別紙様式第２号 横浜国立大学 学位論文及び審査結果の要旨 氏 名 吉沢 竜太 学 位 の 種 類 博士(工学) 学 位 記 番 号 工府博甲第492号 学位授与年月日 平 成 28年 3月 24日 学位授与の根拠 学位規則（昭和28年4月1日文部省令第9号）第４条第１項及び横浜国 立大学学位規則第５条第１項 学府・専攻名 工学府 物理情報工学 専攻 学位論文題目 Design of coded OFDM systems with high energy and spectral efficiency through peak power reduction （ピーク電力低減によるエネルギーおよびスペクトル効率に優れた 符号化OFDMシステムの設計） 論文審査委員 主査 横浜国立大学 教授 落合 秀樹 横浜国立大学 教授 河野 隆二 横浜国立大学 教授 濱上 知樹 横浜国立大学 准教授 市毛 弘一 横浜国立大学 准教授 杉本 千佳 論文及び審査結果の要旨 多値 QAM および誤り訂正符号を組み合わせた符号化直交周波数分割多重（OFDM）方 式は，スペクトル効率が高く，かつマルチパス伝搬路に対して優れた耐性を有するため，無 線 LAN や地上波ディジタル放送をはじめ，近年のさまざまな高速無線通信システムの伝送 方式として広く実用化されている。しかし OFDM 信号は高いピーク電力を有することから パワーアンプにおける電力効率が著しく低く，よってバッテリーで駆動する送信端末には 適さないことが知られている。多値 QAM 化された OFDM 信号の効果的なピーク電力低減 手法としてトレリスシェイピングが挙げられるが，これに通信路容量に近接する誤り訂正 符号を連接しても，その特殊な信号生成構造から高い符号化利得を得ることは困難であっ た。 本論文では，まず第 3 章においてトレリスシェイピングを施した多値 QAM 符号化 OFDM システムに対して効果的に軟判定復号を行うための統合トレリスを用いたメトリック導出 法を提案し，比較的低い復号演算量において理論限界に近接する特性が得られることを計 算機シミュレーションにより明らかにしている。 別紙様式第２号 横浜国立大学 また第 4 章では，トレリスシェイピングの概念を拡張することにより，トレリス構造を ベースとしつつ，より簡易かつ誤り訂正能力の点で優れたピーク電力低減手法および復号 法（TAX）を考案しており，これは第 3 章における提案手法をピーク電力低減能力，誤り率 特性，および復号複雑度の観点から補完するものである。 さらに第 5 章では，本論文における提案手法と既存手法の統合的な比較評価を行ってい る。具体的には，各ピーク電力低減手法が多値 QAM 符号化 OFDM システムの総消費電力 に与える改善効果をパワーアンプとその他の回路における消費エネルギーおよび所望受信 SNR とのトレードオフの観点からシミュレーション解析を行っている。これにより，各ピ ーク電力低減手法がシステム全体に与える特性改善効果を明らかにしている。 以上のように，本論文はパワーアンプの効率を考慮した実用的観点から高スペクトル 効率無線通信システムの消費エネルギー問題とその信号処理による解決法について論じて おり，現在までに無線通信システムの標準方式として広く実用化されている OFDM 技術の 一層の低消費電力化および高効率化に大きく寄与するものである。したがって，博士（工学） の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。
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