
甘井 努 5)、高橋秀寿 2,4)、牧田 茂 3)
211
2
2
日目
療器を利用したが向上はわずかだった。第 43 病日に誤嚥
性肺炎を発症した。経管栄養を併用しペースト食で転院
した。回復期病院ではムース食へ向上したが胃瘻併用と
なった。症例 2 はヨーグルトから開始した。一口量 5g で
舌運動の向上を図ったが向上はわずかで経管栄養を併用
しペースト食で転院となった。当初意識障害を伴ってい
たが転院時には 50 音表の使用が可能になった。回復期
病院では胃瘻併用しペースト食で経過している。【考察】
FCMS は先行研究でも機能訓練の効果が得られにくく 3
食経口摂取や音声表出に至らない症例が多く今回の 2 症
例も難渋した。重度の嚥下、構音障害の患者に対し、急
性期病院では合併症を生じさせず、早めに症状の把握や
見通しを立て胃瘻造設や AAC 手段の選択肢を提供する必
要があった。患者に様々なリハビリの選択肢を提供する
ため、症例を重ね、積極的に転院先へ状況確認を行い、
予後予測の精度を高めていくことが重要だと思われる。
ポスター演題
【はじめに】Foix-Chavany-Marie 症候群(FCMS)の 2
症例について急性期病院の対応に必要な事を後方視的に
検討した。【症例】症例 1 は 60 歳代女性。右前頭頭頂葉
脳梗塞で t-PA 施行された。既往に脳梗塞(右小脳、左前
頭頭頂葉)があった。症例 2 は 20 歳代男性。呼吸困難で
搬送され挿管、胸腔ドレナージ、気管切開術が施行され
た。頭部 CT で左後頭頭頂葉、右前頭頭頂葉に梗塞が認め
られた。
【評価】両症例ともに JCSI-3、両側顔面神経麻
痺で自動運動は認められず自然下で瞬きや欠伸、口角挙
上を認めた。病的反射もあった。RSST0 回 /30 秒。VF で
舌の送り込み運動は見られず 30 度頸部屈曲位で下咽頭に
食塊が落下すると嚥下反射惹起された。症例 1 は咽頭残
留があったが症例 2 は認められず、5g 量でわずかに舌運
動が生じた。症例 1 は 50 音表が使用できたが、症例 2 は
訓練が必要であった。【経過】症例 1 はペースト食から開
始した。食事後半に嚥下反射惹起遅延を認め、低周波治
1
口頭演題 日目
埼玉医科大学 国際医療センター リハビリテーションセンター 1)、
埼玉医科大学 国際医療センター 運動呼吸器リハビリテーション科 2)、
埼玉医科大学 国際医療センター 心臓リハビリテーション科 3)、社会福祉法人 毛呂病院 薫風園 4)、
医療法人 若葉会 若葉病院 5)
1
ポスター演題 日目
Foix-Chavany-Marie症候群に対し急性期病院における早期予後予測の重要
性
口頭演題 日目
2-4-01
止画に取り込み、第 3 頸椎下端と第 4 頸椎下端を結んだ縦
線を X、第 4 頸椎の下端で X と直角に線を引いたのを Y、
特別プログラム
「はじめに」
カニューレ装用者に対し、サクション管(以下ライン)
から酸素を送気しながら直接嚥下訓練を実施する事で絶
食から経口摂取が可能となった症例を経験した。筆者ら
は、酸素を送気しながら嚥下訓練する事を嚥下酸素訓練
と名付けた。嚥下酸素訓練実施後の VF 検査にて姿勢・食
事形態、1 口量が同じであるにも関わらずラインからの酸
素の有無によって嚥下反射、咽頭残渣で差を認める結果
を得た。嚥下酸素訓練場面で咽頭残渣量が軽減した要因
としては以下の 3 点を考えた。1, 喉頭拳上範囲の拡大に
よる嚥下圧向上 2, 酸素を口腔へ送り意図的に口腔内圧を
高め食道入口部開大の際に圧差を作り出し引き込み効果
を生み出した 3, 酸素が咽頭後壁に何らかの刺激となり嚥
下圧を高める事に寄与した。今回、画像解析ソフトを用
いて酸素送気の有無での嚥下時における舌骨前進位の比
較し 1, の可能性について検討したのでここに報告する。
「方法」
VF 画像から、酸素有り・無し嚥下の際の舌骨前進位を静
2-4-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
南風病院における誤嚥性肺炎の予防にむけた取り組み -病棟看護師による
嚥下スクリーニング検査の効果-
樋渡健太朗 1)、吉岡もとみ 1)、竹下夕梨恵 1)、小原 仁 2)、伊集院由香 3)、鹿島友義 4)
公益社団法人 鹿児島共済会 南風病院 医療技術部 リハビリテーション科 1)、
公益社団法人 鹿児島共済会 南風病院 医療情報部 2)、公益社団法人 鹿児島共済会 南風病院 看護部 3)、
公益社団法人 鹿児島共済会 南風病院 診療部 4)
【はじめに】急性期総合病院である当院では、疾患や治
有意水準は 5 %とした。【結果】対象患者は 608 名であっ
療、術後の廃用などにより ADL の低下、嚥下機能低下、
た。患者特性は入院時年齢に統計的有意差を認めた。介
院内で誤嚥性肺炎が生じる可能性がある。安全な食事の
入前後の平均年齢(標準偏差)はそれぞれ 80.2 歳(9.9
提供や安定した栄養の確保の為には早期からの評価・訓
歳)、82.5 歳(9.9 歳)であった。院内肺炎の発症割合に
練・指導などによる介入は不可欠である。嚥下機能低下
ついては、介入強化前 9.8% から介入強化後 2.9% の有意
患者を早期に発見する目的で病棟看護師による嚥下スク
な減少を認めた(p<0.001)。【考察】誤嚥性肺炎の低減
リーニング検査を実施し、院内肺炎発症の予防に成果を
に向けては、病棟看護師による嚥下スクリーニング検査
得ている。そこで当院における NST チームが主体となっ
が効果的である可能性が示唆された。ハイリスクの要因
た病棟看護師による嚥下スクリーニング検査の効果につ
がある患者を対象に病棟看護師による嚥下スクリーニン
いて報告する。【対象と方法】2014 年 1 月から 2015 年
グ検査を実施し、嚥下機能低下の患者を検出する事で主
12 月の間に言語聴覚士(以下、ST)による評価、訓練
治医にも患者の嚥下機能の状況を把握する一つの判断材
を行った摂食・嚥下障害症例とした。病棟看護師による
料となっている。医師・看護師・栄養士・薬剤師等の他
嚥下スクリーニング検査の患者特性は年齢、性別、主傷
職種と連携を図り、食事形態や経管栄養の有無、内服方
病、入院時 Alb 値、ST 介入期間、NST 介入の有無を調査
法など患者の身体状態や嚥下状態に合わせた適切な選択
した。院内肺炎の発症割合については、フィッシャーの
を行う事で誤嚥性肺炎の予防に繋がっているのではない
直接確率検定を用いて介入前後の比較を行った。なお、
かと考えられる。
2-4-03
BADにより脳梗塞拡大した患者の運動機能の推移について
佐藤雅敏、堀川貴広、小松あやみ、牧本卓也
社会医療法人 杏嶺会 一宮西病院 リハビリテーション科
【はじめに】Branch atheromatous disease(以下 BAD)
MRI で脳梗塞拡大認め、NIHSS2 点、10m 歩行 7.56 秒、
は、脳血管穿通枝入口部の微小アテロームによる閉塞か
TUG10.19 秒、FMA61 点、AMSD2.76 点となった。上
ら穿通枝全体に梗塞に陥る脳梗塞の病態である。BAD
記訓練プログラムを継続し、第 9 病日に NIHSS2 点、10m
は症状の悪化後リハビリ介入することが多く、発症から
歩 行 6 秒、TUG10.45 秒、FMA66 点、AMSD2.76 点 と
の詳細な運動機能を追った報告は少ない。今回 BAD に
なった。その後 AMSD は第 13 病日に 2.86 点となった。
より脳梗塞拡大した患者の運動機能の推移について報
第 15 病日に自宅退院した。【考察】本症例は第 1 病日の
告する。
【症例紹介】70 歳代男性。無職。現病歴は倦怠
MRI 画像より左放線冠中央部に梗塞巣が確認された。そ
感、右上肢脱力が出現。翌日、構音障害、右口角下垂が
の後第 4 病日の MRI 画像より左放線冠中央部の梗塞が上
出現したため、救急搬送され脳梗塞と診断された。既往
下方向に伸展した。放線冠は中央部より後方に向かって
歴に高血圧あり。妻と二人暮らしで病前の日常生活動作
顔面、上肢、体幹、下肢と錐体路の経路になっているた
は自立。【リハビリ経過】入院時より日常生活動作自立。
め、顔面、上肢の機能障害に配慮した介入が必要となる。
第 2 病日よりリハビリ介入。訓練プログラムは歩行訓
本症例は顔面、上肢に症状の悪化を認め、下肢には認め
練、上肢機能訓練、口腔機能訓練を中心に実施。NIHSS2
なかった。BAD は診断とともに症状が悪化することが
点( 顔 面 麻 痺 1 点、 構 音 障 害 1 点)。10m 歩 行 7.78 秒、
多いが、今回本症例を経験して発症より時間経過が長く
Timed Up and Go test(以下 TUG)11.94 秒。Fugl-
なっても悪化する可能性があり、機能障害の変化に留意
Meyer Assessment(以下 FMA)64 点、標準ディサー
した介入が必要である。
スリア検査(以下 AMSD)2.83 点であった。第 4 病日に
212
2-4-04
急性期失語症患者の実用的コミュニケ-ション能力評価法の検討
佐賀大学医学部附属病院 先進総合機能回復センター 1)、国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 2)
信頼性は、総得点の採点一致度が 0.56 と中等度の一致
価することを目的として「コミュニケーション評価票」
度であった。妥当性は、総得点と FIM コミュニケーショ
を作成し、その有用性、信頼性、妥当性について検討し
ン項目との相関が r = 0.95(p<0.01)であり妥当性が
た。また、評価票の得点と言語機能、認知機能との関連
あると考えられた。言語機能及び認知機能との関連性に
性について検討した。【対象】発症から 12 日以内の右利
ついては、スピアマン順位相関係数で言語機能 r = 0.78
き左大脳半球病変の失語症患者 14 名(68.4 ± 14.0 歳)。
(p<0.01)、 意 欲 r = -0.69(p<0.05) で あ っ た。 知 的
機能との間には相関は見られなかった。【考察】本評価票
ン能力を「音声言語」、
「文字言語」、「非言語」、「コミュ
は急性期失語症者の実用的コミュニケーションを評価す
ニケーションの基盤となる認知機能」の 4 領域から評価
る上で有用であり、ベッドサイドにおいても実施できる
する「コミュニケーション評価票」を作成し、病棟にお
ため急性期の失語症患者に有用であると考えられた。本
ける言語聴覚士との 15 分間の会話を VTR に収録し、言
評価票の得点は、言語機能および意欲との関連性が強く、
語聴覚士 2 名が評価を行った。関連要因の検査として標
両機能が実用的コミュニケーションに関与することが明
準失語症検査、レーブン色彩マトリクス検査、標準意欲
らかとなった。一方、知的機能との間には関連性を認め
検査法の面接による意欲評価スケールを実施した。【結
なかった。
果】コミュニケーション評価票は、急性期の非流暢性失
口頭演題 日目
【方法】会話場面における失語症患者のコミュニケーショ
特別プログラム
急性期失語症患者の実用的コミュニケーション能力を評
日 程
池下博紀 1,2)、藤田郁代 2)、皆良田貴之 1)、前田香織 1)、中村彩花 1)、南里悠介 1)
1
語群と流暢性失語群の基礎、非言語、音声言語、文字言
2-4-05
ICU-Acquierd weaknessへのST介入
佐藤幸子 1)、古口徳雄 1)、小嶋知幸 2,3)
千葉県救急医療センター リハビリテーション科 1)、市川高次脳機能障害相談室 2)、
武蔵野大学 人間科学部 人間科学科 3)
MPT5 秒以下、発話明瞭度 3。RSST1 回 /30 秒、MWST
れる、原因疾患以外に来す要因がない筋力低下を、ICU-
段階 4、FoodTest 段階 4。嚥下反射正常。喉頭挙上や舌
Acqired weakness( 以 下 ICU-AW) と し て、 い わ ゆ
骨前方移動不十分。喉頭筋群の筋力低下を認めた。
【介入内容】1)精神活動性の低下傾向に対して認知訓練、
でに理学療法士による介入の意義が注目されているが、
2)構音や音声、呼吸機能の低下に対して口唇や舌の他
言語聴覚士(以下 ST)の関与は報告されていない。今
動・自動運動、pushing 法、Blowing、腹式呼吸、3)摂
回、三次救急医療機関において 2015 年 6 月~ 12 月に ST
食嚥下機能の低下に対して頚部ストレッチ、頭部挙上、
が介入した 21 名のうち、2 症例の経過について報告し、
舌尖挙上嚥下など間接的嚥下訓練や直接的嚥下訓練を実
ICU-AW に対する ST 介入の意義について検討したい。
施した。
【考察】ICU-AW をきたす危険因子として、長期人工呼
ST 評価は、全般的精神機能活動の低下、運動過少性構音
吸管理、ステロイド剤や筋弛緩薬の使用、血糖管理の不
障害、無力性嗄声、湿性嗄声。MPT5 秒以下、発話明瞭
良などが指摘されている。対応として、過鎮静の防止、
度 3。RSST 不 可、MWST 段 階 4、FoodTest 段 階 4。 嚥
血糖の管理、早期からの運動介入が有効とされ、理学療
下反射正常。喉頭挙上や舌骨前方移動は可能だが、挙上
法に対する期待が高まっているが、ST も、認知機能の低
位を保持できず、喉頭筋群の筋力低下を認めた。
下や、筋力が関与する発声発語や摂食嚥下機能に対する
2)B 氏:50 歳代女性。気管支喘息、肺炎。ST 評価は、
介入を通して、集中治療室入室中から ICU-AW の予防・
全般的精神機能活動の低下、無力性嗄声、粗ぞう性嗄声。
軽減に寄与できるのではないかと考えた。
213
2
日目
【症例】1)A 氏:80 歳代男性。S 状結腸捻転、腸管壊死。
2
ポスター演題
る廃用症候群とは、区別して定義するようになった。す
1
口頭演題 日目
【はじめに】近年、集中治療室入室後の重症患者にみら
ポスター演題 日目
語の各領域の障害特性を把握するうえで有用であった。
2-4-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
「食べたい」
「話したい」への長期的な支援 -胃瘻から経口摂取へ移行した
重度嚥下障害例-
竹山彩未、石川春香
医療法人渓仁会 定山渓病院
【はじめに】脳幹梗塞により機能的な回復は困難と判断
更。胃瘻から経口に完全移行となる。【現在の評価】呼吸
され胃瘻栄養管理となった一例に長期的な訓練・指導
1.6 点、発声 0.5 点、鼻咽腔閉鎖 2.3 点、口腔構音 2.4 点、
を 行 な っ た 結 果、 胃 瘻 か ら 経 口 へ 移 行 し た。【 事 例 紹
発話明瞭度 3.5。RSST1 回 /30 秒、嚥下反射減弱も流涎
介】60 代 男 性、2008/2 脳 幹 梗 塞。2008/6 胃 瘻 造 設、
軽減、全粥と嚥下食を 3 食自力摂取。【考察】本症例は
2008/11 当院入院。重度嚥下障害、重度構音障害、摂食
原疾患の梗塞部位に延髄を含み、更に入院時既に発症か
や発話への意欲高い。
【初期評価】AMSD 呼吸 1 点、発
ら 9 ヶ月が経過していたが、長期的な訓練で嚥下面、構
声 0 点、鼻咽腔閉鎖 1.6 点、口腔構音 1.6 点。発話明瞭
音面共に改善が認められた。その要因として、ST 訓練と
度 5。RSST0 回、流涎多量、嚥下反射ほぼ消失。自主ト
自主トレの継続により口腔構音器官の筋力増強、運動範
レを指導し、ST 訓練では自主トレが困難な訓練を実施。
囲拡大が図られ、更に小グループ訓練による他者交流が
【経過】(入院→ 2010 年)嚥下反射増加し、VF 実施。強
い摂食希望から直接的嚥下訓練開始。発話は単語レベル。
発話意欲を引き出し日常的な運動量増加に繋がったこと。
会話を楽しむ環境や安全に食べられる環境づくりにより
(2011 年→ 2013 年)食事条件表作成し、昼食の摂取訓
「食べたい」「話したい」という意欲をモチベーションに
練開始。1 時間程で全量摂取可能となり 1 食分の食事摂
つなげ、保ち続けることが出来たこと。知的機能が保た
取確立。言語面中心の訓練に変更。(2013 年→現在)同
れており、安全な食事摂取方法を習得出来たこと。残存
室者 B と小グループ訓練開始、口頭のみでやりとり可能
機能を活かした代償的な嚥下運動の獲得により能力面が
となる。B との会話の中で「3 食食べたい」等と聞かれ、
向上したことが考えられる。
評価後 3 食経口摂取へ移行。VF 実施後、主食を全粥に変
2-4-07
「いつまでもおいしく食べて暮らす」を支える~健康行動理論を応用した介
護予防プログラム(試案)の作成と言語聴覚士による実践~
清水宗平 1)、今井淑惠 1)、佐々城友美 1)、市川 勝 1,2)
医療法人社団 哺育会 さがみリハビリテーション病院 1)、一般社団法人 AMG 協議会リハビリテーション部 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】相模原市において、「口腔機能向上プログラ
か」「歯磨きの実施回数および実施する理由」「今回の講
ムを利用したい」市民の割合は 5.2 %に留まり、いかに
話内容の感想」「今後さらに発展した内容の講座を受講
プログラムの重要性を市民に周知し継続的に実践するか
したいか」の 5 項目とし、90 分の講座実施前後で聴取し
は喫緊の課題である。これらの問題意識のもと、我々は
た。【結果】介護予防教室への参加回数は「3 回」が最多
行動変容ステージモデル理論(Prochaska ら 1997)お
で、「認知症」「転倒予防」が多く「口腔機能」への参加
よび ST の専門性に基づく口腔機能向上プログラム案を作
経験は皆無であった。また、口腔関連の介護予防の内容
成し、市民向けに実践する機会を得たので、参加者のア
は「知らない」との回答が多かった。一方、歯磨の回数
ンケート結果に考察を加え報告する。
【対象・方法】対
は「 毎 日 1 ~ 2 回」 が 最 多 で、1 日 1 回 未 満 の 者 も あ っ
象は相模原市 A 地域包括支援センターが主催する介護予
た。歯磨きをする理由は「口臭予防」
「食べ残しの除去」
防教室に参加しアンケート調査への協力の得られた高齢
「虫歯予防」の順であった。また、参加者の 82 %が「発
者 17 名(男性 1 名、女性 16 名)である。プログラムの
展的な講座への参加を希望」した。【考察・まとめ】アン
作成に際し、参加者の行動変容ステージを『無関心期』
ケート結果より、参加者の多くが「無関心期」から自分
と仮定したうえで、介護予防マニュアル改訂版(介護
のこととして問題を捉える「関心期」に移行したことが
予防マニュアル改訂委員会 2012)の内容を参加者が体
推察され、行動変容ステージを意識した目標設定による
験的に学べるよう座学・ワーク・実技を取り入れた。ア
介護予防プログラムが有効である可能性が示唆された。
ンケート調査項目は「介護予防教室に参加した回数とそ
のプログラム内容」「口腔関連の介護予防を知っていた
214
2-4-08
特養での摂食・嚥下リハビリテーションにおける言語聴覚療法の有効性
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
組み前、全入居者 30 名中 29 名に口腔機能低下がみられ
の多くが摂食・嚥下障害を有するが、そのほとんどが十
た。取り組み後、口腔機能向上により食形態を上げられ
分なリハを受けられていない。今回、当院 ST はリハ職員
た入居者が 6 名おり、その内 3 名が自力摂取可能となっ
不在の隣接する同一法人特養に週 1 回介入し、入居者の
た。また職員へのアンケート調査では、ケアプランに摂
生活向上に繋がる多職種連携を試みたので報告する。【対
食口腔嚥下機能・口腔内環境に関する具体的な目標と援
象】平成 26 年 5 月時点での全入居者 30 名【期間】9 か
助内容が明記されるようになった等の変化が確認された。
月【取り組み】特養の現状把握を目的に、1 日を通した
現在、ST -職員間で検討する内容は、ポジショニングや
特養の仕事内容確認と全特養職員(以下:職員)へアン
特別プログラム
【はじめに】特別養護老人ホーム(以下:特養)入居者
日 程
櫃田真由美、小谷優平、佐藤勝之、竹内茂伸、角田 賢
食具の選定・整容動作・認知機能など多岐に渡っている。
【考察】成果が出た要因として、職員と密にコミュニケー
に対し評価に基づいた助言・指導やマネジメントを行っ
ションを取りながら指導したことが挙げられる。そのた
た。まず ST が摂食口腔嚥下機能・口腔内環境を 3 か月ご
め、職員のニードに合った助言や現実的に実施可能なリ
とに評価し、評価内容を職員に伝達。併せて職員に口腔
ハを提案でき入居者の生活向上に繋げられたと考える。
ケア時に行えるリハを実地指導した。2 か月ごとの勉強
今回の取り組みで ST が多職種連携の核となり入居者の生
会開催、毎月のリーダー会議に出席、ST -職員間の情報
活を支える存在になれ、言語聴覚療法の職域拡大にも繋
共有ノート設置などの取り組みを行った。職員の質問・
がる可能性が示唆された。
口頭演題 日目
ケート調査を実施後、従来の個別機能訓練ではなく職員
1
要望に応えるのと同時に、ST が職員に声をかけリハの必
2-4-09
回復期以降に集中的な外来言語聴覚療法を実施した失語症の一例
齋藤玲子 1)、渡辺 基 1)、川上勝也 1)、立石雅子 2)、小林一成 3)、安保雅博 3)
東京慈恵会医科大学 附属病院 リハビリテーション科 1)、目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科 2)、
東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座 3)
位× 5 回 / 週程度の集中的言語聴覚療法を実施。X+6 ヶ
的な言語聴覚療法を実施し改善を見た症例を経験したの
月後、SLTA 正答率は短文の聴理解 90%、読解 100 %、
で、その経緯と改善の要因について報告する。【症例】40
口 頭 命 令 30 %、 書 字 命 令 70%、 呼 称 95 %、 単 語 復 唱
歳代半ばの男性、会社員。X 日に脳梗塞を発症し救急搬
100 %など全般に改善。病識は適切になり、心理的問題
送。X+22 日後に回復期リハビリテーション病院に転院。
も特に生じなかった。X+10 ヵ月後に復職、X+13 ヵ月時
入院中は継続して言語聴覚療法を受けていたが、反復性
点でも SLTA 成績は改善している。【考察】本症例は、入
経頭蓋磁気刺激の治療を希望し当院を受診。主治医との
院時と同等の言語聴覚療法を外来でも担保したことによ
話し合いの結果、当院で外来による言語聴覚療法を受け
り改善が得られたと考えられた。また、若年で運動麻痺
ることを選択、X+54 日後より訓練を開始した。理解は
や合併する他の高次脳機能障害がない等の好条件が整い、
概ね保持されていると自己認識するなど、病識は不十分
コミュニケーション機会の増加等の外来の利点を活用で
であった。運動麻痺や失語症以外の高次脳機能障害は認
きたと考えられた。介護保険の適応等に関わらず、患者
めなかった。【経過】初診時、SLTA 正答率は短文の聴理
の特性に合わせて病期に拘わらない質量とも適切な言語
解 50%、読解 90%、口頭命令 0%、書字命令 40%、呼称
聴覚療法を、外来でも提供できる環境の調整が重要であ
40%、単語復唱 50%、日常会話は相手の推測がなければ
ると考えられた。
困難で、中等度ウェルニッケ失語を認めた。非言語的コ
215
2
2
日目
X+6 ヵ月までは 5 単位× 5 回 / 週、X+10 ヵ月までは 3 単
されている。今回、若年の失語症患者に外来による集中
ポスター演題
ミュニケーション手段の活用は良好であった。外来にて
病棟で集中的な言語聴覚療法を受けることが望ましいと
1
口頭演題 日目
【目的】失語症の回復期には回復期リハビリテーション
ポスター演題 日目
要性や考え方・持つべき視点等を説明した。【結果】取り
2-4-10
日 程
病識の欠如を認めた若年性脳卒中患者の社会復帰への取り組み ~職業訓練
的リハビリの早期導入の効果~
岡野雄二、岡野智美
芙蓉会 南草津病院
「はじめに」 特別プログラム
「注文聞き取り」や「配膳・下膳・盛り付け」をイメージ
ると言われている。今回、30 代前半の社会復帰希望の症
それに伴い、初めは全く気付いていなかったのが徐々に
1.1% と少ないものの、発生患者数は年々増加傾向にあ
例を担当したが当院に転院時の際から ADL は自立であり
「何で帰ったらアカンの?」等の訴えが多く、病識・障害
の未受容がリハビリ生活の阻害要因であった。その要因
に対し機能訓練だけでなく入院当初から職業的リハビリ
を併用する事で障害受容を促し、リハビリへの意欲向上
口頭演題 日目
1
に繋げる事が出来たので報告する。 「症例」 30 代男性、診断名:脳動静脈奇形、脳出血、脳室内出
血、水頭症 X 日、右片麻痺・失語症・意識障害発症。X +
5 日、開頭血腫除去、脳動静脈奇形摘出。X + 36 日、当
院転院。 「経過」 WAIS-Rの数値がカットオフ値であっても病識の欠如か
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
に捉える事が出来なかった。そこで、病前の症例の業務
若年年齢層の脳卒中患者数を見ると 30 歳代は全体の
ら退院や早期職場復帰を願望し、自身の問題点を客観的
2-4-11
した組み合わせ課題などを実施し、障害の認識を促した。
自身から苦手な事を説明したり、自発的に対策を講じる
様に変化した。約 5 ヶ月間の訓練実施後の最終 WAIS-R
検査数値は全 IQ:87、言語 IQ:77、動作 IQ:104 まで
改善。 「考察」 身体に麻痺などがなく、自身の思う様に動作が出来て
しまうが為に、障害の認識が欠けていた症例に対し、実
際仕事で使用していた物を用いて問題解決訓練を取り入
れた。その際に、出来ない現状を体験する事で具体的に
問題点を把握すると同時に訓練への意欲向上を認めた。
以上の事から、社会復帰希望者に対して入院当初から職
能訓練的な形でリハビリを実施する事は障害の認知を促
し、認知訓練への意欲を高め、職場復帰を支援する方法
になるものと考える。
認知症の「入口問題」における言語聴覚士の役割と可能性 第1報~認知症
カフェでの相談支援を通した実践から~
市川 勝 1,2)、今井淑恵 1)、佐々城友美 1)、土屋 朱 1)、清水宗平 1)、井戸和宏 2)
医療法人社団哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科 1)、
特定非営利活動法人 Link・マネジメント 2)
【はじめに】森(2013)は、認知症の人や家族が医療や
ず。X + 4 年時、妻のみ認知症カフェに参加し、ST にコ
ケアにつながる入口部分で生じる様々な問題を「入口問
ミュニケーション面での負担感を訴えたため、地域包括
題」として整理し、出会いのポイントを前倒しすること
支援センターと連携のうえ介護保険申請の助言とともに
の重要性を指摘している。本報告では、我々が神奈川県
リハビリテーション関連の社会資源を紹介。要介護認定
相模原市内の認知症カフェにおいて実践している相談支
を受けた後にデイケア利用にて ST による支援を継続中。
援を通して、「入口問題」解決に向けた言語聴覚士(ST)
の役割と可能性について考察を加える。
(B 氏)60 代男性、意味性認知症。X 年よりコミュニケー
ション面に支障が出たため近医受診、セカンドオピニオ
【相模原市における認知症カフェの展開と ST の関与】認
ンを経て X + 1 年に上記診断となる。本人は一切のサー
知症施策推進総合戦略(厚生労働省 2015)に位置づけ
ビス利用を拒否していたが、妻と ST が認知症カフェにて
られる認知所カフェとは「認知症当事者やその家族、地
出会い、妻に対して疾患や症状に関する情報提供および
域 住 民 や 専 門 職 の 誰 も が 参 加 で き、 集 う 場」 を 指 す。
コミュニケーション場面での工夫を提案した。現在はデ
我々は 2015 年 4 月~ 12 月までに、コミュニケーション
イケアにて ST による支援を継続中。
をはじめとする生活機能の評価・助言、地域資源のコー
【考察・まとめ】地域のインフォーマルな場へのアウト
ディネート、各種情報提供等 21 件の相談支援を行った。
リーチにより、ST がコミュニケーション支援ニーズのあ
【事例】(A 氏)70 代男性、意味性認知症。X 年より語義
る人に早期から関わることで、「入口問題」の解決や継続
失語が出現、X + 2 年に意味性認知症と診断される。そ
的な支援につながる可能性が示唆された。
の後はかかりつけ医以外のフォーマルサービスは使用せ
216
2-4-12
今井淑恵、市川 勝、清水宗平、佐々城友美
医療法人哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科
ADL 自立。家族より、もの忘れや閉じこもり傾向につい
含む「医療とケアからの排除」(森 2013)であり、様々
て包括に相談があり、未経験ながらも農園活動への参加
な理由により受診や介護サービスの利用につながりにく
を開始。当初は作業着への着替え・作業内容の理解・他
い事例に対し、インフォーマルな人的・技術的・制度的
参加者との交流において混乱がみられたものの、包括職
支援が必要である。我々は、入口問題解決のための取り
員等と情報共有のうえ ST がコミュニケーション支援およ
組みとして、農園活動への言語聴覚士(以下、ST)のア
び環境調整を実施した結果、6 か月後も継続して農園活動
ウトリーチを試みているので、その現状と今後の課題に
への参加が可能であり、他参加者との交流や日常生活で
ついて報告する。
の外出機会も増加した。また、本人から参加の継続につ
【農園活動の紹介と ST の動き】神奈川県相模原市の A 地
いて前向きなコメントを得た。
【考察・まとめ】農園活動は社会参加の場であり、また
あるレストランにより開放された畑地の一角を利用した
個々の事例の生活機能に合わせて役割や活動内容の段階
「農園活動」事業を行っている。運営は地域住民主体であ
づけが可能な活動である。デイケア等のフォーマルサー
り、ST は月 1 回ボランティアとして参加している。この
ビスにはつながりにくいが、農園活動に参加する事例を
活動における ST の役割は、ナチュラルサポートを主体と
複数経験していることから、このような場に ST がアウト
職員との情報共有、社会資源のコーディネート等である。
リーチすることが、コミュニケーション障害のある人の
1
「入口問題」の解決につながる可能性が示唆された。
失語症に特化したデイサービスにおけるSTの課題―介護職員の意識調査か
ら見えること―
ポスター演題 日目
【事例】60 代、男性、若年性認知症。介護保険未申請、
2-4-13
口頭演題 日目
域包括支援センター(以下、包括)では、管轄地域内に
し、生活機能面の支援が必要な参加者の抽出および包括
特別プログラム
【はじめに】認知症の「入口問題」とは社会経済的問題を
日 程
認知症の「入口問題」における言語聴覚士の役割と可能性 第2報~農園活
動へのアウトリーチによる地域包括支援センターとの協働と実践から~
1
安居和輝 1)、安居道子 1)、田中義之 2)
一般社団法人ことばの道 ことばの道デイサービス 1)、神戸総合医療専門学校 言語聴覚士科 2)
コミュニケーションを意識して行っている介護職員が多
ハビリを受けることができるデイサービスは少ない現状
くみられた。失語症者とのやり取りでは、絵や文字を用
である。ことばの道デイサービス(以下、ことばの道)
いて伝える工夫を実施しているが、思うように伝えるこ
は、失語症や構音障害などの言語障害に特化したデイ
とや理解することができない等のもどかしさも感じてい
サービスとして、2008 年 4 月に兵庫県神戸市須磨区に開
るようであった。【まとめ】失語症に特化していること
設された。言語聴覚士は、個別訓練と集団訓練を行って
で、介護職員のコミュニケーションに対する意識の高さ
いる。また、介護職員とともに生活支援に取り組んでい
が伺えた。言語聴覚士は、コミュニケーション手段の方
る。今回われわれは、ことばの道の介護職員の意識調査
法について適宜助言を行っているため、工夫して伝える
から、失語症に特化したデイサービスにおける ST の役割
介護職員が多くみられたことに繋がっていたと考えられ
や課題について検討したので報告する。【対象】ことばの
る。さらに、言語聴覚士と介護職員の役割分担や今後の
道に所属する介護職員 6 名(所属期間 6 ヵ月~ 6 年)【方
取り組み等について若干の考察を加え報告する。
法】意識調査を実施。調査内容は、ことばの道と一般的
なデイサービスの違いで感じることや入職前後のイメー
ジの差、ことばの道における介護職員の役割、ST のイ
メージ、失語症者とコミュニケーションを図る上で工夫
217
2
2
日目
果】ことばの道では、会話の時間を多く設けているため、
国でも数多く存在するが、失語症に特化したことばのリ
ポスター演題
していることや困難と感じること等についてである。【結
ンの場の一つにデイサービスがある。デイサービスは全
口頭演題 日目
【はじめに】失語症者の生活期におけるリハビリテーショ
2-4-14
日 程
タブレット端末で使用する失語症教材の効果-ひらがな拗音の聴覚的理解教
材を用いて-
日下智子 1,2)、黒川容輔 2,4)、猪又由子 2,5)、相馬悠里 2,3)、松井美智子 2,6)、波戸麻子 2)、
若村麻紀 2,7)、中西俊二 2,8)、越部裕子 2,9,10)
らいおんハート温泉ことばのデイサービス行徳 1)、青空の会 2)、埼玉みさと総合リハビリテーション病院 3)、
臨床福祉専門学校 4)、くろさわ病院 5)、大野中央病院 6)、さかいリハ訪問看護ステーション船橋 7)、
イムス札幌内科リハビリテーション病院 8)、メモリークリニック御茶ノ水 9)、筑波大学附属病院 10)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】昨年我々は、タブレット端末で使用する失
語症教材作成を行い、本学会で発表した。今回ひらが
な拗音の聴覚的理解教材を使用し訓練効果について検
証したので報告する。【症例】X-7 年に左脳出血を発症
した右利き 58 歳男性。X 年、中軽度の非流暢型失語症、
RCPM33/36 点、その他の失行失認は認めなかった。言
語所見として、理解は音声・文字とも良好、SLTA 呼称
17/20、軽度の喚語困難を認めた。軽度の発語失行を認
めたが、詳細な検査の施行を妨げる程度ではなかった。
SALA 無意味語の復唱は 24/56 と低下していた。ひらが
な 1 モーラ(以下かな 1 文字)の検査(全 104)におい
て、 理 解 101・ 復 唱 92・ 音 読 66・ 書 取 68、 拗 音( 全
33) は 理 解 31・ 復 唱 27・ 音 読 6・ 書 取 11 で あ っ た。
【方法】ベースラインとしてかな 1 文字の理解検査(6
択)を 3 回実施、正答数と正答までの所要時間を計測し
た後、本教材を自主練習にて毎日 3 ヶ月間使用した。教
2-4-15
材は、訓練機器は iPad、ソフトは keynote を使用、か
な拗音の聴覚的理解課題で、音声に対応する拗音を 1/3
選択する 100 問で構成されている。3 か月後に同検査を
実施、差を分析した。なお有意差検定は wilcoxon 検定
を用いて行った。【結果】訓練後のかな 1 文字検査におい
て、 正 答 数 は 理 解 102・ 復 唱 103・ 音 読 76・ 書 取 77、
拗音は理解 31・復唱 32・音読 18・書取 20、復唱のみ有
意な改善を認めた(p<0.01)。理解の所要時間は、拗音
(p<0.05)・ 清 音(p<0.01)・ 濁 音 / 半 濁 音(p<0.01)
と、全て有意な改善を認めた。SALA 無意味語の復唱は
33/56 と改善傾向を認めた。【考察】かな 1 文字理解の
正答率は訓練前より天井効果があったと思われ、所要時
間において有意な改善を認めたことから訓練効果があっ
たと考えられた。訓練対象以外のかな 1 文字理解と復唱、
SALA 無意味語の復唱で改善がみられたことから、当訓練
が音韻機能全般の改善に影響した可能性が示唆された。
多系統萎縮症(MSA-P)による振戦に有用なスイッチの検討
坪井丈治 1)、浅岡俊彰 2)、吉川由規 1)、神近香苗 1)、近藤友美 1)、齊木久美子 1)、松本海音 1)、
金子依里子 1)、松田直美 3)、濱川麻美 2)、西村 浩 2)、豊島義哉 1)、橋本里奈 4)
国立病院機構 東名古屋病院 言語聴覚療法部門 1)、国立病院機構 東名古屋病院 作業療法部門 2)、
国立病院機構 東名古屋病院 理学療法部門 3)、国立病院機構 東名古屋病院 神経内科 4)
【目的】意思伝達装置(伝の心)において、筋萎縮性側
えを感知してしまい利用できなかった。ピンチ動作、母
索硬化症(以下 ALS)の患者では自動運動が最大の身体
指内転動作では操作部位の震えが減少し、加えて作動圧
部位を観察し、より効果的に発揮できる肢位に対してス
が高く、スイッチの押し戻り機能があるスペックスイッ
イッチを導入するが、パーキンソニズムが主体である多
チなどは利用できた。初めに使用していた曲げることで
系統萎縮症(以下 MSA-P)の本症例は動作時振戦がみ
入力可能なリボンスイッチでは固く疲れるとのことで、
られ、操作部位を動かすだけでは使用できなかった。使
スペックスイッチに変更すると疲労が減り長時間の使用
用可能なスイッチの検討を行ったので、報告する。【症
が可能となり定着していった。メール機能を用いて、本
例】MSA-P、70 歳 代、 女 性、 右 利 き、 認 知 機 能 は 良
人の訴えを息子さんなどに連絡することも可能となった。
好(WAIS-3:VIQ120)、 四 肢 体 幹 固 縮、ADL は 全 介 助
【考察】押す、離す、握る動作よりもつまむ動作の方が保
(BARTEL INDEX 0 点)、動作時振戦、統一多系統萎縮
たれていることが本症例の特徴である。本症例のスイッ
症 評 価 尺 度(UMSARS):Part1( 病 歴 に よ る 日 常 生 活
チ選択の条件は、1.小さな震えに反応しない。2.ス
動作の評価):43/48 点、Part2(診察による運動症状の
イッチの押し戻り機能がある。3.作動圧 50 ~ 300g 以
評価):49/56 点【方法】ALS でよく使用されているピ
内の範囲の 3 点。【結論】振戦がみられても利用可能な
エゾニューマティックセンサスイッチ(以下 PPS スイッ
スイッチの選択をすることにより、伝の心の使用が可能
チ)のディップスポンジセンサ及び振戦にも対応可能な
になった。そして、自ら自分の意思を伝えることができ
スイッチなど 15 種を検討した。【結果】動作時振戦のた
QOL の向上に繋がった。
め、PPS スイッチの押す、離す動作では振戦の小さな震
218
2-4-16
切除範囲に比して会話明瞭度が良好であった舌亜全摘症例の構音特徴
大阪市立総合医療センター リハビリテーション科 1)、大阪市立総合医療センター 耳鼻咽喉科 2)
66%、 破 裂 音 53%、 摩 擦 音 40%、 破 擦 音 0%、 弾 き 音
上皮がんと診断。左舌縁の一部および舌根 4 分の 1 を残し
0% で、破擦音は破裂音へ聞き取られやすく、弾き音は脱
舌亜全摘出術、右外大腿皮弁を用いた再建、両側保存的
落しやすい傾向があった。(2)では、単音節と同様の置
頸部郭清、気管切開術が行われた。術後 16 日より言語療
換はみられたものの、歯茎音や破擦音・弾き音を含む単
法開始。再建舌は前後運動時にわずかな動きを認めるの
語も正しく聞き取られる場合があった。(3)(4)では、
みで、左右は困難。下口唇に軽度可動域制限あり。術後
発話速度は 3.5 ~ 4 モーラ / 秒、抑揚やアクセントに問題
28 日にカニューレ抜去、この時点で嗄声はなく声量に明
はなく、構音の歪みはあるが、文脈や聞き手の推測可能
らかな問題はなし。日常会話は音声のみで可能だった。
な範囲で十分に聴取できた。その他、嚥下機能は食塊形
【評価】本例と接したことのない他職種 5 名に、術後 29
成や送りこみが困難なため、頸部を後屈させるなどの代
償手段を用いミキサー食を摂取していた。
ら:2003)音読、
(3)北風と太陽の音読、
(4)自由会
【 考 察】 熊 倉(1985) は、100 単 音 節 明 瞭 度 が 70% 以
話の録音音源を用いた聞き取り検査を実施。結果、(1)
上あれば実用性が十分あり、逆に 50% 以下では実用性に
単音節明瞭度 46%、(2)単語明瞭度 79%、(3)(4)会
乏しく、筆談に頼る、なるべく話さないようにするなど
話明瞭度 1.5 ~ 2 であった。(1)の構音点別明瞭度は、
の傾向が生じたとしている。本例は舌切除範囲に比して、
声門音 100%、両唇音 70%、軟口蓋音 58%、硬口蓋音
単語および会話明瞭度が良好であったと思われた。その
48%、歯茎音 22% で、歯茎音は硬口蓋音へ聞き取られ
要因について先行研究をふまえて考察する。
2-4-17
舌亜全摘後の重度構音障害を呈した一症例に対する構音訓練から学んだこと
矢野実郎 1)、熊倉勇美 2)
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 1)、医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院 2)
度の分析では、歯茎音 /t,n,s,dz/ と後続母音 /e/ の子音に
に対して、構音機能の評価・訓練を行ったところ、症例
改善が認められた。対面であれば商談可能となり、会話
の発話・発語明瞭度は改善し、代償性構音や発話速度の
経験のある相手と電話が可能になった。発話明瞭度が改
調整を行うなどすることで、実用的コミュニケーション
善した要因としては、発話速度の調節と代償構音の獲得
能力が向上したので、訓練経過と考察を交えて報告する。
の 2 点が挙げられた。本症例は、会話が伝わり易い相手
いことで、より自然に会話を行い、また、会話経験の少
筋遊離皮弁再建術。術後 37 日より構音訓練を開始。【初
ない相手に対しては発話速度を調整、フレージングをし、
期評価】発話明瞭度:4、100 単音節発語明瞭度:11.8、
代償構音を用いて会話していた。そうすることで、会話
症例の自己評価:27、担当 ST 評価:42。ST と会話可能
の効率性を図り、過度に努力しないことで疲労を回避し
だが、その他では伝わり難さを感じるという。発話速度
ているように思われた。本症例を通して、我々は必ずし
は病前と変わらず、会話時に特別の工夫は見られなかっ
も訓練によって得た方法を、全ての場面で努力的に用い、
た。【経過・考察】初期評価を踏まえ、代償性構音の指
最も高い明瞭度で話すようにするばかりでなく、場面や
導・訓練を単語・文・会話レベルで行ったが、明瞭度が
相手によってその能力を使い分けることをアドバイスす
改善し、ST 以外の者とでも話が伝わり易くなった。術後
る必要もあるということを学ぶことが出来た。
71 日、発話明瞭度:3、100 単音節発語明瞭度:20、症
例の自己評価:42、担当 ST:56 と改善した。発語明瞭
219
2
日目
には発話速度調整をせず、努力的に代償性構音を用いな
類:T4aN2M0)。舌亜全摘出術、両側頸部郭清術、腹直
2
ポスター演題
【症例】50 歳代、男性、会社経営。舌癌(初診時 TNM 分
1
口頭演題 日目
【はじめに】舌亜全摘術後に重度構音障害を呈した一症例
1
ポスター演題 日目
やすかった。構音様式別明瞭度は、接近音 70%、鼻音
口頭演題 日目
日~ 68 日に、(1)100 単音節音読、(2)80 単語(小澤
特別プログラム
【症例】60 代女性、接客業。X 年、T3N2cM0 の舌扁平
日 程
辻井美帆 1)、内山良則 1)、金田浩治 1)、金村信明 2)
2-4-18
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
咽喉頭摘出術後に舌音が不明瞭となったのはなぜか -舌切除の既往のある
一例の構音障害の特徴抽出とその改善への試み-
岩崎さや香 1)、松舘芳樹 2)、加藤健吾 3)、小川武則 3)、遠藤佳子 1)
東北大学病院 リハビリテーション部 1)、東北大学病院 顎顔面口腔再建治療部 2)、
東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 3)
【症例】63 歳、男性。診断名:中咽頭後壁癌(T2N0M0)
。
明瞭、舌頂弾き音の弱音化および拗音の直音化を認めた。
既往歴:X-27 年に舌癌(術前照射あり、舌右側 2/3 切
術後 5 日目:発話明瞭度 5、100 単音節は 3 %。母音変
除、右軟口蓋側壁切除、頸部郭清術、大胸筋皮弁再建)、
化なし、ほぼ全ての音が両唇鼻音に置換した。術後 134
右顔面神経下顎縁枝麻痺、口腔内補助装置未使用。現病
日目(PAP 装着):発話明瞭度 3.5、100 単音節は 38 %。
歴:X-1 年 12 月 ~ 咽 頭 違 和 感 あ り。X 年 7 月 中 咽 頭
母音変化明瞭、唇破裂・鼻音、舌頂破裂音、舌背破裂・
後壁および下咽頭喉頭頸部食道摘出(前頸筋群・反回神
摩擦・接近音の生成が可能だった。両唇鼻音への置換は
経・上喉頭神経・後頭動脈切離、左扁桃摘出、前蓋弓切
残存した。【考察】咽頭喉頭摘出術の後にこれまで構音可
断)、左頸部郭清、遊離空腸再建。術後 5 日目リハビリ開
能であった舌頂音、舌背音の明瞭度が低下した。軟口蓋
始。術後 21 日目電気喉頭使用。術後 58 日目 PAP 作成、
筋群・前頸筋群により代償的に行われていた構音運動が、
調整中。【発声発語器官】術前:口唇・頬は右側下垂、開
軟口蓋筋群を含む前口蓋弓切断、前頸筋群の切離により
閉口可能、残存舌はわずかな前後運動のみ可能、左側軟
実施困難となったと考えられた。構音用の PAP を作成し
口蓋挙上可能、流涎時折あり、喉頭挙上減弱、咽頭内部
たところ母音変化が明瞭化し、舌背摩擦・接近音の生成
瘢痕化あり。術後:口唇・開閉口・舌の運動範囲に著変
が可能となって若干の発話明瞭度の改善が得られた。通
なし、頬の筋緊張亢進、両側軟口蓋挙上不全、流涎常時
常は咽頭喉頭摘出術では舌音の表出は影響を受けず、口
あり、頸部筋緊張亢進、左頸部の手術創部の瘢痕。【言語
腔内補助装置は不要であるが、舌切除の既往がある本症
所見】術前:発話明瞭度 2、100 単音節 89 %。母音変化
例では有効だった。
2-4-19
左後頭葉脳梗塞により多彩な高次脳機能障害を呈した一症例
本川聡美 1)、諏訪美幸 1)、木村聖子 1)、能登谷晶子 2)、川北慎一郎 3)、岡田由恵 4)
恵寿総合病院 リハビリテーション部 言語療法課 1)、金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 2)、
恵寿総合病院 リハビリテーション科 3)、恵寿総合病院 脳神経外科 4)
【はじめに】今回我々は左後頭葉脳梗塞により多彩な高
次脳機能障害を呈した一症例を経験したので報告する。
錯行為あり。【経過】発症 2 ヵ月時点では短文レベルの自
発話が増加したが、喚語困難・語性錯語・保続も多くみ
【症例】80 代 右利き女性。1 病日にめまいあり、翌日
られた。形の弁別や実物のマッチングが可能となり、言
右手足の痺れを自覚し座りこんでいる所を発見され A 医
語指示での二次元の描写はほぼ可能となった。発症 3 ヵ
院受診後、当院紹介され、脳梗塞の診断にて入院。5 病
月時点では語性錯語は減少した。WAB 失語症検査では単
日 PT・OT 開始。22 病日回復期病棟入棟。26 病日 ST 開
語の聴覚的認知 27/60 正答、復唱 72/100 正答、物品呼
始。【MRI 所見】左 PCA 域に急性脳梗塞。左被殻と左視
称 6/60 正答であった。なぞり書きは、開眼時に仮名で
床に陳旧性ラクナ梗塞。【神経学的所見】軽度右片麻痺、
一部可能であった。仮名は音韻性錯読や保続がみられた。
深部感覚鈍麻、右同名半盲、両側難聴。【神経心理学的所
【考察】本例は失語症状に加えて視覚失認を呈していた。
見】失語、観念失行、物体失認、右半側空間無視。【初期
失行については視覚失認との関連もあり判断に迷う症例
評価】日常会話の理解から困難なことがあり、自発話は
であった。発症 1 ヵ月時点では形の弁別から困難であり、
みられず。質問に対しても無反応が多くみられた。WAB
統覚型視覚失認に近い症状と考えたが、発症 3 ヵ月時点
失語症検査での単語の聴覚的認知は 18/60 正答、復唱
では複雑なものでは困難であったが簡単な形の弁別や実
74/100 正答、物品呼称 0/60 正答であった。触覚呼称も
物のマッチングが可能となってきた。本例の視覚失認像
困難。形の弁別や実物のマッチング及び言語指示での二
について考察する。
次元の描写は困難。模写・写字ともに困難であり、統覚
型視覚失認の症状が認められた。また、櫛などの操作で
220
2-4-20
突発性難聴により純粋語聾を呈した症例
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター 言語聴覚療法室 1)、
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター リハビリテーション科 2)、
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター 副センター長 3)、秋田県認知症疾患医療センター センター長 4)
が、病前とは違うように聞こえるため以前のように楽し
て高次脳機能障害を疑われ精査目的で当院入院となった
めないとの訴えがみられた。
【言語検査】SLTA では聴覚
純粋語聾の症例を経験したので報告する。【症例】20 歳
的理解と復唱、書き取りで低下がみられた。WAB では
代、男性、右利き。【既往歴】なし。【現病歴】X 年 Y 月
AQ99.2、CQ 左 右 と も 98.7。CAT で は Tapping Span
左突発性難聴を発症。X 年 Y + 8 月両耳の聴力低下で再
や Visual Cancellation では成績良好であったが、Digit
発。他院にて高次脳機能障害を疑われ X 年 Y + 10 月当
Span や Auditory Detection Task 等の聴覚性情報処理
院外来受診、精査目的にて当院入院となった。【神経学
課題にて低下がみられた。TLPA 語彙判断検査では文字
的所見】意識清明。麻痺なし。【画像所見】頭部 CT、頭
提示の成績は良好だが音声提示では低下がみられた。会
部 MRI で異常なし。IMP-SPECT では両側側頭葉の血流
話時は相手の口元を注視したり、相手の言った言葉を復
低下を認めた。【聴覚検査】純音聴力検査(3 文法)では
唱するように呟いたりする様子がみられた。自発話は明
右 40dB、左 36.7dB。自記オージオグラムでは Jerger
瞭であったが、やや声が大きかった。【高次脳機能検査】
分 類の V 型。ABR では右 10dB、左 15dB までそれぞれ
MMSE29/30、RCPM34 / 36 点、ウェクスラー成人知
反応あり。語音聴力検査(67 - S 式)での最高語音明
能 検 査 第 3 版 で は 言 語 性 IQ98、 動 作 性 IQ103 だ っ た。
瞭 度 は 右 50dB55%、 左 50-60dB55% だ っ た。 環 境 音
【まとめ】IMP-SPECT での血流低下のみの異常所見を伴
検査では 25/25 と良好だったが、
「結婚式の祝辞」の認
1
う純粋語聾の症例を紹介した。
左前頭葉内側面脳梗塞により、特異な行為、言語障害を呈した一例
近藤 尚、間宮加奈、篠原健太、安孫子 修、伊藤大起、青野宏治
JA神奈川県厚生連 伊勢原協同病院 リハビリテーション室
解:口頭命令に従う 9 / 10。呼称 17 / 20 動作説明 6
ので若干の考察を加え報告する。【症例】70 歳女性右利
/ 10(ヒント後正答を入れると全問正答)であるも、ま
き【診断名】左前頭葉内側面脳梗塞【既往歴】高血圧 んがの説明では 1 分間発話を認められず中止となった。
糖尿病【現病歴】右片麻痺にて発症。頭部 MRI で左前大
RCPM9 / 12、10 / 12、7 / 12 = 26 / 36。WAIS-III
脳動脈領域の脳梗塞を認め、入院となった。翌日より言
では VIQ101、PIQ116、FIQ108【経過】右手の物品の
語療法を開始した。【初診時所見】意識清明。表情変化乏
強迫的使用は認めるも、左手で抑制し、日常生活上支障
しく、自発話は全く認めなかった。質問に対し発話衝動
なく、歩行時の停止は認めない。日常生活では自発話の
はあるが、返答しようとするも構音開始時に探索行為を
増加は認めるも、構音実現は努力的で、探索行動を認め、
認め、努力的で単語レベルの発語であった。発語は気息
発話での意思表出に難渋している。【考察】本例は失構音
性・無力性嗄声で有声音は認めなかった。また、従命で
を呈した超皮質性運動失語の特異的な例であり、本症例
の単音節の発声も同様に困難を認めたが、復唱課題では
の発話異常は、発話運動面および、発話開始困難といっ
二語文まで遂行は可能であった。自由会話時には、エコ
た神経行動学的要因によるものと考えられた。
ラリアが認められた。特異な行為としては、右手の強制
把握を認め、歩行時には右足の磁性失行が見られた。ま
た、指示命令がないにも関わらず、机上に置かれたペン
221
2
2
日目
動を認めた。【神経心理学的検査】SLTA(5 病日目)聴理
動失語に加え失構音の要素を併せ持った症例を経験した
ポスター演題
を手に取り、目前にある物品の名前を書字し出す等の行
左前頭葉内側面脳梗塞により、特異な行為と超皮質性運
1
口頭演題 日目
【はじめに】通常失構音の病巣は中心前回下部とされる。
ポスター演題 日目
知には時間を要し、また祝辞の内容については聴取困難
2-4-21
口頭演題 日目
だった。音楽については歌手や曲名の認知は可能だった
てわからないことがある」ことを主訴に、他院耳鼻科に
特別プログラム
【目的】「日常会話は成り立つが、単語の聞き取りが悪く
日 程
武石香里 1)、中野明子 1)、能登霊威 1)、中澤 操 2)、横山絵里子 2)、下村辰雄 3,4)
2-4-22
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
脳梁梗塞後に発話障害を呈した1例
上田佳世 1)、小瀧弘正 1)、東谷 彩 1)、木下舞子 1)、長見周平 2)
市立奈良病院 リハビリテーション室 1)、市立奈良病院 神経内科 2)
【はじめに】脳梁梗塞後に特徴的な発話障害を呈した症例
日より単語~ 2、3 語文の発話が出現。自発話、復唱、音
を報告する。
【症例】35 歳女性、右手利き、無職、高校
読、歌唱では、発話速度低下を特徴としたプロソディー
卒【現病歴】腎性貧血に加えて月経過多による貧血によ
障害、軽度の舌尖音の歪み、音の不自然な単位の途切れ
り入院。入院前から持続する発話量低下に対して MRI 実
を伴うモタモタとした発話がみられた。口部運動はス
施。脳梗塞と診断。3 病日よりリハ開始。【既往歴】甲状
ピード、範囲は著明な低下なし。MPT6 秒と低下。101
腺機能低下症、糖尿病、帝王切開、冠動脈バイパス術、
音復唱は 101/101 と良好。SLTA でははっきりとした失
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎炎【画像所見】MRI にて脳
語症状は認めず。失点は短文復唱 3/5、計算 8/20 のみ。
梁膝部~体部、膨大部、右前頭葉白質の一部、左基底核
発話は関西弁と判断できた。吃音はなし。脳梗塞後話し
の一部に異常信号域。RI にて左前頭葉、右小脳球、脳梁
方がゆっくりになったと内観した。14 病日後には脳梁離
前部左側に集積低下。【神経学的所見】右上下肢運動麻痺
断症状は改善傾向。言語症状は発症時に比べ話量の増加
と感覚障害、発話障害【神経心理学的所見】発動性低下、
を認めたが、モタモタとした発話であった。【考察】本例
注意障害、視覚性記銘力低下、脳梁離断症状(左手失行・
は、口腔運動機能は保持し、音の歪みも少ない。一方で
失書、左手触覚性失読、右手構成障害など)【神経心理検
発話速度低下を特徴としたプロソディー障害を主体とす
査所見】MMSE24 点、RCPM29 点、三宅式有関係対語
る発話異常を認めた。これは失構音、FAS、麻痺性構音
10、数唱順唱 6 逆唱 4、Rey 模写 33 点再生 5 点、FAB17
障害、失調性構音障害のいずれの典型例とは異なった発
点、TMTtestA106 秒 B299 秒【 言 語 症 状 お よ び 経 過】
話特徴と考える。
発症時は話量が低下。うん、はいなどの返事程度。5 病
2-4-23
訓練拒否を示した右脳梗塞患者の経過とself-awarenessについての一考察
北山敏也 1)、堤 万佐子 1)、田口潤智 2)、笹岡保典 2)
尚和会宝塚リハビリテーション病院 療法部 1)、尚和会宝塚リハビリテーション病院 診療部 2)
【はじめに】回復期病院転入後に言語聴覚士による認知リ
能となった。入院中は自己認識が困難で、早期の歩行訓
ハビリテーション(以下 ST)を拒否した awareness 障
練の要望や、病棟での転倒を繰り返した。178 病日目の
害を有する右脳梗塞患者の経過について考察を交え報告
退院時には JSS-D:3.08、JSS-E:3.95 と向上したものの、
する。【症例】60 歳代女性。脳梗塞(右頭頂葉・側頭葉・
「気分」「不安焦燥」「病態・治療に対する対応」の項目は
後頭葉)。急性期病院を経て 39 病日目に当回復期病院に
低下したままであった。【考察】Sohlberg ら(2001)は
転院。左半側空間無視・動作性急・易疲労性の症状を認
「自己の障害の質・程度・影響の理解ができないと、訓
め た。【 経 過】 入 院 時、HDS-R:28/30、MMSE:30/30、
練への抵抗や代償手段獲得への意欲低下をもたらす」と
BIT 通 常 検 査 109/146 と 神 経 心 理 学 検 査( 以 下、 検
しており awareness 障害の概念について、精神力動論
査) を 実 施 し た と こ ろ で、
「 精 神 的 に 限 界 で す」 な ど
(psychodynamic theories)と神経心理学の両面から
ST 拒否の訴えが出現した。脳卒中感情障害スケールは
の解説を行っている。症例については、ST 拒否傾向を示
JSS-D:11.9、JSS-E:16.69 と高値を示し、ST は 1 週間に
し、ST 再開はできたものの十分な神経心理学検査は実施
1 回程度のカウンセリングのみとした。1 週間後から「少
できなかった。症例の awareness 障害は自己防衛反応な
し楽になった」との発言を認め、その後徐々にではある
どの精神力動論的側面、および神経心理学的側面の両方
が精神的に安定傾向を認めた。54 病日目に慢性硬膜下血
の側面に問題があり、JSS-D、JSS-E で向上を認めたが十
腫除去術のため急性期病院に転院となったが 61 病日目、
分ではなく、訓練や代償手段獲得への抵抗、病棟での転
当院再転入後には、検査は実施せず、本人希望の車椅子
倒等に繋がったと考えられた。
自走訓練などを中心に行うこととなったが ST 再開が可
222
2-4-24
前頭側頭型認知症の1例 -行動特徴と言語症状の経過-
北斗わかば病院 1)、国際医療福祉大学 2)
周遊が観察された。評価時、訓練時に立ち去り行動が認
【現病歴】4 年前から日常生活で喚語困難や自発性の低下
柵を握った姿勢で止まっている場面が観察されるように
(経理・事務)
がみられるようになった。近医にて認知症疑いで加療開
始後、仮面様顔貌、易転倒性が出現し、2 年前に他院神経
内科を受診。加療通院中にベッドから転落し、救急搬送
後入院。2 ヶ月後に当院入院となり、前頭側頭型認知症と
診断。
められた。6 ヶ月後:ベッドでは起き上がれず、ベッド
なった。座位からの立ち上がりは可能で、常同的周遊は
減少していたものの残っていた。また、机の縁を撫でる
などの常同行動が見られた。1 年半後:リハビリ時に介助
を受けて歩行する以外は、ベッド上で過ごすようになっ
た。
【言語所見:SLTA】入院時:聴覚理解は、口頭命令に従
【神経心理学的所見】入院時:挨拶をされれば返す、質問
は単語 10/10、文 5/5 と良好であったが、語列挙 2 語
萎縮が認められた。
されれば答えるが、相手への配慮はなく礼節は保たれて
いなかった。質問を繰り返すと、減弱性反響言語による
応答が見られることもあった。答えられない時は立ち去
り行動が出現し、評価に時間を要した。MMSE は、見当
識、計算、単語再生、図形の模写で誤りがあり、18/30。
FAB 11/18。6 ヶ月後:MMSE 15/30。
2-4-25
と低下あり。6 ヶ月後:聴覚的理解は、単語、短文とも
4/10 と低下し、勝手にページをめくる、机の縁を撫で
続けるなどの行動が見られた。また、保続も認められた。
呼称 13/20 で、誤りは無反応と語性錯語(薬→「くうき
いれ」、たけのこ→「たのきんとりお」)であった。復唱
1
は単語 9/10、文 4/5 で、語列挙 1 語であった。1 年半
後:実施困難となった。
愛用物品の使用が重度記憶障害例に与える影響について―側頭葉内側部損傷
例と前脳基底部損傷例の比較から―
近藤晴彦 1)、安達駿吾 1)、永山美樹 1)、森田秋子 2)、金井 香 3)
ポスター演題 日目
【行動特徴】入院時:起床から就寝まで、病棟内で常同的
う 9/10。呼称 15/20 で、誤りは無言であった。復唱
口頭演題 日目
【画像所見】入院後 1 年半時:MRI にて、前頭葉に優位な
特別プログラム
【症例】70 歳代、右利き、女性、教育歴 12 年、自営業
日 程
竹内彩乃 1)、川崎直道 1)、原田浩美 2)、白川健太郎 1)
1
慈誠会 練馬駅リハビリテーション病院 1)、鵜飼リハビリテーション病院 2)、伊勢崎福島病院 3)
延再生ともに成績の向上を認めた。情動条件課題 相貌再
情動条件課題を実施し、愛用物品を実際に使用する親近
認課題では症例 A では条件なし時に未知相貌の誤りを多く
性が記憶・情動へ影響を与えるのか検討を行ったので報
認め、愛用物品使用時には一転して既知相貌の誤りを多く
告する。
【対象】症例 A 側頭葉内側部損傷例 59 歳男性
認めた。症例 B では一貫性のない誤りを認めた。信頼性
ヘルペス脳炎、症例 B 前脳基底部損傷例 42 歳男性クモ
判断課題では症例 A では愛用物品使用時には、条件なし
膜下出血(前交通動脈瘤破裂)【方法】病前からの愛用物
時と比較し既知相貌の信頼性が下がる傾向を認めたが、
品(症例 A テニスラケット、症例 B なわとび)使用時と
症例 B では認めなかった。【考察】側頭葉内側部損傷例で
条件なし時の 2 条件にて記憶再生課題とし単語対連合課
は愛用物品の使用が親近性を亢進させることを認めたが、
題 (三宅式記銘力検査) 論述的記憶課題(RBMT の物
前脳基底部損傷例では認めなかった。記憶障害例におけ
語)を実施。情動条件課題とし相貌再認課題(既知相貌、
る親近性亢進のポジティブな作用として論述記憶時での
未知相貌各 20 枚計 40 枚の写真を刺激とし「見たことが
文脈効果が、ネガティブな作用として情動判断の混乱が
あるか?ないか?」を選択)信頼性判断課題(同40枚の
あると考えられた。これらの背景として海馬・扁桃体と
写真を刺激とし先行研究(Adolphs 2002)を参考に- 3
他の領域とのネットワークが関与していることが示唆さ
(最も信頼性がない)~+ 3(最も信頼性がある)を選択)
れた。
を実施した。【結果】記憶再生課題 単語対連合課題では
223
2
2
日目
的記憶課題では症例 A のみ愛用物品使用時に直後再生、遅
部損傷 1 例、前脳基底部損傷 1 例に対し記憶再生課題・
ポスター演題
症例 A、症例 B ともに 2 条件で変化を認めなかった。論述
が知られている。今回重度記憶障害を呈した側頭葉内側
口頭演題 日目
【目的】愛用物品が記憶障害例の症状に影響を与えること
2-4-26
消失した人物誤認と消失しなかった人物誤認
日 程
足立千浪、伊藤 梓、荻野真維、森田秋子
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
特別プログラム
【はじめに】脳血管障害後、妄想や人物誤認を呈する症例
えないのかしら」などと発言し、誤認を認めていなかっ
が報告されている。今回人物誤認を認め、一部の誤認は
た。第 100 病日、母の死を忘れ、誤認が再び起こること
消失したが一部は消失しなかった症例を経験したため、
があったが、告別式の案内状を見れば誤認を認めた。娘
この症例の特徴および介入について報告する。
の友人の誤認はムラがあり定着しないまま経過した。第
【症例】70 歳代女性、クモ膜下出血。第 39 病日、回復期
115 病日以降、記憶の定着、誤認の修正の可否を慎重に
リハ病棟入院。回復期リハ病棟入院時、左片麻痺、全般
評価しながら、無理な修正を行わないように対応した。
的認知機能低下、記憶障害を認めた。MMSE17/30。
誤認を指摘されること、修正されることに対し、強い精
【人物誤認初回評価】第 70 病日、人物誤認をみとめた
(MMSE25/30)。同じ病棟の他患者を死んだ母であると
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
神的苦痛を伴う様子が観察され、共感を示し寄り添うこ
とに配慮した。
主張し、その他患者に頻繁に話しかけて不審感を与える
【人物誤認退院時評価】第 180 病日、母の死を認識し母の
など問題が発生した。また、担当 ST を娘の友人であると
誤認は消失したが、スタッフが別人であるという事実は
主張した。
定着せず、人物誤認は消失しなかった。
【介入と経過】第 85 病日、母の誤認は、家族が告別式
【考察】本症例の人物誤認は、誤認を否定する強い証拠に
の案内状を示したところ母の死を認識し、他患者が母で
より修正が可能であった。誤認は確信をもって行われて
ないことを認めた。娘の友人の誤認は、スタッフの年
おり、誤認を認めるには大きな苦痛を伴った。修正すべ
齢、経歴などを示したが、その場では誤認であることを
き内容かどうかの慎重な判断が重要であると考えられた。
認めたものの、他スタッフに「どうして本当のことが言
2-4-27
時計描画において数字を左右反転して配置した半側空間無視例
宮崎泰広 1,2)、澤 真澄 3)、種村 純 3)
関西電力病院 リハビリテーション科 1)、旧 川崎医療福祉大学 感覚矯正学科 2)、川崎医療福祉大学 感覚矯正学科 3)
[ はじめに ] 右頭頂葉損傷により、時計の数字を左右反転
BIT 行動無視検査:通常検査 128/146、行動検査 64/81、
して描画した半側空間無視例が存在した。本症例の時計
RCPM:18/36、WAIS-3:VIQ95、PIQ71、Rey の 複 雑
描画の反応から、この要因について検討した。
図形:模写 20/36、Benton 視覚記銘検査(A-3)で保
[ 症例 ]72 歳、男性、右利き。突然の左上下肢不全麻痺に
続、置換などの誤りを頻発したが、図形の配置が左右反
より救急外来を受診した。頭部画像にて右頭頂葉に梗塞
転することはなかった。
巣を認め、即日入院し保存的加療を開始した。半側空間
[ 時計描画 ](1)実物の時計を呈示し描画した場合、適切
無視、注意障害、構成障害を認め、6 病日より言語療法が
に数字を配置できた。(2)単一の数字をランダムに指定
開始となった。回復期病棟転科後の 58 病日、標準高次視
し時計の図版に描画した場合、7、10 を右側に配置した。
知覚検査「時計の文字盤」において、時計周りに 11 から
それ以外の数字は位置の多少のずれはあったが、左右の
1 までの順で書き、数字を左右反転して配置した。なお
反転はみられなかった。(3)時計の図版に反時計回りに
数字は鏡映でなく、正しい向きであった。自発書字で文
数字を書き込むように指定すると、11 から書き始め左右
字の左右反転はみられず、また鏡失認、左右失認は認め
反転せず適切に配置した。
なかった。アナログ時計の時刻の読み取りは概ね可能で
[ 結論 ] 本症例の時計描画における反応は、視覚表象レベ
あったが、20 分を 40 分と読み誤ることがあった。その
ルの単純な左右反転ではなく、半側空間無視とそれに合
後 1 か月程度の経過で時計は適切に描画できるようにな
併する症状の複数の影響により生じたと考えられた。
り、これらの反応は消失した。
[ 神経心理学的検査結果 ]MMSE:24/30、FAB:15/18、
224
2-4-28
津田哲也 1,2)、中村 光 2)、藤本憲正 3)、原田俊英 4)
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科 1)、岡山県立大学大学院保健福祉学研究科 2)、
倉敷平成病院リハビリテーションセンター言語聴覚科 3)、県立広島大学大学院総合学術研究科 4)
によって後続刺激(ターゲット)の処理が促進または抑
正確に実在語か否か判断するよう求めた。【結果】高齢群
制されることである。意味的プライミング法を用いて、
は若年群に比べて反応時間(RT)が有意に延長しており、
健常高齢者とアルツハイマー病(AD)患者の特徴を分析
AD 群は高齢群よりさらに延長していた。中立プライム
し、加齢または AD が語彙意味機能に及ぼす影響について
条件に対する意味関連プライム条件の RT は、若年群・高
検討した。【方法】対象は健常学生 30 名(若年群;平均
齢群では有意に短縮されていた(プライミング効果)。プ
20.5 歳)、 健 常 高 齢 者 41 名( 高 齢 群;69.6 歳)、AD 患
ライミング効果を中立条件の RT で除した「プライミング
者 14 名(AD 群;78.6 歳)である。AD 群は NIA-AA の
率」は、両群で差がなかった。AD 群では意味関連プライ
診断基準を満たし、平均 MMSE は 22.3 点であった。課
ム条件で有意な反応時間の短縮は認めず、個人間の RT の
題は高頻度具象語または非語をターゲットとした語彙判
ばらつきが極めて大きかった。【考察】若年群と高齢群で
断課題を実施した。ターゲット(例:ライオン)につい
はプライミング効果はいずれのプライム条件でも有意で、
て、中立プライム条件(XXXX)および 5 つの異なる意味
プライミング率にも両群で差がなく、語彙意味機能は加
関連性を持つプライム条件(連想語:王、上位概念語:
齢によっても概ね保たれると考えた。また、AD の語彙意
獣、同位概念語:虎、共有属性語:目、独立属性語:た
味機能は部分的に障害されており、その障害像も個人に
てがみ)を設定した。モニター上にはプライムが 200ms
より多様であることが示唆された。
2-4-29
意味カテゴリー流暢性課題の成績に影響する要因の検討
橋本文恵 1)、内田信也 2)
独立行政法人 地域医療機能推進機構 横浜保土ヶ谷中央病院 1)、国際医療福祉大学 言語聴覚学科 2)
数との間にも相関関係を有する傾向にあった。【考察】健
属する単語を出来るだけ多く述べる意味カテゴリー流暢
常高齢者の意味カテゴリー流暢性課題の成績に最も影響
性課題がある。先行研究では、VFT の成績に影響を及ぼ
する要因は認知処理速度であり、制限時間内に多くの語
す要因は複数あり、切替機能や抑制機能、認知処理速度
彙を想起する過程に影響を及ぼしているのではないかと
や年齢などが示唆されている。しかしながら最も影響を
推察される。また、意味的プライミング効果が小さいほ
及ぼす要因が何なのかは明らかになっていない。そこで
ど語想起数が多くなる傾向が示され、活性化拡散の範囲
本研究の目的は、意味カテゴリー流暢性課題の成績に最
が影響する可能性も示唆された。さらに、教育年数が高
も影響を及ぼす要因を様々な観点から検討することであ
いほど語想起数が多くなる傾向も示され、両者には結晶
る。【対象】健常高齢者で MMSE が 26 点以下、RCPM が
性知能が関係しているのではないかという考察が得られ
26 点以下の者は除外した。【方法】意味カテゴリー流暢
た。
性課題、符号課題、意味的プライミングを用いた語彙判
断課題、慶應版ウィスコンシンカード分類検査、新スト
ループ検査 2 を実施し、語想起数、符号課題の成績、意
味的プライミング効果、達成カテゴリー数、逆ストルー
プ干渉率とストループ干渉率を算出した。【結果】意味カ
225
2
2
日目
関係を示した。また、意味的プライミング効果、教育年
あり、VFT の 1 つに定められた特定の意味カテゴリーに
ポスター演題
テゴリー流暢性課題と符号課題との間に最も有意な相関
語流暢性課題(Verbal Fluency Test : 以下、VFT)が
1
口頭演題 日目
【はじめに】言語機能や認知機能を評価する検査の 1 つに
1
ポスター演題 日目
提示され、50ms の間隔をおいて、ターゲットが提示さ
口頭演題 日目
れた。被験者には、ターゲットについて出来るだけ早く
特別プログラム
【はじめに】プライミング効果とは先行刺激(プライム)
日 程
加齢またはアルツハイマー病が語彙・意味機能に及ぼす影響―意味的プライ
ミング法による検討―
2-4-30
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
視点取得における右側-頭頂接合部の活動-事象関連電位からの検討-
保屋野健悟 1)、森岡 周 2)
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 1)、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 2)
【はじめに】視点取得は、自己の視点を他者の視点に向
は 5% と し た。【 結 果】reaction time は、cathodal 群
け直すことにより、他者の身になるという他者理解を支
は self 条件に比べ、other 条件で有意な延長が認められ、
える機能と考えられている。視点取得の機能は、右側 -
other 条件では、anodal 群に比べ cathodal 群で有意に
頭頂接合部(rTPJ)が関与しているとされている。今
延 長 が 認 め ら れ た。 振 幅 は、self 条 件 で は、anodal:
回、rTPJ に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)で刺激を与え、
1.81µV、cathodal:1.91µV、other 条件では、anodal:
脳波にて脳活動の計測を行ったので若干の考察を加えて
3.29µV、cathodal:2.54µV であった。振幅は、各条件
報 告 す る。
【 対 象】 対 象 は、 健 常 成 人 12 名 と し た。 こ
間での有意差は認められなかった。成分潜時は、self条件で
の 12 名 を tDCS 刺 激 群 毎 に anodal( 陽 極 刺 激)6 名、
は、anodal:33.3msec、cathodal:31.8msec、other
cathodal(陰極刺激)6 名に振り分けた。【方法】tDCS
条 件 で は、anodal:37.9msec、cathodal:48.1msec
DC-STIMULATOR Plus(neuroConn 社 製) に よ り
で あ っ た。 成 分 潜 時 は、cathodal で は、self 条 件 に 比
rTPJ と想定されている拡張 10-20 法の CP6 上に刺激電
べ other 条 件 で 有 意 に 潜 時 が 長 く な っ た。anodal と
極を設置した。その後、高機能デジタル脳波計 Active
cathodal の other 条件では、anodal に比べ cathodal で
Two System(BIOSEMI 社製)を装着し、視点取得課題
有意に潜時が長くなった。【考察】rTPJ の活動の差が、自
時の脳波を 64ch にて記録を行った。脳波解析は、EMSE
己視点から他者視点に切り替える他者視点取得の機能と
Suite を用い、脳波を加算平均し事象関連電位(P300)
関係することが示唆された。
について検討を行った。統計解析は、二元配置分散分析
ポスター演題 日目
1
および Bonferroni 法による多重比較を行った。有意水準
2-4-31
ペーシングボードが有効だった筋強直性ジストロフィーに伴うディサースリ
ア1例
田村俊暁 1)、西尾正輝 2)
新潟医療福祉大学 医療技術学部 言語聴覚学科 1)、新潟医療福祉大学 医療経営管理学部 医療情報管理学科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】筋強直性ジストロフィー(MyD)は成人の
【経過】X 年より構音器官の粗大運動や各種発話速度の
遺伝性ミオパチーの中では最も頻度が高く、しばしば
調節法を段階的に実施した。しかし、モーラ指折り法は
ディサースリアや知的機能低下が併発し会話が困難とな
指手の運動障害で困難だった。また、タッピング法やフ
る。しかし、MyD に対する言語治療に関する先行報告は
レージング法では発話速度の強制力が弱く十分な効果は
十分ではない。今回、ペーシングボード(PB)による会
得られなかった。X + 9 年、日常会話レベルでも会話明瞭
話訓練を中心に介入したところ会話明瞭度の改善が得ら
度が 4 / 5 から 1 モーラずつの PB 使用時で 2.5 / 5 と即
れた M yD の 1 例を経験した。
時的に改善した。また、PB 使用直後には PB 未使用でも
【症例】50 歳代、男性。現病歴:中学生のとき上肢の筋
会話明瞭度は 3 / 5 と若干維持された。しかし、通常の発
力低下を指摘された。X - 9 年 5 月に A 院でディサースリ
話を同程度続けてもこのような改善は得られなかった。
ア、全身の筋萎縮、四肢・顎の脱力を指摘された。X 年、
【考察】本例の経過から、手指の運動障害や知的機能低下
当院に通院し MyD と診断され、ST の介入が開始された。
が高頻度に出現する MyD 例では、PB が有効であること
X + 7 年、誤嚥や喀出困難が頻発するようになった。X +
が示唆された。また、筋強直は同じ運動を繰り返すと症
9 年 1 月、ADL の低下で当院に入院した。入院時の発話
状が軽減する warming up 現象が報告されているが、本
特徴:重度の開鼻声・構音の歪み・プロソディーの平板
例のような重度例でも PB によってそれが促されたと解釈
化などを認めた。神経心理学的所見:MMSE は 28 / 30
される。MyD 例では PB を用いた会話は、それ自体が発
点であった。神経学的所見:斧様顔貌、筋脱力、筋強直
声発語器官の機能維持としても有用な可能性があり、積
などを認めた。
極的な導入を考慮すべきである。
226
2-4-32
パーキンソン病患者に対するLSVT LOUDの効果について
医療法人社団 行陵会 御所南リハビリテーションクリニック 1)、医療法人社団 行陵会 京都大原記念病院 2)
【目的】アメリカでパーキンソン病患者に対し開発され
Whitney の U 検定を行った。
【結果】治療前後において発声持続、文章音読、即興発
ローチが日本でも普及してきている。当グループでは、
話、語想起、常套句復唱、最高音域で、有意に改善を認
平成 23 年より対象患者に実施しており、その効果につい
めた(p<0.05)。その他の項目では有意差を認めなかっ
て検証したので報告する。
た。治療前後の差の値と性別、年齢、ヤール分類、実施
【 対 象】 平 成 23 年 12 月 か ら 平 成 27 年 3 月 ま で、 当 グ
方法では、常套句復唱と実施方法、最低音域とヤール分
ループで LSVT LOUD を実施したパーキンソン病患者 15
類で有意差を認めたが(p<0.05)、その他は有意差を認
施方法は入院が 10 名、外来が 5 名。ヤール分類の平均は
めなかった。
【考察】パーキンソン病患者に対し LSVT LOUD は、声の
大きさと声の高さ(高音)に対して効果があることが示
の大きさは発声持続、文章音読、即興発話、語想起、常
唆された。またその効果において、性別、年齢、ヤール
分類、実施方法の影響を受けにくいことが示唆された。
套句復唱、高さは最高音域、最低音域、長さは最長発声
口頭演題 日目
3 ± 1。
【方法】LSVT LOUD の評価プロトコールの中から、声
特別プログラム
たリーシルバーマン法(以下 LSVT LOUD)によるアプ
名。男性 8 名、女性 7 名、平均年齢は 76.5 ± 6.2 歳。実
日 程
吉田 誠 1)、垣田清人 2)、上田 聖 1)
1
持続時間、発声持続時間(平均)の 9 項目で、治療前後
の値について Wilcoxon の符号付き順位検定を行った。
また 9 項目の治療前後の差の値と、性別、年齢、ヤール
2-4-33
多系統萎縮症1症例における音声の初期変化―MDVP(Multidimensional
voice program)を用いた音響学的分析―
ポスター演題 日目
分類、実施方法により差があったのかについて Mann-
1
樋口直樹 1,2)、小嶋知幸 3)
東京医薬専門学校 言語聴覚士科 1)、日扇会第一病院 2)、武蔵野大学大学院 人間社会研究科 3)
おいて重要な役割を果たすことが指摘されているが、し
かし現状、その十分な活用までは至っていない。今回、
多系統萎縮症 1 症例の音声に対して、音響学的評価を用
vAm(振幅頂点間の変動)の項目にのみ平均との間に有
意差を示した。3 ヶ月後、上記項目に加え、F0(基本周
、PFR(発声時の
波数の平均)
、T0(基本周期の平均値)
基本周波数の範囲)
、APQ(振幅のゆらぎ指数)
、sAPQ
見を得たので報告する。【症例】70 代女性、約 1 年前に
の間、ADL は維持され、歩行障害も不変、嚥下障害も
多系統萎縮症の診断有り。軽度体幹失調あるものの歩行
不変であり、構音障害の増悪についての訴えは聞かれな
自立。ややしゃべりにくさの訴え有り。
【構音評価】軽
かった。【考察】開始時は基本周波数の変動や振幅の変動
度舌萎縮、舌運動において左右反復運動時失調あり。そ
を呈する軽度失調性構音障害の所見であったが、3 ヶ月後
の他目立つ構音器官の異常なし。明瞭度・自然度ともに
では基本周波数そのものの低下、振幅のゆらぎの出現な
高く、日常コミュニケーション上問題なし。【音響学的
ど自覚しにくい症状が出現していた。このような結果は、
評価・分析方法】介入開始時と 3 ヶ月後に単音発声をそ
多系統萎縮症の様な進行性疾患において、音響学的評価
れ ぞ れ 録 音 し、KayPentax 社 Multidimensional voice
を用いることで病初期の重要な症状の進行を捉えられる
program(MDVP) で の 分 析 を 行 っ た。 得 ら れ た 数 値
可能性を示しているものと考えられた。
は、西尾(2009)における老年女性の平均に対し変形
t 検定(Sokai and Rohlf、1995)にて統計学的な検討
、
を加えた。
【結果】開始時は vF0(基本周波数の変動)
227
2
日目
(平均化振幅のゆらぎ指数)の項目で有意差を示した。こ
2
ポスター演題
い、聴覚的評価だけでは明確にできない変化について知
口頭演題 日目
【はじめに】音響学的評価が運動障害性構音障害の臨床に
2-4-34
多系統萎縮症患者のスピーチカニューレ導入の検討
日 程
西村友佳 1)、堀田糸子 1)、藤田賢一 1)、中城雄一 1)、相馬広幸 2)、森若文雄 2)
北祐会神経内科病院 リハビリテーション部 1)、北祐会神経内科病院 医務部 2)
特別プログラム
【はじめに】今回、気管切開術施行後にスピーチカニュー
気管切開チューブの選択」に問題認めるも、呼吸苦は声
レを導入し、音声コミュニケーションの再獲得、職場復
帯外転障害によるもので気管切開術施行での改善と段階
帰を果たした多系統萎縮症(以下 MSA)患者を担当し
的なカニューレの選択により解決が推察された。【経過】
た。中山の「気管切開例における音声コミュニケ―ショ
痰の減少後、ST 場面のみカフの空気を抜き呼吸、発声訓
ンが可能になる 8 条件」を参考に評価・訓練を進めたの
練を実施。MPT3 秒、発話は単語レベル。スピーチバル
で報告する。【症例】44 歳男性【疾患名】MSA - C(小
ブ装着時間を徐々に拡大し、日中の装着可能。MPT14
脳症状優位型)
【現病歴】X 年発症。X + 4 年夜間失調性
秒、発話は短文レベルと改善。粘調痰による呼吸苦が出
呼吸が出現、NIPPV 導入の為 2 週間当院入院。8 ヶ月後
口頭演題 日目
1
現するも、二重管カニューレに変更し経過良好となった。
呼吸苦が悪化し他院にて気管切開術施行、術後 14 日リハ
【考察】中山の 8 条件を指標に評価・訓練の介入、また摂
ビリ目的で当院入院。【職業】家電量販店副店長【家族構
食嚥下障害が軽度であったこともスピーチカニューレの
成】妻と息子 3 人【術前の評価】失調性構音障害と声量
導入が可能となったと考える。MSA 等の神経難病は進行
低下は軽度認めるも、会話明瞭度 2。摂食嚥下障害は軽度
と共に出来ないことが増え、患者、家族の心理的負担が
認める。中山の 8 条件「音声コミュニケーション可能な
ある。今回は術前評価が本症例、家族に希望と目標を与
レベルの精神・聴覚・言語機能/患者のニーズ/パート
え、術後のリハビリの奏功、職場復帰に繋がったと考え
ナーの理解と協力/適切な音声コミュニケーション手段
る。
の選択/スタッフの理解と協力」は問題なし。「喉頭や構
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
音器官に形態的異常が少ない/呼吸障害の安定/適切な
2-4-35
視床下核脳深部刺激がパーキンソン病患者の発話リズムに与える影響
田中康博 1,2)、坪井 崇 1)、渡辺宏久 1,3)、大嶽れい子 3)、桝田道人 1)、今井和憲 1,2)、
伊藤瑞規 1)、熱田直樹 1)、原 一洋 1)、川畑和也 1)、梶田泰一 4)、勝野雅央 1,2)、祖父江 元 2,3)
名古屋大学 神経内科 1)、名古屋大学大学院 医学系研究科 2)、名古屋大学 脳とこころの研究センター 3)、
名古屋大学 脳神経外科 4)
【目的】オーラルディアドコキネシス(DDK)にて、視
の患者背景は、DBS 施行後からの期間が有意に長く(左
床下核脳深部刺激術(STN-DBS)後のパーキンソン病
側経過:p<0.05、平均 30.8 ヶ月、右側経過:p<0.01、
(PD)患者の発話リズムを音響学的解析に解析した。
平 均 31.7 ヶ 月)、 身 体 機 能 が 有 意 に 重 度(p<0.05、
【方法】対象には STN-DBS 後 PD(DBS 群)46 例(男 : 女
UPDRS3 平均 20.8)であった。また、DDKjit は DBS 施
=18:28、平均年齢:67.0 歳、UPDRS3:18.1、MMSE:
行後経過を追うごとに刺激のオン時に悪化する傾向がみ
27.3、MoCA:23.0)と、年齢、重症度、経過年数、認
られ、オフ時には DBS 術前と同程度まで改善する傾向が
知 機 能 を 一 致 さ せ た DBS 未 施 行 の PD 35 例(Med 群、
認められた。
男 : 女 =13:22)を用いた。対象には /pa/ の DDK を発話
【考察】DBS 施行から長期を経た患者の発話リズムは悪化
し、1 音素ごとの間隔と大きさにおけるゆらぎの程度等を
する事が多く、発話の明晰性低下に影響を与えている可
音響学的に解析した。DBS 群では刺激をオフにした 30 分
能性がある。こうした患者に対する発話障害に対しては
後にも同じ評価を行った。なお、DBS 施行から 1 年を経
特にリズムに注目しての刺激調整が望まれる。
過した事例(28 例)については、DBS 施行前からの前向
きデータも併せて解析し経過による変化を追った。
【 結 果】 音 響 学 的 解 析 を 用 い た DDK の 速 度 の 変 動
(DDKjit) は、DBS 群 が Med 群 に 比 し て 有 意 に 悪 化
し(p<0.05)
、刺激のオフによって有意に改善した
(p<0.01)。DBS 群 に お い て DDKjit が 不 良 で あ っ た 群
228
2-5-01
山本笑子、佐藤麻耶
医療法人 六寿会 津島リハビリテーション病院 リハビリ課
で、嚥下基礎訓練である嚥下体操を行うことを業務とす
に初めて正社員 ST1 名(経験年数 0 年)が入職、2012 年
る。4)摂食嚥下障害の理解を深めるため、法人全体ま
に次いで正社員 ST1 名(経験年数 0 年)が入職した摂食
たは院内で定期的に勉強会を開催する。5)日本摂食嚥
嚥下環境について発展途上の環境であった。回復期病棟
下リハ学会の基準に沿った嚥下食・とろみについて、食
は、患者・家族の多様なニーズを支援し、生活期へ最良
事時、他職種へ直接助言・指導を行う。また、これを法
最善なバトンタッチを行うことが求められる。このニー
人全体へ徹底するため「摂食嚥下チーム」を立ち上げる。
【考察】今回、ST が主体となり、「食事」について「検
ション協会のセラピスト 10 か条宣言の 1 つに、「生活場
討」「伝達」「表現」を行うことで、「患者・家族のニー
面での ADL 向上を促進しよう」とある。私達 ST には、摂
ズ」を共有することにつながったと考えられる。今後も、
食嚥下リハビリテーションを通じ、「食事」という生活場
ST が主体となり、他職種と共に多方面から評価・連携を
面での ADL 向上を促進する使命がある。今回、ST が中
図ることで、「食事」という生活場面での ADL 向上を促進
心となってチームアプローチを行い、「摂食嚥下環境の
する取り組みを継続していきたい。そして、回復期病棟
改善」を通じて、「食事」という生活場面での ADL 向上
の役割である「退院後の生活」を具体的かつ詳細に想定
を促進した取り組みについて報告する。【方法】1)ナー
することにつなげ、患者・家族のニーズを支援していき
ス協働で、当院独自の評価用紙を使用し、嚥下機能につ
たい。
口頭演題 日目
ズの 1 つに、「食事」が挙げられる。回復期リハビリテー
特別プログラム
【はじめに】当院は、回復期病床 61 床を有し、2011 年
日 程
STが中心となってチームアプローチを行い、「摂食嚥下環境の改善」を通じ
て、「食事」という生活場面でのADL向上を促進した取り組みの報告
1
いて入院時スクリーニングを行う。2)他職種協働で、
2-5-02
回復期リハビリテーション病棟嚥下障害患者の栄養状態と誤嚥性肺炎発症の
関連
會田梨恵 1)、鈴木裕香子 1)、伊藤 和 1)、鈴木美里 2)、芳賀裕子 2)、二瓶健司 2)、戸松明子 1)、
渡辺直彦 1)
であった。(Fisherʼs exact test p=0.072)【考察】回復
ション(以下リハ)を行っている。近年、リハにおける
期リハ病棟嚥下障害患者の栄養状態と誤嚥性肺炎発症の
栄養管理の重要性が明らかになってきており、高齢脳卒
関連の可能性が示唆された。先行研究ではリハを行う患
中患者の栄養状態と誤嚥性肺炎の関連が報告されている。
者に低栄養が多いことや、回復期リハ病棟での誤嚥性肺
本研究では回復期リハ病棟嚥下障害患者の栄養状態と誤
炎発症の要因に臥床、低栄養、経管栄養、重度嚥下障害
嚥性肺炎発症の関連を検討した。【方法】当院回復期リハ
の存在が報告されている。回復期リハ病棟の実態調査で
病棟に 2014 年 4 月より 2015 年 3 月に入院した 65 歳以
は低栄養が 43 %であることに対し、本研究では 59.6 %
上かつ藤島摂食嚥下レベル(FILS)≦ 9 の嚥下障害患者
が低栄養であり、摂食嚥下障害患者では低栄養をより多
47 名(男性 19 名、女性 28 名、平均年齢 81.0 ± 7.4 歳)
く認めている。低栄養は誤嚥性肺炎発症と関連し、誤嚥
を対象とした。入棟時に簡易栄養状態評価表(MNA-SF)
性肺炎後の経口摂取到達率は 59 %との報告もあり、摂食
で栄養状態を評価し、低栄養群と低栄養のおそれのある
嚥下リハにおける栄養管理の重要性は高いと考える。回
低栄養予備群の 2 群にわけ、入院期間中の誤嚥性肺炎発
復期リハ病棟嚥下障害患者に対し、栄養状態に考慮した
症の有無を後方視的に比較検討した。【結果】risk 群 28
積極的な摂食嚥下リハを行うことは、誤嚥性肺炎を予防
名(59.6 %)、低栄養予備群 19 名(40.4%)、各群での
し安全な経口摂取のために重要である。
誤嚥性肺炎発症者は、5 名、0 名であった。低栄養群は低
229
2
2
日目
栄養予備群に比べて誤嚥性肺炎の発症が有意に多い傾向
口摂取獲得を目的とした集中的な摂食嚥下リハビリテー
ポスター演題
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟では安全な経
1
口頭演題 日目
三春町立三春病院 1)、公益財団法人 星総合病院 2)
ポスター演題 日目
VF 検査を実施することをルール化する。3)他職種協働
2-5-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
嚥下重症度別嚥下機能改善のプラトー時期と起因する要因について
二木佑里恵、大月 悠、江口千佳、高松 唯、宇野健太郎
特定医療法人 茜会 昭和病院 リハビリテーション部
【はじめに】脳卒中ガイドラインでは嚥下能力の予後を
中等度(Gr.4 ~ Gr.6)、重度(Gr.1 ~ Gr.3)の症例の約
想定したリハビリが推奨されているが、先行研究は少な
71 %は発症 16 週以降、嚥下 Gr の変化がみられなかった
く、予後を想定した嚥下訓練を十分に行えていない。本
(嚥下 Gr.2 から 5 へ改善)。予後に影響を与える要因は、
研究では、当院回復期病棟入棟者で嚥下障害を有した患
入院時の BMI と年齢が抽出された。【考察】本研究におい
者において、嚥下機能がプラトーに達する時期と予後に
て、軽症例は 12 週、中等度・重症例は 16 週で嚥下機能
影響を与える要因について検討することを目的とする。
がプラトーに達することが示された。運動麻痺の回復は
【 対 象】2013 年 6 月 ~ 2014 年 10 月 の 間 に 当 院 回 復 期
発症 12 週以内にプラトーに達するという報告があり、嚥
病棟入棟の嚥下障害を有した 85 例の内、入院期間が 30
下機能に関しても同様の事が考えられた。このため 13 週
日未満かつ嚥下グレード(以下、嚥下 Gr)が 10 の者は
を目安に食形態の設定を行なう等の退院指導が必要であ
除外した。基準を満たした 66 例(年齢 79 歳、入院期間
ると考えられる。中等度・重症例では、覚醒レベル低下
103.5 日)を対象とした。【方法】入院~退院まで 1 週間
や重度麻痺を伴うケースが多く、回復までの時間を要し、
毎に嚥下 Gr を評価。また入院~退院までの嚥下 Gr 改善
傾向にばらつきがあることが予測される。このため 16 週
度を従属変数、年齢、性別、入院時 JCS、FIM(認知・
までは積極的な訓練を行い、それを目安に退院先の絞り
運 動)、BI、Alb、BMI を 独 立 変 数 と し て ス テ ッ プ ワ イ
込み等を考慮に入れることが必要になると思われる。ま
ズ重回帰分析を行った。【結果】入院時の嚥下 Gr が軽度
た、予後要因については年齢、BMI に着目する必要があ
(Gr.7 ~ Gr.9)の症例の約 88 %は発症 12 週以降、嚥下
ポスター演題 日目
1
ると思われる。
Gr の変化がみられなかった(嚥下 Gr.7 から 9.5 へ改善)。
2-5-04
サルコペニアの有無による重度脳血管障害者のリハビリテーション効果の違い
~回復期リハビリテーション病棟の現状報告~
横山茂幹
日南市立中部病院
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【目的】サルコペニアの有無によって重度脳血管障害者の
群 4 名(82.8 歳)、サルコペニア無群 16 名(74.1 歳)の
リハビリテーションの効果に差があるか否かを、ADL の
2 群に分類した。サルコペニア無群は、FIM 全項目が向
指標である機能的自立度評価法(以下、FIM)を用いて
上しているものの(47.6 → 63.6 点)、一方、サルコペニ
検討した。【方法】対象者は、当院の回復期リハビリテー
ア有群に低下を認めた(37.5 → 34 点)。FIM 利得は、サ
ション病棟に入退院した 65 歳以上で重度脳血管障害者
ルコペニア無群が 15.8 点、サルコペニア有群が 0 点で
(Brock,2007)とされる FIM 運動項目が 46 点以下の 20
あった。また、FIM 効率は、サルコペニア無群が 0.15
名(76 歳± 10)である。対象期間は、2013 年~ 2014
点 / 日でサルコペニア有群が 0.02 点 / 日であった。【結
年までの 1 年間とした。サルコペニアの有無は、65 歳以
論】脳血管障害後の栄養障害は、損傷後に代謝が異化に
上で握力が男性 25kg、女性 20kg 未満かつ Body Mass
傾き(Staal-van den Brekel,1995 Fassbender,1999
Index が 18.5 未満により選定した(下方 ,2011)。当院
Muir,1999)、急性期の安静による活動制限(絶食)、絶
の重度脳血管障害者で、サルコペニアの有無によるリハ
食期間や摂食嚥下障害による低栄養、COPD などの慢性
ビリテーション効果を入退院時の FIM や、FIM 利得(退
肺疾患の併存疾患により代謝が亢進し、広義のサルコペ
院時 FIM- 入院時 FIM)、FIM 効率(FIM 利得 / 在院日数)
ニアを呈することがある。サルコペニア有群とサルコペ
より検討した。【結果】当院の重度脳血管障害者で、サル
ニア無群では、FIM 利得や FIM 効率に差を認めたことか
コペニアの基準を満たした者が 20 %に認められ、全例が
ら、サルコペニアからの早期脱却することが肝要である
嚥下障害を有していた。サルコペニアの有無によるリハ
と考える。
ビリテーション効果の検討は、対象者をサルコペニア有
230
2-5-05
「コーラスに参加する」という生活行為の再獲得を目標とした事例
日 程
高口ひかる
医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
参加した。介入効果の判定のため第 85 病日に音声評価、
【対象】2009 年に左脳梗塞を発症した 80 代女性である。
【 結 果】 音 声 評 価 は、 声 質 G1R1B2A1S0、MPT22 秒、
の趣味のコーラスを中断した。2014 年に急性硬膜下血腫
5 / 10、満足度 7 / 10 であった。「まだ声は出ないけど、
を目標とした事例に対する介入効果を検証すること。
この時の ADL は自立していたが、嗄声が出現し 20 年来
後、第 23 病日に当院回復期病棟に入院した。本研究は当
院臨床研究倫理審査委員会の承認後、対象者と家族の同
意を得て実施した。
【入院時評価(第 30 病日)】MMSE は 24 点、FIM は 110
COPM を実施した。
話声位 B3、声域 B2 - D5 であった。COPM は、遂行度
やっぱり歌うのは楽しい」といった発言が聞かれた。院
内のコーラスへの参加は第 54 病日から週 2 回、1 回 30
分となった。退院 27 日後からデイサービスにて週 2 回の
コーラスに参加することとなった。
【考察】MPT の延長や低音域への声域の拡大が得られた
あった。カナダ作業遂行測定(COPM)では、歌唱に対
思いを軽減した結果、歌の遂行度の向上が得られたと考
する遂行度・満足度は共に 1 / 10 であった。嗄声に関し
こと、またそのことが「声を聞かれるのが嫌だ」という
える。更に、歌が楽しいと思う体験を繰り返すことで
て「声を聞かれるのが嫌だ」「歌うのは嫌だ」との発言が
「まだ声は出ないけど、やっぱり歌うのは楽しい」とい
【介入】介入は第 30 病日から第 85 病日で、頻度は週 7
結果、コーラスの再開が可能になり、今回の介入は本症
聞かれた。
回、1 回 60 分であった。訓練内容は発声機能拡張訓練、
2-5-06
1
例の生活行為の再獲得に有効であったと考える。
音声疲労の予防訓練としてのチューブ発声法の意義-自覚的評価と音響分析
を用いた検討-
ポスター演題 日目
歌唱練習とした。この他に院内のコーラスに週 1 回 30 分
う思いに変化し、歌の満足度の向上に繋がったと考える。
口頭演題 日目
点であった。音声評価は、声質 G1R1B2A1S0、最長発
声持続時間(MPT)20 秒、話声位 B3、声域 C3 - D5 で
特別プログラム
【目的】「コーラスに参加する」という生活行為の再獲得
1
伊藤 愛、城本 修、土師知行
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科
島大学研究倫理委員会の承認を得た。【結果】評価項目毎
ら検討した。【方法】健常成人女性 10 名(平均年齢 21.4
に、協力者 10 名の同時間経過時の平均値を求めた。疲労
± 0.5 歳)を対象に、チューブ発声訓練 50 回/日を 10
過程では、自覚的評価の全項目において訓練前より訓練
日間行わせ、訓練前後で 3 日間の声の評価を実施した。
後の方が、評価値の時間経過に伴う上昇率が低くなった。
まず 1 日目に、音声疲労の状態を作るための音声負荷課
音響分析では、小さく高い声において、疲労過程におけ
題を実施した。音声負荷課題中(疲労過程)および、音
る PPQ と APQ は、訓練後の方が時間経過に伴う上昇率
声負荷課題日を含む計 3 日間(回復過程)で声の評価を
が低く、HNR は訓練後の方が高くなった。一方、回復過
実施した。声の評価は、自覚的評価と音響分析による客
程では自覚的評価、音響分析共に一定の傾向は認められ
観的評価を実施した。自覚的評価は、(1)発声時の努力、
なかった。【考察】疲労過程において、自覚的評価と音響
分析の両側面から、チューブ発声訓練の効果が認められ
項目について、それぞれ 0 ~ 10(高値ほど努力等が大き
た。また、5 種類の発声課題の中でも小さく高い声のよう
い)で主観的評価をさせた。音響分析は、評価期間中に
な負荷発声は音声疲労に対する感度が高く、音声疲労の
各自 IC レコーダーに録音させた、通常の発声や小さく高
状態を反映できると考えられた。
い声などの 5 種類の音声を用い、それぞれについて PPQ、
APQ、HNR 等の音響パラメータを測定した。自覚的評価
と音声録音は、疲労過程では 15 分おきに、回復過程では
231
2
日目
(2)喉頭の不快感、
(3)小さく高い声の出しにくさの 3
2
ポスター演題
4 時間おきに実施させた。なお、本研究にあたり県立広
を、自覚的評価と客観的指標である音響分析の両側面か
口頭演題 日目
【目的】音声疲労の予防としてのチューブ発声法の効果
2-5-07
当科における喉頭肉芽腫に対する音声治療の検討
日 程
飴矢美里 1)、田中加緒里 1)、池田健二 1)、田口亜紀 2)、羽藤直人 1)
愛媛大学医学系研究科 耳鼻咽喉科 1)、松山赤十字病院 2)
特別プログラム
目的喉頭肉芽腫は、声帯後部に好発し、喉の違和感や嗄
を要した。治療後、病変消失 4 例、縮小 1 例、対側の再
声を来す。原因は、気管内挿管、酸逆流症、咳嗽、音声
発 1 例、治癒率は 66.7 %であった。そして、個人差はあ
酷使、原因不明である。喉頭肉芽腫は難治性で再発しや
るものの全例で発声方法と発声持続、声の大きさに改善
すく、治療に難渋することも少なくないが、音声治療が
を認めた。結論過緊張性発声を認めた喉頭肉芽腫症に対
奏功する症例を経験する。本稿は、当科で音声治療を
して音声治療を行うことで、良好な結果を得た。ただし、
行った喉頭肉芽腫症例について検討を行った。方法当科
胃酸逆流の所見を認める症例は、音声治療の効果が得ら
音声外来にて臨床的に喉頭肉芽腫と診断され、音声治療
れるまでに時間がかかることも示された。
を行った 6 例を後方視的に検討した。検討項目は、主訴、
音声治療の内容と期間、治療前後の音声機能検査結果、
口頭演題 日目
1
治癒率である。結果薬物療法や外科的切除に抵抗性があ
り、音声治療を追加した症例は 4 例、初期から音声治療
を併用した症例は 2 例であった。主訴は、嗄声 3 例、咽喉
頭違和感 2 例、長時間の発声困難感 1 例であった。喉頭所
見は、発声時に声帯前後径の短縮を全例に認めた。音声
治療は、全例に声の衛生指導、喉頭マッサージ、腹式呼
吸、ため息、アクセント法を行い、一部の症例にリップ
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
トリルを追加した。音声治療期間は、30 日から 1490 日
2-5-08
声帯結節症例に対する声の衛生指導の臨床効果
阿部千佳 1,2)、朴澤孝治 1,2)
朴澤耳鼻咽喉科 1)、統合メディカルケアセンター Tree of life 仙台ボイスセンター 2)
【目的】声帯結節に対する音声治療の中核として声の衛生
帯結節の治療転帰(手術、消失・縮小)について対応の
指導がある。今回、声を酷使する職業(歌手・学校教諭・
ない t -検定および度数分析を行った。【結果】声帯結節
保育士)の声帯結節症例に対して声の衛生指導を行い、
の音声治療後の転帰は、3 - 4 回の音声治療に反応せず手
その治療効果について検討した。【対象】201X 年から 4
術となった 9 例、縮小・消失 6 例、脱落は 3 例であった。
年間に当院を受診し、声帯結節と診断された成人女性 18
音声治療奏功例に有意に高い発声量の制限の達成が認め
例。職業は、歌手、教諭(幼稚園・小学校・中学校)・保
られた(P<0.05)。初診時の年齢・病悩期間・声帯結節
育士。年齢は中央値 42 歳(20 歳~ 63 歳)。病悩期間は
の形状・炎症反応の有無・発声機能・VHI 得点、総合的
平均 4.7 ヶ月(3 日~ 2 年以内)
。
【方法】調査項目は、以
なアドヒアランス遵守状況、水分摂取の達成状況につい
下の 4 つの項目とした。1. 年齢、病悩期間および初診時
ては、治療転帰別に有意な差は認められなかった。【考
の声帯結節の形状(隆起性・広基性)と炎症所見の有無。
察】声の衛生指導は、患者自身の発声に対する理解の促
2. 発声機能:最長発声持続時間、声域上限。3. 患者の自
進、声帯の誤用・乱用などの発声習慣の修正、水分摂取
覚的評価:Voice Handicap Index の総得点。4. 声の衛
などによる声帯粘膜の保湿を目的に施行される。その中
生指導後の自己申告をもとに総合的なアドヒアランス遵
で、発声量の制限が声帯結節の治療転帰に影響する重要
守状況(%)、声の衛生指導の具体的項目として水分摂取
な要因であると考えられた。
(1 日 1.5L 以上)、発声量の制限(連続 30 分以内・大声の
制限)の達成状況を 3 段階(1:守れなかった 2:おおよ
そ守れた 3:守れた)とスコア化した。以上の各項目と声
232
2-5-09
日置久視
日本聴能言語福祉学院 補聴言語学科
ス度」、「疲労度」のいずれについても BO 群で有意に高く
ン病院においてストレス度やバーンアウト(燃え尽き症
なっていた。<p0.01「同僚との会話」「頼れる上司」「相
候群)の数値が有意に高いことが明らかになった。そこ
談できる上司」などストレス緩和因子についても有意差
が認められ、非 BO 群で有意に高くなっていた。p<0.01
を対象にデータを分析し、職業性ストレスとの関係を考
【考察】これらの結果から BO 群では非 BO 群に比して長
察した。【方法】総合病院に勤務する PTOTST 計 650 名
時間労働になっており、ストレス度及び疲労度ともに極
を対象に 2010 年から 2011 年にかけて行った自記式質
めて高く、離職願望を芽生えさせているということが考
問紙調査のデータより回復期リハビリテーション病院に
えられる。リハビリテーション専門職にとって重要と思
勤務する PTOTST の計 116 名の中からバーンアウト群の
われるのは「技能の活用度」や「働きがい」と思われる
47 名と非バーンアウト群(以下 BO 群)の 28 名の計 75
が、この 2 項目も BO 群で低下している。また非 BO 群で
名について比較分析を行った。有意差検定は、Scheffe
は「同僚との会話」「頼れる上司」「相談できる上司」な
の多重比較、Mann - Whitney の検定を用いて行った。
どのストレス緩和因子が高いのに対して BO 群では低く
【結果】
「労働時間」に有意差が認められ BO 群で有意に
高くなっていた。p<0.01「朝食摂取」についても有意差
なっており、サポートの必要性が望まれる。また、全体
的な傾向として今回も OT の BO 率が高くなっている。
が認められ、BO 群で低くなっていた。「技能の活用度」、
口頭演題 日目
で今回は回復期リハビリテーションに勤務する PTOTST
特別プログラム
【目的】前回に報告した中で特に回復期リハビリテーショ
日 程
回復期リハビリテーション病院におけるリハビリテーション専門職と職業性スト
レスの関係について ~バーンアウト群と非バーンアウト群の比較を通して~
1
「働きがい」についても有意差が認められ、BO 群で有意
2-5-10
高齢過疎地における地域密着型病院でのST業務の現状と課題~新人STの視
点から~
栗田朋美 1)、谷沢剛志 1)、荻原大輔 2)、河手伴佳 2)、青木美咲 3)、松川智美 3)
【目的】当院は長野県南佐久地域という高齢過疎地の地域
や家族が胃瘻増設を選択したのはごくわずかで、残りの
密着型病院である。一般・地域包括ケア・医療療養病床
多くは誤嚥をするリスクを理解された上で経口摂取を希
を設置し、地域の医療機関・診療所・介護保険施設等と
望した。
【結論】高齢過疎地において ST 業務の大部分は摂食嚥下
るよう取り組んでいる。言語聴覚療法対象者の概要や業
障害への介入であった。高齢で高度の認知機能低下を伴
務内容をもとに高齢過疎地での言語聴覚士(以下 ST)業
うと胃瘻増設を選択する例は少なく、ST の嚥下機能評価
務の現状と課題について報告する。
が患者の生死に影響を与えるシビアな環境であった。予
【方法】2014 年 4 月から 2015 年 12 月末までの担当患者
後予測が未熟である新人 ST は先輩 ST や病棟スタッフと
について、障害の種類、認知症の有無、介護度、転帰先、
より密に連携していく必要があった。また退院後に老老
入院前後の摂食状況の変化等をまとめた。
介護となるケースも多く、地域のケアマネージャー・訪
問看護師・施設職員らと共に「地域全体」でみていける
および認知機能低下を認める者は 9 割を超えた。転帰先
よう障害像や介入方法等をわかりやすく伝達する専門性
は自宅復帰が最も高く、次いで死亡、施設入所の順だっ
も必要だった。病院で終末を迎える患者も少なくない中、
た。介入例の 95 %は摂食嚥下障害で、半数にコミュニ
患者・家族の死生観をくみ取り ST としての立場を越えた
ケーション障害や構音障害を重複していた。一方言語機
丁寧な関わりも求められた。今後の課題としては軽度認
能に問題を認めない高次脳機能障害者も 1 割いた。ST が
知症への対応や、若年の高次脳機能障害者への対応が挙
実用的な経口摂取が難しいと評価した 37 例のうち、患者
げられる。
233
2
日目
【結果】患者の 96 %が 75 歳以上の後期高齢者で、認知症
2
ポスター演題
連携し患者が在宅医療・介護施設へスムーズに移行でき
1
口頭演題 日目
JA 長野厚生連 佐久総合病院 小海分院 言語療法科 1)、同佐久医療センター 言語療法科 2)、
同佐久総合病院 言語療法科 3)
ポスター演題 日目
に低くなっていた。p<0.05 また、
「離職願望」
、
「ストレ
2-5-11
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
介護予防教室にSTは求められているのか
鈴木悠史 1)、谷山友希子 2)、西 良佳 2)、岡野 忍 3)、磯野 敦 4)、鈴木康文 5)、吉田真由美 6)
医療法人東湖会 鉾田病院 リハビリテーション科 1)、医療法人東湖会 会議老人保健施設フロンティア鉾田 春の場所 2)、
社会福祉法人北養会 介護老人保健施設くるみ館 3)、
医療法人社団緑友会らいおんハート整形外科リハビリクリニック 4)、
学校法人 霞ヶ浦学園 つくば国際大学 医療保健学部理学療法学科 5)、
独立行政法人国立病院機構 水戸医療センター 神経内科 6)
【はじめに】昨年介護保険法が改正され、新たに介護予
協議会が主催。各年間 24 回開催。職種は PT、OT、ST、
防・日常生活支援総合事業の実施が市町村に義務づけら
管理栄養士、音楽療法士、健康運動実践指導士に加え、
れ、介護予防を機能強化する観点から地域リハビリテー
シルバーリハビリ体操指導士(茨城県独自の資格でボラ
ション活動支援事業が新たに設置された。今後益々リハ
ンティアによる住民の体操指導者)が参加。2)二次予防
ビリテーション専門職の必要性が高まっていくと考えら
事業:包括支援センター主催。12 回 1 クールを年 3 回開
れるが、これまでの介護予防教室などの事業は身体機能
催。参画職種は健康運動実践指導士と ST。尚一次予防教
面中心のものが多く、ST が参画できる機会制限が予想さ
室に関しては参加者が要介護者となるまで教室に参加す
れる。そこでこれまで ST による介護予防教室へ参加経験
ることができるが、二次予防教室に関しては 3 か月で終
を持つ方々が我々のプログラムや言語聴覚士を必要とし
了となる。【対象及び方法】今回は ST の介入が参加者の
ているか、また介護予防教室へ参加する意欲につながっ
継続的な教室への参加意欲を調査することが目的のため、
たのかを調査することで、今後各市町村で施策担当され
長期参加が可能な一次予防事業を対象とした。アンケー
る行政側が ST の必要性を理解する契機になるのではない
トの内容は身体機能、認知機能、口腔機能に対する課題
かと考え、当方が関わってきた介護予防教室の参加者へ
の必要度とそれらの機能に関する不安度、コミュニケー
アンケート調査を実施した。【これまでの鉾田市の介護予
ション課題に関する必要性に関して評価した。当日はア
防教室】1)一次予防事業:市の委託事業として社会福祉
ンケートの結果に考察を加えて報告したい。
2-5-12
直接的嚥下訓練場面における倫理的ジレンマ
渡邊淳子 1)、森 真喜子 2,3)、井上洋士 2)
福岡大学病院 リハビリテーション部 1)、放送大学 大学院 2)、国立看護大学校 3)
【背景】嚥下訓練においては、経管栄養を拒否している、
医師と議論できにくい状況である時には《直接訓練を止
終末期である等の理由で、医師から重度の嚥下障害者へ
めると患者が衰弱してしまうジレンマ》が感じられてい
の直接的嚥下訓練(以下、直接訓練)の指示が出される
た。また、《医師の指示の下の直接訓練》において、家族
ことがある。このような場合、誤嚥が避け難いことを知
が患者に経口摂取させる希望が高いものの患者本人の意
りながら直接訓練を行うことに、倫理的な問題はないの
思は確認不能の場合で、患者が誤嚥性肺炎を繰り返す中
だろうかとジレンマを感じることがある。摂食・嚥下障
で直接訓練が続けられる時には《患者の益にならないよ
害に関する倫理的課題やジレンマについては、これまで
うな直接訓練を続けるジレンマ》が生じていた。さらに、
に医師や看護師からの報告があるが、ST の立場からの報
患者本人の経口摂取の希望が高い場合であっても、誤嚥
告はほとんどない。【目的】直接訓練で ST が遭遇する倫
性肺炎の転帰が死亡の場合には《患者の死に加担したよ
理的ジレンマの様相とそのようなジレンマが生じるプロ
うに感じる苦悩》が感じられていた。
【考察】ST にとっ
セスを明らかにする。【対象と方法】医療機関で成人を
て《直接訓練を止めると患者が衰弱してしまうジレンマ》
対象とした嚥下訓練に携わる ST を対象に半構成的インタ
《患者の益にならないような直接訓練を続けるジレンマ》
ビューを行い、得られたデータを Strauss & Corbin 版
《患者の死に加担したように感じる苦悩》は回避困難な倫
グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し
理的ジレンマであることが明らかとなり、それらへの対
た。【結果】《医師の指示の下の直接訓練》が行われた後
応は急務である。
に《主治医に直接訓練の継続が危険であることの報告》
を行った場合で、直接訓練が中止になる可能性が高いが、
234
2-5-13
竹内真理子
京都大学 医学部附属病院 形成外科
【事例】このような取り組みの中で、子どもたちのコミュ
発達段階も多様である。その子どもたちが学校生活の中
ニケーション力がどのように変化していったかを、数例
で、少しでも他者とのコミュニケーションを楽しみ、そ
の事例を通してみていく。【結論】コミュニケーション力
の力を向上させていくことが望まれる。そのためには、
向上には、子どもの発達レベルにあったことばかけ、関
何を優先し、何を大事に考えていくのかの検討は重要と
わりの中で、やりとりができたことを子どもが実感する
考える。2010 年から言語聴覚士の立場から総合支援学校
体験を積んでいく。子どもたちが自分の思い、感情が他
の子どもたちのコミュニケーション力向上に関わり、総
者と共有できることを理解していくことが重要である。
合支援学校の先生たちと共に考え、取り組んできたこと
また、子どもに関わる先生たちが定型発達について十分
を報告する。【取り組み】1)子どもたちの言語発達レベ
理解していけるようにしていく。
口頭演題 日目
ルを発達及び知能検査により客観的に評価にする。2)そ
特別プログラム
【はじめに】総合支援学校に在籍する子どもたちは障害も
日 程
総合支援学校での言語聴覚士の取り組み -発達の遅れた子どもたちのコ
ミュニケーション力向上をめざしてー
の結果から、言語理解、言語表出レベルを確認し、その
レベルにあったコミュニケーション手段について先生た
ちと話し合い、それを共有する。3)子どもに関わる先
1
生たちは、その子どもの言語発達レベルにあったコミュ
ニケーション手段を使っていく。4)コミュニケーション
=相互やりとり。やりとりの頻度を上げるには、子ども
2-5-14
特別支援学校との連携:3年間の活動の経過と課題
橋本久美 1,2)、高島良代 1,2)、西脇恵子 2)、下嶋哲也 4,5)、須釜槙子 3)、水上美樹 1)、
西澤加代子 1)、菊谷 武 1)
以外にも教員が ST に自由に質問する時間を設けた。3)
ての都立知的障害特別支援学校(以下、特別支援学校)
個別課題時に教室に入り教員と直接コミュニケーション
に導入する予定である。我々は特別支援学校におけるこ
を取りながら助言し、ケース会議で再度検討した。4)教
れまでの 2 年間の取り組みについて、日本コミュニケー
員に対し ST の対象領域や評価内容について年 1 回の研修
ション障害学会において発表した。今回は、3 年目の活
会を実施した。【考察と今後の課題】昨年の報告から、教
動経過を報告し課題について検討する。【26 年度までの
員は我々専門員に対して評価だけでなく具体的な課題や
問題点・課題】1)療育等に関する情報が介入前に不十分
訓練法の提案を求めていることが示された。その結果を
である、2)評価直後にケース会議が設定されず、会議で
踏まえ、今年度は個別課題を観察・評価し、教員と話し
の評価結果の検討時間が少ない、3)言語聴覚士(以下、
合う時間を十分に確保する活動を行うことができた。今
ST)による介入方法の確立、4)教員への ST の専門領域
後は、教員に対する専門員の業務に関するアンケートを
の啓発、の 4 点が課題であった。【27 年度の取り組み】
行うことで、今年度の活動の理解度を評価する必要があ
新 1 年生・転入生に対し言語コミュニケーション評価を
る。また、児童生徒の能力を経時的に評価し、年齢や能
実施、全校児童生徒に対し個別課題の評価を実施した。
力の段階にあった評価方法を確立しなければならないと
また、前年度の課題を受け、以下の点に取り組んだ。1)
考える。
評価用紙を改訂し、主訴や療育情報の欄を設けた。2)評
235
2
2
日目
価した児童生徒のケース会議を即日実施し、ケース会議
学校知的障害教育外部専門員」(以下、専門員)を都内全
ポスター演題
【はじめに】東京都は平成 28 年度までに「都立特別支援
1
口頭演題 日目
日本歯科大学 口腔リハビリテーション 多摩クリニック 1)、日本歯科大学附属病院 言語聴覚士室 2)、
日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科 3)、日本歯科大学附属病院 臨床講師 4)、
国立障害者リハビリテーションセンター学院 言語聴覚学科 5)
ポスター演題 日目
からの発信を見逃さず、子どもに届く手段で返していく。
2-5-15
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
離島地域での発達支援システム構築のためのアンケート調査
矢崎真一
ファーストハンドコミュニケーション
1,はじめに
発達障害についての情報が保育や教育の現場に浸透する
とともに、発達において「気になる子」の存在が注目を
集めるようになり、様々な地域でこの子たちを支援する
ための地域発達支援システムを構築することが見られる
ようになってきた。沖縄県石垣市でも先進地にならって
発達支援システムの構築を目指しているが、離島地域で
あるため、地理的・文化的に他地域との差があるため、
地域の実態調査のためのアンケート調査を行った。
2.方法
市内の全ての保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校の
クラス担任にアンケート調査を行った。
アンケート項目は、保育園と幼稚園では身体・運動・こ
とば・集団活動の 4 項目、小学校では身体・運動・こと
ば・読み書き・計算・集団活動の 6 項目、中学校と高校
では身体・運動・ことば・学習・集団活動・生活態度・
進路の 7 項目とした。クラス担任が、そのクラスに所属
する全員に対して、上記の各項目について「問題ない・
気になる・支援が必要」のうちから 1 つを選択して評価
する形式とした。それぞれの項目に対していくつかの評
2-5-16
価例を例示した上で、印象や直感で評価するように依頼
した。
3.結果
回収率は 98.5 %。
評価の対象となった子どもの数は、保育園・幼稚園が
2,127 人、小学校が 3,223 人、中学校が 1,618 人、高校
が 1,471 人。
項目別に「気になる」または「支援が必要」とされた子
どもたちの比率を以下に示す。
(保育園・幼稚園)身体:6.7 %、運動:5.8 %、こと
ば:9.0 %、集団活動:11.0 %
(小学校)身体:8.1 %、運動:5.4 %、ことば:7.2 %、
読み書き:15.2 %、計算:15.4 %、集団活動:11.2 %
(中学校)身体:3.9 %、運動:3.0 %、ことば:5.9 %、
学習:20.4 %、集団活動:12.4 %、生活態度:13.7 %、
進路:14.2 %
(高校)身体:4.2 %、運動:3.0 %、ことば:3.8 %、
学習:10.8 %、集団活動:7.1 %、生活態度:8.3 %、進
路:9.2 %
本学園におけるこども支援の展開について
福永陽平 1)、福永晴香 1,2)、戌亥啓一 1)、川元真由美 1)、小牧祥太郎 1)、松尾康弘 1)、
冨山翔太 1)、提 雄輝 1,3)
鹿児島医療技術専門学校 言語聴覚療法学科 1)、社会福祉法人しらゆき福祉会 しらゆき保育園 2)、
学校法人原田学園 ことばの支援センター 3)
本学園は幼稚園・保育園、高等学校および専門学校を運
であることは言語聴覚士として周知しておくべきことで
営している。これまでに培った学園のノウハウを生か
ある。平成 27 年 8 月に本学園の新たな取り組みとして、
し、地域の子どもたちがいきいきと生活するための手助
関連の保育園内に言語聴覚士を配置し、在園児を中心と
けを他職種連携により実現する事を目的とし、平成 26 年
した支援を開始した。言語聴覚士が子どもの生活する場
4 月より原田学園ことばの支援センターの運営を開始し
に赴き専門的支援を行うことは、園内で般化できる実用
た。子どもの支援には、命を救うための周産期医療、子
的な支援ができる、担当保育士と連携した支援がタイム
育て世代の保護者のストレス・悩みを解消するための子
リーにできること等の報告をうけている。子どもの成長
育て支援事業、発達障害を抱える子どもの発達を促進す
は連続的である。医療や教育、行政が連携して関わって
る発達支援事業の 3 つが存在する。本県は療育センター
いくことが重要であるが、現状でも充分な連携が築かれ
を有しているが、受け入れには限界があり、診断や支援
ているとはいい難い。高齢者に特化した臨床活動でだけ
を受けることが出来ずに待機する児童数がおよそ 300 人
でなく、医療現場の ST による保育園への訪問リハビリが
という状況となっている。行政による発達支援事業が立
実現すれば、発達に特別なニーズを必要とする子どもの
ち遅れる中で、民間の発達支援サービスは急速な広がり
早期発見および直接的で連続的な支援も可能になるので
をみせており、地域社会におけるニーズが高い事を示唆
はと考える。今後も、多くの子どもが社会人として就業
している。子どもの各種検診ならびに保健機関において、
できるようになることを目標に、言語聴覚士の活用と他
母親から寄せられる相談内容の大部分が、ことばの遅れ
職種連携を図っていきたい。
236
2-5-17
坂下亜希子 1)、園田明子 2)、土屋美智子 1)、森田秋子 3)
学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院 聴能言語学科 1)、
学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院 補聴言語学科 2)、
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院 リハビリテーション部 3)
連携教育実施後にアンケート調査を実施。1)他職種の患
education)の一環として「専門職種間連携教育(以下、
者への関わりの意図を理解できたか、2)自職種の患者へ
連携教育)」を次のように実施している。対象は本学院及
の関わりの意図を理解してもらえたか、3)他職種へ関心
びグループ内コメディカル養成課程(言語聴覚士、義肢
が持てたか、4)活発な話し合いができたか、5)連携の
装具士、理学療法士、看護師)最終学年在学生。内容は、
重要性が理解できたか、の 5 項目について、4 件法(A で
(1)グループ病院専門職(リハ医等)による連携の必要
きた・B まあまあできた・C あまりできなかった・D でき
性と実践例についての講義及び症例提示、(2)参加学生
なかった)の回答と、感想及び「臨床現場でとるべき行
(全 141 名)を全職種で構成される 20 グループ(職種間
動」について自由記述させた。
【結果と考察】回答数は 37 名(回収率:94.9%)
。5 項目
各職種が専門用語と検査結果を解説、(3)その後、自職
について「できた(「まあまあできた」を含む)」と回答
種のみの構成グループ(職種内グループ)で評価及びア
した学生が、1)97%、2)94%、3)100%、4)95%、
プローチ方法を検討、(4)(3)で作成した内容を持ち寄
5)100% と大多数で、連携教育による高い教育的効果が
り、職種間グループでの発表及び討論を経て、統一的な
得られたと考えられた。また自由記述からは、情報共有
目標設定を検討、である。今回我々は、この「連携教育」
の重要性と他職種領域への理解を深める必要性、さらに
の教育的効果検討を目的にアンケート調査を実施した。
連携に必要なコミュニケーションスキルの重要性の理解
当学院における専門職連携教育の効果について(第2報)―臨床実習後のア
ンケート調査―
園田明子 1)、坂下亜希子 2)、土屋美智子 2)、森田秋子 3)
及び、患者全体像の把握に役立っていたという理由が
多かった。一方、2)、4)を臨床実習に「役立たなかっ
た」
(「あまり役立たなかった」を含む)と答えたものは
教育」が実習先で役立ったか、下記 6 項目について 4 件
法での回答を求め、その理由を自由記述させた。項目は、
た。しかし、機会があった学生には、「連携教育」での他
職種へ分かりやすく伝える経験が役立った。その他、少
行ったので報告する。【方法】対象は第 1 報と同一とし、
臨床実習後にアンケートを実施した(計 39 名)。「連携
1)他職種の患者への関わりの意図の理解、2)自職種の
患者への関わりの意図を理解してもらえたか、3)他職種
記入は任意とした。【結果】35 名より回答を得た(回収
率:89.7%)。臨床実習に「役立った」(「まあまあ役立っ
た」を含む)と答えたものは、1)97%、2)37%、3)
97%、4)66%、5)93%、6)93% で あ り、2)4) を
除く 4 項目は極めて高かった。1)は他職種訓練見学時や
質問・カンファレンス時など実習で遭遇する様々な場面、
数意見ではあったが、担当患者の装具作成時に興味が持
てた、作業療法士も知りたかったという意見もみられた。
【考察】一部項目については質問の不備があったものの、
「連携教育」は臨床実習の場でも役立っていることがわ
かった。工夫が必要であった。他職種との関わりの中で
患者への関わりの意図の理解が深まり、その理解が他職
種への関心、及び患者全体像の把握につながり、チーム
アプローチの重要性の理解に結びついていたことが示唆
された。
237
2
日目
への関心が持てたか、4)他職種との話し合い、5)連携
の重要性理解、6)総合評価とした。実習先及び氏名の
60 %、31 %であったが、理由の多くは機会なしであり、
加えて、4)は「話し合い」の捉え方が大きく分かれてい
2
ポスター演題
【はじめに】当学院における専門職種間連携教育(以下、
「連携教育」)について、第 1 報で得られた教育効果が臨
床実習で役立ったか確認するため、アンケート調査を
1
口頭演題 日目
学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院 補聴言語学科 1)、
学校法人珪山学園 専門学校日本聴能言語福祉学院 聴能言語学科 2)、
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院 リハビリテーション部 3)
1
ポスター演題 日目
2-5-18
にもつながったと考えられた。
口頭演題 日目
グループ)に分け、職種紹介の後、症例データについて
【方法】本学院言語聴覚士養成課程在学生 39 名に対し、
特別プログラム
【はじめに】当学院では専門職連携教育(Interprofessional
日 程
当学院における専門職連携教育の効果について(第1報)-講義・演習後の
アンケート調査-
2-5-19
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
言語聴覚士養成校における「言葉の教室」の取り組み
山崎康之 1)、岡崎 宏 2)、菊池詩織 1)、草野義尊 2)
医療法人社団北水会記念病院 北水会記念病院 リハビリテーション科 1)、
社会福祉法人北養会 水戸メディカルカレッジ 言語聴覚療法学科 2)
【はじめに】北水会グループは、病院、老人保健施設、言
( 男 20 女 5)、 構 音 不 明 瞭 17( 男 11 女 6)、 吃 音 1( 男
語聴覚士養成校などを併設する医療・社会福祉法人であ
1)、対人コミュニケーション・集団行動 8(男 8)、その
る。2014 年 9 月から言葉の教室を開設し、幼児から低
他 1(男 1)・訓練希望 あり 14 幼児 8(男 6 女 2)児
学年児童の言葉やきこえの相談を行っている。他県の養
童 6(男 4 女 2)・転帰 言語訓練開始 9 名(養成校 4 病
成校併設施設での相談支援事業に関する報告は散見され
院 5)、経過観察 38、言語訓練提案 5【考察】訓練希望が
るが本県では未実施であった。今回、開設から 1 年が経
あったのは就学前に診断を受けて他院で療育を受けてい
過し、これまでの取り組みと実績をまとめたので報告す
たケースが多かった。これは就学を機にリハビリを終え
る。【対象】2014 年 9 月から 2015 年 9 月まで相談に来
たが、本人・家族ともに不安が残り、継続したリハビリ
室した幼児・児童の 52 名とした。【方法】相談記録・指
を希望される方が多いためと考えられた。このことは就
導記録から、年齢・相談の契機・主訴・訓練希望の有無・
学児に対する医療機関によるリハビリの継続が期待され
転帰について検討した。年齢区分は児童福祉法・学校教
ていることが示唆された。当グループの取り組みは就学
育法により区分した。初回相談時の主訴は重複したもの
児への支援を一部担えたが十分なものではなかった。今
に関しては主症状のみで集計を行った。【結果】相談件数
後、継続した相談や発達の支援を続け社会貢献を担うた
52 件:幼児 41 平均年齢 4 歳 2 か月(男 35 女 6)、就学児
めに学生を活用した訓練を充実させ、病院と養成校併設
11 平均年齢 8 歳 3 ヶ月(男 6 女 5)・相談の契機:園・学
の特徴を活かしたい。
校の指摘 19、ホームページ 15、知人から紹介 4、セミ
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
ナー 5、育児相談 4、その他 5・主訴 言語発達の遅れ 25
2-5-20
自閉症スペクトラム障害を伴う吃音幼児の指導経過について
斉藤公人
千葉市療育センター 療育相談所
【はじめに】自閉症スペクトラム障害(ASD)は対人性
た。< 第 1 期 > 指示には応じず、一方的な要求が目立っ
の問題から相互の共感したやり取り関係を構築しにくい。
たため、やりとり遊びを積極的に行った。[ 吃音:39%
さらに、吃音症状を併せ持つと音声での伝わりにくさか
(中等度)]< 第 2 期 > 視覚的なスケジュールの提示で注目
ら、よりコミュニケーションを阻害される。今回は ASD
が良好となり、大人の励ましで課題に応じるようになっ
と吃音を併せ持つ児の指導過程を報告する。【対象】年長 た。[ 吃音 19 %程度(軽度)]< 第 3 期 > 本児から音声で
男児、ASD、精神発達はノーマル域、若干言語性に弱さ
適切な要求表現は可能となり、相手を意識した相互のや
がある。なお、吃音の自覚はなく、連発、伸発の中核症
りとりは向上した。よって、
「ゆっくりとした発話」を
状が目立ち、初回評価では 4 レベル(中等度)であった。
促したが発話速度は変化がなかった。[ 吃音:16%(軽
【方法】H26 年 3 月~月 1 回の頻度で指導を実施した。吃
度)]< 第 4 期 > パペットなど使用し、発話の意識付けを
音軽減には、環境調整と発話速度のコントロールが重要
行い発話速度は少しコントロールされた。[ 吃音:16%
である。本児は行動コントロールに問題が見られたため、
(軽度)]【結果及び考察】視覚的な支援を積極的に提示
視覚支援をし、やりとり遊びを通して共感性のあるコ
することにより、やりとりがスムーズになり、課題場面
ミュニケーション関係の確立を目指した。コミュニケー
でゆっくりとした発話が可能となった。当日はコミュニ
ションの改善で保護者が適切に対応でき(環境調整)、さ
ケーション面の改善と吃音頻度の関連性を環境調整とい
らに相手の発話速度を意識し吃音症状の軽減にも有効で
う視点から考察も加え、報告する。
あると仮説を立て、実践した。【経過】コミュニケーショ
ンの変化によって 4 期に分け、吃音症状の経過をまとめ
238
2-5-21
リッカムプログラムを実施した一例における母親支援
北里大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 1)、北里大学 医療衛生学部 2)
語的随伴刺激について説明し、母親が混乱しないように
に基づいた幼児の吃音治療プログラムである。今回、LP
段階的に導入した。また、家庭での練習(やりとり遊び、
を実施した症例について、指導経過をまとめ、母親の躓
構造化した会話)を指導した。LP 開始後 2 週間で吃症状
きとその支援の重要性について考察する。
は軽減したが、母親から「子供が飽きやすく、家庭での
【症例】初診時 4 歳 8 ヵ月、女児、左利き。3 歳頃に発吃。
練習が難しい」との訴えがあったため、指導場面では本
変動しながら、発吃 1 年半後には引き伸ばしやブロック、
児の吃症状に合った難易度で、かつ家庭で取り組める練
随伴症状が多く観察されるようになった。幼稚園の進級
習を毎回提案した。母親は、徐々に練習に慣れ、吃症状
に伴って吃症状が悪化し、3 週間程話せない状態になり来
が増えた際には練習の難易度を下げるなど、練習内容を
院に至った。
調整できるようになり、吃症状が安定した。LP 開始 4 ヶ
たり、検査者との会話 39、文・文章による絵の説明 46
月後には吃症状は重症度 1 まで改善した。
【考察】LP は幼児の吃音に対して成果を上げており、本児
で、単語呼称でも 63 であった。主な吃音中核症状は、2、
においても有効であった。LP を実施するにあたっては、
3 回の音節の繰り返し・引き伸ばし・ブロックで、足踏み
保護者が吃症状を評価し、練習時間を設けて、言語的随
などの随伴症状も観察された。LP の重症度 4。吃症状の
伴刺激を与えることが必須であるが、実際には家庭での
自覚はあるが、話しづらさ等の訴えはなかった。
継続は容易ではない。練習内容の工夫など、ST が細やか
【経過】初回評価後、環境を調整して 1 ヶ月間経過をみた
1
に保護者を支援することが重要であると考えられた。
増悪と軽快を繰り返す心因性吃音の長期経過
谷合信一 1)、前新直志 2)、田中伸明 1,3)、栗岡隆臣 1)、丹羽克樹 1)、冨藤雅之 1)、荒木幸仁 1)、
塩谷彰浩 1)
ポスター演題 日目
が、吃症状の変化なく、LP を開始。まず重症度評定や言
2-5-22
口頭演題 日目
【初回評価】吃音検査法の吃音中核症状頻度は 100 文節あ
特別プログラム
【はじめに】リッカムプログラム(以下 LP)は、行動療法
日 程
佐々木ゆり 1)、梅原幸恵 1)、原 由紀 2)
1
防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学講座 1)、国際医療福祉大学 言語聴覚学科 2)、陸上自衛隊 第 6 師団司令部医務官 3)
獲得性吃音は神経原性吃音と心因性吃音に分類され
る。我々は、心因性吃音を発症し言語訓練を実施した高
齢男性の一例を経験し、その経過を報告した(谷合ら,
2015)。本例はその後、吃音症状の増悪と軽快をくり返
す稀な経過を示した。本例の長期経過を文献的な考察を
【症例】
70 歳代男性。肺炎で近医に入院。酸素吸入、抗菌薬の点
滴にて肺炎は軽減。10 病日の午後、突如吃音を発症。吃
音の原因精査のため、3 ヶ月後当院神経内科を紹介受診。
喉頭運動は正常、その他脳神経に異常なし。会話時、語
頭音にくり返し・ブロックを主とする吃音症状を認めた。
吃音歴なし。近親者に吃音者なし。
【経過】
ST 初回評価では失語症や高次脳機能障害なし。訓練は、
発話速度低下訓練とカウンセリングを併用した。訓練実
続いていたが、発症 14 ヶ月後に再度吃音症状が悪化。ブ
ロックとくり返しを中心とする吃音症状であり、その後
徐々に症状は軽快していた。しかし、発症 16 ヶ月後に再
2
び増悪。今回はブロックを中心とする症状で呼気の流出
もスムーズにできないほどの重症であった。リラクゼー
ションを中心とする対症的な言語訓練を実施した。経過
中、頭部 MRI 検査を行ったが、特に異常所見は認めな
かった。その後も症状の軽快と増悪を反復する経過を示
している。
【考察】
本例の吃音の原因は、既報(谷合ら,2015)のように
心因性吃音の可能性が高いと考えていたが、陳旧性脳梗
塞の影響は排除できずにいた。今回、吃音増悪時の頭部
MRI で前回所見と変化がないことより、本例の吃音は心
因性吃音であると結論付けることができる。
239
2
日目
精査にて神経疾患等は否定され当科紹介。初診時所見は、
ほぼ消失した。その後、吃音症状はほぼ消失した状態が
ポスター演題
加えて報告する。
施後から吃音症状は徐々に軽減し、発症後約 6 ヶ月半で
口頭演題 日目
【はじめに】
2-5-23
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
成人吃音者の語りから自然で無意識な発話と吃音症状との関係を検証
池田泰子 1)、都筑澄夫 2)、足立さつき 3)
岩手大学 教育学部 特別支援教育科 1)、目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科 2)、慶應義塾大学 経済学部 3)
【はじめに】RASS(自然で無意識な発話への遡及的アプ
3 年 2 ヶ月後は 9/13 場面(69.2 %)。4)日常生活場面
ローチ: Retrospective Approach to Spontaneous
における発話状態の自己チェック(質問紙):「発話症状
Speech)で吃音訓練を行っている施設は少なく、その
はあまりない(段階 5)」の回答は、訓練前が 2/13 場面
訓練報告は非常に少ない現状にある。今回我々は本理論
(15.4 %)、3 年 2 ヶ月後には 12/13 場面(92.3 %)。5)
により吃音が進展段階 4 層から 2 層に改善した成人症例
自然で無意識な発話についての語り:「心から感謝の気持
を経験したので、自然で無意識な発話と吃音症状の関係
ちを持ってありがとうございましたと言う時はどもらな
を本人の語りから検証した。【方法】対象は 20 代前半の
い。意識しすぎるとよくない。
(20 回)
」
「言えなかった
男性、2012 年 5 月に訓練を開始し(現在継続中)、年表
と思う気持ちがよくない(20 回)」「工夫をなくそうと意
方式のメンタルリハーサル法(M.R 法)を用いて訓練を
識したらひどくなった(19 回)」「吃音のことはほとんど
行った。面談回数は 20 回、拮抗刺激 256 場面、初回の
考えていない(18 回)」。6)自分の状態:天気に例える
拮抗刺激は 3 歳時に母と眠る場面から開始した。【結果】
と、訓練前は「真っ暗、見えない状態」、現在は「昼晴
1)進展段階:初回は第 4 層、面談 19 回目(3 年 5 ヶ月
れていて、晴れのち曇り」。【まとめ】本症例は、訓練を
後)には 2 層に改善。2)身体的反応(質問紙):「過剰な
行ったことで進展段階通りに苦悩が軽減し、発話に注目
発汗」「人前で手や足が震える」など身体的反応項目は、
しない、工夫をしないで発話した場面の方が吃音が軽減
初回は 5/9 項目、面談 16 回目(2 年 7 ヶ月後)には 0 と
すると感じていた。
なった。3)生活場面における恐れ(質問紙):「恐れが無
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
い(段階 0)」の回答は、訓練前が 2/13 場面(15.4 %)、
2-5-24
成人向け吃音外来新設への取り組み 現状と課題について
岸村佳典、川村広美
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室
【はじめに】吃音は医療機関で受診可能な疾病に分類され
吃音診療は医師による診察の後に専属言語聴覚士(以下
ているが、実際に吃音を扱う医療機関は少なく、特に成
ST)が行う。主な内容は、面接による相談と吃音質問紙
人の吃音に関しては相談しても診療を拒否されることも
を使用した評価及び治療、支援である。治療、支援方法
ある。また、吃音を扱う医療機関には遠方からも相談が
は、直接法を含む総合的なアプローチ、間接法によるア
集中し、吃音当事者は初回面接までに何ヶ月も待たなけ
プローチ、吃音を受容する為の心理面へのアプローチ等
ればならない。当院では 2015 年 4 月より成人向け吃音外
を提示し、当事者と相談しながら治療、支援方法を選択
来を新設した。開設状況と今後の課題について報告する。
している。【まとめと課題】当院は吃音診療の経験は無
【開設までの経緯】当院ではこれまで吃音診療の問い合わ
かったが、専門知識をもつ ST が関係者に念入りな説明を
せに対しては、大阪府下で吃音を扱う他の医療機関を紹
行うことで外来を新設できた。しかし、現状では問い合
介するに留まり、吃音診療の経験は無かった。成人の吃
わせ 2 件、通院 1 件と規模は小さく、今後の課題として、
音当事者の中には、近隣で吃音を扱う医療機関が見つか
当院吃音外来の周知を図り、成人吃音の当事者の相談を
らず、関東等の遠方の医療機関を受診するケースも聞か
さらに受け入れる必要がある。また、当院所属 ST を始
れた。そこで、成人向け吃音外来の新設を提案し、体制
め、吃音に携わっていない医療従事者への啓発活動、情
整備を行い、対応についてマニュアルを作成し、開設す
報提供を行い、近畿圏における吃音診療のさらなる発展
るに至った。【2016 年現在の診療体制】診療時間は週 6
に貢献したい。
日、平日及び土曜日の 9 時から 11 時に対応している。休
診日は不定期であり、事前予約で来院日を決めている。
240
2-5-25
アクセントが吃音生起に及ぼす影響
那須脳神経外科病院 リハビリテーション部 1)、王子生協病院 リハビリテーション課 2)、
国際医療福祉大学 保健学部 言語聴覚学科 3)
【はじめに】ストレス(強弱)アクセントの英語では、ア
を検討したところ、吃音高頻度群において、アクセント
型が「頭高」の語で吃音生起率が有意に高くなった(df
= 1、χ2 = 5.93、p = 0.014)。【 考 察】 文 章 音 読 で 吃
意見の一致を見ていない。今回、成人吃音者を対象にア
音高頻度群を重症度が重い群と仮定するならば、吃音が
クセント型の異なる単語を用いた単語音読課題を作成・
重度の者にとって頭高アクセントの語は吃音が生じやす
実施し、アクセント型による吃音生起率の差を検討した。
くなる可能性が示唆された。吃音のある人は喉頭制御の
対象者の吃音重症度による影響も検討するため、便宜的
脆弱性が指摘されており(氏平 2013)、喉頭調整による
に文章音読課題による吃音頻度を用いて重症度を判定し
ピッチ操作が吃音出現の引き金の一つになり、特に吃音
た。
【 対 象・ 方 法】 対 象 は 発 達 性 吃 音 の あ る 成 人 20 名
の生じやすい語頭にアクセント核のある頭高型で吃音が
( 男 性 19 名、 女 性 1 名、 平 均 27.3 歳、SD 8.16) と し
生じやすくなると考えられる。しかし吃音の症状は個人
た。単語音読課題は 2 音節語を用いアクセント型は「頭
によって多様であり、文章音読課題の結果だけで吃音重
高」40 語、「尾高」もしくは「平板」40 語の計 80 語と
症度を判断することはできない。今後、より正確な重症
した。また吃音検査法の文章音読課題で対象者の吃音数
度評価を用いた検討が必要であると思われる。
を測定し、吃音頻度が高い群(以下、吃音高頻度群)6 名
と低い群(以下、吃音低頻度群)14 名の 2 群に分けた。
口頭演題 日目
が、ピッチ(高低)アクセントである日本語においては
特別プログラム
クセントのある位置で吃音が生じやすい(Natke 2002)
日 程
新発田健太郎 1)、本田裕治 2)、前新直志 3)
1
【結果】全対象者でアクセント型による吃音生起率に有意
2-5-26
文節間のポーズによる吃音生起頻度の検討
本田裕治 1,2)、新発田健太郎 3)、前新直志 4)
王子生協病院 リハビリテーション課 1)、国際医療福祉大学大学院言語聴覚分野 2)、
那須脳神経外科病院 リハビリテーション部 3)、国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科 4)
数に有意差は認められなかった。しかし、第 2 文節内の
条件間比較(一元配置分散分析)において有意差を認め
用いられるが、ポーズの長さの指標は明確にされていな
(F = 3.20、p = 0.049)、さらに第 2 文節のポーズ「2 秒
い。統語構造において第 1 文節と第 3 文節は、第 2 文節
条件」が「なし条件」と(t = 1.77、p = 0.048)、「1 秒
より吃音が生起し易いことから、語の順序性が吃音生起
条件」との比較(t = 2.03、p = 0.030)において有意に
に関与すると推論している報告(高橋ら,2012)がある
吃音が生起しやすいことが分かった。【考察】本研究の結
一方、文の 1 文節目と 2 文節目以降の吃音生起に差はな
果から、第 2 文節のポーズ 2 秒という条件は吃音生起に何
い(Shimamori ら,2012)という指摘もあり、一致し
等かの影響がある可能性が示唆された。2 秒という間に発
た知見は得られていない。本研究では 4 文節文の音読に
話者が次の音産生への不安や準備といった心理的バイア
おいて文節間のポーズに着目し、吃音生起への影響を検
スが働いた可能性が考えられる。第 2 文節での有意な吃
音生起については先行研究と一致していないが、高橋ら
性 4 名、平均 25.3 歳)とした。課題は 4 文節文を 10 個
(2012)が推論する語の順序性についてさらに詳細な検
作成し、各文節間のポーズをポーズ「なし条件」、「1 秒条
討が求められるだろう。今後、さらにデータ数を増やし
件」、
「2 秒条件」に分けた。各文節の語頭音は、特定の音
て検討を続けたい。
素に偏らないように配慮した。【結果】全体で 40 文節中
の吃音生起数 89 回であった。これらの生起条件を分析し
たところ、各条件のポーズにおける文節間には吃音生起
241
2
日目
討した。
【対象・方法】対象は発達性吃音の成人 4 名(男
2
ポスター演題
て発話産生を促す方法は、流暢に話すテクニックとして
1
口頭演題 日目
【はじめに】吃音臨床において、文節間にポーズを置い
ポスター演題 日目
な差は認められなかった。しかし、吃音頻度による影響
2-5-27
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
口蓋接触測定装置(The Palatometer system)を用いた発話非流暢性の
解析-音の繰り返しとブロック出現時における舌運動解析-
前新直志 1)、柴本 勇 2)、斎藤健太郎 3)
国際医療福祉大学 言語聴覚学科 1)、聖隷クリストファー大学言語聴覚学科 2)、那須中央病院歯科口腔外科 3)
【はじめに】発話は高速かつ微細な舌運動によって実現さ
生直前の 1000ms の舌と口蓋の接触点数を調べた。【結
れ、言い間違いや言い誤りおよび非流暢性などはこれら
果】課題語産生直前、すなわち語頭音「ゆ」や「こ」を
の動作に何等かの問題が生じていると考えられる。事実、
産生するまでの舌運動に関して吃音者は口蓋センサーの
構音動態について人工口蓋床を用いた研究は多い。今回、
反応数が明らかに多かった。さらに、音の繰り返しとブ
124 箇所の口蓋センサーによって高速な舌運動による口
ロック時の舌と口蓋の接触状態は接触持続時間が長いパ
蓋接触反応をリアルタイムで実現する The Palatometer
タンと浮動的なパタンが認められた。【考察】吃音者は音
system( 米 国 Complete speech 社) を 用 い、 吃 音 症
を産生する直前、舌背と口蓋で特異的な閉鎖や運動を示
状に代表される非流暢性症状生起中の舌運動について検
した後に、発語動作に入り、その結果、非流暢性症状が
討した。【方法】人工口蓋は歯科用のアルジネートを用い
呈すると考えられる。これは、非流暢性症状が音として
て個人の口蓋の型を取りその模型に合わせて作製した。
産生される直前に口腔内ですでに吃音が生じており、か
実験協力者は成人の発達性吃音者 3 名(男性)とコント
つ舌の特異的運動は吃音症状によって異なる可能性が示
ロール群 10 名とした。実験協力者は事前に作製した人
唆される。これは、吃音症状が出現する際(moment of
工口蓋床(Smart Palate)を装着した状態で 1 分間の自
stuttering)の生理的機序解明の手がかりになるだろう。
由会話(慣れ)と 10 分程度のいくつかの発話産生課題
を行った。分析語は吃音者 3 名に共通の非流暢性が生じ
た「ゆきだるま」(語頭音「ゆ」の繰り返し)と「こいの
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
ぼり」
(語頭音「こ」のブロック)とし、これらの単語産
2-5-28
日本語版クラタリングチェックリストの臨床的妥当性の検証
宮本昌子
筑波大学 人間系
【はじめに】クラタリング(早口言語症:ICD-10)は(1)
リーニングとして JCPC ver.1 使用の妥当性が実証され
発話速度の速さ、
(2)緊張のみられない繰り返し、
(3)構
た。一方、Van Zaalen ら(2014)の下位分類による治
音の不明瞭性(調音結合、省略や短縮などによる)を中核
療ストラテジーが症状改善に影響した可能性も高く、有
症状とした発話流暢性障害である(St. Louis & Schulte,
効な治療には二段階での評価が必要であることが示唆さ
2011)
。本研究では日本語版クラタリングチェックリスト
れた。
(Japanese Checklist for Possible Cluttering ver.1 )
(以
下 JCPC ver.1)
(宮本,2005)でクラタリングに該当し
た 6 名の治療経過から JCPC ver.1 の臨床的な妥当性につ
いて検討する。
【方法】JCPC ver.1(宮本,2005)でク
ラタリングに該当した幼児・児童 6 名(幼稚園年長から
小学校 5 年生)にクラタリング中核症状の軽減を目的と
した言語治療を実施した。6 名全員が男児で吃音の既往が
あり、1 名は自閉症スペクトラムの診断歴があった。Van
Zaalen ら(2014)の下位分類では 2 名が phonological
cluttering、4 名が syntactic cluttering に該当した。【結
果と考察】6 名全員に、8 ~ 14 ヶ月の治療介入の結果、
限定的な場面ではあったが、症状改善が認められ、スク
242
2-6-01
多職種連携による「食」支援の取り組み ~口腔ケアチームの活動を通して~
総合リハビリテーションセンターみどり病院 リハビリテーション科 言語聴覚療法部門 1)、
介護老人保健施設 緑樹苑 2)、じょうじ歯科クリニック 3)、新潟市口腔保健福祉センター 4)
を活用し、摂食嚥下に関しても積極的な介入を行う。【取
人的要件等の問題でチーム連携は難しいことが多い。今
り組みと成果】1)口腔ケアに関して道具の選定・使用状
回口腔ケアチームを発足し多職種での口腔ケア・摂食嚥
況の確認・適切な介入など対応策の検討を行った。また
下に取り組んだので、その取り組みと成果について報告
対応困難事例へのマニュアルを作成しスタッフの技術統
する。【発足の目的】平成 24 年度の介護報酬改定にて歯
一を図った。2)摂食嚥下障害への対応は各療棟で判断で
科専門職や言語聴覚士(以下 ST)との連携を評価する算
きるケースが増え、詳しい評価や対応に難渋した場合に
定項目が新設されたことを契機に、入所者の口腔状態を
ST や口腔センターと連携して介入する流れができた。3)
適切にケアする事・スタッフの啓発活動を行う事・施設
知識や技術の向上のための講演会は好評で参加希望者が
全体のサービスの質の改善を図る。【口腔ケアチームの概
増えている。4)経口維持加算 II の算定。【まとめ】当苑
要】1. 構成職種 施設協力歯科医師(開業医)・看護師・
の口腔ケアチームは日常生活を把握する施設スタッフに
介護士・理学療法士・作業療法士・ST(併設病院所属)・
外部からの歯科専門職が加わり、さらにチームアプロー
管理栄養士・事務管理部職員 2. 活動内容 1)月 2 回の
チをコーディネートする人により成り立っている。多職
ミーティングを行い情報共有・検討事項や問題に対して
種からの多面的な情報の共有が入所者の健康や施設ス
の改善策を検討する。2)口腔ケアや摂食嚥下への取り組
タッフのレベルアップにつながっていると考えられた。
口頭演題 日目
保健福祉センター(以下口腔センター)による往診事業
職種協業の取り組みが強化されている。しかし現場では
特別プログラム
【はじめに】介護老人保健施設においても「食」支援に多
日 程
堂井真理 1,2)、土井正昭 1,2)、緑樹苑口腔ケアチーム 2)、上路敬一 3)、道見 登 4)
1
みとして意識調査・マニュアル作成・講演会の開催・歯
2-6-02
心臓血管外科術後の嗄声は経口摂取開始遅延の一因である
小口和津子、山本周平、寺島さつき、水谷 瞳、岡本梨江、吉村康夫
信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部
独立変数としたロジスティクス回帰分析を行い予測因子
回、術後の経口摂取開始時期と患者背景因子、手術情報
の検討を行った。【結果】B 群は A 群に比し、高齢で大血
および術後合併症の関係を後方視的に調査した。【対象】
管疾患が多く、人工呼吸器使用時間と鎮静終了までの期
2015 年 4 月から 2015 年 12 月の間に、当院心臓血管外
間が長かった。また、術後脳血管疾患、嗄声、肺炎、無
科において開胸および開腹手術を施行し、リハビリテー
気肺および胸水を多く合併し、術後在院日数が長かった。
ションを実施した 95 例を対象とした。なお、術後に再
退院・転院時の摂食・嚥下状況のレベルは B 群が A 群に
挿管、気管切開、ICU 再入室、経口摂取に至らなかった
比し有意に低かった。背景因子で調整を加えたロジス
例は除外した。【方法】対象を術後経口摂取開始までの期
ティクス回帰分析では、術後経口摂取開始を遅延させる
間 で A 群 :7 日 以 内(76 例)、B 群 :8 日 以 上(19 例) に
有意な因子として嗄声が抽出された。【結語】嗄声は、患
分類し、以下の項目について 2 群間で比較検討した。患
者の背景因子に関わらず、経口摂取開始遅延に影響する
者背景因子:年齢、性別、BMI、疾患、喫煙歴、既往症。
強力な因子であった。嗄声を呈した症例には、早期から
手術情報:手術時間、麻酔時間、挿管日数、水分バラン
の積極的な評価・介入の必要があると考えられた。
ス。合併症:脳血管障害、腎不全、せん妄、嗄声、呼吸
器合併症。術後経過:人工呼吸器使用日数、意識清明
(GCS:E4V5M6)までの日数、鎮静終了(RASS0)まで
243
2
2
日目
のレベルとした。さらに、各群を従属変数、調査項目を
開始を難渋させる明確な要因に関する報告は少ない。今
ポスター演題
の日数、術後在院日数、退院・転院時の摂食・嚥下状況
定でなく、開始が遅延する例がある。しかし、経口摂取
1
口頭演題 日目
【はじめに】心臓血管外科術後の経口摂取開始時期は一
ポスター演題 日目
科検診の実施を行う。3)平成 25 年 5 月より新潟市口腔
2-6-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
維持期病院における経管栄養から経口栄養への移行率について
久田路子
医療法人笠松会 有吉病院 リハビリテーション科
はじめに:H26 年の診療報酬改定により経管栄養から経
ることが出来なかったのは 14 例(63.6 %)であった。
口栄養への移行の取り組みについて加算が改定された。
考察:今回の調査では、3 食経口摂取が可能となった 2 例
算定にはいくつかの条件があり、これを満たした場合経
のうち胃瘻を造設していた 1 例は、再び経口摂取が困難
口摂取促進加算(以下加算)が算定可能となった。当院
になった場合に使えるように、閉鎖術は行っていなかっ
には多くの経管栄養を行っている嚥下障害患者が入院し
た。また、対象者の半数以上は嚥下障害が重度で、直接
ており、一部には訓練が行われている。しかしながら、
嚥下訓練を実施できなかったことから、完全経口移行率
当院のような維持期病院では経管栄養から経口栄養への
は 4.5 %であった。以上より誤嚥を繰り返す高齢者や進
完全移行の例は極めて少ない。今回経管栄養を実施して
行性疾患患者を受け入れることの多い維持期の病院では、
いる患者のその後の栄養方法を調査したので、考察を加
施設基準を満たすのは困難であった。一方、疾患、年齢、
え 報 告 す る。 対 象 者:H26 年 9 月 ~ H27 年 9 月 の 間 入
嚥下機能、覚醒状況等により、経管から栄養を併用せざ
院していた患者のうち、胃瘻または経鼻栄養を行った患
るを得ない状況が多かったものの、3 割以上は経口摂取の
者 22 例。方法:対象者の入院後の栄養方法を調査する。
試みがなされていることが分かった。維持期の病院にお
結果:対象者のうち 3 食経口摂取に移行できたのは 2 例
いても言語聴覚士による経口摂取の支援を行う必要性は
(9 %)であった。経管栄養と併用し、一部の経口摂取が
高いと考える。
可能となったのは 3 例(13.6 %)であり、おやつレベル
の摂取を行ったのは 3 例(13.6 %)であった。嚥下機能
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
評価で高度の嚥下障害を認め、直接的嚥下訓練を実施す
2-6-04
食道癌術後における嚥下障害の要因について
荻沼めぐみ、関 理絵、小松崎あゆみ、鈴木美貴、冨山温未
土浦協同病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院の食道癌症例は、術後経口摂取開始時
平均 11.5 日、介入時全例にミニトラックが留置されて
に嚥下障害の疑いがある患者について、嚥下機能評価・
いたが、経口摂取開始後に 7 例が誤嚥性肺炎を発症した。
訓練の依頼が処方される。食道癌術後では誤嚥性肺炎が
RSST は、介入時平均 0.2 回→退院時平均 1.4 回と著明な
生じやすくなる為、障害の程度に応じた対応が重要とな
低下を認めた。摂食嚥下グレードは、介入時平均 2.6 →
る。今回、我々は、周術期に介入した食道癌症例の嚥下
退院時平均 4.6 で、入院期間中に経口摂取が確立した例
障害の要因について検討したので報告する。【対象】当
はなかった。【考察】術式や再建経路による違いは明らか
院外科にて食道癌の手術を施行された患者で嚥下機能評
ではなかったが、リンパ節廓清に伴う反回神経麻痺や嚥
価・訓練で介入した 10 例。【方法】年齢、既往歴、術式、
下筋力の低下、喀出力の低下により誤嚥性肺炎を生じる
再建経路、リンパ節郭清領域、反回神経麻痺の有無、術
リスクが高く、早期の経口摂取は困難であった。また、
後経口摂取開始までの期間、誤嚥性肺炎の有無、反復唾
退院後、短期間のうちに誤嚥性肺炎を発症する例も多く、
液嚥下テスト(以下、RSST)の回数、藤島の摂食嚥下グ
嚥下リハビリの継続や定期的な嚥下機能評価、食事内容
レードについて調査し検討した。【結果】平均年齢 72.5
や摂取方法の指導が重要であると考えられた。
歳。術式は、右開胸開腹食道亜全摘術 9 例、右開胸開腹
下部食道胃全摘術 1 例、再建経路は、胸骨後経路 7 例、後
縦隔経路 3 例。リンパ節郭清領域は、3 領域リンパ節郭
清 5 例、2 領域リンパ節郭清 5 例であった。反回神経麻
痺は全例に認められた。術後経口摂取開始までの期間は
244
2-6-05
「高齢者肺炎症例に対する摂食嚥下機能評価法MASAの有用性の検討」
社会医療法人 共愛会 戸畑共立病院 リハビリテーション科 1)、社会医療法人 戸畑共立病院 呼吸器内科 2)
院時の藤島レベルの相関係数は r = 0.65 と相関を認めた。
となり、平成 26 年度は 90 歳以上の男性に限れば死因
常 食 群(66/116 名)/ 調 整 食 群(24/116 名)/ 非 経
の第 1 位が肺炎である。高齢者肺炎の高い死亡率の背景
口摂取群(26/116 名)の平均 MASA スコアはそれぞれ
には誤嚥性肺炎が指摘されており、高齢者肺炎症例の摂
144.2 ± 34.5 点 / 108.5 ± 23.6 点 / 95.8 ± 20.6 点であ
食嚥下障害が注目されている。本邦では多くの高齢者が
り、常食群と調整食群・非経口摂取群では有意差を認め
介護施設に入所、又は在宅介護を受けており、高齢者
た(P < 0.05)。入院 30 日以内の肺炎再発率は多変量解
肺 炎 の 多 く は 医 療・ 介 護 関 連 肺 炎( 以 下 Nursing and
析の結果 MASA スコア 148 点以下が有意に高かった(P
Healthcare-associated pneumonia:NHCAP) で あ
< 0.05)
。
【結語】MASA は急性期脳卒中症例のみならず
る。NHCAP 症例は認知機能が低下している事が多く、
NHCAP 症例でも摂食嚥下機能評価法として有用であると
嚥下器官の機能のみならず認知機能の評価も必要である
考えられた。
と考え、本来は急性期脳卒中患者に用いる The Mann
Assessment of Swallowing Ability( 以 下 MASA) を
口頭演題 日目
島レベルを評価した。【結果】入院時の MASA スコアと退
が増加しており、平成 23 年度以降肺炎が死因の第 3 位
特別プログラム
【目的】本邦では社会の急激な高齢化に伴い肺炎死亡数
日 程
大森政美 1)、川西美輝 1)、神代美里 1)、中川英紀 1)、力久真梨子 1)、長神康雄 2)、加藤達治 2)
1
摂食嚥下機能評価に用いた。
【対象】2014 年 11 月から
2015 年 4 月まで当院内科に入院した NHCAP 症例 116
名(男性 41 例、女性 75 例、平均年齢 87.7 ± 6.6 歳)を
2-6-06
「高齢者肺炎患者の経口摂取獲得に必要な評価項目の検討」
大森政美 1)、川西美輝 1)、神代美里 1)、中川英紀 1)、力久真梨子 1)、長神康雄 2)、加藤達治 2)
社会医療法人 共愛会 戸畑共立病院 リハビリテーション科 1)、社会医療法人 共愛会 戸畑共立病院 呼吸器内科 2)
り、経口摂取群(常食と調整食群)/ 非経口摂取群の平均
となった。高齢者肺炎の高い死亡率の背景には誤嚥性肺
MASA スコアは 133.8 ± 38.2 点 / 95.8 ± 20.6 点(P <
炎が指摘されており、摂食嚥下障害が注目されている
0.05)と有意差を認めた。入院 30 日以内の肺炎再発率は
が、高齢者肺炎患者の経口摂取獲得に必要な機能の検討
32.7 % であった。経口摂取獲得と MASA 各項目との重回
は少ない。本邦では多くの高齢者が介護施設に入所、又
帰分析では食塊クリアランス(P = 0.01)、咽頭相(P =
は在宅介護を受けており、高齢者肺炎の多くは医療・介
0.02)、舌の筋力(p = 0.03)、失語症(全般的な言語障
護関連肺炎(以下 Nursing and Healthcare-associated
害)(P = 0.02)で有意差を認めた。【結語】NHCAP 症
pneumonia:NHCAP)である。NHCAP 症例の多くは
認知機能が低下しており、認知機能の評価も必要である
と考え、本来は急性期脳卒中患者に用いる The Mann
例の経口摂取獲得には「食塊クリアランス」
、「咽頭相」
、
「舌の筋力」
、「失語症(全般的な言語障害)
」が重要であ
ると考えられた。
食嚥下機能評価に用い、MASA の各項目を検討した。【対
象】2014 年 11 月から 2015 年 4 月まで当院内科に入院
した NHCAP 症例 116 名(男性 41 例、女性 75 例、年齢
87.7 ± 6.6 歳)を対象とした。【方法】入院時に MASA
を施行し、退院時の食事形態を評価した。【結果】経口摂
245
2
日目
Assessment of Swallowing Ability(以下 MASA)を摂
2
ポスター演題
取獲得率は 77.4%(常食群 56.8%、調整食 20.6%)であ
が増加しており、平成 23 年度以降肺炎が死因の第 3 位
1
口頭演題 日目
【目的】本邦では社会の急激な高齢化に伴い肺炎死亡数
ポスター演題 日目
対象とした。【方法】入院時の MASA スコアと退院時の藤
2-6-07
日 程
総 合 介 護 福 祉 施 設 に お け る 嚥 下 評 価 方 法(FILS: Food Intake LEVEL
Scale)を用いた誤嚥予防に関する取り組み
グラハム亮子 1)、近藤敬一郎 2)、上田 拓 3)、東口すみ江 3)、松近秀治 3)、伊佐泰典 3)、
宮谷敦子 3)、山下進士 1)、下野沙織 1)、小池 遥 4)、藤井亮子 4)、竹上万里子 5)、倉橋利枝子 6)
医療法人 東和会 第一東和会病院 1)、恭生クリニック 2)、総合介護福祉施設 和朗園 3)、第二東和会病院 4)、
訪問看護ステーション東和会 5)、介護老人保健施設 サンガピア館 6)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
【はじめに】当グループは、急性期病院~生活期の施設ま
【結果】ST 介入前は、誤嚥リスクを認めても職員個々の
で複合的な医療・介護サービスを提供している。今回、
力量に頼らざるをえなかったが、勉強会実施と FILS の導
取組みを行った総合介護福祉施設 3)では ST 未介入で
入後、意識的に嚥下障害を観察するに至った。摂食条件に
あった。昨年 4 月、誤嚥リスクを認める入所者に対して、
より誤嚥リスクを軽減できる症例が多く、各専門職と ST が
対応が後手になっている現状を問題視した併設クリニッ
根拠に基づいた摂食条件を提示し、職員を直接指導する事
ク2)の医師より、誤嚥リスクの軽減を図りたいとSTへ打
で、安全な食事介助方法の統一や意識向上に繋がった。
診があり、多職種による FILS を用いた嚥下評価を試みた。
【考察】嚥下障害者数は高齢化社会に伴い増加傾向にある
【方法】平成 27 年 6 月より、全職員対象に嚥下の勉強会
が、全国的にみても言語聴覚士の所属機関(2015 年 3 月
を 3 回実施。ST が月 1 回嚥下評価を実施する際、事前に
末)は、医療 73.5% に対して老健・特養は 8.7% と低迷
職員が FILS を用いて対象者を選定し、看護師長が 2 名決
している。「地域包括ケア」体制の構築が進むにつれ、生
定。その後、医師が ST に情報提供した。ST は昼食場面に
活期における嚥下評価の充実が必要である。ST 所属の有
立合い、職員を直接指導。姿勢や食形態に関する問題は、
無に関わらず誤嚥予防を行う為の提案として、時間とコ
同席する OT や栄養士とその場で意見集約した。最終的
スト面の大きな問題は残るが、各地域レベルで施設と連
な摂食条件を ST が記載し、カンファレンスで報告。職員
携し 1.(摂食・嚥下障害領域)認定言語聴覚士による勉
は、摂食条件に基づいて食事介助を実践。翌月再評価し、
強会実施、2.FILS の活用、3. 多職種による摂食条件の定
変更点がなければ経過観察とした。
期的な見直しの 3 点が足がかりとなると考える。
2-6-08
食道癌術後の嚥下機能評価パス作成の試み
岡本梨江 1)、鈴木 彰 2)、寺島さつき 1)、水谷 瞳 1)、小口和津子 1)、山鹿隆義 1)、
中曽根沙紀 1)、松森圭司 1)、大津勇介 1)、上野七穂 1)、吉村康夫 1)
信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部 1)、信州大学医学部附属病院 消化器外科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【はじめに】食道癌術後の嚥下障害は一過性であるとの報
した症例(不良群)の機能を調査した。【結果】良好群
告があるが、改善の過程や評価方法は報告が少ない。今
は 10 名中 8 名であり術後 3 日目の評価において術前に比
回、食道癌術後の嚥下機能評価パスを作成することを目
し軽度機能低下が起こったが、術後 7 日目には術前と同
的に、術前・術後の嚥下機能の経過を調査した。【対象】
程度の機能回復が見られた。一方、残りの 2 例の術前嚥
2014 年 8 月 ~ 2015 年 10 月 に 手 術 施 行 さ れ た 患 者 10
下機能は良好群と同程度であったにも関わらず、術後 3
名。手術時平均年齢は 61.7 歳、全例男性、原発巣 : 胸部
日目では平均オーラルディアドコキネシス(5 秒)p13
上 部 2 名、 胸 部 中 部 5 名、 胸 部 下 部 3 名、Stage1:3 名、
回( 良 好 群 :25.1 回)、t16.5 回( 良 好 群 :24.5 回)、k12
2:3 名、3:4 名、術式 : 右開胸開腹食道切除術 8 名、胸腔
回( 良 好 群 :20.1 回)、RSST0 回( 良 好 群 :4.8 回)、 喉 頭
鏡下食道切除術 1 名、開腹下部食道切除術 1 名であった。
挙上範囲 1 センチ以下と低下を認め、術後 7 日前後に縫合
なお、全例脳血管疾患等の嚥下機能に関連する障害はな
不全を併発した。経口摂取開始までの日数は良好群 : 平均
く、術前の嚥下機能評価では健常レベルであった。【方
11.1 日、不良群はそれぞれ 130 日目、87 日目であった。
法】同一検者が術前・術後 3 日目・7 日目・14 日目に以
【まとめ】食道癌術後は術後 3 日目に一過性の機能低下を
下の項目を調査した。調査項目は、MMSE、舌圧測定、
示すが、その後 7 日目の時点で概ね術前同等の機能まで
オーラルディアドコキネシス、反復唾液嚥下テスト(以
改善し食事開始に至る経過であった。一方、経口摂取開
下 RSST)、改訂水飲み検査(以下 MWST)、喉頭挙上範
始までに難渋する例は咽頭期障害や合併症の併発が問題
囲、経口摂取開始までの日数とした。また、術後の経過
となった。
より順調に機能改善を認めた症例(以下良好群)と難渋
246
2-6-09
胸部食道癌術後患者の頸部屈曲位嚥下が嚥下圧動態に及ぼす影響について
熊本大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
中央値は、軟口蓋部:232 / 179 / 220mmHg、中下咽
致命的となることが報告されている。誤嚥をきたすおも
頭部:441 / 222 / 304 mmHg、UES 部:545 / 279
な原因として、縦隔内気管周囲と頸部の瘢痕による喉頭
/ 365 mmHg で、UES 部 の 平 圧 化 持 続 時 間 は 0.89 /
挙上障害や反回神経麻痺が挙げられる。以前より頚椎全
0.72 / 0.74 sec であった。頸部屈曲位の各部位の最大内
体(C1 ~ C7)を屈曲した頸部屈曲位嚥下が食道癌術後
圧の最大値・最小値・中央値は、軟口蓋部:225 / 154
の嚥下障害の改善に有効であることは経験的に理解され
/ 204mmHg、中下咽頭部:485 / 298 / 432 mmHg、
てきたがそのメカニズムは未だ不明である。【目的】胸部
UES 部:373 / 257 / 351 mmHg で、UES 部の平圧化
食道癌術後患者における頸部屈曲位嚥下の有用性につい
持続時間は 0.97 / 0.63 / 0.80 sec であった。現時点で
て高解像度マノメトリ―を用いて嚥下圧の観点から検討
は症例数が少ないため、両者を統計的に比較することが
する。
【対象】2015 年 9 月から当院消化器外科で食道亜
できないが、通常頸位と頸部屈曲位嚥下では各部位の最
全摘出術(胸骨後胃管再建・3 領域郭清)を施行し、術後
大内圧・UES 部の平圧化持続時間に差異がある可能性が
2 ~ 3 週間の男性 3 例(平均年齢 69 歳)とした。【方法】
示唆された。症例数が増えることでこれらの差異を明ら
胸部食道癌術後患者に対し、2mL の生理食塩水を通常頸
かにできれば、嚥下圧の観点から胸部食道癌術後患者に
位と頸部屈曲位で嚥下した時の軟口蓋部・中下咽頭部・
おける頸部屈曲位嚥下の有用性を明らかにできると考え
UES 部の最大内圧及び UES 部の平圧化持続時間を評価
る。
2-6-10
言語発達遅滞児における語彙成長記録アプリ活用の試み
阿久津由紀子 1)、小林哲生 2)、尾形哲也 1)、渡辺佐和 1)、齋藤貴美子 1)、南 泰浩 3)
竹田綜合病院 リハビリテーション科 1)、NTT コミュニケーション科学基礎研究所 2)、電気通信大学 3)
貸出し、新しく言えるようになった語を自宅で随時記録
援を行う上で重要と思われる。しかし、チェックリスト
するよう依頼した。このアプリでは、カレンダーから日
や日記等を用いて、いつどんな語をどのように習得した
時指定をした上で、新しい発語とその意味を入力するこ
かを具体的に記録することは、ST・保護者双方にとって
とができ、母親は登録した語彙のリストや月別語彙成長
高負担な難しい作業であり、これまで容易に実施できな
グラフを確認することが可能である。1 ヶ月に 1 回程度、
かった。今回我々は、語彙成長の記録に特化したアプリ
を用いて、言語発達に遅れがある児の継時的な語彙発達
来院時に記録状況を確認した。
【経過および考察】アプリ導入はスムーズであった。開始
記録および保護者との情報共有を試みたので報告する。
1 ヶ月時点で、2 児とも約 30 語の新しい発語が記録され
【 対 象 者】 当 院 で 言 語 聴 覚 療 法 施 行 中 の 言 語 発 達 遅 滞
ていた。また、母親から前回来院後のできごとの報告が
詳細になった。アプリによる語彙発達記録および情報共
DQ75、初語 2 歳 3 ヶ月、有意語ハバ(ママ)、アッタ等
有の試みが、言語聴覚士と保護者、対象児にどのような
数語。B 児:男、記録開始時 CA2 歳 1 ヶ月、DQ79、初
効果をもたらしたかについて、経過を検討し報告する予
語 1 歳 6 か月、有意語ブッブ(車)
、パパ等数語。2 児と
定である。
もコミュニケーション態度良好、基礎疾患なし。
【方法】2015 年 12 月より使用開始。NTT 研究所が定型
発達児の研究のために作成した語彙成長記録アプリ「こ
247
2
日目
児 の 母 親 2 名。A 児: 男、 記 録 開 始 時 CA2 歳 10 か 月、
2
ポスター演題
ども語メモ」をインストールしたタブレット PC を母親へ
彙の獲得状況の詳細を把握することは有効な言語発達支
1
口頭演題 日目
【はじめに】言語発達に遅れがある児の臨床において、語
1
ポスター演題 日目
し、通常頸位と頸部屈曲位の結果を比較検討した【結果・
口頭演題 日目
考察】通常頸位での各部位の最大内圧の最大値・最小値・
口摂取開始が遅延したり、誤嚥性肺炎をきたし、ときに
特別プログラム
【はじめに】胸部食道癌術後に誤嚥を呈し、そのために経
日 程
松原慶吾、熊井良彦、宮本卓海、鮫島靖浩、湯本英二
2-6-11
日 程
ワードパーシャルが目立った言語発達遅滞児1症例の言語表出が成人語に至
るまでの過程
吉田充嬉 1)、青木俊仁 1)、佐藤公美 1)、高原由衣 1)、伊藤美幸 1)、池田美穂 1)、竹山孝明 1)、
坂本 幸 1)、田上真希 1)、岡田規秀 1)、長嶋比奈美 2)、笠井新一郎 1)、宇高二良 1)
医療法人 真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院 1)、九州保健福祉大学 2)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
今回、ワードパーシャル(以下、WP)が目立つ言語発達
遅滞児 1 症例の言語表出が成人語に至るまでの過程につ
いて検討したので報告する。
症例は 4 歳 1 か月の男児。初期評価(CA2:10)では、聴
覚・認知・構音・行動に問題はなかった。言語は理解・
表出ともに 1 歳代後半の発達であった。特に言語表出は
WP や抑揚が主で、疎通性は顕著に低下していた。一方
で、声かけなどの働きかけに対し自発的な動作および音
声模倣は多くみられた。
訓練では、言語理解・表出およびやりとりの向上を図っ
た。各課題では ST が聴覚的にオノマトペと成人語を併せ
て入力し、本児の自発的な復唱による言語表出が生起し
やすくなるよう配慮した。
訓練開始当初(CA3:0)
、自発語はほとんどみられなかっ
た。一方、ST のオノマトペや成人語の入力刺激に対し
“ ニャーニャー ” を[ɲa]、“ たいこ ” を[ko]など語尾音
の WP による復唱が多く認められた。2 か月目にオノマ
2-6-12
トペを正しく復唱可能となると、自発語ではオノマトペ
の WP が出現した。4 か月目ごろから成人語の WP の復唱
や、自発語として正しいオノマトペの表出がみられ始め
た。徐々に 2 音節成人語あるいは、3 音節成人語の語中・
語尾の 2 音節を復唱するようになり、自発語では成人語
の WP を 認 め、 こ の 頃 実 施 し た〈S-S 法〉(CA3:3) で
は、受信が 2 歳 4 か月、発信が 2 歳 1 か月であった。事物
名称の発信では成人語を認めるものの、16 語中 6 語は依
然 WP・抑揚であった。また、日常会話でも WP や抑揚
は残存しているが、初期と比べ自発的な発語がみられる
頻度が増加した。その後、7 か月目には 3 音節成人語の復
唱、自発語では 2 音節成人語が出現、8 か月目には WP が
消失した。その結果〈S-S 法〉(CA3:10)は受信、発信
ともに 3 歳 1 か月と向上した。
発表では、本児の WP の変化を分析し、WP から成人語
に移行する因子について考察する。
第二子の受診をきっかけに第一子も発達面の問題が明らかとなった双胎児
-発達的リスクを考慮する必要性について-
山田有紀 1)、十河美鈴 1)、中澤美早 1)、元山理恵 1)、松原祐子 1)、柴崎三郎 1)、松原玄明 1)、
松原奎一 1)、笠井新一郎 1,2)
医療法人社団 讃陽堂松原病院 1)、医療法人 真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院 2)
【はじめに】双胎第二子のみ問題点の指摘があり来院した
FIQ89、VIQ87、PIQ93 であった。2)ITPA 言語学習能
が、第一子にも問題を認めた低出生体重の双胎児の発達
力診断検査では全検査 PLA4 歳 4 ヵ月、SS31.3 で、生活
面の評価について報告する。
年齢に比し 1 年程度の言語面の遅れを認めた。下位項目
【症例】症例は 6 歳代の二卵性双胎男児 2 例である。第一
では、8 項目が PLA4 歳代以下となった。3)質問-応答
子:生下時体重 2,303g、周産期異常なし。第二子:生下
関係検査では質問-応答関係の発達年齢は 5 歳台、落ち
時体重 2,394g、仮死あり。乳幼児健診での指摘はなく、
着きのなさが顕著であった。2 症例ともに WISC-III 知能
保育士に第二子の構音面を指摘されるまで両親は発達で
検査では知的には平均の範囲内であったが、下位項目で
気になる点はなかった。
は、『類似』(評価点 1)が顕著に低く、抽象的・概念的な
【評価】第一子:1)WISC-III知能検査ではFIQ96、VIQ86、
思考や言語の弱さがあると考えられた。ITPA 言語学習能
PIQ108、VIQ と PIQ に デ ィ ス ク レ パ ン シ ー を 認 め た。
力診断検査では『絵の理解・ことばの類推』が低く、概
2)ITPA 言語学習能力診断検査では全検査 PLA5 歳 3 ヵ
念的な思考や関係性の理解が困難であることが推測され
月、SS35.1、下位項目では、10 項目中 5 項目が PLA4 歳
た。
代であった。3)質問-応答関係検査では質問-応答関係
これらの評価結果を踏まえ、発表では双胎児(低出生体
の発達年齢は 5 歳台、落ち着きのなさが顕著で、質問直
重)などの発達的なリスクを持つ可能性のある児の言語
後に〔知らん〕と言い放つなど、コミュニケーション態
面を含めた発達全体の縦断的な経過追跡の必要性につい
度に問題を認めた。第二子:1)WISC-III 知能検査では
て考察する。
248
2-6-13
居組千里、杉浦千登勢
鳥取県立中部療育園
【目的】特異的言語障害(SLI)は日本語での言語症状が
日 程
音韻性短期記憶の不良がみられた症例の言語特徴とアプローチについて
ー特異的言語障害が疑われた5例の訓練経過よりー
し、文字をつかった語音弁別、語や構文の学習が可能に
なった。音韻ループ、語彙の向上がみられた一方で、数
言語特徴とアプローチについてまとめたので報告する。
唱の再評価では記憶単位数は変化なしか+ 1 程度であっ
【対象と方法】対象は初診時年齢 3 ~ 7 歳で、主訴は発音
た。単位数増加 1 例は非可逆文の理解から可逆文への理
不明瞭 1 名、ことばの遅れ 5 名、落ち着きのなさ 2 名(複
解が可能になった。
【考察と結論】深水(2014)にて定
数あり)であった。言語訓練を月 2 回、約 1 ~ 3 年実施。
型発達児の構文理解の発達と音韻性短期記憶容量の増大
【結果】経過のなかで全例が言語性能力 < 非言語性能力
との間に関連があることが報告されたが、SLI のような言
であり、言語性下位項目は数唱(無意味語の音韻性短期
語発達に遅れがある小児の場合、記憶に至るまでの前段
記憶)の困難さ、語彙の乏しさ、類似音の間違いを認め
階でつまずきや記憶容量自体の伸びにくさがみられる。
Baddeley のワーキングメモリモデルにある中央実行系
認めた。訓練開始初期は課題達成のために必要な情報へ
(注意機能)、音韻ループへのアプローチを行い視覚化し
注意を向ける、不要なものへの注意の抑制などの注意機
にくい語彙の向上を図り、文字言語や視覚情報を組み合
能に対してのアプローチを優先した。次に語音弁別や音
わせて音韻性短期記憶を代償した構文理解のアプローチ
節分解課題を実施し言語の保持機能(音韻ループ)のア
が有効と思われた。
プローチを開始。分解できる音節数が増加に従い、絵画
口頭演題 日目
た。また全例に聴覚障害・知的障害はないが注意障害を
特別プログラム
まだ明らかでない。今回 SLI 症例 5 例に言語訓練を行い、
1
語彙発達検査にて語彙年齢(VA)、評価点が向上した。3
2-6-14
文法障害を呈した成人自閉スペクトラム症の一例
小川七世 1,2)、宇野洋太 1)、橋本竜作 3)、岡田 俊 1)
名古屋大学病院 親と子どもの心療科 1)、春日井市民病院 リハビリテーション技術室 2)、
北海道医療大学 リハビリテーション科学部 言語聴覚療法学科 3)
用いて調べた。結果、格助詞の産出課題では基本文は良
14 年、職業は小売店の品出し業務。【現症】3 歳から小
好な結果を示したものの、かき混ぜ文では大幅な低下を
学 3 年まで、療育センターで感覚統合などを受ける。小
示した。また態の変換、文理解においても低下が認めら
学 4 年から 6 年まで療育グループに参加。特に診断を受け
れた。
【考察】本症例の文法障害は、まだ多数例での検
ることなく過ごし、高校 3 年の 2 月に、アスペルガー障
討を要するが、言語面での意思疎通のずれを即、自閉ス
害との診断を受ける。現在(21 歳)に至るまで、言語の
ペクトラム症の認知特性に帰するのではなく、言語障害
問題を指摘されたことはなく、コミュニケーションに関
の合併として捉える視点が必要であると考えられた。言
する支援も受けていない。初診時 AQ=43、SRS=102。
語性 IQ などが正常範囲内であると言語の問題はあまり取
DSM-5 で自閉スペクトラム症との診断。【神経心理学的
り上げられないが、コミュニケーションに問題が認めら
所見】順唱 7 桁、逆唱 4 桁、tapping span では正順 5 個、
れる場合は、それ以前の言語機能に問題がないか調べる
逆 順 5 個。WAIS-3 の VIQ=97、PIQ=101。WMS-R の
必要がある。その上で、自閉スペクトラム症者の特性に
一般的記憶 87、注意集中 89、遅延再生 94。TMT-B 39
合った支援が求められる。
秒。【言語所見】WAB は AQ=96.7 と良好で、ことばに
問題があるとの自覚はない。しかし会話場面では受動文
を理解していないような返答をし、言語での意思疎通が
249
2
2
日目
態の異なる文理解に関する構文検査(橋本ら、2016)を
解障害を認めた。
【症例】21 歳、男性、右利き、教育歴
ポスター演題
困難な場面が認められた。そこで、格助詞、態の変換、
い成人の自閉スペクトラム症の 1 例で、失文法と統語理
1
口頭演題 日目
【はじめに】これまでに言語障害の指摘をうけたことのな
ポスター演題 日目
例では VA が 4 歳後半を越えた頃より、文字が意味と一致
2-6-15
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
対人コミュニケーション行動観察フォーマットFOSCOMを用いての2時点
の評価(第2報)
東川 健
横浜市総合リハビリテーションセンター 発達支援部 難聴幼児課
対人コミュニケーション行動観察フォーマット(以下、
ターンが目立った。S-S 法症状分類 C―c 群(生活年齢に
FOSCOM)は、個別検査場面における、主に就学前の
比し遅れ 受信 > 発信)であった。【コミュニケーション
幼児の対人コミュニケーション行動を把握するために開
面での支援・評価の経過】支援開始時は、指導全体には
発された評価ツールである。2015 年の本学会において、
前向きに取り組むものの、指導中に欲しいものがあると
FOSCOM の結果が評価・支援プロセスの中でどのよう
離席して取りに行くなどの直接的な行動が多く、また音
に活用されるか、継時的にどのように変化するかを検討
声発信課題への拒否も目立ち FOSCOM で得られた結果
した症例報告を行った。今回も、継続的な支援を行い、2
と同様の傾向がみられた。そこで「立っていいですか?」
時点での FOSCOM を用いての評価を行った症例につい
などのリマインダーカードや疲労メーターを用いるよう
て報告する。【症例】指導開始時年齢 :5 歳 2 ヶ月。男児。
に促したところ徐々に直接的な行動、逸脱的な行動は軽
医学的診断名 : 精神遅滞、自閉症。知能検査(心理士に
減した。2 時点目の評価:FOSCOM12 点(所見やや多
よる): 田中ビネー知能検査(CA3:11 時)IQ:55【評価
い)
。【考察】コミュニケーション面の評価・支援プロセ
結果】指導開始時 ST 評価(CA5:2 時): 言語理解 :PVT-
スを検討し、数量的、質的な変化、支援方法などについ
R VA3 歳未満 :SS4。3 語連鎖 1 形式可能。言語表現 : 有
て検討を行う。
意味語 10 数語。単語の音形:母音の部分発話。文字 : 未
学習。コミュニケーション態度 :FOSCOM15 点(所見多
い)。遊びへの誘いかけに過度に興奮する、直接的な行動
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
になりやすい、過度な報告など、過剰・顕在化の行動パ
2-6-16
対人コミュニケーション行動に変化を認めたASD一例
-対人コミュニケーション行動観察フォーマット(FOSCOM)からの検討-
松尾基史 1)、長嶋比奈美 2)、新岡ひかり 1)、藤村志保 1)、丸山千晶 1)、笠井新一郎 3)
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 リハビリテーション部 1)、
九州保健福祉大学 保健科学部 言語聴覚療法学科 2)、医療法人真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院 3)
【はじめに】対人コミュニケーション行動観察フォーマッ
を用いて正反応の形成を図ると、数回の訓練により指示
ト(以下 FOSCOM)は、就学前の幼児の対人コミュニ
に対する応答が増加し問題行動も減少した。課題遂行態
ケーション行動の特徴を把握するための評価法であるが
度形成後、理解・表出語彙数が増加し 2 語連鎖発信が可
縦断的な報告は少ない。今回、対人コミュニケーション
能となった。CA5:10 の <S-S 法 > で受信 3 語連鎖 1 形式、
行動に変化を認めた ASD 一例に対し FOSCOM を用いて
発 信 2 語 連 鎖 1 形 式、PVT-R で VA3:4(SS4) と な っ た。
検討したので報告する。
FOSCOM は27点と減少し、指示に対する応答性の困難顕
【症例】6 歳 4 か月男児。医学的診断名:ASD、MR。現病
在化パターン+過剰報告パターンへと変化した。
歴:1 歳 6 か月児健診で遅れを指摘され当院受診。CA1:8
【考察】本症例は、指示に対する応答性やコミュニケー
か らPT、OT、ST開 始。 新 版K式DQ46。CA4:10の<S-S
ション機能の改善により対人コミュニケーション行動
法 > で Com 態 度 非 良 好、 症 状 分 類 C 群 a、 受 信 2 語 連
に 変 化 を 認 め た と 考 え る。FOSCOM を 用 い て 対 人 コ
鎖 2 形式、発信事物名称成人語 10 語。FOSCOM 37 点、
ミュニケーション行動の変化を検討すると、点数の増減
指示に対する応答性の困難顕在化パターン+弱い報告機
といった量的変化、下位領域における “ 過少・潜在的 ”
能パターンであった。注意散漫、衝動性、多動は顕著で
か ら “ 過 剰・ 顕 在 化 ” へ の 質 的 変 化 を 認 め た。 よ っ て、
不安や苦手意識が強く感情抑制も困難のため失敗すると
FOSCOM を用いることで、指示に対する応答が困難か
自傷行為等を認めた。
つコミュニケーション機能が潜在的な状態にある症例の
【経過】開始当初、正反応の強化や誤反応へプロンプト等
問題点を客観的に評価することが可能と示唆された。
250
2-6-17
高機能自閉症スペクトラム障害児と定型発達児の読解力の検討
医療法人徳洲会 東京西徳洲会病院 リハビリテーション科 1)、国際医療福祉大学 保険医療学専攻 言語聴覚分野 2)
読解課題では、「他者の心情推測」にて ASD 群の成績が
部科学省で読解力向上に関する指導資料が全国の教育機
高い傾向があった。ASD 群・定型発達群ともに「事実確
関に配られるなど、非常に重要な学習課題とされてい
認」に比し、「心情推測」や「他者の心情推測」の成績
る。今回、高機能の自閉症スペクトラム障害児(Autistic
が低下した。
【考察】高機能 ASD 児は読解の際、表象レ
Spectrum Disorders:ASD)の読解力について、自由
ベルで理解する前に因果関係や行動理由などを言語化し
再生課題、読解課題から比較・検討を行ったので報告す
ていると考えられた。そして、言語化の過程で特異的な
る。
【対象】IQ90 以上の高機能の小学 4 年生の ASD 児 9
意味処理による内容理解のズレから、表象レベルで理解
名と年齢を合わせた定型発達児 10 名とした。【方法】実
される時に物語全体の内容については大きな誤りはない
験用に作成した物語文の音読後、自由再生課題と読解課
が、細かい部分の内容理解にズレが生じ、言語化により
題をそれぞれ 5 題ずつ実施した。自由再生課題・読解課
作り上げた状況や場面に食い違いが生じると考えられた。
題 と も に「 事 実 確 認」
、
「 状 況 の 推 測」
、
「 心 情 の 推 測」
、
よって、定型発達児と同様に読解し、理解しているとは
「他者の心情推測」に項目を分け検討した。自由再生課題
言えないことが示唆された。
では文中にはない発言を内容の誤りとし、「誤解」、「類義
語」、「誇大表現」、「付加」に分類して検討を行った。【結
口頭演題 日目
について定型発達群に比し得られた発話数が多かった。
調査にて、日本の児童・生徒の読解力の低下を受け、文
特別プログラム
【はじめに】読解力は、2003 年に実施された学習到達度
日 程
佐々木香緒里 1)、畦上恭彦 2)
1
果】自由再生課題では、ASD 群・定型発達群ともに成績
2-6-18
対人コミュニケーション行動観察フォーマットFOSCOMでの2時点評価と
保護者支援
ポスター演題 日目
に差はなかったが、内容の誤りの「誇大表現」と「付加」
1
宇井 円
総合病院国保旭中央病院 診療技術部 リハビリ・歯科部門 小児科
求の発信ができた。【再評価(CA:4:8 時)】FOSCOM23
し、彼らを支援するための一つの情報源とするために開
点(所見非常に多い)。自発的な意思表示や、遊びへの誘
発された評価ツールである。今回、FOSCOM での評価
いかけに応じて楽しめることが増えた。表情変化は、一
から得られた情報を基に行った個別訓練場面における保
人笑い等があるものの全体的に増えた。発語の獲得に伴
護者への説明が、支援の必要性の理解に繋がった症例を
い、お片付けを「たたむ」と言うなど独特な表現がみら
経 験 し た の で 報 告 す る。【 症 例】2 歳 6 ヶ 月 男 児。 医 学
れた。保護者は本児の行動やそれに対する対応を知った
的診断名:言語発達遅滞。既往歴・現病歴:特記事項な
ことで、できるようになったことや好きなことに目を向
し。視力、聴力、身体機能、運動発達等:問題なし。【初
けて支援するようになった。【考察】FOSCOM において
期 評 価】 新 版 K 式 発 達 検 査 2001、DQ72、P-M123、
数量的な変化は大きくないが、2 時点各々でチェックした
C-A72、L-S57。<S-S 法 >、症状分類 T 群、発声はある
行動評価基準に違いのある項目数が 16 項目あり、質的な
も模倣なし。コミュニケーション態度:FOSCOM27 点
変化が大きいため、変化がみられた項目について検討し、
(所見非常に多い)。にこにこしていることは多いが、表
コミュニケーション行動の変容及び個別支援や家庭支援
情がない場面もあった。課題には応じるものの、遊びへ
内容との関連について考察する。
の誘いかけには反応しないことが多かった。応答は、や
りたい時、やりたくない時どちらも首を振ることがあっ
251
2
2
日目
は難しいことが多かったが、絵カードの選択を促すと要
に就学前の幼児の対人コミュニケーション行動を把握
ポスター演題
た。要求は直接行動が多く、コミュニケーションの開始
ト(以下、FOSCOM)は、個別検査場面における、主
口頭演題 日目
【はじめに】対人コミュニケーション行動観察フォーマッ
2-6-19
失語症者の談話理解に結束辞が及ぼす影響
日 程
小林 恵 1)、藤田郁代 2)
公益財団法人 化学療法研究会 化学療法研究所附属病院 リハビリテーション室 1)、
国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 2)
談話は複数の文からなり、文と文とのつながりを結束辞
特別プログラム
がある談話より理解が有意に低下した(p<0.01)。(2)
者の談話理解にどのように関与するかについて詳細は明
談話の情報のうち日時・場所は結束辞がない談話は結束
らかになっていない。
辞がある談話より理解が有意に低かったが(p<0.05)、
【目的】Broca 失語の談話理解に結束辞の有無が及ぼす影
出来事と原因については結束辞の有無による差は認めな
響を検討し、談話理解と AMS、知的機能、文の理解との
かった。(3)結束辞がある談話とない談話共に、談話の
関連性について調べることである。
理解と高い相関を認めたのは SLTA 短文理解のみであり、
【方法】対象は、Broca 失語 10 名で、対照群は健常者 10
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【結果】(1)Broca 失語では、結束辞がない談話は結束辞
(指示代名詞、接続詞等)が示す。結束辞の存在が失語症
AMS 及び RCPM 得点との相関は低かった。
名であった。談話理解課題では、結束辞として指示代名
【考察】Broca 失語では、結束辞がある談話は結束辞がな
詞と接続詞を取り上げ、結束辞のある談話と結束辞のな
い談話より理解が容易であり、結束辞のない談話では推
い談話を各 10 話作成した。内容は日常会話のエピソード
論の負荷が高いことが考えられた。また情報の種類のう
に関するものであり、各談話に日時・場所、出来事、原
ち、日時・場所は結束辞がないと理解が困難となるのは、
因をすべての談話に含めた。各談話の文節数は 40 文節、
日時・場所は単独で記銘・再生することが必要であり、
文の長さは 2 ~ 4 文節とした。談話の理解は、日時・場
既有知識と関連させることが困難であることが考えられ
所、出来事、原因の質問を文字と音声で与え、3 者択一で
た。談話理解に AMS および知的機能は関連しないが、文
評価した。文の理解は SLTA 短文の理解、AMS は 2 音節
の理解が関与する傾向を認めた。
語系列のポインティング、知的機能は RCPM で調べた。
2-6-20
定型発達児の音韻性短期記憶と構文理解の発達に関する検討
荒木茂行 1)、畦上恭彦 1,2)、藤田郁代 2)
国際医療福祉大学 保健医療学部 言語聴覚学科 1)、国際医療福祉大学大学院 医療福祉研究科 2)
【はじめに】音韻性短期記憶容量はワーキングメモリー
名 ス パ ン の 平 均 値(SD) は、4 歳:1.8(0.7)、5 歳:
おける音韻ループの容量に対応しており、それを記憶ス
2.1(0.3)、6 歳:2.4(0.7)であり、二音節記銘スパン
パンという。音韻性短期記憶容量を計るものとして、単
では 4 歳児と 6 歳児に差がみられた(p<0.01)。藤田ら
語や数字ではなく非語の復唱が用いられる。本研究では
(2015)が実施した構文検査の生成との相関を調べると、
定型発達の幼児における音韻性短期記憶と構文理解の発
記銘スパンと構文理解の正答数の相関では、単音節・二
達を年齢別の観点から単音節、二音節の記銘スパンの発
音節記銘スパン共に構文理解正答数と相関が認められた。
達と構文理解について検討を行った。【方法】対象は、4
【考察】音韻性短期記憶記銘スパンは、4 歳・5 歳に比べ
歳児から 6 歳児の定型発達児で非語復唱課題対象児は
て 6 歳で増大すること、音韻性短期記憶の記銘巣スパン
4 歳 児 15 名、5 歳 児 23 名、6 歳 児 21 名 の 計 59 名 で あ
と構文理解正答数に相関がある。これらから、年齢によ
る。非語復唱課題の中から失語症構文検査(試案 2A)対
る発達の観点として音韻性短期記憶の記銘スパンおいて
象児は 4 歳児 10 名、5 歳児 14 名、6 歳児 11 名の定型発
他の年齢と比べて 6 歳児で差がある。このことから、6 歳
達児 35 名であった。音韻性短期記憶の記銘スパンを非
児になると認知的な発達とともに記銘スパンが長くなり
語復唱課題(単音節と二音節)と失語症構文検査(試案
受動文などの複雑な構文の理解が可能となったと考えら
2A)で測定した。【結果】(1)単音節記銘スパンの平均
れる。
値(SD)は、4 歳:4.0(1.0)、5 歳:4.3(0.6)、6 歳:
5.0(0.8)であり、単音節記銘スパンでは 4 歳児・5 歳
児と 6 歳児に差が見られた(p<0.01)。また、二音節記
252
2-6-21
左視床梗塞により意味カテゴリー特異性が認められた失語症例
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 1)、金沢大学 医薬保健学総合研究科 2)、
福井総合クリニック リハビリテーション課 言語聴覚療法室 3)、
福井総合病院 リハビリテーション課 言語聴覚療法室 4)、福井総合病院 リハビリテーション科 5)、
福井県高次脳機能障害支援センター 6)
兼平真弓、小野寺英樹、井上芳和、橋本春美、伊藤美咲、守谷 隆
東八幡平病院 リハビリテーション部 言語聴覚科
語症の程度が必ずしも一致しないことに気付き、視床出
血の体積を MRI または CT 画像より測定することを始め
た。平成 22 年 4 月~平成 27 年 3 月までの 5 年間で左視
床出血例が 70 例となり昨年よりその分析を始めた。その
の型に明らかな運動性失語および感覚性失語の症例が認
められた。この結果よりさらに画像を上下像での分析を
おこなった。第 3 脳室が描写されている部位を A 型とし、
1 センチメートル上方を B 型、2 センチメートル上方を C
型とした。この結果は A 型の部位に運動性失語および感
解剖書による分析を行った結果、これらの症例は内側後
腹側核、外側後腹側核および外腹側核後部に相当するの
ではないかと考え、これらの症例を中心に考察を加え報
告したい。
253
2
日目
覚性失語の症例が存在していた。この事実を踏まえて脳
2
ポスター演題
分析方法は血腫量を 4 つの型に分類した。この結果、2 つ
1
口頭演題 日目
私達は 5 年前より左視床出血において血腫の大きさと失
1
ポスター演題 日目
左視床出血例における視床失語の一考察(第一報)
口頭演題 日目
2-6-22
称 67.5%、聴理解 88.5%。植物名は呼称 35 %(低親密
語 0 %)、 聴 理 解 60 %( 低 親 密 語 40 %)。〔 再 評 価〕 呼
称 77 %、聴理解 96 %。植物名は呼称 50 %(低親密語
10 %)、聴理解 75 %(低親密語 50 %)。他のカテゴリー
の正答率に比べ、特に植物名の低親密語で低下を認めた。
WAIS-3:〔 初 期 評 価〕PIQ72、PO87、PS66。 積 木 模
様と行列推理は良好であったが、絵画配列と絵画完成は 3
点で下位項目間にバラツキがあった。
〔再評価〕PIQ83、
PO97、PS69。絵画配列 5 点、絵画完成 6 点に改善を認
めた。
【考察】既報告では左側頭葉・頭頂葉損傷例による意味カ
テゴリー特異的な障害がほとんどである。本症例は左視
床損傷で症状が出現した点で異なる。視床の一部は側頭
葉や頭頂葉に投射しており、この部位の損傷が語彙-意
味表象を意味カテゴリー特異的に低下させたと考えられ
た。WAIS-3 からは、言語処理にとどまらず概念的な処
理の問題が示唆された。
特別プログラム
【はじめに】ある意味カテゴリーの呼称が選択的に障害さ
れる報告があるが、多くは左側頭葉・頭頂葉損傷例であ
る。今回は左視床梗塞により意味カテゴリー特異性が認
められた 1 失語症例を報告する。
【症例】41 歳、男性、右手利き、大学卒の会社員。X - 7
日より、仕事中いつもできることができなくなり、話さ
れた内容も理解できなくなった。X 日、A 病院受診し、左
視床、左小脳梗塞と診断され入院。
【神経学的所見】運動・感覚障害無し。
【 神 経 心 理 学 的 所 見】 自 発 話 は 流 暢 で 構 音 の 歪 み は な
く、錯語も目立たないが、代名詞や間投詞の挿入、迂言
が多く、発話量に比し内容が空虚であった。初期評価は
入院直後、再評価は約 1 カ月後に実施。SLTA:〔初期評
価〕単語の聴理解・読解 100%。短文の聴理解 90%、読
解 80%、「鉄橋ってなに?」と発話あり。復唱や音読は
短文まで全問正答。呼称 70%、語の列挙 2 語。〔再評価〕
聴理解・読解は短文まで全問正答。呼称 95%、語の列挙
11 語。TLPA 意味カテゴリー別名詞検査:〔初期評価〕呼
日 程
高橋宣弘 1,2,6)、河村民平 1,6)、能登谷晶子 2)、富田浩生 3,6)、富澤俊介 4)、佐藤万美子 5)
2-6-23
日 程
口部顔面失行と発語失行の関係性 ~口部顔面動作に単一動作と連続動作を
用いた検討~
坂部泰治 1)、田代浩之 1)、松田 梓 1)、田中茉里江 1)、山本詠一 1)、和田 岳 1)、
藤井加奈恵 1)、藤田光沙 1)、中村 光 2)
徳山リハビリテーション病院 リハビリテーション科 1)、岡山県立大学 保健福祉学部 保健福祉学科 2)
特別プログラム
口頭演題 日目
1
【背景】口部顔面失行(BFA)と発語失行(AOS)の関
連続動作の合計)と構音検査の得点間には有意な相関関
係性(因果関係)については、有、無の両論があり明ら
係が認められた(r=0.70, p=0.02)。ただし、連続動作
かにはされてはいない。また、先行研究は症例報告によ
と構音検査の相関は有意だったが(r=0.86, p<0.001)、
るものが多く、複数症例で検討した研究は少ない。さら
単一動作との相関は有意でなかった(r=0.42, p=0.23)。
に、BFA の評価課題としては単一動作、連続動作、反復
【考察】松田ら(2005)は、BFA はアナルトリーに伴う
動作の 3 種があるが、多くの場合には単一動作だけが用
ことが多いが必発ではなく、アナルトリーの重症度と必
いられている。【目的】1.BFA と AOS の関係性を多数例
ずしも相関しないと報告している。単一動作のみの評価
において検討する。2. 口部顔面の単一動作、連続動作そ
では AOS の重症度を予測できないことが示唆された。
れぞれと AOS の関係性を検討する。【対象】脳血管障害
による右利き Broca 失語症者 10 例(中等度 3 例、重度 7
例)。男性 7 例、女性 3 例。平均 67.3 ± 12.2 歳。【方法】
<BFA 評価 > 谷ら(2002)の評価項目(単一動作 12 項
目、連続動作 6 項目)を口頭指示ののち模倣にて実施。
正反応 1 点、誤反応 0 点を与えた。<AOS 評価 >SLTAST 単音節構音検査(101 音)を復唱にて実施。正反応 1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
点、誤反応 0 点を与えた。【結果】口部顔面動作(単一・
2-6-24
重度運動性失語を呈した慢性期症例の表出訓練と効果
濱崎茉梨 1)、西村紀子 2)、白倉良太 1)
弘善会 介護老人保健施設 アロンティアクラブ 1)、弘善会 矢木脳神経外科病院 2)
はじめに現在、失語症者が長期間継続した訓練を受ける
難。訓練プログラム 1.理解訓練名詞、動詞ともに 1/4
ことは難しい現状にある。しかし広汎病巣例でも 3 年以
選択でのマッチング、ポインティングを行った。2.表出
上の長期にわたり回復を示す症例が少なくない(佐野
訓練鏡の中に症例と言語聴覚士の両方が映る立ち位置で
2000)。今回慢性期の中大脳動脈閉塞による重度運動
口型模倣を実施。開口 - 閉口、口唇突出 - 横引き、提舌、
性失語と発語失行を呈した症例に訓練実施。その経過に
舌挙上が可能となった時点で母音や口唇音の簡単な単語
ついて報告する。
[症例紹介]男性 75 歳 右利き医学
を用いて構音訓練を行った。経過日常生活では頷きと首
的診断名:心原性脳梗塞神経心理学的所見:運動性失語
振りにて意思疎通を図れる頻度が増加、挨拶が時折可能。
症、発語失行、口腔顔面失行神経学的所見:右上下肢麻
まとめ老健でのリハビリは介入時間・頻度ともに制限さ
痺(BRS 上肢 2、下肢 3)合併症:非弁膜症性心房細動、
れている。今回、本人、家人の強い希望があった音声表
完全房室ブロック、冠攣縮性狭心症既往歴:なし現病歴:
出に必要な基礎訓練を週 3 回、1 回 20 分反復して実施。
2015 年 X 月、建具職人として勤務中に急変し A 病院入
その結果挨拶程度でも表出できたことは本人、家人の満
院。52 病日で B リハビリ病院へ転院し 179 病日で当施設
足度向上に繋がった。
に入所。初期評価聴理解は 2 語文、文字理解は単語レベ
ルで可能。口頭表出は「おーい」「はい」の返答のみ、口
腔顔面失行のため開口のみが可能。書字は氏名が一部の
み可能、模写は何重にも線を重ね書き順は全く無視され
ていた。日常生活場面では全て Yes 反応で正誤判断は困
254
2-6-25
慢性期失語症における高頻度集中訓練の効果の検討
千葉県千葉リハビリテーションセンター
千葉県千葉リハビリテーションセンター
千葉県千葉リハビリテーションセンター
千葉県千葉リハビリテーションセンター
リハビリテーション療法部 1)、
地域連携部 2)、
高次脳機能障害支援センター 3)、
診療部 4)
木村 茂 1)、山本弘子 2)、相馬肖美 3)、八島三男 4)、園田尚美 4)
齢、性別、家族構成、発症時の年齢、発症時の就労状況、
発揮することができるよう、一般就労を希望する者には
疾患名、身体障害の状況、高次脳機能障害の状況、障害
できる限り一般就労できるように、(中略)総合的な支援
の種類、病前の仕事、病後仕事の状況、就労支援の状況、
を推進する。」とされ、障害者の就労促進は重要課題と
就職活動、作業所就労、企業就労、ジョブコーチ、就労
なっている。高次脳機能障害者への支援は全国的な取り
支援についての要望。
【調査結果】現職復帰・職場定着
組みがなされてきているが、一般社会での認知度は未だ
の困難さが際立ち、就労支援体制が不十分と感じている
十分とは言えず、就労状況や就労支援のあり方について
人が多かった。また、障害の実態に応じた業務環境整備
は議論が尽くされていない。今回、日本失語症協議会で
の不十分さ、低賃金、就労支援施設及び職場の障害理解
は、失語症を含む高次脳機能障害のある人の就労の実態
不足、コミュニケーション支援不足、医療リハビリテー
やニーズを把握した上で、自立した社会生活を実現する
ションとの連携不足等が問題点に挙がった。【今後に向け
支援体制を整えるための基礎資料となるよう本調査を実
て】高次脳機能障害に対応できる就労支援施設の充足、
施した。【調査方法】日本失語症協議会加盟友の会、日本
専門知識のある人材の配置、障害・個別的特性に応じた
脳外傷友の会、東京高次脳機能障害協議会加盟団体、高
業務の提供・紹介、高次脳機能障害の啓発、コミュニ
次脳機能障害者支援拠点機関、若い失語症者のつどい、
ケーション支援、支援機関間の連携強化、経済的支援が
全国失語症患者家族会などの協力を得て、アンケートを
考えられる。これらの検討内容を報告する。
255
2
2
日目
実施した。【調査期間】2015 年 6 ~ 9 月。【調査項目】年
「働く意欲のある障害者がその適性に応じて能力を十分に
ポスター演題
【 は じ め に】 平 成 25 年 障 害 者 基 本 計 画( 第 3 次) で は
1
口頭演題 日目
医療法人社団三秀会 青梅三慶病院 1)、東京都府中療育センター 2)、NPO 法人ゆずりはコミュニケーションズ 3)、
NPO 法人日本失語症協議会 4)
1
ポスター演題 日目
失語症を含む高次脳機能障害のある方の就労に関するアンケート調査報告
2015
口頭演題 日目
2-6-26
た問題点から、症例 1 では日常会話レベルでの喚語能力
と聴覚的理解の改善、症例 2 では音韻の照合、選択、配
列の改善、聴覚的理解及び喚語能力の改善を目標とした。
訓練前後の比較では症例 1 では SLTA 語の列挙で Z 得点
1SD 以上の改善、SLTA-ST 呼称、TLPA 動詞の表出で有
意な改善(p<0.05)、症例 2 では SLTA 短文の理解、仮
名の理解、仮名一文字の音読で Z 得点 1SD 以上の改善、
Token Test で 有 意 な 改 善(p<0.05) が 認 め ら れ た。
【考察】 上記結果から症例 1 では発話面、症例 2 では聴
覚的理解面と発話面の改善が認められた。改善要因の一
つとして訓練頻度の高さが考えられ、慢性期においても
高頻度の訓練が症状の改善に寄与する可能性が示唆され
た。発表では 3 カ月後の評価結果の分析も加えて考察す
る。また今後もこの取り組みを継続して症例数を増やし、
訓練方法や頻度とその効果や変化に影響する要因につい
て検討を進めたい。
特別プログラム
【はじめに】 慢性期失語症状の改善については多くの知
見があるが、一方で回復期上限以降、十分な言語訓練が
なされていることは少なく、当センターでも外来での長
期的な言語訓練は最高で週 1 回程度の頻度にとどまって
いる。今回、慢性期の失語症患者 2 名に短期間、高頻度
での集中訓練を実施し、その効果について検討したので
報 告 す る。【 方 法】1) 対 象 症 例 1:50 代 男 性、 右 利
き。X 年に SAH を発症、X+3 年で言語訓練を一旦終了、
集中訓練開始時 X+5 年 2 ヶ月。中等度感覚性失語、SLTA
総合評価法 5/10。症例 2:30 代男性、右利き。X 年に
硬膜動静脈瘻、静脈性脳梗塞を発症。X+3 ~ 6 ヶ月当セ
ンター回復期病棟に入院。X+7 ヶ月以降、外来訓練を週
1 回。集中訓練開始時 X+1 年 8 ヶ月。重度感覚性失語、
SLTA 総合評価法 2/10。2)手続き約 2 カ月間、週 4 ~ 5
回の集中訓練を実施。集中訓練直前と直後及び 3 カ月後
に SLTA、SLTA-ST、SALA、TLPA、Token Test に て
評価し、結果を分析した。【結果】 直前評価で抽出され
日 程
小池 学 1)、山本小緒里 1)、高橋誠貴 1)、津田遼子 1)、井上澄香 1)、上野真喜子 1)、
神代裕里恵 1)、高橋純子 1)、森戸崇行 2)、大塚恵美子 3)、赤荻英理 4)
2-6-27
失語症を発症した独居高齢者の退院支援における一考察
日 程
小山善仁
公立みつぎ総合病院 リハビリテーション部
【はじめに】先行研究において「独居」「コミュニケー
特別プログラム
【退院までの経過】「家に帰りたい」との思いが強く度々
とされている。今回失語症を発症した独居高齢者の自宅
離院を企てるが、独居生活の再開には金銭管理、社会的
退院支援を経験したので、若干の考察を加え報告する。
交流などの問題解決が必要であった。そのため入院早期
【症例】80 歳代女性、右利き、大学卒。持家で独居。定
よりキーパーソン、ケアマネジャー、民生委員、友人に
年まで教員、発症前は惣菜店勤務。キーパーソンは従妹、
発症時までの関わりは少ない。頑固だが友人や教え子と
の交流は多い。
口頭演題 日目
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
介入を依頼。ST では機能訓練と並行してスケジュール記
入、計算機の使用練習などを行う他、「本人が行うこと」
「周囲の人に協力していただきたいこと」を明記した「支
【現病歴】X 年 Y 月ボンヤリしているところを近所の人に
1
IQ55。その他の検査は拒否。
ション能力の低下」は、退院後の転帰先に影響を及ぼす
発見され A 病院に救急搬送。MRI にて左大脳基底核およ
援シート」を作成。複数回の話合いを実施し自宅退院と
なった。
び右頭頂葉に脳梗塞あり入院、入院中に要介護 1 の認定
【考察】退院可能となった要因として言語機能の向上に加
が出る。39 病日目に当院回復期リハビリテーション病棟
え、交友関係を活かし周囲の協力が得られたことなどが
転院。129 病日目に自宅退院となる。
考えられる。失語症者の独居生活はコミュニケーション
【ADL】FIM104/126 点、病棟内 ADL は概ね自立。
の齟齬によるトラブルが発生する可能性がある。スムー
【神経学的所見】右軽度不全麻痺、右上肢軽度感覚鈍麻。
ズな退院支援を行うため、入院早期より本人と地域との関
【神経心理学的所見】入院直後は感覚性失語中等度、退
係を把握し、地域住民に介入いただくことで、障害の理解
院時は軽度まで回復。コース立方体組み合わせテスト
2-6-28
を深め、退院後の自他の役割を明確にする必要がある。
脳出血術後に退行による構音の誤りが生じた小児の一例
大江真衣 1)、大畠明子 1)、上原敏志 1,2)
国立循環器病研究センター 脳血管リハビリテーション科 1)、国立循環器病研究センター 脳血管内科 2)
【症例】9 歳女児、右利き【現病歴】X 年 Y 日、意識消失
なものの影響を第一に考え、家族とも相談して本人に構
しているところを発見され救急搬送された。AVM からの
音の誤りを指摘したり訂正させたりはせずに経過観察し
出血(左前頭葉)と診断され、同日開頭血腫除去術、さ
た。構音の誤りの頻度は減っていき一旦消失していたが、
らに Y + 47 日には AVM の摘出術が施行された。
【画像
AVM の摘出術のことを告知され号泣し、以降再度同様の
所見】左前頭葉皮質下に推定血腫量 79ml の出血を認め
誤りが出現し、退院時(Y+120 日)にも消失はしていな
た。【経過】ST 初診時(Y+10 日)、表情は非常に硬く、
かった。退院後も母親の前でのみ構音の誤りが続いたが、
発語はほぼなかったが、頷きや首振りによる yes/no 反
元の生活リズムを取り戻すにつれ頻度が減少し、退院か
応は素早く正確であった。ST 介入回数を重ねるごとに表
ら半年後の外来受診時には完全に消失していた。【考察】
情も緩やかになり、話すようにもなったが、部分的に構
本症例の構音の誤りは、突然の発病、初めての入院生活
音の誤り(/k/ が /t/ に、/g/ が /d/ に置換)が認められ
等に対する心理的ストレスにより、防衛機制のひとつで
た。その誤りは浮動的に続いたが、失語症のスクリーニ
ある退行が生じ、発話行動にも現れたものであろう。失
ングでは明らかな問題がなく、WISC の結果も平均範囲
語や構音障害が生じうる病巣だったため、担当 ST として
内であった(言語性 IQ109、動作性 IQ99、全 IQ104)。
介入方法に悩んだが、狭義の言語訓練にこだわらず、家
発話行動以外にも、母親に抱っこや食事介助を求めるな
族や他スタッフと方針を統一して経過観察ができたこと
どの退行と考えられる様子がみられた。構音の誤りは ST
が有意義であったと考える。
場面では早期に消失したが、家族が同席すると ST 場面で
も生じた。脳損傷による言語障害というよりは、心理的
256
2-6-29
小脳腫瘍摘出後にmutismを呈した小児の一例
埼玉県立小児医療センター 保健発達部 1)、武蔵野大学 2)、埼玉県立小児医療センター 脳神経外科 3)
の機能回復訓練や拡大代替コミュニケーションを利用し
頻度が高く、腫瘍摘出術後に一時的に発語が消失する
た表出訓練を実施。徐々に発声発語器官の運動は改善し
mutism を示す症例があることは知られている。手術後
たが mutism の症状は 60 日目までみられた。61 日目よ
の mutism は 一 過 性 で あ る が、 近 年 mutism 消 失 後 に
り発語が出現。発語出現後に行った評価では、発声発語
speech や language に問題を呈することがあるという報
器官の運動は拙劣で構音検査では単音節レベルより置換
告がされている。しかし、その詳細は明らかにされてい
がみられた。言語理解面は、PVT - R にて SS10、言語表
ない。今回 mutism 消失後に speech の問題を呈した症例
出面は K - ABC2 の表出語彙にて SS10 であった。視覚認
を経験したので報告する。【症例】初診時 5 歳女児。小脳
知面は、K - ABC の視覚類推にて SS9 であった。また、
中部に 50 × 43 × 44mm の腫瘍を認め、腫瘍摘出術と脳
遊びの様子より高次脳機能に著しい低下は認めなかった。
発語出現後は、構音訓練を実施し現在も継続している。
め開頭血腫除去術を施行。病理検査で髄芽腫と診断。【ST
【まとめ】本症例は、約 2 か月間の mutism の後に発語が
初診時】手術後 14 日目より ST 開始。手術後より発語は
出現。発語出現後は、language に問題を認めなかった
見られず、mutism の症状を認めた。問いかけには、表
が、speech 面には問題を認めた。
情や首ふり、手の動きで yes - no を表出するも失調があ
り反応の一貫性はない。発声発語器官の運動は開口・閉
口頭演題 日目
室ドレナージ術を施行。同日術後、急性硬膜下血腫を認
特別プログラム
【はじめに】小脳腫瘍は、小児の脳腫瘍の中で最も発生
日 程
沢 千晶 1)、遠藤俊介 1)、狐塚順子 1,2)、栗原 淳 3)
1
口は可能であったが、挺舌は下口唇をやや超える程度で
2-6-30
構音訓練により明瞭度の改善を認めた特別支援学校中等部の一症例
北條具仁 1)、大畑秀央 1)、百瀬瑞穂 1)、角田航平 1)、下嶋哲也 2)、坂田善政 2)、石川浩太郎 3)
ず、構音訓練の経験は無かった。【方法】構音器官の運動
未だ少ない小中学校の特別支援教育期に構音訓練の適応
訓練、絵に対する文字チップの構成と、構成されたチッ
時期を迎える児童が存在する可能性がある。今回我々は
プの音読訓練を開始し、その後 /k/ の系統的な構音訓練
特別支援学校に在学中の児童に構音訓練を行う機会を得
を行った。訓練頻度は概ね 2 週に 1 度、1 回 30 分とした。
たので報告する。【症例】当院初診時 14 歳女児、ダウン
その他に自宅学習を家族の指導のもとで行った。【結果
症。特別支援学校中等部に在学中。母親が会話の広がり
と考察】訓練 1 カ月後、舌圧子やうがい動作からの誘導
を希望して来院。構音は全般的に不明瞭で、特に k、g は
では奧舌挙上が困難であった。訓練 2 カ月後、舌尖を舌
歪みを伴う p、b に置換し、摩擦音や舌尖音、破擦音など
圧子で抑える方法で浮動的に /ka/ が成立。その後本人が
は後方化していた。また音の同化、省略など音韻発達の
利き手示指で舌尖を押えて確実な /ka/ の産生が可能とな
遅れに起因する誤りも認められた。国リハ式 <S-S 法 >
り、徐々に舌尖から指を放した /ka/ の構音が成立。訓練
言語発達遅滞検査では、コミュニケーション態度は良好、
開始 4 カ月後には文字チップ課題の音読で /ka/ を含む単
受信は段階 5-1 語連鎖要素、発信は検査上単語レベルだ
語の構音が可能となった。発表当日はその後の経過につ
が家庭や学校では 3 語連鎖発話が聞かれた。動作性は 5
いて報告するとともに、特別支援教育在学中の児童に対
歳相応。絵画語い発達検査(PVT-R)の語彙年齢(VA)
する構音の評価と訓練の意義について考察する。
は 5 歳 6 カ月。ひらがな文字検査(HITSS)は 5 歳前半相
応。本児は就学まで他の病院で言語発達面の訓練を行っ
257
2
2
日目
たが、系統的な構音訓練の適応となる発達年齢には至ら
の構音訓練の適応時期としている。一方、ST の関わりが
ポスター演題
【はじめに】阿部(2003)は 4 歳程度の言語発達が小児
1
口頭演題 日目
国立障害者リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション部 1)、
国立障害者リハビリテーションセンター学院 言語聴覚学科 2)、
国立障害者リハビリテーションセンター病院 耳鼻咽喉科 3)
ポスター演題 日目
あった。
【経過及び検査所見】ST 開始後、発声発語器官
2-6-31
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
当院における構音障害児の傾向-訓練回数に影響を与える要因の検討-
野口理衣 1)、前田秀作 1)、松原有沙 1)、畠山裕子 1)、六角順菜 1)、笠井新一郎 2)、川田育二 1)
JA 徳島厚生連 阿南共栄病院 耳鼻咽喉科 1)、宇高耳鼻咽喉科医院 2)
【はじめに】機能性構音障害の原因として、長澤(2007)
ンケート調査を行った。分析内容は、IQ と訓練回数、構
は、構音を弁別・認知する能力の未熟さ、心理社会的問
音の誤り方と訓練回数、障害された構音の個数と訓練回
題の影響、構音操作の未熟さとしている。しかし、明確
数、IQ と構音の誤り方とした。また、IQ は IQ69 以下を
な原因やつまずきのメカニズムは明らかとなっていない
遅滞群、IQ70 ~ 89 を平均下群、IQ90 ~ 109 を平均群、
とも述べている。また、機能性構音障害児の訓練期間
IQ110 以上を平均上群に分類した。【結果】言語性 IQ が
は 3 か月から半年とも言われているが、症例によっては
低い児ほど訓練回数が多い傾向を認めた。また、構音障
その期間よりも長期化する場合がある。今回、構音障害
害の種類によって訓練回数に差が認められた。これらの
児に対して、どのような要因が訓練回数に影響を与えて
結果をもとに、差が生じた要因について分析し、報告す
いるのか明らかにすることを目的に調査を行った。【方
る。
法】平成 22 年 1 月から H26 年 6 月までに当院に通院し
ている児の内、口腔器官に器質的な問題を認めた児、吃
音を有する児、発達障害を有する児、難聴児は除外した
構音障害児の中で、/s/、/dz/、/tsɰ/ の構音障害を有す
る 児 16 名、/s/、/dz/、/k/、/g/ の 構 音 障 害 を 有 す る
児 34 名の計 50 名を対象とした。構音障害の種類、知能
指数(Intelligence Quotient 以下 IQ)、当院に来院して
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
訓練を行った回数(以下訓練回数)に関して担当 ST にア
2-6-32
当センターにおける機能性構音障害の実態調査
宿輪 愛、斉藤裕恵
北九州市立総合療育センター
【目的】臨床現場では機能性構音障害に発達障害、言語発
音。方針は ST 外来施行 141 名、他施設紹介 30 名。2)訓
達遅滞など様々な障害を伴うことも多い。今回は効率の
練終了した児は 89 名であり、そのうち 44 名(49 %)が
よい訓練立案の判断材料となる要素をみいだすべく調査
6 ヵ月以内に終了。合併症なし児と PDD のみ合併の児で
検討したので報告する。
は訓練期間に差がなかった。合併症を全群で比較すると
【方法】対象:平成 22 ~ 25 年度間に当センター受診し機
言語発達遅滞と知的障害は短期群、中期群に少なく、長
能性構音障害と診断された 4 歳以上の児 171 名。調査項
期群に多かった。また発達障害の中でも AD / HD の合
目:初診時の、年齢、合併症、誤り音数、初回評価後の
併が短期群 2 名(7 %)、中期群 3 名(7 %)、長期群 8 名
方針、訓練期間。分析方法:1)対象児 171 名の実態調
(40 %)と長期群に多い傾向があった。
査。2)このうち終了児について合併症別に訓練期間を比
【考察】機能性構音障害と診断された子どもの 74 %が合
較した。また終了までの訓練期間により 3 群に分け検討
併症を伴った。今回の結果から、PDD を伴っていても言
した。
語発達遅滞や知的障害の合併がない場合は構音訓練が短
【 結 果】1) 対象児 171 名の初診時年齢は平均 5歳 10か
期で終了し、言語発達遅滞や知的障害、AD / HD を伴う
月。 合 併 症 な し は44名(26%)
、 合 併 症 あ り は 127名
場合は訓練が長引く可能性が示唆された。機能性構音障
(74 %)
。広汎性発達障害(以下 PDD)が 111 名(65 %)
、
害本体は言語指導で治癒する可能性が高いので合併症に
言語発達遅滞が62(36%)
、注意欠陥多動性障害(以下
配慮しながら、構音障害の解消を図りたい。
AD / HD)が 20 名(12 %)
、知的障害が 19 名(11 %)
、
その他が 12名(7%)
(重複あり)
。誤り音数の平均は 4
258
2-6-33
鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音症例の改善過程
昭和大学 歯科病院 口腔リハビリテーション科 1)、北海道医療大学 心理科学部 言語聴覚療法学科 2)
【目的】声門破裂音は、口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖不全症
日 程
山田紘子 1)、武井良子 1)、今井智子 2)
低く訓練開始には尚早であると判断し継続的に評価・助
鼻咽腔閉鎖機能不全のない言語発達遅滞や機能性構音障
行った「訓練」の 3 群に分類し、治療経過の追跡が可能
害症例にも出現することが知られている。われわれは、
であった経過観察・訓練症例の声門破裂音の改善過程、
昨年の本学会にて鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音
および舌の随意運動機能・摂食に関わる問題の変化につ
症例の誤り音の傾向や、声門破裂音を呈する症例には言
いて検討した。【結果】検査・助言は 1 名、経過観察は 6
語発達・舌の随意運動機能・摂食に関する問題等が伴う
名、訓練は 11 名であった。経過観察を行った低年齢の症
傾向があることを報告した。今回は声門破裂音の改善過
例や言語発達遅滞がある症例では、声門破裂音が消失し、
程について検討したので報告する。
【方法】対象は、鼻
正常構音を獲得した症例もみられた。訓練適応年齢まで
咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音症例 18 名(男性 17
声門破裂音が残存した症例においても、訓練により良好
名、女性 1 名、2 歳~ 22 歳)である。鼻咽腔閉鎖機能に
な結果が得られた。また、舌の随意運動機能、摂食に関
ついては、聴覚判定にて開鼻声や呼気鼻漏出による子音
する問題についても、多くの症例で改善がみられた。【結
の歪みを認めないことに加え、構音時に鼻息鏡にて呼気
論】鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音は、言語およ
鼻漏出を認めないことを確認した。また、声門破裂音の
び運動発達に伴い自然改善することが多く、また訓練予
診断は、聴覚印象および構音操作の観察にて行った。分
後も良好であることが示唆された。
口頭演題 日目
言を行った「経過観察」、月 1 回以上の系統的構音訓練を
特別プログラム
などの鼻咽腔閉鎖機能が不全な症例に多くみられるが、
1
析は、症例を治療方針別に、初診時に構音検査を実施し
2-6-34
構音障害を有する児の構音の分析―「機能性構音障害群」と「発達の問題を
伴う構音障害群」の比較―
佐藤公美 1)、笠井新一郎 1)、青木俊仁 1)、伊藤美幸 1)、竹山孝明 1)、高原由衣 1)、田上真希 1)、
吉田充嬉 1)、岡田規秀 1)、坂本 幸 1)、池田美穂 1)、長嶋比奈美 2)、宇高二良 1)
29 %、5 歳代 43 %、6 歳代 14 %、7 歳代以降 14 %であ
り、5 歳代にピークを認めた。
誤りを認めた子音は、機能構群で /k//s//ts//r/ など限定
【対象】平成 26 年度に「構音」を主訴に受診した新規患
児 98 名のうち、初診時年齢が 4 歳以上で「機能性構音障
発達障害群は、置換 61 %、省略 9 %、歪み 30 %であり、
機能構群に比べ省略を認める児が多かった。
児(以下、発達障害群)の 2 群に分け、年齢別に誤り音
の種類、誤り方、異常構音の有無等について調査した。
害」と判断した児 42 名と、構音以外の領域にも問題を認
め、「発達の問題を伴う構音障害」と判断した児 42 名、
構音検査」にて行い、初診時年齢、誤りを認めた子音の
種類、誤り方の種類、異常構音の有無などについて分析
した。
【結果】初診時年齢別内訳は、機能構群で 4 歳代 33 %、
5 歳代 31 %、6 歳代 22 %、7 歳代以降 14 %であり、年
齢が上がるにつれ減少していた。発達障害群は 4 歳代
機能構群において異常構音を認めたのは 11 名(側音化構
音 10 名、口蓋化構音 1 名)であり、年齢は 6 歳代、7 歳
代以降で多く、異常構音単独例が多かった。発達障害群
において異常構音を認めたのは 9 名(側音化構音 7 名、口
蓋化構音 2 名)であり、年齢は 5 歳代から多く、異常構音
に加え置換など他の誤りを合併している例が多かった。
これらの結果から、機能構群と発達障害群では、構音障
害の様相が異なっていることが伺える。発表では、機能
構群と発達障害群を比較し、その特徴を含めて考察する。
259
2
日目
計 84 名。
【方法】評価は、「ことばのテストえほん」および「新版
的であったが、発達障害群は多岐に渡っていた。
誤り方は、機能構群で置換 68 %、省略 2 %、歪み 30 %。
2
ポスター演題
【はじめに】平成 26 年度に「構音」を主訴に来院した児
について、「機能性構音障害」と判断した児(以下、機能
構群)および「発達の問題を伴う構音障害」と判断した
1
口頭演題 日目
宇高耳鼻咽喉科医院 1)、九州保健福祉大学 2)
ポスター演題 日目
助言のみを行った「検査・助言」、生活年齢・発達年齢が
2-6-35
多種のビデオ通話アプリを試用した口蓋裂言語に対する遠隔言語訓練
日 程
早川統子 1,2)、牧野日和 1,2)、井上知佐子 2)、相原喜子 2)、山内楓子 2)、山本正彦 1,2)、
夏目長門 2)
愛知学院大学 心身科学部 健康科学科 言語聴覚科学コース 1)、
愛知学院大学 歯学部附属病院 口唇口蓋裂センター 言語治療外来部門 2)
特別プログラム
【背景・目的】口蓋裂言語を有する患児の中には、居住
あった。また、音声・画像の遅延が訓練実施不可能な程
地、家庭の事情など種々の事由により通院にて言語訓練
度認められるものはなかった。しかし時には、光回線の
を受けることができない児がいる。当院ではそのような
接続状況の問題により通信が困難になる場合が認められ
患児に対して、遠隔言語訓練(Telepractice:TP)が必
たが、その際は 4G における通信に切り替え TP を実施し
要であると対面診察にて判断した場合は TP を実施してい
た。特に高速な回線でなくとも実施は可能であった。【考
る。今までに 12 名の患児に TP を実施してきており、そ
察】家庭の事情により通院が困難な患児については、患
のうち 7 名は現在も実施している。今までは SkypeR を用
口頭演題 日目
1
合もあった。様々なアプリで ST 側が対応することで、患
アプリでは不都合な場合が発生してきた。そこで汎用さ
児にとって必要な言語訓練を必要回数実施することが可
れている多種のビデオ通話アプリが TP でも使用可能かを
能となる。患児側も手軽に訓練を実施できるようになっ
検討した。【方法】患児 7 名の TP 実施には、患児の親の
たためにキャンセル回数は減少した。汎用されているビ
希望、TP 実施体制により、Skype 、FaceTime 、LINE
デオ通話アプリは対面診察・対面訓練の補助的役割を担
の 3 種類のアプリのいずれかを用いた。通信は光回線と
う TP では十分に使用可能であることが示唆された。本研
R
R
R
4G、ソフトバンクエアー R を用いた。言語聴覚士(ST)
が用いる通信機器は、ノートパソコンかスマートフォン
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
児が出先からスマートフォンを利用して TP を実施した場
いた TP が主流であったが、患児の親の事情により固定の
究は JSPS 科研費 15K01398(研究代表 : 早川統子)の助
成を受けて行われた。
とした。【結果】いずれのアプリでも TP の実施は可能で
2-6-36
訓練に難渋した機能性構音障害の一例
鷲見麻里 1)、岩城 忍 2)、柴切圭子 1)、森田武志 3)
兵庫県立尼崎総合医療センター リハビリテーション部 1)、
神戸大学大学院 医学研究科 外科系講座 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 2)、
兵庫県立尼崎総合医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 3)
【はじめに】機能性構音障害に対する訓練に難渋した症例
/p/、/b/、/m/、/h/ →産生可能、/ɕ/ →産生可能または
を経験したので報告する。【症例】初診時年齢 3:9、男
省略、/n/ → /m/ へ置換、/t/、/d/、/k/、/g/ →省略ま
児。「母音ばかりで話す」を主訴に、当院耳鼻科ならびに
たは声門破裂音へ置換、/s/ →省略または /h/ へ置換。単
言語外来受診。問診では、これまで運動発達に遅れはな
音節復唱では /t/、/d/、/k/、/g/ の声門破裂がより強く
し、初語は 2:6 頃で、この頃から母音でばかりで話して
なった。/n/ → /ɕ/ → /s/ → /t/ → /k/ の順に、現在訓練を
いた。聴力、発声発語器官に器質的な問題なし。友達と
継続中。本症例の場合、/p/ の訓練過程や訓練再開時に声
のコミュニケーションで問題が出始めていたため、構音
門破裂音を呈した。この声門破裂音に対し、舌の操作だ
訓練開始となった。初診時、構音検査では /m/、/n/ は
けでなく、喉頭に手をあてて振動の有無を確認すること
一部産生出来ていたが、他の子音は全て省略。初期評価:
で、声門破裂音を改善させることができた。
随意運動発達検査(口部顔面のみ、3 歳 9 か月実施)構
音交互反復以外は年齢相応の項目通過、PVT-R(3:10
実施)VA 4:1、SS11。新版 K 式発達検査 2001(4:0
実施)認知-適応 DQ114、言語 - 社会 DQ110、全領域
DQ112。【経過】3:10 ~ 4:10 の間に計 16 回構音訓
練を実施。構音位置づけ法を中心に、/m/ → /p/ → /b/
と順に訓練を行った。4:10 以降、母多忙のため訓練は
一旦中断。5:7 時、訓練再開。構音検査(単語呼称):
260
P2-1-01
自動車運転再開プログラムにおける神経心理学的検査の有効性の検討
新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科 1)、新潟リハビリテーション病院 作業療法科 2)、
新潟医療福祉大学 作業療法学科 3)、新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション科 4)
【はじめに】当院で実施している自動車運転再開プログラ
告する。
【対象】当院で 2001 年 10 月から 2015 年 3 月までに自
動車運転再開プログラムを受けた連続症例 252 例のうち、
データ欠損のない 103 例(男性 88 例、女性 15 例、平均
年齢 54.0 ± 11.5 歳)。全例が何らかの高次脳機能障害を
有するが、そのうち失語症 16 例を含む。全例に実車評価
を行い、最終判断として「運転再開可能群」73 例、保留
に分類する。
の平均値と標準偏差は以下のとおりである。MMS:28.23
± 1.93/27.07 ± 2.77(可能群 /見送り群)、TMT-A:
45.56 ± 18.66/66.53 ± 36.80、TMT-B:122.30 ±
69.50/213.60 ± 69.50、符号:7.29 ± 3.26/6.07 ±
2.63、算数:9.22±3.05/7.60±7.60±2.66、行列推理:
10.42 ± 3.14/8.57 ± 3.35、数唱:9.51 ± 2.72/8.03 ±
3.20、記号探し:7.40±2.78/5.80±2.70、語音整列9.82
±3.66/7.83±3.44、 動 物 園 地 図:2.30±1.29/1.63±
1.30、修正6要素:3.19±1.04/2.57±1.38、文字抹消:
38.41±2.09/35.73±3.63。
【 方 法】 神 経 心 理 学 的 検 査 と し て 施 行 し て い る MMS、
【考察】MMS は全般的重症度、TMT-A と B は注意機能、
BIT 全下位検査、計 38 項目を t 検定を用いて 2 群間の有意
列は作業記憶、動物園地図と修正 6 要素は遂行機能、文
TMT-A & B、WAIS-3rd 全下位検査、BADS 全下位検査、
差を検討した。
【 結 果】p<0.05 以 下 で 有 意 差 を 認 め た 項 目 は、MMS、
TMT-A & B、WAIS-3rd の符号、記号探し、算数、行列
P2-1-02
字抹消は視空間認知の機能に関与すると考えられる。こ
れらは運転における認知・判断・予測・操作のプロセス
1
を評価するうえで有用と考えられ、実車評価と総合して
判断することが重要と考える。
中等度失語症者の運転支援~机上評価と実車評価を実施して~
鈴木瑞穂、冨山陽介、菅野俊一郎、佐藤亮太、根来亜希、信太由宇子、川村瑞穂、加藤未咲、
角 詩織
ポスター演題 日目
推理、数唱、語音整列、BADS の動物園地図、修正 6 要
符号と記号探しは処理速度、算数、数唱、および語音整
口頭演題 日目
又は再開困難となった「運転再開見送り群」30 例の 2 群
素、BIT の文字抹消の 12 項目であった。以上の項目の 2 群
特別プログラム
ムにおける神経心理学的検査の有効性を検討したので報
日 程
佐藤卓也 1)、本間崇彦 1)、横野紗知 1)、小柳佳与 1)、村山拓也 2)、外川 佑 2,3)、崎村陽子 4)
1
公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院 リハビリテーション科
実車評価では「右に曲がるウインカーを出す」という指
価、実車評価結果を述べ若干の考察を加え報告する。【症
示に対し、ウインカーを出さず直進する反応が見られた。
例】70 代男性。麻痺なし。中等度 Wernicke 失語。現病
また教官の指示を聞きながら合流しようとした際には、
歴:孫の「車で送って」という発言に対し「水があふれ
対向車に気付かず発進する危険な場面も伺えた。直進や
てないか?」と繰り返し会話が成立しなかった。その後
運転操作に問題は見られなかった。終了後「運転は大丈
も同様の症状が続き A 病院へ搬送、脳出血と診断され入
夫」といった病識に欠ける発言が聞かれ、運転カンファ
院、 重 度 Wernicke 失 語 を 認 め た。 第 20 病 日 に B 病 院
レンスで検討、主治医と相談し運転再開は見送る結果と
へ転院、第 43 病日に自宅退院し外来 ST 訓練を開始。そ
なった。【考察】同乗者等の条件を付ければ運転は可能か
の後症状は緩やかに改善し、運転希望が強くあったこと
を確認するためにも、運転中の言語能力を実際に評価す
から第 276 病日に運転評価目的で当院に紹介、運転評
る必要がある。今回当患者は注意障害もあり運転を不可
価 を 実 施 し た。【 結 果】MMSE22 点、KOHS.I.Q.79.2、
とした。運転能力の評価には高次脳機能障害のそれぞれ
TMT-partA200 秒、partB270 秒、CAT 視覚性抹消(数
が、どのように運転技能に影響を及ぼすか注意深く観察
字 3)199 秒、SLTA(口頭命令に従う)6/10。失語症が
する必要がある。
あるため可能な範囲での高次脳機能評価を実施した。構
成機能や処理速度等において先行研究値を下回る結果と
261
2
2
日目
検査中に話し出す場面も見られ注意散漫な姿が伺えた。
る。今回当院では中等度の失語症例を経験した。机上評
ポスター演題
なった。また SLTA では複雑な文理解に困難さを示した。
の中で失語症を呈する患者の運転再開例も報告されてい
口頭演題 日目
【はじめに】脳損傷後に運転再開を希望する者は多い。そ
P2-1-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
広範な右半球脳梗塞を発症後、音楽活動を通して社会参加を果たした1例
矢内康洋 1)、佐々木大輔 1,3)、廣瀬純一 2)、崎村陽子 4)
新潟リハビリテーション病院 言語聴覚科 1)、新潟リハビリテーション病院 作業療法科 2)、
介護老人保健施設 相川愛広苑 3)、新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション科 4)
【はじめに】右内頚動脈閉塞により重篤な右半球症状を認
めたが、音楽活動を通し社会活動への参加を果たした症
例を経験したので報告する。
【症例】42 歳、男性、自営業、右利き。
【現病歴】自宅にて胸部痛出現し救急搬送。大動脈解離認
め、上行弓部大動脈置換術施行。発症時に右内頚動脈閉
塞きたし、右半球に広範な脳梗塞を認めた。第 2 病日減
圧開頭術施行。第 38 病日頭蓋形成術施行。第 60 病日リ
ハビリ目的に当院転院。
【画像所見】第 60 病日 CT にて右中大脳動脈灌流域に広範
な梗塞巣認めた。
【神経学的所見】左片麻痺、左上下肢感覚鈍麻、左同名半盲。
【神経心理学的所見】入院時評価:MMS19/30。BIT 通
常検査 37/146。持続性注意低下、転導性亢進著しく課
題は 5 分も取り組めず。左半側空間無視、注意障害、脱
抑制、病識低下、構成障害を認めた。昼食直後にパジャ
マの着替えを催促するほど性急的。空腹訴え多い。ス
タッフや他患への暴言もみられた。
【経過】
入院 3 ヶ月目:食への執着に対応し、食事外で間食時間
P2-1-04
を設定。スタッフや他患への暴言はあるも、自らノート
に不満・不安を書き出すようになった。訓練は机上で 15
分可能。車椅子自走は左側の接触多い。
入院 5 ヶ月目:ノートをもとに歌詞作成を提案。意欲的
に 60 分取り組めた。行動が慎重になり、ST 室まで車椅
子自走可能。
退院時:作成楽曲で病棟ライブ実施。周囲から称賛を受
け涙していた。退院時評価(第 210 病日)MMS25/30。
BIT 通常検査 127/146。第 236 病日、屋内歩行自立にて
自宅退院。
退院後:自身の経験をもとに、皆を励ましたいと障害者
音楽サークルに所属。作成楽曲でテレビ出演もする。現
在も他施設へ出向き音楽を披露する活動を継続中。
【考察】重篤な右半球症状認め、入院初期には脱抑制から
周囲との対立が多かったが、楽曲作成という介入を通し
て社会活動への参加を果たし、社会性の向上が得られた。
症例の興味に合致した介入が QOL 向上に繋がったと考え
られた。
社会不適応を生じた頭部外傷一症例への障害認識に向けた個別アプローチ―
遂行機能と病識―
石井由起 1,3)、坂本佳代 1)、田上正茂 1,2)、浅井 亨 1)
川口市立医療センターリハビリテーション科 1)、同センター救命救急科 2)、筑波大学大学院人間総合科学研究科 3)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
高次脳機能障害及び病識低下により社会不適応を生じた
するようになった。しかし遂行面の問題は自覚ないまま
頭部外傷 1 例の障害認識に向けた個別アプローチについ
だった。遂行機能の心理教育を行い、問題点を一覧表に
て検討した。【症例】30 代男性。頭部外傷を伴う多発外
まとめ終わった受傷 15 ヶ月時には仕事上の問題点を徐々
傷で A 院入院し高次脳機能障害等のリハ実施。受傷 1 ヶ
に具体的に話すようになった。遂行機能の問題点の評価
月時 B 院転院。7 ヶ月時自宅退院し営業職復職。10 ヶ月
では、本人は現在 53 点・過去 34 点と過去の行動を問題
時手術目的で A 院再入院し妻から仕事等の困難さの訴え
ありと振り返るようになった。妻は現在 52 点・過去 15
があった。退院後の高次脳機能評価では WAIS 各 IQ100
点だった。過去の評価に本人と妻の乖離が見られた。ま
以 上。CAT と WMS-R で 軽 度 低 下。BADS は 良 好 だ が
た現在の評価では得点はほぼ同値だったが項目によって
DEX は妻と本人の評価が一部乖離。生活行動面から思考
は本人・妻の評価に乖離があり、本人の評価には過小評
の柔軟性欠如や行動計画立案不良等があり遂行機能障害
価と過大評価が混在していた。【考察】専門的な第三者
を認めた。本人は仕事のつまずきを感じているも自分に
のモニタリングが障害認識に関与するとされる(阿部、
問題はないとし病識低下があった。【方法】本人・妻・ST
2011)。ST の援助により本人・家族と共に問題点を考え
で問題点の一覧表を作成し共有を図った。その後、15 か
一覧表にまとめたことが言語的フィードバックとなり、
月時に現在(15 か月時)と過去(10 か月時)の遂行機
遂行面の障害認識を進める契機となった。遂行面の障害
能の各側面の状態を、本人と妻に 7 段階(問題あり 0 点、
認識には詳細な問診と各人に即した病識の評価法が必要
なし 7 点 : 合計 0-77 点)で評価させた。
【結果】評価結果
と考えられた。
の説明後、記憶・注意面は問題を受け入れ対応策を実践
262
P2-1-05
一般企業への就労支援を行った高次脳機能障害2例の比較検討
日 程
亘 正善、吉川文恵、木村知行
医療法人 寿人会 木村病院 リハビリテーション部門
し、復職時の注意点などを説明。外来リハビリへと移行
の整備に成功し、他方では支援に難渋した。これらの経
し試験的に復職するも、X + 4 ヶ月後、完全復職を本人希
過を比較し、支援の問題点や課題について検討したので
望し外来リハビリ終了。X + 1 年後、仕事での失敗が続き
報告する。【症例 1】20 代、女性。繊維関連の一般雇用。
対人関係も悪化したため外来リハリハビリ再開。X + 1 年
外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷(記憶障害、注
4 カ月後、ST が職場訪問し、対応策を提示するも大きな
意障害、社会的行動障害、左同名半盲)。200X 年 交通事
変化なし。X + 1 年 5 カ月後、抑うつ状態となり、家族希
故にて受傷。X + 5 年後、高次脳機能障害支援コーディ
望にて精神科を紹介。外来リハビリ終了となる。【考察】
ネーターが職場へ説明。X + 5 年 4 ヶ月~、当院にて外来
症例 1 では支援コーディネーターが迅速かつ直接的に職
リハビリ開始。視覚走査課題および記憶の代償訓練を施
場へ介入したのに対し、症例 2 では職場への直接対応が
行。X + 5 年 9 ヶ月~、精神障害者保健福祉手帳 2 級取得
遅れ、また同意が得られず、職業センターなど経過をモ
し、情緒面安定。職場の作業およびミーティング環境に
ニタリングできる関連機関の導入が困難であったことが
対して ST より指導し、徐々に改善。X + 6 年 2 ヵ月、安
原因であったと考えられた。以上より、就労支援では医
定した日常生活、就労状況が続いたことから外来リハビ
療機関から職業関連機関への紹介・導入を早期に行い、
リ終了。【症例 2】40 代、男性。一般雇用の事務職。左
途切れのない連携の必要性が改めて示唆された。
口頭演題 日目
院にて回復期リハ開始。X + 3 ヶ月後、職場の上司と面談
一般企業への就労を支援したところ、一方では就労環境
特別プログラム
【はじめに】高次脳機能障害を主症状とする 2 例に対し、
1
視床出血(言語機能低下、注意障害、記憶障害、遂行機
P2-1-06
食事介助方法統一を図り誤嚥性肺炎再燃率についての検討~アンケート調査
を行い取り組み強化を試みる~
澤岻 悠、照屋智美、與那嶺 渚、大城健太、親泊佑美
ポスター演題 日目
能障害)。200X 年、左視床出血発症。X + 1 ヶ月後、当
1
医療法人おもと会 大浜第一病院 リハビリテーション科
方法は胃瘻造設患者が多い傾向が解った。アンケート結
摂取による誤嚥性肺炎を防ぐことは重要である。今日、
果は導入し大変役になっている;86 % 導入して良かっ
急性期病棟において食事摂取時の注意点の連携を図った。
た;91 %という結果となった。また、病棟スタッフよ
そこで連携導入時期と非導入時期の誤嚥性肺炎再燃率を
り介助場面で助言をしてもらうと助かるとの意見や、ST
比較検討し、統一化の取り組み強化を目的に病棟スタッ
が記入していない細かい部分の記載の要望があり病棟ス
フへアンケート調査を実施した。【対象】平成 26 年 7 月
タッフも意識し食事介助を行なっていることが伺われた。
【考察】経口摂取の誤嚥性肺炎再燃率は先行研究が散見さ
期)に当院急性期病棟入院し ST 介入した細菌性肺炎・誤
れておらず、当院における誤嚥性再燃率がどの程度の数
嚥性肺炎の患者を対象とした。【方法】食事介助方法の注
値化か定かではない。しかし、アンケート結果から病棟
意点・とろみの粘度・一口量・姿勢を記載し病室へ掲示
スタッフの食事介助統一における意識は変化しつつある。
する取り組みを連携。導入が定着した時期に病棟スタッ
ST の早期介入と適切な評価に基づき、誤嚥リスクが少な
フへアンケート調査を実施し介助方法の統一化が図れて
い安全な経口摂取方法の統一化を図る事が非常に重要で
いるのか判定を行った。
【結果】非導入時期:肺炎再燃
あり、統一化の強化を高め誤嚥性肺炎再燃率はさらに軽
率:13 % 栄養管理方法(経口:6 名 経管:4 名)導
減し早期退院が実現すると考える。
入時期:肺炎再燃率:9.5 % 栄養管理方法(経口:3
名 経管:4 名)統一を図る事で経口摂取患者の肺炎再
263
2
日目
~ 10 月( 非 導 入 時 期) 平 成 27 年 7 月 ~ 10 月( 導 入 時
2
ポスター演題
燃率の改善を認めた。また再燃している患者の栄養摂取
事開始となる場合が多い。いずれの病期に置いても経口
口頭演題 日目
【はじめに】既往も様々な急性期病棟では 1 病日目より食
P2-1-07
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
摂食嚥下障害患者への家族指導~栄養科と連携及び協同指導~
森 裕香理 1)、宇野美恵子 1)、関 記子 1)、野邊里美 1)、杉浦彩夏 1)、橋 絵里子 1)、
青木優美 1)、長村明日美 2)、小池知治 1)
医療法人三九会 三九朗病院 リハビリテーション部 1)、医療法人三九会 三九朗病院 診療支援部 2)
【目的】当院では、栄養士と ST が嚥下調整食について話
ることで、お互いの専門性や指導してほしい内容を確認
し合い、摂食嚥下障害患者さまへは、嚥下機能に合わせ
し、統一した内容で一緒に指導することができた。また、
た食事を提供している。また、外泊前や退院前にご本人
指導の際、ご家族からの嚥下機能や栄養についての疑問
やご家族に ST が摂食嚥下状態について説明し、在宅でも
に答えやすくなった。【考察】ST と栄養士とで同時に家
誤嚥に至らないように食形態や食事方法などの指導を行
族指導が行えるようになったことで、内容の重複が避け
い、昨年の本学会でも指導資料の統一及び外泊チェック
られ、ご家族が何回も来院することの手間や、嚥下機能
シートの導入について報告した。しかし、栄養科でも食
や栄養、調理方法など食べること全般についての疑問に
べやすい食形態などについて別途食事指導を行っていた。
対しても互いに補い合いながら説明が可能となり、より
このため、指導内容の重複やご家族からの疑問点に対し
ご家族の理解が深めやすくなった。また ST、栄養士共に
て、お互いに補えずに手間がかかってしまっていた。そ
互いの情報を得ることができ、他職種の専門性の理解に
こで ST と栄養科で連携し、共に指導を行う体制を整え、
繋がった。今後はさらに PT、OT 等とも連携を図り、摂
その導入過程及び、経過について報告する。
【方法】1.ST
食嚥下障害があっても誤嚥性肺炎を起こすことなく安全
と栄養科で指導内容について内容の重複を避けるため、
に在宅で生活ができ、食事の準備に関してご家族が安心
お互いの専門性を活かした指導について相談。2. 栄養科
して、できるだけ負担もかからないような指導を行って
は新たに家族指導資料を作成。3.ST は昨年作成した指導
いく。
資料の加筆・修正。4. 出来上がった資料は ST と栄養科共
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
通の PC 上のファイルで共有。
【結果】指導内容を共有す
P2-1-08
摂食・嚥下障害に対するアプローチの現状と課題 -医師の配置に着目して-
石川裕治、池 聡、土居奈央
高知リハビリテーション学院 言語療法学科
【目的】言語聴覚士(以下 ST)による嚥下障害に対する
治療の検討・実施では C 群が多かった。VE 検査の実施で
アプローチの現状を把握し、今後の卒前教育、卒後教育
は D 群、VF 検査は C 群の実施が少なくなっていた。自
の在り方等について検討することを目的に調査を行った。
己評価では、いずれも「3」レベルで、「検査」では D 群
今回は、医師の配置に着目し報告する。【方法】高知県で
の評価が高く、「訓練」では A 群が低く、「説明」では A
勤務する ST に対し、以下の内容等についてアンケートに
群が最も高くなっていた。リハ医との連携が高い結果で
よる調査を行なった。ハード面に対しては、1.医師・歯
あったが、今後は、耳鼻科医との連携を深め、臨床のレ
科医師等の配置、2.医師・歯科医師の処方(指示)の内
ベルアップを図ることが重要な課題であると考える。
容、3.VE・VF の実施、4.外科的治療の検討や実施な
どについて調査した。また、ソフト面に対しては、検査、
評価、訓練に関して、本人・家族に対する説明に関して、
5 段階(1「十分にできている」~ 5「全くできていない」)
で自己評価を行った。【結果と今後の課題】100 名の ST
からの回答が得られた。リハ医・耳鼻科医がともに勤務
する施設に勤務する ST は、8 %(A 群)、リハ医が 37 %
(B 群)、耳鼻科医が 6 %(C 群)、リハ医・耳鼻科医とも
に勤務していないが 49 %(D 群)であった。処方ではい
ずれの群においてもお任せ処方的なものが多く、外科的
264
P2-1-09
松野加奈、仲野里香、中村圭太、山田有紀、友池理歌
医療法人 恵光会 原病院 リハビリテーション部
小幡明日佳、藤本憲正、青柳政芳、木村仁美
1
ポスター演題 日目
失語症者と病棟スタッフとのコミュニケーション行動について
口頭演題 日目
P2-2-01
ニカルパス作成を検討した。
3. 看護師・介護職に対して ST による嚥下勉強会(全 6
回)を実施した。
4. 嚥下コアスタッフ(看護師 7 名、介護職 2 名)を募り、
ST による実技指導を実施した。
5. 歯みがき自立者に対する口腔ケア評価システムを新た
に構築した。
6. 嚥下コアスタッフには嚥下勉強会前と実技指導後に、
それ以外のスタッフには嚥下勉強会前後で「自己効力感」
「職務満足度」に対するアンケートを行い、比較した。
【結果】
対象全スタッフの自己効力感・職務満足度の平均は嚥下
勉強会前後で有意に向上した。嚥下コアスタッフの自己
効力感・職務満足度はそれ以外のスタッフの平均よりも
有意に高かった。
【考察】
看護師・介護職が摂食嚥下障害に関する知識を得、主体
的に関わることで職務満足度が向上し、自己効力感の向
上に繋がることが示唆された。病棟内にコアスタッフを
設置することで、責任意識が芽生え、他スタッフへの横
断的な波及となった。
特別プログラム
【はじめに】
摂食嚥下障害治療にはチームアプローチが不可欠である。
しかし、職種によって摂食嚥下障害に対する認識が異な
ることも指摘されている。当院においても、言語聴覚士
(以下 ST)が主導的役割を担い、チームアプローチの基
本とされる「各職種が対等な関係性を持つ」チームとは
言い難い現状があった。今回、「各職種が専門性を発揮し
て治療の速やかな進行を助ける」システム作りと、同時
に、当院独自の嚥下クリニカルパス作成を目標に、摂食
嚥下障害治療を見直す取り組みを行った。その過程で看
護師・介護職の自己効力感・職務満足度が向上したので
報告する。
本報告は、取り組みと看護師・介護職の自己効力感・職
務満足度の関連を検討することを目的とした。
【対象】
回復期病棟所属の看護師 24 名 介護職 15 名
【方法】
1.ST7 名により、KJ 法を使用して問題点を抽出し、分類
した。
2.2 週間に 1 度、立ち上げメンバー(医師 1 名、看護師 2
名、ST2 名)による会議を行い、当院摂食嚥下障害クリ
日 程
摂食嚥下障害治療におけるチームアプローチの強化 第一報 ~回復期病棟
における嚥下コアスタッフ育成の試み~
1
社会医療法人 全仁会 倉敷平成病院
法における得点率の変化は、初期評価と再評価の比較か
面にしばしば遭遇する。この要因について対話者側か
ら、言語コミュニケーションすなわち言語手段やコミュ
ら明らかにする。【研究方法】< 対象 > 回復期リハビリ
ニケーションノートなどによる方法は- 4.7 %と減少し、
テーション病棟スタッフ 11 名(男 2/ 女 9)。< 材料 > コ
語用論的コミュニケーションは 11.3 %と増加した。コ
ミュニケーションの成立方法について、廣實(2008)
、
ミュニケーション方法の割合、すなわち言語と語用論的
Cummings ら(2009)を参考に、言語コミュニケーショ
コミュニケーション手段の割合は、初回評価では差がな
ンと語用論的コミュニケーション2領域からなるアンケー
かったが、再評価では差を認め、病棟スタッフは語用論
ト(20 項目 5 件法)を作成した。このアンケートは、
「表
的な方法を用いることが増えていた。コミュニケーショ
情の変化で訴えが推測出来ますか?」など、失語症者との
ン負担感について、COM-B の総得点は差があり、負担
コミュニケーションの成立方法について調査した。得点が
の軽減がみられた(p = 0.03)。【考察】スタッフは言語
高いほどコミュニケーションが高いとした。<手続き > 対
機能的な支援方法が難しいと判断した場合、語用論的方
象者であるスタッフにアンケートを行った。初回評価時
法、すなわち非言語な方法などでコミュニケーションを
とその 2 ヶ月後に再評価を行った。失語症者は、他の重
行っていた。コミュニケーションノートなどに加え、語
篤な認知障害がない 3 例。< 分析方法 > アンケート結果
用論的な支援が有効であることが示唆された。
の得点率を従属変数とし、初回と再評価の結果を分析し
265
2
2
日目
再評価の結果を比較した。【結果】コミュニケーション方
症者に対してもコミュニケーションが成立している場
ポスター演題
た。また同様に介護負担尺度(COM-B)を行い、初回と
ついて【目的】病棟スタッフは、言語機能が不良な失語
口頭演題 日目
失語症者と病棟スタッフとのコミュニケーション行動に
P2-2-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
失語症会話パートナー養成と自主グループ支援-失語症のある人を地域で支
えるという視点から
安保直子 1)、小林久子 2)
世田谷区立総合福祉センター 成人担当 1)、首都医校 言語聴覚学科 2)
【はじめに】わが国では 2000 年頃より「失語症会話パー
と、会話パートナー 33 名の回答を得た。当事者の年齢は
トナー(以下会話パートナー)
」の養成が始まった。現
約 70% が 65 歳以上で、90% が発症から 5 年以上経過、
在、一部の自治体では独自事業化しており、世田谷区で
80% が付き添いなしで参加し、40% の人は他に公的サー
も 2005 年から養成を始め、2015 年度までの修了者数
ビスを利用していなかった。会話パートナーは 60% が 5
は 112 名となった。養成の成果として、自主グループが
年以上の経験があり、80% 近くの人が会場まで 40 分以
増え、失語症のある人の社会参加の場が拡大している。
内で行ける距離に居住していた。両者の感想からは、有
今回、自主グループに参加している失語症当事者(以下
意義な交流や会話の場になっていることがうかがえた。
当事者)と会話パートナーの実態を調査し、地域で会話
【考察】当事者の 70% 以上が発症から 10 年以上経過して
パートナーを養成する意義を考察したので報告する。【方
おり、グループの存在は、維持期の地域生活を支える役
法】会話パートナーが支援している自主グループ 10 団体
割を果たしているといえる。また ST が直接介入しなくて
に対し、質問紙によるアンケート調査を実施した。当事
も満足感は得られており、Simons-Mackie ら(2010)
者については 1)年齢 2)発症経過年 3)参加時の付き添
は「訓練された会話パートナーとのコミュニケーション
いの有無 4)参加グループ数 5)公的サービス利用の有
は、慢性期の失語症の人のコミュニケーション活動や参
無 6)参加しての感想や要望など、会話パートナーには
加を改善するのに効果的である」と述べているが、今回
1)経験年数 2)活動頻度 3)会場までの時間 4)活動上
の調査からも、会話パートナーが地域における共助とし
の感想や課題などについて調査した。実施期間は 2015
ての役割を担えることが示唆された。
年 12 月。【結果】当事者 37 名(男性 24 名、女性 13 名)
P2-2-03
脳神経外科病棟に勤務する看護師の失語症看護に関する意識と失語症者に対
するコミュニケーションにおける配慮の実践状況~当院におけるアンケート
調査の結果から~
河原 史、高橋千尋、大庭優香、森田定雄
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
東京医科歯科大学 医学部附属病院 リハビリテーション部
【はじめに】看護師は失語症者とのコミュニケーションを
みにせず後で事実確認」
(13 名)
、
「多弁な患者には、会
重要と考えているが、その得意度は他の援助に比べて低
話を一旦止め内容確認」(9 名)等の項目は、あまり実施
いといわれている。今回、看護師の失語症看護に関する
されていなかった。また、不適切な援助である「五十音
意識と失語症看護技術の実践状況について、当院脳神経
表の使用」(8 名)と「大声で話しかけている」(12 名)
外科病棟の現状を調査したので報告する。【対象と方法】
は、頻度は低いながらも実施されていた。
【考察】看護
当院脳神経外科病棟全看護師 28 名に無記名式でアンケー
師は、失語症者の看護にはコミュニケーションへの特別
ト調査を行った。内容は、失語症に関する意識、コミュ
な配慮が必要だと認識していたが、失語症看護に困難感
ニケーション時の配慮の実践状況などについて、「そう
や自信の無さを抱えていた。失語症者に対するコミュニ
だ」~「そうではない」の 5 段階評定とした。【結果】回
ケーション配慮の実践においては、全員が意識的に実施
収 率 75%(21 名)、 有 効 回 答 率 100%、 平 均 年 齢 28.8
していた項目もあれば、あまり実施されていない援助項
歳、脳外科勤務歴 1 ~ 10 年目。全員が「失語症患者の
目があったり、不適切な援助を実施していたりする現状
看護にはコミュニケーションへの特別な配慮が必要だ」
が明らかになった。今後は、言語聴覚士から看護師への
と回答したが、18 名が「失語症看護は難しい」と感じ、
さらなる説明や指導、勉強会の開催や簡便なスクリーニ
「自信をもって失語症看護を行える」はわずか 1 名のみで
ングの助言などにつなげていきたいと考える。
あった。コミュニケーション配慮の実践状況は、「ゆっく
りした口調で話しかける」、「短い文や単語で話しかける」
等の 6 項目は全員が実施していた。一方で、「発話を鵜呑
266
P2-2-04
笹岡 岳 1)、石塚君予 2)、田中義之 3)、服巻陽子 4)
ツカザキ病院 リハビリテーション科 1)、関西労災病院 中央リハビリテーション部 2)、
神戸総合医療専門学校 言語聴覚士科 3)、荻原みさき病院 リハビリテーション部 4)
メリットは、患者紹介ができる、患者・家族の生活イ
が、参加は昨今乏しい現状である。今回、失語症当事者
メージができる、自己研鑽等であった。広報活動は、適
会に対する ST の関わりについて、会員対象にアンケート
当(42 %)、不足(19 %)であり、県下の当事者会の一
調査を行ったので報告する。【方法】アンケート実施期
覧リスト作成、フェイスブックやラインでの告知要望が
間:2015 年 11 月 20 日 ~ 12 月 28 日。 対 象: 本 研 究 の
あった。【まとめ】アンケート結果から、参加希望の会員
主旨に同意が得られた県士会会員に、会報にてアンケー
も一定数いるが、時間余裕、勤務都合、情報不足等で参
トを配布し、郵送、メール、fax で回収した。【結果】会
加を躊躇している現状が浮かび上がった。県士会では、
員 525 名のうち、144 名(回収率 27 %)から回答が得
1. 当事者会、会員の交流機会を促す、2. ボランティア募
られた。参加状況について、当事者会は 0 回が 8 割を超
集の方法を検討する、3. 失語症友の会以外の当事者会に
える反面、勉強会の参加は 2 回以上が 7 割を超えた。「学
ついても関わり方を見直す、ことの必要性を感じた。今
生の時に参加していた」と回答は 57 名(40 %)であっ
後、ST は地域包括での積極的な関わりを求められ、失語
た。今後の参加希望は、「はい」(22 %)、「機会があれ
症当事者会はまさに地域包括活動の一端を担っている。
ば」
(56 %) で あ っ た。 当 事 者 会 情 報 は、 県 士 会 か ら
県士会として、ST と当事者会との関わりを見直してい
入手(86 名)が多かった。参加を阻害する因子は、時
く。
口頭演題 日目
報といった後方支援は可能という意見があった。参加
今年予定している。ST の積極的な支援が望まれている
特別プログラム
【はじめに】兵庫県では、失語症友の会全国大会開催を
日 程
兵庫県内の失語症友の会活動状況実態調査 第1報 ~兵庫県言語聴覚士会
アンケートから見えてくるもの~
1
間 的 余 裕(89 名)、 勤 務 都 合(63 名) と 続 い た。 短 時
P2-2-05
兵庫県内の失語症当事者会活動状況実態調査第2報~当事者・学生ボラン
ティア視点からの検討~
服巻陽子 1)、石塚君予 2)、田中義之 3)、笹岡 岳 4)
【はじめに】兵庫県言語聴覚士会では、公益事業委員会に
の中で今年度のボランティア参加率は 25 %。今後の参加
て活動のサポートを行っている。現在、兵庫県には、失
希望は「はい」25 %、
「機会があれば」62 %であった。
語症当事者会 8 団体と家族会 1 団体あり、年に 1 回交流会
参加メリットは、机上では得られない経験・知識が得ら
を開催している。それぞれの活動や交流会には、ST や ST
れるという意見が大多数であったが、ボランティア活動
養成校の学生のボランティアが必須となっている。今回、
阻害因子として、時間の拘束、金銭的負担があげられた。
【考察】言語障害者が地域で生活する中で、当事者会は社
いてアンケート形式で調査し、今後県士会が行う、当事
会参加のきっかけとなる。しかし言語障害や参加者の高
者会のニードに合わせたサポート体制について検討した。
齢化により、会の運営にはボランティアが不可欠となる。
県士会としては、1. 当事者会の紹介・会員募集の広報
月 28 日。対象:本研究の主旨に同意が得られた当事者会
2. ボランティアの参加募集 3. ボランティア負担軽減と継
と県下 ST 養成校の学生。【結果】当事者会 8 団体中 5 団体
続したサポート体制、を検討する必要がある。今後、地
から回答(回収率 62 %)。平均年齢は 60 歳代~ 70 歳代。
域包括活動として当事者会の活動サポートの必要性を学
どの当事者会も参加者募集を行っていた。募集方法は、
生、ST、一般のボランティアにも広報し、ST の職能を生
パンフレットや口コミを利用するものの、新規会員が集
かす方法について更なる検討を行なう。
まりにくく会を広報したいという声が多数あった。また、
ボランティアに関しては、ST や学生の参加を求める会が
ほとんどであった。一方、学生からは 256 名の回答。そ
267
2
日目
【方法】アンケート実施期間:2015 年 11 月 20 日~ 12
2
ポスター演題
各当事者会の活動の現状と、ボランティアの関わりにつ
1
口頭演題 日目
荻原みさき病院 リハビリテーション部 1)、関西労災病院 中央リハビリテーション部 2)、
神戸総合医療専門学校 言語聴覚士科 3)、ツカザキ病院 リハビリテーション科 4)
ポスター演題 日目
間、近郊、保育付きなら直接参加が可能、患者紹介、広
P2-2-06
健常者におけるTrail Making Testの認知特性に関する検討
日 程
官澤 紗 1)、金子真人 2)、香月 靜 3)、佐野剛雅 4)、若杉麻美 5)
西湘病院 リハビリテーション科 1)、国士舘大学文学部教育学科 2)、足立区障がい福祉センター あしすと 3)、
総合高津中央病院リハビリテーション部 4)、杉並リハビリテーション病院 リハビリテーション科 5)
【はじめに】TMT-A の検査特性として視空間識別や注意
特別プログラム
口頭演題 日目
1
課題のお手つき数によってのみ予測されることがわかっ
に関わる機能を反映することが知られている(Lezak、
た(p<0.02)。しかし、TMT-B の施行時間は他のどの
1995)。また、健常高齢群では TMT-A が視空間認知機
認知課題によっても予測されなかった。【考察】初発反
能 に、TMT-B が 遂 行 機 能 に 関 わ る 報 告(Hashimoto
応時間や正答に至るまでのお手つき数を認知指標とする
ら、2006; 広 田 ら、2008) が あ る。 ま た、TMT の 施
線画同定課題(横井ら、2014)は、視覚性注意障害の
行には数字・文字の認知、精神活動の柔軟性、視覚性探
検出に有効であるとされる。Hashimoto らが述べたよう
査、運動能力など多くの機能が必要(豊倉ら、1998)と
に TMT-A の施行には視空間認知機能、特に視覚性注意
もされ、TMT は様々な認知機能課題との関連がうかがえ
機能を反映していることが考えられた。線画同定課題は
る。今回、TMT の検査施行に必要な認知特性をより明確
ceiling effect が現われにくいとされ、健常者でも鋭敏な
にすることを目的に、50 代までの健常者に TMT と種々
視覚性注意の検出が可能であったと考えられる。しかし、
の視覚性認知課題を施行し関連を検討した。【方法】20
TMT-B では視覚性注意に加え、思考の変換機能や作業情
歳代から 50 歳代の健常者 44 名を対象に TMT、線画同
報把持などの作動記憶に負荷がかかるとされる(大槻ら、
定課題、CAT の下位項目より視覚性スパン、視覚性抹消
2006)。健常者においても本研究結果で示されたように
課題を実施し、検討を行なった。
【結果】因子分析の結
TMT-B は多面的な認知特性をもった課題であることが考
果、CAT3、線画同定課題のお手つき数、TS - B の 3 つ
えられた。
の因子が抽出された。抽出された 3 因子を基に重回帰分
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
析を行なった。TMT-A の指標である施行時間は線画同定
P2-2-07
転倒歴4のある高次脳機能障害者におけるMini-Mental-Examinatio
(MMSE)の検討
伊藤美幸 1,2)、池澤真紀 1)、伊藤有紀 1)、千葉康弘 1)、石光暁子 1)、河上あゆみ 1)、
青山こずえ 2)、大塚友吉 1)
独立行政法人国立病院機構東埼玉病院 リハビリテーション科 1)、独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院 看護部 2)
【はじめに】転倒事故の発生要因として多くの因子がある
いと考えられた。また、転倒の要因として、見当識障害、
が、先行研究により、高次脳機能障害もその一つである
記憶障害、認知機能の低下、空間認知の問題、構成力低
ことが明らかとなっている。Mini-Mental State(以後、
下が示唆された。
MMSE)は、一般的に高次脳機能障害のスクリーニング
検査として広く用いられている。本研究では、MMSE の
検査結果より、転倒患者の高次脳機能障害の特徴を明ら
かにすることを目的に実施した。【対象】平成 25 年 4 月
1 日~平成 27 年 3 月 31 日の間、当院回復期病棟に入院
し、何らかの高次脳機能障害を有し、言語聴覚療法を受
けていた患者 146 名。
【方法】患者を転倒群、非転倒群の
2 群に分け、MMSE の合計点と各下位項目の得点の比較、
検討を行った。【結果】MMSE 合計点は転倒者が 20.15
± 6.26 点、非転倒者は 23.72 ± 5.03 点であった。また、
転倒者の見当識(時)
、3 単語遅延再生、呼称、文作成、
図形模写の下位項目得点は有位に低下していた【考察】
MMSE の低得点者は、高得点者よりも転倒のリスクは高
268
P2-2-08
能代育江 1)、江村俊平 2)、高橋淳子 2)、邨松美都樹 2)、香月 靜 3)、藤永直美 4)、吉野眞理子 5)
医療法人社団永生会 永生病院 リハビリテーション部 1)、医療法人社団永生会 永生クリニック 2)、
足立区障がい福祉センターあしすと 社会リハビリテーション室 3)、
東京都リハビリテーション病院 リハビリテーション部 4)、筑波大学人間系 5)
オリー・アプローチ(木下 ,2003)に準拠し「高次脳機
能障害を有する self-awareness の低下した人との生活に
適応するための意識と行動の変容プロセス」を分析テー
リハビリテーションの必要性は近年注目を集め、当事者
マとして分析を行った。【結果】分析の結果、2 つのカテ
への支援のみならず家族への支援の重要性も指摘されて
ゴリーの相互作用を中核として、意識と行動を変容させ
いる。しかし家族がどのように self-awareness の低下し
ながら生活に適応していく過程が明らかとなった。その
た人を理解し対応しているかという実態や、どのような
プロセスは家族であるがゆえに持つ感情と当事者に合わ
プロセスを経て理解や対応を変容させていくかというこ
せた生活を送ることを土台として、生活の中の問題に諦
とは充分に解明されていない。【目的】本研究の目的は、
めずに向き合い続けていく「未来への模索」と、生活の
家族支援の視点を増やし、有効な self-awareness のリ
中で起こる問題に対して別の側面から見直せるようにな
ハビリテーション介入を知る手がかりを得るために、高
る「現在を肯定」することの 2 つの側面から構成されて
次脳機能障害を有する self-awareness の低下した人を
いることがうかがえた。
【考察】
「未来への模索」は長期
主介護者がどのように理解し対応しているかを明らかに
間におよぶものであり、この時期の家族への支援を行う
することである。【方法】高次脳機能障害を有する self-
こと、また「現在を肯定」していく過程を後押ししてい
awareness の低下した人の主介護者 11 名へ半構造化面
くことの重要性が示唆された。
P2-2-09
当院における脳卒中患者の高次脳機能についての検討
濱中眞由、泉谷聡子、宮 琴柱、稲垣梨那、大出幸子、高木正仁、黒田栄史
聖路加国際病院 リハビリテーション科
た。A 群(n = 32)/ B 群(n = 34)の 2 群間で χ2 検定、
を及ぼすことも多く、患者の社会復帰への妨げになると
t 検定にて年齢(中央値 66 歳 31 ~ 90)、性別(男性 43
報告されている。【目的】当院における入院脳卒中患者
名女性 23 名)
、介入時認知 FIM(中央値 23 点 5 ~ 35)
、
の高次脳機能障害の現状を把握し、退院時の高次脳機能
退院時認知 FIM(中央値 27 点 7 ~ 35)、記憶障害の有無
に 関 す る 因 子 を 明 ら か に す る。【 対 象】2015 年 3 月 ~
(75.8 %)で有意差を認めた。更にロジスティック回帰
分析では年齢、性別、記憶障害の有無で有意差を認めた。
【考察】年齢、性別に加え高次脳機能障害の中で記憶障害
ある患者は除外)。【方法】診療記録より患者の属性(年
の有無が退院時の HDS-R の成績に影響を及ぼすことが示
齢、性別、介入までの期間、介入期間、失語、失行、失
唆された。HDS-R は高次脳機能を簡易に評価できる方法
認、記憶障害、注意障害、半側空間無視、情動の有無)、
であり、高次脳機能の障害の重症度を概ね把握できるた
FIM、HDS-R の点数に関し てデ ータ収集を行った。ま
め、今回の結果から高齢であり男性で記憶障害を伴って
た、HDS-R が実施可能で失語症を認めなかった症例を
いる場合は積極的な高次脳機能のリハビリの介入が必要
退院時における HDS-R の点数が 25 点以上の患者(以下
と言える。また、記憶機能の回復過程を評価しその改善
A 群)と 25 点未満の患者(以下 B 群)の 2 群に分け、χ2
検定、t 検定、ロジスティック回帰分析を行い比較した。
【結果】全体の障害の内訳は失語症 35 %、高次脳機能障
により予後を予測することが可能である。今後は HDS-R
の下位項目の点数等にも着目し、訓練に関する項目や他
の高次脳機能評価との関連性を検討する必要がある。
害 65 %(注意 37 %記憶 24 %失行 2 %行動 2 %)であっ
269
2
日目
障害を認めた 18 歳以上の症例とした(認知症の既往の
2
ポスター演題
12 月脳卒中を発症し、言語聴覚療法を実施し高次脳機能
1
口頭演題 日目
【背景】脳卒中後の高次脳機能障害は ADL の回復に影響
1
ポスター演題 日目
接調査を実施し、調査結果を修正版グラウンデッド・セ
口頭演題 日目
神面との能力における重要な変化に気づく能力をさす
(Prigatano,1991)とされる。self-awareness に対する
特別プログラム
【 は じ め に】self-awareness と は、 患 者 が 行 動 面 と 精
日 程
高次脳機能障害を有する人のself-awarenessの問題:主介護者への面接調
査に基づく修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析
P2-2-10
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
難易度設定に向けた工学的操作を加えた聴覚性注意課題の検討 ―NIRSを
用いた検討―
松尾康弘 1,2)、吉田秀樹 1)
鹿児島大学大学院 理工学研究科 1)、鹿児島医療技術専門学校 言語聴覚療法学科 2)
【目的】注意障害に対する認知リハビリテーションは、
り、次いで位相変化なし、P14、WN の順であった。位
Modified Attention process training が存在しており、
相変化なしの ADT 的中率は 99.1%、P9 は 78.0%、P14
多くの臨床現場で実践されている。机上で実施すること
は 45.1% であり、それぞれ有意差を認めた。難易度設定
を踏まえると、簡便で難易度設定が容易な視覚性注意課
の難しい聴覚性注意課題においては、WN を付加させる
題が主となっている現状がある。そこで本研究は、聴覚
より、音声そのものを歪ませた方が、前頭葉の効果的な
性注意課題における音声波形を、工学的な操作をいくつ
脳賦活が期待できることが示唆された。しかしながら、
か加え、その際の成績および NIRS にて前頭葉の脳血流動
音声そのものを歪ませるには特殊なシステムを組む必要
態を観察することにより、今後の聴覚性課題における難
があるため、より簡便に難易度設定ができる聴覚性注意
易度設定の一助にすることを目的とした。【方法】対象者
課題を考えていく必要がある。
は正常成人 10 名(全 20 歳)とした。方法は聴覚性検出
課題(ADT)および ADT の音声波形における極値を位相
方向に± 9%(P9)、± 14%(P14)した音声を聴取した
際の前頭葉の oxy-Hb 変化を NIRS にて観察し、それぞれ
の ADT 的中率を求めた。さらに ADT に白色雑音(WN)
を加えた音声では的中率が 80% になるように音圧を設定
し、その際の前頭葉における oxy-Hb を観察した。【結果
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
および考察】oxy-Hb の上昇が最も強かったのは P9 であ
P2-3-01
記憶障害を呈した入院患者に対するメモリーノート・グループ訓練の取り組み
山本小緒里、高橋誠貴、津田遼子、井上澄香、上野真貴子、神代裕里恵、高橋純子、小池 学
千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部 言語聴覚科
【はじめに】当センターでは ST 科が中心となり、記憶障
参加者間の輪番制とした。実績 総実施回数 285 回、延べ
害を呈する入院患者へのリハビリテーションの一環とし
参加人数 873 名。平均参加期間は 57.8(± 32.4)日間、
て、記憶の代償手段(メモリーノート、以下 MN)の訓
平 均 参 加 回 数 は 第 1 期 が 30.8( ± 12.9) 回、 第 2 期 が
練を実施している。MN 訓練症例に対し病識改善を目的
22.4(± 13.8)回。
【評価方法】第 2 期の参加者に対し
としたグループ訓練を 2012 年から開始した。その概要
参加前後に「日常生活記憶チェックリスト」を用いて自
と結果について報告をする。【概要】2012 年 11 月より
己評価を実施、病識の変化を調べた。MN 使用自立度は
週 5 回 20 分( 第 1 期)、2014 年 度 か ら は 週 3 回 20 分
当科作成の評価尺度に基づいて携帯・参照・記入各々に
(第 2 期)で開始した。1 回の患者参加人数は 2 ~ 5 名、
つき全介助~自立まで評価をした。また「日本版 POMS
患者 1 名につき ST 1 名が参加した。対象 MN 訓練中の
短縮版」を用いて参加前後の気分・感情の変化を調べた。
記憶障害を呈する入院患者。現在までの参加者の実人数
【結果】二つの検査結果からは参加前後で明らかな変化を
は 34 名(男 28 名・女 6 名)、平均年齢は 49.9(± 13.6)
認めなかった。MN 使用自立度は、参照と記入で向上し
歳。 原 疾 患 は 脳 出 血・ 頭 部 外 傷 各 9 名、SAH 8 名、 脳
た症例を認めた。
【考察】グループ訓練における ST の介
梗塞 4 名、脳腫瘍 2 名、脳炎・低酸素脳症各 1 名。内容
入、および参加者が他者の行動を観察することによって、
1)MN を参照し、日付・献立・訓練予定や実施内容を発
MN の自発的な参照・記入行動が増加したと考えられる。
表、2)テーマを決めた会話、3)グループ訓練の記録記
記憶障害者が病識変化を自己評価するには限界があるた
入。ST は MN を使う状況を設定し、参加者の自発性を尊
め、今後評価方法の検討が必要である。
重するように配慮した。また状況に応じて司会進行役を
270
P2-3-02
パーキンソン病の表情認知能力とそのメカニズムについて -fNIRS研究-
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 1)、
福井総合病院リハビリテーション課言語聴覚療法室 2)、福井総合病院リハビリテーション科 3)、
福井県高次脳機能障害支援センター 4)、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 5)
から多元配置分散分析および事後検定(p<.05)を行っ
体の機能不全が考えられている(小早川,2009)
。これ
た。【結果】課題正答率では、恐怖(p<.01)および幸
は扁桃体と同時に活性化するとされるミラーニューロン
福(p<.05)で PD 群に低下を認めた。条件別の ES では
(MN)システム(Iacoboni, 2003)の不全も意味して
中性で PD 群に有意な低下を認めた(p<.05)。部位別の
おり、PD の自己の情動表出および他者の情動認知の低
ES では左右下前頭葉で PD 群に有意な低下を認めた(左:
下は MN システムも関与しているのではないかと考えら
p<.05 右:p<.01)。さらに PD 群内で右下前頭葉に有
れる。そこで今回、表情認知と MN システムに関与する
意な低下を認めた(p<.01)。【考察】今回、条件別の課
皮質領域の活動を近赤外分光装置(fNIRS)で測定して、
題正答率と ES に相反する結果を得た。これは PD 群の表
PD の表情認知機能について検討した。【方法】対象は PD
情認知と大脳皮質活動の関係を示すものである。さらに、
群 10 名(Yahr2 ~ 3)および健常群 9 名とした。機器は
PD 群の下前頭葉の活動低下は、MN システムが扁桃体の
fNIRS(島津製作所 SMARTNIRS)を使用し、左右前頭
機能不全の影響を受けた結果と考えられ、PD の表情認知
葉および側頭葉を覆う計 43ch を計測した。課題は表情
の低下には自身の表情変化に関わる運動レパートリーの
判断課題(3 条件:恐怖、幸福、中性)を安静 15 秒-課
低下(仮面様顔貌)も関与しているのではないかと推測
題 30 秒-安静 15 秒を 1 セットとし、各条件 3 セット実
する。
口頭演題 日目
と左右上側頭葉の oxyHb 量の効果量(Effect Size:ES)
認識が困難であり(Kan et al, 2002)、原因として扁桃
特別プログラム
【はじめに】パーキンソン病(PD)はネガティブ表情の
日 程
河村民平 1,4,5)、高橋宣弘 1,4)、山口琴音 2)、林 広美 3)、小林康孝 3,4)
1
施した。また、課題の正答率も算出した。【解析】課題正
P2-3-03
脳出血後に右側の触覚性無視が長期間残存した一例
小岩祐二
ポスター演題 日目
答率の群間比較(M-W U 検定:p<.05)、左右下前頭葉
1
医療法人社団 総生会 麻生総合病院
けられない。歩行中に右上肢が壁にぶつかっても気づか
れている。また、一側の触覚性無視は触覚の残存が前提
ない等を認めた。退院後は秘書を付けて現職復帰。通勤
となる為単独で着目されることや報告が少ない。本症例
では駅の階段で足を踏み外しそうになること、電車で他
は右半側空間無視を認め、その後も右側触覚性無視の残
者との接触に気付かずトラブルになりかけた為電車通勤
存を認めたため経過を報告する。[画像所見]MRI FLAIR
を怖がるようになった。発症から半年後評価では MMSE、
画像では左頭頂葉深部白質に高信号域を認める。[症例]
線分 2 等分検査、WAIS-III で改善を認めた。生活場面で
50 歳代男性、右利き。夕方飲酒後に右上下肢の動かし
は両手に物を持っている時に混乱する。パソコン入力時
難さあり。壁にぶつかりながら自力で帰宅するものの症
に 2 つのボタンを押しても気付かない等の訴えが聞かれ
状改善みられず救急搬送、脳出血の診断で入院加療とな
た。発症から 11 ヶ月後テーブルの茶碗をひっくり返す
る。[経過]発症翌日より介入。著明な麻痺・感覚低下は
ことは少なくなり、目に入れば気付くようになった。[結
認めない。対面法では明らかな視野欠損は認めない。会
論]本症において長期間障害が残存していることが活動
話能力評価では発話 6 聴覚的理解 7。ゲルストマン症候
域拡大に伴って明らかになった。このことから右半側触
群・ 右 半 側 空 間 無 視・ 構 成 障 害 あ り。MMSE:19/30
覚性無視の症状は必ずしも短期間に限られないことが示
点。WAIS-III IQ:91 VIQ:104 PIQ:69 VC:102 PO:87
唆された。
WM:105 PS:63、 線 分 2 等 分 検 査: 真 の 中 点 か ら 左 に
271
2
2
日目
覚に感覚消去現象を認めた。ADL 場面では茶碗の蓋を開
比較的軽症で早期に消失する(石合、2009)と考えら
ポスター演題
16mm ずれる。両側同時刺激にて右側の視覚・触覚・聴
クが左右の視空間に注意を向けるため、左側と比べると
口頭演題 日目
[はじめに]右半側空間無視は右半球の神経ネットワー
P2-3-04
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
小脳病変における高次脳機能障害の検討:当院症例と文献例との比較から
若杉麻美 1)、金子真人 2)、香月 靜 3)、官澤 紗 4)、佐野剛雅 5)
医療法人社団 瑞心会 杉並リハビリテーション病院 リハビリテーション科 1)、国士舘大学 文学部 教育学科 2)、
足立区 障がい福祉センター あしすと 3)、西湘病院 リハビリテーション部 4)、
総合高津中央病院 リハビリテーション部 5)
【 は じ め に】Schmahmann ら(1998) は、 小 脳 病 変
意障害・遂行機能障害・情動障害等の前頭葉症状が特徴
の 20 例に観察された遂行機能・空間認知・言語・情動
的であった。当院の軽度例では注意障害・遂行機能障害
の 障 害 と い っ た 特 徴 的 な 症 状 を cerebellar cognitive
が残存したが、記憶障害例は軽快し工藤ら(2005)
、出
affective syndrome( 以 下、CCAS) と し て 報 告 し た。
口ら(2008)、大沢ら(2008)の報告と一致した。また
国 内 で も、CCAS と し て 報 告 さ れ た 文 献 が 散 見 さ れ る
言語障害例も福永ら(2011)の報告例同様に軽快した。
(田中ら ,2006)。今回、CCAS と考えられる症例を複数
当院例・文献例共に言語障害例は右小脳半球に、視覚認
例経験したので、文献例と比較し、小脳と高次脳機能の
知障害や構成障害は左小脳半球に病変を有した。しかし、
関連を検討した。【方法】当院へ入院した小脳病変患者
田中ら(2006)の報告例と同様に、発症当初から CCAS
7 例に対し、高次脳機能障害の鑑別に種々の神経心理学
と認識可能な例は少なかった。【考察】Schmahmann ら
的検査を実施。文献例 8 例と比較した。【結果】当院 7 例
の報告した CCAS の症状で、前頭葉症状は当院例と一致
の病変部位は、左小脳半球群 4 例、右小脳半球群 3 例で
した事から小脳と前頭葉機能の関連がうかがえた。発症
あった。このうち 5 例に何らかの高次脳機能障害を認め
当初より小脳病変による高次脳機能障害の可能性を認識
た。注意障害・遂行機能障害 3 例、情動障害 2 例に認め
する事は、早期対応により症状が改善される可能性(工
症状は退院時まで残存した。また記憶障害、言語障害、
藤ら ,2005)があり、予後に影響する可能性が考えられ
構成障害、視覚認知障害を各 1 例に認めたが退院時には
る。今後、前頭葉機能との関わりについて、国内外の文
軽快した。当院例に認めた高次脳機能障害は、田中ら
献及び自験例での思索を深める必要があろう。
(2008)、手塚ら(2010)、伊藤ら(2011)と同様に注
P2-3-05
右半球を中心とした多発性梗塞により吃音症状が増悪した1症例
谷 哲夫
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
【目的】右半球損傷後に吃音が増悪した症例を経験した。
家族によると病前は電話で話す際に吃音が生じたが、そ
も軽症な言語モダリティーであった復唱を中心に治療を
20 日間実施したが、家庭事情により急遽退院となった。
れ以外ではほとんど目立たない程度であった。右半球損
【考察】残念ながら 30 歳代に生じた脳梗塞、および吃音
傷と吃音の増悪の関係について検討した。【症例】77 歳、
症状の詳細は不明で、本人、奥様の記憶からは専門的な
右利き男性。30 歳代で左半球を中心とするラクナ梗塞発
分析は困難であった。しかし、再発直前の吃音の状態に
症。吃音を発症したが当時の詳細は不明。19XX 年 6 月、
ついては本人、奥様ともに電話の際に生じる程度でほぼ
意識レベル低下により急性期病院へ搬送。右中大脳動脈
治癒していたと述べていた。したがって本例は、30 歳代
領域やその他の部位の多発性梗塞と診断された。左片麻
の左半球の脳梗塞により吃音を発症し、長い年月をかけ
痺。吃音の増悪を認め、回復期病院に転院後、集中的に
てほぼ治癒していた状態であったところ、右半球を中心
言語治療実施。WAB 失語症検査にて失語症は否定。顔面
とする梗塞により吃音が増悪した症例であると判断して
麻痺は観察されず構音は明瞭。口腔器官運動検査では正
よいと考えられる。吃音と右半球との関係については諸
常な速度と運動範囲を保っていた。吃音症状は語頭音や、
説あるが、本例の経過は神経原性吃音の改善あるいは抑
語の一部の繰り返しが主症状。随伴症状は観察されな
制に右半球が関わっている可能性を示唆している。
かった。吃音に対する自覚あり。発症 37 病日に吃音検査
実施。生起率は呼称課題が最も高く(60 %)、ついで漫
画説明(37.7 %)、自由会話(26.2 %)であった。吃音
発声位置は語頭が 95 %であった。【治療プログラム】最
272
P2-3-06
頸部ガス壊疽後に嚥下障害を来たした一症例
日本赤十字社 伊勢赤十字病院 医療技術部 リハビリテーション科 1)、
日本赤十字社 伊勢赤十字病院 頭頚部・耳鼻咽喉科 2)
なり、前舌保持嚥下訓練を追加した。頚部前屈を併用し
であり、嚥下障害が長期化するという報告がある。頚部
空嚥下では 3 ~ 4/5 回の嚥下が可能となった。165 病日
ガス壊疽後に嚥下障害を来たした症例を経験したので報
に舌拳上訓練や頭部拳上訓練の負荷を増やした。176 病
告する。
【症例】82 歳男性、不穏行動、発熱、咽頭痛を
日、VF にて舌骨拳上・喉頭拳上は依然不良だったが、極
主訴に当院入院、ガス壊疽、壊死性筋膜炎と診断された。
少量のとろみやプリンは嚥下可能であった。経口摂取の
発症翌日、鎖骨窩疎性部廓清、酸素投与開始する。37 病
希望が強く訓練のモチベーション維持のため経口摂取訓
日の嚥下評価は RSST0 回 /30 秒、MWST1 点、FT3 点、嚥
練を開始。数口のゼリー摂取訓練と氷なめ訓練を行った。
下反射惹起遅延があり喉頭拳上が不十分、ムセや咽頭残留
訓練終了時は湿性嗄声あるも 5 口程度経口摂取が可能と
が著明で経口摂取は困難だった。42病日、全身状態の改
な っ た。RSST4 回 /30 秒、MWST3 点、FT3 点 で あ っ
善がみられず高圧酸素療法を目的に A 病院に転院、病巣廓
た。193 病日に転院。【考察】本例の嚥下障害は重度で、
清、多数回植皮後、124病日、当院に再転院し125病日
間接的訓練開始から直接的訓練開始まで 2 ヵ月かかった。
に嚥下訓練を開始。
【経過】125 病日の評価は RSST1 回
過去の報告を参照しても嚥下障害が重度で訓練期間が長
/30 秒、MWST3 点、FT3 点。会話はスピーチカニュー
期に及ぶものが多い。間接的訓練のみの期間も長い為、
レにて可能。VF ではゼリー、とろみにて誤嚥著明、食道
モチベーション維持と早期の直接的訓練につなげる工夫
入口部開大不良であった。開口訓練、舌突出訓練、アイ
が必要と感じた。
P2-3-07
左被殻出血後、経口摂取困難となった症例~立位による摂食嚥下訓練が有効
であった一例~
1
ポスター演題 日目
スマッサージ、空嚥下を開始した。138 病日に頭部拳上
口頭演題 日目
訓練を追加、150 病日頃から嚥下反射が惹起されやすく
告は少ない。頚部ガス壊疽は致命的になりうる重篤疾患
特別プログラム
【はじめに】嚥下障害のうち頚部ガス壊疽による症例の報
日 程
中西梨予 1)、松山由紀子 1)、池下佳宏 1)、福家智仁 2)
1
今西久実 1)、竹田誠介 2)、山本純子 1)
医療法人 鴻池会 秋津鴻池病院 1)、医療法人 鴻池会 鴻池荘 訪問リハビリテーション 2)
自力摂取。水分は胃瘻対応であるため、藤島の嚥下 Gr は
する。
【症例紹介】80 歳代女性。左被殻出血を発症、他
6。座位姿勢は頭頸部の過剰な前屈や姿勢の崩れが軽減
院 に て 開 頭 血 腫 除 去 術 を 施 行。18 病 日 目 に 当 院 へ 転
し、口腔外漏出の減少を認めた。【考察】意識障害は大脳
院。JCS 二桁の意識障害、高次脳機能障害、摂食嚥下障
皮質の広範な障害による活動性低下または脳幹網様体の
害、右片麻痺を認め、食事は経鼻経管栄養対応。藤島の
障害によって生じるとされる。立位での訓練により常に
嚥下 Gr は 2。【経過】座位では覚醒不良及び頭頸部の過剰
抗重力位で感覚刺激を入力したことで意識レベルの改善
な前屈や姿勢の崩れを認めた為、作業療法士の協力のも
に至った。意識は注意や行為、言語などの高次機能の基
と立位で訓練を行った。フードテストを実施したが、捕
盤であるため、意識レベルの改善が注意機能の向上に繋
食及び咀嚼や移送動作が起こらず口腔内での停滞を認め
がり、食物を注視することが可能となった。また、立位
た。乳幼児煎餅を使用し直接食物に触れてもらい、口腔
での訓練の結果、内側運動制御系の賦活に貢献し、体幹
への運搬は主に介助で行った。開始時は煎餅に注意が向
や頭頸部などの姿勢制御が機能したことで座位姿勢の保
かなかったが、徐々に注意が向くようになり捕食運動及
持が可能となり、安定した経口摂取の再獲得への一助と
び食物を迎えに行くような前傾姿勢が出現。直接訓練開
なったのではないかと考える。
始となったが、座位では口腔外漏出が著明な為、継続し
て立位で行った。125 病日目に胃瘻造設となったが、以
273
2
2
日目
が可能となった。【結果】JCS 一桁となり、毎食嚥下食を
口摂取の再獲得に至った為、若干の考察を交えて報告
ポスター演題
降も段階的に経口摂取の拡大を図り、また座位での摂取
た症例に対して、立位で摂食嚥下訓練を行った結果、経
口頭演題 日目
【はじめに】今回、左被殻出血により経口摂取困難となっ
P2-3-08
日 程
ケアミックス病院における嚥下リハ入院の有効性-訪問STとの連携により
胃瘻離脱し経口摂取自立に至った症例を通して-
小田美奈 1)、藤岡誠二 2)、森脇美早 1)
社会医療法人 祐生会 みどりヶ丘病院 リハビリテーション科 1)、
社会医療法人 祐生会 みどりヶ丘訪問看護ステーション 2)
【はじめに】当院は 329 床を有するケアミックス病院であ
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
る。平成 27 年 7 月より在宅や施設生活を送る嚥下障害患
17.6KPa。VF:水で喉頭侵入したが咽頭残留は減少し嚥
下機能改善。汁なし軟菜食に形態アップとなる。
者を対象に嚥下リハ入院の受け入れを開始し 11 月末現在
【考察】嚥下機能改善に至った要因として、義歯作製・舌
6 名が利用している。今回、訪問 ST からの紹介で嚥下リ
筋力増強による準備期の改善、干渉波刺激による咽頭期
ハ入院を利用し、胃瘻離脱し経口摂取自立に至った症例
の改善、サルコペニアからの脱却が挙げられる。また、
を経験した。その経過および考察と嚥下リハ入院の有効
嚥下リハ入院により、定期的な VF が可能であった点、リ
性について述べる。
ハ医・療法士・歯科医・DH・Ns 等チームアプローチが
【症例】85 歳男性。他院にて嚥下障害が疑われ胃瘻造設
行えた点、ケアミックス病院ならではの病状変化に柔軟
され、退院後訪問 ST 開始。訪問 ST からの紹介で当院へ
に対応しやすい点、目が届く環境で食事が行えた点、平
嚥下リハ目的で入院、PT・ST 開始。
均して 6 単位のリハが提供できた点なども機能改善に繋
【初期評価】サルコペニア(+)
、FIM78、舌圧 11.3KPa。
VF:義歯不使用による咀嚼時間延長、嚥下中喉頭侵入し水
で誤嚥するも、中間とろみ水の喉頭侵入を認めず。
がったと考える。
【まとめ】経口摂取困難とされている在宅・施設生活を送
る嚥下障害患者に対し、訪問 ST と連携し嚥下リハ入院に
【経過】干渉波刺激による嚥下訓練、舌筋力増強訓練等を
繋げ、経口摂取の可能性を模索したい。またケアミック
実施。機能改善が見込まれたため回復期病棟で集中的リ
ス病院の強みを生かし、必要に応じて回復期病棟で集中
ハを行う方針となる。歯科で義歯を作製。
的リハを行いさらなる機能改善に繋げたい。
【最終評価】(入院 45 日目)FIM91、栄養状態改善。舌圧
P2-3-09
頸椎病変のある関節リウマチ患者に対する摂食・嚥下訓練の一例
吉田千尋、佐藤沙矢香、松田千幸、谷藤幸夫、八幡順一郎
特定医療法人 盛岡つなぎ温泉病院
【はじめに】関節リウマチ(RA)による頸椎や喉頭の病
認めず、咳嗽反射もあったことから直接訓練を開始。VF
変は嚥下機能を低下させることが知られている。今回、
で評価を行いながら段階的に経口摂取量を増やした。嚥
誤嚥性肺炎を発症し胃瘻造設された RA 患者に対し頸椎
下機能は十分となったが、嗜好の問題から摂取量が増え
カラー装着と嚥下訓練を行い、絶食から 3 食経口摂取へ
なくなったため、経管栄養は継続することとし、171 病
と大幅な改善が得られたので報告する。【症例】50 代後
日 3 食経口摂取に至った。声門閉鎖不全は残存していた
半女性。30 代で RA と診断され、薬物療法、整形外科的
が MPT18 秒、FIM108 点(運動 73 認知 35)となり、胃
治療をしていた。【現病歴】扁桃炎・肺炎にて急性期病院
瘻は抜去せず 201 病日に自宅退院した。【考察】一般に嚥
へ入院、その後声門閉鎖不全、誤嚥性肺炎の診断にて胃
下機能を良好に保つためには、頸部の可動性が高く前屈
瘻造設された。ST による訓練を希望し、82 病日に当院
位などを取れることが求められるため、頸椎カラー装着
へ転院した。入院時 FIM81 点(運動 46 認知 35)、VF で
により、訓練効果が得られないことを懸念したが、影響
は嚥下中の不顕性誤嚥を認めた。頸部 X 線検査で前屈時
を認めなかった。逆に、頸椎の不安定性が改善した中で、
に環軸椎の脱臼、軸椎歯突起の頭蓋底陥入がみられたた
安全に集中して訓練が行えたことで嚥下機能が改善した
め 107 病日より 24 時間頸椎カラーの装着が開始された。
と考えられる。また日常の訓練では喉頭拳上力の評価が
【経過】介入当初著明な気息性嗄声と唾液によるムセがあ
できなかったが、定期的に VF を実施したことが誤嚥性肺
り、MPT1 秒、舌の筋力低下を認めたため、舌抵抗訓練、
炎の再発を防ぎ、自宅退院という成果につながったと考
前舌保持嚥下訓練などの間接訓練、発声訓練、自主練習
えられる。
を実施した。127 病日の VF で喉頭拳上力が改善し誤嚥を
274
P2-3-10
rTMSによる嚥下機能改善への試み
西山脳神経外科病院 リハビリテーション部 1)、四国中央医療福祉総合学院 言語聴覚学科 2)
【はじめに】
から 2 となり、嗜好レベルでの経口摂取が可能となった。
症例 2:経鼻経管栄養の 80 代男性で脳幹梗塞発症後 1 年。
激(rTMS)治療の有用性について報告がなされるよう
入退院時では RSST は 0 回から 1 回、改訂水飲みテストは
になったが、嚥下障害に関する治療報告は少ない。今回、
2 か ら 3b、 フ ー ド テ ス ト は 3b か ら 4、FOIS は 1 か ら 4
大脳皮質の制御が嚥下機能改善につながると考え、慢性
となり、3 食全てミキサー食で経口摂取可能となった。な
期の脳幹梗塞による嚥下障害患者 2 症例に rTMS 治療を行
い、良好な結果を得たので紹介する。
お、2 症例とも健側脳への rTMS 照射であった。
【考察】
【rTMS 治療の紹介】
特別プログラム
近年、失語症や麻痺症状に対する、反復経頭蓋磁気刺
嚥下の中枢としては、脳幹部に存在するCPG(Central
Pattern Generator)が重要とされているが、CPG は大
が最大となる部位に決定した。2 週間、1 日 2 回午前と午
脳皮質からの神経入力を受け、それを各嚥下関連筋群に
後に分け、各 20 分間の高頻度 rTMS 照射を行い、照射後
伝達し、嚥下運動のスムーズなコントロールを実現して
は口腔期と咽頭期に対しての間接訓練を各 40 分間実施し
いる。今回、健側脳へ高頻度刺激を行った結果、2 症例共
た。
に嚥下反射の惹起速度に改善が認められ、1 症例は完全
【症例紹介】
な経口摂取が可能となった。これは rTMS による大脳皮
質から脳幹へのルートが賦活され嚥下閾値の低下、協調
入退院時で比較すると RSST は 0 回から 2 回、改訂水飲み
性の向上などにより機能改善に繋がったと考える。また
テストは 2 から 3a、フードテストは 2 から 3、FOIS は 1
CPG 活性化の可能性も考えられた。
重度摂食嚥下障害・構音障害を呈した若年症例への取組み ~舌接触補助
床・軟口蓋型鼻咽腔補綴装置を作製して~
1
ポスター演題 日目
症例 1:PEG 造設後の 60 代男性で脳幹梗塞発症後 2 年。
口頭演題 日目
rTMS の照射部位は、健側喉頭挙上筋群の運動誘発電位
P2-4-01
日 程
加藤 司 1)、上村朋久 1,2)、澤井美佳 1)、西山直志 1)
1
山内美加、照屋智美、新城美紀子、大城真紀子
医療法人おもと会 大浜第一病院 リハビリテーション科
時):3c / 4。発声時、僅かに軟口蓋挙上を認めた。鼻漏
反射惹起と発声に若干の改善が認められたので報告する。
出 4 ~ 5 / 3。MPT5 秒/ 12 秒。発話明瞭度 5。舌は低
【症例】30 代男性。診断名は左被殻出血、既往に糖尿病、
緊張だが、若干厚みが増して、筋収縮が認められる。VF
右被殻出血がある。今回の発症で両側性麻痺となり、重
検査より嚥下反射惹起時間:13 秒/ 9 秒。嚥下反射惹起
度摂食嚥下障害・構音障害を呈している。栄養管理は胃
時間短縮が認められた。【考察】嚥下反射惹起までの時間
瘻。
【初期評価:38 病日】コミュニケーション良好。両
短縮が得られた要因として、PAP によって口蓋部分の厚
側に極軽度の運動麻痺を認めた。RSST 0 回。MWST3c。
みにより口腔内の容積が小さくなり、舌圧や口腔内圧が
軟口蓋挙上(-)鼻漏出 5 ~ 6。口唇や舌の動き乏しく、
高めやすくなったと考える。PLP の挙上子の刺激が軟口蓋
舌は薄く低緊張。口腔内残歯は数本。MPT2 秒。【経過】
の感覚を賦活し、訓練を併用したことで開鼻声改善に繋
嚥下機能・鼻咽腔閉鎖機能向上目標に間接的訓練を実施。
がったと考える。【まとめ】摂食嚥下・構音機能改善に向
56 病日 VF 検査後に上顎総義歯(PLP 付)及び PAP を作
け、早期より訓練手段として PAP-PLP を積極的に取り入
製。介助にて直接訓練実施。口腔内保持及び送り込み不
れるため適応基準を明確にし、情報を共有し他職種で連
十分の為、姿勢や介助方法を評価しながら介入。装置着
携できる体制を整える必要がある。
脱可能であるも、義歯の重さで外れるため安定剤で調整。
101 病日 VF 再検査実施。自力摂取で直接訓練を導入。
275
2
2
日目
120 病日】RSST1 回。MWST(PAP-PLP 未装着時/装着
PLP)の作製を行った。経口摂取には至らなかったが嚥下
ポスター演題
123 病日に自宅退院し、現在外来 ST 通院中。【最終評価:
助床(以下 PAP)、軟口蓋挙上型鼻咽腔部補綴装置(以下
口頭演題 日目
【はじめに】摂食嚥下・構音機能の改善に向けて舌接触補
P2-4-02
日 程
術後の状態が安定せず看取り方向となったが、他職種連携で経口摂取が可能
となり、自宅退院に至った一例
谷沢剛志 1)、栗田朋美 1)、荻原大輔 2)、松川智美 3)
JA長野厚生連 佐久総合病院 小海分院 言語療法科 1)、
JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 言語療法科 2)、JA長野厚生連 佐久総合病院 言語療法科 3)
【はじめに】他職種連携の結果、経口摂取が可能となり看
特別プログラム
取りを回避し、自宅退院に至った症例を報告する。
体操や口腔ケアの指導。管理栄養士:エネルギー消費量
【症例】89 歳男性、病前 ADL 自立。X 年に急激に食欲低
から提供カロリーの計算、嗜好調査の実施や栄養補助食
下出現し、3 日後に A 医療センターへ救急搬送。同日、壊
品の導入。PT、OT:低負荷の離床やレジスタンストレー
疽性胆嚢炎の診断で開腹胆嚢摘出術実施。術後 2 日に理
ニングを栄養状態に合わせて実施。ST:間接訓練及び直
学療法、作業療法開始(以下 PT、OT)
。全身状態が安定
接訓練、自主練習指導。VE、VF 以外に実際の食事場面
せず、絶飲食対応。家族へは看取り方向の説明がされて
での嚥下評価。
いた。
週一回の病棟カンファレンス以外に、治療内容の変更や
【経過】術後 21 日に当院へ転院。術後 23 日に言語聴覚療
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
と診断的評価と治療的アプローチの検討。看護師:嚥下
食上げ等のイベント時にもスタッフ間でコミュニケー
法(以下 ST)開始。摂食嚥下障害臨床的重症度分類(以
ションをとり、情報の共有を積極的に行った。
下 DSS)3、摂食嚥下グレード 3。
術後 70 日目の VF で、水分とろみ無しで喉頭侵入・誤嚥
経口摂取再開に向けた他職種連携は以下の通りである。
の重症度スケール 2 の判定。軟飯、軟菜食、水分とろみ
主治医:内科的治療と熱源の精査。誤嚥を熱源の除外項
解除の食形態で術後 117 日目に自宅退院。退院時 DSS4、
目として鑑別する為に、嚥下内視鏡検査(以下 VE)を実
摂食嚥下グレード 9。
施。尿培養検査で多剤耐性緑膿菌を検出し、抗生剤を変
【結論】各職種が専門性をもって関わるだけではなく、互
更してからは状態が安定。訪問歯科へ義歯調整の依頼。
いにコミュニケーションをとって連携をとりながら進め
リハビリテーション医:嚥下造影検査(以下 VF)で ST
た結果、症例の理想的な転帰に大きく貢献できた。
P2-4-03
介入時に著しい低栄養状態とコミュニケーション困難を呈していたが栄養状
態の改善に伴いコミュニケーション能力の向上を認めた症例
関 初穂 1)、鹿児島友香 1)、渡邊智之 1)、重田 暁 1)、若林健一郎 2)
北里研究所病院 リハビリテーション技術科 1)、北里研究所病院 耳鼻科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
著しい低栄養状態であり、コミュニケーション困難を呈
BMI17.7 BEE822.7kcal、Alb1.7、TP5.2、Hb9.1
していたが、適切な栄養管理・治療により栄養状態が改
【対応】ST としては、経口摂取可能な時にゼリーの経口
善しコミュニケーションが可能になった症例を経験した。
摂取、物品の受け渡し、やり取り動作を実施。栄養療法
経過と介入について報告する。【症例】89 歳女性、施設
は、中心静脈栄養から TPN、脂肪製剤、輸血を実施。【経
入所中、微熱と酸素飽和度低下を呈し近医搬送。誤嚥性
過】 栄 養 状 態 は ALB2.6、TP6.0、HB13.1 へ 改 善。 コ
肺炎の診断にて加療し改善したが活動性が低下し食事摂
ミュニケーションは声かけに対し反応が得られるように
取困難となった。PEG 予定としたところ胃の全面に横行
なり、ST 開始 2 週間後には笑顔で会話ができるように
結腸と肝臓が存在したため造設困難であり、外科的に胃
なった。重度失語症検査のやり取り 60 %に改善した。
瘻造設をすることとなり当院へ転院。楽しみ程度の経口
【まとめ】肺炎等治療後の廃用症候群でコミュニケーショ
摂取とコミュニケーション改善目的で ST 指示が出され
ン困難な高齢者については、その原因が栄養状態不良に
た。栄養療法は転院一週間前まで PPN、以降は中心静脈
よることがある。そのため、栄養評価と適切な栄養療法
栄養カテーテル挿入【初回評価】意識状態:2 - 20 /
をすることによりコミュニケーション能力の改善がみら
JCS、会話不可 重度失語症検査 Part1 正答率 0 %。身
れる可能性があることを念頭に入れて対応する必要があ
体機能:左側の上下肢の筋緊張低下 ADL:FIM18 点 嚥
ると思われる。
下:RSST0 回、MWST3 / 5、FT4 / 5、 発 声 発 語 器 官
は明らかな麻痺はないが筋緊張は低下 栄養ルート:中
心 静 脈 栄 養 点 滴 内 容:TPN、 脂 肪 製 剤 等 栄 養 評 価
276
P2-4-04
岡本 惠、藤本英宏
医療法人社団 栄宏会 栄宏会小野病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院に併設している特別養護老人ホーム(以
日 程
急性期から特別養護老人ホームに退院した誤嚥性肺炎患者の一症例~継続し
て行える対策を重要視して~
反射を認めた。しかし、食事開始から 20 分で傾眠となり
ムセが増加。12 病日目は、食事介助量軽減かつ必要エネ
今回、誤嚥性肺炎で入院し、特養で継続可能な環境調節
ルギー確保の為、3 食毎に食事提供量を調節し補助栄養を
を行う事で急性期から特養へ戻られた患者を報告する。
追加。15 病日目、20 分で 10 割・ジャム状とろみ茶をム
セなく摂取可能となり退院。【考察】本症例は、特養より
に乗車し全介助でミキサー食を摂取。ムセを認め、食べ
誤嚥性肺炎で入院し、退院条件として経口摂取可能が必
こぼしあり。言語能力は、Yes 傾向で時折返事や挨拶を
須であった。退院後は、言語聴覚士の介入がない。また、
復唱する程度。全身の筋緊張亢進を認め、ADL 全介助。
急性期での短期入院では低下した能力を十分に向上させ
ベッド上でもポジショニングが必要。【経過】従命は困難
る事が困難な為、入院中に退院後も継続可能な対策が必
であるが、フードテスト 3c、改訂水のみテスト 3a で自
要であると考えた。そこで、食事形態の選択・食事姿勢
然状況下では口唇舐めや口唇閉鎖を認めた。2 病日目よ
を統一した。さらに、特養のマンパワーを把握し、必要
り、ベッド上で全粥・ムース食・ポタージュ状とろみ茶
エネルギー確保の為 3 食毎の食事提供量を調節した事が
を摂取開始。口角からの流出・口腔内残渣を認め交互嚥
経口摂取継続可能に至り退院となった。
下で対応するもムセあり。5 病日目に、主食をとろみ粥へ
変更し口腔内残渣が軽減。6 病日目、ティルト式車椅子に
口頭演題 日目
【症例】82 歳、女性。既往歴に脳梗塞。病前は、車椅子
特別プログラム
下、特養)では、摂食嚥下機能が低下した入所者が多い。
1
乗車し筋緊張低下を促すポジショニングを設定。食塊が
P2-4-05
胃瘻造設後も経口摂取を併用している長期経過パーキンソン病の一例:~多
職種と患者・家族の連携~
村上紗奈美 1)、田原将行 1,2)、中嶋 渚 3)、小國由紀 1)、荻野智雄 1)、飯高 玄 1)、金原晴香 1)、
秋山真美 1)、冨田 聡 2)、大江田知子 2)、澤田秀幸 2)
【はじめに】進行期パーキンソン病の嚥下障害に対して胃
チを実施した。医師は ON 時に摂取できるよう薬剤調整、
瘻造設を行ったが、患者自身の思いを受け多職種・家族
ST は嚥下評価・間接訓練・介助方法を検討し、摂食嚥下
が連携し経口摂取を継続した、経過 31 年進行期パーキン
認定看護師(以下認定 Ns)を介して病棟スタッフへ間接
ソン病患者への取り組みについて報告する。
訓練や食事介助等の注意点の伝達、スタッフ間の介助方
法の統一を図るなど多職種の調整を行った。家族には嚥
症 22 年目に初回の誤嚥性肺炎発症後は誤嚥性肺炎を繰り
下可能な間食の持参等の協力を得た。食事再開後も誤嚥
返した。ADL は歩行器使用下で歩行自立レベルであった
性肺炎が生じるが抗生剤で軽快。X + 1 年 2 月朝夕と摂取
が、発症 26 年頃より起立性低血圧のため、見守り歩行、
回数増数、4 月全量摂取となっている。食事再開により、
臥床時間が増えた。発症 30 年(X 年 6 月)誤嚥性肺炎に
生活リズムは安定し、患者の活気も向上、リハビリにて
よる約 1 ヶ月の絶食。ON 時の嚥下造影検査の結果、誤嚥
介助歩行可能な時間も増加するなど良好な影響を及ぼし
ている。
アランスは図れており、ミキサー食半量から食事を再開
【まとめ】多職種・家族の協力から誤嚥性肺炎の予防、全
した。しかし発熱のため、再度絶食。必要なカロリーが
身状態維持を図り患者の食べたい思いを実現できた。今
摂れないため 8 月胃瘻造設となった。患者自身の希望に
後も摂取可能な限り患者の思いに寄り添いサポートを
て、胃瘻での栄養管理と併用して、12 月からゼリー食半
行っていきたい。
量昼食のみ再開。経口摂取に向けては、チームアプロー
277
2
日目
はみられず、咽頭残留はみられるも複数回嚥下にてクリ
2
ポスター演題
【症例】80 歳代男性。52 歳時パーキンソン病を発症。発
1
口頭演題 日目
独立行政法人 国立病院機構 宇多野病院 リハビリテーション科 1)、
独立行政法人 国立病院機構 宇多野病院 臨床研究部 2)、独立行政法人 国立病院機構 宇多野病院 看護部 3)
ポスター演題 日目
咽頭部に達すると送り込み動作が開始され、円滑な嚥下
P2-4-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
言語聴覚士の感染防止対策 ~院内感染対策委員会に所属し見えたこと~
藤本英宏 1,2)、岡本 惠 1)
医療法人社団 栄宏会 栄宏会小野病院 リハビリテーション科 1)、
医療法人社団 栄宏会 栄宏会小野病院 感染対策委員会 2)
【はじめに】今回、院内感染対策委員会に所属し感染防止
時に患者の体液に曝露した経験が多いことが分かり、マ
対策への知識の重要性、対策の必要性について理解を深
スク・手袋等の防護具の使用にばらつきがあった。「感染
めることが出来た。リハビリテーション(以下、リハ)
に対する知識」の項目では、必要性を理解していたが、
は、実施時に患者との交差感染リスクがある。さらに、
院内感染マニュアルの再確認や勉強会に参加し自発的な
言語聴覚士(以下、ST)は、口腔ケアや直接訓練時に体
知識の獲得に至っていなかった。【まとめ】今回の調査に
液に曝露することがあり感染リスクが高い状態にある。
よって、当院・施設に所属している ST の感染対策に対す
そこで、当院・施設に所属している ST の現状を把握する
る現状や問題点を把握し対応策を検討することが出来た。
為、アンケート調査を実施したので報告する。【対象と方
問題点として、1. 患者の感染情報を把握すること 2. 手洗
法】当院・施設に所属している ST18 名を対象とし「感染
いのタイミングを再確認すること 3. 防護具の使用のばら
症の把握」、「手洗い」、「感染予防対策」、「感染に対する
つきを統一すること 4. 知識の獲得を行うことが挙げられ
知識」に関して 16 項目の構成でアンケート調査を実施し
た。今後は、感染対策委員会と協力し ST の業務内容に
た。また、自由記載欄は設けず、回答は選択形式とした。
沿って、口腔ケアや直接訓練の具体例を提示した勉強会
【結果】「感染症の把握」の項目では、患者の感染症を事
前に把握してからリハ実施していることが多かった。「手
の開催や防護具使用の統一を行う事が必要である。今後
も、感染予防の質の向上に努めていきたい。
洗い」の項目では、リハ開始前や患者の周辺物品に触れ
た後に実施する習慣が乏しく、リハ実施後は徹底出来て
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
いた。「感染予防対策」の項目では、口腔ケアや直接訓練
P2-4-07
多職種連携により胃瘻造設が回避できた神経難病の一例
當銘春奈
社会医療法人 敬愛会 中頭病院 リハビリテーション部
【はじめに】
多系統委縮症による嚥下障害進行により、胃瘻造設を目
的に急性期病院に入院となったが、多職種連携により経
口摂取継続が可能となった症例を経験したので報告する。
【 症 例】60 歳 女 性。H22 年 に 多 系 統 縮 症 を 発 症。 自 宅
生活にて要介護 5。MWST3c。FT3c。摂食嚥下能力グ
レード 4。発話明瞭度 4。デイケアを利用しているが、ST
不在。
【経過・結果】
筋硬縮により姿勢保持困難だが、スタンダード車椅子座
位にて毎食 2 時間かけてミキサー食を摂取。3 か月前より
経口摂取不十分となり他院にて胃瘻造設を勧められ当院
へ入院。入院 1 日目より嚥下機能評価に基づき、嚥下食
を開始。送り込み不良、嚥下反射遅延を認めたが、咽頭
貯留やムセ込みはなし。
OT と連携しチルト式車椅子を選定、ポジショニング評価
を実施。栄養士と連携し、必要量の計算、適切な栄養補
助食品を選定した。また看護師と連携し、食事介助法の
統一や摂取時間、摂取量のチェックを実施。姿勢調整に
より送り込み不良や易疲労性が軽減し、1 食 40 分で全量
摂取可能となった。また間食で補助食品を摂取すること
で必要栄養量の摂取が可能であったため、主治医からご
本人、ご家族へ再度希望を確認した結果、今回の胃瘻造
設は中止となった。
そのため入院中、食事姿勢や介助法、食事内容について
家族指導を実施。またケアマネージャーと連携し、車椅
子の交換や訪問 ST 介入等のサービス調整を行い在宅でも
不安なく、経口摂取を継続できるよう支援した。そして、
入院 8 日目という短期間で自宅退院となった。
【考察】
ST 評価にて咽頭機能は比較的保持されており、姿勢と
食事内容を調整することで、経口摂取継続が可能と判断
したため、早期から OT、栄養士、看護師、ケアマネー
ジャーと連携を図った。その結果、適切な環境を整え、
入院中から在宅支援を意識し、家族指導、多職種連携を
行うことで残存能力を活かし、また食べる自信を取り戻
した。
278
P2-4-08
京都お茶プロジェクト
京都山城総合医療センター リハビリテーション科 1)、株式会社福寿園 2)、愛生会山科病院 3)、京都第二赤十字病院 4)、
京都光華女子大学 5)、鹿児島徳洲会病院 6)、京都第一赤十字病院 7)
【はじめに】京都山城総合医療センターは京都府木津川市
の選択、抽出方法、とろみ調整食品の使用量を検討する。
【結果】碾茶や煎茶は、お湯だしで抽出するとお茶の色が
より若年層の人口が増加しつつあるが、山間部では高齢
変化しやすく、嚥下調整食品を入れると渋みが強調され
化への対応が求められている。当センターでも、摂食嚥
やすいことがわかった。氷出しで抽出するとお茶の色の
下障害の方には必要に応じてとろみ調整食品を使用した
変化も少なく、まろやかな味わいになった。焙じ茶は、
お茶を提供している。しかし、
「おいしくない」という
お湯出しで抽出してもお茶の色の変化が少なかった。ど
意見が多くなかなか摂取していただけないことが悩みで
のお茶も、とろみ調整食品を加えたあとに茶こしなどで
特別プログラム
にある急性期病院で、当センター近郊では急速な開発に
あった。お茶栽培が盛んな地域でもあるため、特に高齢
日 程
草野由紀 1)、笹原 遥 1)、乾田和真梨 1)、田中ゆかり 1)、松田沙弓 2)、荒金英樹 3)、
山口明浩 4)、関 道子 5)、内野由香里 6)、巨島文子 7)
濾すと、よりなめらかな口あたりとなることもわかった。
【考察】おいしいと思えるとろみ調整食品を使用したお茶
りのある方が多いことも要因として考えられた。そこで、
を作ることができたが、病院や施設で提供するにはコス
誰もがおいしいと感じられるとろみ茶を作成できないか
ト面で提供が難しい。自宅で作るのであれば、このレシ
と考え、福寿園の協力のもと「おいしいとろみ茶」の共
ピは実用的と思われる。【まとめ】実際に病院や施設など
同開発がはじまり、世話役で参加をしていた京滋摂食嚥
での提供は難しいが、自宅で手軽に作れるレシピを完成
下を考える会で「嚥下食プロジェクト~京のお茶~」を
することができた。
立ち上げた。【方法】当センターで使用しているとろみ調
口頭演題 日目
者の方にとってお茶は親しみが深く、その風味にこだわ
1
整食品を使用し、飲み込みに配慮をしたとろみつきのお
P2-5-01
誤嚥性肺炎患者に関わる言語聴覚士の役割―肺炎パスを通して―
三野英孝 1)、中原 理 1)、元野耕平 1)、丸山伸廣 1)、松田さほ 1)、栗田 樹 1)、谷山ゆりえ 1)、
大辻真斗香 1)、高橋紀代 2)
ポスター演題 日目
茶を作成する。「味」「香り」「見ため」にこだわり、茶葉
1
医療法人篤友会 千里山病院 リハビリテーション療法部 1)、医療法人篤友会 篤友会リハビリテーションクリニック 2)
名)、ST 介入のあった群を B 群(10 名)とし、各群の藤
院であるが、地域包括ケアに重点を置き、誤嚥性肺炎患
島式摂食・嚥下グレードを使用して入院時・退院時の経
者への対応として、同市にある急性期病院と連携し『豊
口摂取の可能となった人数、転帰先を比較した。
【結果】1)入院時より経口摂取が可能であったのは A 群
概要として、患者は急性期病院にて治療を行った後、当
7 名、B 群 1 名であった。2)退院時に経口摂取が可能と
院へ入院 3 日前までに事前情報が送られ、入院後は翌日
なったのは A 群 8 名、B 群 7 名であった。3)転帰は、自
よりリハビリテーション(リハ)が開始する。理学療法
宅退院 8 名、施設退院 6 名、他院へ転院 3 名、死亡が 3 名
士・作業療法士は呼吸リハや基本動作・ADL 訓練を実施
であり、自宅・施設に退院が可能となったのは A 群 8 名、
し能力の維持・向上を行った。言語聴覚士(ST)は食事
B 群 6 名であった。
【考察】自宅・施設への退院が可能となった群のうち ST
(VF)を実施し、障害の程度の把握や経口摂取の可否、
介入例は約 40 %を占めていた。ST 介入群は入院時に経
適切な食形態の決定を行った。今回、このパス立ち上げ
口摂取を行っていない患者が多く、早期に VF 評価にて障
後の患者の動向と ST の役割について検討を行った。
害の程度を把握してアプローチを行い、食事介助の方法
【対象】2015 年 10 月~ 12 月にまでにパスを通じて当院
や注意点などを他職種に伝達することによって、短期入
に入院した患者 20 名(年齢 88.2 ± 7.5 歳、男性 10 名、
院でも安定した経口摂取が可能となり退院へ繋げること
女性 10 名)を対象とした。
が可能になったと考えられた。
【 方 法】 対 象 の う ち、ST 介 入 の 無 か っ た 群 を A 群(10
279
2
日目
場面評価や嚥下リハを行い、必要に応じて嚥下造影検査
2
ポスター演題
中あんしんパス』(以下、パス)を立ち上げた。パスの
口頭演題 日目
【はじめに】当院は大阪府豊中市にある 59 床の一般病
P2-5-02
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
摂食嚥下障害治療におけるチームアプローチの強化 第二報~勉強会を通し
て、看護師の知識と技術、関心の変化~
中村圭太、仲野里香、松野加奈、山田有紀、友池理歌
医療法人 恵光会 原病院 リハビリテーション部
【はじめに】
摂食嚥下障害の患者に対する安全な摂食援助は、高齢者
ケア・キュア領域における重大な課題となっている。当
院は亜急性期から回復期、維持期までの幅広い病期の治
療を担っており、摂食嚥下領域への対応の多様性が求め
られる。
しかし、看護師・介護職の摂食嚥下障害に関する知識や
技術は個人間で差があり、これまで当院で業務後に行っ
てきた単発の勉強会では知識や技術が定着しない状況で
あった。今回、当院回復期病棟において短時間・系統的
な勉強会を行ったため報告する。
本報告は、摂食嚥下障害に対する知識と食事介助技術、
関心の関連を検討することを目的とした。
【方法】
回復期病棟全スタッフ(看護師 24 人、介護職 15 人)を
対象に、ST による勉強会(全 6 回 10 ~ 15 分)を昼休憩
時に行い、各回に確認テストを実施した。各勉強会後に
自由意見を記入してもらい ST が関心の有無に分類した。
嚥下コアスタッフ(看護師 7 名、介護職 2 名)に対し、実
P2-5-03
際の食事介助時に ST が評価(全 25 項目で評価して点数
化)・指導を行い(全 3 症例)、1 症例目と 3 症例目の平均
点を比較した。
【結果】
全 6 回の各テストの平均点は勉強会の内容により差がみ
られた。又、職種ごとの平均点は介護職に比し看護師が
有意に高かった。自由意見記入欄には、回を追う度に関
心有の意見が増加し、記入された文字数は増加した。実
技評価の平均点は 1 症例目より 3 症例目の方が 10.6 点増
加した。
【考察】
看護師は摂食嚥下障害の患者に対して「口から食べさせ
たい」思いと誤嚥リスクとのジレンマに悩むという報告
がある。知識が向上するにつれ、病棟では嚥下障害に関
する意見交換が聞かれ、食事介助場面では、様々な工夫
をする様子が見られた。「思い」を「技術」に変える方法
が「知識」であると考えられた。又、業務内の短い時間
で継続的に勉強会を行ったことは、受講者の負担を軽減
し、「関心」を導いた要因の一つであったと思われる。
「食」の喜び・楽しみがもたらすもの~回復期リハビリ病棟イベント「デ
ザートビュッフェ」の取り組み~
石川陽介 1)、井元奈緒美 1)、野村陽子 1)、澤田ちえみ 2)、松久真穂 2)、宮川由紀 3)、江川真代 3)
医療法人社団有隣会 東大阪病院 リハビリテーション課 1)、医療法人社団有隣会 東大阪病院 看護部 2)、
医療法人社団有隣会 東大阪病院 栄養課 3)
【目的】当院回復期リハビリ病棟では、年 4 回「デザート
に対し、満足度に関するアンケートを行った。また、日
ビュッフェ」を開催している。これは療法士・看護師・
常の食事で食思低下や摂取量低下等の問題がみられてい
介護士・管理栄養士が協同して、当病棟入院患者様に数
た患者 8 名を担当した療法士に対し、ビュッフェ当日の
種類のデザートをビュッフェ形式で提供し、楽しんで過
対象患者の様子や変化に関するアンケートを行った。
ごしていただくイベントである。摂食嚥下障害患者様も
【結果】「美味しかったか」の質問に普通食 100 %嚥下食
同様に楽しめるように、同等のメニューで普通食用と嚥
100 %、「楽しかったか」に普通食 73 %嚥下食 100 %が
下食用の 2 種類用意するという工夫も行っている。当イ
満足と回答した。また、食思低下等のみられる患者 8 名
ベントは、ビュッフェという応用動作の中で患者様の最
中 7 名にビュッフェ当日では良い変化があり、普段は介
大限の ADL を引き出すことと、嚥下障害や食思低下の患
助を要する方が当日は自己摂取した、摂取量の乏しい方
者様に食べる喜びや楽しみを感じていただくことを、回
がデザート全品を食べた、訓練時より当日の方が嚥下反
リハ病棟ならではの目的として掲げている。特に後者は、
射惹起が速かった、などの変化がみられた。
摂食嚥下障害患者様の食事意欲や嗜好の評価を行えると
【考察】嚥下障害患者においては、安全性を優先するため
いう意味で、ST としては意義深い側面を担っている。今
に食べることへの楽しみが制限されがちであるが、今回
回、当イベントを通じて、患者様の食べる喜びや意欲な
の調査から、「食」における喜びや楽しみが意欲を向上さ
どの観点に着目した調査を行った。
せ、摂取量増加や嚥下能力向上をもたらす可能性が示唆
【方法】平成 27 年 12 月実施のデザートビュッフェに参加
された。
した患者 21 名(普通食対応者 13 名、嚥下食対応者 8 名)
280
P2-5-04
医療介護福祉ネットワーク「みつネット」における摂食嚥下障害の取り組み
日 程
下山憲治
国立病院機構 岡山市立金川病院
どに講師を派遣して、介護予防の講座を開催していると
平成 24 年 10 月に発足した医療・介護の連携強化を目的
ころである。講座の具体的な内容は、薬剤師が、薬剤一
とした組織である。医療・介護関係者の他、地域住民の
般についての講義、管理栄養士が、嚥下調整食のレシピ
代表者、自治体職員などが参加し、定期的な意見交換の
紹介、言語聴覚士が、摂食嚥下機能向上のエクササイズ
場を持っている。その中で摂食嚥下障害を中心とした介
の指導をおこなっている。これらは、参加者に取り組み
護予防の取り組みについて紹介する。「みつネット」で
やすいと実感していただけるように、楽しく容易におこ
は、誤嚥性肺炎予防をはかる摂食嚥下・口腔ケアチーム
なえる内容を心掛けており、住民主体で実施する介護予
と、認知症の早期発見と受診勧奨をはかる認知症チーム
防活動のきっかけづくりに繋げていきたいと考えている。
を結成し、それぞれパンフレットやセルフチェックシー
今後も、啓発活動と講師の派遣を実施し、さらに住民主
トなどの作成と普及、地域住民や医療・介護関係者に対
体で継続して実施する、介護予防活動や交流の場の創設
する研修会の開催などを通して、教育・啓発活動に取り
のサポートにも力を入れていきたいと考えている。
組んでいる。その中で摂食嚥下障害領域の介護予防に関
口頭演題 日目
昨年より、地域の複数の住民グループが主催する講座な
の協力の下に、国立病院機構岡山市立金川病院を中心に
特別プログラム
「みつネット」は岡山市北部を活動領域とする御津医師会
1
連した活動については、広報誌「御津健康新聞」を発行
し、その記事の中で口腔ケア・栄養・摂食嚥下障害に関
連する基礎知識と嚥下調整食のレシピ紹介などの記事を
P2-5-05
頚部屈曲に対する抗重力プログラムの効果
高田明規、菊地秀晴、吉際俊明、福田卓民
ポスター演題 日目
掲載し、地域内での啓発活動を行なっている。さらに、
1
青梅慶友病院
【 結 果】 頚 部 屈 曲 0 °に 満 た な い 可 動 域 制 限 の 保 有 者、
ションにおいては、摂食嚥下機能に対応することが多い
2009 年 で は 平 均 37.8 名、2010 年 は 26.3 名、2011
が、この時期の対象者は身体機能の低下を避けることは
年 は 19.2 名、2012 年 は 22.5 名、2013 年 は 19.0 名、
困難であるため、刻々と変化する姿勢やそれを構成する
2014 年は 15.5 名、2015 年は 14.6 名であった。
【考察】今回の結果では、抗重力を意識した運動プログラ
で今回、摂食嚥下に大きく影響すると考えられる頚部の
ムが頚部の動きに効果があることを示唆するものと考え
動きとそれに対する抗重力姿勢を意識した運動プログラ
ることができる。ただし、具体的な減少要因は対象者の
ムの効果について述べる。
退院であるため、この場合の効果は頚部屈曲制限の改善
ではなく、新たな制限をつくらない予防であったという
に入院した 2600 名(平均年齢 88.4 歳)とした。介入方
ことができ、日ごろから抗重力姿勢をとり、さらには日
法は、言語聴覚士ならびに理学・作業療法士が座位や立
中の活動性を高める働きかけが重要であることを示すも
位など抗重力姿勢を意識した運動プログラムを週 2 回以
のと考えられる。摂食嚥下機能に対応する場合、その時
上実施し、看護・介護職は毎日のケアの中で四肢他動運
の姿勢に着目することの重要性は広く知られているが、
動を行い、さらに対象者の活動性を高めるために余暇活
生活期から終末期においては言語聴覚士としても普段の
動への参加を促した。頚部の動きについては、屈曲が 0 °
生活での姿勢を含め、広い視点での関わりを積極的に実
以上可能であるか否かについて在院者を 2 ヵ月ごとに評
施することが求められているものと思われる。
価し、屈曲 0 °に満たない者の割合を経時的に記した。
281
2
日目
【方法】対象は 2009 年 2 月から 2015 年 12 月の間に当院
2
ポスター演題
身体状態も併せて対応する必要があると思われる。そこ
口頭演題 日目
【はじめに】生活期から終末期を対象としたリハビリテー
P2-5-06
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
ポスター演題 日目
1
Down症児4名の捕食・押しつぶし機能の獲得と粗大運動発達の関連性につ
いて
中村達也、鮎澤浩一、黒川洋明、駒崎 舞、角田雅博
島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
【はじめに】スプーン上から食べ物を口唇でこすり取る
4 名中 3 名が 12-15M で獲得したが、1 名は研究期間中
捕食、食べ物を舌で口蓋に押し付けてつぶす押しつぶし
(立位獲得まで)に獲得に至らなかった。3 名の押しつぶ
は、離乳初期~中期に獲得する摂食機能である。しかし、
し獲得時には、GMFM-88 の座位での体幹の回旋・矢状
Down 症(以下 DS)児における摂食機能の獲得時期につ
面での重心移動など(Item.25,26,27,54)の達成が始
いての報告は少ない。本研究では、DS 児 4 名の捕食・押
しつぶしの獲得時期と粗大運動発達の関連性について検
討し、離乳発達の指標を得ることを目的とした。
まっていた。
【考察】定型発達(TD)児の多くは、5-6M に上肢をつ
いた座位などが可能となり、この時期に離乳食を開始、
【方法】対象は、0 歳台から摂食指導を受けた DS 児 4 名
ま も な く 捕 食 を 獲 得 す る。 さ ら に、7-8M に は 座 位 を
とした。4 名の摂食指導の開始は 8-11M であり、指導開
保ったまま体幹を回旋させることなどが可能となり、こ
始時に 1 名は捕食を既に獲得しており、押しつぶしは 4 名
の時期に押しつぶしを獲得する。今回の DS 児について
とも未獲得であった。摂食機能評価(ビデオ解析)と粗
は、捕食は TD 児の 5-6M 相当、押しつぶしは 7-8M 相
大運動発達評価(GMFM-88)の結果から、発達の経過
当の座位発達が得られた際に獲得が始まっていた。これ
を検討した。
より、DS 児の摂食機能の獲得については、座位を中心と
【結果】摂食指導開始時に捕食未獲得であった 3 名は、
した粗大運動発達を一つの目安することが有用である可
11-13M に捕食を獲得した。捕食獲得時には 3 名とも、
能性がある。一方で、本研究の対象児の中に、立位を獲
GMFM-88 の「上肢支持の座位」または「上肢支持なし
得しても押しつぶしの獲得に至らない児が存在しており、
座 位」(Item.23,24) を 達 成 し て い た。 押 し つ ぶ し は、
今後は座位発達以外の側面からの検討も必要である。
P2-5-07
嚥下障害のあるパーキンソン病患者に対する外来嚥下リハビリテーションの
経過と今後の課題
堀江美香 1)、芹澤亮介 1)、小野田麻美 1)、村上善勇 2)
済生会栗橋病院 リハビリテーション科 1)、済生会栗橋病院 神経内科 2)
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
【目的】パーキンソン病(以下 PD)患者の死因は誤嚥性
に VF を行い嚥下評価を実施した。【結果】VF では全て
肺炎が殆どである。嚥下造影検査(以下 VF)で誤嚥が
の患者に誤嚥があり特に食道入口部開大不全と梨状窩へ
あった PD 患者の 2 年後累積肺炎発症率は 45.8 %で、誤
のバリウム残留が目立った。バルーン法を中心とした嚥
嚥のなかった 3.2 %に比し非常に多いという報告がある。
下リハビリテーションを実施したところ、全ての患者に
その為肺炎発症後からではなく外来で肺炎予防の為に嚥
おいて食道入口部開大不全が改善することで咽頭クリア
下リハビリテーションを行う事は重要であると考え PD 患
ランスも改善、梨状窩へのバリウム残留量も減少し誤嚥
者の嚥下評価を始めた。運動症状が極軽度にも関わらず
がなくなった。その後も効果は持続したが、介入を中止
VF で誤嚥があり食道入口部開大不全の所見が目立つ患者
すると数ヶ月から半年後には再度嚥下障害が悪化し誤嚥
を複数経験し、それらに対しバルーン法を中心とした嚥
性肺炎を発症した患者もいた。【結論】嚥下障害のある
下リハビリテーションを実施したところ嚥下機能の改善
PD 患者に対しバルーン法を中心とした嚥下リハビリテー
が認められた。しかしその効果は一時的であり間欠的か
ションを行う事は効果がある。しかし効果は一時的であ
つ継続的な嚥下リハビリテーションの介入が必要であっ
り間欠的かつ継続的な介入が必要である。嚥下リハビリ
た。現在までのリハビリテーション経過と今後の課題に
テーション介入中止後の誤嚥性肺炎発症の原因、今後ど
ついて当院の事例を報告する。【対象】VF で誤嚥のあっ
のくらいの頻度で介入すればよいか引き続き検討が必要
た PD 患者男性 2 名、年齢 67、73 歳、罹病期間は 4、3
である。
年、Hoehn&Yahr 重症度分類ともに 1 に対し、バルーン
法を中心とした嚥下リハビリテーションを実施し定期的
282
P2-6-01
球麻痺症状を伴った沖縄型神経原性筋疾患の1症例
独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院 リハビリテーション科
【はじめに】沖縄型神経原性筋委縮症(Hereditary motor
日 程
石光暁子、池澤真紀、伊藤有紀、伊藤美幸、千葉康弘、和田彩子、大塚友吉
内容】口腔器官の運動範囲の著明な低下に対し、他動的
とは、沖縄地方に多発する感覚障害を伴う遺伝性神経原
下機能とに乖離があったため、現状の嚥下機能を説明し、
性筋萎縮症とされ、成人発症、常染色体優先遺伝の筋委
適した食形態への変更と水分にはトロミを推奨。口腔ケ
縮症である。
【症例】40 歳代女性、沖縄出生、母親が同
アも指導した。その結果、食事時間短縮と摂食量増加、
病、現在埼玉に居住。ADL は修正自立。当院受診の約 1
ムセの軽減がみられた。【考察】疾患の先行研究より、球
年半前から時折ムセることがあり、その約 9 か月後から
麻痺症状が身体機能低下の進行に伴った症例や、舌下・
電話での会話困難、その後数か月で対面でも会話困難と
舌咽・迷走神経の変性は報告されているが、発話や嚥下
なったため、ゆっくり話したり、ipad に文字を打って見
障害に関する報告はみられない。本症例は身体機能の低
せるなどの工夫を自発的に導入していた。食事の工夫は
下が緩徐に先行していたが、約 1 年前より球麻痺症状が
特にせず、長時間かけ、ムセながら自己摂取していた。
急速に進行し、発話や嚥下機能の低下が著明となった。
当院に病状精査のため入院し、ST 処方された。【ST 評価】
ST による評価に基づいた指導は、残存機能の維持、進行
認知機能は正常。弛緩性ディサースリア、発話明瞭度
に伴う栄養不良や誤嚥のリスクの軽減につながると考え
3.5/5、声の単調性、口唇、舌の運動範囲、鼻咽喉閉鎖
られた。
は重度障害、舌の萎縮、舌苔や会話時のムセがみられた。
口頭演題 日目
な ROM 訓練やマッサージなどを指導。また、食形態と嚥
特別プログラム
and sensory neuropathy with proximal ;HMSN-P)
1
常食を 1 時間以上かけ半量以下を摂食。嚥下造影検査で
P2-6-02
/t//k//s/の母音環境における調音結合の影響 ―エレクトロパラトグラ
フィ(EPG)を用いて―
ポスター演題 日目
は、食塊形成不良、水分 5cc で誤嚥が認められた。【指導
1
中村哲也、藤原百合
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科
いては、先行母音が [a][o]、[ɯ][e]、[i] の順に全体の接
て構音運動が変化する現象である。このような音韻環境
触範囲が増加し、前方に接触範囲が広がった。後続母音
による運動学的な変化は構音障害の訓練をする上で考慮
は /s//t/ は [i] の場合に調音結合の影響がみられ、/s/ で
すべき要因であると考えられる。しかし、日本語におけ
は歯茎の接触範囲が減少し、硬口蓋と軟口蓋の接触範囲
る調音結合の影響を運動学的に分析した研究は少ない。
が増加した。/t/ では硬口蓋と軟口蓋の接触範囲が増加し
そこで、健常成人 3 名を対象に EPG を用いて、構音障害
た。/k/ では [a][o]、[e][ɯ]、[i] の順に全体の接触範囲が
児が誤りやすい子音 /t//k//s/ について先行母音・後続母
増加した。また、調音結合の影響は先行母音よりも後続
音の構音への影響を検討することを目的に調査を行った。
母音に顕著に認められた。
【考察】/t//k//s/ いずれも先行母音・後続母音ともに [i]
の一方を [a] に固定し、もう一方を日本語 5 母音に変化さ
の場合に調音結合の影響が強く認められた。これは、[i]
せた 25 の無意味音節(例:先行母音 [ata][ita]、後続母
が前舌狭母音であるため、前舌部の拳上の影響が前後の
音 [ata][atɕi])を使用した。測定は EPG 人工口蓋床を装
子音に影響を与えたものと考えられた。また、/k/ におい
着した状態で単語を 5 回ずつ構音してもらい、2 ~ 4 回目
ては [e][ɯ] についても接触面が前方に広がった。これは、
の発話を分析対象とした。
[e][ɯ] が前舌母音や狭母音であるため、軟口蓋音である /
【結果】先行母音は /s//t/ においては [i] の場合に調音結
k/ に影響を与えたものと考えられた。
合の影響が大きく、他の母音に比べて硬口蓋と軟口蓋の
283
2
日目
【方法】発話サンプルは VCV 音節の先行母音か後続母音
2
ポスター演題
接触範囲が増加し、後方に接触範囲が広がった。/k/ にお
う現象が生じ、これは隣接する音素が互いに影響しあっ
口頭演題 日目
【目的】人間が音を連続して構音する時には調音結合とい
P2-6-03
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
右半球損傷によりプロソディー障害を生じた1症例 ~聴覚印象調査からの
一考察~
宮田祐志、中村晴子、大谷内秀子、杉山美香、西 千秋、谷田部麻美
株式会社日立製作所 多賀総合病院 リハビリテーション科
【はじめに】右半球損傷後、プロソディー障害を生じた
ション」「意図伝達」の項目が共通して中心値 4 以上であ
1 症例が冗談を話しても、侮辱・皮肉に聞こえる場面を
り、会話に比べ復唱・音読で問題を感じた傾向にあった。
観 察 し た。PT、OT、ST に 聴 覚 印 象 を 調 査 し、 プ ロ ソ
(自由記述式)「発話に違和感がある」が 97 %、「アクセ
ディー障害の日常生活への影響を考察した。【症例】70
ント・抑揚が乏しい」が 70 %。全員が音読と復唱の間に
代男性、右 MCAM1 領域の心原性脳梗塞、運動性構音障
差があると回答し、うち 80 %が復唱に比べ音読で「発話
害軽度(発話明瞭度 2 自然度 2)、記銘力低下、注意障害
不明瞭」「プロソディーが平板」と回答。【考察】結果よ
【調査方法】録音発話サンプル(1)自由会話(2)短文
り、プロソディーのアクセント・イントネーションは特
音読(3)長文音読と、
(4)アクセント強調短文(5)イ
に感情や意図を伝えるのに必要な要素と思われた。音読
ントネーション強調短文の音読と復唱を PT、OT、ST 計
では文字を見て読む事に注意が向きやすく、自由会話の
30 名が聴取し、聴覚印象を選択式と自由記述式で回答。
ように発話に感情を込めにくいため、プロソディー障害
選択式では発話サンプルの「違和感」「発音」「アクセン
がより大きく生じたと考えられた。プロソディー障害に
ト」「イントネーション」「間」「印象」「意図伝達」を各 5
よって参加制約を生じさせないためにも、日常会話場面
段階(1 全く問題ない~ 5 とても問題ある)で評価。自由
の観察と自由会話・復唱・音読とモダリティに分けたプ
記述式の分析はキーワードで分類し割合を算出。【結果】
ロソディーへのアプローチを行う必要性を感じた。
(選択式)自由会話で中心値が 4(問題を感じる)以上と
なった項目は「違和感」
「発音」
、その他の 4 つの発話サ
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
ンプルでは「違和感」「発音」「アクセント」「イントネー
P2-6-04
鼻咽腔閉鎖不全に対しCPAP療法を行なった一症例
谷村絵美 1)、金森祐治 2)
福岡リハビリテーション病院 リハビリテーション部 1)、福岡リハビリテーション病院 神経内科 2)
【はじめに】脳血管障害により鼻咽腔閉鎖不全を呈した症
認め、口蓋帆挙筋の筋活動が増強したと推察される。原
例に対し、持続的陽圧呼吸療法(以下、CPAP 療法)を
ら(1998)は口蓋裂 10 例に対する検討で 8cmH2O ま
実施した。その訓練効果と今後の検討課題について報告
では鼻腔内圧の増加に伴う口蓋帆挙筋活動の上昇を認め
する。【症例】70 代男性。右基底核~放線冠にかけて脳
たと報告している。一方、舘村ら(1994)は健常成人 3
梗塞を発症。訓練介入前の AMSD(鼻咽腔機能)におい
例に対する検討で各人においてある CPAP 圧を超えると、
て /a/ 発声時 3 度・ハードブローイング 6 度と鼻漏出を認
口蓋帆挙筋の活動はむしろ低下する傾向がみられたと報
め、発話明瞭度は 3 であった。【方法】訓練は発症 42 日
告している。本症例では最高圧を 8cmH2O としていた
目から開始した。CPAP 装置に接続した鼻マスクを装着
が、6cmH2O を超えると声量が低下し、開鼻声も増強し
し CPAP 圧をかけた状態で、定められた時間内でスピー
た。これは本症例も舘村らの報告と同様に CPAP 圧を高
チサンプルの音読を実施した。原ら(1998)の方法に従
めすぎると、口蓋帆挙筋の筋活動が低下し、抵抗運動の
い訓練は全体で 8 週間とし、徐々に CPAP 圧を上昇させ、
効果が得られにくかったのだと考えられる。【結語】鼻咽
訓練時間を延長した。【結果】AMSD において /a/ 発声時
腔閉鎖不全に対し CPAP 療法を実施し、発声時の鼻漏出
は 0 ~ 2 度、ハードブローイング 3 ~ 4 度、発話明瞭度 2
が軽減した。しかし、障害像や重症度に応じた CPAP 圧
と改善を認めた。【考察】鼻咽腔閉鎖不全に対する CPAP
の高さや訓練時間など、今後更なる検討が必要である。
療法は Kuehn らが考案した運動負荷療法である。CPAP
療法は発話時に抵抗運動が可能であるため、発話へ般化
し易い。本症例も訓練後は発声持続時に鼻漏出の軽減を
284
P2-6-05
「成人用構音検査」
(試案1)の作成~呼称・音読・復唱の評価~
日 程
宮田真衣、浮田弘美
大阪大学 医学部附属病院 リハビリテーション部
【検査方法】検査は原則として、直接記録をとりながら行
症状を把握し、分析することが必要である。本邦では一
い、許可が得られれば同時に録音も行った。呼称条件:
般的に Dysarthria の評価として、「標準ディサースリア
絵カードを 1 枚ずつ提示し、呼称を指示。呼称そのもの
検査」や「標準失語症検査補助テスト」が用いられてい
が困難な場合は語頭音ヒントを提示。それでも困難な場
る。しかし、それらは構音そのものを評価するという点
合は復唱とした。音読条件:文字カードを提示し、音読
では十分とはいえない。一方、小児領域では「新版 構
するよう指示。誤りがあっても原則として修正は求めな
音検査」(構音臨床研究会)があり、それでは各音を含む
いこととした。復唱条件:検者が 1 語ずつ音声提示し復
語彙の構音が評価できる。そこで、私たちはこの検査を
唱を求めた。
【試行結果】2014年5月から2015年12月までDysarthria
参考に成人用構音検査を作成した。
た。その結果、誤り音・誤り方だけではなく、語音位置
選択。また、発話状況によって構音が異なりうることを
や発話条件による違いの有無などを把握することができ、
鑑み、呼称・音読・復唱の 3 条件を設定した。そのため、
訓練への導入・訓練方法立案に役立っている。その一方
呼称用には絵カードを、音読用には文字カード(縦書き)
で、不備も見つかっている。例えば、名称が複数あるも
を作成した。結果は「新版 構音検査」と同様、構音点・
のや絵カードの問題から、意図した構音が得られない場
構音法ごとにまとめた表を作成し、誤りのみ記入するこ
合がある。今後、これらの問題点を修正し、より使いや
とにした。
すい検査法にしていきたい。
運動障害性構音障害に対するアプローチの現状と課題 ―報告書と検査に関
する項目を中心に―
1
ポスター演題 日目
に限らず発話に障害のある患者を対象に本検査を実施し
なること、すべて具体名詞であること、を条件に 50 語
口頭演題 日目
【作成概要】検査用語彙は、各語彙の語頭音がすべて異
P2-6-06
特別プログラム
【はじめに】Dysarthria 患者の構音の改善のためにはその
1
池 聡、石川裕治、土居奈央
高知リハビリテーション学院 言語療法学科
どちらでもない」の間が多く認められた。報告書を作成
害に対するアプローチの現状を把握し、今後の卒前教育、
している ST は 58 %であった。11 年目以上で最も自己評
卒後教育の在り方等について検討することを目的に調査
価が高く、「2:できている」よりも自己評価が高い項目
を行った。今回は報告書の作成に関する項目と検査に関
も認められたが、精神機能や他の言語障害といった構音
する項目を中心に検討を行った。【方法】高知県で勤務す
障害以外の項目あった。しかし、検査や評価の項目では、
ては 1 年目とほぼ同じ結果であった。【今後の課題】高知
士の人数、訓練室の数、検査道具・訓練機器について、
県で勤務する ST には、臨床経験 5 年以下の者が多く見ら
ナゾメーター・エレクトロパラトグラフィの有無である。
れた。電子カルテ化や、カンファレンス等の実施により、
ソフト面に対しては「1:十分にできている」~「5:全
報告書への記入に対しての自己評価が高いことが考えら
くできていない」の 5 段階で自己評価をしていただいた。
れる。記録の項目で経験年数間での自己評価が変わらな
質問項目は検査(「検査の選択」等)、評価(「タイプ分
かった要因として、20 名以上の ST が勤務する病院にお
類」等)
、訓練(
「訓練の目的の明記」等)
、説明(
「検査
いて、録画機器が 2 台しかない病院もあり、必要時に録
結果の説明」等)、報告書に関する質問である。【結果】
画機器が使用できない状況があるのではないかと考えら
ST の自己評価に関しては、経験年数の増加に伴い自己評
れる。
価は高くなっている。1 年目の自己評価は、他に比べ明
らかに低かった。全体的に、「2:できている」と「3:
285
2
日目
「3:どちらでもない」と言う結果であった。記録に関し
を行なった。質問内容は、ハード面に対しては言語聴覚
2
ポスター演題
る ST に対し、以下の内容についてアンケートによる調査
口頭演題 日目
【目的】言語聴覚士(以下 ST)による運動障害性構音障
P2-6-07
日 程
特別プログラム
口頭演題 日目
1
訪問看護ステーションにおける言語聴覚士の小児言語聴覚療法の取り組み
矢作 満
在宅リハビリテーションセンター草加 訪問看護部
< はじめに > 当訪問看護ステーションは主に高齢者の訪
言葉の遅れ、コミュニケーションの困難さに関係する児
問看護、リハビリテーション(以下、リハ)を行ってい
においては「自閉症」「広汎性発達障害」「言語発達遅滞」
るが、2011 年より言語聴覚士(以下、ST)が小児の訓
「アスペルガー症候群」、発音の困難さに関係する児にお
練を提供している。訪問リハを行う ST は少なく、その中
いては「機能性構音障害」「発音」「構音の歪み」、嚥下の
でも小児の臨床を行う ST も多くはない。そこで当施設の
困難な児においては「脳性まひ」「嚥下障害」などと記さ
約 5 年間の取り組みを訪問児の動向から分析し報告する。
れていた。相談経緯は「利用している保護者からの紹介」
< 対象と方法 >2011 年 4 月から 2015 年 12 月までに当
38 人「医師からの紹介」5 人「ホームページを見て」1
施設に相談があった新規児 44 名を対象とし、年度別相
人であった。< 考察 > 小児の場合、高齢者のように患者
談数、相談児年齢別数、性別数、主訴、診断名、相談経
と ST を結ぶケアマネジャーという役割の人がいない。そ
緯から分析した。< 結果 > 年度別相談数は 2011 年 3 人、
のため本施設では紹介による依頼が最も多くなったと思
2012 年 8 人、2013 年 7 人、2014 年 8 人、2015 年 18
われる。また家にいながら訓練が受けられるため兄弟の
人 で あ っ た。 年 齢 別 数 は 0 歳 1 人、3 歳 6 人、4 歳 9 人、
いる児、交通手段の利用が困難な児にとって利用しやす
5 歳 6 人、6 歳 7 人、7 歳 3 人、8 歳 2 人、9 歳 1 人、10
かったと思われる。ST としては生活に密着した支援をす
歳 1 人、12 歳 2 人、14 歳 1 人、16 歳 1 人、18 歳 1 人 で
ることができた。他施設等との連携、人員不足による未
あった。性別数は男児 35 人、女児 9 人であった。主訴は
対児への対応が今後の課題である。
「言葉の遅れ」22 名「発音」15 人「コミュニケーション
ポスター演題 日目
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
の困難さ」5 名「食事の困難さ」2 名であった。診断名は
P2-6-08
視覚障害と運動障害・知的障害を重複する症例とケア提供者との会話分析
知念洋美、喜安朋子
千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部 小児療法室 言語聴覚科
【緒言】AAC の恩恵を受ける重度コミュニケーション障
す 5 分間の会話を行った。a 群は語彙リストに基づき作成
害児者の多くは、選択のためのセットとして、視覚的な
した質問紙を使用、b 群は何も使用しなかった。対象 2 の
ディスプレイを利用する。視覚障害を重複する症例には、
退室後、対象 1 が意図の伝達度合いを 5 段階で評価した。
聴覚的に語彙の選択肢が提供される。医療環境における
同意を得て録音した会話を書き起こし、対象 2 の発話数、
ケア場面では、ディバイスの使用は困難で、コミュニ
形式、発話長、発話意図、間などについて分析した。【結
ケーション相手の技術や知識量により、会話の質が大き
果】両群の間で発話数、発話長、3 秒以上の間の回数、あ
く影響を受ける。【目的】視覚障害、運動障害、知的障害
いづちの回数、対象 1 が評価した伝達度合いに有意な差
を重複する 1 症例とケア提供者の会話を分析し、聴覚的
はなかった。発話意図では、叙述のみ両群に差があり、b
な語彙の選択肢が与える影響を考察する。【方法】1)対
群が a 群より有意に多かった(p<0.01)。両群のオープ
象 1 30 歳代の先天性失調性四肢麻痺患者 1 名。知的障
ン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの数にお
害、視覚障害を重複。言語理解:2 歳半レベル、言語表
いて差はなかったが、オープン・クエスチョン後の選択
現面:人工呼吸器装着による音声喪失と口腔器官の運動
肢に対して症例 1 の応答が成立する率は a 群で高かった。
障害により発語なし。指の開握による yes-no 表現と曖昧
【考察】質問紙の構造と語彙の選択肢の提供により、聞き
な手さしあり。2)対象 2 対象 1 のケア提供を行う施設
手のコミュニケーション技術を補完すると考えられる。
職員 10 名(看護師、保育士、生活援助員、理学療法士)。
3)手続き 対象 2 を職種、病棟勤務年数、対象 1 との親
近性が等しくなるよう 2 群に分け、yes-no 表現を引き出
286
P2-6-09
赤壁省吾 1,2)、篠原里奈 2)
就労移行支援事業所 ワークステーション未来 1)、天満病院 2)、ジュニアクラブ蔵本 3)
の後、12 ヶ月目に一般就労(障害者雇用枠)となり介護
取り組みの報告は少ないのが現状である。社会福祉法人
職員としてグループ法人内の介護施設に就職することに
みらいでは H26 年 4 月より発達障害のある青年を対象
なった。発表では就労後の様子についても報告する。【ま
とした就労部門(就労移行支援事業所)を開設しグルー
とめ】わが国において一般就労後の職場定着が課題に挙
プ内の医療・介護領域の就労及び就労定着に向けて取り
げられている。今までのような福祉的就労から一般就労
組みを行い始めた。今回、グループ法人の介護職員とし
への移行促進は、我が国の障害者重点施策の主たるポイ
て就労に至った事例を元に取り組みと今後の課題につい
ントである。言語聴覚士がコミュニケーションに苦手さ
て報告をする。【症例】自閉スペクトラム症 20 代男性で
を抱える方々への就労支援に参画していくメリットは非
WAIS-R にて知的水準は平均の範囲であった。幼少期に
常に高いと考えられる。より積極的に介入していく為に
言語聴覚療法を担当した経緯があり。専門学校卒業後、
本人の特性のアセスメントを行いコミュニケーション面
他施設に介護職員として就職するも退職。平成 26 年 X 月
をサポートすると共に就労先のスタッフに障害特性の理
より希望であった介護職員を目指し当事業所の利用開始
解を得ることや情報の共有をしていくことが重要である。
となった。【経過】実習開始後、他者視点のイメージを持
また、関わる実習先や職場を熟知し雇用部署との相談に
ちにくいなど「上手く言葉で伝えられない」「相手に対し
対応できるフットワークの軽さと情報収集能力が言語聴
ての振る舞いがわからない」等のコミュニケーション面
覚士には必要である。
1
ポスター演題 日目
で課題が見られた。課題点についてはロールプレイ等を
口頭演題 日目
通じて練習を行い個別支援を元に自己理解を深めた。そ
する取り組みが増加しているがまだ言語聴覚士の就労の
特別プログラム
【はじめに】発達障害のある成人を対象とした就労に対
日 程
グループ法人における就労の取り組みと現状における課題~発達障害の就労
の取り組みを通して~
1
口頭演題 日目
2
ポスター演題
日目
2
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