Title つわり期妊婦のQOLと食事指導 Author(s)

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Issue Date
つわり期妊婦のQOLと食事指導
久我原, 朋子; 松尾, 恵美子; 大橋, 一友
大阪大学看護学雑誌. 13(1) P.1-P.7
2007-03
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/56698
DOI
Rights
Osaka University
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1.13No.1(2007)
一報 告 一
つ
わ
り に 対 す
久我 原
Correlation
between
women
with
る 食
朋 子*松
事
の 工 夫
尾
恵 美 子**大
dietary
changes
nausea
Kugahara
とQOLと
and
橋
の 関 連
一 友***
and
vomiting
quality
of
of
life
in
pregnancy
T, Matsuo E, Ohashi K.
抄
録
っ わ り症 状 を 改 善 、予 防 す る食 事 の工 夫 は 多 種 多 様 で あ るが 、実 態 や 効 果 に つ い て は 不 明 の点 が 多 い。ま た 、悪 心 ・嘔
吐 はQOLを 低 下 させ 、特 にQOLの 低 い妊 婦 の 食 事 に つ い て適 切 な 指導 が必 要 で あ る と思 われ る。本 研 究 で は 妊 娠2~4ヶ
月 の妊 婦 のQOLと つ わ りに 対 す る食 事 の工 夫 の 実施 頻 度 との 関連 を検 討 した。
自己記 入 式 質 問 紙 を136名 の 妊 婦 よ り回 収 し、108名 の有 効 回答 を 分析 した 。QOL評 価 に は5段 階 フ ェイ ス ス ケ ー ル を
使 用 した 。っ わ りに 対 す る食 事 の 工 夫 の 質 問 内 容 は 文 献 よ り抽 出 した。
っ わ りの 有 無 とQOLに は 関連 が 見 られ た。QOLや つ わ りの 有 無 と関連 が あ る 項 目 と して 、「
炭 水 化 物 を 多 く摂 取 す る」、
「
水 分 の多 い も の を摂 取 す る 」、「野 菜 や フル ー ツ を 多 く摂 取 す る 」、「
食 後 は 静 か に横 に な る。」、「
料 理 を家 です る こ とを避
け る」、「し ょ うが を 積 極 的 に つ か う」、「
食 事 を 冷 や して食 べ る」の7項 目が 抽 出 され た 。この結 果 は 、っ わ り症 状 や 妊婦
のQOLの 改 善 に 関 す る今 後 の介 入 研 究 の 基 礎 資 料 とな る と考 え る。
キー ワー ド:っ
わ り、妊 婦 、QOL、 食 事 指 導
KeyWords:nauseaandvomitingofpregnancy,qualityoflife,dietarychanges
*大 阪 大学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 保健 学 専 攻 博 士後 期 課 程**り
***大 阪 大 学 大 学 院 医学 系 研 究 科 保 健 学 専 攻
一1一
ん く う総 合 医療 セ ン ター
市立泉佐野病院
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.13No.1(2007)
中期 母 親 学 級 に参 加 した妊 婦 対 象 に 自 己記 入 式 の質 問紙
1.緒
を用 い て調 査 を行 っ た。140名 の 妊 婦 に質 問紙 を 配 布 し、
言
回 答 の 得 られ た136名(回
っ わ りは 日本 産 科 婦 人 科 学 会 の定 義 で は 」 悪 心 、嘔
収 率97%)の
吐、食 欲 不振 な ど を 主徴 とす る妊 娠 に よっ て 起 こ る 消
の 得 られ た108名(有
化 器 症 状 を 主 と した症 状 、妊 娠 嘔 吐 」と され る。っ わ り
回 収 した 質 問 紙 が 完 全 回 答 で な か った15名 と中期 母 親 学
症 状 は3大 症 状 の 悪 心 、嘔 吐 、食 欲 不 振 の み で は な く、
級 の 対象 者 で は な い妊 娠24週 以 後 の13名 は 分 析 対 象 外 と
体 重 減 少 、全 身 倦 怠 感 、眩 暈 、頭 重感 、耳 鳴 り、不 眠 、
した 。
腰 痛 、下 腹 痛 、胃痛 、胃部 圧 迫 感 、胸 や け、口渇 、下痢 、
3.研 究期 間
2004年12月
便 秘 、流涎 、悪 感 、熱 感 、微 熱 、心 悸 亢 進 、手 足 の しび
効 回 答 率77%)を
うち 、有 効 回 答
分 析 対 象 と した 。
~2005年8月
4.方 法
れ 、嗅覚 過 敏 な ど多 岐 に わ た る。症 状 や 強 さに は個 人 差
つ わ り症 状 を経 験 す
中期 母 親 学 級 に参 加 した 妊婦 全 員 に調 査 の説 明 資 料 と
る。しか し、つ わ りの 原 因 は 不 明 で あ る た め 、症 状 を 消
自己 記入 式 ア ン ケー ト用 紙 、封 筒 を配 布 した 。調 査 の 説
失 させ る根 本 的 な 治 療 は存 在 せ ず 、対 症 療 法 が と られ
明 資料 に ①調 査 の趣 旨 、② 目的 、③ 調 査 へ の 参 加 は 自 由
て い る1)。
意志 で よ い こ と、④ 回答 結 果 は 調 査 以 後 の診 療 行 為 に一
が あ る も の の 、妊 婦 の50~80%は
っ わ り症 状 の悪 心 ・嘔 吐 は妊 婦 に 苦 痛 や 不 快 感 を 与
切 影 響 が な い こ と、⑤ 回答 結果 は 全 て数 値 に変 換 し て処
え 、妊 婦 のQOLを 低 下 させ る と報 告 され て い る2)。われ
理 し、個 人 が 特 定 され な い こ と を 明記 した。母 親 学 級 終
われ の研 究 で も 、 悪 心 が 強 い 妊 婦 ほ ど身 体 的QOLが 低
了時 に質 問紙 に 記 入 した後 に 、封 筒 に 入 れ た 記 入 済 み の
く、 一 方 、 嘔 吐 の 程 度 は身 体 的QOLと 無 関係 で あ った
3)。 しか し、悪 心 ・嘔 吐 の症 状 に 対 す る根 本 的 な治 療 は
質 問 紙 を外 来 の人 目につ か ない 場 所 に設 置 した 回 収 箱 に
な い た め 、っ わ り症 状 と付 き合 い な が ら も妊 婦 が 快 適
5.調 査 内容
な 日常生 活 を 送 れ る よ うに 支援 す る こ と が助 産 師 に は
1)妊 婦 背 景
回収 した 。
年 齢 、妊 娠 週 数 、調 査 時 のbodymassindex(BMI)、
求 め られ る。す な わ ち、っ わ り症 状 に よ る妊 婦 のQOLの
低 下 を最 小 限 に す る 日常 生 活 上 の 工 夫 を妊 婦 に提 供 す
産 経 験 を 調 査 した 。
る こ とが 重要 で あ る。 初期 妊 婦 へ の保 健 指 導 は、妊 娠
2)妊 娠2~4ヶ 月 の っ わ り症 状 の 有 無
出
悪 阻 に移 行 した 一 部 の 妊 婦 を 除 い て 外 来 で行 われ てい
対象 者 に 「つ わ りの症 状 は あ りま した か 」の 質 問 に 対
る。 そ の た め 、 短 時 間 で 妊 婦 の 状 態 を評 価 した後 に適
して 、「は い 」、「い い え 」の 選 択 で 回答 を 得 た 。以 下 、「は
切 な 指 導 を行 う こ とが 望 ま れ て い る。
い 」 と回 答 した妊 婦 を 「つ わ りあ り」妊 婦 、「い い え 」と
回答 した妊 婦 を 「つ わ りな し」妊 婦 と表 現 す る。
つ わ りの予 防 や 改 善 の た め の 食 事 指 導 は、妊 娠 中期
3)妊 娠2~4ヶ
以 降 の 栄 養 指 導 とは 異 な る。つ わ り症 状 に個 人 差 が あ
月 の平 均 的 なQOL
QOL評 価 は 妊 婦 に 負 担 が 少 な く、かつ 簡 便 に解 釈 可 能
るた め、一 般 的 に は 「
食 べ た い 時 に 、食 べ た い物 を 、食
べ 易 い 方 法 で 、 食 べ たい 量 だ け 食 べ て 下 さい 」 と、妊
で あ る点 を 考 慮 し て、 「
厚 生省 栗原 班 調 査 書(QOL-ACD)」
婦 自身 に食 事 方 法 を 自 由 に 選 ばせ て い る こ と が 多 い 。
を参 考 に 、 フ ェイ ス ス ケー ル(図1)を
使 用 した4)。
妊 婦 のQOLの 検 討 に は 一般 的 な 健康 尺 度 と してSF-36
しか し、妊 婦 が ど の よ うな 食 事 の工 夫 を 実施 して い る
の か実 態 は 報 告 され て い な い 。ま た、QOLの 低 い妊 婦 を
が 多 く用 い られ て い るa)5)。しか し、質 問 項 目が 多 く 、妊
支 援 す る た め に 、詳 細 な食 事 の 実 態 を知 る必 要 が あ る。
婦 の 保 健 指 導 に使 用 す る こ とは 困 難 で あ る。フ ェイ ス ス
そ こ で本 研 究 で は、つ わ りに 対 す る食 事 の 工 夫 の 実
ケ ール に よるQOL評 価 は癌 患 者 を は じめ と して周 産 期 領 域
6)を含 む 様 々 な分 野 で使 用 され てお り
、
本 研 究 で は フ ェイ
施 頻 度 を調 査 し、QOL及び つ わ り症 状 の 有 無 との 関 連 を
ス ス ケ ー ル を用 い たQOL測 定 を試 み た。さ らに 、質 問 票 調
検 討 す る こ とに よ り、今 後 の介 入 研 究 の基 礎 資料 を得
査 で は 、質 問 文 の解 釈 が 難 しく質 問者 の 意 図 を 回 答 者 が
る こ と を 目的 と した。
汲 み 取 れ ない 場 合 に は 妥 当 性 が低 下 す る と考 え 、「
妊 娠2
∬.研
~4ヶ 月 時 の 平均 的 状 態 に相 応 す る顔 の番 号 に ○ を つ け
究 方法
て くだ さい。」と平 易 な 文 書 で 回 答 を求 め、妥 当 性 を 低 下
1.研 究デ ザ イ ン
させ な い よ うに工 夫 した。
横 断 的 研 究 、 質 問 紙 に よ る 振 り返 り調 査 。
以 下 、対 象 者 が 回 答 した顔 の番 号 を フ ェイ ス ス ケ ー ル
2.対 象
値 と定 義 した。
産 婦 人 科 診 療 所2施 設 と総 合 病 院 産 婦 人 科1施 設 の
2
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1.13No.1(2007)
図1フ
4)妊
娠2~4ヶ
ェ イ スス ケー ル
correlationcoefficienttestを
月 の 食 事 の 工 夫 の 実施 頻 度 につ い て
事 の 工 夫 の 実 施 頻 度 とQOL及 び つ わ り の 有 無 と の 関 連 は
「つ わ り 」、 「妊 娠 悪 阻 」、 「妊 娠 初 期 の 保 健 指 導 」、
「
皿orningsickness」
Kendal1'srankcorrelationcoefficienttestで
、「nauseaandvomitingofpregnancy」
の キ ー ワ ー ドを 用 い て 医 学 中 央 雑 誌 とMEDLINEで
6.倫
理的配慮
対 象 者 に 、調 査 の 趣 旨、 目的 、調 査 へ の 参加 は 自由
「食 事 摂 取 品
意 志 で よ い こ と、 回答 結 果 は調 査 以 後 の 診 療 行 為 に 一
目 」、 「
味 付 け 」、 「
間 食 」、 「
食 事 摂 取 回 数 」、 「便 秘 予 防 対
切 影 響 が な い こ と、 回 答 結 果 は 全 て 数 値 に 変 換 し て 処
策 」、 「
食 事 前 後 の 準 備 方 法 と 休 息 の 工 夫 」 を 考 慮 し 、17
項 目を 採 用 した。 回 答 は
検
討 し た 。検 定 結 果 がP〈0.05を 統 計 学 的 有 意 と み な した 。
検 索 し、
食 事 の 工 夫 に 関 す る 質 問 項 目 を 作 成 し た7)8)9)10)11)12)13)。
食 事 の 工 夫 に つ い て の 質 問 項 目の 構 成 は
用 い て 検 討 し た 。食
理 し 、 個 人 が 特 定 さ れ な い こ と を 文 書 に よ り説 明 し 、
「
常 に 」、 「し ば し ば 」、 「
時 々 」、
質 問紙 の 回 収 を も っ て 同意 と した。
「
全 く な い 」 の4択 法 を 用 い た 。 さ らに 、 口 腔 内 の 状 態 に
食 事 回 数 と と も に 影 響 が あ る 歯 磨 き の 回 数 を調 査 した 。
5.分
皿.結
析 方 法
年 齢 、 妊 娠 週 数 、 調 査 時bodyMassIndex(BMI)、
1.妊
及
度を
2.っ
妊 婦 の 背 景 に つ い て フ ェ イ ス ス ケ ー ル 値 別 の 年 齢 、妊
差 をKruskal-Wallistestで
既 往 分 娩 歴 に も関
わ り症 状 の 有 無 とQOLの
つ わ り症 状 の 有 無 とQOLは
検 討 し た 。 さ ら に 、QOLと
22.4,nニ108,P〈0.001)。
表1QOL(フ
関 連(表2>
つ わ り症 状 あ り と 回 答 し た 妊 婦 は87名(8ユ%)で
、既 往
つ わ り症 状 の 有 無 の 関 連 はxztestとKendall'srank
ま た 、っ わ り症 状 の 有 無 とQOL
ェ イ ス ス ケ ー ル 値)と 妊 婦 背 景
合計
1
2
3
4
5
人数
118
5
37
29
23
14
年齢(中央値)
30
32
30
30
30
29
0.631
妊娠週数(中央値)
20
20
20
20
20
19
0.971
21
21
21
21
21
21
0.591
初産婦人数
76
3
25
21
17
10
(%)
(100.0%)
(3.9%)
(32.9%)
(27.6%)
(22.4%)
(13.2%)
経産婦人数
32
2
12
8
6
4
(%)
(100.0%)
(6.3%)
(37.5%)
(25.0%)
(18.8%)
(12.5%)
央 値)
i)Kruskal-Wallistest2)x2test
3
あ り、
独 立 し て い な か っ た(x2=
フェイススケー ル 値
調 査 時BMI(中
は差 は
連 は な か っ た(x2test)。
な い 」1点 と 点 数 化 し 、 実 施 頻 度 を 検 討 し た 。
分 娩 歴 と の 関 連 をx2testで
の 妊 婦 の 年 齢 、妊 娠 週 数 、調 査 時BMIに
見 られ ず(Kruskal-Wallistest)、
「
常 に 」4点 、 「しば しば 」3点 、 「時 々 」2点 、 「全 く
娠 週 数 、調 査 時BMIの
婦 の 背 景(表1)
QOL別
び 出 産 経 験 を 集 計 し た 。っ わ り期 の 食 事 の 工 夫 の 実 施 頻
果
P
0.962>
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.13N().1(2007)
に は 弱 い 正 の 相 関 が 認 め ら れ た(τ=0.40,P〈0.ooi,
QOLと
Kendall'srankcorrelationcoefficient)0
3.食
の 検 討 で は 、 「炭 水 化 物 を 多 く 摂 取 す る 」(τ=
0.168,n=108,p=o.042)、
事 の 工 夫 の 実 施 頻 度 とQOL及
び つ わ りの 有 無 と の 関
「し ょ う が を 積 極 的 に 使
弱 い 正 の 相 関 が 、 「食
(τ=0.184,n=108,炉0.029)に
連(表3)
後 は 静 か に 横 に な る 」(τ=-0.230,n=108,p=0.004)、
妊 娠2~4ヶ
「調 理 を 家 で す る こ と を 避 け る 」(τ=-0.238,nニ108
月 の 食 事 の 工 夫 の 実 施 頻 度 と 、フ ェ イ ス ス
ケ ー ル を 用 い たQOL及
び っ わ り症 状 の 有 無 と の 関 連 を
Kendall'srankcorrelationcoefficienttestで
p=o.004)、
検 討
「食 事 を 冷 や し て 食 べ る 」(τ=-0。258,
n=108,炉0.002)に
弱 い 負 の 相 関 が認 め られ た。
した 。
表2QOLと
っ わ り症 状 の 有 無 との 関 係
フ ェイ スス ケ ー ル 値
合計
1
2
3
4
5
っ わ りあ り人 数
87
5
36
25
14
7
(%)
(100.0%)
(5.7%)
(41.4%)
(28.7%)
(16.1%)
(8.0%)
っ わ りな し人 数
21
0
1
4
9
7
(%)
(100.0%)
(4.8%)
(19.0%)
(42.9%)
(33.3%)
(o°r°〉
1)P
1!11
1>xztest
表3つ
わりに対する食事の工夫 の実施 頻度とQOL及
びつわりの有無の関連
つ わ りの有 無
QOL
中央値
Z
z
Pi)
Pi)
炭水化物を多く摂取する
3
1..
0.042
水分の多いものを摂取する
3
111:
0.920
一〇
o.007
11
.250
0.675
炭 酸 飲 料 を避 ける。
3
一〇
.114
0.163
一〇
.144
0.107
野 菜 や フル ー ツ を多 く摂 取 す る
3
0.023
o.7si
一〇.216
0.019
酸味のあるものを摂取する
3
一〇
0.191
一〇
0.146
空腹の時にはすぐ食物を口にする
3
o.oii
1:・1
一〇
0.240
ヨー グル トを摂 取 す る
3
0.095
0.241
1!1・
0.922
繊維 質の多い食物を摂取する
3
0.162
0.053
0.031
0.735
食後 は静かに横になる
3
一〇.230
0.004
料理を家ですることを避ける
2
一〇
.238
0.004
一〇
油 を ひ か える
2
0.037
0.653
一〇
しょうが を積 極 的 に 使 う
2
0.184
0.029
11.:
0.465
1.
11.1
0.504
0.059
0.521
一〇
.110
薄味 にする
2
香辛料を適度に使う
2
0.135
食事を冷やして食べる
1
一〇
1日 に4回 以 上 の食 事 をす る
1
一〇
かんきっ類を避ける
1
一〇
.015
.258
.108
.156
0.108
.134
.ios
1・:
.315
.007
0.002
一〇
0.192
一〇
0.069
一〇
1)Kendall'srankcorrelationcoefficienttest
4一
う」
0.025
1111
0.937
.322
1111
.121
0.182
.060
0.522
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.13No.1(2007)
な し」の ほ うが妊 婦 の 全体 的 なQOLは 高 い がす べ て の妊 婦
っ わ り の 有 無 と の 検 討 で は 、「水 分 の 多 い も の を 摂 取 す
る 」(τ=-0.250,n=108,p=0.007)、
に該 当 す るわ け で は な い。 こ の結 果 か ら、初 期 妊 婦 を ア
「野 菜 や フ ル ー ツ
を 多 く 摂 取 す る 」(τ=m.216,nニ108,P'=0.019)、
セ ス メ ン トす る際 にはつ わ り症 状 の有 無 とは 別 の視 点 で、
「食
後 は 静 か に 横 に な る 」(T=-0.198,nニ108,グ
QOLを 考 慮 しな が ら保 健 指 導 を行 う必 要 が あ る と考 え る。
・0.025)
「調 理 を 家 で す る こ と を 避 け る 」(z=-0.315,n=108,
P〈0.001)、
n;108,P〈0.001)に
4.歯
3.食 事 の 工 夫 の実 施 頻 度
「食 事 を 冷 や し て 食 べ る 」(τ=-0.322,
食 事 の 工 夫 の 実 施 頻 度 で 中 央 値 が3、 っ ま り実 施 頻 度
弱 い 負 の 相 関 が 認 め られ た 。
「しば しば 」を示 した もの は17項 目中9項 目で あ っ た 。「
水
磨 き の 回数
分 の 多 い も の を 摂 取 す る 」、 「
野 菜 や フル ー ツ を 多 く と
1日 の 歯 磨 き 回 数 別 の 人 数 は0回11人(10%)、1回8人
る 」、 「ヨー グ ル トを摂 取 す る」、「繊 維 質 の多 い 食 物 を摂
(7%)、2回49人(45%)、3回30人(27%)、4回6人(5
%)、5回2人(1%)、
無 回 答2名(1%)で
取 す る」は 「
便 秘 予 防 対 策 」 で あ り、便 秘 予 防 を意 識 す
あ っ た 。
る こ とに よ りっ わ り時期 の 消化 管 運 動 機 能 の低 下 を最 小
N.考
1.妊 娠2~4ヶ
察
限 に す る た め に勧 め られ て い る項 目で あ る。極 度 の便 秘
に 陥 る こ とに よ り嘔 気 は増 加 す る こ とが知 られ てお り、
月 の 妊 婦 のQOL評 価
ま た妊 婦 の マ イナ ー トラブル で あ る痔 の発 症 予 防 に役 立
本 研 究 で はQOL評 価 に フ ェ イ ス ス ケ ー ル を用 い た。フ ェ
イ ス ス ケ ー ル は そ の簡 便性 よ り、特 に 長 時 間 の質 問 票 へ
っ食 事 指 導 で あ る 。 一 方 、 「
炭 水 化 物 を 多 く摂 取 す る」、
の 記 入 が 困難 で あ る対 象 者 、た とえ ば ホ ス ピ ス患 者 や 重
「
炭 酸 飲 料 を避 け る」は 「
食 事 の摂 取 品 目」、「
酸味 のある
症 の リウマ チ 患 者 な ど、に適 用 され てい る。本 研 究 で は
もの を摂 取 す る」 は 「
味 付 け 」、 「空 腹 時 には す ぐ に食 物
つ わ り症 状 を 有 さな い妊 婦 の 振 り返 り調 査 で妊 娠2~4ヶ
を 口 にす る」は 「
食 事 の摂 取 回数 」の 項 目で あ る。この9
月 の 状 態 を把 握 した が 、つ わ りを 有 す る妊 婦 で調 査 を行
項 目の 中 でQOLま た はつ わ りの 有 無 と関 連 が あ っ た項 目
う場 合 、長 時 間 の 質 問 紙調 査 は 困 難 で あ る。そ の た め 、つ
は 、「炭 水 化 物 を多 く摂 取 す る 」、「水 分 の 多 い も の を摂 取
わ りを有 す る妊 婦 のQOL調 査 に は フ ェイ スス ケ ール が有 用
す る」、「野菜 や フ ル ー ツ を多 く摂 取 す る 」、 「
食 後 は静 か
で あ る と 考 え た。しか し、つ わ りを有 す る妊 婦 のQOLの 測
に 横 にな る」の4項 目で あ っ た。こ の 中で もQOLと の関 連
定 に 対 す る フ ェイ ス ス ケ ー ル の 信 頼 性 や 妥 当性 は 証 明 さ
が 見 られ た 「
炭 水化 物 を多 く摂 取 す る」は特 に重 要 な項
れ て お らず 、今 後 、短 時 間 で 測 定 可 能 な妊 婦 に対 す るQOL
目 と考 え られ る。っ わ り症 状 は 一 般 的 に空 腹 時 に 増 強す
評 価 法 を 確 立 す る必 要 が あ る。
る こ とが 知 られ て お り、そ の た め 炭 水 化 物 は 胃 の停 滞 時
間 が長 い こ とか ら空 腹 を予 防 す る意味 で勧 め られ てい る。
妊 婦 の フ ェイ ス ス ケ ー ル で 評 価 したQOL別 の年 齢 、妊娠
週 数 、調 査 時BMI、 既 往 分 娩 歴 に差 は な か っ た 。こ の結 果
空腹 を 防 ぐ方 法 と して は 間食 を行 う方 法 が あ り、「
炭水化
は 、つ わ りの 強 さ と年 齢 、妊 娠 回数 、BMIなど の差 が な か っ
物 を 多 く摂 取 す る 」と 同様 に 「
空 腹 の 時 に は す ぐ食 物 を
た 先 行 研 究14)の結 果 と類 似 して い た 。妊 娠2~4ヶ 月 の妊
口 にす る」 とい う項 目の実 施 頻 度 も 高値 で あ っ た 。 しか
婦 の 背 景 因 子 か らQOLを 予 測 す る こ とは 困難 で あ り、妊 婦
し、一 般 的 に頻 回 に食 物 を 口に す る場 合 には 口腔 内 の衛
のQOLを 評 価 す る場 合 に は妊 婦 健 診 の 際 に フェ イ ス ス ケ ー
生 を 保 持 す る こ と が 困 難 に な る。そ こ で、1日の 歯 磨 き回
ル な ど を使 用 す る こ とが 必 要 で あ る と思 われ た。
数 を 検討 した と こ ろ 、1日1度 も歯 磨 きで きな か っ た妊 婦
が11人(10%)存
2。 っ わ り症 状 の 有 無 とQOLの
在 した。 さ らに こ の11人 は 、全 員 が 「
空
腹 の 時 に はす ぐ食 物 を 口に して い ま した か?」 の質 問 に
関連
つ わ り症 状 の 有 無 と 関 連
対 して 「
常 に」、 「しば しば 」、 「とき どき 」 と答 え た 妊 婦
して い る こ と が 明 らか に な っ た 。こ の 結 果 は 先 行 研 究 の
で あ った 。つ わ り症 状 を 有 す る妊 婦 では 歯 磨 き行 動 に よ
結 果 と 一 致 し て い た3)15)。し か し、つ わ り 症 状 の 有 無 別 の
り嘔 気 が 誘 発 され る と言 わ れ て お り16)、
本 研 究 に おい て
フ ェ イ ス ス ケ ー ル 値 を 詳 細 に 観 察 す る と 、「つ わ り あ り 」
も歯 磨 き に よ り嘔 気 が誘 発 され た経 験 を もつ妊 婦 は嘔 気
妊 婦 の 中 で も フ ェ イ ス ス ケ ー ル 値3か
ら5、 す な わ ち 「っ
の誘 発 予 防 の た め に歯 磨 き を制 限 した と考 え られ る。ま
わ り な し」妊 婦 と 同 様 のQOLレ ベ ル で 日 常 生 活 を 送 っ て い
た 、歯 磨 き 回数 が3回 以 下 の 割 合 が106名 中98名 で あ っ
る妊 婦 が い る 一 方 で 、フ ェ イ ス ス ケ ー ル 値1と2の
た こ とか ら、大 多数 の 妊 婦 で 、間 食 回数 の 増加 に歯 磨 き
妊 娠2~4ヶ
月 の 妊 婦 のQOLは
低 いQOL
レベ ル で 日常 生 活 を送 っ て い る 妊 婦 も存 在 した。これ は
回数 が 追 い つ い て い こ と も考 え られ る。口腔 衛 生 の悪 化
相 関 の 程 度 が τ=0.4の
比 較 的 弱 い相 関で あ るた め で あ る
の結 果 生 ず る妊 婦 の歯 周 病 は放 置 す る と早 産 の リス クを
と考 え る。 っ ま り 「
っ わ り症 状 あ り」 よ り 「
っ わ り症状
高 め る こ とが 明 ら か に な っ て お り17)、
つ わ りを 有 す る妊
5一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1
.13No.1(2007)
婦 の 口腔 衛 生 に は 注 意 を 要 す る。
次 に 中 央 値 が2、 っ ま り実 施 頻 度 「
時 々」で あ っ た5項
叨1.文
目中、2項 目 にQOLや つ わ りの有 無 と関 連 が 認 め られ た 。
日 野 原 重 明 、井 村 裕 夫(2001):看
2.
AttardCL,KohliMA,ColemanS,BradleyC,Hux
「
料 理 を 家 で す る こ とを 避 け る 」につ い て はeoiが 低 い 妊
学 講 座15産
婦 ほ ど、 ま た 「っ わ り症 状 あ り」妊 婦 ほ ど実 施 頻 度 が 高
献
1.
護 の た め の最 新 医
科 疾 患 、 中 山 書 店 、115-116.
か っ た こ とが 明 らか にな っ た。 ま た、つ わ りの 改 善 に 有
M,AtanackovicG,TorranceGW.(2002):Theburden
効 で あ る 可能 性 が あ る 「し ょ うが の 摂 取 」 につ い て は 、
ofillnessofseverenauseaandvomitingof
「QOL」とは 関 連 が あ っ た が 「
っ わ り症 状 の 有 無 」 とは 関
pregnancyintheUnitedStates.AmJObstet
連 が な か った 。近 年 、「しょ うが の摂 取 」は つ わ り症 状 の
Gynecol,185(5),220-227.
嘔 気 、嘔 吐 の 改 善 に効 果 が あ る と介 入 研 究 で 証 明 され た
3.
KugaharaT,OhashiK.(2006):Characteristics
ば か りで18)、ま だ情 報 が 普及 して い な い現 状 が 、全 体 の
ofnauseaandvomitinginpregnantJapanese
実 施 頻 度 で は2「 時 々 」を示 して い た こ と で裏 づ け られ
Women,NursingandHealthSciences,8(3),179‐
た。一 方 でQOLが 高 か った 妊 婦 ほ ど実 施 頻 度 が 高 か っ た本
184.
研 究 の 結果 は 、前述 した 「しょ うが」 の効 果 を 支 持 す る
4.
結 果 で あ る と考 え られ た。
萬 代
隆 、 藤 田 晴 康 、 神 田 清 子(2003):看
すQOL評
中央 値 が1、 つ ま り実 施 頻 度 が 「全 くな い 」で あ った
5.
3項 目中1項 目 「食 事 を冷 や して 食 べ て い た 」で は 、妊 婦
価 、 中W書
護 に 活 か
店 、45
HuestonwJ,Kasic‐MillerS.(1998):Changesin
functionalhealthstatusduringnormal
全 体 で は実 施 頻 度 が低 か っ た に もか か わ らずQOLの 低 い ま
pregnancy.JFamPract.,47(3),209-212.
た は つ わ りを 有 す る妊 婦 ほ ど頻 度 が 高 か っ た。食 事 を 冷
6.
や す こ とに よ り蒸 気 に よ る臭 気 を避 け る、ま た 味覚 を鈍
河 越 栄 、 岡 田 知 子 、 足 立 孝 子(2004):ア
ロマ セ ラ
ピ ー に よ る 産 婦 へ の リ ラ ッ ク ス 効 果 、公 立 豊 岡 病 院
感 に させ る 効果 か ら初期 妊 婦 の食 欲 低 下 を軽 減 す る理 由
紀 要16,47-50.
に よる もの と考 え られ た 。一 部 の妊 婦 か らの 自 由記 載 欄
7.
土 井 正 子 、 山 本 妙 子 、野 木 由 香(2005):妊
娠 初 期 の
には 「
食 事 を 冷 や す こ とに よ っ て食 べ られ な か った もの
栄 養 指 導 の ポ イ ン ト 、ペ リ ネ イ タ ル ケ ア 、 夏 期 増 刊
が 食 べ られ る よ うに な っ た 」 との意 見 が あ り、今 後 の 食
50-69.
事 指 導 の 参 考 と な る と考 え られ た 。
8.
本 研 究 で はQOLや つ わ りの有 無 と関連 す る食事 の工 夫 項
目を 抽 出 し た。 しか し、 これ らの 項 目の つ わ りの 症 状 改
わ り と 栄 養 、メ ジ カ ル フ レ ン ド
性 看 護 学 ② 妊 婦 ・産 婦 ・褥 婦 ・
新 生 児 の 看 護 、85.
善効 果 に つ い て の検 討 は 、今 後 、介 入 研 究 に よ っ て解 明
9.
され な けれ ば な らな い 。
立 山 直 子 、若 麻 績 佳 樹(2002):っ
32、
10.
V.結
高 田 昌 代(2003):つ
社 新 体 系 看 護 学31母
語
わ り 、周 産 期 医 学 、
増 刊 号 、10-13.
島 田 信 広(2001):妊
婦 の 栄 養 ・食 事 指 導 の 実 際 一 妊
娠 悪 阻 、 周 産 期 医 学32(2),214-216.
つ わ りの 有 無 とQOLに は 関連 が 見 られ た。 しか し、つ
11.
正 津 晃 、 山 林 一 、 前 田 マ ス ヨ 、 掘 江 朝 子(1994):つ
わ り症 状 を有 す る 妊 婦 の 個 々 のQOLレ ベ ル は 様 々 で あ っ
わ り の 時 の 食 生 活 、 学 研 ・新 図 説 臨 床 看 護 シ リ ー ズ
た。
12、 母 性 看 護 、135.
妊 娠2~4ヶ 月 の妊 婦 が行 っ た 食 事 の 工 夫 とQOL及 び つ
ユ2.
JenniferR.Niebyl,TmurphyGoodwin(2002):
わ りの有 無 との 関連 を検 討 した。QOLと関 連 を認 め た項 目
Overviewofnauseaandvomitingofpregnancy
は 「
炭 水 化 物 を 多 く摂 取 す る」、 「
食 後 は静 かに横 にな
withanemphasisonvitaminsandginger
る」、「
料 理 を 家 で す る こ とを避 け る」、 「しょ うが を積 極
ObstetGynecol186(5suppl2),5253-5255
的 に使 う」、 「
食 事 を 冷 や して 食 べ る 」で あっ た。つ わ り
13.
O'BrienB,NaberS.(1992):Nauseaandvomiting
の有 無 と関連 を認 め た 項 目は 「
水 分 の 多 い も の を摂 取 す
duringpregnancy:effectsonthequalityofwomen
る」、「野 菜 や フ ル ー ツ を多 く摂 取 す る 」、「
食 後は静か に
痴1ives.Birth,19(3),138-143.
横 に な る 」、 「
調 理 を 家 で す る こ とを避 け る」、「食 事 を冷
14.
O'BrienB,ZhouQ.(1995):Variablesrelated
や して 食 べ る 」で あ っ た。 「しょ うが を積 極 的 に 用 い る」
tonauseaandvomitingduringpregnancy.Birth,
以 外 の項 目は介 入効 果 につ い て の研 究 はな され てお らず 、
22(2),93-100.
今 後 、有 用 性 を 証 明 す る必 要 が あ る。
15.
6
SmithC,CrowtherC,BeilbyJ,bandeauxJ.
.AmJ
.
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.13No.1(2007)
(2000):Theimpactofnauseaandvomitingon
womenaburdenofearlypregnancy.AustNZJ
ObstetGynaecol.40(4),397-401.
16.鴨
井 久 一(2004):女
ィ
ジ ー
性
の 健
康
と 歯 周 病
、デ
ン タ ル
ハ
ン24(3),220-223.
17.Offenbacher.S,Katz.V,Fertik,G,etal.
(1996):Periodontalinfectionasapossible
riskfactorforpretermlowbirthweight.J
Periodontal,67(10supply,1103-1113.
18.VutyavanichT,KraisarinT,RuangsriR-A.
(2001):GingerforNauseaandvomitingin
pregnancy:Randomized,Double-Masked,PlaceboControlledTrial.obstetGynecol,97(4),577582.
-7一