高静圧ファン「San Ace 60」9HVタイプ

新製品紹介
高静圧ファン
「San Ace 60」9HV タイプ
降幡 翔
山崎 哲也
加藤 英俊
村上 昌志
丸山 和也
Sho Furihata
Tetsuya Yamazaki
Hidetoshi Kato
Masashi Murakami
Kazuya Maruyama
1. まえがき
近年の情報処理・通信技術の急速な発展・普及によって,情報
機器や通信機器は高性能化・高密度化が進んでいる。それにとも
ない情報機器や通信機器の装置内の発熱量は増加し,そこで使
用されるファンには,よりいっそうの冷却性能の向上が求めら
れている。
当社で製品化した 60mm 角 38mm 厚の DC ファン「San Ace
60」9GA タイプは,同サイズとしては業界トップクラス※ 1 の風
量−静圧性能を有している。しかし市場の要求はより高密度・高
静圧側へとシフトしている。今回,このようなニーズに応える
べく高静圧ファン「San Ace 60」9HV タイプ(以下,開発品とい
う)を開発・製品化した。
本稿では,その詳細を紹介する。本開発品は,サイズ,取り付
け穴などは従来機種と互換性を保ちながら,業界トップ※ 2 の高
図 1 60mm × 38mm 厚
「San Ace 60」9HV タイプの外観
静圧を実現している。
2. 開発品の特長
図 1 に開発品の外観を示す。
以下に開発品の特長を示す。
3. 製品の概要
3.1 寸法諸元
図 2 に開発品の寸法諸元を示す。
(1)高静圧
(2)PWM 速度コントロール機能
開発品は,従来機種と同じ取り付け寸法であり,互換性を保っ
ている。
(3)2U サイズユニットに最適
開発品は,羽根,フレームの新規設計をおこない,高静圧化を
実現している。
3.2 特性
3.2.1 一般特性
表 1 に開発品の一般特性を示す。
回転速度を安定させるためのフィードバック制御機能を備え
た J スピード(21,700min-1)を製品化した。
3.2.2 風量−静圧特性
図 3 に開発品の風量−静圧特性例を示す。
5
SANYO DENKI Technical Report No.41 May 2016
高静圧ファン「San Ace 60」9HV タイプ
4-φ4.5±0.3
60±0.5
50±0.3
38±0.5
4±0.3
4±0.3
(10)
60±0.5
50±0.3
回転方向
ROTATING DIRECTION
+50
300 0
AIRFLOW DIRECTION
風吹出方向
図 2 開発品の寸法諸元 (単位:mm)
表 1 「San Ace 60」9HV タイプの一般特性
PWM
定格電圧 使用電圧範囲 デューティ 定格電流 定格入力
型番
9HV0612P1J001
[V]
[V]
12
10.8 ∼ 12.6
定格
回転速度
最大風量
最大静圧
音圧
レベル
サイクル
[A]
[W]
100
2.70
32.40
21,700
1.88
66.4
1,750
7.00
68
20
0.17
2.04
5,300
0.43
15.2
102
0.41
34
[%]
-1
[min ] [m /min] [CFM]
3
[Pa] [inchH2O] [dB(A)]
使用温度範囲
期待寿命
[˚C]
[h]
−20 ∼+70 40,000/60˚C
注 1:入力 PWM 周波数:25kHz
注 2:PWM デューティーサイクル 0% 時の回転速度 0min-1
(inch H2O) (Pa)
7
DC12V
1,800
1,600
→ 静圧
ファンを常時フルスピードで使用するのではなく,装置の発
PWMデューティ
100%
1,400
4
開発品は,ファンの回転速度を外部から制御できる PWM コ
ントロール機能を備えている。
6
5
3.2.3 PWM コントロール機能
熱状態に応じて回転速度を制御することで,装置全体としての
さらなる低消費電力化と静音化を実現できるため,PWM 速度
1,200
コントロール機能を有するファンの要求は近年非常に多くなっ
てきている。
1,000
図版の文字
3
800
3.3 期待寿命
電圧連続運転,フリーエアー状態,
常湿)は,40,000 時間である。
英語版用
2
Times Ten
400
0
英語版用
開発品の周囲温度Condens
60˚C における期待寿命(残存率 90%,定格
600
1
123
20%
200
0
0.4
0
10
0.8
20
30
1.2
40
2.0(m3/min)
1.6
50
60
70 (CFM)
→ 風量
図 3 風量−静圧特性例
SANYO DENKI Technical Report No.41 May 2016
6
4. 従来品との比較
さらに従来品とは異なり,開発品は静翼取り付け部の一部を
カットしている。こうすることにより変極点付近における静圧
開発品は,羽根・フレームの新規設計,およびモータの最適化
が約 5% 向上した。図 6 に静翼取り付け部の写真を示す。
をおこない,従来品に比べ大幅な高静圧化を実現した。
以下に,開発品「San Ace 60」9HV タイプと従来品「San Ace
60」9GA タイプとの相違点を具体的に紹介する。
開発品
4.1 形状の比較
従来品 60mm 角 38mm 厚 9GA タイプ(9GA0612P1S03)と
比べ開発品 60mm 角 38mm 厚 9HV タイプ(9HV0612P1J001)
は,高静圧を達成するため静翼の幅が従来品の約 2 倍で,フレー
ム厚の半分以上を占めるのが特徴となっている。この構造が大
幅な高静圧化に貢献している。従来品と開発品の静翼形状の断
面図を図 4 に,静翼および動翼の構造断面図を図 5 に示す。
開発品
12
20
従来品
従来品
図 4 静翼断面比較
図 6 静翼取り付け部比較
風吹出方向
これらの構造を組み合わせることにより 60mm 角 38mm 厚
で 1750Pa という,今までにない大幅な高静圧化を実現した。
静翼幅
静翼幅
静翼
動翼
動翼
静翼
図版の文字
123
英語版用
Condens
従来品
開発品
図 5 構造断面比較
7
SANYO DENKI Technical Report No.41 May 2016
英語版用
Times Ten
高静圧ファン「San Ace 60」9HV タイプ
DC12V
1800
風量はほぼ同等ながら静圧は約 2 倍となっている。
30
2200
図 7 に開発品と従来品の風量・静圧特性の比較例を示す。最大
25.8[W]
25
2000
19% down
1800
92% UP
DC12V
2000
1400
1800
1200
静圧[Pa]
92% UP
9HV0612P1J001
1600
1000
1400
800
開発品
1200
静圧[Pa]
600
400
9HV0612P1J001
3.5[dB(A)]down
1200
9GA0612P1S03
0
0.5
0.5
40
68.5[dB(A)]
30
800
従来品
20
9GA0612P1S03
9HV0612P1J001
600
0
10
0.5
1
風量
[m3/min]
400
1.5
2
開発品
図 8 風量−静圧−音圧−電力 特性比較例
200
9HV0612P1J001
9GA0612P1S03
0
9GA0612P1S03
3.5[dB(A)]down
1000
0
2
50
72[dB(A)]
1200
開発品
風量[m3/min]
200
0
従来品
1.5
従来品
1400
200
1
400
60
68.5[dB(A)]
600
0
70
1600
1000
400
800
80
19% down
72[dB(A)]
1800
20.8[W]
600
従来品
200
2000
800
1000
15
25.8[W]
1400
開発品
20
2200
1600
静圧[Pa]
1600
20.8[W]
電力[W]
4.2 特性の比較
音圧レベル[dB(A)]
2000
1
1.5
2
風量
[m3/min]
図 7 風量−静圧 特性比較例
5. むすび
0
0
0.5
1
1.5
風量
[m3/min]
本稿では,開発した高静圧ファン「San Ace 60」9HV タイプ
の特長と性能の一部を紹介した。
開発品は,羽根・フレームを新規設計することにより,当社
4.3 消費電力の比較(従来品同等性能時)
図 8 に冷却性能が同等となる想定動作点における開発品と従
来品の特性比較を示す。
消費電力が約 19% 低減,音圧レベルも約 3.5[dB(A)]低減し
従来品と比較し大幅な静圧の向上を実現した。また,60mm 角
38mm 厚サイズのファン市場においても業界トップ※ 2 の高静圧
を達成している。
開発品は,電子機器,通信機器において今後ますます加速する
ている。これにより冷却特性を維持しながら,装置の消費電力
であろう装置の省エネルギー化と低騒音化に大きく貢献できる
および音圧レベルの低減も期待できる。
と考える。
※ 1 2014 年 9 月現在。同サイズの単相軸流ファンとして。
当社調べ。
※ 2 2015 年 12 月現在。同サイズの単相軸流ファンとして。
定格 12V 時 ,PWM100% 時の場合。当社調べ。
SANYO DENKI Technical Report No.41 May 2016
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高静圧ファン「San Ace 60」9HV タイプ
降幡 翔
2007 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
山崎 哲也
1997 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
加藤 英俊
2002 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
村上 昌志
2012 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
丸山 和也
2007 年入社
山洋電气(上海)貿易有限公司
2015 年にクーリングシステム事業部 設計部より異動。
冷却ファンの開発,設計に従事。
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SANYO DENKI Technical Report No.41 May 2016