別紙様式第2号 横浜国立大学 学位論文及び審査結果の要旨 氏 名 朴

別紙様式第2号
横浜国立大学
学位論文及び審査結果の要旨
氏
名
朴 成植
学 位 の 種 類
博士(工学)
学 位 記 番 号
工府博甲第480号
学位授与年月日
平 成 28年 3月 24日
学位授与の根拠
学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第4条第1項及び横浜国
立大学学位規則第5条第1項
学府・専攻名
工学府
機能発現工学 専攻
学位論文題目
Study on acid sites in MCM-68 zeolite catalyst for effective conversion of
dimethyl ether into light olefins
(ジメチルエーテルから低級オレフィンへの転換反応に有効なMCM68ゼオライト触媒の酸点に関する研究)
論文審査委員
主査
横浜国立大学
教授
窪田 好浩
横浜国立大学
教授
榊原 和久
横浜国立大学
教授
大山 俊幸
横浜国立大学
教授
吉武 英昭
横浜国立大学
准教授
稲垣 怜史
論文及び審査結果の要旨
低級オレフィンは,プラスチックや合成繊維,合成ゴムなどの原料として極めて重要な
基幹原料である。近年の海外における天然ガスやシエールガスを原料とした熱分解プロセ
スはプロピレン生産には不向きであるため,年々増加しているプロピレンの需要に対応す
るためにはプロピレン選択牲の高いプロセスの開発が必要である。天然ガスから従来技術
により製造されるメタノールやジメチルエーテルを原料として低級オレフィンを生成する
methanol-to-olefin (MTO)反応や dimethyl ether-to-olefin (DTO)反応が注目を集めて
いるが,従来型の触媒はプロピレン選択性が高くない。本研究では特に,プロピレン選択
性の高いゼオライト触媒を調製するとともに,その触媒性能と酸性質(酸点の量,酸点の
分布,酸点の種類,酸点の強さなど)の相関を明らかにすることを目的としており,本学
位請求論文は,その結果と学術的な知見についてまとめたものである。 本論文は,以下
の六章から構成されている。 第一章では,当該分野に関するこれまでの研究背景とその
課題を示し,本研究の目的・意義について論じている。 第二章では MTO,DTO 反応の
歴史的な背景や反応機構,従来型触媒の特性等について論じている。また,本研究におい
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て注目した MSE 型ゼオライトの構造や固体酸触媒特性についてもこの章で説明してい
る。 第三章では,MSE 構造を持つ MCM-68 ゼオライトが持つ酸点の量を調整すること
で,DTO 反応により高選択的にプロピレンが生成することを明らかにしている。特に,
Al の量を調節することで,細孔の外部に存在する活性点が減少することをプローブ分子を
用いたクラッキングテストにより解明している。また,エチレン生成に寄与すると考えら
れる強いブレンステッド酸点や,芳香族炭化水素・コーク生成に関わると考えられる強い
ルイス酸点が優先的に除去されることを,ピリジンをプロープ分子とした FT-IR 測定を駆
使して明らかにしている。第四章ではコリジンと CO をプローブ分子とした FT-IR 測定に
より MCM-68 ゼオライトの酸点の分布を解明している。 第五章では MCM-68 ゼオライ
トにリン酸塩系の化学種を担持することでプロピレンの選択率が向上することを明らかに
している。第六章では本研究を総括しつつ,今後の展望を述べている。
以上,本論文は,「Study on acid sites in MCM-68 zeolite catalyst for effective
conversion of dimethyl ether into light olefins」と題し,MCM-68 ゼオライトの酸性質と
ジメチルエーテルからオレフィンへの反応における触媒特性について検討し,主として分
光学的手法により構造-活性相関の真相解明に肉薄したものであり,博士(工学)の学位
論文として十分に価値があるものと認める。