別紙様式1-1 山形県立米沢興譲館高等学校 指定第2期目 24~28 ❶平成26年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約) ① 研究開発課題 科学好きの裾野を広げ、科学を志す人材の発掘に資する『異分野融合サイエンス』及び未来の科学技術 系人材育成に資する『米沢興譲館サイエンス・ルネサンス』による未来のサイエンスイノベーター育成 を目指す教育プログラムの研究開発を行う。 ② 研究開発の概要 平成24年度に1学年を主対象として開始し、3年が経つ。全学年がSSH対象の生徒となる完成年度である。 一昨年度から取り組んだ「科学好きの裾野を広げ、科学を志す人材の発掘に資する『異分野融合サイエ ンス』」に加え、昨年度より「未来の科学技術系人材育成に資する『米沢興譲館サイエンス・ルネサンス』 による未来のサイエンスイノベーター育成を目指す」取り組みが始まった。科学分野で水準が高い現地 の高校と連携を図る台湾海外研修や、海外からの留学生をチューターとして迎え入れることによる発展 型課題研究、有機ELの分野で国際的第一人者である城戸淳二教授による「城戸淳二塾」等で「国際性の 涵養」を図るとともに、科学系ノーベル賞を受賞し得るような卓越した研究者(サイエンスイノベータ ー)の素養を育む研究等である。その結果、平成14年度~平成16年度の指定時でも課題となっていた「国 際性の育成」については大きな改善がみられた。 ③ 平成26年度実施規模 1年生全員と2・3年生理数科を主対象として実施する。SSH講演会等については全校生を対象とする。 ④ 研究開発内容 ○研究計画 1 科学好き人材の発掘と育成、幅広い見識と豊かな人間性の醸成を図る研究 (1) フィールドワーク研修(郷土の豊かな自然環境を活かした野外研修) (2) 科学情報処理技法の育成 (3) 全教科の協働による科学好き人材の発掘と育成 (4) 科学講演会(社会性や倫理観の育成も目的とした講演会) (5) 東京サイエンスツアー(首都圏を中心とした先端的な科学関連施設研修) (6) RIKEJO-KOJO講座(女子生徒のサイエンスキャリア形成を目的とした講座) (7) 異分野融合サイエンス探究(1年間学習してきた内容を発表) 2 小中高大そして地域社会を結ぶサイエンスネットワークの構築(校種をこえた異分野融合)により、 科学教育における地域の中核的拠点校となる研究 (1) 小中学生向け体験型科学実験教室 (2) 高校教員による小中学校理科教員及び地域社会に向けた科学教養・科学実験講座 (3) 地域の合同課題研究発表会 (4) 地方発、サイエンスアゴラの嚆矢となる事業の実施 3 大学や企業等と連携した発展型課題研究への取り組みによる、探究活動水準の向上に資する研究 (1) 大学等の高等教育機関や科学関連企業等と連携した発展型課題研究の実施 (2) さらなる高大接続の推進 4 将来、ノーベル賞受賞を嘱望されるような卓越研究者(サイエンスイノベーター)の素養を育む研 究 (1) 科学系部活動の振興 (2) 優れた先端科学関連施設や研究所等への体験型訪問研修 (3) 科学教育に熱心な学校との生徒間交流 (4) 国際的な科学コンテスト等への積極的参加と受賞を目指した指導 (5) ノーベル賞受賞者やノーベル賞受賞を嘱望される卓越研究者による科学講演会 5 表現力豊かで、国際的な視野を持つ科学技術創造立国を担う人材の育成に関する研究 (1) 英語による科学コミュニケーション力の育成 (2) 英語による研究論文作成及び課題研究の検証 (3) 国語表現・文書作成技法の習得 (4) ディスカッション力・ディベート力の向上 (5) プレゼンテーション力の向上 (6) 海外科学関連施設研修および英語による合同課題研究発表 (7) 一年を通じた海外の連携校との双方向科学コミュニケーション 6 SSHで開発したカリキュラム、指導方法等の成果の普及と継承に関する研究(平成26年度以降) (1) 米沢興譲館SSH指南書の作成 (2) 先端的科学教育研究会の発足 (3) PodcastやiTunesU等のマルチメディアを活用した番組制作・情報発信 ○教育課程上の特例等特記すべき事項 ・ 平成24年度以降、1年生全員の「総合的な学習の時間」の一部を減じ、あわせて、1年生の1単位増 単により「異分野融合サイエンス」(以降、「FS」と略す)2単位を設定する。 ・ 平成24年度以降、1年生全員の必履修科目である「情報C」(平成25年度以降は「情報の科学」)を1 単位減じ、科学情報処理技法の育成に資する「スーパーサイエンス情報」 (以降、 「SS情報」と略す) を充てる。 ・ 平成25年度以降、2年生の選択者における「課題研究」を、大学等と連携することで、より発展的 な課題研究となる「スーパーサイエンス・リサーチ(以降、SSRと略す)」として扱う。 ・ 平成25年度以降、2年生の選択者における「総合的な学習の時間」を1単位減じ、「スーパーサイエ ンス(以降SSと略す)Ⅰ」に充てる。 ・ 平成26年度以降、3年生の選択者における「総合的な学習の時間」を1単位減じ、 「SSⅡ」に充てる。 ・ 平成25年度以降、2年生の選択者は「サイエンスコミュニケーション(以降、SCと略す)Ⅰ」1単位 を履修する。 ・ 平成26年度以降、3年生の選択者は「SCⅡ」1単位を履修する。 ○平成26年度の教育課程の内容 平成26年度1年生において、FS2単位とSS情報を開設した。 平成26年度2年生理数科において、SSR1単位とSSⅠ1単位、SCⅠ1単位を開設した。 平成26年度3年生理数科において、SSⅡ1単位とSCⅡ1単位を開設した。 ○具体的な研究事項・活動内容 1 学校設定教科・科目「異分野融合サイエンス」 大学等の高等教育機関や地域の科学関連施設等と連携を図り、様々な学問領域を自然科学の切り 口で体験的に学んでいく取り組み。以下のような内容を軸に水曜日の7校時、定期考査最終日の午 後、1日全てなどを使って授業を実施した。 ① コース別講義・研修 ....... 半日研修を年間7回実施 ② フィールドワーク研修 ..... 1日研修を年間2回実施 ③ 東京サイエンスツアー ..... 1泊2日の日程で実施 ④ SSH講演会 ................ ノーベル賞受賞者(筑波大学名誉教授 白川英樹 氏)による講演 ⑤ SSH校内生徒研究発表会 .... 異分野融合サイエンス学習成果のポスター発表 2 学校設定教科「スーパーサイエンス」科目名「スーパーサイエンス情報」 SSH生徒研究発表会に向けて、 「異分野融合サイエンス」で研修した内容を題材に情報発信の方法 や考え方について10月から週2時間で学習を進め、各自の研修成果のまとめと発表を行った。 3 学校設定教科「スーパーサイエンス」科目名「スーパーサイエンス・リサーチ」 科学及び数学に関する課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、専門的な知識と技能 の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てることを目標 とした従来の課題研究の取り組みに加え、生徒の科学や科学技術についての専門性を高め、あわせ て国際性の涵養も目指した発展型課題研究を実施した。理工系の留学生(大学院生水準)等をTA として活用することで、生徒が英語に触れる機会を増大させた。その取り組みの成果を SSH 校内生 徒研究発表会にて発表した。 4 学校設定教科「スーパーサイエンス」科目名「スーパーサイエンスⅠ」 本校生徒が、近隣の理工系の高等教育機関や地域の理科等に係わる機関(地区高等学校教育研究 会理科部会や米沢市理科教育センター)等と連携した子ども向けの科学実験教室等を行うことで、 地域社会の科学教育へのニーズと高校における理数教育の理念とをより一層強く結びつける役割 を担う取り組みを推進した。 また、大学等と連携した体験的科学実験講座「グリーンイノベーション・ライフイノベーション 講座」を実施することで、生徒は、革新的な科学や科学技術を体験的に学ぶとともに、再生可能エ ネルギー等の環境問題等も科学的な視点で捉えることができる姿勢と能力を養った。 さらに、研究発表に必要なプレゼンテーション力の向上に資する講座を実施し、実験データのま とめ方やその効果的な示し方、話す際の間の取り方等を含めたプレゼンテーション全般におけるそ の技法を学んだ。 本時での宿泊を伴う校外研修として、2つの研修を実施した。1つは、つくば・横浜サイエンス 研修で、地方では体験できない専門的・先端的な研究機関(つくば研究学園都市内各施設)を訪問 することで、「本物」をみることによるセンス・オブ・ワンダー体験により、サイエンスキャリア 形成が醸成された。また、各国の高校生が参加する SSH 全国生徒研究発表会に参加することで、国 際性の涵養を図るとともに、研究や研究発表に対しての意識を高揚させることができた。もう1つ の校外研修は SSH 台湾海外研修で、科学教育に熱心な台湾の高校生(同世代)と英語を用いた交流 を行い、相互に英語による課題研究の発表を行うことで、国際化を肌で感じるとともに、国際言語 5 6 7 8 としての英語の重要性を深く認識できた。また、日本の隣国がどれほど科学教育や英語教育に熱心 に取り組んでいるかを再認識し、あわせて現地大学の理工系学部や先進的な科学関連施設・企業・ ものづくり企業等にて研修を行うことで、科学の国際的なつながりを感じ、視野を世界に広げるこ とができた。 学校設定教科「サイエンスコミュニケーション」科目名「サイエンスコミュニケーションⅠ」 国語科及び英語科が協働し、生徒のコミュニケーション力やディスカッション力、ディベート力 を養成する取り組みを実施した。言語活動を充実させることで、生徒は国語表現や文章作成技法、 英語表現技法を身につけながら、課題研究発表およびその際の質疑応答等を英語で行うことができ る素養を育んだ。 学校設定教科「スーパーサイエンス」科目名「スーパーサイエンスⅡ」 多岐にわたる自然科学の領域を横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して、見付けた課題に ついて、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てるとと もに、学び方やものの考え方、科学技術リテラシーを深め、問題の解決や探究活動に主体的、創造 的、協同的に取り組む態度を育て、科学的な視点により様々な事象を考えさせることができるよう にするため、以下の取り組みを行った。 ① 理数科集会 ② ハイレベル科学実験講座 ③ サイエンスフォーラム ④ SSH サマースクール 学校設定教科「サイエンスコミュニケーション」科目名「サイエンスコミュニケーションⅡ」 高等教育機関と連携を図り、英語科教員が中心となり、3 年生希望者を対象とした、理工学部系 大学院留学生を活用した学生チューター型科学コミュニケーション講座を行った。英語によるコミ ュニケーション力とプレゼンテーション力の向上に加え、専門的な内容に関わる英語での質問に英 語で答えられるよう、SSR の研究発表内容について再考・深化させ、また、テクニカルタームにつ いての理解を深めた。 その他(教育課程外)の取り組み ① SSH生徒研究発表会 昨年度の校内生徒研究発表会にて前年度最優秀賞を受賞したグループが、本校を代表してパシ フィコ横浜で開催されたSSH生徒研究発表会に参加し、ポスターセッションを行った。他校の先 進的な取り組みを見学することで、研究に対する意識の高揚を図った。 ② 東北地区SSH指定校発表会 東北地区のSSH指定校の代表生徒が、それぞれの学校における理数諸活動の状況や研究成果の 発表を行い議論することで、相互に刺激し合い互い、これからの活動や研究の質的向上と内容の 深化を図った。 ④ 先進校視察 今後の本校のSSH諸活動を見据え、SSH事業に係わる先進的な取り組みを行っているSSH校での 研修やSSH校を対象とした研修会への参加により、本校教職員が研鑽を深め、より効果の高い取 り組み等を校内の取り組みに還元する視察を行った。 ⑤ 高大接続の推進 山形大学工学部と本校で締結した高大融合協定にもとづき、生徒は自らの希望によって受講し たい大学の科目を週1回程度の頻度で大学の学生と一緒に受講した。その後、大学が学生に行っ ている通常評価と同様の手法で、大学教員に本校生徒の評価をいただいた。 ⑥ 科学系部活動の振興 有機ELの世界的権威 城戸淳二教授がコーディネートする「城戸淳二塾」を行った。本取り組 みにより(ⅰ)本校のコアSSクラブの生徒は、希望する研究室に入り、専門研究を継続的に行った。 (ⅱ)城戸淳二教授が講師となり、プレゼン講座を月に1度の頻度で受講した。(ⅲ)知見を広げる 目的で、様々な研究室の紹介を受け、その見学を行った。 ⑤ 研究開発の成果と課題 ○実施による効果とその評価 (1)生徒の意識の変容 1年生から3年生までの全体の意識調査結果を俯瞰すると、肯定的回答率が特に高かったアンケート 結果が共通して見られたことから、SSHの取組みによって次の4点「成果を発表し伝える力」、 「考える 力」、 「自分から取り組む姿勢」、 「粘り強く取り組む姿勢」の向上について、生徒らはその効果を特に 強く認識していることが示された。また、多くの項目で肯定的回答率が高かったことから、本校生徒 にはSSHの取組みの意義を広く認識しているといえる。4点以外の肯定的回答率の高かった項目につい ては調査時点と学年によりバラバラであったが、これは対象生徒の学年と調査時期によって経験して いるSSH関連の取組みが異なるため、それぞれの取組みで受けた印象の違いが反映されたものと考え られる。例えば、1年生の第1回目調査では「様々な分野における科学からのアプローチの仕方を学ぶ ことができる」の肯定的回答率は85.8%であったが、第2回の調査では91.3%、2年生の第1回調査では 100.0%となっている。1年生は年間を通して、異分野融合サイエンス(FS)や7月の東京サイエンスツ アー(TST)を経験して、当初は想定していなかった教育効果を実感したと考えられる。同様に、 「国 際性が高まる」についても、2年生3月の台湾研修の経験後、3年生のアンケート結果で肯定的回答率 が急激に上昇していた。 (2)進路実績への効果 完成年度である今年度の進路実績が待たれるが、指定2年目の昨年度の結果としては、国公立大学 への現役進学率で全国8位(62.9% 大学通信調べ)となった。また、医学部医学科への進学者数も飛 躍的に伸びた。 (3)科学系コンテストでの受賞等 ① 今年度で4回目となる「科学の甲子園」全国大会に初出場が決定した。山形県大会では毎年上位に 入賞していたが、優勝はかなわなかった。今回は次点チームのほぼダブルスコアと大差をつけて の優勝となった。山形県チームは昨年度の第3回全国大会において、実技競技②第2位で学研賞を 受賞しているため、今年度の全国大会においても本校の活躍が期待できる。 ② 東北植物学会第4回山形大会高校生発表の部において、本校SSクラブの生徒が「植物の紅葉する 意義:アントシアニンの抗菌効果」をテーマとして研究発表を行い、最優秀賞(第1位)を受賞し た。 ③ 東北大学 飛翔型「科学者の卵 養成講座」学校推薦・トライアウト枠の採択において、本校は4 グループ10名と県内では最多の採択となった。採択された研究題目は、学校推薦枠として「三倍 体ギンブナの有性生殖の可能性を探る」、トライアウト枠として「ドジョウ類の寒冷適応をもたら す不凍タンパク質の探索」、「魔法陣の拡張」、「透明骨格標本の作製技法の検討および形態観察に よる骨格変異の研究」であった。 (4)国際的な連携の構築と強化 昨年度に実施したSSH台湾海外研修の結果、本研修が非常に有効であったという検証に基づき、今 年度の訪問で国立台湾師範大学附属高級中学と姉妹校の締結を行った。主な締結内容は次の通り。 「グ ローバル意識と教育的協力の重要性の認識をもち、両校間の強力な友好関係を強化し、そして両校の 科学的思考、文化、指導法の共有を明確にする。両校では、コミュニケーションを通じて生徒の能力 の伸長を推進し、両校の科学学習の推進と言語活動を育成することによって、生徒の包括的、科学的 領域に関する知識を高め、リーダーシップを育成する。」次年度以降、毎年相互に訪問し、生徒間交 流及び英語による課題研究発表会を行う予定である。姉妹校締結を行った先方の国立台湾師範大学附 属高級中学は、科学教育に熱心で、非常に優れた先進的な取り組みを積極的に行っている本校のお手 本となるような学校である。そのため、この締結はSSHの非常に大きな成果の一つであるととらえて おり、今後、本校生徒の国際性の育成や涵養に大きく寄与するものと認識している。 ○実施上の課題と今後の取組 教職員を対象とした意識調査において、肯定的回答率が 2 回とも低かったのが「Q15. 教員間の協力 関係の構築や新しい取り組み実施等、学校運営の改善・強化に役立つと思う」(65.8%→73.0%)であっ た。第 2 回調査でやや改善されたものの、この Q15 で低い割合が示されたことは、 「Q14. 校外の機関と の連携活動を進める上で有効と思う」や「Q16. 本校の教育活動がさらに魅力あるものになると思う」 などの項目で高い割合が示されたことと矛盾する面がある。したがって、Q15 については「教員の協力 関係の構築」において職員に肯定的意識が薄いことに起因すると考えられた。この結果については、本 年度の中間評価で指摘された「学校全体として組織的に取り組む方策が必要」とも関係があると考えら れる。現在、事業の精選と体制の再構築により異分野融合サイエンスの改善等を行う計画である。 別紙様式2-1 山形県立米沢興譲館高等学校 指定第2期目 24~28 ❷平成26年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題 ① 研究開発の成果 (1)生徒の意識の変容 1年生から3年生までの全体の意識調査結果を俯瞰すると、肯定的回答率が特に高かったアンケート 結果が共通して見られたことから、SSHの取組みによって次の4点「成果を発表し伝える力」、 「考える 力」、 「自分から取り組む姿勢」、 「粘り強く取り組む姿勢」の向上について、生徒らはその効果を特に 強く認識していることが示された。また、多くの項目で肯定的回答率が高かったことから、本校生徒 にはSSHの取組みの意義を広く認識しているといえる。4点以外の肯定的回答率の高かった項目につい ては調査時点と学年によりバラバラであったが、これは対象生徒の学年と調査時期によって経験して いるSSH関連の取組みが異なるため、それぞれの取組みで受けた印象の違いが反映されたものと考え られる。例えば、1年生の第1回目調査では「様々な分野における科学からのアプローチの仕方を学ぶ ことができる」の肯定的回答率は85.8%であったが、第2回の調査では91.3%、2年生の第1回調査では 100.0%となっている。1年生は年間を通して、異分野融合サイエンス(FS)や7月の東京サイエンスツ アー(TST)を経験して、当初は想定していなかった教育効果を実感したと考えられる。同様に、 「国 際性が高まる」についても、2年生3月の台湾研修の経験後、3年生のアンケート結果で肯定的回答率 が急激に上昇していた。 (2)進路実績への効果 完成年度である今年度の進路実績が待たれるが、指定2年目の昨年度の結果としては、国公立大学 への現役進学率で全国8位(62.9% 大学通信調べ)となった。また、医学部医学科への進学者数も飛 躍的に伸びた。 (3)科学系コンテストでの受賞等 ① 今年度で4回目となる「科学の甲子園」全国大会に初出場が決定した。山形県大会では毎年上位に 入賞していたが、優勝はかなわなかった。今回は次点チームのほぼダブルスコアと大差をつけて の優勝となった。山形県チームは昨年度の第3回全国大会において、実技競技②第2位で学研賞を 受賞しているため、今年度の全国大会においても本校の活躍が期待できる。 ② 東北植物学会第4回山形大会高校生発表の部において、本校SSクラブの生徒が「植物の紅葉する 意義:アントシアニンの抗菌効果」をテーマとして研究発表を行い、最優秀賞(第1位)を受賞し た。 ③ 東北大学 飛翔型「科学者の卵 養成講座」学校推薦・トライアウト枠の採択において、本校は4 グループ10名と県内では最多の採択となった。採択された研究題目は、学校推薦枠として「三倍 体ギンブナの有性生殖の可能性を探る」、トライアウト枠として「ドジョウ類の寒冷適応をもたら す不凍タンパク質の探索」、「魔法陣の拡張」、「透明骨格標本の作製技法の検討および形態観察に よる骨格変異の研究」であった。 (4)国際的な連携の構築と強化 昨年度に実施したSSH台湾海外研修の結果、本研修が非常に有効であったという検証に基づき、今 年度の訪問で国立台湾師範大学附属高級中学と姉妹校の締結を行った。主な締結内容は次の通り。 「グ ローバル意識と教育的協力の重要性の認識をもち、両校間の強力な友好関係を強化し、そして両校の 科学的思考、文化、指導法の共有を明確にする。両校では、コミュニケーションを通じて生徒の能力 の伸長を推進し、両校の科学学習の推進と言語活動を育成することによって、生徒の包括的、科学的 領域に関する知識を高め、リーダーシップを育成する。」次年度以降、毎年相互に訪問し、生徒間交 流及び英語による課題研究発表会を行う予定である。姉妹校締結を行った先方の国立台湾師範大学附 属高級中学は、科学教育に熱心で、非常に優れた先進的な取り組みを積極的に行っている本校のお手 本となるような学校である。そのため、この締結はSSHの非常に大きな成果の一つであるととらえて おり、今後、本校生徒の国際性の育成や涵養に大きく寄与するものと認識している。 ② 研究開発の課題 教職員を対象とした意識調査において、肯定的回答率が2回とも低かったのが「Q15. 教員間の協力関係 の構築や新しい取り組み実施等、学校運営の改善・強化に役立つと思う」 (65.8%→73.0%)であった。第2 回調査でやや改善されたものの、このQ15で低い割合が示されたことは、「Q14. 校外の機関との連携活動 を進める上で有効と思う」や「Q16. 本校の教育活動がさらに魅力あるものになると思う」などの項目で 高い割合が示されたことと矛盾する面がある。したがって、Q15については「教員の協力関係の構築」に おいて職員に肯定的意識が薄いことに起因すると考えられた。この結果については、本年度の中間評価で 指摘された「学校全体として組織的に取り組む方策が必要」とも関係があると考えられる。現在、事業の 精選と体制の再構築により異分野融合サイエンスの改善等を行う計画である。
© Copyright 2024 ExpyDoc