楽読 (ラクヨミ) 2016年6月13日 Vol. 1,110 資金シフトを背景にペソが売られたものの、 メキシコの経済状況は引き続き堅調 主要新興国通貨の2015年末比の騰落率を見ると、対米ドルではブラジル・レアルやロシア・ルーブルを中心 に多くが上昇しているものの、メキシコ・ペソは下落しています。また、対円でもペソの軟調が目立ちます。 メキシコでは、失業率がリーマン・ショック以前の水準に低下するなど、雇用の改善が続いており、賃金の力 強い上昇につながっています。そして、景況感の改善や銀行融資の増加などもあり、消費の拡大が続く中、 GDPも堅調な伸びを続けています。一方、米国向けが中心の輸出は期待外れながら、これは、メキシコの自 動車生産が燃費の良い乗用車であるのに対し、ガソリン価格の低下を受け、足元の米国での売れ筋がピック アップトラックなどに偏っていることの影響によるものとみられます。ただし、最近の燃料価格の持ち直しなどを 踏まえると、燃費重視の動きが米国で再度、拡がると考えられます。また、通貨安の下でもメキシコでは経常 赤字が続いているものの、海外出稼ぎ労働者などからの本国送金の堅調によって抑えられており、しかも、対 内直接投資などによって補われています。このように、メキシコ自体の状況は総じて良好と考えられます。とこ ろが、ブラジルやロシアなど、従来、厳しい評価がされてきた新興国が、原油価格の持ち直しなどを契機に最 悪期を脱しつつあるとして見直され、それらの通貨に投資資金が移行する際、これまで改革への取り組みや 市場の高い流動性などを背景に多くの投資家が買い持ちしていたメキシコ・ペソから資金が流出した模様です。 ペソの実質的な価値を主要貿易相手国の通貨で加重平均した「実質実効為替レート」は、90年代半ばの通 貨危機直後の水準を下回るなど、売られ過ぎとみられます。また、上述の短期的な投資資金の移行が一巡し つつあるとみられるほか、経常収支改善の兆しや、本国送金および対内直接投資の堅調なども考え合わせる と、今後はペソの持ち直しが期待されます。さらに、原油価格の反発が歳入にプラスに働くこともあり、メキシコ の財政目標達成の可能性が高まっていること、米国が6月に利上げを見送る場合でも、メキシコ中央銀行が同 月末に利上げを行なう可能性が高いとみられること、米国と同様、メキシコでも主要株価指数の最高値更新が 対内直接投資 在外メキシコ人による本国送金 視野に入っていることなども、ペソを支えることでしょう。 経常収支 メキシコのGDPと経常収支等の推移 (2008年1-3月期~2016年1-3月期) メキシコの通貨と政策金利の推移 (2008年1月初~2016年6月10日) (円) 8 8 16 GDP成長率(前年同期比) 6 対米ドル(左軸) 対円(右軸) 10 14 4 2 12 12 0 -2 14 10 -4 -6 16 8 -8(億米ドル) 300 18 6 対内直接投資 12年12月、 250 ペニャニエト政権発足 在外メキシコ人による本国送金 20 4 200 経常収支 (%) 10 150 政策金利 100 8 注:2008年は1月18日以降のデータ 50 6 対内直接投資 0 在外メキシコ人による本国送金 4 -50 経常収支 -100 (年) 2 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 08 09 10 11 12 13 14 15 16 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成 (%) (ペソ) ペ ソ 高 ペ ソ 安 ※上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。 (億米ドル) (億米ドル) 00 50 00 50 00 50 0 50 ■当資料は、日興アセットマネジメントが市況等についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘 資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建 資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことが (億米ドル) 300 あります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付 250 目論見書)をご覧ください。 1/1
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