応用行動分析学(ABA)に基づいたポジティブな行動支援 畿央大学 教育学部 准教授 大久保賢一 発達障害や知的障害のある方々が示す行動上の問題(自傷、他害、器物破壊、かん しゃくなど)は、教育や福祉における大きな課題の 1 つとなっています。しかし、解 決方法が存在しないというわけでは決してなく、実際には、多くのエビデンスのある 実践が蓄積されています。本講座においては、「ポジティブ」な行動支援を実現するた めの 3 つのポイントについて解説させていただきます。ここで述べる「ポジティブ」 ということばには、 「積極的」と「肯定的」という 2 つの意味が含められています。 1 つ目のポイントは、 「行動を理解するための枠組み」です。行動を環境との相互作 用の中で分析し、 「なぜその行動をしないのか?」、「なぜその行動をやめてくれないの か?」といった行動の基本原理について解説します。 2 つ目のポイントは、 「スモールステップ」です。支援においてスモールステップが 重要であるということはしばしば指摘されることですが、行動支援を行う際の具体的 な手続きの例を示し、スモールステップの観点を取り入れた支援の組み立て方につい て解説を行います。 3 つ目のポイントは「罰的対応の問題点」についてです。現在、教育においては 「体罰」、福祉や家庭場面においては「虐待」が大きな社会問題となっています。いず れも嫌悪刺激によって対象者の行動を統制しようとする試みであるといえますが、こ のような手法にはいくつもの問題が存在することが明らかにされています。罰的対応 の問題点について検討することと合わせて、問題行動の「機能」に基づいたポジティ ブな行動支援のプロセスについても解説を行います。 本講座は、狭い意味での「言語聴覚士の仕事」には関連性が薄いかもしれません。 しかし、本講座は環境因子を重視する ICF に基づく障害観、あるいは QOL の向上を支 援のゴールとする価値観に基づき、支援の本質について検討するものでもあります。 多くの方々と一緒にこれらの問題について考えることができればと思います。
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