第1章

第1章
野菜の機能性成分は
どんなものがあるか
体のいろいろな機能を調節する
野菜の機能性成分
機能として﹁嗜好﹂いわゆる美味しさに関する機能、
す。第一次機能として﹁栄養﹂に係わる機能、第二次
整理されています。
幅広く作用します。それらは次のように大きく6つに
第三次機能の﹁生体調節機能﹂は、体のいろいろな
機能を調節する機能で、生活習慣病の予防や回復など
る上でも、この機能が重要な役割を果たしています。
そして第三次機能として﹁生体調節機能﹂です。
私たちは毎日食事をすることで、さまざまな成分を
摂取しています。食品の機能は3つに分類されていま
第一次機能の﹁栄養的機能﹂は、食品の栄養素︵炭
水 化 物、 脂 質、 タ ン パ ク 質、 ビ タ ミ ン、 ミ ネ ラ ル な
ど︶において、ヒトの健康の維持・増進、成長発育に
関わるものです。
⑤ 内分泌調節︵ホルモンの分泌を助ける︶
① 生循環系調節︵血圧をコントロールする︶
② 神経系調節︵ストレスをやわらげる︶
③ 細胞分化調節︵成長を促進させる︶
④ 免疫・ 生体防御︵免疫細胞を増やしたり、 がん
細胞の発現を抑える︶
第二次機能の﹁嗜好的機能﹂は、食品の味や匂い、
見た目、歯ごたえといった、ヒトの感覚に対する機能
⑥ 外分泌調節︵消化酵素の分泌調節︶
この第三次機能に効果のある成分を﹁機能性成分﹂
と呼んでいます。機能性成分は多くの野菜や果物に含
です。食品は薬とは異なり、いくら有効な栄養があっ
す。また、
﹁変な味がする﹂とか﹁色が変わっている﹂
まれており、それらの野菜を食べて機能性成分を日常
ても、味や匂いなどが悪ければ受け入れにくいもので
というように、食品の腐敗や異物の有無などを見分け
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第1章
野菜の機能性成分はどんなものがあるか
食品の機能
外分泌調節
第一次機能
栄養的機能
食品の
3つの機能
第三次機能
生体調節
機能
内分泌
調節
第三次機能の
6つの働き
免疫・生体
防御
第二次機能
嗜好的機能
生循環系調節
細胞分化
調節
がんの予防効果の高い食品
上に行くほど
がん予防の効果が高い
ニンニク
キャベツ
甘草 大豆
ショウガ ニンジン
セロリ パースニップ
タマネギ 茶 ターメリック
玄米 全粒小麦 豆腐 オレンジ
レモン 芽キャベツ トマト ナス
ピーマン ブロッコリー
カリフラワー グレープフルーツ
メロン バジル タラゴン エンパケ ハッカ
オレガノ キュウリ タイム アサツキ
ローズマリー セージ ジャガイモ 大麦 ベリー類
(米国国立がん研究所資料より)
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神経系
調節
ウのグルチルリチン酸、 オリーブ油のスクワレン︶、
ペラトロール︶
、 トリテルペンやステロイド︵カンゾ
芳香族化合物︵ウコンのクルクミン、イタドリのレス
ツやブリコリー︶
、 ポリフェノール類、 タンニン類、
︵ユリ科のニンニクやタマネギ、 アブラナ科のキャベ
発がん予防の作用がある野菜の成分は、アセレン化
合物︵セリ科やキク科植物︶
、 イオウを含んだ化合物
含まれています。
有量は野菜によって異なりますが、ほとんどの野菜に
ぐ味や独特の風味など野菜の味にも関与しており、含
作用などが報告されています。ポリフェノールは、え
防止作用、毛細血管を丈夫にする作用、抗アレルギー
い抗酸化作用があり、発がんを抑制する効果や、老化
で、抗菌作用があります。また、ポリフェノールは強
ボノイドです。
脂肪酸などがあります。
食物繊維はかつて、栄養的には価値のないものとさ
れていました。しかし近年は健康維持に必要なものと
的に摂取することは健康の維持や病気の予防に役立ち
高血圧を予防する成分には柑橘類のフラボノイド、
グリコシドなどがあります。抗アレルギー性のある成
いうことがわかり、その重要性が注目されています。
ます。
分にはシソのポリフェノール、γ ︱ルノレン酸があります。
できます。。 不溶性食物繊維は、 植物の細胞壁に含ま
ポリフェノールは、もともと植物が厳しい環境や外
敵から身を守る生体防御のために作り出した物質なの
血栓形成抑制作用があるのはニンニクの含硫化成分
です。
まれるタンニンなどです。
① コレステロールや脂質の吸収を抑制し排出を促
進することによる血中コレステロールの低下、
食物繊維の効果としては次のようなものがあります。
れるセルロースです。水溶性食物繊維は野菜に多く含
食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大別
血糖値を降下するのは、フチン酸を含む豆類やイモ
類などです。
ポ リ フ ェ ノ ー ル は、 フ ェ ノ ー ル 基 を2 個 以 上 含 む
構造をもつ成分の総称です。代表的なものは、野菜や
果実に含まれる色素成分であるアントシアニンやフラ
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第1章
野菜の機能性成分はどんなものがあるか
成分から見た野菜の機能性
機能性成分
主な含有野菜
機 能 性
フラボノイド(ル
チン、ヘスペリジ
ン)
ナス、トマト、ホウレンソウ
毛細血管の強化、血流改善効果、LDL コレステロー
ルの低下、抗アレルギー作用、免疫力アップなど
イソフラボン、
ダイズ
女性ホルモン「エストロゲン」(卵胞ホルモン)に
似た働き
カプサイシン
トウガラシ、シソ、モロヘイヤ、ニンジ
ン、パセリ、ホウレンソウ、アシタバ
辛実成分、毛細血管の血行が良くなり発汗作用や脂
肪分解効果が得られる。脂肪分解を促す。
カロテン
トウガラシ、シソ、モロヘイヤ、ニンジ
ン、パセリ、ホウレンソウ、アシタバ
コレステロールを下げる。
ケルセチン
タマネギ、ホウレンソウ、パセリ、ケー
ル、レタス、ブロッコリー、モロヘイヤ、生活習慣病の予防・改善。
青シソ
ナイアシン
ラッカセイ、
脂質、糖質、タンパク質の代謝に不可欠。二日酔い
の原因となるアセトアルデヒドを分解する。
リコぺン
トマト、スイカ
動脈硬化、脳梗塞や心筋梗塞、高血圧を予防。
レシチン
大豆
ストレス解消、疲労回復、脳循環解消。
食物繊維
シソ、ヨモギ、パセリ
排便をスムーズにし、体内の有害物質を吸着して排
出させる。.
大豆サポニン
大豆
過酸化脂質の生成抑制、細胞を活性化、肌の老化を
防ぎ、動脈硬化や血栓症を防ぎ、肝機能障害を改善。
硫化アリル
タマネギ、ニンニク
血液凝固を遅らせて血液をサラサラにする。血液中
の脂質を減らし、糖尿病、高血圧、動脈硬化を予防。
② 糖分の吸収を遅らせることによる糖尿病の予
防
③ 咀嚼回数の増加や胃の中で体積が増えること
による食べ過ぎの防止
④ 腸内細菌のバランスを整え、 腸の働きを活発
にして便通をよくすることによる大腸がんの予防
食物繊維を豊富に含む野菜は、キャベツ、アスパ
ラガス、セロリ、スナップエンドウ、タケノコ、サ
ヤエンドウ、レタス、トウモロコシ、タマネギ、ゴ
ボウ、サツマイモ、サトイモ、ナガネギ、ダイコン、
ブロッコリー、ピーマンなどです。
イオウ化合物は、タマネギ、ネギ、ニラ、ニンニ
ク、ラッキョウなどのユリ科の野菜に含まれます。
これらには切ったときにツンとくる刺激臭がありま
すが、その刺激臭の元になっているのが硫化アリル
です。血液をサラサラにして動脈硬化を防ぎ、心筋
梗塞、脳梗塞等の生活習慣病を予防します。また、
活性酸素を除去し、がんの発生を抑えるほか、強い
殺菌作用で胃炎などにも効果を発揮します。
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