共創・共育・共感 尾鷲市教育長だより 2016.5.27.(金) 第178号 小学校と中学校の違い 小学校時代はあどけなさというか無邪気さが残っていて、その時期時期に 必要なことをたっぷりと楽しみ、身体で感じとりながら生活、学習をすすめ ていく時期です。小学校は「少年期を豊かに育てる学校」です。 中学校時代は思春期(青年期の入口)の時代で、自分独自の世界をもちは じめ、内面の問題で悩んだりする時期です。自分をつくることに強いこだわ りをもちながら反抗(自立)と甘え(依存)の間を揺れつ戻りつ成長してい きます。 ですから、中学校はまさに「自分づくり」をすすめていく「おとなになる ための学校」です。教科ごとに先生が入れ替わり、学習も小学校の内容を深 く、広く、発展させたものになります。英語や技術・家庭、部活動などもあ ります。これらはどれもこれも、これまでの自分とひと味違った自分をつく り出し、自立していくための学習であり活動です。 中学校の入学時に生徒たちから少しばかりとまどったことをあげさせると、 制服 や 部 活など学 校生活の他に、教師のある種の「そっけなさ」「不親切さ」 といった感じのことがあがってきます。入学したてのころは、どうやら小学 校の教師ほど親切にはうつらないようです。 中学校の教師の指導や対応がある意味不親切にうつったりするのは、甘え と反抗を繰り返し、依存しながら自立していく、思春期まっただ中の中学生 を相手に教育していくには、しっかりと受け止めたり、ときには厳しく突き 放したり、押したり引いたりしながら、教師離れ、大人離れをさせながら自 立をめざすといった教育姿勢が大きく影響しているように思います。 動物の世界では一般的に子どもを親から離れさせるために、 「餌を与えない」 「乳を飲みに来ると追い払う」 「縄張りから追い出す」といったことをします。 厳しい自然界で生き抜いていくための準備・訓練をしているのです。 中 学 校 は、少 し ずつ「教 師離れ」「大人離 れ」さ せ、自 立への道を歩ませる -1- ために、なるべく生徒自身に考えさせ、判断させ、行動させることが多くな ります。それは中学校教育のテーマが「自立」にあるからです。 今でこそほとんどの生徒が高等学校に進学しますが、かつては中学校を卒 業すると、社会に出る生徒が結構いたのです。何とか、一人前とは言わない までも、半人前の社会人として働ける力を、中学校で育てなくてはならない と考え、自立に向けて指導してきた中学校の歴史があります。少し突き放し ながら、なるべく自分で考え、判断し、行動できるように指導をしてきたの です。これまでの中学校現場には、そうした指導を要求されるところがあっ かも たのです。中学校のこうした歴史的風土から醸し出される指導が、ある意味 不親切にうつるのだと思います。 ところが現在、社会・地域・家庭の変化により、子どもたちの自立はゆる やかになってきています。今の子どもたちは、甘えと反抗をくり返しながら、 依存しつつ自立しようとしています。今の子どもたちの自立を考えるには、 いきなり自立させようとするのではなく、依存的自立の考え方が必要です。 ですから、教師側もこれまでとは少し違って、突き放しながら指導するの ではなく、まず子どもたちとつながるために、共感的に話を聞くということ を大切して、子どもたちとの関係を問い直しながら、どうやって対話を成立 させるか。依存させながらも、どうやって規律ある生活を確立させていくか といった課題に取り組むことが要求されています。これは家庭でも同じです。 中学校では、小学校一年生のように、いつも教師が寄り添って、ていねい に世話をやくことはほとんどありません。小学校の教師の多くは、休み時間 も教室にいて、子どもたちと一緒に過ごしますが、中学校では、たいていの 教師は教室にいません。授業が終わると職員室に戻ります。休み時間は、生 徒たちが自分たちで過ごしています。 中学校では「自立」の力と、もう一つ、教師のいないところでも生徒自身 が自 分 た ちで学校 生活に取り組み、向上させていく「自主管理の力 」(自治の 力)を育てていくことが重要なのです。 小学校では、そこにつなげていくための土台づくりが要求されます。自立 のための土台は、基本的生活習慣です。健康管理に大切な排便や3度の食事、 早寝・早起きといった生活のリズム、身のまわりの整理・整頓、挨拶など、 学校と家庭が連携して、子どもの発達段階に応じて、ていねいに、根気よく しつけながら、当たり前にできるよう習慣化させていくことが大切です。 -2-
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