34 /濡れると滑る床材の使用注意

(特別管理事項-怠るな-1)床仕上げ材の品質管理に関する設計・施工上の注意
/濡れると滑る床材の使用注意
床仕上げの不具合に関するクレームは、引渡し後の場合、是正に大変な労力を伴う。営業
時間外の状況確認を余儀なくされ、原因調査に加え、什器・装置や荷物の移動、養生期間
の対応計画、引いては営業停止となる補修工事となれば、その分の補償(損害賠償等)も
発生する場合がある。
特に、フローリングなどの自然素材(伸縮や劣化の可能性のある素材)については、使用
部位や用途、重量物の往来、湿気や雨水の入る可能性の有無を事前に確認し、適正な素材
を選定する必要がある。
また、床モルタル仕上げについても養生期間の不足により硬化が不十分等でクラックが多
数発生し、剥離するなどの例も発生している。モルタルは素材の性質上収縮があり、ひび
割れの発生は避けられないものではある。その程度が機能上問題のないヘアクラック程度
はやむを得ないものとし、設計者や施主へ事前の了解・合意を得た上での施工とする。そ
の場合も、工期(特に養生期間)の確保や伸縮目地の確保、樹脂系混和剤(及び樹脂系メ
ッシュ下地)等施工の条件を十分に検討することが肝要である。
最近では、モルタル風の塗床での施工にて代替されている事例(※1)もあるので、質感
や色合いにおいて設計者・施主の了解を得た上で、それらの材料を使用することも一案で
ある。
(※1「フロアハード」日本化成株式会社
http://www.nihonkasei.co.jp/products/plastering.html)などの製品がある。)
床に関するクレーム事例
①床専用の素材でなかった
古材を使用したが、製品精度にばらつきがあり、経年にて伸縮や反りが発生、隙間が広がる箇所があり、
その部分にハイヒールが入り転倒した。
→フローリング(床)専用材料を使用し、目地が適正処理を行える材料(または目地=隙間が発生しない
工法が可能な材料)を使用する。
②床タイルの浮き、目地落ちが激しく、施工不良で貼り替えを要求された。
→貼替えにあたり、営業時間外のため夜間工事となり、かつ養生も強固なものとする、また商品の移動等
での労務等が発生、多大な無償補修額が発生した。
③床モルタル仕上げで、クラックが発生。
→ひび割れの程度が大きく、下地から剥離してしまい、時間の経過と共に施工範囲全面に波及した。
その結果、補修で収まらずに床仕上げ全箇所の変更を余儀なくされ、多額の無償補修費用が発生した。
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したがって、床材の品質管理については、以下の内容について設計時より検証する
①施設が求める耐久性、機能を満たす床材料を選定し、かつ、メーカーよりその性能を実
証するデータや実績を確認する。
②水や、油が入り滑る状況になるかなど、周辺環境の調査を行い、必要に応じメーカーに
防滑性の検証を行う。
③剥離、目地浮、割れ等の可能性について検証し、メーカーにも確認を行う。
④床材に適した工法、接着材等を事前にメーカー、施工会社と検討する。
〔濡れると滑る床材の使用禁止について〕
また、当社では、雨がかりや水に濡れると滑り易くなる床材の使用を禁止している。転倒に
は骨折や死亡事故にもつながる大きな災害になる要因が内在しているからである。
床材の滑りは、材質と表面形状及び靴裏の砂・水・油などの付着、歩行状況や時には気象状況
にも影響される。など様々な要因が複合的に重なり合って発生するもので、原因は複雑であ
る。
下の表はメーカーの注意書きだが、多くの床材は濡れると滑ると明言している。
技術相談が多い既存の石・タイル・コンクリートへのノンスリップ材について、濡れること
でグリップ力を得るといわれている塗布による防滑材を案内しておくので利用して頂きた
い。但し、この場合の効果は 2 年間程度である。
・トラスティックステップ(和名:スベリガード)
・ノンスリップマスター
・グリップマジック
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*床材メーカーのカタログに表記された注意書きの例
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