GKH019807 - 天理大学情報ライブラリーOPAC

1
0
3
テ レビ政治討論における弁明戦術の分析
島
田
祐
司
〔
辛 旨〕 本稿は,会話分析の枠組みの中で体面の概念を補足的に利用 して,テレビ政
治討論における司会者と政治家の相互行為に表出される弁明戦術の解明を試みたもので
正当化」「譲歩 」「
問題事象を先に定式化 して弁明」「
回答 しない理
あるO分析の結果,「
由の弁明」「ごまか し・す りかえ」の 5つの戦略が認められた。また,政治家がどのよ
うな弁明戦術を用いるのかは,司会者がどのような意見を質問に取 り込むかによって影
響を受けることが明らかになった。
〔
キーワード〕 テレビ政治討論,弁明,会話分析,相互行為,体面
1.は
じ め
に
『
大辞林』 によれば,弁明 とは 「自分の言行 などを説明 し,相手の理解 を求めること」 と記
されている。一般 に弁明 と言 えば,単 なる説明 とは異な り,人間関係 にとって重要な意味 をも
9
9
4)
,何 か社会的 に
つ事象 に関 して行 われる説明 とい う点で,よ り狭 い概念であ り (
安藤 ,1
容認で きないような不都合 な事態 に際 してその否定的な意味合いを変えようとす るさまざまな
言語 ・非言語行為 を指す。我々は弁明を通 して自分あるいは自分 と深 く関わっている個人,莱
団,団体 などに向けられた社会的非難の軽減や回避,印象管理,相手 との関係修復 などを行 っ
ている。
コミュニケーシ ョン学,社会心理学の分野では,これ までに も比較的多 くの弁明戦術や弁明
の効果 についての実証的研究がなされ,知見が得 られて きたが,現実の行動 を観察 した ものや
記録 した ものは少な く,その多 くは仮想の状況下 に置かれた ときにどのような弁明戦術 を採 る
かを質問紙等 を用いることによって調査 した ものであ り,弁明行為 を動的なコ ミュニケーシ ョ
ンとしてではな く,静的に捉 えたものがほとん どである。
日本の21
世紀の幕開けは,KSD 事件,外務省機密費問題 な ど,政界 を揺 るがす さまざまな
問題が噴出 し,関係する政治家達はテ レビ討論会 に参加 して視聴者である国民が抱 くそれ らの
問題,疑惑,あるいはその対応 にまつわる否定的な意味合いを緩和 し,イメージダウンを最小
限に押 さえる弁明に終始 した。そこで本稿では,テ レビ討論会での司会者 との相互行為 におい
て参加 した政治家が どの ような弁 明戦術 を用 いてい るか を会話分析 的 アプ ローチ (
サ ーサ
9
9
8;But
t
ny,1
993)を用いて,弁明行為 を相互行為 における動的 なコ ミュニケーシ ョ
ス,1
ン行動 と捉 え,そのパ ター ンの分析 を試みた。
2.先
行
研
究
2- 1. 会話分析 における弁明の概念
弁明の定義は,研究者の立場 によってその様相 を異 にしている(
詳細 は But
t
ny,1
9
9
3,pp.1
4
1
6を参照)。最 も一般的な ものは,「問題含みの状況か ら生 じた社会的不和 の修正 を目的 とし
1
0
4
天 理 大 学 学 報
Sc
o
t
t&Ly
ma
n ,1
968)
J とい う捉 え方である。問題含みの状況 (
pr
o
bl
e
mat
i
c
た行為者の言明 (
s
i
t
uat
i
o
n)とは,例 えば何 らかの失敗の ように,行為者の信用 を傷つける ものであった り,侮
辱の ように,他者の感情 を害する ものであ り, この ような状況下では, 自分の とった行為 に対
して行為者が説明 した り,他者か ら説明 を求め られた りするが,弁明は,明 らかに不適切であ
った り,普通でない行動 に対す る説明であ り,そのような問題含みの状況 を回避 した り,修復
することで,当事者間の社会的均衡 を回復 させ ようとする試みであるとしている。 この見方で
は,弁明を非難 (
bl
ame
)に対する返答,すなわち,「
非難 -弁明」 とい うプロセス として捉 え
ている。
一方,会話分析 では,弁 明 を 「
相互行 為 を理解 され うる もの にす るための進行 的 な行為
(
But
t
ny,1
993,p.1
5)
」 と捉 えている。ある特定の行為が,広 く共有 された一般常識で判断 し
て適切であるか ぎり,その行為 自体が行為者の行動 を説 明 しているので,弁明す る必要 はな
く,他者か ら弁明 を求め られることもないが,その行為が一般常識では理解で きない ものであ
れば,それが 「
問題のある状況」 とな り,弁明が要求 されることになる。例 えば,会社員が机
で書類 に目を通 し,メモを書 き,電話 をかけるなどの行為 は,通常の仕事 に従事 している姿 と
して,他 の社員 に自分の行動 を説明 しているので,弁明は求め られない。 しか し,同 じ会社月
が出社時刻 に大幅 に遅刻 した り,何 も告げず に長時間席 を外 していれば,明 らかに通常の行動
か ら逸脱 しているので,その会社員は自分の行動 を説明 した り,あるいは周 りの人か ら弁明を
求め られるか もしれない。 この ように,会話分析では弁明を特殊な行為 としてではな く,人間
行動 に常 につ きまとう潜在 的な概念 として捉 えてお り,通常の行為 を逸脱 した場合 に,そのギ
ャップを埋めるために表面化する言語行為だ と考 えている。
But
t
ny(
1
993)は,会話分析の枠組みで弁明を捉 えた場合,非難 に対 しての返答 とい う 「
非
問題 の語 り一疑 問 ・追 求一弁 明」や 隣接 ペ アにお け る
難 一弁 明」の発話連鎖 だけで な く,「
「
好 まれない応答形式 としての」弁明 とい う捉 え方 もで きると主張 している。
「
問題の語 り-疑問 ・追求 一弁明」 とい う発話連鎖は,行為者が 自身の失敗か ら生 じた問題
の説明 をすることによって,非難ではな く,聞 き手の疑問や真相追求の応答が求め られ,それ
に対 して弁明するとい うプロセスである。
「
好 まれない応答形式 としての」弁 明 は,会話分析 で重要 な研 究 テーマであ る隣接 ペ ア
(
ad
j
ac
e
nc
ypai
r
)の概念で捉 えた ものである。隣接ペ ア とは,「あい さつ -あい さつ」,「
質問
一回答」,「
勧誘一受諾 ・辞退」の ような異 なった 2人の会話の形式で,会話の順番 を 2者 1租
のセ ッ トとして捉 え,話 し手 A が第 1ペア部分 を発話 したら,続いて話 し手 B が第 2ペ ア部
映
分 を発話するとい う会話上の規則の ことである。「
勧誘 -受諾」の隣接ペアを例 に取れば,「
画見 に行 かない ?
」が第 1ペ ア部分 であ り,「
いいね」が第 2ペ ア部分 となる。 この規則 で
は,第 2ペア部分 は第 1ペア部分で発話 されたことへの応答であることが期待 される。すなわ
ち,「
条件づけ られた適切性 (
c
o
ndi
t
i
o
na
lr
e
l
e
vanc
e
)
」 によって,第 1ペア部分 と第 2ペア部
分 は結 びつけ られているのであ り,第 2ペア部分 は第 1ペ ア部分の内容 に適切でなければなら
ない とい う拘束 を受けるのである。第 1ペア部分 と第 2ペア部分の発話の関係 には, よりよく
期待 に答 えるもの と,期待 に反す る ような ものがあ るが,この とき,前者 を 「
好 まれる応答
(
prefe
r
r
e
dr
e
s
po
ns
e)
」 といい,後者 を 「
好 まれない応答 (
d
i
S
pr
e
f
e
r
r
e
dr
e
s
po
ns
e
)
」 と呼んで
いる (
メイナー ド,1
9
9
3
)
。好 まれない応答 では,間,前置 き,ため らい,感謝,謝罪,弁明
な どの言語的特徴 が顕著であるが,好 まれる応答 ではこの ような特徴 は見 られない (
But
t
ny,
1
993,p・43)
。例 えば,パーティーに招待 されたとき,その招待 に応 じるのであれば, これは
1
05
テレビ政治討論における弁明戦術の分析
相手か ら見れば 「
好 まれる応答」 なので,通常,なぜ招待 に応 じたのか を説明す る必 要 はな
い。一方,招待 に応 じなければ,相手か ら説明を求め られた り,断った本人がパーティーに行
けない理由を説明す る場合が少な くないが, これは,招待 を断る行為が,相手か ら見れば 「
好
,
非難の返答
まれない応答」 だか らだと考えられる。「
好 まれない応答形式 としての」弁明は 「
But
t
ny,1
993,p・61)
」
として機能 しているのではな く,む しろ非難 を回避 しようとする行為 (
だと考 えられる。
従来の弁明研究の多 くは,非難 に対 しての応答 とい う受け身的な側面 を強調 し,弁明が どの
ように機能するのか を説明するものであった。 しか しなが ら,会話分析の視点では,弁明は,
問題 となっている事柄 を積極的に構築 し,定式化 (
f
o
mu
r
lat
i
o
n)する目的で行われるとい うよ
り能動的な捉 え方 を している。弁明には行為者の立場や相手 との関係 を明確 にするとい う機能
があるが,弁明を行わない限 り,その関係が明 らかにならないことが しば しばある。弁明が求
め られるということは,その弁明の対象 となっている問題含みの事象の意味合いが,交渉 しだ
いで変更可能であ り,行為者が遡及的にその意味合いを再構築で きる可能性があるとい うこと
を意味 している。 したがって,弁明は,言語 を介 して問題含みの事象に対 して望 ましい意味づ
けを再構築する相互行為 と捉 えることがで きる。問題の定式化 とは,その間題の性格やその問
題 に対す る人々の立場 を弁明を通 して表出す る行為であ り,弁明はその問題 に関する回答者 自
身の見方 を定式化する もの として捉 えることがで きる (
But
t
ny,1
993)
0
会話分析では,前述の隣接ペアによる条件づ けられた適切 さの視点か ら,第 1ペア部分 と第
,
2ペア部分が どの ように結 びついているのかに研究の焦点 を当てる。例 えば 「
非難 一弁明」
の隣接ペ アの場合,1. 非難の形態 は,その応答 として弁明 に対 して, どのような弁明でなけ
ればならか 、
のか とい う条件づけ行 う 2, 非難 を受けた応答者 は,弁明の表出によって,積
極的に間趨含みの事象 に関連づ けを行 う, とい う 2つの前提 に基づ き,弁明の適切 さを検討す
るのである。特 に後者の前提 に関 しては,行為者は質問者か ら呈示 された非難の内容 に応答 し
ているのではな く,弁明を通 して,その事象で説明すべ き問題点 と行為者の立場 を構築す る,
という視点 に立 ち,表出される弁明行為が,非難か ら生 じた 「
条件づけられた適切性」 によっ
て どの ような影響 を受けているのか を記述 し,その規則性 を兄いだす ことを 1つの研究テーマ
としているのである (
But
t
ny,1
993)
0
2-2. 弁明戦術の類型
Sc
o
t
tandLyman,1
968)
0「
弁解」 と
弁明は 「
弁解」 と 「
正当化」の 2種類 に大別で きる (
は行為者がその事象の否定的な意味合いを認めなが ら,その責任の全て,あるいは一部 を否定
す る ものである。例 えば 「
道路が混んでいて渋滞 に巻 き込 まれた」 とい う発話 は,遅れたこ
,
とが不適切であることは暗に認めなが ら, 自分ではどうしようもで きか 、
状況のせいにするこ
とで行為者 の責任 を軽減 しようとす る 「
弁解」である。一方
,「正当化」 とは,行為者が責任
を暗 に認めなが ら,問題 となっている事象の否定的な意味合いを弱めようとする言明である。
「どうして も今 日中に会社で仕上げな くてはならない仕事があった」 とい う発話は,仕事 とい
うよ り重要な事柄 に訴 えることによって,帰宅が遅れたことを正 当化 しようとす る試みであ
る。すなわち,責任 とい う概念で 「
弁解」 と 「
正 当化」 とい う 2つの弁明戦術 を考慮 した場
,「弁解」は,不適切 な行為 によって生 じた状況で,行為者の責任 を弱めるための ものであ
り,
「
正当化」 は,責任 を認めなが ら,問題 となっている事象の性質 に向け られ る言明 と位置
令
づける事ができる。
1
06
天 理 大 学 学 報
「
弁解」 と 「
正 当化」の概 念 上 の 区別 の有 用性 は多 くの研 究者 の支持 を得 て い る (
安
藤 ,1
9
9
4;荻原 ,1
9
9
4;But
t
ny,1
985)が,Sc
ho
nbac
h(
1
990)はこの二つの分類では捉えき
れない弁明方法があると主張 し,「
譲歩」 と 「
拒否」 という談話形態 を新たに加えている。「
譲
歩」 とは,問題の事態が相手の抱 く規範的な期待か ら逸脱 したものであ り,その責任の全て,
あるいは一部を弁解や正当化せずに容認する言明であ り,遺憾の意の表明,保障や賠償の申し
出といった行為 を含 んでいる。「
譲歩」 には,責任 を認めるという意味で 「
謝罪」 も含 まれる
が,「
譲歩」がその問題の事態の否定的部分 を自分の関与 に言及せずに認めるような弁明が含
まれるという点で,自分の関与 をも是認する 「
謝罪」 よりもより包括的な概念 として捉えるこ
とがで きる。一方,「
拒否」 とは,不都合な事態の発生や 自分 との関わ りを真 っ向か ら否定 し
た り,他人に責任 を転嫁 した り,弁明する事 自体 を回避するといった言語的戦術 を指す。
これ ら4種類の弁明戦術が,弁明後の当事者間の人間関係 にどう影響するのか という視点で
捉 えた場合,「
譲歩」が最 も緩和的で,「
弁解」,「
正当化」,「
拒否」 という順 に関係 を悪化 させ
る可能性が高 くなる。一方,自己の体面 という視点で捉 えれば,「
譲歩」が最 も体面 を脅かす
行為であ り,「
弁解」,「
正当化」,「
拒否」の順で,その程度は低 くなるが,相手の体面の観点
か らは,それが逆転 し,「
譲歩」,「
弁解」,「
正当化」,「
拒否」の順で体面 を威嚇する行為 にな
Mc
La
ughl
i
n,Co
dy,& 0'
Har
e,1
983)
0
る(
2-3.テ レビ政治討論の特徴 と政治家の体面
テ レビ政治討論の最大の特徴は,質問一回答の構成で討論が行われるという点であ り,司会
者が要求 しない限 り,ゲス トである政治家が話すことは期待 されていないという点である。過
常,質問は司会者か らなされるので,司会者 は話題設定 に関 しての決定権 を有 しているが
(
Her
i
t
age & Gr
eat
bat
c
h,1
991)
,政治家は,回答する前, もしくは回答 した後で会話の話題
age
ndas
hi
氏i
ngpr
o
c
e
dur
e)と呼ばれる方法で,多少な りとも
をシフ トさせる話題移行操作 (
話題 に影響を与えることがで きる (
Gr
eat
bat
c
h,1
986)
。NG & Br
adac(
1
993)は,「
今 日の
p.87)
」と
政治プロセスの適切な分析 には公共討論 における話題操作の分析が不可欠である (
主張 し,政治討論 における話題操作の重要性 を強調 している。
テ レビ討論の もう 1つの顕著な特徴は,討論が参加者間のみで行われているわけではな く,
実際には多数のテ レビ視聴者にその討論 を見せるという目的で行 われているということである
(
Hel
i
t
age,1985)
。そのため,司会者は,視聴者が参加者の意見を理解 しやすいように,要約
した り,解説 を加えた りする。
司会者の中立性 もテ レビ政治討論の特徴の 1つである。Cl
a
yman(
1
988)によれば,テ レビ
討論のディスコースは,司会者が参加者に質問 し,参加者がその質問に回答するという一方的
な形式で行 われるため,司会者は中立性 を保持することが求め られ,評価的あるいは論争 を呼
ぶ ような質問を行 う際には,報道のバイアスという批判 を回避 し,質問の中立性 を確保するた
めに,(1)司会者 自身の評価や意見を含んだ文 を疑問文 という形態で質問に埋め込む, (2)
対立す る意見 を持つ第三者の意見 を自分 の質問 に取 り込 む, (3) 質問 を緩和 した形式 で行
う, とい う 3つの戦術 を頻繁 に利用することにより,その質問 と自分 自身の距離 を遠 ざける配
慮 をしていることを明 らかにしている。
テ レビ政治討論で政治家が どのような弁明を行 うかは,政治家の保持すべ き体面の問題 と深
o
wn & Le
vi
ns
o
n(
1987)は,体面 を 「
積極的な体面 (
pos
i
t
i
vef
ac
e)
」と
く関わっているoBr
ne
gat
i
ve f
ac
e)
」 に分類 し,積極的な体面 を,他者から認められたい という
「
消極的な体面 (
テレビ政治討論 における弁明戦術の分析
1
07
願望,消極 的な体面 を,行動 の 自主性 を保 持 したい とい う願望 と定義 した。Bul
l
,El
l
i
o
t
t
,
pa
l
me
r
,& Wal
ke
r(
1
996)は,政治討論 とい うコンテキス トにおいては,政治家の積極的体
面のほうが消極的な体面 よりも重要であると指摘 している。「
積極的な体面」が重視 されるの
は,民主主義的に選出された政治家の政治生命は,選挙区の人々に認め られるか どうかにかか
っているか らであ り,「
消極 的な体面」が重視 されないのは,政治家 はテ レビ討論会 に参加す
ると同意す ることで, 自分 自身の行動の 自由,す なわち,「
消極 的な体面」が制限 されること
lら (
1
9
9
6,1
9
9
8) に よれ ば,政 治家 に
をす で に承諾 してい る こ とにな るか らで あ る。Bul
は,「自分 自身の体面 (自分 自身の能九
知識 な ど)
」,「
重要 な他者の体面 (
選挙民な ど)
」,
「
所属する政党の体面」 とい う 3つの保持すべ き体面があ り,テ レビ討論 に参加するのは, こ
れ らの体面の向上 をめ ざすの と同時 に,政治的に敵対関係 にある相手 などの否定的価値 を持つ
相手の体面をサポー トしないようにす る事が 1つの目的だ と指摘 している。
3.分
析
3- 1.データと分析方法
分析対象 としたデー タは,2
0
01
年 1月か ら 2月にかけてテ レビ報道 された 「
報道2
0
01
」(
フ
ジテ レビ系),「日曜討論」(
NHK),「サ ンデープロジェク ト」 (
テ レビ朝 日系)の 3種類の討
論会で,特 に KSD 疑惑,外務省機密費問題,えひめ九一米国海軍原子力潜水艦衝突事故 の対
応で浮 き彫 りになった危機管理問題 に関する約1
0時間分 をビデオ録画 し,そこから音声 データ
を トランス クリプ ト作業 により文字化 した。分析 の対象に したデータはすべて司会者 と政治家
の討論で,民間人や研究者 など政治家以外のゲス トが加わった討論 はデータの対象外 とした。
t
ny
作成 した トラ ンス ク リプ トの うち,政治家 に よる弁 明部分 をデー タか ら抽 出 し,But
(
1
993)の示 した会話分析手法 を基 に,Bul
lら (
1
9
9
6)が指摘 した体面の理論 を援用 して,司
会者 と回答者である政治家の相互行為 に見 られる弁明戦術の解明 を試みた。具体的には,司会
者が どのようなや批判や非難を質問に取 り込んでいるのか,それに対 して回答す る政治家が,
自分 自身,所属政党,重要な他者の体面 に配慮 しなが ら, どの ように質問の対象 となっている
問題点 を定式化 し,望 ましい意味づけを構築す ることで,批判の緩和,回避等 をはかっている
のかなどに焦点 を当てた。分析の結果,次の 5つの弁明パ ター ンが明 らかになった。
(1)正当化
(
2)譲歩
(3)弁明すべ き問題の定式化
(4)回答で きない理 由の弁明
(5) ごまか し ・す りかえ
3-2. 正当化
テ レビ政治討論会では,司会者は,報道の中立性 を保ちつつ も,国民 に代わって政治の公平
性や適切 さを見張 るチェック機能の役割 を果 たすため,討論 に参加 している政治家 とは反対の
立場 を取 り,対立す る解釈,事実 を提示 して,挑戦的な質問をすることが多 く,批判的な評価
を示す発言 をした り,対立する見解 を示す第三者の意見などを自らの質問に埋 め込むことによ
But
t
ny,1
993)
。司会者が質問に第三者意見 を引用 した
って政治家 に挑戦 し,弁明を求める (
り,対立する解釈,事実 を取 り込 む という行為 には,視聴者-情報 を流す とい う機能だけでは
1
08
天 理 大 学 学 報
な く,構築 された質問の理論的根拠 になる とい う側面 も含 まれてお り,政治家が理 由 もな く反
論す ることを困難 にす る。 この ような挑戦 に対 して,政治家 は,明示的,非明示的 に質問- の
不 同意 を表明 し, 同意 しない理由を正当化す る弁明 を行 うのが一般的であ り,司会者か ら出 さ
れた意見 に同意 しない場合,回答者である政治家は, しば しば問題点 を自分 に都合のいい視点
で捉 えることによって,反対理 由 を説明す る傾向が見 られ る。
(1)日曜討論
2/4
司会 : ただ尾身さんあの :自民党の森派の会長の小泉 さんはね :疑惑 をもたれた議員は,
積極的に証人喚問でもなんでも出ていくべきではないか と,こういうことを言って
お りますが,これはまだ党内の多数意見にはなってないんですか ?
尾身 : 私 もですね,あの :そういう意味で,私 どもとしてですね :棟極的にこの間題の解
明をするという姿勢については何 ら (
.
)変わってお りません。最初から私 も申し
上げておるんです。ただ,そこをどういう形でやるかということについては,その
証人喚問のや り方が,いわば,人民裁判 とかからすの裁判 とか,そういうような形
になってですね :この真相の解明 というよりも,その政治パフォーマンスになって
いるいうような実態がある。 したがって,あの政倫審 というのはその反省からでき
た (
.
)あの組織で,だいたいあの :自由党の小沢 さんがですね :自分が委員長の
時に,共産党だけ反対 しましたけれども,全党一致で (
-)あと全党一致でつ くっ
たものです。 したがってこの種の問題については本当は,まさに政倫辛で,その :
扱 うべ き問題であるというふうに私は考えてお ります。‥.(5行省略)… もちろ
ん,あの :きちっとですね (
.
)国民の皆様の理解 と納得がで きるような対応 をし
てい きたい と,こういうことで (
.
)あ ります。あのただ (
.
)それによってです
ね :予算を人質にとって,予算委員会をス トップした り,審議拒否をした りしてで
すね :やるというような,従来パターンの野党の行動はぜひ,これは避けていただ
きたいと。なぜなら国民のこの (
.
)生活,経済がかかっている (
.
)問題ですから
そこはきちっとやっていきたいと。
司会者 は, 自民党森派会長である小泉氏 の証人喚問 に賛成す る旨の発言 を引用 し,証人喚問
への消極的な対応へ の批判 を合意 した質問 を している。 この ように,司会者が回答者の所属党
内有力者の内部批判 を引用 す るこ とによ り, 自身の中立性 を保持 してい る。 この質 問 に対 し
て, 自民党幹事長代理の尾 身氏が質問 に否定 的な見解 を示せ ば,党 内の不協和音 を増幅 させ,
結束 を乱す可能性 につ なが りかねず,証人喚問に同意す る発言 をすれば, 自民党議員 を窮地 に
追い込 むこ とになるだけでな く,党 自体のイメージを損 なう可能性が高 く,野党側 の主張 に屈
服す ることに もなるため,積極 的な体面 を失 うこ とにな り,同意す ることもで きない。 この よ
うに,明示的 に肯定 的な回答 も否定的な回答 もで きない ようなジ レンマ に陥 った状況 を,Ba
ve
l
as
,Bl
ac
k,Cho
vi
l
,& Mu
ll
e
t
t(
1
990)は 「回避 と回避 の衝突 (
a
vo
i
danc
e
a
vo
i
da
nc
ec
o
n」 と名付 け,政治討論では塀繁 に起 こる現象 である と指摘 している。
f
li
c
t
)
尾 身氏 は,証人喚問 に同意 しない ことへの批判 を緩和 す るため に,即答 を避 け,有利 なコン
テキス トを構築す るの を待 って,証人喚問に賛成 で きない理 由を述べ ている。尾身氏の弁明 を
整理す る と, (1)問題解明-取 り組み姿勢 は何 ら変化が ない ,(2)証人喚問は政治パ フォー
マ ンスである とい う批判 , (3)政治倫理審査 会 は 「自由党の小沢 さんが委員長 の時 に共産党
以外 は全党一致でつ くった」 とい う経緯の説明, とい う論理で政治倫理審査 会の正当化 を試み
テ レビ政治討論 における弁明戦術の分析
1
0
9
ている。実 は,政治倫理審査会が発足 したのは1
9
8
5
年であ り,当時,小沢氏 は 自民党議員であ
った。 に もかかわ らず,野党である 「自由党」 を引 き合い に出 し,野党が中心 になって作 った
ものであるかの ような印象 を与 えることで,政治倫理審査会の正当性 を論 じ, 自身の意見が も
っ ともらしく視聴者 に聞 こえる ように証人喚問 を拒 む弁明 を している。 さらに,予算成立 に話
題転換操作 を行 って,予算委員会の妨害,審議拒否 な ど野党の従来パ ター ン行動の批判 し,野
党が主張 してい る証人喚問が予算成立 を遅 らせ ることに関連づ けて野党の行動 を牽制 してい
る。野党が執掬 な証人喚問要求 をすれば,予算審議が遅れ,国民の支持 が得 に くくなることか
ら,政治倫理審査会 を拒否 しづ らい状況 を作 り出 しているのであ り, これは野党の 「
消極的 な
体面」 を脅かす発話行為 (
Br
o
wn&Le
vi
ns
o
n,1
9
87)と捉 えることがで きる。
事例 (1)の ように,司会者が回答者 と対立す る立場 を取 り,第三者の意見 を引用 した り,
国民の声 を代弁 して回答者 に挑戦的 な質問 をす るの に対 し,回答者 は即答 を避 け, 自分の主張
の正当性 に説得力 を持 たせ るの に都合の よい コンテキス トを構築 して,司会者の質問に同意せ
ず,その理 由を正当化 しようとす る弁明戦術 は少 な くない。次 に取 り上 げる事例 (2) も同様
なパ ター ンである。
(2) 日曜討論
1/21
司会 : これあの ::証人喚問 (
.
)まあ今お話の予算案の審議 とこう密接 に絡んで くると
思 うんですけれども,あくまでも証人喚問の実現 を最優先にするんですか ?
管:
いや,私たちはですね,あの ::今の日本の経済,え :特に :これはもう ::今の
財務大臣の (
.
)宮沢 さんが,総理大蔵大臣の時代か ら,あるいは橋本 さんが総理
大蔵大臣の時代からの失敗が,今なお続いていると見てますか ら,この間題がやは
り,え :国民にとって大変大 きな課題であるということは,当然だと思ってます。
ですからそういった問題 も,堂々と,本会議,あるいは予算委員会で取 り上げて議
論 して (
.
)い く (
.
)わけです。 しか し同時に,この KSD 問題 とい うのは,まさ
に,この参議院選挙 を前にして,参議院につい先 日まで公認 されてた方が,′
卜山さ
んなんですよ,小山孝雄さん。
司会 : ええ,ええ。
管 :
過去の話 じゃな くてですね,この事件が出なければ,その同 じ人物が, 7月の
(
.
)選挙 に,自由民主党公認候補 として出てるわけですか ら。こういった問題
を,放置 したままですね,え ::済 ませることは出来ませんか ら。まどちらが重要
ではな くて,両方必ずやらなきゃいけない。経済を中心に した論争 と,この KSD
などですね,あるいは外務省問題 などの,いろんな疑惑 をですね,徹底的にやる
と,その上での,額賀 さんと村上 さんの証人喚問を (
.
)こりゃ欠かすことの出来
ない,え ::最低要件だと,こう考えてます。
司会者 は野党側が求めている KSD 問題で疑惑 をかけ られた議員-の証人喚問 に関連 して,
予算案審議 の進行 を妨害 してで も証人喚問 を要求す るのか否か を問 うている。野党 と対立す る
立場 を取 ることによって中立性 を保 ち,野党第一党の民主党の態度 を視聴者 に明 らか にす るこ
とを試みている。質問 自体 には批判 的なニュア ンスは含 まれていない と思 われる ものの,あか
らさまに肯定的な回答 をすれば,野党が審議妨害 をす るとい う批判 を視聴者 か ら受ける可能性
があ り,否定的に回答すれば,与党 を助 けることにな り,与党 との対立関係維持 が期待 され る
野党の役割 を果た していない とい う批判 を招 くことに もつ なが りかねない。
11
0
天 理 大 学 学 報
この質問に対 し,民主党幹事長の管氏は,長引 く不況か らなかなか抜 け きれない 日本経済の
状況は自民党の元総理大臣であった宮沢氏,橋本氏の責任であると,与党議員 を名指 しして自
民党の失政 を非難 し,予算審議が国民の関心事であ り,積極的に議論 してい くことを明確 にし
ている。宮沢元首相か ら橋本元首相の間には,当時 日本新党の細川氏,社会党の村山氏 なども
首相であったが,その名前 は伏せ られている。 この手法は,対立関係 にある自民党の 「
積極的
な体面」 を威嚇 し,所属する民主党や協力関係 を維持 しなければならない他の野党の 「
積極的
な体面」 を保持する目的の言明であると考 えられる。 さらに KSD 問題 については,逮捕 され
た元 自民党議月の小山氏が 7月の参議院選挙 の候補 に公認 されていたとい う事実 を示 し, 自民
党の体質 を批判 し, この間題が放置で きない重大 な事柄であることを指摘 し,経済中心の論争
と EsD 疑惑,外務省機密費問題の追求 を同時 に行 わなければならない とい う主張の理論的根
拠 にしている。
以上 2つの事例では,司会者が回答者 に発言するための一定の時間を与えているので,回答
者がその背景 にある証拠,事実などを取 り入れることで,弁明 に説得力 を持 たせるようなコン
テキス トの構築が可能であった。 しか し,次の事例 (3)では,司会者が回答者の発言途中に
割 り込むことによって,有利 なコンテキス トの構築を妨害 している。
(3)サンデープロジェクト 1/
2
8
司会 : 何でそんなの,ちゃんと出さないんですか ?
(
途 中 6行省 略)
その,やっぱ り (
.
)もっと情報公開 しようと,す とやっぱ り少なくとも,この
(
.
)え ::この総理の,外遊に当たっての,この間題が出てるんだから,例えば総
理の,え :村山さんが,あるいはその (
.
)橋本 さんが,何回いって,何回いった
ら出てす ぐくんだからね,いくらかかったのかと,一回一回,この くらいは出すベ
きじゃないですか ?なぜ出さないんですか?
衛藤 : あの :当然ですね,外務省 :の調査チームというのは外務大臣の命を受けまして 1
月 4日から始めたわけであ りますが,全体的なものを解明するためにですね, 1月
の (
.
)2
6日の午前をデ ノドラインとして,とにか く (
.
)出せ と,こういうような
指示で,ま始まったわけです司会 : -それじゃちょっと分からない
[]
衛藤 :
えそれでですね,今 まだ全体 をですね,全体を (
.
)そ
5日の,あの調査の報告は,第一段階の調査の報告であ りま
の調査 し切れてない。2
して司会 : -分かった,うん
司会者 は外務省機密費問題で外務省が情報公 開を怠 っていることを厳 しく非難 し,公 開の範
囲 として,具体例 (
総理の外遊 に一回い くらかかったのか) に挙げた程度の公 開はすべ きであ
り,公開に前向 きな姿勢 を示 さない理由を問い質 している。外務副大臣の衛藤氏 は,説明 に正
当性 を持 たせるため,事件発覚か らの行動 を時系列的に説明 し,弁明 しやすいコンテキス トの
構築 を試みている。 しか しなが ら,回答 に納得 しない司会者 は 「それ じゃち ょっ と分か らな
い」 と回答途 中で割 り込 むことによって,説明 を中断 させている。中断 された結果,衛藤氏
,「
…始 まったわけです」 に続 く説明 を省略 し,「今 まだ全体 を… 調査 し切れてない」 と結
は
テ レビ政治討論における弁明戦術の分析
111
論 を言わざるを得 ない状況 に追い込 まれて しまった もの と考 えられ,衛藤氏の説明は中途半端
な印象 を与 えている。結果的には時間が な く調査が まだ不十分であるとい う事情 を説明 した弁
明にな り,司会者 もその回答で納得 しているものの, もし司会者の割 り込みが なければ,異 な
った展 開になっていた可能性が高い と思われる。
3-3. 辞歩
譲歩 もテ レビ政治討論 で一般的な弁明戦術 であるが,司会者の質問に対 して一方的に譲歩 し
積極 的な体面」 を損 ねる事 につながるため,政治的 ダメージ
たのでは非 を認めた事 にな り,「
が大 きい。政治家は,司会者が どの ような事実,意見 を取 り込 んで質問するのか によって,読
歩の仕方 を変 えているようである。今 回対象 に したデー タか らは,「
全面的譲歩」,「
表面的譲
譲歩 して弁明」 とい う 3つのパ ター ンが兄いだされた。
歩」,「
(4) 日曜討論
1/
21
司会 : まあこの問題 (
.
)深刻に受け止めておられるようですけれども,この小山議員の
逮捕ですね :この :国会で,KSD に有利な質問をしてその見返 りに金を受け取っ
た,この容疑事実どう息いましたか?
古賀 : あのまず ::その真相解明は今司法の手で行われてお ります。最初に国民の皆様方
に,このような (
.
)政治への信頼を損なうようなことが起 きたことに,公党をあ
ずかる責任者といたしまして,深 くお詫びを申し上げたいと (
.
)いうふうに思い
ます。特に ::連立であ ります,公明党さん,保守党さん,また,自由民主党の中
にも,若い人たちが特に (
.
)一生懸命今,21
世紀の日本の国づ くりのために汗 を
流 している。そうした努力をしていただいている (
.
)多 くの方々にも,大変 (
.
)
申し訳ないことだと,こういう気持ちで (
.
)まず最初に,心からお詫び申し上げ
なきゃならないことだと思ってお ります。
司会者は ESD 問題で逮捕 された小 山氏の容疑事実 を説明 し,古賀氏 にその感想 を尋 ねてい
る。現職議員の逮捕 とい う,弁解の余地がほとんど残 されていない事実 を突 きつけられ, 自民
党幹事長である古賀氏 は,「
謝罪」 とい う 「
全面的譲歩」 に終始 してい る。謝罪 とは,行為者
n (
1
971
) は謝罪 を
が 自分の非 を認め,自責の念 を示す表現 を伴 った発話行為であ り,Gofma
過去 における非難 されるべ き部分 とルールに従 う用意のある改善 された部分 とい う 「自己 を二
つ に分割す る」儀礼的行為 と見 な している。謝罪 は,自己の体面 を損 なう行為であるが,相手
の体 面 の 回復 させ る効 果 が あ り,そ の結 果,相 手 の批 判 を和 らげ る こ とが で きる (
安
9
9
4)
。事例 (4)で謝罪が国民 に対 してだけでな く,連立 を組む公 明党,保守党,ある
藤 ,1
いは 自民党の若手議員 に向けて行 われたのは, これ らのグループか らの批判 を緩和す ること
で,連立与党体制の結束の乱れ を最小 限に押 さえようとす る意図を反映 しているもの と考 えら
れる。
事例 (4)のような 「
全面的譲歩」 は,弁解の余地がほとん どな く,他の選択肢が現実的に
あ りえない場合 には,非難 をかわす 目的で使用 される場合 もあるだろう。 しか しなが ら,譲歩
とい う弁明戦術が,非 を認めるとい う政治的ダメージが大 きいため,出来 る限 り避けたい とい
表面的譲歩」 とい う戦術 のほ うがはるかに多い。
う思惑があるようで ,「
11
2
天 理 大 学 学 報
(5) 日曜討論
1/
21
司会 : あの野党側は通常国会ではですね :額賀 さん,村上 さんの (
.
)証人喚問を要求を
している,まあ硯にもう要求 しているわけですけれども,これは応 じていくことに
なりますかどうなんですか ?
古賀 : あの :これはあの国会の場でですね,最終的に ::与野党が一致をして,必要 (
.
)
であるということであれば当然,証人喚問 ということが (
.
)考えられて くるで し
ょう。私の :基本的な考 え方 はですね,え ::やは りその国会の審議 の 中で,
え ::当然,解明 (
1.
2)するには (
.
)どうしても証人喚問 として呼ばなければい
けないと (
.
)いう (
.
)国会審議の状況で,そういう事が生 じて くれば,私 どもも
(
.
) しっか りとした (
.
)受け止め方をしていかなければいけない。ただそのこと
が,今調べ られてお ります (
.
)司法の中のですね,え :捜査や解明に,支障をき
してはいけない司会 : -ああ,はあ
古賀 : また同時に,大事な (
.
)1
3年度の (
.
)我が国の,胸突 き八丁 にきている (
.
)景
気対策の (
.
)予算,そういった審議 にですね :それを (
.
)意識的 に,意図的に
(
.
)遅 らせ ようと,そういう中でのですね :私は (
.
)証人喚問の問題であってほ
ならないと,あ くまで も,国会の議論の中で,真相解明に必要 と (
.
)い うことが
与野党で一致すると (
.
)いうことが私は,大前提だと,このように考 えてお りま
す。
事例 (5)では野党が要求 している額賀氏 ,村上氏の証人喚問要求-の対応 に関す る質問で
あるが,証人喚問 を避 けようとすれば,真相解明 に消極 的な態度 を示す ことになるため疑惑隠
しとい う非難 を受 けかねず, さらに政治生命 を失 いかねない証人喚問要求 に積極 的に賛成す る
わけに もいかない。そ こで古賀氏が とった弁明戦術 は 「
国会の場 で与野党が一致すれば」 とい
う条件付 きの譲歩である。 この ような回答 をす ることで,表面上証人喚問の可能性 を否定す る
ことを回避で き, またその後 の展 開によっては,与野党意見不一致の結果,証人喚問 を避 ける
9日現在では,村上氏 の証人喚問は行 われた ものの,額賀氏 は
ことも可能になる (
事実 , 3月1
政治倫理審査会での釈 明 を終 え,証人喚問 は実現 していない)。 さらに,景気対策問題 に話題
転換操作 し,予算案 を 「
我が国の胸突 き八丁 に来 ている景気対策予算」 と位置づ けることによ
って,その早期通過の重要性 を視聴者 に訴 え,予算審議 を 「
意識的に,意図的に遅 らせ る」 と
い う行為 を非明示 的に非難 している。 この ような戦術 をとることによって,今後予想 される野
党の行動 を拘束 し,証人喚問 を実力行使 で実現す ることを困難 に している。事例 (5) は与野
党一致 とい う条件 に加 えることで, 自身の行動 の 自由を確保す る とい う 「
消極 的体面」 を保持
し,証人喚問要求 を予算 に絡 めることに よって,野党の行動の 自由を拘束 しようとす る 「
消極
的 な体面」 を脅かす言明 と捉 えることがで きる。
譲歩 して弁明」 とい うパ タ- ンである。
次 に取 り上げる事例 (6)は,「
(6)サ ンデープロジェク ト 1/
21
司会 : 尾身さんね :ここにその (
.
)豊明会 (
.
)豊明議連っていうのがあるんだけど,尾
身さんの名前 も入っていますね。
尾身 : はい。
司 会 :
これは,尾身さんは,豊明 (
.
)議連 ?
テレビ政治討論 における弁明戦術の分析
11
3
尾身 : ええ,メンバーに入ってます。あの :ちゅうし (
-)この ::KSD (
.
)はです
ね,もともとこの中小企業のための団体であると (
.
)いうことでですね,私 ども
中小企業の福祉関係をやるということで賛成をしてまい りました。で,そういう意
味でですね,あの ::これはあの,はっきり申し上げなければいけないんですが,
この ::ものづ くり,職人大学についてもですね, この :::これか らその技能
者を養成するという意味では,日本経済のために,あるいは中小企業のためにいい
ではないかということで,我が党としてはこれを推進するということを決めてです
ね,あのそういうふうな考え方でこれをすい (
-)推進 しているわけであ ります。
そこだけは,まあ,はっきりさせておきたいと思います。
豊明議連 とは KSD の外郭団体 で,この組織 を通 じて政界 に金が流れた とされている。 この
事例 (6)に示 した討論の前 に,KSD と豊 明議連の関連 とその疑惑の実態が解説 され,豊明
議連 に参加 している政治家 に金銭授受の疑惑がかけ られた。 また,豊明議連 に参加 している政
治家の名簿が公表 され, 自民党議月の多 くが メンバーであることが視聴者 に明 らかにされた。
冒頭で尾身氏は豊明議連のメンバーであることは認めたが,豊明議連 に参加 しているだけで
疑惑 をかけ られる可能性があるため,その後の弁明で,親会社 にあたる KSD の事業内容 とそ
の活動 を支援 した自民党の正当性 を強調 し,批判 を軽減あるいは回避 しようとしている。尾身
氏 は,KSD 自体 は中小企業のための福祉 団体 であ り,党 として も中小企業 を支援 して きた経
緯 を述べ ,「ものつ くり大学」が技能者養成機関であ り,「日本経済,あるいは中小企業」の支
援 になるので党が政策 として推進 した と訴 え,視聴者 に理解 を求めている。 この弁明は,豊明
議連 に参加 しているとい う事実 は認め ざるを得 ない ものの,その活動内容の肯定的な側面 を強
調することで尾身氏個人だけでな く自民党全体 に批判が及ぶ ことを避 けるね らいがあ り,所属
政党の 「
積極的な体面」の維持,回復 を目的 とした弁明である。 この ように,政治家の使 う弁
明では,ただ単 に譲歩す るだけでは体面 を損 なうことにつながるため,譲歩 した後で体面 回復
をね らって,その否定的 な側面 を緩和す る ような,「
譲歩 +弁明」 とい う手法が頻繁 に用 い ら
れるようだ。
3-4.間男事象 を先に定式化 して弁明
討論会 に参加す る政治家 は,討論の 目的を事前 に知 らされてお り,新聞,テ レビ報道 などで
注 目,批判 されている問題 には周知 しているはずで,討論会で司会者が間 うであろう質問を予
測 し, どの ように回答するかを前 もって準備 し,討論 を自分の有利 な展 開に持 ち込 もうと考 え
るのは当然の行動であろう。そのための一つの弁明戦術が, 自分 にとって都合の悪い質問がな
される前 に行動 を起 こ し, 自分が弁護,説明 し,批判 に答 えやすい ように批判 された り問題 と
されている事柄 を定式化 (
f
o
m ul
r
a
t
i
o
n)し,続 けてその説 明 をす る とい うものである。 この
ような問題の定式化 によって,回答者 は問題 に対する意識,相手 に対す る配慮 を提示すること
がで き,結果 として司会者がその批判 を議論 に取 り上 げ に くくす るね らいが あ る (
But
t
ny,
1
993)
。
(7)日曜討論 2/4
司会 : 冬柴さんあの :公明党の姿勢がね (
.
)特に注目されているわけですけれども,ど
ういう方針で臨みますか ?
11
4
天 理 大 学 学 報
冬柴 : 我々ま :立党以来,政治腐敗 をですね,断固 (
.
)追放する,我々,え :清潔な政
治を目指す ということは ::立党以来 (
.
)我々高 く掲げまた,実践 して きたつ も
りです。まそういう意味 (
-)中で,我々与党に入ったわけですけれ ども,まあ与
党に入ったから,その姿勢を崩すということは (
.
)ありませんOえ :徹底的にで
すね,こく (
-)あの :疑惑があれば,これに対 しては,あ :この解 明 につ とめ
ると,え :これはもう当然のことだと思いますOえ ::その面でリーダーシップを
発揮 していきたい というふ うに思います。まあただその ::方法論 につ きまして
ね,あの ::ま予算委員会での証人喚問を先にやらなければ,あ ::どうだとかこ
うだとかいうのはですね (
.
)私 どもは,あ :それは違 うのではないか と。え ::
やは り,あの :::政治倫理審査会 というものをですね,昭和㈹年 に作 ってです
ね,その ::政治倫理に反する (
.
)う :事実があると (
.
)いう疑惑を受けた議員
はですね,自ら,この真筆な態度で,え :この疑惑解明につ とめて責任 を明 らかに
すると,そういう手続きが (
.
)決められたわけですね。 したがって,もし (
.
)そ
こであの :釈明 したいとい うんであればそこから始めるべ きであって,そ して,
え ::もちろん,あの :その中でも疑惑が晴れない場合には,証人喚問もや らなけ
ればならないと思います私はそれを拒むわけではあ りません。え :そういうことで
ございます。
事例 (7)では野党側の KSD 事件,外務省機密費問題 を中心 に厳 しい追及が予想 され る通
常 国会 に臨む姿勢 を,公 明党幹事長の冬柴氏 に質問 している。特 に公明党の姿勢 については,
野党時代 か ら政治腐敗 には厳 しい態度 で臨んで きた とい う経緯があ るため,その対応が注 目さ
れていた。
冬柴氏 はまず党の姿勢 と して 「
結党以来清潔 な政治実現 のため,政治腐敗 の根絶 を目指 して
きた」 とい う姿勢 は,与党 に入 って も変 わ らない とい う点 をア ピール し,その後,その方法論
について言及 し,「
予算委貞会 での証 人喚問 を先 にや らなければ どうだ とか こうだ とか… 」 と
い う野党の批判 を定式化 し,その主張 に不 同意 を表明 し,政治倫理審査会の正当性 を訴 える戦
術 に打 って出ている。 さらに政治倫理審査会で疑惑が晴れない場合 には証人喚問 に も発展す る
ことも拒 まない とい う主張 を してい る。 「
清潔 な政治」 とい う党の 目標 と 「
証人喚問 を求 めな
い」 とい う態度が矛盾す るため,政治倫理審査会の正当性 を予 めア ピールす ることで,矛盾 し
ている と批判 され うる覚の態度の正当化 を図っている。
問題 を先 に定式化 して弁明 を試みて も,司会者がその問題 をさらに追求す ることを回避で き
るわけではないが,予 め定式化す ることによって司会者がその ことを無視 して質問す ることを
困難 にす る とい う効果 は期待 で きる ようだ。事例 (7)の後 の展 開であ る事例 (8) を見 る
と,司会者 も政治倫理審査会 を考慮 に入れて質問せ ざるを得 ない状況 を作 り出 し,一応 の効果
は認め られる。
(
8) 日曜討論
2/4
司会 : 冬柴 さんは,政治倫理審査会から始めるべ きだと (
.
)いうお話があ りましたけれ
ども,額賀 さん,村上 さんの証人喚問についてはですね.基本的にこの (
.
)賛成
なのか反対なのかですね冬柴 : -いやだから
司会 : これはどうですか ?
テ レビ政治討論 における弁明戦術 の分析
11
5
冬柴 : それは政治倫理審査会開いてですね…
(
4行省略)
そ りゃ :ダメじゃないのと,いうことになれば,当然 にですね,証人 (
.
)の (
.
)
問題に発展するだろうと‥.
(3行省略)
先ほど,あの :野田幹事長がいい言葉おっしゃった仕分けなんですね。ですからそ
の (
.
)予算は予算で,粛々と進めながらですね :この,疑惑解明はですね (
.
)疑
惑解明できちっと (
.
)やってい くと。でその (
.
)それは予算委員会でな くても例
えば衆議院の場合,衆議院政治倫理確立 (
.
)選挙制度改革 (
.
)特別委員会 という
(
.
)特別な委員会 もあるわけです し,また :厚生労働委員会 という場 もあ ります。
したがって,そこ (
-)そういうところで,証人,をするのか,あ :どうかという
ことはですね今後の問題であってですね,今,まだ政倫審 もは (
-)始まってない
ところからですね司会 : -政倫審の結果を見てから判断をしてい くと,こういうことなんですね。
「なぜ証人喚問は認 め られないのか」 とい うよ り批判的,直接 的 な質問では,事例 (7)で
,「基本 的 に賛成 か反対 か」 とい うやや間接 的で批
すで に回答 がなされてい るため,司会者 は
判が緩和 された形式 で証人喚問の是非 を質問 を している。冬柴氏 は政治倫理審査会 を開いて疑
惑が晴れなければ証人喚問 に発展す るとい う従来の理論 を展 開 し,証人喚問 に否定的である と
い う批判 を回避 し, さらに野田氏か ら出 された 「
仕分 け」 の意見 を弁明の支援材料 に使 って,
「
政倫審の結果 を見 てか ら判断す る」 とい う理解 を司会者 か ら引 き出 している。
この 「
定式化 して弁明」 とい う戦術 は,事前 に問題 を定式化す る とい う性格上,討論 の冒頭
で使 用 されるのが一般 的なようで,テ レビ討論の流 れが全体的,一般的な話題 か ら部分的,具
体 的な話題 に移行す る とい う構成 をうま く利用 した方法であるが,対象 に したデー タの中では
頻度 はそれほ ど多 くなかった。
3-5.回答 しない理由の弁明
政治討論会 においては,司会者が政治家 に答 えた くない困難 な質問 をす る こ とは少 な くな
い。その場合,回答者である政治家 は,何 も答 えないで質問 を一蹴す ることはあ ま りな く,質
問 に回答 しない,あるいはで きない理 由を弁解 した り正当化す る傾 向が見 られる。最 も一般的
な弁明戦術 は,回答 しない,あるいは,で きない理 由 を 「
状況」 に求める ものである。
(9)報道2
01 1/
2
8
司会 : これで管 さんお伺い しますけれ どもね,その :ま国会いよいよ開かれますけども
ね,これ,この証人喚問に応 じなければ,予算審議には入 らない,というような戦
術 をとられるんですか ?
管:
あこれは最終的には野党の中で相談をしますが,まあの ::いろんな問題が,課題
としてあ りますから,あの ::何かそういうふ うにですね,始めから,え :硬直的
に対応するというふうには,あの現時点ではです よ,お ::決めてる訳 じゃあ りま
せん。まだあの :閉会中審査 も,月曜火曜という2日間があ りますから,え :ある
いは,あ :代表質問の間ではですね,いろんな事がはっきりするかもしれません。
場合によっては強制捜査がまだ入るなんて事 も,お :うわさもあ りますか ら,今の
11
6
天 理 大 学 学 報
時点で,予算委員会の入 り方 を,固定的に,硬直的に,決めてる訳 じゃあ りませ
ん。
状 況」 に求めてい る。 「
証 人喚問 に応 じなけれ ば,予
事例 (9)で は,回答 しない理 由 を 「
,
硬 直 的 に対応 す る こ とは考 えてい
算 審議 に入 らない」 とい う野党戦術 には当然批 判 もあ り 「
ない」 と述べ ,閉会 中審査 の可能性 ,今後 の展 開,強制捜査 の うわ さな ど, さまざまな不確 定
要 因 を含 んだ 「
状況」 を理 由 に明確 な回答 を避 けている。
自分 の 「
立場」 を回答 しない理 由 と して挙 げ る例 も見 られ た。事例 (
1
0) で は,衛 藤 氏 の
「出来 る限 り努力す る」 とい うあい まい な回答 を,司会者 は 「いい加減」 だ と非難 してい る。
これ に対 し衛藤氏 は,具体 的 に回答 で きない理 由 を 「
外務 副大 臣」 とい う自分 の置 かれた責任
ある 「
立場」 に求 めてい る。 これは,置 かれ た立場 が 自分 の発言 の 自由 を拘 束 してい る事実 を
理 由 に して回答 で きない こ とを正 当化 した言 明であ り, 自己の 「
積極的 な体面」保持 を目的 と
した弁 明であ る。
(
1
0)サ ンデー プロジェ ク ト
1/
28
衛藤 : まで きるかぎり,あの我々 としては努力 したい と思います
司会 : そんなん (
.
)み :そんないい加減なこと衛藤 : -いやいい加減な事 じゃなくてこれはね,これはね
[
]
いやとにか くね,それはね
司 会 :
衛藤 : 私の立場ではですね
司会 : うん
衛藤 : 今,私の立場の副大臣という立場では,今,責任のある発言 としてはですね,そ う
いう発言 しかで きないわけです
さらに,質問 自体 の妥 当性 を疑問視 して回答 を避 ける例 もあ った。事例 (
l
l
)で,司会者 か
ら求め られた リー ダー像 の質問 に対 して,野 田氏 はその質問 自体 を 「
今 の時代 ,一人が気負 い
立 ってつ いて来 い とい うリー ダーは 日本社 会 では機能 しない」 とい う主 旨の意見 を述べ ,それ
よ りも 「
何 をや るか を明示す る こ と」 や 「
危機感 に関 して安心感 を与 える ようなシス テムの構
築」 が必 要 だ と主張す る こ とで,森総理 に対 す る批判 にな りかね ない 回答 を回避 してい る。
(
l
l
)報道2
0
01 2/
2
5
司会 : 野田さんいかがですか ?どう, どういうリーダーが今必要,求め られると思います
か?
野田 : う :ん (
(
咳払い)
)今の時代 はね,そう一人がね,あの気負いたって,ついて来い
と (
.
)い うのは無理 と思います。今の 日本の社会はまだそこまで行 って ませんね
え。だから :何 をやるかということ,その :も少 し明示 をすることが一つ大事です
よね。それか ら, もう一つは,今いろいろ問題 になってる危機管理 に関 して,あ
の :誰がやろうがですね,いざのときの安心感 を与えるとい うような,形 をきちん
と出すことじゃないですか。
テ レビ政治討論 における弁明戦術の分析
3-6.
11
7
ごまか し ・す りかえ
政治家が質問 に対 してあい まい に答 えるこ とは多 くの研 究者 に よって明 らか に され てお り
(
山下 ,2
000;Bavel
as
,e
tal
,1
990;NGandBr
adac
,1
993;Bul
l
,e
tal
,1
996;Bul
l
,1
998)
,
テ レビ政治討論 において も,同様 な傾 向が見 られる。
「ごまか し」や 「
す りかえ」 は, 自己の発言 に対す る責任 回避であ り,後 でその真意 を追究
された ときにいろいろな解釈が可能であるため,行動の 自由の拘束 を回避す る とい う 「
消極 的
な体面」保持 の役 割 を果たす とい う意味 で, 自己弁護 の弁明 と捉 えることがで きる。 しか しな
が ら,司会者や視聴者の視点か らは 「
逃げ」 と捉 えることもで きるため,他人か ら承認,賞賛
されたい とい う 「
積極 的な体面」 を損 なう恐 れのある弁明戦術 で もある。人 々は 「
損失 を最小
限 に し,報酬 を最大限 にす る」 よ うな弁明戦術 を とるのが一般 的 なので (
安藤 ,1
9
9
4;But
-
t
ny,1
993),「ごまか し ・す りか え」 の弁明 は,必然 的に,回答す るこ とへ の損失が大 きい場
合 に使 われることになる。
(
1
2) 日曜討論
2/
1
8
司会 : あの :ま以前からもあるんですけれども自民党の中にはですね,森総理の下では参
議院選挙戦えないんじゃないかと,こういうまあ空気があることは事実ですねQこ
れが現実のものになるということはあり得るんですか ?選挙はやっぱ り森総理で戟
う?
古賀 : 私はあの ::そうしたことよりもですね,え :今 もお話いただいてますように,さ
まざまな案件がこれだけ次から次に出て くるわけです,で予算 も一番 (
.
)大事 な
(
.
)あの時に来てお ります。まこういった ものを一つずつですね,え :やは りあ
の :こな していく,あの :解決 していくと,このことに集中 してい くと (
.
)いう
ことが,今一番大事なことだと,そのための党内の結束が必要だと,こういうこと
を申し上げているわけです。
事例 (
1
2) で,司会者 は,森政権 の支持率低下 によ り, 自民党内に森政権の下では参議 院選
挙は戦 えない とい う空気がある とい う事実 を もとに,森政権 で選挙 を戦 うか否か を質問 した も
のである。幹事長 として選挙 を取 り仕切 る立場 にある古賀氏が回答 に慎重 になるのは当然 だ と
考 えられる。古賀氏 は,森政権下で戦 うか どうか とい う点 には一切触 れず,予算 を含め出て く
る案件 を一つずつ こな してい くため には党の結束が必要だ とい う論理 に 「
す りか え」 ることに
よって, この後の展 開によって変 わ りうる政治的 シナ リオを措 く自由を確保 している。事実,
この後 3月1
0日に 「
総裁選前倒 し」 とい う形 で,実質的に 「
森総理退陣」 とい うシナ リオを実
現 している。
(
1
3) 日曜討論
2/
2
5
司会 : 大島さんそうします と自民党 もですね,政倫審の結果によっては,証人喚問 も視野
に入れて検討 してい くと,いうことになるんですか ?
大島 : あの ::一つだけ,国民の皆 さんに,ご理解いただきたいのはですね,あの :政倫
審がなぜ出来たか,という,歴史的経過があるんです。ロッキー ド事件 とか,さま
ざまな問題があ りましてですね,もう :この :大衆情報化,民主主義社会の中にお
いてですね, もう ::疑惑を一方的に受けられる (
.
)議員 (
.
)が :あった とす
11
8
天 理 大 学 学 報
る,とそういたしますと,自由な発言が許される議員の立場をですね,やっぱ り自
分で,疑惑を晴らすという場が必要ではないかと,う :議員の中で,政治倫理 とい
う問題を,倫理規定に基づいて,判断 を してい くとい う場が必要ではないかと
いうことで設けられたんです。ですから,明日の :政倫審で,額賀議員がですね,
自分としては,身の潔白 (
.
)っていうことを主張 しておる (
.
)わけですから,そ
のことをきちっと説明されると私は確信いたしてお ります。
事例
(
1
3
)では,「証人喚問 も視野 に入 れて検討 してい くのか」 とい う司会者 の問い に対
政倫春の歴史的経緯の説明 とその正当性」の議論 に 「
すり
し,大島氏 はその点 には触れず,「
,「きちっと説明 されると確信 している」 とい う大島氏個人の見解 を表明することで,質
かえ」
問に村する回答 を 「ごまか し」 ている。「
政倫春の結果いかんで証人喚問 に発展」 とい うシナ
リオは野党側か らだけでな く,連立である公 明党が一貫 して主張 して きた ものであ り, さら
に,質問に対 して否定的な意見 を述べれば,疑惑隠 しとして国民か ら非難 を受けるのは必至で
あるため,論点 を 「
す りかえ」 ることによって質問に直接言及することを避け,個人意見 とし
て述べ ることによって,党の消極的な姿勢 を批判 されることを回避す るね らいがあった もの と
思われる。
4.貸 間 の創造 者 とその弁 明戦術 の関係
この節では,司会者 と政治家の相互行為で構築 される弁明の特徴 を明確 にするため,会話分
析 の枠組みか らは外れるが,質問内容 と弁明戦術の関係 をその頻度分布 を調べ ることで明 らか
に したい。
司会者 は, 自身の中立性 を確保す るため,回答者 に問 う質問を組み立てる際に,司会者 自身
Cl
ayma
n,1
988)
。今 回取 り扱
の意見ではな く,第三者の意見 を取 り込むことが知 られている (
った資料では,新 聞報道 な どで明 らかになった事実,対立す る政党 の意見,所属政党 内の意
見,連立政党内意見 な どを引用 して構築 された質問の他 に,「
世論」
,「国民の批判」
,「国民の
目」 な どをキー ワー ドと して作成 され た質問が非常 に多 く含 まれてい たoGo
fma
n (
1
981)
は,従来の 「
話 し手」 と 「聞 き手」 とい う概念 は単純す ぎて,相互行為の参加者が行 うさまざ
発話媒体 (
ani
mat
o
r
)
」,「
創造者 (
aut
ho
r
)
」,「プ
まな方法 を把握 しきれ ない とし,発話 は,「
pr
inc
i
pl
a)
」 に分類 して分析すべ きだ と主張 しているO「
発話媒体」 とは,一連の
リンシパル (
創造者」 とは,その立場や見方 を創造
言葉 を発話する媒体 の役割 を果 たす人の ことを指 し,「
した人であ り,「プリンシパル」 とは,語 られる言葉 を通 して伝達 され る信念や態度 を有 して
いる人の事である。例 えば,暗記 したテキス トを朗読 した り,用意 されたス クリプ トを声 を出
して読 むとい う行為 を考 えた場合,行為者は 「
発話媒体」ではあるが,そのテキス トやスクリ
プ トを作成 した 「
創造者」で もなければ,そのテキス ト,ス ク リプ トで表現 された意見,伝
ayman (
1
988) によれば, 日常
念,感情 を有 していなければ,「プ リンシパル」で もない。Cl
の会話では,話者が 「
発話媒体」,「
創造者」
,「プ リンシパル」の三役 を同時に担 っていること
も珍 しいことではないが,テ レビ討論では,司会者 は 「
発話媒体」 としての役割 に徹 している
ことが頻繁 に見 られると指摘 している。
司会者が誰の意見,批判 を基 に質問を構築 し,その質問に対 して回答者である政治家が どの
ような弁明を しているのか とい う対応関係 を調べ るため,今 回の研究のために収集 したデータ
をその質問の 「
創造者」別 に分類 し,その質問に対する応答 として選択 された弁明戦術 をまと
11
9
テレビ政治討論における弁明戦術の分析
めた ものが表 1である。分類方法 については,質問の中で明確 にその意見や批判の 「
創造者」
が示 されている場合 にはその ままカテゴリー化 した。具体的 には, (
1
4
)はその 「
創造者」 を
「
対立政党+連立政党」 と分類 し,(
1
5) は 「匡卜
民」 と分類 した (
下線部 はその対象語句 を示
す)。
(
1
4)
司会 : 小山議員に対 しましてはね,野党だけじゃなしに,今お話の与党の公明,保守の両
党からもですね,やはりこの議員辞職をすべきではないかと,こういうまあ声があ
がっているわけなんですけども。議員辞職を,働 きかけてい くと,自民党 として
も,こういうお考えはありませんか ?
(
1
5
)
司会 : ただ,冬柴さん,使い道は公にしないわですね :領収書は要らないわと,やっぱり
この機密費のあり方については国民がかなり批判的な目を持っているんですがね :
どう見直せばいいんですか ?
表 1で明 らか な ように,報道 な どに よって事実 になった事柄 に関す る質 問や
,「国民 の批
判」や 「
国民の目」 など,世論や国民の意見 を根拠 に した質問に対 しては,正当化は容認 され
,「創造者」が対立政党であっ
ず,譲歩せ ざるを得 ない傾 向にあることが顕著である。 さらに
,
て も,事実 に裏付 けられている批判や意見 に対 しては 「
譲歩」 とい う戦術 を選 び,で きるか
ぎり批判 を緩和 しようと試みるようである。所属政党や連立政党か らの意見であって も,所属
政党の体面保持の観点か ら,譲歩す る傾 向にある。一方,事実の裏付 けや国民世論 に基づかな
い対立政党の意見,批判や,司会者個人の意見 に対 しては,質問に同意せず,その理由を 「
正
当化」す る戦術 を用いていることが顕著である。
この結果は,Mc
Laug
h1
nら (
i
1
9
8
3)が主張 した 「
情意の一般的返報性原則 ke
ne
r
l pr
a
in」 を支持するものであるoMc
I
.
aug
hl
i
n らは,採用 される弁明戦
c
i
pl
eo
fr
ec
i
pr
o
c
i
t
yo
fafb
c
t
)
術の類型 を,非難の種類 と状況変数に基づいてその弁明の評価 を予測す る弁明戦略モデルを提
, ,
,
,「譲歩」や 「弁解」は話 し手の体面 を脅かす行為 であるが,聞 き手の体
面 を脅かす ものではないので, よ り嬢和的であ り,
「
正当化」や 「
拒否」 は聞 き手の体面 を脅
弁解」 「
正当化」 「
拒否」の順で批判 を増幅 させ ると予測
唱 し,弁明手法の選択 は 「
譲歩」 「
している。す なわち
かす行為 なので,聞 き手である相手か らの批判 を増幅 させ ると予測 している。特 に批判 を緩和
する 「
譲歩」や 「
弁解」 よりも,批判 を一層強める 「
正当化」や 「
拒否」のほうが, この傾向
が強い と指摘 している。
事実 として明 らかになって しまえば,現実 とい う束縛 を受ける。弁明に説得力 を持 たせ るに
は,その問題の深刻 さの程度,聞 き手の知識,状況知識 など,その状況の現実的束縛 に一致 さ
,
せ る必要があ り (
But
t
ny,1
993)
,その現実的束縛 を無視 した 「
正当化」は 「開 き直 り」 とし
て捉 え られて しまい,納得 されないだけでな く,視聴者 であ る国民の感情 を悪化 させ る。 ま
た,国民世論 に裏付 けられた質問について も,国民の代表である政治家 は,選挙民の意見であ
る世論 を軽視す ることはで きない。匡L
民世論 を否定する自己正当化 は,国民 との関係 を悪化 さ
,「正当化」 と
せ ることになるか らである。す なわち,事実や国民世論 とい う束縛 を受 ければ
いう弁明戟術 は相手である国民や対立政党の体面 を損 なうものであ り, さらに批判 を招 く可能
性が高い と考えられる。
1
2
0
天 理 大 学 学 報
表 1 :質問の創造者と弁明戦術の分布
創
造
者
戦術
正当化
事実 .報道
国民 ,世論
ごまか し
す りかえ
7
5
1
2
1
0
1
対立政党十司会者意見
1
1
∼という意見もある
1
1
対立政党+連立政党意見
1
国民+対立政党意見
1
司会者意見 .疑問
8
対立政党個人意見
1
その他の第三者意見
1
一方
回答 しない
弁明
5
2
事実+対立政党意見
対立政党意見
定式化
1
0
1
事実+司会者意見
所属政党 .連立政党意見
譲 歩
1
3
6
6
,「正当化」が 「対立政党意見」や 「司会者意見」で多 くみ られるのは, 自分 自身や所
属政党の体面 を保持 しようとするためだ と考 えられる。対立する政党の意見 に譲歩すること
は,非 を認めたことにな り, 自己の体面 を脅かす行為である。同様 に,反対の立場か ら質問 し
た り,論議 をか もし出す ような質問をすることが多い司会者の意見 に同調することも, 自己の
体面 を損 なう可能性が高い。 したがって, これ らの質問には同意せず,その理由を正当化する
弁明 を戦術的に選択するのではないか と考 えられる。
5.結
論
以上,テ レビ政治討論会 における政治家の弁明について,その戦術 と,質問に対する回答の
,
,
,
,
譲歩」 「
定式化」 「回答 しない弁明」 「ご
分析 を試みたが,弁明戦術 については 「
正当化」 「
まか し ・す りかえ」の 5つに大別で きることが明 らかになった。 さらに,司会者が,誰の意見
や批判 を取 り込んで 自らの質問 を構築するす るかによって,回答者である政治家の弁明戦術 の
選択がかな り影響 を受けることが明 らかになった。具体的 には,報道 などで裏付 けられた事実
や国民意見,世論 などに基づ いてなされた質問
,「所属政党」や連立 を組 む政党か らの意見や
批判 に対 しては 「
譲歩」が一般的な弁明であるのに対 し,対立関係 にある政党や事実 としての
裏付 けがない司会者 自身か らの感想や批判 を根拠 とした質問 に対 しては 「
正当化」が一般的で
あることが示唆 された。
今 回の研究では,討論形式が弁明戦術 に与 える影響 については扱 わなか ったが,討論 の形
式,特 に会話分析の重要テーマであ る討論 の発話順番取 り (
も
um -t
aki
ng) シス テムが対立
9
9
8)
,現
表現,行為 を伴 う対立緩和形式 に影響 を及ぼす ことが明 らか にされてお り (
本田,1
荏,発話順番取 りシステムが弁明戦術の選択 にどう関連 しているのかの解明に取 り組んでいる
ところである。その研究結果はまた別の機会 に論 じたい。
1
21
テ レビ政 治討論 にお ける弁 明戦術 の分析
トラ ンス ク リプ ト表 記
長 く伸 び る音
(
.)
ポ ーズ
1秒以内
(
1
.
0
) ポ ーズ 1秒以上
[ ]
オ ーバ ー ラ ップ
(
-)
目に付 く突 然 の終 止
重要
(
太 字 に下線 は) 強調 され て い る発 話 部 分 を示 す
発 話 の接 合 (
前 の発 話 の終 わ りと次 の発 話 の 開始 との 間 に間隔 が ない場 合 を示 す )
(( )) 場 面 説 明
参 考
文 献
安藤清志 (
1
9
9
4)『
見せる 自分/見せない 自分 :自己呈示の社会心理学 』 サ イエ ンス社
萩原滋 (
1
9
9
4)「
弁明の 日米比較
」『現代 のエスプ リ』No.308 pp.70-78 至文堂
1
9
9
8)『
会話分析の手法』 北洋裕 ・小松栄一訳
ジ ョージ ・サーサス (
泉子 ・Ⅹ ・メイナー ド (
1
9
9
3)『
会話分析』
マルジュ
くろ しお出版
1
9
9
8)「テ レビ討論 にお ける発話順番取 りシステム とコンフ リク ト表現の相 関関係
本田厚子 (
大学言語文化学 』 7号
」『大阪
pp.1
2
㌢1
46
山下徹 (
2
0
0)「日本の国会 における政治談話分析」
橋本満弘,北出亮,曾薄 ま りえ編 『日本 の レ ト
pp.8
4
95 三省堂
Ba
ve
l
as
,J.B.
,Bl
ac
k,A.
,Cho
vi
l
,N.
,& Mul
l
e
t
t
,J.(
1
990)
,Equi
v
o
c
alCo
mT
nuni
c
at
i
o
n.Ne
wbur
y
Par
k,CA:Sage.
e vi
ns
o
n,S.C.(
1
987)
.Po
l
i
t
e
ne
s
s
:Someuni
u
e
r
s
al
si
nl
angua
geus
e.Cambr
idge,MA:
Br
o
wnP.& L
Ca
mbr
idgeUni
ve
r
s
i
t
yPr
e
s
s
.
Bul
l
,P.E.
,El
l
i
o
t
t
,JリPal
me
r
,D.
,& Wa
lke
r
,L.(
1
996)
.W
h ypo
l
i
t
i
c
i
n sar
a
et
hr
e
ef
ac
ed:m ef
ac
e
mo
de
lo
fpo
l
i
t
i
c
li
a
nt
e
r
ie
v
ws
・
BT
・
l
t
i
s
hJour
nalo
FSo
c
i
alPs
yc
ho
l
o
g
y,35,267284.
l
,P.
E.(
1
998)
.Equi
vo
c
a
t
i
o
nt
he
o
r
yandne
wsi
nt
e
vi
r
e
ws
.
Jour
nalo
FLan
gua
geandSo
c
i
alPg Bul
c
ho
l
o
g
y,1
7,3651.
But
t
ny,R.(
1
985)
.Ac
c
o
unt
sasar
e
c
o
ns
t
uc
r
t
i
o
no
fane
ve
nt
'
sc
o
nt
e
x
t
.Communi
c
at
i
onMon0gr
a
phs,5
2,57
77.
1
993)
.So
c
i
alac
c
ount
abi
l
i
t
yi
nc
ommuni
c
at
i
o
n.Lo
ndo
n:Sage.
But
t
ny,R.(
n ,S.
E.(
1
988)
.Di
s
pl
ay
i
ngne
ut
r
li
a
t
yi
nt
e
l
e
vi
s
i
o
nne
wsi
nt
e
r
ie
v
ws
.So
c
i
alPT
T
O
bl
e
ms,35,
Cl
a
yma
47
4492.
リックとコ ミュニケーション』
n ,
E.(
1
971
)
.Re
l
at
i
o
nsi
nPubl
i
c:Mi
c
r
o
s
t
udi
e
so
Ft
hePubl
i
cOr
de
r.Ne
w Yo
r
k:Hape
r&
Go
L
r
ma
Ro
w.
Go
瓜 1a
n ,
E.(
1
981)
.
For
mso
FTal
k.Phi
l
ade
l
phi
a:Uni
ve
r
s
i
t
yo
fPe
nns
yl
vani
aPr
e
s
s
.
Gr
e
at
bat
c
h,D.(
1
986)
.A
s pe
c
t
so
ft
o
pi
c
lo
a
r
ga
iz
m
at
i
o
ni
nne
wsi
nt
e
T
I
Vi
e
ws
:t
heus
eo
fa
ge
nda
s
hi
氏i
ngpr
o
c
e
dl
l
r
e
Sbyi
nt
e
r
ie
v
we
e
s
.
Me
di
a,Cul
t
ur
e
,andSo
c
i
e
t
y,8,441
455.
1
9
85)
.A
n al
yz
i
ngne
wsi
nt
e
T
I
V
i
e
ws
:A
s pe
c
t
so
ft
hepr
o
duc
t
i
o
no
ft
lkf
a
o
rano
ve
r
He
it
r
age,J.C.(
a Di
j
k(
Ed.
)
,Handbo
oko
FDi
s
c
our
s
eAnal
ys
i
s
,Vo
l
.3:Di
s
・
he
ar
inga
udi
e
nc
e.I
nT.A.Vn
c
oL
L
r
S
eandDi
al
o
gue(
pp.951
11
7)
.Ne
wYo
r
k:Ac
ade
i cPr
m
e
s
s
.
e
at
bat
c
h,D.L (
1
991
)
.Ont
hei
ns
t
i
t
ut
i
o
na
lc
har
ac
t
e
ro
fi
ns
t
i
t
ut
i
o
na
lt
al
k:
He
it
r
age,J.C.& Gr
Thec
as
eo
fne
wsi
nt
e
vi
r
e
ws
.I
nD.Bo
de
n& D.Zi
mme
r
n a
n (
Eds
.
)
,Tal
kands
o
c
i
als
t
r
uc
t
ur
e(
pp.931
1
37)
.Cambr
i
d
ge,MA:Po
l
i
t
y.
i
n,M.L.
,Co
dy,M.LリandO'
Har
e,H・D,(
1
983)
.m ema
n age
me
nto
ff
il
a
ur
ee
ve
nt
s
:
Mc
Laug
h1
122
天 理 大 学 学 報
So
mec
o
nt
e
xt
ualde
t
e
r
mi
na
nt
so
fac
c
o
unt
i
ngbe
ha
vi
o
r
.HuT
nanCo
mmuni
c
at
i
o
nRe
s
e
ar
c
h,
9,2081
224.
,J・J・(
1
993)
.Po
we
ri
nl
aT
Z
gua
ge
/Ve
r
b
alc
o
T
nT
nuni
c
at
i
o
nands
o
c
i
ali
n
f
l
uNG,S・H,a
n dBr
adac
wbur
yPar
k,CA:Sage.
e
nc
e・Ne
・Ac
c
o
unte
pi
s
o
de
s
:The,
na'
nge
'
n
e
nto
re
s
c
al
at
i
o
'
" ic
o
n
f
l
i
c
t
,Cambr
idge:
Sc
ho
nbac
h,P.(
1
990)
Cambr
i
dgeUni
ve
r
s
i
t
yPr
e
s
s
.
Sc
o
t
t
,MI
B・andLy
m an,SI
M・(
1
968)
・
Ac
c
o
unt
s
・
A′
Wr
i
c
anSo
c
i
o
l
o
gi
c
alRe
v
i
e
w,33,4662.