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全国在宅療養支援診療所連絡会 第4回全国大会 プログラム別詳細
プログラム
ランチョンセミナー B
在宅緩和ケアにおけるモルヒネ持続皮下注射
タイトル
共催
テルモ株式会社
日時
平成28年7月3日 12:20-13:20
会場
第2会場(小ホール1)
座長
大石明宣 (医療法人信愛会 理事長)
演者
川越厚
1.
(クリニック川越 院長)
在宅で使用される医療用麻薬、特に強オピオイド(商品名で表記)
現在、在宅で使用する強オピオイドにはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどがあり、注射薬には 1%塩酸モ
ルヒネ、4%塩酸モルヒネ、1%オキファストがあり、アンプル製剤が主である。1%モルヒネには注射筒にあらかじめ
充填された 100mg 製剤(プレペノン)がある。注射薬は経皮下、経静脈、経硬膜外、経クモ膜下投与が可能である。
2.
わが国における医療用麻薬の歴史(図Ⅶ-2)
1) オピオイド製剤
モルヒネの経口剤の発売(1986 年)以降、2000 年代に入ると 4%塩酸モルヒネ(2001 年)、フェンタニルパッチ(2003
年)、塩酸オキシコドン徐放剤(2003 年)、オキシコドン注射薬(2012 年)など相次いで新たに発売され、専門チーム
が関われば病院と全く遜色ない疼痛緩和を在宅で行うことが可能になった。また在宅緩和ケアに積極的に関わる調剤薬
局も出現し、疼痛緩和で苦労して入院する、というような事態は非常に少なくなった。
2) 医療用麻薬の取り扱い、マニュアルなど
麻薬の取扱いについては、麻薬及び向精神薬取締法(昭和 28 年法律第 14 号)に基づき管理されているが、医療用麻
薬の実際の使用は麻薬管理マニュアルに具体的な指針が示されている。在宅における麻薬管理に関する部分は、①第1
は患者の手元へ麻薬を届ける者について明記したこと(看護師、ヘルパー、さらにボランティアまで認められた)、②
ファクシミリによる麻薬処方せんの転送による調剤開始を認めたこと、③麻薬を保管しない施設では麻薬の保管設備の
設置義務が緩和されたこと、④患者宅で使用する麻薬の注射薬についての緩和がなされたこと、などである。これらの
規制緩和により、在宅での医療用麻薬の使用がより現実に即したものとなり、結果的に患者の苦痛緩和の質を向上させ
ることになった。
3) 実際の使用上の注意
医療用の麻薬の使用はチーム内の医療者で考えや実際の使用を正確に共有する必要があり、オピオイドの使用に際し
企画趣旨・概要
て筆者は次のような注意を訪問看護師に行っている。
(1)
オピオイド使用開始、増量、オピオイドローテーションは事前約束指示を参考にし、原則として医師の
指示に従うこと
(2)
オピオイド使用の原則は経口→(経直腸)→経皮→経皮下
(3)
経口不能になった場合、患者がまだ(一応数日以上)生きそうな時は持続皮下注射、まもなく亡くなる
と予測される場合はアンペックでつなぐ(6 ないし 8 時間おきの定時投与)
(4)
過投与の補正についてはナロキソンを使用する。1A を生食で 10 倍希釈し、その 1ml を経静脈投与す
る。詳細は約束指示書を見よ
(5)
医療用麻薬の廃棄にあたっては麻薬を分類整理して家族に示し、それを処方された薬局へ直接持参し、
廃棄してもらうように指導すること。家族の協力が難しい場合には薬剤師に引き取りを依頼すること。
(以上、川越厚:Ⅶ医療用麻薬。がん患者の在宅ホスピスケア、医学書院
2013
pp139 以下より抜粋。一部改
編)
4) モルヒネ持続皮下注射の実際
私たちのクリニックで行っている具体的な方法を示す。
処方箋の発行(医師)*1→調剤薬局による調剤*2→シリンジに充填したモルヒネを患家に届ける*3→シリンジポ
ンプにセット、指示された流量で開始*4
*1:私たちのクリニックは院外処方を用いている。
*2:無菌調剤のできる調剤薬局で調剤
*3:訪問服薬指導も依頼
*4:この役目は通常訪問看護師が担う。シリンジポンプは一貫してテルモの 10ml 用小型シリンジポンプを使用
している。流量が多くなった時の工夫が必要であるが、初心の方はまずこのポンプを使用すればよい。バルーン
ポンプは流量が一定した場合に用いることがあるが、調節性に難があるので、私はあまり用いていない。
(敬称略)