別紙様式第2号 横浜国立大学 学位論文及び審査結果の要旨 氏 名 宇田

別紙様式第2号
横浜国立大学
学位論文及び審査結果の要旨
氏
名
宇田
紘助
学 位 の 種 類
博士(工学)
学 位 記 番 号
博乙第418号
学位授与年月日
平 成 28年 3月 31日
学位授与の根拠
学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第4条第1項及び横浜国
立大学学位規則第5条第2項
学府・専攻名
工学府
システム統合工学
専攻
学位論文題目
ホットスタンピングにおけるトライボロジーに関する研究
(A study on tribology in hot stamping process)
論文審査委員
主査
横浜国立大学
教授
川井
謙一
横浜国立大学
教授
高木
純一郎
横浜国立大学
教授
福富
洋志
横浜国立大学
教授
梅澤
修
横浜国立大学
准教授
前野
智美
横浜国立大学
名誉教授
小豆島
明
論文及び審査結果の要旨
自動車構造部材の軽量化のための高強度鋼材のホットスタンピングは欧米では既に実用
化されているが,本研究は,熱間平板引抜き試験によって Al-Si めっき 22MnB5 鋼板のホ
ットスタンピングにおける各種トライボロジー特性を広範に調べるとともに,ホットスタ
ンピング用の潤滑剤の開発・評価を行ったものである.まず,通常のホットスタンピングと
同様に Al-Si めっき 22MnB5 鋼板のドライ状態(無潤滑状態)における摩擦特性を調べて,
工具表面粗さの影響を受けることなく摩擦係数は高い値となること,高い摩擦係数は工具
表面に凝着した Al と鋼板の Al めっき層間の滑りによってもたらされることを明らかにす
るとともに,工具表面に施した硬質被膜がドライ状態の摩擦特性に及ぼす影響を調べ,引抜
き距離が短い場合には TiCN,TiN,CrN,TiAlN,DLC-Si の順に摩擦係数が低くなるが,
引抜き距離が長くなると工具への Al の凝着が成長して被膜なし工具と同等の摩擦係数の値
に達することを明らかにした.次いで,ZnO 粉末コーティング Al-Si めっき 22MnB5 鋼板
のドライ状態における摩擦特性を調べ,被膜なし工具の場合は ZnO 粉末コーティング量が
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横浜国立大学
多いほど短い引抜き距離での摩擦係数が低いこと,TiN,TiAlN,DLC-Si 被膜工具の場合
は摩擦係数が低くなり,工具に凝着した Al の量もかなり少なくなっていることを明らかに
した.また,市販の熱間鍛造用潤滑剤を用いた潤滑状態における Al-Si めっき 22MnB5 鋼
板の摩擦特性を調べ,工具と鋼板間には薄い均一な凝着 Al 層と潤滑剤の被膜を介在した Al
めっき層間のすべりが共存することによってドライ状態の場合より摩擦係数をかなり低減
できることを明らかにした.さらに,Al-Si めっき 22MnB5 鋼板のホットスタンピング用の
潤滑剤を開発するために,市販の 5 種類の熱間鍛造用潤滑剤の摩擦特性を調べて摩擦係数
の低い潤滑剤を選定し,その潤滑剤に種々の固体潤滑剤を添加した場合の摩擦特性を調べ
て膨潤性マイカの添加に効果があり,摩擦係数を著しく低減できること,熱間深絞り成形性
にも優れていることを明らかにするとともに,10 パスの熱間平板引抜き試験(連続熱間平
板引抜き試験)を行って,ホットスタンピングにおける工具表面への Al の凝着量に及ぼす
潤滑剤の影響を調べ,潤滑状態では Al 凝着の増加量も少なく,摩擦係数も各パスでほぼ同
じ値で,潤滑剤使用の有効性を確認した.
以上,本論文は工学的に貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な
価値があるものと認める.