Okubo, Tsuneo Citation Kyoto University

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Theomodynamic Studies on Polylectrolyte Solutions(
Abstract_要旨 )
Okubo, Tsuneo
Kyoto University (京都大学)
1970-05-23
http://hdl.handle.net/2433/213386
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
夫
大
学
号
学 位 の 種 類
お士
名
細工
氏
第 21
2
学 位 記 番 号
工
学位授与 の 日付
3日
昭 和 45年 5 月 2
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5粂 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
工 学 研 究 科 織 維 化 学 専 攻
学位論文題 目
The
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ons
博
(高分子電解質溶液 に関す る熱力学的研究)
(主 査)
論 文 調 査 委員
教 授 中 島 章 夫
論
文
内
教 授 稲 垣
容
の
要
博
教 授 西 島 安 則
旨
溶液の平衡的性質を論ず る上で 自由エネルギーは最 も基本的な量の一つで あるが , 本論文は合成 および
生体高分子電解質溶液について, 自由エネルギーに関連す る量 として 平均活量係数 , 単独イオン 活量係
敬 , 浸透圧係数 , 部分モル体積な どを論 じた もので, 第 1章の緒論を含め 8章か ら成 りた っている。
従来 , 高分子電解質溶液の溶質活量につ いて多 くの報文があるが , それ らでは対イオンの単独イオン活
量が注 目されているにす ぎない。 著者は高分子電解質溶液の性質を論ず る上で, 溶質の平均活量係数の把
捉が物理的に重要で あることを指摘 し, まず この量の測定法 として二つの新 らしい方法を提案 した。 その
一つは, 濃淡電池の起電力を測定す ることによるもので, 第 2章で装置の製作, な らびにその装置による
ポ リアク リル酸 ソーダ, ポ リビニルアル コールのグ リオキシル酸部分 アセ タール化物の ソーダ塩 , ポ リエ
チ レンイ ミン塩酸塩の平均活量係数の測定結果が論述 されている。 得 られた平均活量係数の高分子濃度依
存性は, 他の実験結果か ら求め られたパ ラメータを用 いることによ り, 計算 された理論 曲線 とよい一致を
示す ことが確め られた。 1- 1型低分子電解質につ いては , 平均活量係数 γの対数 1
0gγが溶質の重量モ
ル濃度m の平方根に比例す ることが知 られて いるが, 上記の高分子電解質の場合
1
0
gγが m
の立方根に比
例 して減少す るとい う結果が得 られ, 著者は この理 由として高分子鎖上の電荷が分子鎖のひろが り内に局
在化 していることな らびに対 イオンを介 して高分子イオン間に引力が働 くことを推察 している。
浸透圧係数を測定 し, Gi
bbs
Duhe
m 式を用 いることによ り溶質の平均活量係数を求めることが可能で
あるが , 著者は等圧法による独 自の測定法を開拓 した。 第 3章の前半では, ポ リアク リル酸 ソーダ, ポ リ
ビニル硫酸の各種の塩 , ポ リスチ レンスルホン酸の各種の塩 , ポ リリン酸の各種の塩の水溶液系 (2成分
系) について , また後半では ポ リアク リル酸 ソーダ, ポ リビニルスルホン酸 ソーダの 合添加塩水溶液系
(3成分系) につ いて, この方法によ り求め られた平均活量係数が論議 された。 対 イオンとしては , Li
,
Na
,K,Ca
,Ba
,N (
nC。H 。)4,N (
nC3H7)4,N (
C2
H5)4,N (CH3)4,N (
CH3)3, CH2
C6H5,NH4 が 用 い
られ, 平均活量係数の溶質濃度依存性 に及ぼす対 イオン, マクロイオンの効果が , 対イオンの部分 モルエ
ー3
4
3-
ン トロピー, マ クロイオンの構造を考慮 し, 水構造のイオンによる変化 とい う観点か ら逐一詳細に検討 さ
れ , また 3 成分系の実験か らは , 第 2 ビ リアル係数の添加塩濃度依存性 につ いて理論 的な考察が行 なわれ
て いる。
第 4章は平均活量係数 と対 イ オン活量係数か らマ クロイ オンの単独イ オン活量を求め, この量の溶質濃
度依存性を論 じた もので ある。 マク ロイ オンの単独イ オン活量の対数 と溶質の重量モル濃度問には負の傾
斜を もつ直線 関係が成立 し, この傾斜が電荷密度 , 重合度の低下 と共に減少す る ことが確め られ , 高分子
電解質水溶液の熟力学的性質に与え るマ ク ロイオン活量の頗著な寄与が指摘 された。
第 5章は活量係数の圧力依存性を示す熟力学量で ある部分 モル体積に関す る検討で ある。 ポ リアク リル
酸塩 , ポ リスチ レンスルホ ン酸塩 , ポ リエチ レンスル ホン酸塩 , ポ リエチ レンイ ミンの塩について高分子
電解質の部分 モル体積が求め られ , それか らマ クロイ オンのモル体積が計算 され た。 著者は このマ クロイ
オンのモル体積が , マ クロイオンの固有体 積 , 疎水性構造の寄与 , 竃縮による水和の寄与の 3着か らな る
もの と考え , 上記のマ クロイオンの水和数を決定 して いる。
第 6章では 中性高分子な らびに電解質高分子の水溶液 中における共溶質 (ナフタ レン, ジフェニルが用
い られ た。 ) の溶解性が活量係数を用 いて検討 された。 多種の高分子につ いて実験が行 なわれ , 高分子の
疎水性が増加す るにつれて共溶質の溶解性が増加す ることが明 らかに され , また弱高分子電解質のマ クロ
イ オンの S
e
t
c
h6
no
w 定数が , 疎水性構 造の効果 と竃編による水和の効果の観点か ら詳細に検討 された。
第 7 章は電導度, 輸率に関す る論議で あ り, 得 られた測定結果か ら高分子電解質の対 イオン固定がマク
ロイ オンの水和殻の外側で起 る こと, およびマクロイ オンの対 イオンによる会合が水の竃桁 と関連す るこ
とが推察 された。
第 8章は電解質 ポ リペ プチ ド, 電解質生体高分子の平均活量係数 , 単独 イ オン活量係数 , 輸率 , 部分 モ
ル体積の測定 に 基づ く熱力学的考察を まとめた もので , 試料 としては ポ リ- L - グル タ ミン酸 ソーダ, ポ
リデ オキシ リボ核酸
(
DNA)の ソ-
ダ塩が用 い られた. 測定結果 よ り, ポ リグル タ ミン酸イオンが 強い
水構造形成能が ある ことが指摘 され , またポ リペ プチ ドの コンホメーシ ョンにつ いて も詳細な検討が加え
られた。
DNA につ いては DNA分子 と水分子の間に強い 短距離相互作用 が存在す ることな どが 指摘 さ
れ た。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
高分子電解質溶液に関 しては従来かな りの数の研究が あるが , 理論な らびに実験上の難点のため未知の
領域が多 く残 されて いる。 本論文は熟力学的性質を, マ クロイ オン成分 と対 イ オン成分 とか らな る溶質高
分子電解質の平均活量係数 によ って捕捉 し, 熟力学的性質に与え る高分子の重合度, 電荷数 , 疎水基の種
類 , 形態変化 , な どの効果を検討 した もので , 得 られた注 目すべ き成果は , 次の よ うにまとめ られ る。
1 ) 今 まで未知で あ った高分子電解質の平均活量係数の測定 を濃淡電池の起 電力測定 による方法 , な ら
びに等圧法 による蒸気圧測定 による方法 によ り初めて試み, 測定方法を確立 した。
2) 高分子溶液研究で従来行 なわれて いた対イ オンの単独 イ オン活量係数 による検討のみでは不充分で
熱力学考察のためには平均活量係数が用 い られねばな らない ことを実証 した。
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4
4-
3) 高分子電解質の 平均活量係数が低分子電解賓の塊合 と異な り, 見撞卜
上立方根月Tjに 従 うことを 見 出
し, その原因が非常に強い対 イオン- マクロイオン間の 引力に基づ くマクロイオン- マクロイオン間の 引
力によるもので あることを指摘 した。
4)水一高分子電解質一低分子電解質か らなる三成分系における蒸気圧測定 よ り第 2ビ リアル係数を評
価す る方法を確立 した。
5) 高分子電解質の部分モル体積の副定 によ り, 電縮による水和 と疎水性基周辺の氷状構造形成 による
水和を分離 して議論 し, 種 々のマクロイオンの水和数を決定 した。
6) 高分子周辺の氷状構造形成によ り, 炭化水素類の水に対す る溶解度に影響が あるもの と推察 し, 詳
細な実験 と考察を試みた。
7)合成 ポ リペ プチ ド電解質, ポ リデ オキシ リボ核酸 (
DNA) の ソーダ塩につ いて 各種の熟力学量を
測定 し, .ポ リグル タ ミン酸イオンが強い水橋造形成能を持つ ことを指摘 し, DNA の場合には合成高分子
電解質において見 られた静電的相互作用のほかに, 溶質一溶媒間の非静電的相互作用 もまた顕著に作用す
ることを見 出 した。
以上の どと く本論文は, 高分子電解質溶液につ いて , これ まで未解決であ った問題を解明 した もので ,
学術上な らびに実際上寄与す るところが少な くない。
よ って, 本論文は工学博士の学位論文 として価値 あるもの と認める。
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