ひ ふ た り しず か むら で す わたしはにいさんと二人、静かな村に住んでいました。 す ねむ ある日のこと、にいさんが狩りに出かけると、 すこ おも よこ ね い なぜか、吸いこまれるように眠くなってしまったのです。 み す たたか 少しだけ、と思って横になると、そのまま寝入ってしまいました。 ゆめ むら すると、夢を見ました。 はや い たす ゆめ オタスッの村に住むオタスッウンクㇽがおそわれて、戦いになっています。 おお め さ いち わ いえ そと で むら ほう と 「早く行って、助けてあげなさい」と、夢のなかでだれかにいわれました。 しろ はっとして目を覚まし、家の外に出てみると、 ゆめ 白くて大きなツルが一羽、オタスッの村の方へと飛んでいくではありませんか。 かえ ま やはり、夢は、ほんとうだったのです。 いえ はい たたか にいさんの帰りを待っているわけにはいきません。 たたか たたか たたか ふく かぶと かたな き さ と わたしは家に入ると、さっそく戦いのしたくをしました。 おんなも の おんなも の 女物の戦いの服、ロルンペ・イミを着て、 おんなも の 女物の戦いの兜、ロルンペ・カサをかぶり、 で お まえ からだ そら くろ くも い な びかり だい ち お な ひる そらたか は すす ひか と の やま み 女物の戦いの刀、ロルンペ・コㇿ・エムㇱを差して、飛びだしました。 そと め 外へ出ると、いきなり体がポーンと空高く跳ねあがりました。 みみもと くろくも ひか わたしは、目の前のまっ黒な雲のかたまりに、飛びのりました。 くろくも かぜ 黒雲はぐいぐいと、空をかけていきます。 さき 風が、耳元でヒューヒューと鳴ります。 いなづま 先をゆく黒雲のなかで、稲光がピカピカッと光ります。 いなづま それは、つぎつぎに稲妻を落としながら、進んでいきます。 むら か わ ら あし たたか 稲妻が落ちるたびに、大地はま昼のように光り、野山がくっきり見えました。 み オタスッの村は、もうすぐです! むら ひと 村が見えてきて、おどろきました。 ひとびと せ たくさんの人が、まるで川原の葦のようにひしめいて戦っています。 くろくも むら お いったいどこから、どんな人々が、攻めてきたのでしょう。 くも ま 黒雲は、すうっと村に降りていきました。 わたしは、ひらりと雲から舞いおりると くさ か てき 「こらぁ! オタスッウンクㇽになんてことをするんだっ!」 さけ かたな ふ と叫びながら、刀を振りおろしました。 バッサバッサと草を刈るように、敵をたいらげていきます。 6 7 ★挿画1 (黒雲に乗って右から左に空をかける少女。 雲は稲妻を落としている。 くろ い な びかり まえ 左手奥、遠くにオタスッの村。 葦のように人々がひしめいている) そら み し たたか み 空はまっ黒。稲光がするたびに、わたしのすぐ前で かたな ひ ひかり するど ひか 見知らぬカムイが戦っているのが見えました。 まも たす 刀が、まるで日の光のように鋭く光ります。 わたしを守り、助けてくれているのです。 てき しお ひ に やがて、にいさんもかけつけてくれました。 お おとこ あつ はなし はじ とうとう敵は、潮が引くように逃げていきました。 たたか なか ま はい 戦いが終わると、男たちは集まって話を始めました。 ひ と り かんが わたしは、仲間に入りたくなかったので、 たす 一人ぽつんとはなれて、考えごとをしていました。 お い わたしを助けてくれたあのカムイは、いったいだれだったのでしょう? はなし しんぱい に さんにち と 話も終わったようなので、行ってみると、オタスッウンクㇽが むら と 「もう心配ないから、二、三日、泊まっていきなさい」 といってくれました。 ゆめ あらわ そこで、わたしは、しばらく村に泊めてもらうことにしました。 よる その夜のことです。夢のなかに、カムイが現れました。 8 9
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