低消費電力ファン 「San Ace 38」 9GAタイプ

新製品紹介
低消費電力ファン
「San Ace 38」 9GA タイプ
奥田 裕介
竹内 清二
大澤 穂波
Yuusuke Okuda
Seiji Takeuchi
Honami Oosawa
1. まえがき
サーバやストレージ,通信機器などの情報機器は,扱うデータ
量が大幅に増え,処理の高速化がすすんでいる。そのため装置
が高密度化し,それに伴って発熱量が増加している。
加えて,電力コストの高騰や環境意識の高まりなどから,装置
の消費電力削減も重要な課題になっている。
こうした状況から,情報機器に用いられる冷却ファンには,高
静圧かつ低消費電力であることが要求されている。
本稿では,このような市場要求を受けて開発した低消費電力
ファン「San Ace 38」9GA タイプの特長と性能を紹介する。
2. 開発の背景
当社は,38mm 角 28mm 厚の DC 冷却ファン「San Ace 38」
9GV タイプを製品化してきた。
しかし装置の高密度化により,要求される動作領域はより高
図 1 「San Ace 38」9GA タイプ
4. 製品の概要
4.1 寸法諸元
開発品の寸法諸元を図 2 に示す。ファンのサイズ,取り付け寸
法は従来品と互換性を保っている。
静圧側に変わってきた。また,装置の省エネルギー化によって
冷却ファンにもさらなる低消費電力化が求められている。
こうした要求に応えるために,高静圧・低消費電力を実現した
低消費電力ファン 38mm 角 28mm 厚「San Ace 38」9GA タイプ
を開発した。
4.2 特性
4.2.1 一般特性
定 格 電 圧 は DC12V で,定 格 回 転 速 度 は 19,000min-1(G ス
ピード)
,23,500min-1(J スピード),25,000min-1(K スピード)
の 3 種類を製品化した。
3. 開発品の特長
図 1 に「San Ace 38」9GA タイプ(以下,開発品という)の外
観を示す。
開発品の一般特性を表 1 に示す。
4.2.2 風量−静圧特性
開発品の風量─静圧特性例を図 3 に示す。
以下に開発品の特長を示す。
4.2.3 PWM コントロール機能
(1)低消費電力
(2)高静圧
(3)PWM コントロール機能
開発品は,ファンの回転速度を外部から制御できる PWM コ
ントロール機能を備えている。
PWM 速度コントロール機能を有する冷却ファンの要求は近
年非常に多くなってきている。冷却ファンを常時フルスピード
開発品は,羽根・フレームの新規設計,およびモータの最適化
で使用するのではなく,装置の発熱状態に応じて回転速度を制
により,従来機種と互換性を保ちながら,低消費電力・高静圧を
御することで,装置全体としての更なる低消費電力化と低騒音
実現している。
化を実現することができる。
開発品 9GA0312P3K001 の PWM デューティに対する風量
─静圧特性例を図 4 に示す。
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SANYO DENKI Technical Report No.36 Nov. 2013
低消費電力ファン 「San Ace 38」 9GA タイプ
4.3 期待寿命
本開発品の周囲温度 60˚C における期待寿命
(残存率 90%,定格
電圧連続運転,フリーエアー状態,常湿)は,40,000 時間である。
4-Ø3.5±0.3
28±0.5
( 4)
38±0.5
30±0.3
(4)
+30
320 0
30±0.3
UL1007
AWG26
(10)
38±0.5
リード線
SANYO DENKI
風吹出方向
回転方向
図 2 開発品の寸法緒元(単位:mm)
表 1 開発品の一般特性
定格
定格電圧 使用電圧範囲 PWM デューティ 定格電流 定格入力
回転速度
サイクル [%]
[V]
[V]
[A]
[W]
-1
型番
最大風量
音圧
使用温度範囲
レベル
最大静圧
[min ] [m3/min] [CFM] [Pa] [inchH2O] [dB(A)]
100
9GA0312P3K001
9GA0312P3J001
10.8 ∼ 13.2
12
9GA0312P3G001
0.62
7.4
25000
0.60
0
0.06
0.7
3000
0.07
100
0.52
6.2
23500
0.57
0
0.06
0.7
3000
0.07
100
0.33
4.0
19000
0.45
0
0.06
0.7
3000
0.07
21.2 800
2.5
3.21
11
0.04
15.0
2.89
57.5
11
0.04
15.0
15.9 460
1.85
53.0
0.04
15.0
2.5
11
40,000/60˚C
−10 ∼+70
(70,000/40˚C)
注 1:周囲温度 40˚C の場合の期待寿命は参考値
(inch H2O)(Pa)
3.5
※入力 PWM 周波数:25kHz
PWMデューティ100%
900
(inch H2O)(Pa)
3.5
800
3.0
700
1.5
700
Kスピード
600
500
2.5
静圧
静圧
2.0
Jスピード
400
Gスピード
2.0
1.5
300
12 V DUTY 100%
500
400
12 V DUTY 50%
1.0
200
200
0
600
300
1.0
0.5
DC12V
900
800
3.0
2.5
[h]
59.0
20.1 720
2.5
期待寿命注 1)
[˚C]
0.5
100
0
0.1
0
0.2
5
0.3
10
0.4
15
0.5
0.6
20
風量
図 3 開発品の風量─静圧特性例
0.7(m3/min)
25
(CFM)
0
12V DUTY 0%
100
0
0.1
0
0.2
5
0.3
10
0.4
15
0.5
0.6
20
0.7(m3/min)
25
(CFM)
風量
図 4 PWM デューティサイクルに対する
風量─静圧特性例(9GA0312P3K001)
SANYO DENKI Technical Report No.36 Nov. 2013
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5. 従来品との比較
風量品 9GA0312P3K001 は想定使用領域において 5% ∼ 14%
の消費電力低減を実現している。
本開発品では,羽根・フレームの新規設計,およびモータの最
(inch H2O) (Pa)
以下に,開発品の開発のポイントと従来品「San Ace 38」9GV
タイプとの違いについて説明する。
3.5
900
2.5
静圧
まう。
─静圧特性を向上することに注力した。具体的には下記の 3 点
9
−14%
−5%
8
7
700
増加する。しかし,同時に消費電力や音圧レベルも増加してし
である。
10
3.0
ファンの風量─静圧特性は一般的に回転速度を上げることで
開発品は,消費電力や音圧レベルを増加させることなく,風量
PWMデューティ100%
従来品 消費電力
(9GV0312P3K01)
800
5.1 開発のポイント
(W)
想定使用領域
1000
2.0
1.5
消費電力
適化を行い,低消費電力・高静圧を実現した。
開発品 消費電力
(9GA0312P3K001)
600
6
開発品
(9GA0312P3K001)
500
5
1.9倍
400
300
1.0
(1)動・静翼の枚数・形状の最適化
200
図 5・6 に従来品との比較を示す
0.5
(2)低損失の電子部品の採用
(3)モータ材料の見直し
従来品
(9GV0312P3K01)
100
0
0.1
0
0
0.2
5
0.3
10
0.4
0.5
15
0.6
0.7(m3/min)
20
25(CFM)
風量
図 7 開発品と従来品の風量─静圧特性例
5.4 音圧レベルの比較
従来品の最高風量品 9GV0312P3K01 のフリーエア時の音圧
レベルは 59.0dB(A)である。これに対して開発品の最高風量品
従来品
開発品
図 5 従来品と開発品の動翼形状比較
9GA0312P3K001 は高速回転品でありながら,同等の音圧レベ
ル 59.0dB(A)であり,音圧レベルの増加抑制を実現している。
6. むすび
本稿では,開発した低消費電力ファン「San Ace 38」9GA タ
イプの特長と性能の一部を紹介した。
開発品は従来品に比べ大幅な高静圧化と低消費電力化を実現
した製品である。これにより,装置高密度化に伴うインピーダ
ンス増加にも対応できる性能を実現した。
冷却ファンとして,高密度実装装置の冷却と低消費電力化とい
従来品
開発品
図 6 従来品と開発品の静翼形状比較
5.2 風量─静圧特性の比較
開発品と従来品の風量 - 静圧特性比較を図 7 に示す。
従来品の最高風量品 9GV0312P3K01 に対し,開発品の最高
風量品 9GA0312P3K001 は想定使用領域において最大 1.9 倍の
高静圧化を実現している。
5.3 消費電力の比較
従来品の最高風量品 9GV0312P3K01 に対し,開発品の最高
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SANYO DENKI Technical Report No.36 Nov. 2013
う問題に対して貢献し,装置の信頼性向上につながると考える。
今後も,市場要求に対応した製品開発を行い,装置の冷却に適
した製品を提供していく所存である。
低消費電力ファン 「San Ace 38」 9GA タイプ
奥田 裕介
2010 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
竹内 清二
2006 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
大澤 穂波
1989 年入社
クーリングシステム事業部 設計部
冷却ファンの開発,設計に従事。
SANYO DENKI Technical Report No.36 Nov. 2013
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