ち上 がり , 永続 的な 平和 を打 ち立 て るた めに 建設 さ れた もの 」で あり ,震 災か ら の復 興に 向か う時 期に 登 録さ れた こと を「 建設 の もと もと の理 念 に立 ち返 るも の」 だと 語っ て いる 。目 の前 にあ る歴 史 的遺 構か ら, 戦災 後復 興 した 当時 の栄 華 や衰 亡を 思い 浮か べ, 時代 の 変化 の中 でも , かろ うじ て 残っ た輝 きに 感動 する 芭 蕉の 思い は, 現 代を 生き る我 々に も通 じる も のが ある 。 本 時の 学 習は ,本 文の 表現 に注 目 する こと によ っ て, 歴史 的存 在で ある 芭蕉 個 人の 思い に迫 り, 自分 た ちも また 変化 する 時代 の 中で ,歴 史を 支 えて 生き てい る一 人で ある こ とを 自覚 する きっ かけ と なる と考 える 。 国語 科学 習指導 計画 学級 3年C組 37名 授 業 者 江帾 佐和子 共同研究者 阿部 昇 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 教 材名 と 指導 のポ イン ト 夏草 と 五月 雨- 「お くの ほ そ道 」か ら- 文章 を吟 味 して 構成 の工 夫 を考 える - 目標 (1) 本文 の記 述 を手 がか りと して ,芭 蕉 の旅 への 思い や感 動 を読 み取 るこ とが でき る 。 (2) 本文 を根 拠 とし なが ら, 構成 の工 夫 を考 える こと がで き る。 (3) 話合 いや 発 表等 の言 語活 動を 通し て ,も のの 見方 や考 え 方を 広げ るこ とが でき る 。 生 徒に つ いて 生徒 の 多く は, 小学 校6 年 生で 同作 品の 立石 寺の 場 面を 学習 して お り, 昨年 度も 最上 川の 場 面 を読 ん でい るた め, この 作 品に つい てあ る程 度の 予 備知 識は 持っ て いる 。ま た, 昨年 度は 杜 甫 の『 春 望』 や李 白の 詩に つ いて 学び ,「 平家 物語 - 『扇 の的 』」 で は, 与一 に平 家方 の武 将 を 射さ せ た義 経の 判断 につ い て話 合い 学習 を行 って い る。 その ため , 本文 に引 用さ れた 詩文 の 作 者や , 平泉 へ落 ち延 びる 以 前の 義経 像も ,あ る程 度 イメ ージ でき る よう にな って いる 。 挙手 を して 積極 的に 発表 す る生 徒も 一部 いる が, 自 分の 考え を全 体 の場 で話 すこ とを ため ら う 受動 的 な生 徒も 少な くな い 。個 人で 書い たり ,小 集 団で 話し 合っ た りす る場 合に は, 自分 の 意 見を 発 信で きる 生徒 は多 い ため ,こ こを 手が かり に 全体 への 発信 に つな げて いく こと が課 題 で ある 。 教 材に つ いて 学 習 指 導 要 領 で は , 「 C 読 む こ と 」 に , 「 ウ 文 章 の構 成や 展 開 , 表 現 の 仕 方 に つ い て , 根 拠 を 明 確 に し て自 分の 考 え を ま と め る こ と 」 と あ る 。 ま た , 伝 統 的 な 言 語 文 化 に 関 す る 事 項 に は 「 ア (ア)歴 史的 背景 な ど に 注 意 し て 古 典 を 読 み , そ の 世 界 に 親 し む こ と 。 」 も 記 載 さ れ て いる。 本 作 品 は , 江 戸時 代を 代 表 す る 俳 人 松 尾 芭 蕉 に よ る 紀 行 文 で あ り , 随 所 に 散 り ば め ら れ た 俳 句 と 共 に , 現 代 も様 々な 場 面 で 引 用 さ れ て い る 。 全 行 程 約 6 0 0 里 , 1 5 0 日 間 に わ た る 旅 の 記 録 が も と に な って いる が , 記 載 さ れ た 旅 程 が , 随行 者 であ る曾 良の 記録 と一 致し て いな い部 分 もあ り ,手 直し の跡 も見 え るこ とか ら, 作品 とす る 段階 で意 識的 に 構成 され たと 考え られ る。 今回 は ,本 校で これ まで 主 題と して 取り 組ん でき た 「評 価読 み」 の 手法 や話 合い 活動 を取 り 入 れな が ら, 本文 と俳 句の つ なが りや 構成 の工 夫が 生 む効 果に つい て 考え てい きた い。 社 会に 参 画す る主 体の 育成 を 目指 して 本 校 の 国 語 科 は, 評価 ・ 批 評 的 読 解 を 中 心 と し た 授 業 の 研 究 を 続 け て き た 。 本 文 の 記 述 を そ の ま ま 受 け と め るだ けで は な く , 他 の 文 章 と 比 較 し た り , 矛 盾 点 を 探 し た り す る 作 業 を 通 し て , 主 体 的 に 文 章 を 読む 姿勢 を 育 て た い と 考 え て 取 り 組 ん で い る 。 ま た , 「 個 」 で考 えた こ と を 「 小 グ ル ー プ 」 か ら 「 全 体 」 に 発 信 し て い け る よ う に 学 習 形 態 を 変 化 さ せ , 周 囲と 協働 し て 考 え を 深 め て い く 過 程 を 重 視 し て い る 。 古 典 文 学 作 品 と い う 中 学 生 に と っ て , や やハ ード ル の 高 い も の に 取 り 組 む 場 面 だ か ら こ そ , 一 部 の 生 徒 の 気 付 き を 小 グ ル ー プ で 共 有 し た上 で, 全 体 の 気 付 き に つ な げ る と い う 段 階 を 踏 む こ と が さ ら に 重 要 に な る 。 古 典 を 学 ぶ 意 義は ,先 人 の 教 え に よ っ て 教 養 を 身 に 付 け る こ と に も あ る が , 生 き て い る 時 代 も 生 活 環 境 も 異 なる 古人 と い う 他 者 の 生 き 方 や , も の の 考 え 方 を 知 る 一 方 で , 人 間 の 本 質 的 感 情 の 普 遍 性 を 知 るこ とに も あ る と 言 え る 。 そ れ は , 多 様 化 の 進 む 現 代 社 会 に お い て , 異 質 な 他 者 と 共 存 し て い く力 を育 て る こ と に も つ な が る と 考 え ら れ る 。 20 1 1年 3月 の東 日本 大 震災 から 約3 ヶ月 後に , 平泉 の寺 院や 歴 史的 遺跡 群が 世界 遺産 に 登 録さ れ た際 ,ス ピー チを し た達 増岩 手県 知事 は, 平 泉が 「12世紀 に 悲惨 な戦 争の 惨禍 から 立 Ⅵ 全体 計画 ( 総時 数9 時間 ) 主な学習活動 ○ ○ ○ 指導の手立て 冒頭部分の音読をし,芭蕉が旅に出た動 機を,本文の中から読み取る。 ○ 「おくのほそ道」クイズを実施して,作 品に対する予備知識を確認する。 ○ 「漂白の思い」が本文中のどこと結びつ くのかを考えるために,話合い用のシート を用意する。 旅の行程や平泉の場面に登場する語句や 事物について,図書館の資料を活用して調 査する。 ○ 「夏草」と「五月雨」の句が登場する本 文を口語訳する。 ○ 生徒が調べた資料を,内容理解の参考と して活用する。 ○ 曾良の句の効果に触れる段階で,曾良の 随行日記についても紹介する。 ○ 俳句の言葉が,本文のどの言葉とつなが っているかを考えられるように,グループ 毎に話合いシートを用意する。 「調べることリスト」を用意し,学習班 毎に担当を割りふる。調査した内容はプリ ントにまとめ,授業で活用する。 時数 2 1 2 ○ 「夏草」の句と本文との関わりについて 読み取る。 ○ ○ 「五月雨」の句と本文との工夫について 読み取り,「夏草」の句までの部分と比較 する。 ○ ○ 本文を根拠として,作者が自分の感動を 伝えるためにどんな構成の工夫をしたのか を考える。 ○ 旅への思いや平泉での思い出を,芭蕉に なったつもりで書く。 ○ ○ 1 対比,対句表現が多用されていることと その効果について考えるように助言する。 前時学習した「夏草」までの部分との相 違点についても考えるように助言する。 ○ 逆接の表現が繰り返されていることの効 本時 果について考えるように補助発問を用意す 7/9 る。 実際に巡った順番とは異なる部分がある ことに気付かせるため,地図と曾良の随行 日記の記述に触れる。 ○ 平泉と現代とのつながりを考えられるよ うに,世界遺産委員会での達増岩手県知事 のスピーチを紹介する。 書き終わった文章を各班で読み合い,芭 蕉の思いを一番表している作品を,全体に 紹介する。 1 1 Ⅶ 本 時の 計 画 1 ねら い ○ 俳 句と 本文 の表 現と 構 成の 工夫 に注 目し て ,作 者の 感動 を読 み取 る こと がで きる 。 2 評価 規準 グ ルー プ での 話合 いを 通し て, 本 文を 吟味 して 読 み深 め, 作者 の感 動を 読み 取 るこ とが でき る 。 =評価 習 活 動 予想される生徒の姿 1 前時の振り返りをする。 ○ 2 本時のめあてを確認する。 ○ 振り返りシートを確認し,前時の学習内容 を思い出している。 めあてをノートに記入している。 指 導 の 手 立 て 曾良の句より後から「五月雨」の句ま での表現で,芭蕉の工夫が分かるところ を見付ける。(個→小グループ→全体) ○ 本文シートに線を引きながら考え,意見を 交換している。 「対句が使われている。」 「数字が並んでいる。」 ・「『七宝』『玉』『金』というきらびやかな 印象の言葉の後には,必ずマイナスの言葉 がついている。」 ・「『五月雨の降り残してや』は擬人法だ。」 「五月雨がそこだけ降らないなんてあり得な い。」 ・「『や』は詠嘆だ。」 4 「夏草」の句までの文章と「五月雨」 の句までの文章を比べ,この二つの場 面がこの順番になっているのはなぜか を考える。 ○「『夏草』の句までの文はマイナス要素が強 いけど,『五月雨』の句までの文は少しプラ ス要素があるよ。」 ・「『夏草』の句までの文は『草むらとなる』 で終わっているけれど,『五月雨』までの文 は,『草むらとなるべきを』の後で『しばらく 千歳のかたみとはなれり』に続いている。」 ・「訪ねた順番の通りではないのかな。」 ・「もしも逆だと,平泉が滅んだ話で終わりに なってしまうから。」 =目指す生徒の姿 期待される生徒の姿 ○ 前時の学習内容を確認するために,振り返り から,本時の内容につながるものを選び,紹介 する。 ○「夏草」の句と本文のつながりを確認し,芭 蕉が何に心を動かされたのかを思い出してい る。 ○ 芭蕉の感動を読み取るために何に注目すれば いいか問いかける。 ○「俳句と本文のつながりや工夫を考えるとい い。」 ○ 口語訳を参考に本文を確認し,工夫されて いる点を探そうとしている。 一目で話合いの様子がわかるように,各班に 本文シートを配付し,書記役を交替しながら, 記入していくように指示する。 ○ 発表した内容が残るように,ホワイトボード に拡大した本文を貼り,生徒の発言に沿って線 を引いていく。 ○ 逆転の表現が繰り返されていることに気付く ように,肯定的な表現には赤で線を引き,否定 的な表現には青で線を引くように指示する。 ○ 「なるべきを」が逆接の表現であることに注 目させる。 ○ 芭蕉の感動がどこにあるか考えられるように 「五月雨の降り残してや」という表現の工夫と 「や」が切れ字であることに注目させる。 ○「『二堂』『三将』『三代』『三尊』『七 宝』『四面』という数字が,『千歳の記念』 が出てくる前置きになっている。」 ○「『七宝』『玉』『金』が消滅してしまった かのように語っておいて,実は残っいること が後で明かされている。」 ○「金色堂が無事残っていることを,そこだけ を避けて降ってくれたようだと表現している んだ。」 ○「芭蕉は金色堂が残っていたことに感動して いるんだ。」 ○ ○「どっちにも『草むら』が出てくるよ。」 ○ ○「『夏草』までの文は栄華から衰退が中心に 描かれているけれど,『五月雨』までの文に は,あと少しのところで消滅しないですんだ 希望が見える。」 ○「もし順番が逆だったら,中尊寺で感じた救 いの要素が薄まってしまう。」 ○「芭蕉は,金色堂が残っていたことの感動を より強く伝えるために,実際とは違う順番で 書いたんだ。」 中尊寺で芭蕉は何に感動したのか。 3 課 題 追 究 ・ 問 い 直 し ○ 展開 学 問 い の 練 り 上 げ ・ 課 題 設 定 3 ○ 本文の比較ができるように,『夏草』の句ま での文と『五月雨』の句までの文が上下になる ように掲示する。 ○ 話合いが進まない班には,「草むら」の表現 に注目するように助言する。 曾良の旅日記を紹介して,実際に訪れた順番 が違うことを伝え,なぜ逆に書いたのかと問い かける。 芭蕉の感動が,表現や構成の工夫によって. さらに強く伝わることに気付いている。 ま と め ・ 振 り 返 り 5 本時の振り返りをし,次回の学習内容 を確認する。 ○ 振り返りシートに話合い活動から気付いた ことを書いている。 ○ お互いに関わり合いながら学習できたことを 実感できるように,本時の授業で達成感を得た ことや,注目した友達の考えなどについて振り 返るように指示する。 話合い活動によって導き出されたことをもと に,自己の考えを深めている。
© Copyright 2024 ExpyDoc