いきいき教育地域人材活用事業活用事例 富士吉田市立吉田小学校 1 はじめに (1)本校の概要 富士山北麓に位置する本校は,学区内に冨士浅間神社があり,江戸時代から昭和にかけ,富 士山信仰の「富士講」で栄え,8月26日には,富士山の夏山終いとして行われる日本三奇祭 の一つに数えられる「吉田の火祭り」がある。 旧校訓として「富士山ノ如ク 雄大尊厳ナレ,富士山ノ如ク 確固不動ナレ,富士山ノ如ク 純良潔白ナレ」が掲げられている。富士山の裾野に広がる豊かな自然に囲まれ,四季折々の美 しい風景と重なる本校は,在校生,卒業生,地域の人々の心の拠り所ともなっている。また, 温水シャワー付き屋内プール,多目的ホール,パソコンルーム等が備えられた快適な教育環境 の中で,全校児童が日々の生活を送っている。 本年度の児童数は638名,23学級(特別支援学級2クラスを含む)であり,さらに市立 病院内に院内学級も併設している。 一昨年,山梨県学力向上パイロットスクール事業の指定を受け,基礎学力の向上の研究を重 ねてきている。また,富士山に最も近い学校でもあり,富士山を考える富士山教育も地域教育 として盛んである。 (2)地域人材の活用について 学力向上パイロットスクールの指定を受けた際,地域教育連携部を立ち上げ,地域にある教 育資源,外部人材の洗い出しを行った。農業指導,うどん作り,富士山レンジャー,盲導犬協 会,折り紙指導等多くの地域人材を活用しての教育活動を行っている。 富士吉田市は音楽教育にも力を入れており,金管バンドフェスティバルや親善音楽会などの 音楽活動を市内全小学校で行っている。本校では,10年以上も前から「いきいき教育地域人 材活用推進事業」を教育活動に取り入れ,4年生の親善音楽会に向け,合唱指導をお願いして いる。子供たちは,発声指導から表現指導まで,専門家ならではの技術指導を受け,合唱の実 力を付けている。 2 講師名及び活用教科等 (1)講師 勝俣 計子(かつまた けいこ)先生 国立音楽大学にて声楽を専門に学び,現在学区内に在住であ る。声楽・ピアノ教師として数多くの門下生を指導している。 また,多くの場で,ボイストレーナーとしても活躍中である。 幼児から大人まで幅広い年代層を対象とした,音楽指導の実戦 経験が豊富で,児童の実態に応じた適切な指導をしていただい ている。市内の各小学校に合唱指導者として招かれ活躍されて いる。 3 活動内容 日 時 平成27年 6月 5日(金) 7月17日(金) 9月25日(金) 10月 1日(木) 10月14日(水) 10月22日(木) 4 場 所 吉田小学校 体育館及び多目的室 対 象 吉田小学校第4学年103名 内 容 親善音楽会発表に向けた合唱指導 指導のねらい ・合唱に興味,関心を持ち,音楽に親しむ。 ・発声の基本的技術を身につけ,きれいな声で合唱する。 ・友だちと音を合わせ,美しい音色をつくり上げることを通して,情操を養う。 5 活動のようす 吉田地区親善音楽会は,60年を超える歴史を持つ,富士吉田市をあげての大きな祭典であ る。吉田小学校もこの歴史の中にあり,現在在籍している子供たちのおじいちゃん,おばあち ゃんの中にも,この親善音楽会に参加した経験を持つ方もいるほどである。 吉田地区は,この親善音楽会に,全ての学校で四年生が参加することになっており,音楽を 通しての学校間交流も図られている。 本校では,ここ十数年,親善音楽会に向けての合唱指導に「いきいき教育地域人材活用推進 事業」を利用させていただいている。6回,12時間の指導の中で,合唱の技術指導もさるこ とながら,歌うことの楽しさ,仲間とのハーモニーの喜びなど,子供たちの感性を磨くような 指導も合唱を通して指導いただいている。 第1回の指導は6月に行った。基礎的な発声練習を中心 に指導していただいたが,夏休みに向けて個人練習ができ るようにというねらいもあり,早い時期に第1回練習を設 定した。子供たちは初めての本格的な発声練習に目を輝か せていた。 7月に行われた第2回練習は,発表曲も決まり,発声や 基本練習に加え,曲づくりにも入っていった。いよいよ学 年全員の歌声が一つになり始めた。 2学期,運動会も終わった9月後半から10月にかけては,発表に向けての曲づくりが本格 的に行われた。パート練習,曲想の練り上げ,ピアノ指導,全体の合わせ・・・子供たちの実 力はメキメキと上がり,本番が楽しみになってきた。「ここではこんな情景を浮かべて歌って みよう」「となりの人の声は,聞こえるかな?」等,子供の目線に立った指導,声かけをして いただいたので,子供たちも分かりやすく,素直に歌えた様子であった。 第6回,最終練習は本番1週間前に行われた。本番さながらの練習に,子供たちの緊張が伝 わってきた。細かな歌い上げについても指導が入り,練習を始めた頃の合唱とは全く違って聞 こえた。また,子供たちの表情にも自信があふれていた。 6 児童の感想より ○最初みんなで歌った時は音程やリズムがバラバラでしたが, 勝俣先生に教えてもらったら,とっても上手になりました。 ○一番難しかったのは,全員の声を合わせることでした。勝俣 先生が教えてくださった素晴らしい親善音楽会になったと思 います。 ○私たちが一番先生に注意されたところは「笑顔」です。緊張 して顔が険しくなったかもしれないけれど,しっかりときれ いな声で歌えました。 ○本番も「ほわ」の顔や口を縦にすることを忘れずに,みんな 歌えていました。たくさんの人がいる中で,しっかり声が響 いていました。 7 本事業を活用しての成果と課題 ○専門家の方に指導していただくことで,担任と違い, 指導前から,子供たちのモチベーションが上がってい た。子供たちの親善音楽会に対する意識も上がってい た。 ○専門家ならではの,技術指導を受けることができた。 この指導法は教師にとっても,今後の学習指導に役立 つものであった。 ○合唱指導を通して,歌が好きな子供が増えた。音楽の 時間や朝の会など,大きな声で歌う児童が増えてきた。 ○合唱を通して,友達の良さを認めたり,全員でつくり上げる喜びを味わったりと意義の深い ものであった。 ○指導の時間が決まっているので,この中での指導となるとやりきれない部分もある。 ○今後,卒業式に向けての合唱指導もお願いしたかった。 【勝俣先生からの手紙より】 ◇3曲とも皆さんが心をひとつにしてきれいな歌声で堂々と発表していました。毎日頑張って 練習した成果の表れだと思います。これから高学年になりますが,この合唱を通じての頑張 りを忘れずに,素晴らしい音楽をつくって,楽しい学校生活を送ってください。
© Copyright 2025 ExpyDoc